巨大ミミズのように穴を掘るGEのソフトロボット

今朝ログインしたときには、巨大なミミズロボットを取材する予定は入っていなかった。しかし、それは今目の前にあり、私はそれのためにここにいる。問題のロボットはGE Researchのチームによって設計され、DARPAのUnderminer(掘削者)プログラムの一部として、250万ドル(約2億7000万円)の賞金を獲得した。このプログラムは、軍事環境での迅速なトンネル掘削を促進するために創設された。

ロボット工学における近年の流行にならって、GEチームはタスクを遂行するために、生物学的インスピレーションへと目を向けた。彼らが生み出したのは、セグメント化された巨大なソフトロボットで、巨大な機械式ミミズのように徐々に進んで行く。

ロボットの筋肉は、無脊椎動物に見られる、流体で満たされた構造の「水力学的骨格」(hydrostatic skeleton)を模倣してデザインされている。このロボットの場合、前進する際に大きな役割を果たすのがその人工筋肉であり、さまざまな地下環境に適応できるようにデザインされている。このデザインは、狭い空間に押し入る能力を伴いながら、さまざまな動作の自由を提供する。

成功へのもう1つの鍵は、地下で自律的に機能できる適切なセンサーを組み込むことだ。なにしろそのような状況下では、ロボットをリモートコントロールすることは難しい可能性があるからだ。

「これらのトンネルシステムは地下に置かれているため、ロボットが適切な場所で移動してトンネルを掘ることができるように、自律的に動きセンシングできる機能を組み込む必要があります」と、プロジェクトリーダーのDeepak Trivedi(ディーパック・トリべディ)氏はリリースで述べている。「幸いなことに、私たちは、ラボ全体から制御、AI、センシングの専門家たちを引き込んで、これらの新機能を統合することができます」。

プロジェクトは有望だが、完成はほど遠い。最終目標は、500メートルのトンネルを秒速10cmで掘り進むことができるロボットだ。なおGEのニューヨーク州ニスカユナで撮影された上記のラボビデオは、4倍に高速化されている。

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(翻訳:sako)

騙されない機械学習を米軍とインテルが共同開発へ

機械学習のモデルに対する騙し攻撃を防ぐ、サイバー防衛技術の改良を目指している米軍の研究開発機関DARPAは、チップメーカーのIntel(インテル)をその研究のリーダーとして選んだ。

人工知能技術の一種である機械学習(Machine Learning)は、新しいデータや経験を「学習」するたびに賢くなっていく。現在のところ最も一般的な用途は物の認識で、写真を見てそれが何か、誰かなどを当てる。目の不自由な人の視覚能力を助けたり、あるいは自動運転車が路上の物や状態を識別するのに利用している。

しかし、まれにある騙し攻撃は、機械学習のアルゴリズムに干渉する。例えば、自動運転車に普通の安全な物のようだけど実は違うという物を見せて、大きな事故を起こさせることもありえる。

数週間前にMcAfee(マカフィー)の研究者がTesla(テスラ車)を騙し、速度制限標識にわずか5cmのテープを貼っただけで、時速80kmという違反速度まで加速させることができた。その研究は、自動車などのデバイスの機械学習アルゴリズムを騙すMcAfee社の初期的な研究例の1つだった。

そこでDARPAは、その対策に乗り出した。同研究機関は今年の初めに、GARD(Guaranteeing AI Robustness against Deception、騙しに対して強いAIを保証する)と名付けたプログラムを発表した。機械学習に対する現在の防犯技術は、既定のルールを利用するものが多いが、DARPAが望むのは、ルールがあらかじめないような、さまざまな種類の犯行に対応できる幅広い防衛システムだ。

インテルは米国時間4月9日、同社はジョージア工科大学と共にその4年計画の事業の中心的契約企業になると発表した。

IntelのGARDチームを率いる主席エンジニアを務めるJason Martin(ジェイソン・マーティン)氏によると、同社とジョージア工科大が共同して「物を認識する能力を強化して、AIと機械学習の、敵対的な攻撃への対応を学習できる能力を高める」という。

インテルによると、プログラムの最初の段階はオブジェクト検出技術の強化にフォーカスし、空間(場所)とか時間、意味(セマンティクス)などが整合した物を正しく見つけるようにする。対象は静止画と動画の両方だ。

またDARPAによると、GARDは生物学などさまざまな異なる設定で使えるようにする。

DARPAのInformation Innovation Officeでプログラムマネージャーを務めているHava Siegelmann(ハバ・シーゲルマン)博士は「我々が作り出そうとしている幅広いシナリオに基づく防衛は、たとえば免疫系にもある。そこでは、攻撃を見つけ、それに勝ち、将来の遭遇においてより有効な反撃を作り出すためにその攻撃を記憶する」と語る。

「我々は機械学習を、確実に安全で、騙されることのありえないシステムにする必要がある」と同博士と語る。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

DARPAがFastNICでネットワークの100倍高速化を狙う

接続速度が遅いことは常に欲求不満の源だが、ここでスーパーコンピューターの立場からはどのように感じるかを想像してみてほしい。これらの実行コアはすべてあらゆる種類の処理を超高速で実行するが、最終的には同期を保つために古いネットワークインターフェイスの応答を待っている。DARPA(米国防高等研究計画局)はそれを好ましいと思っていない。そこでDARPAは、特に新しいネットワークインターフェイスを100倍高速化することによって、その状況を変えようとしている。

問題はこのようなものだ。DARPAが概算しているように、コンピューターまたはサーバー上のプロセッサーやメモリーは、一般的には1秒あたり約10^14ビットの速度で処理を行う、これは余裕でテラビット処理を行える。そしてスイッチや光ファイバーなどのネットワークハードウェアもほぼ同じ能力を持っている。

「プロセッサスループットの真のボトルネックは、イーサネットなどの外部ネットワークに、マシンを接続するために使用されているネットワークインターフェイスです。このために、プロセッサのデータ取り込み能力が大幅に制限されています」とプロジェクトに関するニュース投稿で説明するのは、DARPAのJonathan Smith(ジョナサン・スミス)氏だ。

そうしたネットワークインターフェイスは通常、NICと呼ばれるカード形式になっており、ネットワークからデータを受信してコンピューター自身に送り込んだり、その逆を行う。残念ながら、その性能は、通常ギガビットクラスだ。

NICとネットワークの他のコンポーネント間の能力差は、スーパーコンピューターやデータセンターを構成する数百または数千のサーバーやGPUなどの、異なるコンピューティングユニット間で、情報を共有できる速さに対する根本的な限界を意味している。1つのユニットが他のユニットと情報を共有できる速度が速ければ速いほど、次のタスクに素早く進むことができる。

次のように考えてみよう。あなたはリンゴ農場を経営しており、すべてのリンゴを検査して磨く必要がある。リンゴを検査する人とリンゴを磨く人がいて。どちらも1分間に14個のリンゴを処理することができる。しかし、両部門間のベルトコンベアーは、1分あたり10個のリンゴしか運べない。このとき仕事がどんなに溜まっていくか、そして関係者にとってそれがどれほどイライラするものかは理解できるだろう。

FastNIC計画によって、DARPAは「ネットワークスタックを再発明」し、スループットを100倍単位で改善したいと考えている。そして、もし彼らがこの問題を解決することができたなら、彼らのスーパーコンピューターは、世界中の他の国々、特に高性能コンピューティングの分野で米国と長年争ってきた中国のスーパーコンピューターよりも非常に有利なものとなるだろう。しかし、それは簡単なことではない。

「ネットワークスタックの構築には多額の費用と複雑さが伴います」とスミス氏は語る。最初に手がつけられるのはインターフェイスの物理的再設計だ。「まずハードウェアから始まります。もしそこを上手くやることができなければ手詰まりとなってしまいます。ソフトウェアは物理層が許すものよりも、物事を速くすることはできません。なのでまず最初に物理層を変える必要があるのです」。

残りの主要な仕事は当然、ソフトウェア側を再構築して、インターフェースが処理しなければならないデータ規模の大幅な拡大に対処することだ。たとえ2倍または4倍を目指す変更でも、体系的な改善が必要になる。まして100倍にするためには、真にゼロからのシステム再構築となるだろう。

DARPAの研究者たち(もちろん、ちょっとでも関わりを持ちたい民間企業の人材で強化されている)は、10テラビット接続の実証を目指している。ただし現時点ではまだタイムラインは設定されていない。ともあれ、現時点での良い知らせは、FastNICによって作成されるすべてのソフトウェアライブラリはオープンソースになるため、この標準は国防総省専用のシステムには限定されないということだ。

FastNICはまだ始まったばかりであるため、暫くの間は忘れていても大丈夫だ、1〜3年のうちに、DARPAがコードをなんとか生み出せたときに、改めてお知らせする。

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(翻訳:sako)

DARPAの37.7億円の打ち上げチャレンジにVectorとVirgin、そして謎の1社が参加

DARPA(国防高等研究計画局)は、どこでも、いつでも、何回も続けてロケットを発射したがっている。無理な注文だろうか? 同局の打上げチャレンジで資格を得たばかりのVector SpaceとVirgin Orbitと匿名のスタートアップの3社にとってはそうではない。彼らは敏捷性と機動性の高いロケット発射能力を極限まで追究する。

このチャレンジで各チームは、わずか数日前に通知された場所から積荷を軌道に打ち上げなくてはならない。打ち上げが終わると、第二の発射場所からまた数日後に発射するように言われる。成績に応じて優勝チームには最大1200万ドル、2位と3位にもそれぞれ最大1100万ドルと1000万ドルが与えられる。

「現在、軍事あるいは政府の打上げのほとんどは、数年前から計画された国家的イベントであり、大型の固定施設を必要としていた」とDARPAのプログラムマネジャーであるTodd Master氏がリリース文で言った。「われわれは、兵士に求められるスピードで宇宙に資源を送り込むために、よりリスクを容認する哲学とより速いペースに移行したいと考えている」。

コロラドスプリングスで行われた35Space Symposiumの講演で、Masterは昨年の今頃発表したこの競争に上記3社が参加することを発表した。いずれの会社もこれまで軌道に打上げた経験がないことは興味深い。

打上げの可能性のある場所

Vector Spaceは同社のロケットVector-Rを初めて軌道に打ち上げるために、最近7000万ドルを調達し、ツーソンの工場で製造を開始した。目標は、週単位頻度の短い間隔で小規模打上げを行うことだ。

Virgin Orbit(正確にはVOX Space)は、2段ロケットを発射する747ベースの第一ステージを使用する。過去に少量の積載物でうまくいった飛行機を補助的に利用する打上げ方法だ。ロケットと積荷の移動しやすさは、飛行機による第一ステージ方式の特徴なので、今回のチャレンジに特に合っているかもしれない。

3番目の会社は現在まだステルスモードで活動しているため、匿名を希望している。当初私は、密かに打上げ技術を開発している実在の打上げスタートアップで、現在ステルスモードにあるStelth社のことかと思った。しかし、数知れない密かに打上げ技術に取り組んでいる会社の一つであることも十分考えられる。

DARPALaunch Challengeは、短納期打上げを続けるロケット発射チームに賞金1000万ドルを提供

各社は参加資格を得たことで40万ドルを受け取り、合法性(FAA認可などが必要)が確認される。打上げは2020年中に行われる。最初の積荷を軌道に載せた各社には賞金200万ドルが与えられ、二番目の作業を完了すると1000万ドル、900万ドル、800万ドルがそれぞれ与えられる。判定はさまざまな基準に基づいて行われる。

全部合わせると3400万ドル(約37.7億円)ほどになる。もちろん、DARPAの要求を満たすためにはそれ以上の費用がかかると思われる。しかし、この手の競技会はそういうものだ。

DARPAが詳細を発表するまでこれ以上はわからない。当然打上げ日程は発表されるまで知ることはできないが、それまでにはしばらくかかる(各社が発射装置を完成させなくてはならない)ので、しばらくリラックスしていてよい。読者が参加チームのいずれかで働いているなら話は別で、その場合はせっせと働き始めなくてはならない。

成功すれば宇宙産業を変革、SpaceXの超大型ロケット「Falcon Heavy

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロボットとドローンを組み合わせて鉱山救助に挑むCMUチーム

ピッツバーグを訪れた最後の日に、今では廃坑となった炭鉱に行く機会を得た。市街地の北東側にあるTour-Ed鉱山では、気候の穏やかな期間だけ見学ツアーを開催しているのだ。とはいえ、坑道の中は1年を通して華氏50度(摂氏10度)に保たれている。

入り口の上の方にはまだ雪が残っている中、カーネギーメロン大学とオレゴン州立大学の学生チームは、次の競技に向けて、1組のロボットの準備を整えていた。この少人数のチームは、DARPAが主催するSubterranean Challenge(地下への挑戦)に参加している十数チームの内の1つだ。

数年におよぶSUbT競技は、「複雑な地下の環境に対して迅速に地図を作成し、ナビゲーションし、検索してすり抜けるための新しいアプローチを探索する」ことを目指すもの。そこには「人工的なトンネルシステム、都市の地下道、網状になった自然の洞窟」などが想定されている。具体的には、鉱山から洞窟、さらに地下鉄の駅といった地下構造物内の捜索、救助という課題が各チームに与えられている。

賞金200万ドル(約2億2000万円)の競技の目的は、複雑な地下の地形をナビゲーション可能なシステムを設計すること。想定しているのは、崩落やその他の災害だ。ロボットは、人間の救助隊が行くことのできない場所、あるいはレアなケースとして、足を踏み入れるべきではない場所にも行けるように作られている。

CMUチーム戦略は、4輪の探査車に加えて、アマチュアが使うような小さなドローンを中心に据えたマルチロボット方式を採用するもの。「われわれのシステムには、まず地上のロボットがあります。これが地形に合わせて進みます」と、このプロジェクトのアドバイザーを務めるCMUのSteve Willits氏は言う。「さらに、6つのプロペラを持つ無人の飛行装置も含まれます。鉱山の中の、さまざまな領域を探索するのに必要な機材をすべて備えたものです」。

探査車は、3DカメラとLIDAR(レーザー測距装置)を使って、ナビゲーション機能を働かせながら周囲環境の地図を作成する。瓦礫の中から人間を探すことも可能だ。残骸にぶつかったり、通路が狭かったり、階段のような人造の障害物によって動けなくなると、今度はドローンが車体の後部から飛び出して捜索を続ける。

このような捜索の際、探査車は非常に頑丈に作られたWiFiリピーターを、ときどき後部から落としながら進む。迷子にならないように目印として落とすパンくずのようなものだ。これで通信距離を伸ばすことができる。これらの大部分は、まだ初期段階のもの。チームは、探査車とドローンの動作を実演することはできたものの、まだそれらを連携して動作させる手法は確立していない。

ロボットのコンテストは今年の8月に開始される。最初は規定のTunnel Circuitを使う。その後2020年2月には、人工的なUrban Circuitで、さらにその年の8月にはCave Circuitと続く。最後のFinal Eventは、2021年の8月だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

インターネットの50年、われわれは何を学んだのか、そしてこれからどこへ向かうのか?

私と、私の大学の院生のチームが、最初のメッセージをインターネットで送信したのは、1969年10月のロサンゼルスの暖かな夕方のことだった。それが、世界的規模の革命の始まりだったとは、だれ一人考えてもみなかった。最初の2文字、具体的には「Login」の「Lo」を、UCLAのコンピュータ室でタイプ入力すると、ネットワークはクラッシュしてしまった。

それゆえ、最初のインターネットメッセージは、期せずして「Lo and behold(驚いたことに)」の最初の2文字と同じ「Lo」だったことになる。私たちは簡潔で強力、かつ予言的なメッセージを送信したのだった。

当時はまだARPANETと呼ばれていたが、それは政府、産業界、そして学界によって設計された。科学者や学者が、互いの計算機リソースにアクセスできるようにして、研究に必要な大きなファイルを交換し、時間とお金、行き来する手間を節約するためのものだった。ARPA、つまりAdvanced Research Project Agency(高等研究計画局。現在は先頭にDefense=国防を付けて、DARPAと呼ばれる)は、民間企業のBolt BeranekとNewmanに委託して、そこの科学者にルーター、つまりInterface Message Processorを実装させた。 UCLAは、この芽を出し始めたネットワークの、最初のノードとして選ばれたのだった。

1969年の12月の時点では、ノードは4つだけだった。それらは、UCLA、スタンフォード研究所、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、それにユタ大学だ。このような最初期の段階を経て、このネットワークは指数関数的な成長を遂げた。接続されたホストコンピュータの数は、1977年までで100台、1989年までで10万台、1990年代初頭で100万台、そして2012年には10億台に達した。現在では地球の全人口の半数以上に行き渡っている。

その過程で、われわれは予期していなかったようなアプリケーションの出現に驚かされた。それは突如として現れ、またたく間にインターネット上で広範囲に行き渡った。例えば、電子メール、ワールドワイドウェブ、ピアトゥピアのファイル共有、ユーザー生成コンテンツ、Napster、YouTube、Instagram、その他のソーシャルネットワークなどだ。

こんなことを言うと、夢想家のように思われるかもしれないが、初期の段階では、オープンな雰囲気、コラボレーション、共有、信頼、そして道徳規範、といった素晴らしい文化を楽しんでいた。インターネットは、そのようなものとして構想され、育まれたのだ。その初期には、私はARPANETに参加している人を、全員個人的に知っていた。そしてわれわれは、皆行儀よく振る舞っていた。実際、そうした「ネチケット」へのこだわりは、インターネットの最初の20年間には維持されていた。

今日では、インターネットが異論の余地がないほど素晴らしく、オープンで、協力的で、信頼でき、さらに倫理的であると言う人は、まずいない。データと情報を共有するために生まれたメディアが、どうやって、そのような疑わしい情報が交錯する世界になってしまったのか。共同から競合へ、同意から不和へ、信頼に足るデジタルリソースから疑わしい情報の増幅器へと、いったいどうして変わってしまったのか。

その堕落は、1990年代の初頭に始まった。ちょうどスパムが初めて登場したころ、インターネットが消費者の世界に深く浸透するにつれ、インターネットを収益化しようという激しいまでの機運が高まった。これによって、詐欺、プライバシー侵害、偽ニュース、サービス妨害など、数々のダークサイドの勢力が勃興した。

そうして、インターネット技術の進歩と革新の性質も変化した。リスクを回避するために、「ムーンショット」という言葉に象徴されるような、初期の夢想的な文化がないがしろにされ始めたからだ。われわれは、まだこうした変化に苦しめられている最中だ。インターネットは、共通の価値観と正しい事実に基づいて、情報の分散管理、民主主義、そしてコンセンサスを促進するように設計されている。その生みの親たちが抱いていた大志を完全に達成するという点では、これは失望でしかない。

民間勢力の影響力が増すにつれて、彼らの方針と目標が、インターネットの本質を支配するようになった。商業利用の方針が影響力を持つようになると、企業はドメインの登録に対しても課金できるようになり、クレジットカードの暗号化が電子商取引への扉を開いた。AOL、CompuServe、Earthlinkのような民間企業は、やがてインターネットへのアクセス料として月額を請求するようになり、このサービスを公共財から私財へと転換させた。

インターネットを収益化することが、その景色を変えてしまった。一方では、それは大きな価値のある貴重なサービスを実現した。これには、普及した検索エンジン、広範な情報の宝庫へのアクセス、消費者の助成、娯楽、教育、人間同士のつながりなどを挙げることができる。もう一方では、それはさまざまな領域における濫用と支配につながっている。

その中には、企業や政府によるアクセスの制限、経済的なインセンティブが短期間でも企業の利害と一致しない場合にみられる技術開発の停滞、ソーシャルメディアの過剰使用からくるさまざまな形の影響、などを見て取ることができる。

こうした問題を軽減するために、何かできることがあったのではないかと問われれば、すぐに2つの方策を挙げることができる。まず第1に、厳格なファイル認証機能を提供すべきだった。つまり、私が受け取ったファイルは、私が要求したファイルの改変されていないコピーであることを保証する機能だ。そして第2に、厳格なユーザー認証機能も用意すべきだった。つまりユーザーが、自分がそうだと主張する人物であることを証明する機能だ。

そうした機能を準備だけしておいて、初期の段階では無効にしておくべきだった。その時点では、偽のファイルが送信されることもなく、ユーザーが身分を偽ることもなかったのだから。そして、ダークサイドが顕在し始めたときに、そうした保護機能を徐々に有効にして、悪用の程度に見合うレベルまで引き上げることで、悪用に対抗することができたはずだ。そうした機能を最初から提供するための簡便な方法を用意しておかなかったために、今さらそうすることは厄介だという事実に苦しんでいる。その相手は、この広範に拡がったレガシーシステム、インターネットなのだ。

誕生から50年が経過した今、インターネットはこれからの50年でどのように進化するだろうか? それはどのようなものになるのだろうか?

その未来を映し出す水晶玉は曇っている。しかし、私が50年前にも予測したように、それが急速に「見えない」ものになっていくことだけは見通せる。つまり、インフラとして目につかないものになるだろうし、そうなるべきものでもある。

電気と同じくらいシンプルで、使いやすいものになるはずだ。電気は壁のコンセントに差し込むという、拍子抜けするほど簡単なインターフェースで、直感的に利用できる。どのようにしてそこに届くのか、どこから来るのか、知る必要もないし、興味もないだろう。それでも、必要なときにいつでも使えるのだ。

残念ながら、インターネットへのアクセスは、それよりはるかに複雑だ。私がある部屋に入ったとする。その部屋は私がそこにいることを知るべきだ。そして、サービスとアプリケーションを、私のプロフィール、アクセス権、さらに好みに応じて私に提供するべきなのだ。私は、普通の人間とのコミュニケーションと同じように、話したり、手を動かしたり、触れたりすることで、システムと対話できるようになるべきだ。

われわれは、そのようなことが可能な未来に向かって急速に進んでいる。モノのインターネットにより、ロジック、メモリ、プロセッサ、カメラ、マイク、スピーカー、ディスプレイ、ホログラム、センサーを備えた環境インフラが整備されるからだ。そうした目に見えないインフラを、インターネットに埋め込まれた知性を持ったソフトウェアエージェントと組み合わせることで、上で述べたようなサービスがシームレスに提供されるようになる。一言で言えば、インターネットは基本的に、世界中に張り巡らされた神経系のような役割を果たすようになる。

これが、私が考える将来のインフラの真髄だ。しかし、すでに述べたように、アプリケーションやサービスを予測するのは非常に困難だ。まったく予期しなかったものが、爆発的な驚きとともに、忽然と現れることがある。何ともはや、頻繁に刺激的な驚きをもたらす世界規模のシステムを、われわれは作ってしまった。なんて面白い世の中なんだ!

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

米DARPA、傷負戦士のためにスマート包帯を研究中

戦場ほど迅速で効果的な医療が重要な現場はない。DARPA(米国国防高等研究事業局)は、インテリジェント包帯を始めとする患者の要求を予測して自動的に処置するシステムを使って状況を改善しようと考えている。

通常の切り傷や擦り傷は、ちょっと保護してやるだけで、あとは人間の驚異的な免疫システムが引き受けてくれる。しかし兵士ははるかに深い傷を負うだけでなくその複雑な環境は治癒の妨げになるだけでなく予期せぬ結果を呼ぶ。

DARPAの組織再生のための生体電子工学プログラム(BETR)は、新たな治療方法と装置を開発し、「創傷の状況を細かくに追跡し、治癒過程をリアルタイムで刺激することにより組織の修復と再生を最適化する」。

「創傷は生体現象であり、細胞と組織が連携して修復を試みるにつれ条件が急速に変化する」とBETRのプログラム・マネジャー、Paul SheehanがDARPAのニュースリリースに書いた。「理想的な治療は、創傷状態の変化を感知して治療介入することで正確かつ迅速な治癒を促すことだ。たとえば、免疫反応の調節、創傷が必要とする細胞型の動員、治癒を早める幹細胞の分化などへの介入が考えられる」

どんな治療が行われるかは想像に難くない。スマートウォッチはいくつもの生体信号を監視する機能を持ち、すでにユーザーに不整脈などの警告を与えている。スマート包帯は、光学的、生化学的、生体電子的、機械的を問わず得られる信号は何でも使って患者を監視し、適切な治療を推奨し、あるいは自動的に調節する。

簡単な例を挙げると、特定の化学的信号によって創傷がある種のバクテリアに感染していること包帯が検知したとする。システムは処方を待つことなく適切な抗生物質を適切な分量投与し必要な時点で中止する。あるいは、スマート包帯がせん断応力を検知したあと心拍の上昇を検知すると、患者が移動されて痛みを感じていることがわかる。そこで鎮痛剤を投与する。もちろん、これらの情報はすべて介護者に引き継がれる。

このシステムにはある程度人工知能が必要だが、適用範囲はごく限られている。しかし生体信号にノイズが多いときには機械学習が強力なツールとなってデータ識別に活躍するだろう。

BETRは4年間のプログラムでDARPAはその間にこの分野にイノベーションを起こし、治療結果を著しく改善する「クローズドループの適応システム」を作りたいと考えている。このほかにも、戦闘中に重傷を負った多くの兵士が必要とする人工装具のオッセオインテグレーション手術に対応したシステムも求められている。

こうしたテクノロジーが普及することを期待したいが、慌ててはいけない。これはまだ大部分が理論上の話だ。しかし、さまざまな要素がつながって十分間に合うことも考えられる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

地球規模のカオスに隠されたパターンを抽出するAIを創るDARPA

複雑系の因果関係に関するもっとも有名な説明として、一匹の蝶が羽ばたくと、地球の裏側で台風が発生する、というものがある。その説明は思考を刺激してくれるかもしれないが、結局のところ役に立つことはない。われわれが本当に必要としているのは、1つの台風に注目したとき、それを引き起こした蝶がどれなのかを突き止めること。そして、できればその前に、その蝶が飛び立とうとするのを防ぐことだ。DARPA(米国防総省国防高等研究事業局)は、AIによってまさにそれが可能になるはずだと考えている。

この研究機関の新しいプログラムは、毎日のように発生する無数のできごとや、メディアの記事をふるいにかけて、それらの中に含まれる関連性の糸口、あるいはストーリーを識別できる機械学習システムを作ることを目指している。それはKAIROS(Knowledge-directed Artificial Intelligence Reasoning Over Schemas=スキーマによって推論する知識指向の人工知能)と呼ばれている。

ここで言う「スキーマ」は、非常にはっきりした意味を持っている。人間が自分の周囲の世界を理解する際に使う基本的なプロセス、という考え方だ。それによって人間は、関連するできごとを小さなストーリーにまとめている。たとえば、店で何かを買う場合を考えてみよう。通常は、まず店に入ってモノを選び、それをレジに持っていく。すると店員がそれをスキャンして、あなたはお金を払う。その後で店を出るのだ。この「何かを買う」というプロセスは、誰にでも分かるスキーマだろう。もちろんその中には別のスキーマ(製品を選ぶ、お金を払う)を含むことができるし、それがまた別のスキーマ(贈り物を送る、家で料理を作る)に含まれることもある。

こうしたことは、われわれの頭の中で想像するのは簡単だが、コンピュータシステムが理解できるよう、明確に定義することは驚くほど難しい。人間にとっては、長い間慣れ親しんできたことであっても、自明のこととは限らないし、法則に従っているわけでもない。重力加速度によってりんごが木から落ちるのとはわけが違うのだ。

しかも、データが多ければ多いほど、定義するのは難しくなる。何かを買う、というのはまだ簡単な方だ。冷戦や弱気市場を認識するスキーマは、どのように作り出せばよいのだろうか? それこそが、DARPAが研究したいところなのだ。

関連記事:この利口なAIは課せられたタスクをやり遂げるずるい方法を人の目から隠した

「山のような情報、そしてその中に含まれる静的な要素の中から関連性を発見するプロセスには、時間的な情報とイベントのパターンが必要となります。現在利用可能なツールやシステムでは、そうしたことを大規模に実行するのは難しいのです」と、DARPAのプログラムマネージャ、Boyan Onyshkevychは、ニュースリリースで述べている

同機関によれば、KAIROSは、「一見何の関係もないように見えるできごとやデータを認識して相互関係を導き出し、われわれを取り囲む世界に関する幅広いストーリーを作り、伝えることの可能な、半自動のシステムを開発することを目指している」ということだ。

どうやって? 彼らには漠然としたアイデアはあるのだが、専門知識を求めているところだ。問題は、そうしたスキーマは、今のところ人間が労力をかけて定義し、検証する必要があるということ。それなら、最初から人間が情報を調べたほうがマシということになりかねない。そこで、KAIROSプログラムは、それ自身を教化するAIも組み込もうとしている。

初期のシステムは、大量のデータを取り込んで、基本スキーマのライブラリを構築することに限定される。本を読んだり、ニュース記事を追ったりすることによって、上で述べたような、候補となるスキーマの長大なリストを作成できるはずだ。さらにそれによって、愛、人種差別、所得格差など、AIによって扱うことが難しい問題に対するより広範囲でつかみどころのないスキーマに関するヒントを得ることができるかもしれない。また、その他の問題が、それらとどう関わってくるか、あるいは異なるスキーマ同士の関連性についても得るものがありそうだ。

その後で、複雑な現実世界のデータを調べ、作成したスキーマに基づいて、イベントやストーリーを抽出することができるようになる。

軍事および防衛面への応用は、非常に明らかだ。たとえば、すべてのニュースやソーシャルメディアの投稿を取り込んで、銀行の取り付け騒ぎ、クーデター、あるいは衰退傾向にあった派閥の再興などの発生の可能性を管理者に通知するようなシステムが考えられる。諜報活動員は、今現在もこのようなタスクに全力を尽くしている。人間が関わることは、ほぼ間違いなく避けられないだろうが、「複数のソースから備蓄が報告されています。化学兵器による攻撃の記事が広くシェアされ、テロリストによる攻撃の可能性が指摘できます」などと報告してくれるコンピュータのコンパニオンがいれば、歓迎されるだろう。

もちろん、現時点ではそうしたことはすべて純粋に理論的なものだが、だからこそDARPAが研究しているわけだ。その機関の存在意義は、理論を実用化することにあるのだから。もし失敗したら、少なくともそれが不可能であると証明しなければならない。とはいえ、現在のAIシステムのほとんどが、非常に単純なものであることを考えれば、彼らが創ろうとしているような洗練されたシステムは、想像するだけでも難しい。まだ道のりが長いことは間違いない。

画像クレジット:agsandrewShutterstock

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

[ビデオ]ふつうの円形の車輪が地形や地質に応じて三角形になる未来の軍用車両

DARPAは、そのGround X-Vehicle Technologies計画の一環として、未来的でしかも実用的な新しい軍用車両を披露した。イノベーションのひとつである構成を変えられるホイール・トラックは、カーネギーメロン大学のNational Robotics Engineering CenterとDARPAの共同開発だ。しかもそのホイール・トラックは、戦闘用車両を単なる武装を超えて生存性を強化するための設計要素の、ひとつだ。

ビデオでお分かりのように、構成を変えられる(reconfigurable, リコンフィギュラブル)ホイール・トラックは、円形の車輪から三角形のトラック(キャタピラー)への変形およびその逆をなめらかに約2秒で行い、しかも走行時にスピードを落とさずにそれができる。円形の車輪は硬い地面に合い、キャタピラー方式のトレッドはやわらかい地面で武装車両が自由に動ける。

Ground X-Vehicle計画のトップ、Amber Walkerによると、この技術は“車両の戦術的な動きと、多様な地形における行動性を大きく改良する”。…そのアドバンテージは、下図のGIF画像でお分かりいただけよう。

車輪の技術なんて、一見ぱっとしないが、結果は見た目にも印象が強いし、とってもスムーズだから、あらためて見なおしてしまう。

ビデオには、ほかにも見逃せない設計機能が映っている。そのひとつが、窓なし走行技術Virtual Perspectives Augmenting Natural Experiences(V-PANE)で、これは複数のLIDARとビデオカメラの像から、まわりの状況をリアルタイムで作りだす。そしてドライバーは3Dのゴーグルをつけて、VRによる窓からの光景を見る。そのVRは奥行きの把握と再現が強化され、ドライバーの頭の動きにリアルタイムで追従する。もちろん、さまざまな地形データ等も表示する。

画像クレジット: DARPA

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

国防総省のDARPA研究所が改悪改竄ビデオを検出する技術で研究助成事業を展開

メンローパークの非営利研究団体SRI Internationalが、国防総省の研究機関DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency)から、フェイクニュースと戦うための三つのプロジェクトを受託した。すなわちDARPAのMedia Forensics(メディア犯罪捜査)事業は、ビデオや写真がそのコンテンツを意図的に変えられていることを判定するツールを開発している。

そのようなコンテンツでもっとも悪名高いのが、“ディープフェイク(deepfakes)”と呼ばれているやつだ。通常それは、わいせつな画像やビデオに有名人や人気スターの顔だけ貼り付けるというポルノが多い。ディープフェイクを作るソフトは簡単に作れるし誰にでも使えるが、今あるビデオ分析ツールでは、加工された映像と本物の映像を区別できない。

この難問を解決するために組織されたのが、Media Forensicsグループだ:

“DARPAのMediFor事業は、優秀な研究者を集めてデジタル画像技術のある分野を打ち倒したいと考えている。それは現状では改竄(かいざん)者が優位に立っている分野であり、それを、画像やビデオの真正性を自動的に判定する技術を開発し、エンドツーエンドのメディア犯罪捜査事業に利用することによって崩壊させたい。

その技術の開発に成功したら、MediFor事業は改竄を自動的に検出し、その改竄方法に関する詳細情報を提供し、ヴィジュアルメディアの全体的な真正性に関する判断により、問題ある画像やビデオの使用に関する意思決定を支援できる”。〔これは使えない、という判定を助ける。〕

ビデオがとくに危険なアプリケーションだが、改竄は静止画像においても検出が困難であり、DARPAはそれも研究課題としている。

DARPAのMedia Forensicsグループ、略称MediForは、アプリケーションの募集を2015年に開始し、正式には2016年にローンチ、2020年までの予算がついている。このプロジェクトでSRI Internationalは、アムステルダム大学とスイスのIdiap Research InstituteのBiometrics Security & Privacyグループと密接に協働する。アムステルダム大学については、詳しくは彼らのペーパー“Spotting Audio-Visual Inconsistencies (SAVI) in Manipulated Video”を見よ。Idiapの研究グループは、改悪されたビデオに存在するオーディオビジュアルの齟齬を見つける4つのテクニックにフォーカスしている。それらは、1)唇の同期の分析、2)話者の不整合や矛盾の検出、3)シーンの不整合の検出、4)コマ落ちや挿入の判定、である。

この事業で受託した研究には、有望性が認められる。昨年6月に行われた最初のテストでは、数百のビデオの中から、改悪されたビデオの二つの特徴、“話者の不整合とシーンの不整合”を、75%の精度で見つけることができた。2018年5月には、同様のテストをもっと大規模に行い、そのテクニックを磨き、大量のテストビデオを調べられるようにする。

このプロジェクト自体は軍事目的だが、研究チームは今後この事業の目的が、規制当局やメディアや公共団体などがもっと悪質な種類のフェイクニュースと戦っていくためのメインの武器になる、と信じている。

“近い将来、ビデオの改悪や合成のテクニックが大きく進歩する、と予想している”、SRI Internationalの代表者がこう語った。

“そういうテクニックがあれば、ホビイストやハッカーでも非常にリアルなビデオを作って、その人がしなかった/言わなかったことを、している/言っているように見せかけることができるだろう”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

DARPAは自律型ドローン群のための新しいアイデアを募集中

米国防総省の研究部門は、ドローン(無人機。必ずしも飛行するものだけとは限らない)の投入を真剣に検討している。しかも1機ずつではなく、連携した一群としての投入である。The Offensive Swarm-Enabled Tactics(OFFSET)プログラムは第2の「スプリント」(アイデア募集短期プロジェクト:OFFSETプログラムには全部で5回のスプリントが予定されている)を開始しようとするところだ。この期間に、その回のスプリントの中心テーマに基いたシステムの、ラピッドプロトタイプを募集する。この春のスプリントのテーマは「自律性」に関するものだ。

ここでの目的は、センサ、ソフトウェア、あるいはより良いプロペラブレードといった新しいテクノロジーが、ドローンたちが集団として互いに調整し行動する能力を、どのように向上させることができるかに関するアイデアを数多く集めることだ。

具体的には、50機の群れが、お互いにあるいは地上のロボットたちと協力することによって、30分以内程度で「都市内の目的地を確保する」必要がある。これは少なくとも、これから参入を考えている者たちに対して、自身の技術が適用可能か否かを判断させるための「作戦背景」ガイドと成る。

ということで、農場にトラクターよりも素早く種を蒔くことができるドローンは、農民にとっては有益でも、ペンタゴンが興味を持つものかどうかは分からない。一方、都市の戦場に、自律センサーを投下するドローン群のアイデアを売り込むことができるなら、彼らはそれを気に入ってくれるかもしれない。

あるいは、単にコンパクトな地上のライダー(lidar)システムを使って、低コストで可視光も使わず、群れの連動を改善する方法を示すこともできる。あるいは、人間の介入なしに、群れを構成する機体たちに、空中で充電できるようなシステムをデザインするのも良いだろう。

実際、それらはかなり面白いアイデアたちとなるだろう。本プログラムのマネージャーであるTimothy Chungには、この5月にバークレーで開催される私たちのロボットイベントのステージ上で、それらを披露して貰えたらと思っている。Chungはこれだけではなく、Subterranean Challengeその他の沢山のプログラムをDARPA で指揮している。この新しいスプリントの基本ルールを説明するビデオを見る限り、進行は順調のようだ。

参加するために、実際に50機のドローンを所有している必要はない。シミュレータがあるし、それ以外にも価値を示す方法は用意されている。プログラムに関する詳細と、審議のためにあなたの仕事を提出する方法は、FBOのこのページを参照して欲しい

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(翻訳:sako)

画像:Dan Bruins

電力をまったく消費せずに何年も眠り続けるセンサーが、事象が起きたときだけ目覚めて信号を送る

通常の電力や太陽光発電などが使えるところで、常時電源onのカメラを設置することは容易だが、自然の奥地とか地下などの特殊な環境では、電力を一滴も無駄にしたくない。そこでこのほどDARPAで開発された新しいタイプのセンサーは、検知すべき事象が実際に起きるまでは、電力をまったく消費しない。だから、電池を充電しなくても、何年でも現場に放置できる。

このようなセンサーは、廃炉になった原発の深くて長いトンネルの中とか、山奥の廃鉱などに設置すると、電源供給の苦労が要らない。そしてそこに何かが起きたら、直ちにそれを表すデータが送信される。それまでの電力消費量は、ほとんどゼロだ。そこでDARPAはこれを、Near Zero Power RF and Sensor Operation(所要電力がゼロに近いRFおよびセンサーの運用)と呼んでいる。

この難しい要求に、ノースイースタン大学のエンジニアたちが取り組んだ。彼らは自分たちの仕事を、“plasmonically-enhanced micromechanical photoswitch” (プラズモンで強化される微小機械用光スイッチ)と呼んでいる…その技術のすべてを言い表しているね…ぼくの記事はここで終わってもいいぐらいだ。でも、昔教室で居眠りをしていた読者のために、説明の努力をしてみよう。

このセンサーは、赤外線の光波を検出する。赤外線は、目には見えないけど、人体、車、火など、熱のあるところから大量に発生している。しかしそのセンサーは、赤外線が存在しないときは完全に電源がoffになっている。

しかし赤外線が現れたら、センサーのカバーに当たって増幅される。プラズモンは伝導性素材の特殊な振る舞いだが、この場合は赤外線に反応して素材を熱する〔==赤外線が増幅される〕のだ。

エレメントの加熱によって閉じたギャップ(下左)。

“赤外線のエネルギーがセンサーの感知成分を加熱し、それによりセンサーの主要部位に物理的な動きを起こす”、DARPAのプログラムマネージャーTroy Olssonがブログにそう書いている。“これらの動きによって、それまで開(あ)いていた回路成分が閉じ、赤外線が検出されたことが信号される”。

井戸のパドルにようなものだ、と考えてみよう。それは、何年も何もせずにそこにあるが、誰かが井戸に石を投げ込んだら、石がパドルに当たり、回転してクランクを回す。クランクは紐を引っ張り、井戸のオーナーに知らせるための旗を揚げる。ただし、Olssonの説明は、もっとややこしい。

“この技術には複数の感知成分があり、それぞれが特定の波長の赤外線を吸収する。それらが複雑な論理回路を構成し、赤外線のスペクトルを分析できる。そのためこのセンサーは単に環境中の赤外線エネルギーを検出するだけでなく、その発生源(火、車、人、その他)を特定できる”。

“長年、人が維持作業などをせずに放置されているセンサーが、めったにないけど重要な事象を検知できる”、と研究者たちは書いている。たしかに、セキュリティ以外にも用途はたくさんあるだろう。たとえば森じゅうにこのセンサーをはりめぐらしたら、動物の群(むれ)の移動をモニタできるだろう。宇宙では、非常にまれな現象を捉えるかもね。

この技術を説明しているペーパーは、今日(米国時間9/11)発行されるNature Nanotechnologyに載っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

DARPAが「チップレット(チップ構成部品)」を組み合わせてコンピューターを作るモジュール化を推進する

国防総省の研究計画部門(DARPA)は、モジュラーコンピューティングフレームワークの作成に向けた努力を公式に開始した。小さな「チップレット(chiplet:チップを構成する部品)」を組み合わせることによってチップを組み上げることを狙っている。このように奇妙なものを作り上げるには、皆の力を結集することが必要だとDARPAは考えている。実際「イノベーターたちに溢れた大きな集団が必要」なのだ。DARPAはいつも言葉で道を切り拓いて来た。

このプログラムは、昨年発表されたもので、正式名称はCommon Heterogeneous Integration and Intellectual Property Reuse Strategies(共通異種統合IP再利用戦略)というもので、CHIPSと略されている。これまで大学、軍事産業請負業者、そしてもちろん半導体チップメーカーたちと接触を進めていた。そしていよいよ今週には、DARPAと興味を持つ団体が集まり、詳細と期待を分かち合う「キックオフ」が催された。

基本的なアイデアは、特定の機能を合理的な範囲で、標準的なチップレットサイズとフォームファクタに縮小し、それらのチップレットをより大きなボード上で組み合わせることのできるシステムを作成することだ。衛星や偵察機のために、画像処理やストレージを提供するボードが必要だって?ではそれらのチップレットを多数組み合わせよう。低レイテンシの信号処理に重点を置いて、複数のセンサーからの入力を統合したい?では画像処理の事は忘れて、そこに別のパーツを嵌め込もう。

今週のイベントで発表されたスライド (PDF)にはより多くの詳細が示されているものの、プロジェクトはまだ初期段階にあるため、全てがまだ推測の域を出ない。

チップレットがどのようなサイズや形を取るのかもはっきりしていない。それらは大きな集団の中のクリエイターたちとイノベーターたちが決めていくことだ。例えば、追加のRAMやPCIカードを差し込むような、マクロレベルの交換が可能になるものかもしれない。あるいは、製造レベルで焼きこまれてはいるものの、それでも既存のカスタムチップシステムに比べてより柔軟なものになるのかもしれない。

しかし、理想的には、結果として得られる電子機器は、現在のソリューションよりも小型で、多用途で、更に安価に製造できることが望まれる。過去数十年の軍事システムを考えれば、その目標がそれほど困難ではない場合もあるだろう。

DARPAは、なにもかもを最初から作り直すことを望んでいるわけではないということを、強く主張している。むしろ、より柔軟なインフラを作り出すための再整理をしたいのだ。「何でもこなすPC」という旧来のパラダイムが、多くの場合必ずしも最善の解ではなくなっている。それは例えば、新しいインターフェースや標準を確立することを意味するのかもしれない。

DARPAのBill Chappellは、アナウンスの中で次のように語る。「民間の産業から、最高のデザイン手腕、再構成可能な回路構造、そしてアクセラレーターたちを集めることにより、小さな専用チップレットを追加していくだけで防衛システムを構築できるようになる筈です」。

プログラムマネージャーのDan Greenは、CHIPSのためにより勢いある発言を行っている。

「今私たちは、綺麗なイメージ図や単なる言葉を乗り越えて先に進もうとしています、私たちは正に、マイクロエレクトロニクスシステムを考え、設計し、構築するやりかたを変革する努力のために、腕まくりで汗を流そうとしているところです」。

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(翻訳:Sako)

DARPAのXS-1宇宙往還機、ボーイングがプロトタイプの開発を受注

シアトルのボーイング本社ではシャンペンを抜いてお祝いしているに違いない。DARPA〔国防高等研究計画局〕のクールな宇宙往還機のプロトタイプの開発をボーイングが受注することに成功した。このプロジェクトを巡ってボーイング、ノースロップ・グラマン、Masten Space Systemsの3社が競争していた。

XS-1宇宙往還機は研究衛星、偵察衛星などを安価に低軌道に送り込めるようにするのが目的だ。最終的には一回の飛行コストを500万ドルに押さえ、年間最低10回飛行できるようにしたいという。

このプロジェクトはNASA,、空軍、民間企業のハイテクの総力を結集するものになる。軽量で超低温に耐える燃料タンク、マッハ10になる大気圏再突入時の高温に対応した強力な複合素材翼などの開発が必要だ。これにより1.3トンのペイロードを低軌道に乗せる。

こういうスーパー・ハイテク・プロジェクトの常としてデモビデオが制作されている。ただこういうビデオは2005年頃に中学生がありあわせの素材をつなぎ合わせたような出来栄えなのはどうしたわけだろうか。

DARPAのプログラム・マネージャー、Jess Sponableはプレスリリースで、「われわれはXS-1プロジェクのフェーズ1においてボーイングが達成した成果を歓迎している。新しく認可された予算により今後、フェーズ2、フェーズ3に進み、実機の組み立てと飛行を実現させたい」と述べた。

プロジェクトの第2段階は2019年まで続き、この間に設計を完了させ、推進システム(スペースシャトルのエンジンの改良版)のテストを実施する予定だ。その後2020年に10回程度のテスト飛行が予定されている。このテストの最後にはマッハ5以上の速度の飛行を10日で10回行うことになっている。.

XS-1についての最新情報はDARPAのサイトを参照のこと。.

〔日本版〕XS-1は無人機。ボーイング社は開発にあたってジェフ・ベゾスのBlue Originと協力しているという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

飛行中のドローンを空中で捕まえるポータブルな離着陸装置DARPAのSideArm

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軍用機のような形の固定翼ドローンは、離陸は容易だが着陸が難しい。そこでDARPAは、高速で飛行しているドローンを空中で捕まえるポータブルなドローン捕捉システムSideArmを開発した。

SideArmの基本的なアイデアは、航空母艦の甲板にあるフックシステムと似ている。あれを、上下逆さにしたような装置だ。

SideArmは輸送用コンテナに収まり、2人〜4人で組み立てられる。ドローンは同システムの水平状のレール・カタパルトを使って飛び立ち、着陸するときはレール下部にある捕捉機が、その真下を飛ぶドローンを捕まえる(下図)。

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ドローンの背中に出ているフックがワイヤにかかり、機を減速させると同時にネットの位置まで浮上させる。そして鼻部の突起が機体を正しい姿勢で捉える。

この装置のコンセプトとテストを、このビデオで見ることができる:

DARPAのGraham Drozeskiが、プレスリリースで述べている: “SideArmは航空母艦の機能を真似て、ドローンを安全に加速し減速させる。装置はポータブルで低コスト、どんなミッションにも使用でき、地域の特性などに制約されない。現行機だけでなく、将来の無人機でも使えるだろう”。

このシステムはDARPAと海軍の共同プロジェクトTernの一環で、艦船に高価で不可逆的な改造を加えなくても実現可能な、無人航空機システムを目指している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Toyotaが“自動運転車”ではなく“完全無事故車”の研究開発に$50Mを投じ、研究主幹にDARPAのGill Pratt博士を招聘

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今日(米国時間9/4)Toyotaが、同社の(ある種の…後述)自律走行車の研究開発のためにGill Pratt博士を社員として招聘したことを発表した。彼は主にDARPAやMITにおける業績で知られ、DARPAのロボットコンテストRobotics Challengeの創始者でもある。Toyotaは今後5年間で5000万ドルの研究開発費を投じるとともに、MITやStanfordともパートナーする。

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PrattはDARPAに過去5年間在籍し、今日はPalo Altoで行われたあるイベントの会場でToyotaにおける抱負を語った: “目標は事故を起こさない車を作ることだ”。

PrattのToyota研究部門における役職は、“Executive Technical Advisor”(重役級の技術顧問)となる。

まるでGoogleと肩を並べる気のようだが、でもToyotaは、自動運転車を作ることが目的ではない、と言っている。当面は。

Toyotaへの参加についてPratt博士は、こう語る:

“大学とDARPAで過去数十年間自分が研究してきた技術を、人間が置かれている状況を改善することに応用して、最大の効果を上げうる場所が同社だ、との確信を持つに至った。”

でも、ついでに、ほかのこともやってほしいね。とりあえずぼくなんかが欲しいのは、自動運転車だけど。もしもToyotaが、今路上に氾濫しているPriusに対するほどの研究開発努力を自動運転技術に投入してくれたら、うちら、文句ないけどね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

DARPA、1.8ギガピクセルの監視カメラを開発―高度6000mから26平方キロの範囲を撮影して15cmの物体を識別

アメリカ国防省のDARPA〔国防高等研究計画局〕は、無人機に搭載される予定の1.8ギガピクセルの監視カメラ、ARGUS-ISについてより詳細な情報を公開した。このカメラは世界最高クラスの解像度を持ち、15cm程度の対象を6000mの高度から識別できるという。一度に25.9平方キロの範囲を撮影しながら驚くべき解像度で任意のスポットにズームインできる。

このカメラは1基の望遠レンズに対して5メガピクセルの撮像素子368台をアレイ状に配置しており、地表を歩く人間や鳥が飛ぶのもはっきり認識できる。ARGUS-ISはAutonomous Real-Time Ground Ubiquitous Surveillance Imaging System(自律的リアルタイム・ユービキタス地上監視画像システム)の頭文字とされる〔ギリシャ神話の100の目を持つ怪物アルゴスとの語呂合わせ〕

このシステムは毎秒600ギガバイトの情報を生成する。画像処理はカメラ内で行われる。これほど大量のデータをリアルタイムですべて地上に伝送するのはおそらく不可能だろう。そこでDARPAは空中のARGUSが撮影する膨大なリアルタイム画像データから任意の地点を自由に拡大できるPersisticsというシステムを開発した。

上にエンベッドしたビデオは6000m上空から撮影されたものだが、地上で手を振っている人の姿がはっきりと識別できる。もう少し高度を下げればもっと細部まで見えるだろう。驚くべき監視能力だ。

via ExtremeTech

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+