Webデベロッパの電子工作にはとどまらない――超小型ボードEdisonが切り開く未来

11月18日に開催された「TechCrunch Tokyo 2014」の1日目に実施されたセッション「超小型開発ボード、EdisonがWeb開発者に開くIoTへの道」では、インテルの永井寿氏とTechCrunch Japanの西村賢によるトークが繰り広げられた。

Webベースのサービスカンパニーや、「モノづくり」系ベンチャーたちの熱気で溢れるTechCrunch Tokyoは、あるいは巨人インテルにとっては必ずしも居心地がいい場所ではなかったかもしれない。西村からの質問には、米Intelの2014年第3四半期決算で売上高が前年同期比7.9%増の145億5400万ドルと過去最高を記録する一方、「タブレットや携帯電話などのモバイル部門が10億4300万ドルの損失を出したが?」という厳しい内容も含まれていた。

Intelは2014年の1年間にタブレット向けに4000万台分のプロセッサ出荷を目標にしていて、今のところその目標を突破するペースで順調に推移している。すでにタブレットに搭載されるプロセッサでは、数量ベースでIntelはAppleに次ぐ世界2位のメーカーだという。Atomプロセッサを搭載したAndroid/Windowsタブレットの総数はiPadに次ぐ数が出ているそうだ。それにも関わらず、事業としては赤字拡大のフェーズだということだ。

質問を受ける側の永井氏は「苦しい中も乗り越えるのがインテル。データセンター向けのサーバーもあり、食いっぱぐれはない」と率直に回答する。

セッションでの中心的な話題は、Intelの組み込み分野での最新の動き、特に超小型のボードコンピュータ「Edison」を中心とした取り組みについてだ。セッションのタイトルからくみ取れるように、IntelはEdisonの投入により「流れ」を作り出そうとしているのだ。

昨年のTechCrunch Tokyo 2013ではインテルはQuarkプロセッサ搭載のボード「Galileo」を披露したが、今年披露したEdisonはGalileoより小さく高性能だ。500MHz動作のデュアルコアAtomプロセッサを搭載しLinuxも普通に動く。Arduino互換ボードも用意し、豊かなArduinoエコシステムも味方に付ける。

西村は「(Edisonは)アキバだと7000円とかで売ってるんですよね。10月25日から」と語る。この指先でつまむようにして持たないといけないほど小さなボードは、Linuxが走るx86マシンなのだ。

TechCrunchでは、TechCrunch Tokyoに先駆けるかたちで11月15〜16日にハッカソンを開催していた。西村はそれを振り返って「ハッカソンでNode.jsを使っている人がいて。組み込み系のI/OをNode.js経由でWebから使える。まったく別世界だと」と話を振ると、永井氏は「Webデベロッパに、スマホだけでなくIoT(Internet of Things)のハードウェアまでいじって遊んでいただこう、というところは期待している」と返した。

Edisonは、工夫すればウェラブルなデバイスに組み込めそうなほど小さく、それでいてLinuxが動き、Node.jsのような高レイヤーのソフトウェアスタックも動く本物のコンピュータだ。マイクロコントローラを核としたArduinoボードがMakerたちに盛んに使われている中、より高度なEdisonの可能性に期待するのは自然なことだ。

Linuxが動く超小型ボードと聞くと、どうしてもRaspberry Piのことを思い出す。EdisonはRaspberry Piとは異なりビデオ出力は付いていない。「Edison自体から絵を出す(モニターに出力する)ことは考えてない」と永井氏は言う。「HTML5ベースのWebアプリという形ならUIもできますよね?」と西村。「スマホ側からコントロールするかたちのアプリを作りれます」と永井氏。

ここで「Webデベロッパへの間口を開くのが大きな戦略ですか?」と西村が聞く。永井氏はこう答える。「Webデベロッパが電子工作系に取り組むというだけでなく、もっと期待できるものがあります。今までネットにつながっていなかったシステムにも、Edisonとセンサを載せて、情報を集めて分析できる。これが従来型の開発だとコストが大きいが、そこにWeb開発の知見を持ち込んで、より合理的に作れるようになると期待しています」。

Edisonが組み込まれた多種多様な仕掛け。それを高レイヤーのソフトウェアスタックを駆使してWebデベロッパが生命を吹き込む――そんな未来像への期待がこのセッションからは伝わってきた。

最後に永井氏が紹介したのは、Web APIをマネージするソリューションを持つMasheryだ。最近Intelは同社を買収した。「プログラムレスでWeb APIのマネージができる」と永井氏はメリットを語る。西村は、「Webデベロッパには、これから仕事がいっぱいある」とまとめ、セッションを締めくくった。


TechCrunch Tokyoで若手独立系ベンチャーキャピタリスト2人にスタートアップの「今」を聞く

新聞やビジネス誌でも「ベンチャーブームの再来」なんて文字が踊るようになって久しい。たしかに数年前に始まったインキュベーションプログラムは成熟度が増して、そこから優秀なスタートアップが生まれつつある。10月末に開催されたのIncubate Campなども、僕は行けなかったのだけれども審査員やメディアからはサービスやプレゼンのレベルの高さについて聞くことも少なくなかった。またIPO市場を見ても、最近話題となった弁護士ドットコムとクラウドワークスのマザーズ上場を始めとして活況を呈している。もちろん上場までの期間を考えると、直近に創業した会社ばかりというわけでもないのだけれど。

佐俣アンリ氏

だが果たしてこれはブーム、つまり一過性のものなのだろうか。僕はそう思っていないし、そうならないためにできることはやっていきたいと思っている。僕たちがまず出来るのは、新しいプロダクト、サービスを生み出す人たちを取材して正しく伝えることだし、ベンチャー、スタートアップという東京の渋谷や六本木周辺を中心にしたコミュニティの”業界ごと”を“世の中ごと”にすることなんじゃないか。TechCrunchの編集部にジョインなんて記事で華々しくデビューしてしまった(させてもらった)者としてそう考えている。

僕が一過性だと思わない理由はスタートアップを取り巻くエコシステムの拡大だ。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、インキュベーター、士業、監査法人、さらには大企業の新規事業担当者など、スタートアップを取り巻く環境はここ数年で大きくなり、正直取材をするだけでもひと苦労になっている。もちろん少なくないプレーヤーが失敗してはいるのだけれど、全体としてはより大きなものに成長している。投資額だってそれに合わせて大きくなっている。CrunchBaseにある地域ごとの投資マップ(こちらは2014年10月分)を見ても毎月の投資額がそれなりに大きいことが分かるし、CB Insightsの記事によると、東京での資金調達額も過去2年(2012年11月〜2013年10月と2013年11月〜2014年10月)を比較して約2割増だそうだ。

木下慶彦氏

さて、11月18日〜19日に開催するTechCrunch Tokyo 2014では、そのエコシステムの中から若手の独立系ベンチャーキャピタルにスポットを当てて、スタートアップを取り巻く環境について聞いてみたいと思う。11月18日夕方のセッション「独立系ベンチャーキャピタリストが語る投資の今とこれから」には、ANRI General Partnerの佐俣アンリ氏、Skyland Ventures 代表パートナーの木下慶彦氏に登壇頂く予定だ。2人はそれぞれ20代にして自らの手でベンチャーキャピタルを立ち上げ、投資を行ってきた。

ANRIは前述のクラウドワークスのほか、DeNAが買収したペロリなど、すでに投資先のイグジットの実績があるし、Skyland Venturesも投資先の八面六臂が7月にリクルートなどから4.5億円の調達。トランスリミットは対戦型脳トレアプリ「BrainWars」が現在世界500万ダウンロードを達成し、さらにLINEなどから3億円を調達。それぞれサービスの拡大を進めているところだ。

このセッションではそんな2人に、どうして自らベンチャーキャピタルを立ち上げるという選択肢を選んだのか、今どういった視点で投資を行っているのか、さらにはスタートアップを取り巻く環境の今とこれからについて聞いてみたいと思っている。開催まで間もないが是非とも2人の話を聞きにきて欲しい。

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TC Tokyoスタートアップバトル出場サービス – 全自動会計ソフトのfreeeがリリース

freee logo

昨年11月に開催されたTechCrunch Tokyoスタートアップバトルに出場してくれたCFOが全自動クラウド型会計ソフトfreeeのリリースを発表した。このサービスは従来の面倒な経理業務をクラウド上で行ってくれるサービスだ。

本誌では昨年12月にはシリコンバレーのベンチャーキャピタルDCMから5,000万円の資金を調達した際にも取り上げているが、ロゴのイメージが大幅に変更されたので気づかない方も居るかもしれない。特徴的だった雲の上で足を組んだおじさんのロゴは廃止され、素早いイメージのツバメに変更された。

freeeは既存の会計サービスと最終目標は同じだが、仕組みが興味深い。ユーザーの銀行やクレジットカードのWeb口座をfreeeと同期し、入出金明細を取得することでデータを解析してくれる。

解析したデータは自動的に仕訳してくれるので、Web上に履歴が残っているものならばほとんど自分で作業をする必要はない。例えば、明細に「タクシー」という単語が入っていれば、「旅費交通費」に紐づけるように単語ごとに適切な仕訳をしてくれるそうだ。

もちろん、明細によっては的確に仕訳されないこともあるだろう。CFO代表取締役の佐々木大輔氏によると、ベータ版運用時にはクライアントにもよるが、精度は7割から8割程度だったという(銀行よりもクレジットカードの方が詳しく記載されているので、クレジットカードの方が精度は高くなる)。

8割程の精度があれば、かなり経理業務の負担が軽減される。しかし、Web口座をサービスと連携することには抵抗を持つユーザーは多いだろう。そのためfreeeはこの課題をクリアしなければならない。

この点に関してはfreeeは個人情報の取扱いにおいて一定基準の安全性を確保している証拠であるTRUTe(トラストイー)による認証を取得してあるし、データ自体はファイアーウォールで遮断された場所に保存されてあるので安心して欲しいと佐々木氏はいう。

それでも、ユーザーの中には最初はWeb口座を連携せずにCSVでファイルをアップロードし、仕訳をする企業もあるだろう。だが、何度も繰り返し利用するうちにfreeeの利便性が不安に勝ち、最終的にはWeb口座を連携してくれると考えているそうだ。

総務省によると日本の中小企業における平成24年度のクラウドサービス利用率は17パーセント(米国は54パーセント)であり、佐々木氏によると、クラウド型の会計ソフトとなると利用率1パーセント程度だという。

米国ではクラウドサービス利用率54パーセントのうち、ある一定の割合は会計ソフトも含まれているというので、日本でも浸透するのは時間の問題かもしれない。

今後の展開としては、請求書の作成や管理機能、APIの提供、ネイティブアプリの開発などを予定している。

freeeは本日から6月末までは全て無料で利用でき、その後はフリーミアムモデル(無料、月額980円、1,980円)で提供される。