今年もやるぞTC Tokyoスタートアップバトル!応募資格は創業3年まで締め切りは9月30日

開催まで2カ月を切った日本最大級のスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。8回目となる今年は、11月15日(木)と16日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催する。

昨年はTechCrunch Tokyoに約2500人が集まったが、やはり最も盛り上がったのは「スタートアップバトル」だった。創業3年までの新進気鋭のスタートアップがステージ上で熱いピッチを繰り広げる、このイベント最大の目玉だ。

例年100〜150社から応募が寄せられているが、今年は9月14日で締め切った仮登録にすでに100社近くが集まるなど例年以上に熾烈な戦いとなる予感。編集部はすでにワクワクが止まらない。本登録の締め切りは9月30日23時59分となっている。もちろん仮登録なしでも応募できるので、登録を済ませていないスタートアップ企業があればぜひ参加を検討してほしい。応募条件、書類審査員は以下のとおりだ。

応募条件

  • 未ローンチまたは2017年10月以降にローンチしたデモが可能なプロダクトを持つスタートアップ企業であること。
  • 創業年数3年未満(2015年10月以降に創業)で上場企業の子会社でないこと。

書類審査員

  • 有安伸宏氏 起業家・エンジェル投資家
  • 今野穣氏 グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー、Chief Operating Officer
  • 澤山陽平氏 500 Startups Japan マネージングパートナー
  • 西田隆一氏 B Dash Ventures ディレクター
  • 田島聡一氏 ジェネシア・ベンチャーズ ジェネラル・パートナー
  • 和田圭祐氏 インキュベイトファンド 代表パートナー
  • 吉田博英 TechCrunch Japan編集統括
  • 木村拓哉 TechCrunch Japan編集記者
  • 菊池大介 TechCrunch Japan編集記者

投資家や大企業の新規事業担当者も多く参加するTechCrunch Tokyoでは、スタートアップバトルをきっかけに出資が決まったり、優秀な人材の採用につながることも少なくない。みなさんの応募を心待ちにしている。

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TC Tokyo団体・前売り券の販売開始!スタートアップの「いま」を知る絶好の機会

11月15日(木)と16日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催される日本最大級のスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」まで2カ月を切った。9月19日からは、一般入場者向けの前売りチケットと、主に企業やまとめ買い向けの団体チケットの販売が始まっている。前売りチケットは1枚3万円、団体チケットは5枚以上の一括購入が条件となるが1枚2万円とオトクだ。

なお、前売りチケットは10月31日までの期間限定、団体チケットはTechCrunch Tokyoの開催当日まで購入できる。ここでは、改めて続々と決定している登壇者を紹介しておこう。現在、絶賛交渉中の登壇者も複数人いるので決定まであともう少し待ってほしい。

Julio Avalos氏(GitHubチーフ・ストラテジー・オフィサー兼ジェネラル・カウンセル)
GitHubは、ソースコードをホスティングするソフトウェア開発プラットフォーム。Avalos氏は、2012年にGitHubにジョイン。同社では経営陣および取締役会との連携を推進、ビジョンの定義および事業の管理運営を担うと同時に、法務や政策、人材、ソーシャルインパクト、戦略的パートナーシップを監督している。Avalos氏には今後のGitHubの戦略について聞きたいと思っている。

堀江裕介氏(dely代表取締役)
delyは、レシピ動画サービス「クラシル」などを展開するスタートアップ。2016年2月にサービス開始したクラシルは現在までに1200万以上のダウンロード件数、290万人を超えるSNSフォロワー数を獲得するまでに成長している。また、ヤフーによる連結子会社化が発表されて話題になった。堀江氏には、彼の頭の中にある1兆円企業になるまでのロードマップを聞く予定だ。

Long N. Phan氏(Top Flight Technologies CEO)
Top Flight Technologiesは2014年創業で、ドローンの研究開発と運用を進めることで、将来的に「空飛ぶクルマ」の実現を目指す米国スタートアップ。Long Phan博士からは、空飛ぶクルマというワクワクする話を聞けそうだ。

林 隆弘氏(HEROZ代表取締役CEO)
HEROZは、人工知能を活用したインターネットサービスの企画・開発・運営を手がける日本のスタートアップ。2017年には将棋AI「Ponanza(ポナンザ)」が現役将棋名人に勝利するなど、HEROZの技術力にいっそうの注目が集まった。林氏には、上場年となる今年に改めて創業当初を振り返り、氷河期と呼ばれる時代に起業家になることで得た経験、学び、苦労を大いに語ってもらいたいと考えている。

Harinder Takhar氏(Paytm Labs CEO)/中山一郎氏(PayPay社長)
paypay_nakayamapaytm_halisonPayPay(ペイペイ)は、ソフトバンクとヤフーの合弁会社で、2018年秋よりバーコードやQRコードを使って決済ができるスマホ決済サービスを開始する。同サービスを提供するにあたって同社は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先であるインドのPaytm(ペイティーエム)と連携。Paytmは、すでに3億人以上のユーザーと800万店の加盟店にサービスを提供している決済サービス事業者だ。TechCrunch Tokyoでは、元PaytmのCEOで、現在はPaytm LabsのCEOを務めるTakhar氏と、PayPayの中山社長に登壇いただき、モバイル決済の最新事情について語ってもらう予定だ。

芳川裕誠氏(Treasure Data CEO)
A1O8H0568.jpg2011年にCEO兼共同創業者の芳川裕誠氏ら3人の日本人がシリコンバレーにて立ち上げた。今年7月に、ソフトバンクグループ傘下のコンピュータチップ設計企業ARMホールディングスに買収されたことで、国内での認知度も一気に高まった注目の企業。芳川CEOには、日本人が異国の地で創業した理由や苦労したことなどの創業ストーリーだけでなく、近年あらゆる分野で重要度が増しているビッグデータ解析について興味深い内容を聞き出したいところだ。

小泉文明氏(メルカリ取締役社長兼COO)
メルカリについては、もはや説明不要かもしれない。フリマアプリで革命を起こした日本では希有なユニコーン企業。現在では子会社のソウゾウが「次のメルカリ級事業を創る」をミッションに掲げて、旅行領域での新規事業開発を進めている。さらに昨年には金融関連の新規事業を行うためにメルペイを設立したことも記憶に新しいだろう。小泉社長には、メリカリの上場について振り返っていただいたうえで、今後の展望についても語ってもらいたいところだ。

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「1年後の月間流通額400億円を目指す」連続起業家・木村新司氏が語った個人間決済の未来

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2016年11月17~18日に開催されたイベント「TechCrunch Tokyo 2016」。初日のセッションには、AnyPay代表取締役の木村新司氏が登壇した。オンライン決済サービスを開発するAnyPayは2016年6月の設立。9月にはサービスを正式ローンチした。モデレーターはTechCrunch Japan編集部 副編集長の岩本有平が務めた。

木村氏と言えば、これまでに数回のイグジットを経験している連続起業家であり、個人投資家としても約20社に投資をする人物。そんな同氏がなぜ多くのプレイヤーが存在する決済の領域で起業をしたのだろうか。

シンガポールで感じた日本の決済の課題

木村氏が決済に挑戦することを決めたのは2つの理由がある。1つは、2014年から木村氏が拠点を移しているシンガポールで、日本と異なる決済事情を見たことだ。シンガポールの生活では、当たり前のようにオンライン決済サービスが利用できる。移動にはUberやタクシーを利用し、ランチにはfodpandaDeliverooUberEATSなどのデリバリーサービスを利用している。また普段の買い物にはRed MartLAZADAなどのショッピングサービスを使っているのだが、それらすべてのサービスで、Apple PayPayPalでの支払いができる。その際、わざわざ新たにアカウントを作成する必要すらないのだ。「日本ではようやくApple Payが始まりましたが、ずっと海外とのギャップを感じていました。これが立ち上げの1つ目の理由です」(木村氏)

また2つ目の理由として、「Webでもお金を払えることを知った人が増えたこと」を挙げる。メルカリやラクマなどのフリマアプリの流行を契機として、都心はもちろん、地方のユーザーすらも、「ウェブでお金を払う」という体験をし始めた。これによって、お金を払うことが簡単にできることに気づいた人が多いと感じる一方で、サービスの外では個人間のお金のやり取りができないことに疑問を感じていたという。「個人間のお金のやり取りがもっとできてもいいと思うんです。それができないのはおかしいなと思って。今やったほうがいいと考えるようになりました」(木村氏)

「個人と個人の間での決済が重要である理由」

ウェブでお金を支払う体験に抵抗がない人が増えたと言っても、決済市場にはすでに多くのプレーヤーがいる。国内ではコイニーの「Coineyペイジ」やBASEの「PAY.JP」がスターとアップとして先行しているほか、海外でもでも先ほど例にも挙げたApple PayやPayPal、木村氏が度々口にするPayPal傘下の「Venmo」などがある。

木村氏はそれぞれのサービスにはそれぞれのポジショニングがあるとした上で、AnyPayは「近くにいる個人間の決済にポジション」を取ることを意識していると語る。

「これまでのサービスは、個人間決済と言っても、遠くの人と遠くの人のための決済が多い。我々は近くの人同士でも使える、現金でやりとりされているものを置き換えることが目的」「コミュニケーションはスマホでオンラインになったのに、お金はオンラインではやりとりができない。本来お金とコミュニケーションとは密接な関係がある。例えば買い物や食事、友達との金銭の授受もコミュニケーションと繋がっている。そんなコミュニケーションの中でも使えるようにしたい」(木村氏)とのことで、あくまでもCtoCを中心とした個人間、しかも日常生活で触れあえる距離にいる友人や家族のような、小さいコミュニティで利用されるサービスを目指していることを強調した。

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AnyPayはバイラルで成長、「サービスの決済」が中心

AnyPayのローンチ後の展開に話が移ると、順調に成長を遂げていると語る。「滑り出しは好調で、最初の想定を超えた数値を出しています。決済ビジネスは小さい顧客獲得が重要なので、広告費を出してユーザーを獲得し続けるようなものではなく、バイラルで獲得していくものです。バイラルでの獲得が順調なので、安心しています」(木村氏)

さらに、AnyPayの現在の利用方法、用途についてもこう語る。「現在は物販、サービス、チケットという形で利用方法を提示していますが、これまで個人の決済システムが持てなかったこともあって、『サービス』での利用が大きいです。例えば個人で英会話教室を受けていて、料金を支払いたいのに現金がない。そんなときにATMでお金を下ろす必要もなく、決済をすることができるのです」とし、サービスでの決済利用が多いことを紹介した。

今後は利用方法として多いものに注目して、ユーザーが利用しやすい「目的」を作っていくという。今後の利用方法を見て、多く利用されている、課題の大きい問題を切り出していくとのことだ。

「paymoはユーザーの目的をサポートする決済アプリ」

また木村氏は今回のセッションで「paymo(ペイモ)」という新サービスを立ち上げることを発表した。「AnyPay」はブラウザで利用可能なオンライン決済サービスだが、paymoはアプリサービス。決済のみにフォーカスをして開発を行っているAnyPayと比べて、「個人で使えるシチュエーション・目的」を明確にし、無意識に利用しやすいサービスにすると語る。

paymoでは、個人間のお金のやり取りを、サービスECの切り口を通して簡単にしていくという。例えば、「ココナラ」や「TimeTicket」ではサービスを“チケット”として扱っているように、売るものをわかりやすくする)しかし、あくまでも決済が軸になるという点は変わらない。「paymoはメディアではなく、決済サービスです。なので、ユーザーはサービスの中で出会うのではなく、いつものコミュニケーション、いつもの出会い、そこで必要となる決済をpaymoで行うというモデルです。サービス内で出会いを求めるメディアとはそこが違います」(木村氏)

なおAnyPayでは、1月19日にpaymoの詳細をあきらかにするとしている。

「個人が無駄に信用を消費する社会をなくす」

今後は国内でのサービス展開はもちろん、海外の展開も視野に入れているというが「まずは東南アジアが中心」だという。さらに、個人間決済に未来については「やはり、個人でお金を送れるようにしたい。個人同士でお金のやり取りをするとき、オフラインの繋がりでも、オンラインで支払うことが出来る世界を目指す」と語った。加えて、日本ではあまり普及していないデビットカードとスマートフォンの連携についても視野に入れていると語った。

AnyPayはプレーヤーの多い決済市場で、独自のポジショニングを築き上げ、日本の決済を変えることはできるのか。同社は2017年には社員数100人、月間流通額は400億円を目指す。

「リスクを恐れてはダメ、とにかくチャレンジすべき」 Gusto共同創業者が語った事業成長の秘訣

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2016年11月17日から18日にかけて、東京・渋谷で開催されたTechCrunch Tokyo 2016。18日の午後には、給与支払い業務を始めとするクラウドベースの人事サービス「Gusto」を手がけるGusto共同創業者でCTOのEdward Kim(エドワード・キム、以下キム)氏を迎え、5000万ドル(52億円)を調達するまでの道のり、そして起業家へのアドバイスを語った。

「Why not me? (オレにだって)」という気持ちで起業の道へ

ドイツの自動車メーカー「フォルクスワーゲン」の研究所で、エレクトリカルエンジニアリングのエンジニアとしてキャリアをスタートさせたキム氏。順調にエンジニアのキャリアを積んでいた彼が、起業を志すようになったのは2007年。Y Combinatorが主催しているStartup Schoolに参加したことがきっかけだ。

同世代の起業家が事業をセルアウト(売却)して、数億円という大金を手にする。そんな姿を見て、「Why not me ? 」——自分にだってできるかもしれない——と考えるようになったという。

その1年後、2008年にキム氏はWiFiデジタルフォトフレームを製造・販売するスタートアップ「Picwing」を立ち上げる。ガレージの中で一つひとつ手作りでWiFiデジタルフォトフレームを作っていたのだが、途中でキム氏はハードウェアの難しさを痛感することになる。

「ハードウェアのスタートアップは物理的に大変。資本もないので、製造ラインをつくることもできない。この事業を続けていくことは難しいと思いました」(キム氏)

また経済環境の悪化もPicwingにとって大きな壁となった。2008年はリーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発した“リーマンショック”が起きた年。資金繰りも上手くいかず、事業は立ち行かなくなってしまう。そんなキム氏に追い打ちをかけるかのように、トラブルが発生した。

ガレージでWiFiデジタルフォトフレームを組み立てているとき、工作機械のドリルを落とし、腕に穴が空いてしまった。すぐさま病院に運ばれ、手術を受けることができたのだが、キム氏はこの出来事を契機に、事業のピボットを決意したという。

ハードウェアの難しさを知ったキム氏は、Picwingの事業をWiFiデジタルフォトフレームから撮影した写真を紙にプリントし、毎月2回指定された宛先に写真を送ってくれるサブスクリプションサービスに転換した。

PCやモバイル向けのアプリから写真をドラッグ&ドロップするか、特定のメールアドレスへ写真を添付して送るだけという簡単な設計が、「孫の写真を祖父母に送りたい」という30〜40代の男女に大ヒット。ハードウェアを諦め、ソフトウェアの開発に注力していった結果、成功を手にすることができたのだ。会社が急成長していく中、経営者としてキム氏は様々な悩みに直面したが、そんなときに役立ったのがY Combinatorのメンターの教えだった。

「定期的にパートナーと会えるのが、Y Combinatorの良さだと思います。会社が大きくなっていくと、様々な問題が発生するのですが、メンタリング中にメンターの人から『いい問題があることを有り難いと思え』と言ってもらえたんです。成長する中で発生する悩みは、いい悩みだから、悩まなくていいと。これはすごく自分の助けになりました」(キム氏)

そして2011年、キム氏は100万ドル弱でPicwingの事業を売却した。

TechCrunch Japan編集長の西村賢(左)とGusto共同創業者でCTOのEdward Kim氏(右)

モデレーターを務めたTechCrunch Japan編集長の西村賢(左)とGusto共同創業者でCTOのEdward Kim氏(右)

お金はたくさん入ってきたけど、退屈になってしまった

起業から3年後、キム氏は経営者として初めてエグジットを経験したわけだが、彼の挑戦は止まらない。Androidアプリの開発に興味を持ったキム氏は、2度目の起業に挑戦することを決めた。立ち上げた事業は、クラウド上で複数のAndroid実機を使ったテストができるサービス「HandsetCloud.com」だ。

当時、iOSに遅れをとっていたAndroid。ディベロッパーを対象とした、Androidアプリのテストサービスは市場的にも求められているものということはキム氏自身も感じとっていた。開発者だったこともあり、サービスの立ち上げにそれほど時間はかからなかった。

ユーザーの反応を確かめるべく、早速HandsetCloud.comを公開してみると、多くのディベロッパーをサービスを使ってくれて、見る見るうちに事業は成長。あっという間に年間100万ドル(1.1億円)の売上を上げるほどの規模になった。

しかし、キム氏は自分のやっていることに違和感を覚え始める。

「多くの人たちにHandsetCloud.comを使ってもらえて、お金はたくさん入ってきたんですけど、退屈だなと思いました。これをずっと続けても、先が見えているなと」(キム氏)

そう思ったキム氏は、事業の売却を決意。具体的な金額は明示されなかったが、200〜300万ドル程度で事業を売却。2度目のエグジットを経験することになった。

旧来の給与支払いサービスは高くて、使いづらい

2社の売却を経験したキム氏が、次に目をつけたのが給与支払い業務だった。アメリカに個人経営の中小企業がたくさんあるのだが、その多くが給与の支払いに関して問題を抱えていた。そこを解決すべく、キム氏が2011年に立ち上げたのがGusto(当時はZenPayroll)だ。

もちろん、Gustoが登場するまでにも給与支払いの業務をウェブで一元管理できるようにするサービスはいくつかあったが、そのどれもが利用料金が高く、中小企業にとっては使いづらいものだった。そんな状況を踏まえ、Gustoは中小企業が気軽に使えるよう、利用料金を低く設定。

「アメリカのは50もの州があるので、それだけ多くのビジネスチャンスがある。ただ、いきなり全ての州に対応するのではなく、カリフォルニアからサービスを開始し、少しずつ利用可能な州を増やしていきました」(キム氏)

Gustoは利用企業数の増加に合わせるかのように、サービスも拡大。最初は給与支払いのみだったが、休暇申請や401K、保険業務にも対応するようになっていった。こうしてGustoの創業から4年後、5000万ドル(52億円)を調達するユニコーン企業となった。

2度のエグジットを経験し、3社目はユニコーン企業となったキム氏から、イベントの最後、起業を志す人たちに向けてメッセージが送られた。

「何かアイデアがある、夢がある、世の中にないものを提供していきたいと思っているなら、リスクをとることを恐れずにチャレンジしてほしい。もし失敗したら、どこかの社員になればいいだけ。やってみなければ分からないことは世の中にたくさんある」(キム氏)

そして、スタートアップを成功させるための秘訣も語ってくれた。

「スタートアップの成功指標は、強い決意をもった創業者がいるか否か。事業を創っていく過程で、もちろんツラいこともあるし、もうダメだと思うこともある。ただ、創業者が強い決意を持っていれば、周りの環境がどうであれ必ず前に進んでいってくれるはずです」(キム氏)

既存事業の成長は、未来に価値を生み出さない——Y Combinatorユニス氏

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2016年11月17日〜18日にかけて渋谷ヒカリエで開催された「TechCrunch Tokyo 2016」の2日目朝、「シリコンバレーの最前線ー増える大企業との提携・買収」と題したセッションが行われた。シリコンバレーを語るのに欠かせない著名アクセラレーター・Y CombinatorのパートナーのQasar Younis(キャサー・ユニス)氏と、Scrum Venturesゼネラル・パートナーの宮田拓弥氏が登壇した。

Y Combinatorは2005年に設立されたシリコンバレーのアクセラレーターで、スタートアップに投資を行い、3カ月のプログラムを通じて、様々な支援を行っている。最終日にはDEMO DAYが開催され、他の投資家へプレゼンし、資金調達を行っている。プログラムの卒業生には、Airbnb、Dropboxなど世界的に活躍するスタートアップがいくつもある。ユニス氏自身も起業家で、顧客と店主を結び、店に対しフィードバックメッセージを送信できるサービス「TalkBin」を2010年にGoogleに売却した経験があり、またY Combinatorのプログラムにも2011年に参加するなど、起業家のバックグラウンドを持つ。

一方、Scrum Venturesは2013年に設立された、サンフランシスコを拠点をおくベンチャーキャピタル。幅広い分野のスタートアップ50社以上に投資し、またアメリカのスタートアップのアジア進出の支援も行っている。宮田氏も元起業家で、日本とアメリカでエグジットを経験しており、自分に似た著名人を教えてくれるサービス「顔ちぇき!」を提供するジェイマジックの創業者で、その後2009年にモバイルファクトリーへ売却している。

この元起業家であり、現在はシリコンバレーを代表する投資家が、シリコンバレーの動向と〜について語った。

基準は「エンジニアリングのタレントがあるところ」

Scrum Venturesゼネラル・パートナーの宮田拓弥氏(左)とY CombinatorのパートナーのQasar Younis(キャサー・ユニス)氏(右)

Scrum Venturesゼネラル・パートナーの宮田拓弥氏(左)とY CombinatorのパートナーのQasar Younis(キャサー・ユニス)氏(右)

Y Combinatorは前述の通り、多くの成功したスタートアップを生み出している。今やシリコンバレーに限らず、全世界のスタートアップが応募しており、その応募数は6000〜7000に及ぶという。その中から約500社へインタビューを行い、約100社がプログラムに参加でき、「ファンディングは10分で決めている」という。

ここ2〜3年で、更に参加するスタートアップの多様化が進んでいるように感じられる。応募は全世界から受け付けており、実際に国やバックグラウンドは関係なく、またテクノロジー企業だけでもないが、ユニス氏は選考基準について、「エンジニアリングのタレントがあるところ」と述べた。また「YCモデルを他の地域で展開しないのか?」という宮田氏の質問に対しては、「中国、インドでは考えているが、エコシステムが異なるので、現地にオフィスを構えてやる必要がある」と話した。

現在、Y Combinatorのメンバーはパートナー(編集注:VCにおけるパートナーとは、投資担当者を指す)が18人、スタッフが20人。ユニス氏自身は、2013年からY Combinatorでスタートアップへ関わり、2014年に正式にパートナーに就任しているが、この時期に組織が強化され、メンバーが増えたという。ユニス氏自身が「私たちもスタートアップだ」と話していた。

内部組織を強化しながら、更にスタートアップエコシステム構築を進めるY Combinatorが、2015年7月に発表した「YC Fellowship」についての話題を宮田氏が投げかけた。TechCrunchの読者であればご存知かもしれないが、YC Fellowshipとは、8週間のプログラムでまだプロダクトがないスタートアップに対して、助成金(株式を取得せずに提供される)を与えるもの。従来プログラムとの違いは、対象がアイデア段階のスタートアップであること、プログラム期間が短いこと、助成金があること、またシリコンバレーへの移住が必須でないことが挙げられる。

ユニス氏はYC Fellowship開始の背景を、「昔に比べて、Y Combinatorに入るのも難しくなってきたことと、入る前から起業家が成長できる場を作ること」と話す。幅を広げるという意味で、規模は年間200社程度を想定しており、リモートで支援、教育を行うという。インターラクティブにしていきたいと言いながらも、規模が大きいだけに、難しさは見える。なお通常でもパートナー1人あたり、15社程度を担当しているという。

既存事業の成長は、未来に価値を生み出さない

近年、日本で注目されている大手企業とスタートアップの連携について、シリコンバレーに目を向けると、同じように大き動きがいくつもある。自動運転システム開発を手がけるCruiseのGMによる買収、ライドシェアの通勤バンを運営するChariot(宮田氏のScrum Venturesの投資先でもある)のフォードによる買収などが挙げられる。

これら大手企業による買収の中でもとくに自動車領域が活発であると宮田氏は述べ、ユニス氏は「ソフトウェア、機械学習が自動車業界に必要とされ、(ハードに強い)大企業による買収が行われた。自動車業界は10〜20年で大きな変化が起きる」と話した。ちなみにユニス氏のキャリアは、自動車業界出身で、GMやBoschでプロダクトマネージャーも経験している。また、他の業界についても、今後スタートアップの持つ技術が必要となり、今日自動車業界で多く見られた買収・連携の動きは現れるとユニス氏は話した。

スタートアップが持っているものとは何だろうか。予算や人員で考えると、当然ながら大企業が強いのだ。この点について、「従業員と起業家は異なる。いかに利益をあげるのか(=従業員の役割)というのはイノベーション(=起業家の役割)ではない。」と言い、「Googleは検索サイトに始まり、その後は様々な事業を展開をしているが、ほとんどが買収によるものだ。これをGoogleの終わりと批判する人もいるが、イノベーションを会社(大企業)のなかで行うことは難しい」と話す。その理由として、「新しい会社にはレガシーなどなく、5000人よりも20〜30人が勝る」とユニス氏は述べた。

では、大企業はどのように動くべきかという宮田氏の問いかけに対し、ユニス氏は続けてGoogleを例に挙げながら、「キャッシュフローを戦略的に使っていくべき」と言い、資金を既存事業の成長にあてることは、未来に価値を生み出さないと話した。営利企業である以上、利益を出すことは大前提であり、当然ながら、利益は重要でないと言っているわけではないが、イノベーションが最も尊敬される、まだにシリコンバレーの考えのように思われる。ユニス氏のメッセージは、半分は失敗覚悟ででも、戦略的に買収を進めるべきだというものだ。

起業家をヒーローとして扱うべき

最後にユニス氏はメッセージとして二つ述べた。一つは、スタートアップを産み出していく全体へのメッセージとして、「エコシステムの中で起業家をヒーローとして扱うべきだ。大企業の経営者がヒーローなのではない」と話した。もう一つは、今日日本でも度々話題にあがる働き方について、「長時間オフィスにいることが生産的でないと気づくべきだ。1日4〜5時間のほうが生産的という調査もある」と話していた。

成功と失敗は「紙一重」ではない——投資家が語ったスタートアップの“光と影”

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スタートアップ、起業、ベンチャー――最新テクノロジーと親和性の高いウェブメディアだけでなく、最近ではテレビなどでも成功事例が華々しく取り上げられるようになったが、そんな成功の裏には失敗もある。光と影、表裏一体なのだ。とはいえ、その結果に至る要因を探ると、紙一重ではないことが見えてくる。

2016年11月17日から18日に東京・渋谷で開催された「TechCrunch TOKYO 2016」のプログラム「投資家から見たスタートアップの『光と影』」では、グロービス・キャピタル・パートナーズCOOの今野穣氏とiSGSインベストメントワークス代表取締役の五嶋一人氏がパネルディスカッションを行った。

「資本施策」「人事・労務」「パートナー」「学生起業」「イグジット」「投資家」の6つの側面に、“光”を当てられた影。見えてきた「起業家たちの心がけるべきこと」とはなんだったのだろうか。

不確実性を恐れるな。シェア、バリュエーション、事業計画は綿密に

最初のテーマに選ばれたのは「資本施策」。なにが良くてなにがいけないのか、陥りやすい罠とはなにかを今野氏、五嶋氏が投資家という立場で語った。

iSGSインベストメントワークス代表取締役の五嶋一人氏

iSGSインベストメントワークス代表取締役の五嶋一人氏

「資金供給プレーヤーは増えているため、調達できる金額は上がってきている」と今野氏。「とはいえ、ステージに合った金額で集めていかないと、次のラウンドでの調達が難しくなる」という。

「例えば、コンセプトの段階で期待値の高さから、数十億円の時価総額で投資家が投資をしても、時間の経過とともに期待値に実績が追いついてくるかどうかが次第に明らかになってくると、次のファイナンスで身動きが取れなくなります他方、早期の段階で非常に多くの割合の株式を外部に希薄化してしまい、それ以上の希薄化を防ぐために、事業計画と資本政策やバリューエーションの相関性を説明できないプレゼンテーションを聞くと、『ああ、こういう資本政策をしてしまうリテラシーの持ち主なんだな』と考え、その経営者は見切られてしまいます」 (今野氏)

五嶋氏も「スタートアップは、不確実性があって当然。でも、『将来へのビジョン』が抜けていてはダメ。資本政策と事業計画をバラバラに考えている起業家をかなりの頻度で見るが、『シェア』『バリュエーション』『事業計画(KPI)』を連動させ三位一体として考え、パワーポイントで1枚のグラフにまとめられる程度の計画性必要じゃないでしょうか。そうすれば不確実性に対応した、そのときどきに合った資本施策を検討できます」と補足した。

学生のうちに起業したほうが成功する?

「人生のできるだけ早いうちに起業という経験をしておいたほうがいい」との風潮がある昨今。果たして、デメリットはないのだろうか。

「孫正義氏やマーク・ザッカーバーグ氏などの例もあるので、いいも悪いもない、と思っています」と語り始めた五嶋氏。「とはいえ、投資案件としては『キツい』場合がほとんどです。体感的に成功する確率が低いから。そもそもビジネスモデルが『人材』か『イベント』多いというのも、投資を難しくしている要因のひとつです。加えて、上下関係をうまくコントロールできない、という問題であったり、個人のビジネス能力ではなく友情をベースにして仲間を集めてしまう、といった『学生起業あるある』な問題で、事業が崩壊しやすい。少なくとも私自身は、『若いうちにどんどんやったほうがいい』と焚き付ける立場ではないかなぁと思っています」と持論を展開した。

モデレーターを務めたTechCrunch Japan副編集長の岩本有平が「『金をやるから起業しろおじさん』もいましたよね」と挟むと、「サポートするのであれば、最後までサポートしてあげて欲しいですよね」と五嶋氏は付け加えた。

今野氏は、昔と比べ、資金調達のことも含め情報を比較的容易に得られるこの時代にあって「『こういう事業計画で起業するんですけど、どうやりましょうか』という“勝つ”ための相談なら乗る。でも、起業しようかな、どうしようかな、と悩んでいるのであればやめたほうがいい」と活を入れた。

さらに、「今はどうしようか悩んでいるけれど、将来起業したいというのであれば、まだ従業員規模が数十人で、経営者と経営判断を間近に見られるスタートアップ企業にジョインしてみれば?」と勧める。理由は「起業家の経営手腕や苦悩を見られるから。社会人経験のないところからいきなりはじめるより、実例を目の当たりにしておいたほうが、自分が同じような壁にぶち当たった際、『ああ、これか』と納得できるようになる」と説明。加えて、「起業して失敗したとしても、うまく失敗してほしい。クローズの仕方が上手であれば、2回目、3回目が必ずあるので、そこは諦めないでほしい」と会場内で起業しようとしている若者たちにエールを送った。

……ときれいにまとまるはずだったのだが、岩本から「学生起業の失敗で一番最悪のパターンは?」と聞かれた両氏はそれぞれ「行方不明」「仲間割れ」と即答。会場には笑いが起こっていたが、最悪パターンにだけはならないようにしよう、と心に誓った人もきっといただろう。

世の中の優秀な人材の99%は大企業に、残り1%を見逃すな

話は「人事」と「労務」に。採用関連で相談を受けることも多いというモデレーターに対し、「はっきり言ってしまえば、『スタートアップには新卒でも中途採用でも、優秀な人は来ないという前提で採用活動をする必要があります」と五嶋氏。その理由を聞かれると「実際に大学時代から優秀な人まず大企業に就職しているでしょう?」と質問で返し、会場をうならせた。

とはいえ、次のようにも補足した。「現実として、日本では優秀な人材のほとんどは大企業を目指し、大企業に入社し、大企業から出てきません。でも、ごくまれにそうではない人材もいる。優秀な人の中の1%くらいでしょう。変人ともいえます。そういう人材を見極めて、絶対に逃さないことがスタートアップの採用には大事」(五嶋氏)

今野氏は「スタートアップでは、スーパーマンのような人を想定したあらゆるスキルを盛り込んだ募集要項を記載することが多い。でもそんな人はいない」と、採用がうまくいかない原因を一刀両断。その解決法として「ひとりひとりのジョブディスクリプションを明確にして、募集要項に反映させること」を挙げた。そして、次のような注意点も加えた。「創業当初は創業者の持つアントレプレナーシップが必要かもしれませんが、人材募集をしている、ということはステージがもはや組織化のフェーズに進んでいるんです。それにもかかわらず、社長がオペレーションに関わる前提で現場レベルの人を採用し過ぎると社長のキャパシティがボトルネックになり、むしろ企業の伸びは失われます。そして、その段階に来たのであれば、社長はオペレーションに携わるのをやめましょう。それも成長を止める一因になるからです」(今野氏)

グロービス・キャピタル・パートナーズCOOの今野穣氏

グロービス・キャピタル・パートナーズCOOの今野穣氏

労務に関しては、「多くのことで周りの目が『あそこはスタートアップだから』と温かい目で見てくれるかもしれないが、法律はスタートアップも大企業も関係ないので、法律をしっかり学び、労務マネジメントの知識を持ってほしい」と五嶋氏。今野氏も「レイヤーが3つ(編集注:経営者、マネージャー、現場の3レイヤーで、経営者が直接全ての業務を把握できない規模になってからということ)ほどの規模になった際、見ていないところで“何かが”生じがちなので、時間を捻出して対策を講じておくといいですね」とアドバイスした。

「目指せないM&A」より計画を立てて最善を尽くす

「イグジット関連で『こういう考えは改めたほうがいい』ということについて」話題が変わると、「IPOの目的のひとつは資金調達。一般的に資金調達した場合は事業に投資したりM&Aをしたり将来の成長に当てますよね。上場時の事業計画と資金調達後の資金使途の整合性をきちんと取る必要があるのではないか」と今野氏。「上場したときにたかだか数億程度の営業利益では、将来のための投資をするとすぐ吹っ飛んでしまう規模だから、マーケットデビュー時のストーリー作りは大事」と続けた。

五嶋氏はそれを補完して「成長の絵が全く描けていない中で、創業者のイグジットのための『上場ゴール』を目指す人もおり、僕からはそれをいいとか悪いとかは判断しません。市場の投資家が決めることですから。ただ、上場後に『やっぱり業績を下方修正します』というような事態が最近頻発していることは、正直違和感を感じますが、業績が計画に届かないのは、ある意味仕方ない、それは結果ですから。でも「市場との対話」は?「は? と問いたいですね。業績計画を含む市場との対話、事業の成長、本当に最善を尽くしきったたかどうか、それが問われるのではないかと思います。市場を軽視し、成長への志がない上場を『上場ゴール』と呼ぶのです」と語った。

また、M&Aに関して今野氏は「IPOのセカンドオプションとして考えるのはやめたほうがいい。市場環境や競争環境の変化によって、その事業のサステナビリティや産業のライフサイクルが変わったりするから」と語り、五嶋氏は「M&Aは相手あってのもの。『芸能人のだれそれさんと結婚することを目指します!』と言うのと『Googleに買ってもらうことを目指します!』と言うのはなんら違いがなく、数十億円規模のM&Aになると買い手も限定的で、現実として能動的に目指せるものではない。能動的に目標にできるのは先ずIPO」とバッサリ切り捨てたが、「M&Aによるイグジットを検討する局面が訪れた時には、みんながハッピーになれるようにはこだわってほしい」と応援する言葉も添えていた。

互いに対するリスペクトが成功の鍵

5つめのテーマは「パートナー」。特に大企業が新規事業としてスタートアップと組む場合を前提に「べき・べからず」が論じられた。

今野氏は「大企業のオープンイノベーションの流れを掴んで成功にこぎつけるスタートアップは、大企業側のキーマンと繋がっている。その見極めが重要。それから、大企業のもつデータやアセットを最適化するテクノロジーを持っているスタートアップは、複数の大手企業からのそれぞれ受託案件をこなすような事業計画を立てていることがあるが、その時点ではそれで良いとしても、大企業側からすれば、あるタイミングから自分たちのデータなりを出すのであれば資本も入れたいと思うはず。将来的に上場したいという思いを持つ起業家は、ではその場面になったらどうするのか、という踏ん切りを付ける時が必要になるでしょうね」と2つの注意事項を挙げた。

「期待値コントロールを失敗させない」と語るのは五嶋氏だ。「大企業からは『全面的にバックアップしますよ、ふんわり』、スタートアップからは『なんでもやります、ふんわり』では具体的ではない。到達すべき数値目標、撤退ラインをはっきりさせていない場合が多いので、それぞれの役割分担をはっきりさせ、期待値コントロールをしっかりする必要がある」と説明。

さらに重要なこととして「根底のところで大企業の中の人とスタートアップの人はお互いに尊敬しあっていない」とズバリ。「お互いに尊敬の念を持たないと絶対に成功しないので、いいところを探し合って学び合ってほしい」とアドバイスした。

耳の痛いことを言う投資家を大切に

資金調達という面でのパートナーを語る上で、避けられないのは「投資家」についてだろう。最後に、組むことによって失敗してしまう、あるいは成功できる相手=投資家について2人に考えを聞いた。

五嶋氏はこれまでの経験から「お金を使うだけ使って売り上げが立たず、資金が足りなくなってしまうのは、シードの時期しっかりとした事業計画とこれに連動する資本政策・バリュエーションを詰めていないから」と警告。「最初に事業計画が無理なものかどうかを見極めない投資家、見たことのない桁のお金を手にして浮かれてしまう起業家、その両方に問題がある。よく確認もせずにお金をくれるより、『ここはどうなっているのか』『こうするべきなのではないか』と耳が痛くなるようなことを言ってくれる、相談に乗ってくれる投資家を大切にしてほしい」とアドバイスした。

そして、シード時期の起業家に投資をしていない今野氏からの次のようなリクエストでトークセッションは締められた。

「シードの段階で相談に来てください。『ここではこのようなバリュエーションで集めたほうがいい』など具体的でストレートな話ができるのは、利害関係のない間だけですから。できるだけ早いステージのうちにみなさんとお会いしたいですね」(今野氏)

スタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo」、白熱した昨年のセッションをおさらい

超早割チケットの販売終了まで1週間を切った、スタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」。11月17〜18日に東京・渋谷ヒカリエで開催するこのイベント、これまでにも概要はお伝えしているが、実際昨年はどのようなセッションが盛り上がったかご紹介したい。

50億円を捨ててスタートアップした男・マネックス松本氏

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この数年、TechCrunch Tokyoでは国内、海外の企業家それぞれ1人ずつが基調講演を行っている。2015年、海外の企業家としてはコミュニケーションロボットを手がける米JiboのCEO、Steve Chambers氏が登壇した。国内の企業家として登壇したのは、こちらでご紹介するマネックス証券の松本大氏だ。

マネックス証券は1999年の設立。ゴールドマン・サックス(GS)のゼネラルパートナーであった松本大氏が、ソニーとの共同出資で立ち上げたネット証券だ。当時の松本氏はGSの上場に伴い、10億円とも50億円とも言われる報酬を得られる予定だったそうだが、それを蹴っての起業だった。松本氏はこの創業ストーリーに加えて、起業の際の市場やタイミングの重要性、起業を支援してくれたソニー代表取締役の出井伸之氏との関係、起業家へのメッセージなどを語った。

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起業初期は海外進出よりも開発を——99designs・Llewellyn氏

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デザインに特化したクラウドソーシングを手がける豪メルボルン発のスタートアップ・99designs。リクルートからの出資を受けて日本進出したばかりだった同社からは、CEOであるPatrick Llewellyn氏が登壇。デザイナー、フリーランスを取り巻く環境や、成長のためのマーケット拡大といったテーマでスピーチを行った。

早くにオーストラリアから米国に進出したという自身の経験からも、海外市場の重要性訴える99designsだ。開発初期段階での海外進出については慎重であるべきだと説く。そしていざ海外に進出する際、現地の市場で信用を得るためにどのようにローカライズを行うべきかというノウハウに触れた。

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ピュアなCtoCサービスがヒット、メルカリ・山田氏

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米国App Storeのトップ3位にもランクインしたと話題のメルカリも、昨年のTechCrunch Tokyoに登壇してくれた。代表取締役の山田進太郎氏は、創業期の楽天で経験を積んだ後にウノウを設立。同社は米Zyngaに買収されたが日本での事業を撤退。その後1年の充電期間を経てメルカリを立ち上げた。

当時から急成長を続けるメルカリだが、山田氏はその理由について「ピュアなCtoCサービスであるから」と説明する。それはどういう意味か。またこのほかにも面倒なやり取りを「仕組み化」することなどでユーザーが付いてきているという、成長のポイントについても語ってくれた。

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クロスボーダーM&Aを実現したエウレカ・赤坂氏

代表取締役CEOの赤坂優氏

2015年にあったスタートアップのイグジットで、もっとも話題を集めたのが米IACグループの傘下となったエウレカだ。マッチングサービス「pairs」、カップル向けアプリ「Couples」を手がける同社。共同創業者で代表取締役(現在は退任)の赤坂優氏は、pairsが競合サービスの8倍の頻度でマッチングが行われるまでのサービスに成長していると語ってくれた。

エウレカを買収したIACグループは、matchやTinderをはじめとしたマッチングサービスを世界で展開する企業。赤坂氏はクロスボーダーでの買収という選択肢を選んだ理由や、実際に買収されてからの状況などについても語った。

赤坂氏の登壇レポートはこちら

今年も注目セッション、企画が盛りだくさん

2016年の登壇者については9月以降に発表していく予定だ。今年も気鋭の起業家、投資家らが登壇する予定なほか、メインイベントとなる創業3年未満、サービスローンチ1年未満限定のプレゼンコンテストである「スタートアップバトル」、スタートアップのCTOが集う「CTO Night」などさまざまな展示なども予定している。気になる人は急いでチケットを購入して欲しい。定価の約半額となる超早割チケットの販売は今月いっぱいとなっている。

8/31 23:59まで!TechCrunch Tokyo 2016「超早割チケット」締め切り間近

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東京・渋谷ヒカリエで11月17日(木)、18日(金)の2日間にわたって開催する「TechCrunch Tokyo 2016」だが、超早割チケットの販売期間が迫ってきたのでお知らせしたい。

超早割チケットは、まだ登壇者などプログラムを公表する前の期間限定割引チケットだ。一般チケット3万5000円(税込み、以下すべて同じ)のところ、超早割チケットは8月31日まで約66%オフの1万5000円となっている(9月以降の前売りチケットは2万5000円)。

プログラムは9月以降に発表するが、例年通り、国内外の注目スタートアップの起業家や投資家が登壇する。創業3年以内のスタートアップが、今年公開(予定も含む)したてのプロダクトをプレゼンで競い合う、毎年恒例の「スタートアップバトル」も開催する。

イベント前に「気になる参加者」とアポが取れる

昨年との大きな違いの一つとしては、参加者同士のネットワーキングを促進させるツール「Jublia」(ジュブリア)を導入することだ。イベント当日は人が多くて、目当ての人となかなか会えなかったりすることもあるが、イベント前に面会のアポイントを取ることができる。

具体的には、チケット購入時にJubliaの利用を希望した参加者が、Jublia上で気になる人や企業にコンタクトを取り、相手も合意すれば、会場に用意するミーティングエリアで指定時刻に落ち合える。

われわれが開催するイベントがきっかけで起業したり、投資や提携が決まったという話を聞く機会が増えているが、そういう出会いを後押ししたいと思っている。

今回Jubliaを取り入れるにあたってオンラインチケット管理サービスの「EventRegist」(イベントレジスト)を利用している。

EventRegistに登録したユーザー情報は、登録者の同意に基いて一部(名前、社名、職種など)がJubliaにもインポートされる仕様になっている。イベント開催1カ月前の10月中旬ごろ、Jubliaのアクティベートを促すメールが登録者に届く。

ここでJubliaにログインするとアカウントが有効となり、ほかの参加者の情報が見えるようになる。以下がJubliaの簡単な説明資料だ(「商談」となっているは、これは一般的ビジネスイベントを想定した例だから)

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探している機会(投資・調達や提携、採用・転職など)に応じて職種や企業規模などでフィルタリングしてミーティング相手を探すことができる。もちろん、Jubliaを利用しないという選択も可能だが、どうせ平日にイベントに足を運んでいただけるのであれば積極的に交流の場として活用いただければと考えている。

Webデベロッパの電子工作にはとどまらない――超小型ボードEdisonが切り開く未来

11月18日に開催された「TechCrunch Tokyo 2014」の1日目に実施されたセッション「超小型開発ボード、EdisonがWeb開発者に開くIoTへの道」では、インテルの永井寿氏とTechCrunch Japanの西村賢によるトークが繰り広げられた。

Webベースのサービスカンパニーや、「モノづくり」系ベンチャーたちの熱気で溢れるTechCrunch Tokyoは、あるいは巨人インテルにとっては必ずしも居心地がいい場所ではなかったかもしれない。西村からの質問には、米Intelの2014年第3四半期決算で売上高が前年同期比7.9%増の145億5400万ドルと過去最高を記録する一方、「タブレットや携帯電話などのモバイル部門が10億4300万ドルの損失を出したが?」という厳しい内容も含まれていた。

Intelは2014年の1年間にタブレット向けに4000万台分のプロセッサ出荷を目標にしていて、今のところその目標を突破するペースで順調に推移している。すでにタブレットに搭載されるプロセッサでは、数量ベースでIntelはAppleに次ぐ世界2位のメーカーだという。Atomプロセッサを搭載したAndroid/Windowsタブレットの総数はiPadに次ぐ数が出ているそうだ。それにも関わらず、事業としては赤字拡大のフェーズだということだ。

質問を受ける側の永井氏は「苦しい中も乗り越えるのがインテル。データセンター向けのサーバーもあり、食いっぱぐれはない」と率直に回答する。

セッションでの中心的な話題は、Intelの組み込み分野での最新の動き、特に超小型のボードコンピュータ「Edison」を中心とした取り組みについてだ。セッションのタイトルからくみ取れるように、IntelはEdisonの投入により「流れ」を作り出そうとしているのだ。

昨年のTechCrunch Tokyo 2013ではインテルはQuarkプロセッサ搭載のボード「Galileo」を披露したが、今年披露したEdisonはGalileoより小さく高性能だ。500MHz動作のデュアルコアAtomプロセッサを搭載しLinuxも普通に動く。Arduino互換ボードも用意し、豊かなArduinoエコシステムも味方に付ける。

西村は「(Edisonは)アキバだと7000円とかで売ってるんですよね。10月25日から」と語る。この指先でつまむようにして持たないといけないほど小さなボードは、Linuxが走るx86マシンなのだ。

TechCrunchでは、TechCrunch Tokyoに先駆けるかたちで11月15〜16日にハッカソンを開催していた。西村はそれを振り返って「ハッカソンでNode.jsを使っている人がいて。組み込み系のI/OをNode.js経由でWebから使える。まったく別世界だと」と話を振ると、永井氏は「Webデベロッパに、スマホだけでなくIoT(Internet of Things)のハードウェアまでいじって遊んでいただこう、というところは期待している」と返した。

Edisonは、工夫すればウェラブルなデバイスに組み込めそうなほど小さく、それでいてLinuxが動き、Node.jsのような高レイヤーのソフトウェアスタックも動く本物のコンピュータだ。マイクロコントローラを核としたArduinoボードがMakerたちに盛んに使われている中、より高度なEdisonの可能性に期待するのは自然なことだ。

Linuxが動く超小型ボードと聞くと、どうしてもRaspberry Piのことを思い出す。EdisonはRaspberry Piとは異なりビデオ出力は付いていない。「Edison自体から絵を出す(モニターに出力する)ことは考えてない」と永井氏は言う。「HTML5ベースのWebアプリという形ならUIもできますよね?」と西村。「スマホ側からコントロールするかたちのアプリを作りれます」と永井氏。

ここで「Webデベロッパへの間口を開くのが大きな戦略ですか?」と西村が聞く。永井氏はこう答える。「Webデベロッパが電子工作系に取り組むというだけでなく、もっと期待できるものがあります。今までネットにつながっていなかったシステムにも、Edisonとセンサを載せて、情報を集めて分析できる。これが従来型の開発だとコストが大きいが、そこにWeb開発の知見を持ち込んで、より合理的に作れるようになると期待しています」。

Edisonが組み込まれた多種多様な仕掛け。それを高レイヤーのソフトウェアスタックを駆使してWebデベロッパが生命を吹き込む――そんな未来像への期待がこのセッションからは伝わってきた。

最後に永井氏が紹介したのは、Web APIをマネージするソリューションを持つMasheryだ。最近Intelは同社を買収した。「プログラムレスでWeb APIのマネージができる」と永井氏はメリットを語る。西村は、「Webデベロッパには、これから仕事がいっぱいある」とまとめ、セッションを締めくくった。


TechCrunch Tokyoで若手独立系ベンチャーキャピタリスト2人にスタートアップの「今」を聞く

新聞やビジネス誌でも「ベンチャーブームの再来」なんて文字が踊るようになって久しい。たしかに数年前に始まったインキュベーションプログラムは成熟度が増して、そこから優秀なスタートアップが生まれつつある。10月末に開催されたのIncubate Campなども、僕は行けなかったのだけれども審査員やメディアからはサービスやプレゼンのレベルの高さについて聞くことも少なくなかった。またIPO市場を見ても、最近話題となった弁護士ドットコムとクラウドワークスのマザーズ上場を始めとして活況を呈している。もちろん上場までの期間を考えると、直近に創業した会社ばかりというわけでもないのだけれど。

佐俣アンリ氏

だが果たしてこれはブーム、つまり一過性のものなのだろうか。僕はそう思っていないし、そうならないためにできることはやっていきたいと思っている。僕たちがまず出来るのは、新しいプロダクト、サービスを生み出す人たちを取材して正しく伝えることだし、ベンチャー、スタートアップという東京の渋谷や六本木周辺を中心にしたコミュニティの”業界ごと”を“世の中ごと”にすることなんじゃないか。TechCrunchの編集部にジョインなんて記事で華々しくデビューしてしまった(させてもらった)者としてそう考えている。

僕が一過性だと思わない理由はスタートアップを取り巻くエコシステムの拡大だ。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、インキュベーター、士業、監査法人、さらには大企業の新規事業担当者など、スタートアップを取り巻く環境はここ数年で大きくなり、正直取材をするだけでもひと苦労になっている。もちろん少なくないプレーヤーが失敗してはいるのだけれど、全体としてはより大きなものに成長している。投資額だってそれに合わせて大きくなっている。CrunchBaseにある地域ごとの投資マップ(こちらは2014年10月分)を見ても毎月の投資額がそれなりに大きいことが分かるし、CB Insightsの記事によると、東京での資金調達額も過去2年(2012年11月〜2013年10月と2013年11月〜2014年10月)を比較して約2割増だそうだ。

木下慶彦氏

さて、11月18日〜19日に開催するTechCrunch Tokyo 2014では、そのエコシステムの中から若手の独立系ベンチャーキャピタルにスポットを当てて、スタートアップを取り巻く環境について聞いてみたいと思う。11月18日夕方のセッション「独立系ベンチャーキャピタリストが語る投資の今とこれから」には、ANRI General Partnerの佐俣アンリ氏、Skyland Ventures 代表パートナーの木下慶彦氏に登壇頂く予定だ。2人はそれぞれ20代にして自らの手でベンチャーキャピタルを立ち上げ、投資を行ってきた。

ANRIは前述のクラウドワークスのほか、DeNAが買収したペロリなど、すでに投資先のイグジットの実績があるし、Skyland Venturesも投資先の八面六臂が7月にリクルートなどから4.5億円の調達。トランスリミットは対戦型脳トレアプリ「BrainWars」が現在世界500万ダウンロードを達成し、さらにLINEなどから3億円を調達。それぞれサービスの拡大を進めているところだ。

このセッションではそんな2人に、どうして自らベンチャーキャピタルを立ち上げるという選択肢を選んだのか、今どういった視点で投資を行っているのか、さらにはスタートアップを取り巻く環境の今とこれからについて聞いてみたいと思っている。開催まで間もないが是非とも2人の話を聞きにきて欲しい。

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TC Tokyoスタートアップバトル出場サービス – 全自動会計ソフトのfreeeがリリース

freee logo

昨年11月に開催されたTechCrunch Tokyoスタートアップバトルに出場してくれたCFOが全自動クラウド型会計ソフトfreeeのリリースを発表した。このサービスは従来の面倒な経理業務をクラウド上で行ってくれるサービスだ。

本誌では昨年12月にはシリコンバレーのベンチャーキャピタルDCMから5,000万円の資金を調達した際にも取り上げているが、ロゴのイメージが大幅に変更されたので気づかない方も居るかもしれない。特徴的だった雲の上で足を組んだおじさんのロゴは廃止され、素早いイメージのツバメに変更された。

freeeは既存の会計サービスと最終目標は同じだが、仕組みが興味深い。ユーザーの銀行やクレジットカードのWeb口座をfreeeと同期し、入出金明細を取得することでデータを解析してくれる。

解析したデータは自動的に仕訳してくれるので、Web上に履歴が残っているものならばほとんど自分で作業をする必要はない。例えば、明細に「タクシー」という単語が入っていれば、「旅費交通費」に紐づけるように単語ごとに適切な仕訳をしてくれるそうだ。

もちろん、明細によっては的確に仕訳されないこともあるだろう。CFO代表取締役の佐々木大輔氏によると、ベータ版運用時にはクライアントにもよるが、精度は7割から8割程度だったという(銀行よりもクレジットカードの方が詳しく記載されているので、クレジットカードの方が精度は高くなる)。

8割程の精度があれば、かなり経理業務の負担が軽減される。しかし、Web口座をサービスと連携することには抵抗を持つユーザーは多いだろう。そのためfreeeはこの課題をクリアしなければならない。

この点に関してはfreeeは個人情報の取扱いにおいて一定基準の安全性を確保している証拠であるTRUTe(トラストイー)による認証を取得してあるし、データ自体はファイアーウォールで遮断された場所に保存されてあるので安心して欲しいと佐々木氏はいう。

それでも、ユーザーの中には最初はWeb口座を連携せずにCSVでファイルをアップロードし、仕訳をする企業もあるだろう。だが、何度も繰り返し利用するうちにfreeeの利便性が不安に勝ち、最終的にはWeb口座を連携してくれると考えているそうだ。

総務省によると日本の中小企業における平成24年度のクラウドサービス利用率は17パーセント(米国は54パーセント)であり、佐々木氏によると、クラウド型の会計ソフトとなると利用率1パーセント程度だという。

米国ではクラウドサービス利用率54パーセントのうち、ある一定の割合は会計ソフトも含まれているというので、日本でも浸透するのは時間の問題かもしれない。

今後の展開としては、請求書の作成や管理機能、APIの提供、ネイティブアプリの開発などを予定している。

freeeは本日から6月末までは全て無料で利用でき、その後はフリーミアムモデル(無料、月額980円、1,980円)で提供される。