レシピ動画「クラシル」のdelyが初期費用無料・システム開発不要でネットスーパーを構築可能な小売事業者向け事業開始

レシピ動画「クラシル」のdelyが初期費用無料・システム開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能な小売事業者向け事業開始

レシピ動画サービス「kurashiru」(クラシル)運営のdelyは8月18日、新規事業として、小売事業者向けに初期費用無料・システム開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能なサービス「クラシルリテールプラットフォーム」の提供開始を発表した。

同サービスは、小売事業者のデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援が主目的。ネットスーパーの立ち上げ・運用から店舗販促のデジタル化までをクラシルが一貫してサポート。小売事業者におけるDX人材不足が課題に挙げられる状況において、クラシルリテールプラットフォームは「初期費用0円」「システム開発不要」で小売事業者のネットスーパーの垂直立ち上げを支援する。

レシピ動画「クラシル」のdelyが初期費用無料・システム開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能な小売事業者向け事業開始

基幹システム構築、アプリ・ウェブの注文フロント、ピッキング作業管理、配送ドライバー管理までを一気通貫でシステム開発し、運用段階では専門人材によるプロフェッショナルサポートを行う。局所的なシステム開発ではなく、サプライチェーン全体を支えるソリューションを提供するという。

レシピ動画「クラシル」のdelyが初期費用無料・システム開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能な小売事業者向け事業開始

またクラシルリテールプラットフォームは、クラシルからの送客が可能。日常的に「献立を決める」「レシピを探す」ユーザーに対し、直接ネットスーパーの利用を促すことで、安定した送客を実現するとしている。またクラシルリテールプラットフォームは、「小売事業者様ごとの単独アプリ型」、「クラシルアプリへの組み込み型」の2タイプのネットスーパーアプリを提供するとしている。

レシピ動画「クラシル」のdelyが初期費用無料・システム開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能な小売事業者向け事業開始

レシピ動画「クラシル」のdelyが初期費用無料・システム開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能な小売事業者向け事業開始

クラシル は「くらしをおいしく、あたたかく」をコンセプトに、管理栄養士が監修した「かんたんにおいしく作れるレシピ」を3万8000件以上提供するレシピ動画サービス。2020年7月にはクラシルアプリの累計ダウンロード数が2400万を達成。「80億人に1日3回の幸せを届ける」べく、日々サービスの向上に努めているとしている。

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料理動画サービス「kurashiru」のdelyが女性向けメディア「TRILL」を連結子会社化

女性向けメディア「TRILL」

delyは3月25日、女性向けメディア「TRILL」を運営するTRILLを連結子会社化したことを発表。

delyは2018年7月にヤフーの連結子会社(YJ2号投資事業組合からの出資)となって事業を継続してきたが、そのヤフーから同じく連結子会社だったTRILLの株式を51%取得して同社の経営権を握ることになる。

delyは1月からライフスタイル事業に参入し、ライフスタイルメディア「my kurashiru」を立ち上げ

delyは、料理動画サービス「kurashiru」の大ヒットのあとヤフーグループ入り。2019年1月にはライフスタイル事業に本格参入し、ライフスタイルメディア「my kurashiru」を立ち上げていた。今後TRILLは、delyとヤフーのジョイントベンチャーとして、両社の資産を活用して事業運営を進めていくという。今回の発表に伴い、4月1日付でTRILLの代表取締役社長のdelyの代表取締役である堀江裕介氏が就任する。

レシピ動画サービス「クラシル」のdelyがライフスタイル事業に参入

レシピ動画サービス「kurashiru」(クラシル)を運営するdelyは1月21日、ライフスタイル事業に新規参入することを発表した。ライフスタイルの情報を扱うメディア「my kurashiru」(マイクラシル)を立ち上げ、今後は料理にとどまらず「くらし」に寄り添い提案できるコンテンツやサービス、ブランドの展開を目指すという。

具体的には、「いつもより、ちょっといい週末の食卓」をコンセプトにリリースしたInstagramメディア「1_weekends」をリブランディング。ファッションやメイク、ヘアケア、外出などのジャンルでストーリー性のあるコンテンツ配信する。今後はInstagramのほかにもウェブでの記事や動画配信、ライフスタイルメディアという枠組みを超えた多角的な事業展開につなげていく予定とのこと。

同社は2018年7月にYahoo!グループ入り。主軸事業であるクラシルは、2018年12月にiOS/Andorid用アプリの総ダウンロード数が1500万を突破したほか、レシピページ内にバナー広告を配信できる「クラシル レシピターゲティング広告」の提供を開始。そのほか食品メーカーとのコラボ商品の開発なども手がけている。新たにライフスタイル事業に参入することで、生活に欠かせない衣食住のすべてを取り扱うメディアになる。

delyのYahoo!グループ入り記事が4位にランクイン(2018年7月ランキング)

2018年にアクセス数の多かった記事を月別に紹介していく年末企画。7月を振り返ってみると、Pokémon GO(ポケモンGO)が1位を飾ったものの、TechCrunchらしい記事がトップ5に並んだ。

Pokémon GO関連記事は、兄弟メディアのEngadgetでも非常によく読まれる鉄板ネタ。今年もさまざまな機能が実装され、さまざまなモンスターが登場したことで1年中盛り上がった。

2位のFacebook関連記事、3位のイーロン・マスク関連記事もTechCrunchとしては毎月強い。特にイーロン・マスクはもはや、スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾスなどを抑えて、名前だけでアクセスが延びる人物となった。テスラ(Tesla)やスペースX(SpaceX)の関連記事はもちろん、本人の行動を紹介した記事も大人気だ。

4位は、堀江裕介氏(写真中央)が率いるdelyがYahoo!グループ入りした記事がランクイン。11月に開催されたTechCrunch Tokyo 2018に登壇した堀江氏は、Yahoo!グループ入りにより「kurashiru」(同社が運営している動画レシピサービス)のアクセスが伸長したほか、人脈やデータ、サービスなどのリソースをフル活用できる環境となり「グループ入りにデメリットはない」と力強くコメント。

5位は、TechCrunch Tokyo 2018のスタートアップバトルのファイナリストであるYperの「OKIPPA」の記事がランクイン。OKIPPAは、取扱量の激増と人材不足により激務になっている運送業者の業務を効率化。配達された荷物を預けられるバッグだけでなく、万が一の盗難に備えて東京海上日動と共同でバッグ専用の盗難保険「置き配保険」も開発した。管理組合とのやり取りが煩雑な既存の分譲マンションへの導入にも成功するなど、同社の事業は着実に拡大している印象だ。

1位 NianticがPokémon GOのプレーヤーの反則行為を説明
2位 Facebookが時価総額1230億ドルを一夜で失う
3位 イーロン・マスクが洞窟救出にエンジニアを派遣
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5位 荷物待ちや再配達のストレスから解放、置き配バッグ「OKIPPA」

TC Tokyo団体・前売り券の販売開始!スタートアップの「いま」を知る絶好の機会

11月15日(木)と16日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催される日本最大級のスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」まで2カ月を切った。9月19日からは、一般入場者向けの前売りチケットと、主に企業やまとめ買い向けの団体チケットの販売が始まっている。前売りチケットは1枚3万円、団体チケットは5枚以上の一括購入が条件となるが1枚2万円とオトクだ。

なお、前売りチケットは10月31日までの期間限定、団体チケットはTechCrunch Tokyoの開催当日まで購入できる。ここでは、改めて続々と決定している登壇者を紹介しておこう。現在、絶賛交渉中の登壇者も複数人いるので決定まであともう少し待ってほしい。

Julio Avalos氏(GitHubチーフ・ストラテジー・オフィサー兼ジェネラル・カウンセル)
GitHubは、ソースコードをホスティングするソフトウェア開発プラットフォーム。Avalos氏は、2012年にGitHubにジョイン。同社では経営陣および取締役会との連携を推進、ビジョンの定義および事業の管理運営を担うと同時に、法務や政策、人材、ソーシャルインパクト、戦略的パートナーシップを監督している。Avalos氏には今後のGitHubの戦略について聞きたいと思っている。

堀江裕介氏(dely代表取締役)
delyは、レシピ動画サービス「クラシル」などを展開するスタートアップ。2016年2月にサービス開始したクラシルは現在までに1200万以上のダウンロード件数、290万人を超えるSNSフォロワー数を獲得するまでに成長している。また、ヤフーによる連結子会社化が発表されて話題になった。堀江氏には、彼の頭の中にある1兆円企業になるまでのロードマップを聞く予定だ。

Long N. Phan氏(Top Flight Technologies CEO)
Top Flight Technologiesは2014年創業で、ドローンの研究開発と運用を進めることで、将来的に「空飛ぶクルマ」の実現を目指す米国スタートアップ。Long Phan博士からは、空飛ぶクルマというワクワクする話を聞けそうだ。

林 隆弘氏(HEROZ代表取締役CEO)
HEROZは、人工知能を活用したインターネットサービスの企画・開発・運営を手がける日本のスタートアップ。2017年には将棋AI「Ponanza(ポナンザ)」が現役将棋名人に勝利するなど、HEROZの技術力にいっそうの注目が集まった。林氏には、上場年となる今年に改めて創業当初を振り返り、氷河期と呼ばれる時代に起業家になることで得た経験、学び、苦労を大いに語ってもらいたいと考えている。

Harinder Takhar氏(Paytm Labs CEO)/中山一郎氏(PayPay社長)
paypay_nakayamapaytm_halisonPayPay(ペイペイ)は、ソフトバンクとヤフーの合弁会社で、2018年秋よりバーコードやQRコードを使って決済ができるスマホ決済サービスを開始する。同サービスを提供するにあたって同社は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先であるインドのPaytm(ペイティーエム)と連携。Paytmは、すでに3億人以上のユーザーと800万店の加盟店にサービスを提供している決済サービス事業者だ。TechCrunch Tokyoでは、元PaytmのCEOで、現在はPaytm LabsのCEOを務めるTakhar氏と、PayPayの中山社長に登壇いただき、モバイル決済の最新事情について語ってもらう予定だ。

芳川裕誠氏(Treasure Data CEO)
A1O8H0568.jpg2011年にCEO兼共同創業者の芳川裕誠氏ら3人の日本人がシリコンバレーにて立ち上げた。今年7月に、ソフトバンクグループ傘下のコンピュータチップ設計企業ARMホールディングスに買収されたことで、国内での認知度も一気に高まった注目の企業。芳川CEOには、日本人が異国の地で創業した理由や苦労したことなどの創業ストーリーだけでなく、近年あらゆる分野で重要度が増しているビッグデータ解析について興味深い内容を聞き出したいところだ。

小泉文明氏(メルカリ取締役社長兼COO)
メルカリについては、もはや説明不要かもしれない。フリマアプリで革命を起こした日本では希有なユニコーン企業。現在では子会社のソウゾウが「次のメルカリ級事業を創る」をミッションに掲げて、旅行領域での新規事業開発を進めている。さらに昨年には金融関連の新規事業を行うためにメルペイを設立したことも記憶に新しいだろう。小泉社長には、メリカリの上場について振り返っていただいたうえで、今後の展望についても語ってもらいたいところだ。

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dely代表の堀江氏がTC Tokyoに登壇、成長続けるスタートアップの経営で学んだ教訓と“これから“

11月16日、17日の2日間にわたって開催予定のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2018」の登壇者が徐々に決まりつつあるので、随時みなさんにお知らせしていく。この記事では、先日ヤフーによる連結子会社化が発表されて話題になったdely代表取締役の堀江裕介氏の登壇を発表したい。

dely代表取締役の堀江裕介氏

delyはレシピ動画サービス「クラシル」などを展開するスタートアップ。2016年2月にサービス開始したクラシルは現在までに1200万以上のダウンロード件数、290万人を超えるSNSフォロワー数を獲得するまでに成長している。delyの堀江氏は間違いなく、料理レシピを短尺の動画でみるという新しいライフスタイルの火付け役の1人だ。

delyが行った過去の資金調達ラウンドだけみても2016年11月の約5億円2017年3月の約30億円2018年1月の約33億円と、かなり早いスピードでビジネスを拡大してきたことが分かる。今回の登壇では改めて創業時から現在までの振り返りを聞くとともに、delyの“これから”についても聞きたいと思っている。

delyは2018年7月に類似サービス「mogoo」を運営するスタートアウツを買収。この領域で「ダントツ」を目指すという意思表示をした。でも、delyが目指すところはもっと先にある。僕たちがヤフーの傘下入りについて取材したとき、堀江氏は生鮮食品ECという“モノを売る”サービスの提供に対する意欲も語ったのだ。レシピ動画サービスだけで目指せるのは時価総額1000億円。でも、1兆円企業を目指すには生活インフラとなるようなサービスを作らなければならないと堀江氏は話していた。

堀江氏が登壇するセッションでは、彼の頭の中にある1兆円企業になるまでのロードマップを聞く。みなさんもTechCrunch Tokyoに参加して、その話に耳を傾けてほしい。最後にちょっとだけ宣伝させてもらうと、一般チケットは4万円のところ、9月18日までなら1万8000円の「超早割チケット」や学生限定割引の「学割チケット」を入手できる。以下のページからぜひ参加登録してほしい。当日、みなさんにお会いできることを楽しみにしている。

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新生delyはこれから、モノを売り、1兆円企業をめざす

写真左より、ヤフー常務執行役員でコマースカンパニー長の小澤隆生氏、dely代表取締役の堀江裕介氏、ヤフー常務執行役員でメディアカンパニー長の宮澤弦氏

本日ヤフーの連結子会社となることを発表したばかりのdely。代表取締役の堀江裕介氏はTechCrunch Japanのインタビューに対し、「1000億円企業で終わるのではなく、1兆円企業をつくる」ための布石だと語った。ヤフーと手を組む新生delyはこれから、モノを売り、上場も目指す。

インフラになる、モノを売る

2016年2月にサービスを開始したレシピ動画サービスの「クラシル」。サービス開始から2年あまりで1200万ダウンロード、290万人のSNSフォロワー数を獲得するまでに成長した。約1週間前の7月5日には同業のスタートアウツを買収したことを発表したばかりだが、堀江氏はその際のインタビューのなかで「レシピ動画サービスのなかでダントツのナンバーワンになるための打ち手」と語っている。

レシピ動画のような領域では、トップのサービスに広告主が集中するため、いかにこの領域でナンバーワンを勝ち取るかが重要になる。そのために打ち出したのがスタートアウツの買収だった。

レシピ動画サービスというメディアビジネスをさらに強化することを考えれば、ヤフーの傘下入りすることも納得がいく。アプリであり、動画というコンテンツを扱うクラシルは、そのフォーマットに慣れた若い世代に受け入れられやすい。それ以外のユーザー層を取り込むには、30代以上のユーザーも豊富に抱えるヤフーとの連携が大いに効果的となる。

具体的には、ヤフーのトップページにあるタイムラインにクラシルのレシピ動画を差し込んだり、検索キーワードを使った連携などを考えているという。

しかし、堀江氏は一方で、レシピ動画というメディア事業だけで狙えるのは“1000億円企業”が関の山だとも話す。1兆円企業となるためには何が必要なのか。堀江氏にとってその答えは、モノを売るサービスを手がけ、人々の生活のインフラになることだった。つまり、食の領域におけるEC事業への参入だ。

「それが、ミールキットを売るのか、食材を売るのかという具体的な形はこれからテストして決める段階。巨大な資本を持ち、コマース事業でモノを売るという知見を持つヤフーと手を組むことで、1兆円企業になるために何か大きなことができると考えた」(堀江氏)

日本では2017年4月にAmazonが、そして昨日の7月10日には同じく料理レシピのクックパッドが参入を発表した食品ECビジネス。これからその領域でのサービス開発を目指すdelyには、同社ならではの強みがあるという。

既存のレシピサービスを利用するとき、ユーザーはいま手元にある食材で作れる料理を検索することが多い。冷蔵庫を見て、豆腐とひき肉が余っているから麻婆豆腐のレシピを検索するという具合だ。その一方で、クラシルを利用するユーザーを調べてみると、おいしそうな動画を通して自分が食べたいものを感覚的に見つけ、それから食材を買いに行くという人が多かったという。レシピを見るとき、ユーザーの手元に食材がないという状況は、これから食品ECを手がけるdelyにとっては大きなチャンスなのだ。

delyの創業は2014年2月。その当時に彼らが手がけていたのはフードデリバリー事業だった。しかし、結局この事業は上手くいかず2015年にメディア事業へピボット。2016年春からは料理動画に注力したが、ピボット時にはスタッフが全員会社を去る事態にも陥った。その苦い経験を忘れないため、当時のサービス名である「dely」を今でも社名として残している。そんなdelyにとって、モノを売るサービスを手がけるのは創業以来の悲願なのだ。

実際、2016年にYJキャピタルが初めてdelyに投資した際に代表取締役を務めていた小澤隆生氏は「当時delyを見たときから、これは“モノを売れる”サービス」だと感じたと話し、そのとき堀江氏が作成していたピッチ資料にも、モノを売るサービスへの展開は明記されていたのだという。

「クラシルは、料理をするユーザーの意思決定を楽にしてくれるサービス。でも、まだまだそれは完全ではない。今でもユーザーは週に2〜3回は買い物に行っている。ユーザーの意思決定を究極的に楽にしたい」(堀江氏)

引き続き上場も目指す

今回、ヤフーはdelyの株式を既存株主から買い取る形で出資比率を引き上げているが、堀江氏自身は1株も売却していない。ヤフーの連結子会社となってからも、引き続きdelyは上場を目指すと堀江氏は話す。

「このニュースを見て、でかいこと言っていたのに売っちゃったのかと勘違いする人もいるかもしれないけれど、僕はあくまで1兆円企業をつくる気でいるし、上場も目指している。キャッシュもまだ数十億単位で残っているから、(勘違いするのは)勘弁してください」と笑顔で堀江氏は話した。

「自分たちの財布の範囲内でできることを考えるのではなく、まずは勝つための意思決定とは何かを考え、それに必要なお金をどうやって調達するかを考える。今後1年間で見えてくる数字をもとに、上場を戦略の1つとして考えたい」(堀江氏)

2017年3月に行った30億円の資金調達、つづく2018年1月の33億5000万円の資金調達など、これまでも大幅にアクセルを踏み込んできたdely。今回のディールにより、delyはヤフーとの連携をさらに深め、新たなサービス開発への挑戦を始める。

ヤフー、レシピ動画「クラシル」のdelyを連結子会社化、株式取得総額は約93億円

7月11日、ヤフーはレシピ動画サービス「クラシル」の運営元であるdelyを連結子会社化すると発表した。同社は2016年より子会社であるYJ2号投資事業組合を通してdelyへの出資を行なっていたが、今回新たに約93億円を投じてgumi venturesや木村新司氏の投資会社であるPegasus Wings Groupなど既存株主が所有する株式を買い取り、議決権所有割合を45.6%にまで引き上げる(本出資以前の議決権所有割合は15.9%)。

delyは今回の出資について、「本取り組みにより、delyは企業価値を更に高め、事業面においてはヤフーが有するメディア・コマース事業等の多様なリソースを活用することが可能となる。具体的には、クラシルのコンテンツをヤフーのメディア・コマース関連サービス等の利用者に対して、利用しやすい形でお届けする取り組みをすすめていく」とコメントした

TechCrunch Japanでは、本日夕方にdely代表取締役の堀江裕介氏にインタビューを行い、続報を掲載予定だ。

レシピ動画「クラシル」のdelyが同業「もぐー」運営を買収、ダントツのナンバーワン目指す

レシピ動画サービス「kurashiru(クラシル)」を運営するdelyは7月5日、同じくレシピ動画サービス「mogoo(もぐー)」を手がけるスタートアウツの発行済全株式を取得し、完全子会社化することを明らかにした。取得金額については非公開だという。

今回delyの子会社となるスタートアウツは2013年の設立。いくつかのサービスを立ち上げたのちバイラル動画メディア「Whats」を開発。そこから方向性をシフトし、分散型の料理動画メディアとして始めたのが現在も運営しているもぐーだ。

もぐーやスタートアウツについては2016年7月にTechCrunchでも紹介している。その際は同社が環境エネルギー投資、アドウェイズ、みずほキャピタル、East Ventures、メルカリ創業者の山田進太郎氏から数億円規模と見られる資金調達を実施したことをお伝えした。

そこからサービスを拡大させ、SNSのフォロワー数に関しては7月3日15時の数値で約110万人(公式SNSカウントのフォロワー数を元にdelyが集計したもの)、レシピ動画数は6月29日時点で約3200本(Appliv調べ)ほどに成長しているという。

一方のdelyが運営するクラシルは2016年2月のスタート。開始から約2年でレシピ動画数は約1.7万本、SNSのフォロワー数は約290万人、アプリのダウンロード数も1200万DLにのぼる(動画数とアプリDL数は2018年6月、フォロワー数は同年7月のもの)。

dely代表取締役の堀江裕介氏は今回の買収について「レシピ動画サービスの中でダントツのナンバーワンになるための打ち手のひとつ」だという。

「(タイアップ広告がメインとなる)レシピ動画サービスのような領域では、トップのサービスに広告主が集中するため、いかにブランド力をつけていくかが大事になる。クラシルの力をさらに拡大する上で、他のメディアを買っていくという動きは必然的なものであり、もぐーにとってもメリットがある」(堀江氏)

買収の話自体は1ヶ月半ほど前から始まり、スピードを重視して進めてきたため、今後の細かい方向性についてはこれから詰めていくそう。現時点ではもぐーのリブランディングを実施するとともに、クラシルとのサービス統合を予定。その結果クラシルのレシピ動画数は2.1万本、SNSフォロワー数も400万人にまで拡大する。

「ポートフォリオを広げていくよりも、今はレシピ動画の軸で徹底的にやっていくフェーズ。現時点ではまだ完全なナンバーワンという状態には至っていない。まずは国内においてダントツのナンバーワンになるために、ここ1〜2年でやれることを全てやっていきたい」(堀江氏)

delyが2018年1月に33.5億円を調達した際に、堀江氏はレシピ動画以外の領域も含めて「新規事業の展開に加えて、スタートアップのM&Aや投資を検討していく」という話をしていた。

同社にとって発行済の株式を取得する買収に関しては今回のスタートアウツが初めてとなるが、今後もこのスタンスは変えず「自分たちの力以外の拡大方法」として、M&Aや投資にもチャレンジしていきたいという。

「能力は誤差」スタートアップが見るべき人の資質、妥協しない採用とは——TC School #12

TechCrunch Japanでは2017年3月から4回にわたり、イベント「TechCrunch School」でHR Techサービスのトレンドや働き方、人材戦略といった人材領域をテーマとした講演やパネルディスカッションを展開してきた(過去のイベント一覧)。HR Techシリーズ第4弾として2017年12月7日に開催された「TechCrunch School #12 HR Tech最前線(4) presented by エン・ジャパン」では「スタートアップ採用のリアル」をテーマに、キーノート講演とパネルディスカッションが行われた。この記事では、パネルディスカッションの模様をお届けする(キーノート講演のレポートはこちら)。

パネルディスカッションの登壇者はプレイド代表取締役の倉橋健太氏、dely代表取締役の堀江裕介氏、ジラフ代表取締役の麻生輝明氏、エン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏の4人。創業者、あるいはHRサービスの提供者の立場から、それぞれが体験した「スタートアップ採用のリアル」について話を聞いた。モデレーターはTechCrunch Japan副編集長の岩本有平が務めた。

始めに各社から、自己紹介も兼ねて事業の内容や現在の体制について簡単に説明してもらった。

まずは倉橋氏が2011年に設立したプレイドの紹介から。プレイドは従業員数約70人。ユーザーを「知る・合わせる」をコンセプトに、ウェブサイトの訪問者のリアルタイムな解析とアクションを可能にするカスタマーアナリティクスサービス「KARTE」を提供している。倉橋氏は楽天に2005年に入社、2011年まで約7年間在籍し、Webディレクション、マーケティングなどさまざまな領域を担当してきた。その倉橋氏が独立し、KARTEをリリースしたのはなぜか。

プレイド代表取締役 倉橋健太氏

ウェブサイトでは、ユーザーがいて、何らかのプロダクトやサービスを提供した結果、パフォーマンスが生まれる。倉橋氏は「残念ながら、インターネットのビジネスでは、ユーザーはトラフィック、サービスはサイトと捉えられていて、パフォーマンスから考える傾向が強い。この方法では『いかに高転換なサイトに人をたくさん流し込むか』ということだけ重視され、いろいろなところで疲弊してきているし、運営していても面白くない、ということになる」と述べる。

「昨日新規ユーザーが100人来た、と言っても、その100人は誰なのか。そういうことをしっかり可視化しながら、プロダクトやユーザー体験を良くしていきましょう、ということで、KARTEを提供している」(倉橋氏)

人の可視化が重要、と話す倉橋氏は、イベントの前の週にリリースしたKARTEの新サービス「K∀RT3 GARDEN(カルテガーデン)」を動画で紹介。これまでは、平面の管理画面で人を可視化していたところを、オンラインに来ているユーザーの行動をリアルタイムにVR空間で描画する試みだ(TechCrunch Japanの記事でも詳しく紹介している)。

カルテガーデンでは、人が商品を「手に取って」見ているところや売場を歩き回っている様子を、VRで見ることができる。「データを数字として見ることが多くの人は苦手なので、難しい。それを“人”として見ると、身近に感じて一気に簡単になる。(分かりにくい)データや数字はマーケティングから退けていきたいとの思いから、事業をやっている」と倉橋氏は話す。

続いて堀江氏から、delyの設立から今までの歩みについて紹介してもらった。堀江氏がdelyを立ち上げたのは2014年。2014年から2016年までは、現在とは違うサービスを提供していたがうまくいかず、2016年にピボットして、レシピ動画の「kurashiru」を作った。

dely代表取締役 堀江裕介氏

delyの従業員数は、現在130人ぐらい。うち社員は内定者を含めて60人だ。「昨年は十数人だったので、一気に増えた」と堀江氏は言う。「直近の四半期では50人採用した。このスピードで採用していると、相当失敗もしている。いい採用だけでなく、悪い採用もしているし、どういう採用チャネルがあるのか、どういった採用ハック方法があるのか、いろいろ試しているので、今日は参考にしてもらえると思う」(堀江氏)

正社員の採用チャネルは「基本的にリファラルとWantedlyで、7割近くを占める」そうだ。今のところまだ、エージェントと媒体を利用した採用は、それぞれ約10%で「社員の満足度が高いときには、やっぱりリファラルでの採用がガンガン効く」と堀江氏は話している。「Wantedlyの運用も、今は人事担当を1人つけて、がんばっている。あと、SNS経由については、僕が毎日どんどん発信しているので、これがかなり効いているかな、と思っている」(堀江氏)

ジラフ代表取締役 麻生輝明氏

次に紹介があったのは、ジラフの麻生氏だ。ジラフは2014年の創業。麻生氏が大学在学中に、買取価格の比較サイト「ヒカカク!」を始めたのが創業事業だ。その後、別のサービスもリリースしているが、会社として大きく人を増やし、組織も拡大するきっかけとなったのは、2017年3月にポケラボを売却したシリアルアントレプレナー・佐々木俊介氏が参画し、同時にポケラボのリードエンジニアだった岡本浩治氏がCTOとして参画したことだ、と麻生氏は言う。

「そこからビジネス側、開発側で人を一気に拡大し、だいたい8カ月ぐらいで2.5倍ぐらいの規模になった」と麻生氏は話している。現在は従業員全体で60人ぐらい、社員が30人ぐらいだという。

直近では、2017年10月に「スマホのマーケット」をリリース11月には資金調達も行ったジラフ。資金調達については「組織面が強化されていることも評価された」と麻生氏は言う。今後、スマホ即金買取サービスの「スママDASH」の公開も予定しているとのことだった(イベント後の12月21日、ジラフはTwitter経由の匿名質問サービス「Peing(ペイング)質問箱」を買収、さらに2018年1月15日にはスママDASHをリリースしている)。

エン・ジャパン執行役員 寺田輝之氏

エン・ジャパンの寺田氏は今回、スタートアップへ人材サービスを提供する側としての登壇だが、寺田氏自身もエン・ジャパンがスタートアップだった頃に入社している。現在はエン・ジャパンの執行役員を務める寺田氏の持論は「スタートアップは、成功するまではプロダクトづくりに専念しろ」というもの。自身がかつて直面した採用の課題に対して、先回りして解決できれば、ということで提供しているのが、クラウド採用ツールの「engage(エンゲージ)」だ。

engageでは「採用からエンゲージメントを意識してほしい」ということで、基本的に無料でサービスを提供。2016年8月のローンチから1年3カ月で5万7000社に導入され、「HRアワード 2017」では優秀賞も受賞した。

engageで提供する主要サービスのひとつが、スマホ対応の採用HP作成。寺田氏は「媒体やWantedlyで企業からの採用メッセージを発信することは絶対やった方がいい。その上で、メッセージを見た人は必ず企業のホームページも見に来る。これはエージェントを使っても一緒。そこで、事業内容やサービス内容に加えて、採用のページも充実させておくことで、面談や面接で会う前の魅力付けをすることが必要だ」と採用HPを用意することの意義について説明する。

「採用ページを個別に用意するのは結構コストがかかる。だったら僕たちの方で作ってしまって、ばらまいてしまおうと。さらに『エンジニアやデザイナーはプロダクトに集中すべき』という考えから、応募者管理のためのCMSや、ノンエンジニアがページを更新できるような機能も入れている」(寺田氏)

また、エン転職会員や提携するindeedなどを対象にした、採用のマーケティング支援もengageで実施。さらに性格・価値観テストと知的能力が測定できる「タレントアナリティクス」も月に3人分まで無料で提供している。

「スタートアップ採用あるあるとして、候補者のスキルは分かるが、カルチャーフィット、その人たちがどういう性格や価値観を持っているのかが、なかなか分からない、というのがある。特に創業初期の段階で、それが合わない人たちを入れてしまうと、結構苦労する。だから、カルチャーフィットの部分もしっかり見ていこう、というのがタレントアナリティクスのサービスだ」(寺田氏)

もうひとつ、寺田氏が紹介したサービスが、退職予測をアラートする「HR OnBoard」。入社して何年も経てば退職理由もいろいろ出てくるものだが、入社後1年以内に退職する人については傾向があると寺田氏は言う。エン・ジャパンでは3000社以上の企業の状況を分析した結果をもとに、「HR OnBoard」をリリースした。

「多いのは『思っていたのと違う』というギャップ、直属の上司とのリレーションのズレ、そして業務量が多すぎる、または少なすぎるというズレ。これらをずっと分析して『このタイミングで社員からこういう回答が出るときは、退職の危険性が非常に高い』『こういう回答なら大丈夫』というパターンを出し、ビッグデータからアルゴリズムを作って提供している」(寺田氏)

何もないところから日常的にコミュニケーションを取って、採用した人が退職しないようにフォローするのはなかなか難しいものだが、アラートが出て「このまま行けば辞められてしまう」となれば、一生懸命止めることができる。そのためのツールとして用意した、と寺田氏は説明する。

「私自身の経験も含めて、スタートアップでこれから起こりうるトラブルは絶対あるはず。そこに先回りできるツールを提供していく。さらにこうしたツールはこれまで、結構なコストを投入しなければ導入できなかったが、SaaSとして提供することで民主化した。ミスマッチのない、エンゲージメントの高い対応が実現できるように、ということで提供しているので、良ければ使ってみてほしい」(寺田氏)

「最初の5人」採用はやはり知人・リファラルが中心

各社紹介の後、話題は「創業して最初の5人はどうやって集めたか」へ移った。

ジラフの麻生氏が1人目の社員を入れたのは、創業1年ぐらいのタイミング。それまでは全業務の統括をひとりでやっていたという。「No.2が欲しい、ということで探していたが、そこにハードルがあった。COOを務められるNo.2人材は、起業しようという気力がある人でなければいけない。けれども、そういう気力のある人は、代表をやりたいわけで、ちょうど良い感じの人がなかなか見つからなかった。結果的に、VCから紹介してもらった人と会ったところ、その日に入社を決めてくれた」(麻生氏)

次に入社したのはエンジニア2人で、1人は業務委託で手伝ってくれていたメガベンチャー出身者。もう1人は「4月1日に会ったら、東大を卒業したところだけど就職が決まっていない、というちょっと変わった子で、その日のうちに採用を決めた」のだそうだ。

その後、現在は執行役員 兼 営業部長を務める人を採用。「彼は大手商社の出身で転職してきてくれたのだが、元々、大学時代にインターンが同じだったのが縁。最初の5人については、いずれも紹介や縁で入社してもらっている」(麻生氏)

delyの堀江氏は、サービスをピボットして実質2回の創業を経験しているが、1回目のサービスがうまくいかなかった際には、20人ぐらい一気に辞めたという。「唯一残っている最初からのメンバーは、現CTOの大竹(大竹雅登氏。TechCrunch Tokyo 2017でCTOオブ・ザ・イヤーにも選ばれた)。自分は『プライベートの友だちは絶対に誘わない』と決めていた。またエンジニアの友人もいないので、Facebookのプロフィールに『エンジニア』と書いてある人に片っ端から連絡を取った。100人ぐらいに声をかけたのだが、一番最初に引っかかってしまった(笑)のが彼だ」(堀江氏)

その後、第2創業期のメンバー集めでは「一度チームが崩壊してしまったので、チームメイキングができる人間が欲しいと考えた」という堀江氏。「大学時代に一度、VCのピッチの場で会った人が、起業をやめて大手消費財メーカーに就職したと聞いていた。彼に久しぶりに連絡をしたところ、話して3日後に辞表を出して、2分の1の給料で入社してくれることになった」と次のメンバー入社のいきさつを話してくれた。

「彼も大竹も一度起業を目指した起業家で、その後のメンバーも10人ぐらいまでは元起業家。タフなメンバーが今でも活躍している」と言う堀江氏に、元起業家を口説くときの方法を聞いた。「『自分で事業をやるより、俺とやった方が勉強できるだろう?』という謎の雰囲気を出す(笑)。本当は何も教えることなどなくて、自分が教えてもらってばかりですが」(堀江氏)

プレイドの倉橋氏は、ビジネスマンを7年弱経験してからの起業だ。楽天を辞め、初めはコンシューマー向けのアプリ提供やECコンサルを行っていた。最初のメンバーは役員4人。すべて知人、リファラルでの採用だった。

「取りあえずやりたいことをやるために会社を作ったが、会社ってそんなにうまくいくわけがない。他の仕事を持ちながら4人が集まったということもあり、サービスをローンチした後、初動は良かったが、なかなか伸ばすことができなかった」(倉橋氏)

そのため1年目に一度切り替えよう、ということでメンバーもリセット。同じ会社を器として使いながら、今のCTOと楽天時代の同期の紹介で知り合い、現在に至っているという。

「だから僕も2回創業があって、1年目はウォーミングアップだったと捉えている。その後、役員以外の社員が入りはじめてから20人弱ぐらいまでは、全員リファラル採用を行ってきた」(倉橋氏)

「スキル」よりは「学習能力」「フィットネス」を重視

では「最初の5人」のフェーズを終え、そこから拡大していくときに、各社はどういう基準・指標で人を採用していったのだろうか。

従業員70人、うち社員として60人を抱えるプレイドの倉橋氏は、社員の採用チャネルについて「まだリファラルが半分強。残りの半分のうちの半分がWantedly経由で、もう半分がエージェント」と概観を説明。「つまり信頼できる人を確実に誘っていく、ということをやってきた。社会人経験があることから、人を介して人につながる、ということはやりやすかった」と話している。

倉橋氏は「役割ごとの人数を(採用)計画に落とし込むということは、これまでほとんどやってきていない」と言う。「僕らの事業はまだまだ、これから立ち上がるフェーズだと思っている。だから人材を(初めから)見極めて採るという市場感ではなく、いい人をできる限り採る、それだけでやってきた。エンジニアかビジネスか、ぐらいの区分はあるが(細かい)役割を決めて採用するということは、いまだにほとんどしていない」(倉橋氏)

人材のフィット感を確かめる方法として「全員にアルバイトか契約社員で入社してもらい、3カ月見る」ということもやってきた、という倉橋氏。「中には9カ月ぐらいアルバイトしてから社員になった人もいる。そこで妥協しなかったことが、今の(企業)文化構築につながったと考えている」とのことだ。

採用基準については倉橋氏はこう語る。「新しい価値観を提供していくときに、一番重要なのは学習だ。個々人として、組織として、またプロダクトとして学習していく、という中では個人の役割なんて簡単に変わる。だから変化への許容度が高い人をいかに採るか、ということを優先してきている」(倉橋氏)

人の良し悪しの判断については「社内でも、CTOなどと話しているのは『能力は誤差だ』ということ」と言う倉橋氏。「そもそも新しいことをやっているのだから、その人の経験が100%ダイレクトに生きる、なんていうことは、まずない。経験や成功体験を疑える人にまず来て欲しい、というのが前提だ。だから『人間として好きかどうか、人間性が信頼できるか、真面目か』といったところを見ているのと、自分の言葉として事業に共感してくれているかどうか、能力よりも『一緒にやりたいかどうか』といった“人”っぽいところを基準に見ている」(倉橋氏)

採用チャネルの3割がリファラル、というdelyの堀江氏は「採用の基準は超簡単」と面白い視点を紹介してくれた。「会ったときに『この人とサシで飲みに行く約束をした1時間前に、イヤにならないか』ということを見ている。カルチャーフィットする人なら、気軽に飲みに誘える。定性的ではあるけれども、採用してからの感覚ともだいたい合っている」と堀江氏は言う。

「能力に関して言うと、見てはいるが、入社してから半年も経てば、そのジャンルに対する知見などは周りと変わらなくなってくる。だから過去の経験よりは、学習意欲の高さや学習スピードの速さを重視している」(堀江氏)

ここで寺田氏が「Googleでは『エアポートテスト』、つまり採用基準として『次に乗る飛行機が飛ばなくなり、空港の近くのホテルで泊まらなければならなくなったときに、一緒に泊まって会話ができるか』というテストを、科学的に行っている」と紹介。堀江氏に「イヤになるかならないか」を判断するときには、何を見ているのか尋ねた。

堀江氏は「うさんくさくない人かどうか」が基準だと話す。「前年比1500%達成!といった経歴を書く人がいるが、そもそも前年の運用期間が少ない、とか、話を盛っちゃう人はうさんくさいので、飲みに行きたくなくなる。自分の失敗や弱みまで含めて語れるような人は、僕はいいな、と思っている。カルチャーフィットというのは、ある意味、自分の彼女に対して『性格も良くて料理もできて、謙虚で』といった全部の条件を求めているようなものだけど、別に『会社に合わせろ』ということではなくて、何か間違ったときに素直に認められるような能力というのを、僕らは見ている」(堀江氏)

ジラフの麻生氏は、スタートアップとしての「採用のフェーズが変わってきた」という実感があるようだ。「創業から1年半ぐらいまでは、精神論的だが(基準が)『頑張れる人』みたいな感じだった。起業家プラス5〜6人、というときには、その温度感を一緒に持ってやれる人かどうか、というところを見ていた」と言う麻生氏。

「そこから規模が大きくなるにつれて、不器用な人というか『必殺技は持っているんだけど、今いる会社では上司から好かれない』とか、ちょっと変わった人が入ってくるようになってきた。ジラフではそういう人が多いので、みんなお互いに認めあっている、という環境になってきた」(麻生氏)

フェーズが変わったタイミング、きっかけについては「資金調達をして、大きめのオフィスに移転して、人をどんどん採用していくという中で、業務を回すために『頑張れない人』、定時に来て定時で普通に帰る、という人を入れていく時期は来る。今はそういう時期だな、と思っている」と麻生氏は言う。

また、倉橋氏や堀江氏と共通する点として「ポテンシャルがある人、過去の経験にとらわれず、会社が求めていることの説明を素直に受け止めてもらえて、うまくいかなくてもすぐに違う挑戦ができる、試行錯誤できる人を採用するようにしている」と麻生氏は言い、「そういう人は若い人に多い。今は20代の人を採用させてもらっている」と話している。

「ただ、20代は能力差が結構あって。すごく優秀な人を1人採るのと『普通に仕事ができます』という人を2人採るのでは、優秀な人を1人採った方がいい。そういう人は他の人も連れてこられるし、正の循環が回るというイメージがある。そこの質をどう担保するのか、ということも同時に意識はしている」(麻生氏)

リファラル採用、それぞれの「巻き込み方」「口説き方」

続いては、リファラル採用について。それぞれ、知り合いをどう巻き込むのか、成功している事例を各社に聞いた。

堀江氏は「自分事として考えること」が大切だという。「経営者は自分事として考えないことが多いけれど、もし自分が社員だったとして、この会社に本気で親友を誘えるか、と考えると、それは『この会社が好きかどうか』にかかっている。あとは、業績・社風的に信頼できるかどうか。僕らは、業績を上げることはもちろんだが、サービスの魅力を上げることなどで、まずは社員に好きになってもらうように頑張ることが大事」(堀江氏)

好きになってもらったその後は、社員の中で紹介を頑張った人を積極的に表彰し、Slackなど全社員の見えるところで称賛する文化を作ったことで、リファラル採用が加速した、と堀江氏は説明する。

「僕は学生起業家だったので、(自分の周りには)まだそれほど人材がいない。社員経由のリファラル採用のほうが最終的には増えてくると思う。また、1人の知り合いよりも100人の知り合いを探した方が圧倒的によいので、自分の紹介での採用もあるが、社員の紹介もかなりある」(堀江氏)

麻生氏は、基本的には自分がつかまえてきた人材が多い、と言う。「僕の場合は、採用したい人は2年かけて追いかける、ということをやっていた。3カ月おき、半年おきに飲みに行ったり、ごはんを食べたりして、定期的に会う。これはDeNA(創業者)の南場さんが『SHOWROOM』プロデューサーの前田さん(現在はSHOWROOM代表取締役社長の前田裕二氏)を採用するときに数年かかった、という話を聞いたのだが、それを真に受けてやっている感じだ」(麻生氏)

実際に2年かけて採用したエンジニアや、半年以上かけて口説いて入社した人事責任者が、現在ジラフでは働いているそうだ。

面談からどう踏み込ませるかについては、社員に会わせることが強い武器として機能している、と麻生氏は説明する。「うちは現場に自信があるので、口説いた上で『じゃあ、実際働く人に会いに来てみなよ』と来てもらい、社員に会わせるとだいたい一緒に働きたいと思ってもらえる」(麻生氏)

またジラフでは比較的早い段階で、CxO経験者を採用している。その手法について麻生氏はこう話している。「優秀な人ほどキャリアアップを真剣に考える。スタートアップに挑戦したいが、考えた結果、不安が大きくなることも。そういう方に対しては、今のキャリアから次のキャリアに進むときに『ステップアップしてるよね』という状態をちゃんと作るために、ポストや部署を用意する。その代わり、『そのポストで、これ以上の人は採れない』というギリギリの一番いい人を採用する、ということは毎回やっている。そこは妥協しているつもりはない」(麻生氏)

スタートアップでは「今後それよりいい人を採れなくなる」ということを恐れて、ポストを用意しない起業家も多いが、麻生氏は「僕はちゃんとポストを用意し、ストックオプションなども提示して、僕らの会社に普通なら来ないような人を取り込む、ということを連続的に繰り返している」と言う。

倉橋氏はリファラル採用について「仕組み化するのが難しい」と述べている。「社員が少ないときは一通り候補に当たり終わると、どうしよう、みたいな話になるので、あまり効率的な仕組みではない。ただ、僕らの場合は社員の平均年齢がだいたい30〜32歳ぐらい。そこで『日本酒を飲みまくる会』など、お酒の力を借りて、ガードが弱くなったところで仲良くなるようにしている(笑)。月に1〜2回、外の人を気軽に呼んでこられるような場を用意する、これだけはちょっとした仕組みとしてやっている」(倉橋氏)

もうひとつリファラルに効くテクニックとして、倉橋氏は「今のフェーズまでは、現実的な話を社内でもあまりしない、というのを貫いてきた」と言う。「夢のある話の方が、みんな楽しそうに話すので、外にも伝播しやすい。いざその話が外に伝わって新しい仲間が増えたときにも、はじめに夢で共感している場合、現実化するところでも人はなかなかぶれない。だから入社した後も安定しやすい」(倉橋氏)

こうして、とにかく夢を社内全員で語るようにしている、というプレイドで、倉橋氏が「ここまで来たか!」と思ったエピソードがあるそうだ。「採用候補者に『みんなものすごいレベルで夢を語りますね。これって事前に準備しているんですか?』と質問された。それほど、気持ち悪いぐらいに、それぞれの口から夢が出てくる。そういう会社って強くなれるんじゃないかな、と信じている部分はある」(倉橋氏)

ここで寺田氏から「メンバーと一緒に採用にチームとして取り組んで動き、ありがたかったこと、うれしかったことは?」と質問があった。

麻生氏は「僕の場合は学生起業ということもあり、中途採用のときに『スタートアップに転職するのはいいですよ』と僕の口から言うと、ポジショントーク感が強くなる。それを大手企業から転職してきた人に説明してもらうと、説得力が変わる、ということはある。また、口説きに行く、というやり方は一般の従業員では難しいケースが多いが、僕以外でもCFOなど、目的意識が強い人間が説得して『逃さず採りに行く』という採用ができる人がいるのは、すごく助かっている」と言う。

また倉橋氏は、人事採用の責任者から日々聞いていた苦しみとして「求人票を作れない」という話を紹介。「要は『こういうことができる人が欲しい』という求人を一切出してきていないわけで、エージェントも困るだろうし、人事採用担当もこのギャップを埋めるのは大変だったと思う。けれども、会社の成長も含めて、時間をかけながら、採用責任者がエージェントとコミュニケーションをしっかり取ってきてくれたおかげで、『変だけど、めっちゃいい会社があります』という感じで紹介してもらえるようになった。難しかった部分ではあるが、突破できると逆に強みになるのではないか、という気が最近ではしている」(倉橋氏)

採用失敗エピソード、やっておけば良かったことは?

この後は、会場からの質問で「一番の採用失敗エピソード」を各社に教えてもらった。

麻生氏は「経験者を採りたい時期に中途採用をしたが、あまり一緒に頑張ろう、という気持ちでやってもらえなかった事例があった」ことを紹介。「今では明確な採用失敗というのは起こらなくなってきた。社内で選考フローも作り始め、『こういう項目を見ましょう』というのも体系化されてきている。あとは、必ずどんな人でも僕が面接に1回は入るようにし、自分で見て『この人なら』という人だけを採るようにしている」(麻生氏)

堀江氏からは、採用の失敗ではないが初期メンバーとそれ以外のメンバーとのギャップについての悩みが打ち明けられた。「最初の10人がものすごくファイタータイプというか、タフな人間が多かった。となると後半に入ってくる100人目、120人目とかが、それを見てビックリしてしまう。そういうわけで、あらかじめ『めっちゃ働いている人もいれば、18時に帰ってる人もいるよ』とある程度、現実とのすりあわせが僕らにも必要なのかな、とは思っている」(堀江氏)

倉橋氏も失敗ではないが、やっておけば良かったこととして、採用すべき人材の順序・時期について述べた。「僕のようなビジネス系、マーケティングやディレクション系人材の採用は、スタートアップでも比較的困らないケースが多いと思う。だが、難しいのがエンジニアやデザイナーの採用。特に僕たちのようなB2Bのプロダクトの場合、デザイナーが一番難しい。うちはエンジニアについては初期から良い人材がいて助かっているけれども、デザイナーとして中核になる人間を、社員数5人10人のフェーズで1人でも採れていたら、立ち上がりはもう少し早かったのではないか、という気はする」(倉橋氏)

最後に、寺田氏からの「採用PRとして、こういうことを発信すべき、また注意すべきという点は?」との問いにも各社に答えてもらった。

堀江氏は、四半期に50人を採用したときの話として「僕自身が一番、社内だけでなく社外にも夢を語りまくっていた」と話す。「社長の思い、ビジョンを元々知った状態で面接に来てもらう、ということをとにかく心がけている。採用の確度も高まるし、社長自身が発信することは大事だ」(堀江氏)

麻生氏からは「僕らはストレッチして、優秀な人を採っていくようにしている。けれども優秀な人ほど、いろいろなことがすぐにできてしまい『褒められるのが当たり前』という環境になって、仕事が面白くなくなっていくことが多い」と“良い人材”を採用することに対しての注意点を述べた。

「僕らの環境では『いろいろなところで褒められてきた人たちが真剣にやらないといけない』という状況にするようにしている。30歳になろうという人たちが、真剣にキャッチアップしていく、という環境を作っていこうと思っているし、そこに挑戦的な気持ちで参加できる人に来て欲しい」(麻生氏)

倉橋氏は「採用広報、PRは正しく伝えることだと思う」と言う。「採用広報、PRを考え始めると、伝え方を間違えそうになるというか、自分たちらしくない伝え方や、いいところを探そうとして、そんなに大した話ではないのに外に出そうとしてしまうなど、自分たち自身が迷い始めることがいろいろある。でも、プロダクトも採用も、自分たちの努力以上のものは外には伝わらない。だから良く思われたいんだとしたら、本当に努力するしかないかな、と思っている」(倉橋氏)

レシピ動画サイトのdelyがソフトバンクなどから33.5億円の大型調達、新規事業やM&Aも視野に

この2年ほどで大きく市場を拡大させたレシピ動画サービスだが、その競争はさらに激化しているようだ。2017年末には「DELISH KITCHEN」を運営するエブリーが20億円超の資金調達を発表して業界を騒がせたが、今日1月22日には「kurashiru(クラシル)」を運営するdelyがその金額を上回る33億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。今後は調達した資金をもとに、人材やマーケティングを強化。さらに新事業やM&Aなども視野に入れているという。

今回の資金調達はソフトバンク、YJキャピタルの運用するファンドであるYJ2号投資事業組合、アカツキ、ユナイテッドなどを引受先とした第三者割当増資。なおYJキャピタルやユナイテッドはdelyの既存投資家だ。今回の調達により、同社は累計約70億円を調達したことになる。

dely代表取締役の堀江裕介氏

delyは2014年の創業。もともとはデリバリーサービスを展開していたが、約半年でピボット。その後はキュレーションメディア事業を展開。その中で反響のあった「動画」を軸にして、現在のクラシルを作った。

クラシルは当初、FacebookやInstagramなどのプラットフォームに動画を掲載する「分散型」の動画コンテンツを配信していたが、その後スマホアプリを展開。2017年8月には、レシピ動画数が世界一になった(ナイルの「Appliv」調べ。料理レシピ動画掲載アプリ内のレシピ動画数)と発表した。同年12月時点でのアプリダウンロード数は1000万件を超えた。

「マーケティングコストをかけたこともあるが、テレビ(でのプロダクト紹介)での露出も多いので、マスへ展開できつつある。本来オンラインマーケティングとテレビCMだけでは時間がかかるところが、うまくいっている。僕自身もテレビに何回か出演しているが、そこまでになるとテレビCMを見てもダウンロードしてくれないような属性……例えばガラケー(フィーチャーフォン)からスマートフォンに変えたばかり、というような人にもリーチできるようになってきた」(dely代表取締役の堀江裕介氏)

そう語る一方で、「料理のサイトでは、お金がかかるのは分かっていた。50億円なり、100億円なり必要だと思っていた。スピードが速い戦いではあるが、想定どおりだ」(堀江氏)と周辺環境も踏まえて説明する。

クラシルでは現在、タイアップ広告のほか、アドネットワークと月額480円の課金サービスを展開してマネタイズを進めている。

「課金は積み重ねるモデルなので、直近は広告(アドネットワーク)が中心になる。またタイアップも順調。(クライアントとして)想定していた上位50社に関してはほとんどタイアップをやらせてもらった。メーカーの広告予算は『テレビCM+ネット広告』で毎年すでに用意されているので、(その年度の)途中から入るのは難しかった。だが、一度やってくれた企業は翌年の予算を用意してくれている」

「(クックパッドなどの競合と)コンペでバチバチに当たるかというとそうでもない。オンラインに対する予算は全体的に増えており、かつ分散している。彼ら(クライアント)にとって『次のヘビーユーザー』となる40歳以下の層は、テレビを観なくなってきている。そこに当てるのはモバイル動画。テレビが観られないようになってから、その層にアプローチするのでは遅い。そういう流れができている」(堀江氏)

業績については開示していないが、狙えば今年度の単月黒字化も見えている状況だという。「とは言えまだまだ成長フェーズ。(黒字化するより)広告費用にどんどんつぎ込む」(堀江氏)

また冒頭に触れたとおり、今後は新規事業の展開に加えて、スタートアップのM&Aや投資も検討しているという。

「料理のメディアだけに閉じたマーケットは(規模が)見えているので、会社としては事業を複数作ろうとしている。今で言えば仮想通貨回りだとか、いろいろなものがある。僕は『モバイル動画』の波(トレンド)にはギリギリ乗れたが、それまで大きな波はなかった。今の会社を経験しつつも、新しいことを探し続けるのは役目では無いのか。どこまでいっても『大きいこと』を言ってしまうので、いつも自分との戦い。でもそれを達成しつつあって、やっと“ほら吹き”から“マトモ”になってきた」(堀江氏)

現在は新規事業に向けた人材も採用中だ。海外で活躍するエンジニアなども新規事業に向けて採用を薦めているという。「情報を僕自身が取って、インタビューして、発信して、仲間を集めるフェーズだと思っている」(堀江氏)

レシピ動画メディア「kurashiru」運営のdely、総額30億円の資金調達

dely代表取締役の堀江裕介氏

レシピ動画メディア「kurashiru [クラシル] 」を展開するdely。2016年11月に5億円の資金調達を発表したばかりの同社が、続けて大きな資金調達を実施した。

kurashiru [クラシル] のアプリ

同社は3月27日、ジャフコ(ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合、ジャフコSV5スター投資事業有限責任組合、YJキャピタル(YJ2号投資事業組合)、gumi ventures(gumi ventures 2 号投資事業有限責任組合(所在地:東京都新宿区、無限責任組合員)、Das Capital(連続起業家である木村新司氏の投資会社)、佐藤裕介氏(フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長)ほか既存投資家、個人投資家を引受先とした総額約30億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

既報の通りだがdelyは2014年2月の設立。当初はフードデリバリーサービスを展開していたが間もなくキュレーションメディア事業にピボット。2016年初からは動画コンテンツに注力し、その中でも成長の兆しが見えた料理レシピの領域に注力した。

もともとはFacebookやInstagramなどのソーシャルメディアでの動画配信を中心とするいわゆる「分散型メディア」としての動きを強めていたが、現在では自社アプリでも動画コンテンツを配信している。アプリのレビューは1万2000件、平均スコアは5点満点中4.9点。Google Play「ベスト オブ 2016日本版」の「ベスト自己改善アプリ賞」を受賞。また3月にはApp Store Japanの総合ランキング1位獲得も獲得したという。

delyは今回の調達にあわせて「長期的にはグローバル展開も考えられ、国内レシピ動画市場の開拓と併せて推進していく予定」だとしている。また料理動画の周辺事業をはじめとした新規事業を展開するほか、M&Aにも積極的に進めるとしている。

料理動画の分散型メディア「KURASHIRU」、運営元のdelyが約5億円の資金調達

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料理レシピの動画を配信する分散型メディア「KURASHIRU」を展開するdely。同社は11月28日、YJキャピタル、gumi ventures、ユナイテッドおよび個人投資家(フリークアウト取締役COOの佐藤裕介氏ともう1人)から合計約5億円の資金調達を実施した。資金はKURASHIRUのマーケティングおよび運営、開発メンバー増強に充てるとしている。

一時はスタッフが全員会社を去る事態に

delyの創業は2014年2月。当初はフードデリバリーサービスを展開していたが、2015年に入って、女性向けのキュレーションメディア運営に事業をピボットした。2016年初からは動画コンテンツに注力。料理や美容、ライフスタイルなどの領域で動画コンテンツを制作していたが、2016年春をめどに料理動画にコンテンツを集中。キュレーションメディア時代からの名称である「KURASHIRU」として、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアのほか、自社アプリで月間1000本ほどの動画コンテンツを配信している。ユーザーは24歳から35歳が中心。女性比率は92%だという。

メディア事業へのピボット時には、共同創業者を除く全員が会社を去るような状況にもなったというdelyだが、現在は約60人のスタッフが在席。そのうち約40人が料理動画の制作や編集に関わっている状況だという。「(調理している)スタッフはみんなユーザーから採用している。現状、自分たちの持っている媒体で募集をかけると100人ほど応募が来る状況」(dely代表取締役の堀江裕介氏)

Instagramと自社アプリが再生回数をけん引

delyは5月にシリーズAの資金調達と月間再生本数1億回という数字を発表している。この数字自体は、当時展開していた美容やライフスタイルなど別の領域の動画の本数も合算しているため、現在の月間再生本数はこれを下回るそうだが「数字は増えている。Facebookは数字が余り伸びていないが、Instagramは1本で14〜15万回再生されるなど数字が凄く伸びている」(堀江氏)

また、もともとは分散型で自社メディアを持たないことで起こるリスクを低減させようと始めた自社アプリのダウンロード、動画再生も好調だという。

アプリは現在(11月28日9時時点)App Storeの総合ランキングで9位。InstagramやAbemaTV、メルカリなどよりも上位にランクしている状況だ。「広告も出しているが、オーガニックでのダウンロードの割合が高い。僕らは超貧乏なスタートアップ。お金がないなら工夫するしかなかった。だからお金で買えない数字を伸ばそうと目指した結果が出てきた」(堀江氏)。例えばInstagramにアップした動画からアプリのダウンロードをどう促すかといった、細かなグロース施策が奏功しているのだという。アプリは今後1年で1000万ダウンロードを目指す。

動画ネイティブ広告も順調

クライアントの商品を使ったレシピを紹介するような動画ネイティブ広告の案件も増加しているという。「最初は確かに苦戦したし、不安だった。キュレーションメディア(のネイティブ広告)でも苦労したが、そもそも『このメディア(分散型の動画メディア)とは何だ』という説明からしなければいけなかった。そのため動画についての講演も各地でやってきた。だが競合(の分散型動画サービス)も含めて競って市場を広げてくれたおかげでマネタイズもそんなに困っておらず、黒字にしようと思えばできる状況。(1つの案件も)シーズンで数千万円、年間で億単位にもなる状況」(堀江氏)

ネイティブ動画広告において同社が重要視するのは再生完了率だ。堀江氏は一般的な分散型動画の動画広告の再生完了率が約3割なのに対して、KURASHIRUは5〜7割と高いと語る。「コスメやライフスタイル系の動画だとどうしても宣伝臭が出がちだが、料理だと普通のコンテンツと変わらない。僕らもPRのために以前には総再生回数を出していたが、再生数でなく再生完了数(が大事)。ポジショントークと思われるかも知れないが、言い続けないといけない」(堀江氏)。さらに、他ジャンルに比べてクリエイティブのチェックにかかる時間が少ないため、ディレクター1人単位で担当できる案件も増え、結果的に利益率の高さにも繋がるとも語った。

大きなビジョンと、それを裏打ちする成長があると語る堀江氏。だが競合を見てみれば動画領域では元LINE元代表取締役社長・森川亮氏のC Channelやグリー元取締役の吉田大成氏のエブリー、さらに料理領域ではお家騒動こそあれど月間6000万ユーザーを誇るクックパッドなど、ビッグネームが並んでいる状態。堀江氏は周辺環境についてこう語った。

「前回の事業(フードデリバリー)で失敗したことで完全に振り切れて、また今は事業が伸びたから色んな壁が見えてきた。競合がある種の『レジェンド』ばかりで、普通に戦ったら学生起業家(筆者注:堀江氏は創業当時学生だった)では勝てない。どう勝つかを考えたら僕自身が成長するしかない。経験では劣っているが他の面で勝負する。僕らのビジョンにあるのは『Make Future make history』という言葉。ナンバーワンじゃないと歴史に残らないので、今の状況は超おいしいチャンスでもある」

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dely代表取締役の堀江裕介氏