ここに来てMozillaの存在意義, WebKitに乗り換えないことの意味

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今週初めにOperaは、Prestoと呼ばれる独自のレイアウトエンジンを捨ててWebKitに鞍替えする、と発表した。Google、Appleに続いて今度はOperaだから、オープンソースのWebKitエンジンは今、大きな支配的勢力になりつつある。しかしMozillaのCTO Brendan Eichは昨夜の記事で、Mozillaは当面、レンダリングエンジンを変えない、との意思を表明した。Mozillaは上記3者のような営利企業ではないので(そのことをふだん忘れている人も多いと思うが)、そのミッションも自ずから異なるのである、と。

Eichは、“Mozillaがふつうの企業なら、Operaと同じことをしただろう”、と言う。“しかしわれわれは企業ではないし、またデスクトップにおけるシェアは、横ばいもしくは伸びていると思われる。それには、Geckoがもたらした短期的な勝利、という側面もある”。

Eichはさらに続けて、“われわれがWebKitの波に乗ってしまえば、そのブラウザはWebKitを核とするChromeと何ら変わりのないものになる。しかし、そのようなモノカルチャーはWebに良いものをもたらさない。WebKit一色でなく、FirefoxがありInternet Explorerがある、という多様性が重要だ”、と言う。しかもEichの見方では、8つのビルドシステムがあり多様なフォークもあるWebKitは、単一の存在ではない(8、AppleのNitro、iOSバージョンのSafari、…)。グラフィクスのバックエンドやネットワークスタックも、それぞれ異なる。“Android 2.3のときWebデベロッパたちは、WebKitの不統一性に苦労したのだ”、とEichは書いている。

またWebKitに切り替えるとしたらその費用は、Operaに比べてMozillaでは相当に大きい、とEichは言う。Operaはデスクトップのシェアが比較的小さいから、切り換えの費用も比較的少ないが、それでも、ささいな額とは言えない。しかしMozillaは、XMLベースのユーザインタフェイス構築言語 XULに、大きな有形無形の投資を蓄積している。それを捨ててWebKitに乗り換えたら、Firefoxアドオンの膨大な資産とエコシステムを失うことにもなる。

独自のエンジンを持つからこそ、Firefox OSやFirefox for Androidなどのプロジェクトも可能になる。中でもとくにEichは、今Firefoxが使っているGeckoエンジンの次世代版Servoに、大きな期待を抱いている。Servoは、マルチコアのCPUと大規模並列処理のできるGPU向けに最適化されている。だから、ブラウザのマルチスレッド化(==内部的並列処理化)ではAppleやGoogleよりも一歩進んだものになる。

Webデベロッパにとって、OperaがWebKitに切り替えたことは大きな意味を持たないだろう。元々、サイトをOpera向けに最適化していたデベロッパは、それほど多くないからだ。デベロッパはむしろ、WebKitへの切り換えを歓迎するだろうし、またMozillaについても、Eichが主張する独自路線の維持が本当に将来のイノベーションを招き寄せるのか、議論したいところではないだろうか。しかしWebも人間社会と同様、健全な多様性こそが、進歩の動因なのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))