Facebook、記事キーワード検索をローンチ―数日中にデスクトップとiOSの全ユーザーに公開

Facebookがついに検索機能を本格化させた。今日(米国時間12/8)、Facebookは記事のキーワード検索公開した。これで情報の発見能力でGoogleに、リアルタイム会話能力でTwitterに挑戦することが可能なる。2年前に「ロサンゼルスに住んでいる私の友達」などという自然言語〔英語〕形式で友達、場所、写真などを検索可能にするグラフ検索が公開されたが、それにくわえて過去記事の内容がキーワードで検索できるようになった。

プロダクト・マネージャーのRousseau Kaziは私の取材に答えて、「この新しい検索は、ユーザーごとに個人化されており、ユーザーがニュースフィード中で以前に興味をもった友達の投稿、写真、ビデオなどを簡単に再発見することを助けることを第一の目標としている」と語った。

たとえば、「歯科医」とか「ピザ」というキーワードで検索すれば友達の推薦が発見できるのでGoogle検索の役割を果たす。一方で「マイケル・ブラウン」とか「高速101号線」などと検索するとTwitterのように最近のニュース記事や、友達からのリアルタイムの交通渋滞情報などが得られる。

今回のアップデートでFacebookは新しいモバイル広告やキーワード広告の導入は計画していない。しかしキーワード連動広告への需要は極めて高いから、Facebookはなんらかのビジネス化の実験を始めることになるのではないか。「レストラン」とか「弁護士」というキーワードに非常な高値がつく状況は容易に想像できる。

キーワード検索は、膨大なニュースフィードの底に埋もれたしまった過去の情報を自由に発見できるようになることでFacebookの性格を大きく変える。 「ユーザーはいわば『コミュニティーの集合的記憶』にアクセスできるようになる」と Kaziは言う。.

これは一方でFacebookの「オブスキュリティー〔曖昧さ、無知〕によるプライバシー」を失わせることになる。これまでFacebobookでは「探しだすのに手間がかかりすぎる」ことによってプライバシーが保たれてきた面がある。もちろん記事検索機能によってユーザーのプライバシー設定が影響を受けることはない。検索はあくまで検索するユーザーに対して個人的に公開された記事だけが対象となる。つまり友達の投稿やコメントが対象で、公開投稿やページの投稿は対象にならない。しかし、友達が「酔っ払った」と告白している投稿を簡単に探し出すことはできるわけだ。ユーザーは自分の投稿をキーワード検索して、スキャンダルになりそうな投稿は削除するなりプライバシー設定を変更するなりしたほうがいいかもしれない。

キーワード・グラフ検索の詳細

Facebookの新検索機能はここ数日ですべてのデスクトップユーザーとiOSユーザーに公開される。Android版については現在バグを修正中ということで、これも近く公開される。 この記事の執筆時点では記事検索機能が有効になっているユーザーは少ないかもしれない。もし読者が私の友達なら、“Josh Constine dancing”と入力すると私がバカをやっていることろが見られるはずだ。

検索結果の表示順序はユーザー別に個人化されたアルゴリズムによって制御される。これはニュースフィードに表示する記事を選択するアルゴリズムに近く、キーワードとの関連性に加えて投稿した友達との親しさなどを総合して決定される。検索結果はニュースフィード形式で表示され、キーワードは青でハイライトされる。検索結果が写真であれば専用の写真閲覧インターフェイスが用意されている。

私が見たデモでは新しい検索機能は直感的で反応も高速だった。検索結果の絞込のための初歩的なフィルターもあるが、Googleのような「高度な検索」オプションが欲しいところだ。

【中略】

Facebookの全知全能化

キーワード検索は「集合的記憶」の活性化と同時に、GoogleのAdWords広告をかくも強力なものにしているユーザーのサービスや製品の「購入意図」を把握するのに役立つ。しかもFacebookはウェブ一般でもないし、Twitterのようにすべての「世界の鼓動」を伝える場でもなく、ユーザーと個人的な関係をもつ友達との親しい会話の場だ。Kaziは「ある事柄について友達の意見をすぐに調べることができるのは非常に強力な機能だ」と語った。

もちろん要求もある。もしリアルタイム会話でTwitterに張り合おうとするなら、時間の逆順〔最新の投稿がトップ〕で表示されるオプションが必要だろう。またわれわれジャーナリストにとっては全公開投稿を対象にした検索機能が欲しいところだ。

また人々の検索の習慣を変えるのは普通に考えるよりもはるかに困難だ。Facebookがグラフ検索を公開してから2年もたつのにローカル・ビジネスの検索シェアをGoogleからいくらかでも奪うまでに至っていない。Facebookには自分たちが強力な検索エンジンであることをユーザーに強く印象づけるキャンペーンが必要だろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Facebookのグラフ検索がGoogleに追いつくには課題山積―精度の向上とサードパーティーのデータへのアクセスが必須

今日(米国時間7/8)、Facebookはアメリカで英語版のグラフ検索の一般公開を開始した。実際にこのサービスを利用してみると、Facebookから構想が発表された当初には予想されなかったような問題が表面化している。

現在、Facebookサイト内の検索はユーザー、投稿された写真、場所、施設などをより適切に発見させることを対象としている。 しかしこのグラフ検索が機能するためには、たとえばレストランの推薦やお気に入りの音楽アルバムなどのユーザーデータを利用することが必要だ。

一言でいえば、グラフ検索はさらに広範囲なユーザー・データへのアクセスを必要とする。ところがPRISMスキャンダルで、NSAがFacebook、Google、Yahoo、Microsoftその他のサイトから情報を得ていたことが明らかになり、ユーザーの不安が増している。

Facebook自身のデータだけでは十分ではない

現在のグラフ検索の核心をなす検索エンジンは、Facebookユーザーが友だち、友だちの友だちと共有し、あるいは一般に公開しているデータを対象としている。この中には居住地域、訪問した場所、位置情報タグのついた写真、「いいね!」したFacebookページなどの情報が含まれる。

残念ながら、Facebookの「いいね!」データは、特に企業のページに対する「いいね!」はユーザーが本当に推薦していることを意味しない。 「汚い「いいね!」(dirty likes)と呼ばれたりするが、企業はFacebookページでファンを増やすためにあの手この手でキャンペーンを仕掛けて「いいね!」をかき集める。「いいね!」を押すと懸賞に応募できたり、特別なコンテンツが見られたり、割引クーポンが入手できたりするなどの仕掛けが頻繁に使われている。 こうして集めた「いいね!」は本来の意味からはかけ離れたものが大部分だ。

これに加えて、ユーザーは定期的にアップデートを受け取るために仕方なく「いいね!」をする場合がある。たとえば近所の生鮮食品店やショッピングモール、子供の通う学校などだ。実際に意見を聞いてみれば別に推薦しているわけではないということもよくある。また「いいね!」を押さない主義のユーザーもいるし、Facebookにページが作られていない企業のプロダクトを強く推薦するユーザーもいる。

つまりFacebookの「いいね!」は、検索エンジンが関連性を判定する情報、検索用語でいう「シグナル」として利用できる。しかしこれ単独ではユーザーが「いいね!」の対象を推薦していると判断する材料にはできない。

Facebookはユーザーがレストラン、店舗、施設などにチェックインしたときに残すレビューも利用しようとしてしている。しかしレストランやホテル、観光地などのユーザー・レビューの分野ではFacebookよりはるかに知名度が高く、膨大なデータを抱える専門サイトがいくつも存在する。だからグラフ検索の精度を高めるためにはFacebookはユーザーがサードパーティーのサービスで共有した情報にもアクセスする必要がある。しかしFacebookはこの点では将来どういう連携策を取るつもりなのか、スケジュールを含めて明らかにしていない。

Facebookはさらにユーザーデータを必要とする

アメリカの英語版Facebookユーザーは今日から新しい検索インタフェースが利用できる(全員に公開されるまでには数週間かかるもよう)。さて、そこでユーザーはまず何を検索するだろう? ある会社に友だちが働いているかどうか、近く訪問する予定の都市に友だちがいるかどうかを調べるかもしれない。あるいは「パリの写真」を検索して友だちの目でパリ観光を楽しもうとするかもしれない。

しかし長期的な視野で考えると、Facebookはグラフ検索をGoogle検索の代わりとして使わせ、Facebookへのトラフィックと滞在時間を大きく増加させたいだろう。前述のようにFacebokkは今後ローカル・レビューやSpotifyのような音楽ストリーミングなどサードパーティーのサービスと提携して検索対象のデータを拡大する計画だ。

今年中にはグラフ検索をモバイル化すると同時に、ユーザーの近況アプデートのテキストを解析して場所や友だちとの関係に関する情報をさらに詳しく収集し、推薦情報を得られるようにするという。

プライバシーに関する懸念

PRISMスキャンダルが暴露される以前は、 「いいね!」やチェンクイン、レビュー投稿などの情報をベースにしたグラフ検索は、Google検索に代わって、それまで個々のユーザーのソーシャルグラフ中に囲い込まれていたデータを広く共有し、役立てることができる素晴らしいツールになるという楽観的な見方が強かった。しかし現在ではユーザーはFacebookの主張する「もっと透明でもっと結び付けられた世界」に対して懐疑的になっている。グラフ検索はもちろんユーザーのプライバシー設定を尊重する仕組みになっているが、ユーザー情報の共有の拡大を目指していることには変わりがない。行き過ぎたソーシャル化への懸念とゆり戻しが起きている現在、ユーザーの関心は情報の共有範囲を狭め、匿名性を拡大する方向に向いている。これはFacebookを含むさまざまなソーシャル・サービスにとって逆風だ。

Facebookはグラフ検索を広告プラットフォームに利用する計画なので、PRISMスキャンダル以後の懐疑的な空気の中で、個人情報を検索エンジンに入れることに対するユーザーの警戒心を解くためにさらに努力する必要があるだろう。その点からも、Spotifyで聞いている曲とかひいきの寿司レストランといった公開することに抵抗の少ないサードパーティー・サービスの情報にアクセスできるかどうかはグラフ検索にとって決定的に重要だ。

残念ながら現在のFacebookのグラフ検索はこうした点で大いに改善の余地がある。しかしこのサービスは今誕生したばかりだ。Facebookには膨大なサードパーティーのデベロッパーとアプリ、そのデータが存在する。グラフ検索はウェブ検索でGoogleに及ばないとしても、この強みを生かすことができればFacebookに少しでも長く滞在させ、Facebook広告を少しでも多くクリックさせるのに役立つだろう。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Facebook、グラフ検索のサンプルを公開―もっと本質的なユーザー体験の改良に力を入れるべきでは?

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Facebookでユーザーがいちばんひんぱんに訪問するのは写真とニュースフィードの部分だろう。それに比べて、最近鳴り物入りで追加された2つの大型プロダクト、タイムラインとグラフ検索は比較的ニッチな機能にとどまっている。

今日(米国時間2/28)、Facebookは グラフ検索をデモするため、サンプルを公表した。しかしその結果はグラフ検索はユーザーが毎日使うようなものではないという印象を強めただけだった。

Facebookが検索機能を強化する必要があるのは間違いない。しかしこれまでのところ、Facebookでは先進的なテクノロジーを見せびらかすのに熱心な一方でユーザー体験の改善ががおろそかにされているのではないだろうか。

先週私はFacebookを取材したところでは、グラフ検索はすでに何十万人ものユーザーに公開されているという話だった。スタートの時点でのユーザーは10万人前後だったようだ(ベータ版への登録はこちら)。しかしユーザーはこの機能を利用するのにあまり熱心でないらしい。そこで、Facebookのユーザーで現在グラフ検索が利用できるのは1000人に1人くらいなのだが、Facebookはいっそうの利用を促すために検索結果のサンプルを紹介するブログ記事を公開した。

紹介されている検索例には、友達の昔の写真やビデオ、大手メディアからの話題のコンテンツなどが含まれている。その他検索されているのは、付近のホテルやレストラン、友だちが訪問したスキーリゾート、自分が以前に訪問した観光名所、友だちが「いいね!」したアプリやビデオ、有名人のホビー、自分と似たような「いいね!」をしている人々、などの情報だ。

Facebook graph Search Examples

しかしこのリストをよく見ていただきたい。読者が毎日検索しそうな項目が1つでも含まれているだろうか? たまにはノスタルジックな気持ちになって過去のコンテンツを引っ張りだしたり、バカンスの計画を立てようとして情報を集めたり、また単に暇つぶしのために検索したりすることはあるだろう。しかしどう考えても近況アップデートや親しい友だちの写真アルバムほどの利用度合いになるとは思えない。

2011年9月にタイムラインが発表された。すばらしい機能には違いない。しかし読者はどのくらいの頻度でタイムラインを使って自分や友だちの過去の投稿を過去に遡って読んでいるだろうか? 全ユーザーの全投稿履歴を表示できるようにするためにFacebookは膨大な資源を振り向けた。しかしそのメリットは? 私が他のユーザーのプロフィール・ページをを訪問するのはほとんどの場合「基本情報」を確認したり最近の投稿や写真を見るためだ。しかしそれならタイムライン導入以前のバージョンでも問題なく表示されていた。それならカバー写真を設定できるようにするだけでアップデートは十分だったかもしれない。

もちろん別の見方もできる。タイムラインとグラフ検索はユーザーの人生の記録をまとめて世界に示すための基礎となる。そこには大きなビジネスチャンスが潜んでいるのかもしれない。グラフ検索連動広告も考えられる。また人々がなにに「いいね!」し、どんな場所を訪問するのかについて高い精度で情報を与えてくれるだろう。グラフ検索は長期的にはFacebookにとってきわめて重要な資産になるかもしれない。繰り返すがグラフ検索はFacebookの保有する膨大なデータを横断的に結びつけるきわめて強力な手段となり得る。

GS Examples

しかし、そうではあっても、やはりこうした検索が必要になる局面はそう多くない。Facebookはグラフ検索をお披露目するイベントを華々しく実施し、第3の柱だと主張した。しかしむしろ「高度な検索」をリニューアルする形で地味にユーザー体験を改善する道を選んだほうがよかったのではないだろうか。友だちの検索を居住地や名前、趣味などをキーワードにして自由に絞りこめるようにしてもらいたかった。どこかで会ったがファースト・ネームしか覚えていない相手をすぐに探せたら便利だろう。そういう機能こそFacebookのユーザーが現実に必要としている検索だと思う。

一方で、ニュースフィードは…2006年のリリース以来ほとんど変わっていない。写真共有も2010年のリニューアル以後だいたいそのままだ。うまく統合、選択された写真ストリーム(ときおり写真による広告が入る)が提供されれば、平均的ユーザーでさえ毎月何時間かはそれを眺めるだろうと思う。これは膨大な広告収入を得るチャンスだ。今のニュースフィードはまだ文字中心だが、写真ストリームはエンゲージメントを高める上で効果があるだろう。さいわい、Facebookは先月私がレポートしたように、モバイル版のニュースフィードについては根本的にビジュアルなものにアップデートしようと準備を進めている

Facebookはユーザー体験に関して豊富な経験を持っている。写真とニュースフィードがいつでもその中心にあることは十分承知しているだろう。それなのに最近はなぜニッチな部分にオーバーエンジニアリング気味の凝った機能を実装することにばかり熱心なのか? Facebookは10億人のユーザーをないがしろにする方向に脱線してはならないと思う。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+