Salesforceがデータの共有に重点を置いたモバイルコラボの営業ツール「Anywhere」を発表

パンデミックでほとんどの従業員が自宅で仕事をするようになる前も、営業担当者はほとんどオフィスの外で働いていた。Salesforce(セールスフォース)は米国時間6月25日、Trailheadx Conference(Salesforce主催の開発者向けカンファレンス)でSalesforce Anywhereという新しいツールを紹介した。チームメンバーがどこにいても共同作業やデータ共有ができるツールだ。

Salesforceの製品担当副社長であるMichael Machado(マイケル・マチャド)氏は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大前から、どこからでも作業できるというテーマについて考えていたと述べた。「当社は、エンドユーザーにとってのモバイルエクスペリエンスが何なのかを考え抜いた。それは高度な独自性があり、なすべき仕事にしっかりと焦点を当て、ユーザーのニーズに応え、ユーザーエクスペリエンスをどう変革できるのかに最適化されている」とマチャド氏は説明した。

パンデミックが常態化し、デジタル技術による協業の重要性が高まるのを目の当たりにした同社にとって、上述したようなアプリは早急に実現すべきアイデアとなった。「新型コロナの出現により勢いがついた。市場を見渡してみると、大きな変革を求める顧客のニーズもそこにあるとわかった。当社はネイティブエクスペリエンスで顧客をサポートしたいと考えた」とマチャド氏は語った。

単なるデータベースとしての役割にとどまらず、個々の営業担当者の状況に基づき最も重要な情報を提供するという構想だ。「ユーザーが欲しい独自のアラートをリアルタイムで提供する。アラートは、ユーザーが使うSalesforceのリストやレポートがベースで、Salesforceのフィールド単位で提供される」と同氏は述べた。

従業員はチーム全体で情報を共有し、その情報に関してチャットできる。マチャド氏によると、他社製品にもチャットツールはあるが、Salesforceのツールはデータの共有に重点が置かれている。Slackや他のビジネスチャットツールのような汎用的なものではない。

画像クレジット:Salesforce

Salesforceは、このツールがCRMでの作業の複雑さを解消する手段になるとみている。営業担当者がCRMツールへの顧客情報入力を好まないのは秘密でも何でもない。だからSalesforceは営業担当者が費やした時間を価値あるものにするために、入力された情報をうまく活用したいと考えている。データ入力作業のためだけにツールが存在するのではなく、営業に関する重要な情報を営業担当者が必要なときに利用できるなら、データ入力はもっと魅力的になるはずだ。また、共有した情報についてお互いにコミュニケーションできることは、もう1つの利点だ。

これにより、在宅勤務の労働者にとって重要性が増している新しいコラボレーションレイヤーが生まれる。新型コロナ前の状態に戻ったとしても、出張中の営業担当者はAnywhereでコラボレーションやコミュニケーションを行い、自分のタスクを管理できる。

新しいツールは2020年7月にベータ版で利用可能になる。同社は今年の第4四半期に一般に利用可能になると見込んでいる。

画像クレジット:Lilly Roadstones / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

セールスフォースが顧客管理システム開発のVlocityを約1460億円で買収

米国時間2月25日はSalesforce(セールスフォース)にとって大きなニュースの日となった。共同CEOのKeith Block(キース・ブロック)氏が辞任したことと、Vlocity(ブロシティ)を全額現金で13億3000万ドル(約1460億円)で買収することを発表したのだ。

セールスフォースがこのスタートアップをターゲットにしたのは偶然ではない。同社は6つの業界(通信、メディア・エンターテイメント、保険・金融、エネルギーを含む公益産業、ヘルスケア、政府と非営利団体)向けのCRM(顧客管理システム)を開発する会社であり、Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)はCVCだ。起こるのがわかっていたかのような買収のようだ。

CRM Essentials(CRMエッセンシャルズ)の創業者でありプリンシパルアナリストであるBrent Leary(ブレント・リーリー)氏は、「セールスフォースは同社のビジネスを発展し続けるためにVlocityが重要なターゲットだと考えている」と言う。「同社は、Vlocityやライフサイエンスに注力するVeeva(ビーバ)などのISV(独立系ソフトウェアベンダー)との戦略的提携を進め、業界固有のソリューションを提供する能力を強化している。この動きは、業界に特化した機能をプラットフォームの一部に組み込むことの重要性を示している」とTechCrunchに語った。

Constellation Research(コンステレーションリサーチ)の創業者でありプリンシパルアナリストのRay Wang(レイ・ワン)氏も、セールスフォースによる買収は良いものだと考えている。「素晴らしいディールだ。Vlocityはセールスフォースが必要とする業界プラットフォームを提供する。さらに重要なことは、この買収がGoogle(グーグル)による買収を防いだことと、今後4年間で100億ドル(約1兆1000億円)規模の企業向け売上高の成長をもたらす可能性がある点だ」と同氏は語った。

Vlocityはこれまで約1億6300万ドル(約179億円)を調達した。直近のラウンドは昨年3月に6000万ドル(約67億円)を調達したシリーズCで、バリュエーションは約10億ドル(約1100億円)だった。Vlocityがセールスフォースにもたらすものを考えれば、13億3000万ドル(約1460億円)は少し安いと思う向きもあるだろう。ワン氏は、それはむしろVlocityがセールスフォースを必要としているからだと言う。

「セールスフォースなしではVlocityに明るい未来はない。両社は一緒でなければならない。同社としてはすぐに買収する必要はなかったため自前で成長することもできたが、今買収するのがいいということだろう」とワン氏は述べた。

とはいえ、Vlocityは10億ドル(約1100億円)で評価されてから1年経たないうちに、13億3000万ドル(約1460億円)で売却された。累計で1億6300万ドル調達しているから、総投資額が8.2倍になったということだ(13億3000万ドル÷投下資本1億6300万ドル=約1460億円÷約179億円)。

Vlocityのウェブサイトのブログ投稿で、創業者兼CEOのDavid Schmaier(デイビッド・シュメイエ)氏が買収取引を前向きにとらえてこう述べた。「Vlocityはチームとして、最も重要な6つの業界向けに変革のソリューションを創造、開発、発展させてきた。買収取引が完了し、この素晴らしい会社はセールスフォースの一員となる」

通常、買収取引完了は規制当局の承認が条件となっている。本買収はセールスフォースの2021年1月期第2四半期中(2020年5〜7月)に完了の見込みだ。

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

Salesforce共同CEOのキース・ブロック氏が辞任

米国時間2月25日、Salesforce(セールスフォース)は同社の共同CEO、Keith Block(キース・ブロック)氏の辞任を発表した。この結果ファウンダーであるMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏が、CRM巨人の単独CEO兼会長になった。ブロック氏の略歴はSalesforceの役員紹介ページからすでに削除されている

ブロック氏は長年にわたる同社在籍中にバイスチェアマン、プレジデントおよびディレクターを務めたあと、2018年に共同CEOの職に就いた。それ以前はOracleに勤めていた。2012年に当時のOracle CEOであるMark Hurd(マーク・ハード)氏を批判する文書を複数公開した後Oracleを退社した。ハード氏は2019年に死去している。

業界ウォッチャーはブロック氏の共同CEO就任を、将来同氏が単独CEOになる前兆と見ていた(ベニオフ氏が降板するという前提で)。この短かった共同CEO在籍期間から見て、そのシナリオはありそうにないが、現時点でブロック氏はベニオフ氏のアドバイザーとして会社に残ることになっている。

「マーク(ベニオフ氏)とともにチームを率いてきたことは私にとって最大の名誉だった。このチームはSalesforceの売上を私が入社した2013年の40億ドル(約4410億円)から、2019年の170億ドル(約1兆8750億円)へと4倍以上に増やしてきた」と用意された声明でブロック氏は語った。「今、我々はグローバル企業としてさまざまな業界に目を向け、この分野で羨望の的となるエコシステムを持っている。私は当社の社員、顧客、およびパートナーズを誇りに思っている。すばらしい日々を終えた今、私は次章への旅立ちの準備を整え、今後もアドバイザーとして会社と密な関係を続けていく。マークと一緒に仕事ができたのは驚くべき機会であり、ふたりの友情に永遠に感謝するともに現在会社の進んでいる方向を誇りを思う」

関連して、同社は元BT Group CEOのGavin Patterson(ギャビン・パターソン)氏をSalesforce Internationalのプレジデント兼CEOに任命したことを発表した。

関連記事:
Keith Block talks life at Salesforce and being a Boston sports fan in San Francisco(未訳)

Salesforce promotes COO Keith Block to co-CEO alongside founder Marc Benioff(未訳)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ZendeskがCRMプロダクトのためのアプリストアを開設

2018年にZendeskは、同社の中核であるカスタマーサービスソフトウェアとともに使えるCRMコンポーネントを顧客に提供するためにBaseを買収した。BaseのCRMは買収後に名称が「Sell」と変更された。米国時間1月17日、Zendeskは新たに「Sell Marketplace」の開設を発表した。

画像:cifotart / Getty Images

新たに開設されたマーケットプレイスの正式名称は「The Zendesk Marketplace for Sell」で、他社がここでSellプロダクトの機能を拡張するコンポーネントを共有できる。開設時点では、MailChimp、HubSpot、QuickBooksなどのコンポーネントが利用できるようになっている。

Sell Marketplaceのアプリディレクトリ(画像提供:Zendesk)

ZendeskのシニアバイスプレジデントでゼネラルマネージャーのMatt Price(マット・プライス)氏は、マーケットプレイスはSellをプラットフォームにするものであり、「ゲームチェンジャー」になり得ると見ている。同氏は、このマーケットプレイスをスマートフォンにおけるアプリストアのインパクトに例える。

「(スマートフォンが)単なるプロダクトから産業(の誕生)へと加速し、急激に変化して、プラットフォームとなった。このマーケットプレイスは、同じことをしつつある。優れたセールスツールであるSellをアプリで拡張し、あらゆる課題を扱えるようになる」と同氏は説明する。

プライス氏は、プロダクトの拡張にはいくつかの利点があると語る。まず、顧客は新しいアプリ開発フレームワークを使って専用アプリを作れる。これにより、Sellをそれぞれの環境に合わせ、例えば社内システムに接続したり独自の機能を構築するなどのカスタマイズができる。

また独立系のソフトウェアベンダーがカスタムアプリを作ることができる。これはプライス氏が指摘するように、ベンダーがこれまでZendeskのカスタマーサポート機能に関して手がけてきた内容のようなものだ。「Zendeskには独立系デベロッパーの大きなコミュニティがあり、Zendeskのサポートプロダクト(のためのアプリ開発)に携わっている。マーケットプレイスの開設で、デベロッパーが携わることのできるプロダクトをもうひとつ増やしたことになる」と同氏は語る。

さらに、パートナー企業各社のソフトウェアへの接続もできるようになる。例えばDropbox for Sellをインストールすれば、セールス担当者は書類をDropboxに保存し、Sellと組み合わせて扱える。

ZendeskがSell Marketplaceで始めたことは、もちろん目新しいわけではない。Salesforceは2006年にAppExchangeを発表して、CRMの世界にこのようなアプリストアのコンセプトを導入した。しかしSell Marketplaceによって、Sellのユーザーはそれぞれに固有のニーズに応じてプロダクトを拡張できるようになった。これは強力な追加機能になるかもしれない。

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(翻訳:Kaori Koyama)

セールスフォースがCommerce Cloudで開発者体験を向上させるツールを発表

Salesforce(セールスフォース)は米国時間1月13日、プログラマーが業界用語で「ヘッドレス」システムとして知られるCommerce Cloud上で、アプリケーションを簡単に構築できるように設計された新しい開発者向けツールを発表した。これにより、開発者はコンテンツをサイトのデザインや管理から切り離すことができ、また企業はどちらのコンポーネントも独自に変更できる。

この目標を達成するために、同社はCommerce Cloudプラットフォームに組み込まれた機能を開発者がゼロから構築することなく利用できるようにする、いくつかの新しく拡張されたAPIを発表した。例えば、Salesforceの人工知能プラットフォームであるEinsteinを利用して、次善のアクションのような要素をサイトに追加することができる。これは、ほとんどの開発が通常は利用していない高度な機能だ。

開発者はこれらのツールとデータを共有するために、eコマースサイトから他のエンタープライズシステムに接続する必要があることも多い。このニーズを満たすために、セールスフォースはMuleSoftを利用している。MuleSoftは、同社が約2年前に65億ドル(約7200億円)で買収している。セールスフォースはMuleSoftの統合技術を利用することで、ERPの金融システムや製品管理ツールといった他のシステムとの接続や、2つのシステム間での情報交換を支援することができる。

CRM Essentialsの創業者でセールスフォースの初期メンバーだったBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、消費者がAmazon(アマゾン)に期待するような統合ショッピング体験を開発者が作成するのに必要なツールを、開発者に提供することを支援すると述べている。

「これらのツールは『Moment of Truth』(真実の瞬間)に提供されるリアルタイムの洞察を開発者に提供することでコンバージョン機会を最適化し、プロセスを自動化して注文とフルフィルメントの効率を向上させる。これにより、Salesforceのエコシステム内の開発者は、Amazonのような体験を提供するために必要なものが得られる」と、Leary氏は語る。

顧客がこれらのツールを快適に使えるようにするため、Salesforceはソリューションを互いに議論し共有できる開発者のコミュニティにアクセスする新しいCommerce Cloud Development Centerと、コードサンプルとTrailhead教育リソースを備えたSDKを発表した。

Salesforceは、今週ニューヨークで開催されるNational Retail Foundation(NRF)Conferenceの一環として、これらを発表した。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

マーク・べニオフがAppStore.comドメインをスティーブ・ジョブズに贈った舞台裏

Salesforce(セールスフォース)の創業者であるMarc Benioffマーク・ベニオフ)氏は著書「Trailblazer」(邦訳未刊)で、Apple(アップル)の創業者であるSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏がまいたアイデアの種がどのようにして最初のエンタープライズアプリストアとして実を結んだのか、それに対しベニオフ氏がAppStore.comドメインを贈ってジョブズ氏に報いることになった経緯を語っている。

セールスフォースが1999年に始めたエンタープライズクラウドサービスは同社が道を切り開くのに大きく貢献したが、2006年にオンラインストアで関連サービスを配布する最初のSaaS企業になったとき、さらにもう一歩踏み出した。

同社のCTOで共同創業者のParker Harris(パーカー・ハリス)氏は年のSalesforceの20周年に関するインタビューで、AppExchangeを始める3年前に、スティーブ・ジョブズ氏とのミーティングでアプリストアのアイデアが生まれたと語った。ベニオフ氏、ハリス氏、共同創業者のDave Moellenhoff(デイブ・モレンホフ)氏は2003年、ジョブス氏と会うためにクパチーノを訪れた。ミーティングで、伝説のCEOは3人に賢いアドバイスを送った。「企業として本当に成長・発展したいのなら、Salesforceはクラウドソフトウェアエコシステムを開発する必要がある」。これは現代のエンタープライズ向けSaaS企業にとっては当たり前のことだが、2003年当時のベニオフ氏とそのチームにとっては斬新だった。

ベニオフ氏が著書で述べているように、ジョブズ氏のいうアプリケーションエコシステムとは何を意味していたのか、はっきり説明してほしいとベニオフ氏はジョブス氏に頼んだ。ジョブズ氏は、アイデアをどのように実現するかはベニオフ氏次第だと答えた。そのコンセプトの熟成には時間がかかった。ベニオフ氏は、ジョブス氏とのミーティングから数年後のある晩、夕食時にアプリストアというコンセプトがひらめいたと書いている。レストランの座席に座ってナプキンに最初のアイデアをスケッチしたという。

「ある晩、サンフランシスコで夕食を取っているとき、抗い難いほどにシンプルなアイデアがひらめいた。 世界中の開発者がSalesforceプラットフォーム用の独自のアプリケーションを作成できるとしたら?そして、Salesforceユーザーなら誰でもダウンロードできるオンラインディレクトリにアプリを格納すると当社が提案したら?」。

同氏が語った通りに物事が展開したかどうかはともかく、App Storeというアイデアは最終的に実現した。ただ当初は、現在のAppExchangeという名前ではなかった。ベニオフ氏は、AppStore.comという名前が気に入り、翌日弁護士にドメインを登録してもらった。

立ち上げ前にベニオフ氏は顧客にその話をした。彼らはオンラインストアのコンセプトは気に入ったが、同氏が考えた名前についてはいいと思わなかった。同氏は結局その名前をあきらめ、2006年にAppExchange.comという名前で立ち上げた。続いて2007年にはForce.comが始まり、プログラマがアプリケーションを作成しAppExchangeで配布できる本格的な開発プラットフォームを提供することになった。

その間、AppStore.comは2008年まで休眠状態だった。ベニオフ氏はiPhoneに関する大きな発表イベントに招待され、再びクパチーノを訪れた。ベニオフ氏は当時「クライマックスの瞬間にジョブスが発した『みなさんにApp Storeをお届けする』という言葉に卒倒しそうになった」と述べている。

ベニオフ氏は、同氏とSalesforceの幹部がその名前を聞いたとき、実際息をのんだと書いている。どういうわけか、最初のミーティングから紆余曲折を経て、両社は同じ名前にたどり着いたのだった。ただ、Salesforceのほうは結局採用しなかったため、ベニオフ氏がメンターに名前を譲る余地を残すことになった。ベニオフ氏は基調講演の後にバックステージを訪ね「ジョブズ氏にドメインを譲渡する契約にサインした」と著書で述べている。

だが結局、ウェブドメインのアイデアは、App Storeのコンセプトという意味では、ジョブス氏にとってそれほど重要性を持たなかった。スマホにApp Storeを入れたため、アプリをダウンロードする際にウェブサイトを必要としなくなったからだ。おそらくそれが現在、ドメインがiTunesストアを指定し、iTunesを起動する(または開くオプションを提供する)理由だ。

Apple.comのApp Storeページも、現在サブドメイン「app-store」を使用している。だがジョブス氏とベニオフ氏の間の会話が最終的にエンタープライズソフトウェアの配信方法に大きな影響を与え、ベニオフ氏はジョブス氏のアドバイスに報いることができたといういい話だ。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

セールスフォースの新しい社長兼COOはカリスマエンジニアのブレット・テイラー

Salesforce(セールスフォース)は米国時間12月12日、Bret Taylor(ブレット・テイラー)氏を同社の社長兼COOに任命したことを発表した。今回の昇進に先立ち、テイラー氏はすでに社長兼最高製品責任者(CPO)を務めていた。

画像クレジット: Salesforce

新しい役職で同氏は、セールスフォースのグローバルな製品ビジョン、エンジニアリング、セキュリティ、マーケティング、コミュニケーションのリードなどの、多くの責任を負うことになる。これは重責である。そのため、彼はMarc Benioff(マーク・ベニオフ)会長に対して直接報告する立場になる。

テイラー氏は、ここ数年にわたってその責任を増やしており、同社が毎年開催する大規模な顧客会議のDreamforceでは、セールスフォースからの最も重要な発表の多くをリードしている。実際、ベニオフ氏は声明の中で、テイラー氏はすでに本日の昇進以前の段階でも、製品のビジョン、開発、市場投入戦略を担当していたのだと述べた。

「彼の責任のポートフォリオが拡大することで、急速な成長と拡大を実現しつつ、顧客のみなさまのさらなる成功と革新を推進することができるのです」とベニオフ氏は声明で述べている。

同社を設立当初から見守っていた、CRM Essentialsの創業者であるBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、これは今後の事業継承の計画の一部になり得ると感じていると言う。この昇進は、ベニオフ氏と共同創業者のキース・ブロック氏が将来引退を考えたときに、テイラー氏が継承できるように準備を整えるサインなのかもしれない。

「将来のどこかの時点で大きな椅子に就けるように、彼のために準備が整えられているように感じます。彼は現在のリーダーたちの次の世代ですが、スタートアップでの彼の経験と象徴的な企業での象徴的なテクノロジーの創出の経験は、セールスフォースのような会社の中で彼に独特の地位を与えました」とリアリー氏はTechCrunchに語った。

Constellation Researchの創業者であり主席アナリストのRay Wang(レイ・ワン)氏は、テイラー氏はセールスフォースの新星であると述べている。「Facebookの「いいね!」ボタンやGoogleマップ、その他のイノベーションを発明した人物として、彼はテクノロジーチームをさらに発展させるための『選ばれし人物』(Chosen One)です」とワン氏は言う。

ワン氏は、テイラー氏の強みは、アイデアを市場へ投入するための現実的な道筋を迅速に決定することであることと同時に、複雑さを単純化する能力でもあると付け加えた。「これはセールスフォースにとって良い動きであり、彼らのチームが持つ人材層の厚さを示しています」と彼は言う。

2016年8月にセールスフォースが7億5000万ドル(約822億円)でQuipを買収したときに、テイラー氏はSalesforceに入社し、その後2017年11月に社長兼最高製品責任者(CPO)に昇進した。Quipを立ち上げる前は、彼はFacebookの最高技術責任者(CTO)だった。

関連記事:Salesforceがワードプロセッサアプリを提供するQuipを約822億円で買収

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(翻訳:sako)

セールスフォースがService CloudにAmazon Connectを導入

Salesforce(セールスフォース)とAWSは継続的なパートナーシップの拡大を発表した。両社のパートナーシップは2016年のインフラサービスに関する4億ドル(約434億円)の合意に始まり、昨年には両社間でのデータの統合に拡大されていた。今年は、セールスフォースは同社のService Cloudのコールセンターソリューションの一部として、Amazon ConnectでAWSのテレフォニーと通話のトランスクリプション(文字起こし)サービスを提供すると発表した。

画像:vgajic / Getty Images)

Service Cloudプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのPatrick Beyries(パトリック・ベイリーズ)氏は「我々はAWSと戦略的パートナーシップを組んでいる。そのためお客様は我々からAmazon Connectを購入すれば、あらかじめ統合されていてすぐに通話をトランスクリプションできるし、もちろん通話の録音もできる」と説明する。

セールスフォースはほかのテレフォニーベンダーとも提携しているので、顧客はAmazonのソリューションのほか、Cisco、Avaya、Genesysからも選択できるとベイリーズ氏は語っていることに注目だ。

こうしたテレフォニーのパートナーシップはService Cloudのコールセンターサービスに足りない部分を埋めるもので、セールスフォースから直接、通話そのものにアクセスできるようになる。テレフォニーベンダーが通話のトランスクリプションを処理し、それをセールスフォースに渡す。するとセールスフォースはEinstein(アインシュタイン)という同社のAIレイヤーを使ってトランスクリプトを「読み取り」、CSRとして次にとるべきアクションをリアルタイムで提示する。こうしたことはチャットなどのチャネルでは可能だったが、音声のやりとりではできていなかった。

ベイリーズ氏は「会話が進むと、消費者はどういう問題が起きているかを説明する。Einsteinはその会話を『モニタリング』している。会話が決定的な局面になるとEinsteinはその内容を理解し、具体的な解決策を担当者に示す」と言う。

セールスフォースはService Cloudのこの新機能を来年春に試験的に開始する。一般への提供は来年夏になる見込みだ。

わずか1週間ほど前にセールスフォースは、同社のMarketing CloudをMicrosoft Azureに移行する大規模なパートナーシップを発表した。最近の一連の発表は、セールスフォースはビジネスの理にかなっていれば複数のクラウドパートナーとこれからも協力していくことを示している。今回はAmazonの番だった。

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(翻訳:Kaori Koyama)

セールスフォースとアップルの提携による新ツールが登場

昨年開催されたSalesforce(セールスフォース)の年次顧客カンファレンスDreamforceで、Apple(アップル)とセールスフォース提携開始を発表した。この提携では、アップルデバイス上でのセールスフォースプロダクトの作動を向上させるために両社が共同開発を進める。そして今年のDreamforceが始まった11月18日、提携の結果として2つの新たなツールが使えるようになったと発表した。これらのツールは昨年の会議で発表されていたものだ。

まず最初に、アップルはセールスフォースのモバイルアプリの再デザインにセールスフォースとともに取り組んだ。素早く操作できるようSiriショートカットを使えるようにするなど、iOSの機能を盛り込むというものだ。モバイルデバイスでは面倒と感じがちなタイピングの代わりに音声で操作できるようになる。

写真:Salesforce

例えば「ヘイシリ、次の商談」と言うとSiriがセールスフォースのCRMと連動し、商談出席者の名前や企業名、最後に商談出席者に会ったのがいつだったか、Einstein opportunity score(Salesforceの商談有望性を数値化したもの)がどんなものかを教え、本日の商談がどれくらいうまくいきそうかを予測する。

加えてモバイルアプリでは、変更を即座にデバイス間で反映させるためにアップルのハンドオフ機能を利用し、Face IDでアプリに簡単にログオンできる。

セールスフォースはまた、SalesforceモバイルでのEinstein Voiceのテスト展開も発表した。この機能では、セールスパーソンが音声でノートを開いたり、タスクを追加したり、CRMデータベースをアップデートしたりできる。Einsteinはセールスフォースの人工知能レイヤーで、音声機能はセールスパーソンが尋ねたことを理解するために自然言語を活用している。

同社によると、アップデートされたアプリのテストに1000社以上が参加していて、同社史上最大規模になっているとのことだ。

加えて、新しいモバイル開発プラットフォームSDKも発表した。これはSwift言語を使ったiOSとiPadOSのために作られている。セールスフォースのデベロッパーがiPadとiPhone向けのアプリを構築できるようにするツールを提供し、Swift UI、そしてPackage Managerと呼ばれる新しいツールをひとまとめにするというのが狙いだ。

写真:Salesforce

Trailhead Goというのは、セールスフォースのiPadとiPhone向けにデザインされたオンライン学習プラットフォームのモバイル版だ。新しいMobile SDKを使って作られていて、これによりユーザーがウェブでアクセスしている同じコースにモバイルコンテキストでもアクセスできるようになる。新しいモバイルツールには、必要に応じてピクチャー・イン・ピクチャーとマルチタスクのための画面分割のサポートでデバイス間でやり取りできる機能も含まれる。

Salesforce MobileとTrailhead GoはiOSのApp Storeで本日から無料で利用できる。そしてSalesforce Mobile SDKは今年中に利用できるようになる見込みだ。

両社の提携が発展するにつれ、両社はその恩恵を受ける。セールスフォースはアップルの機能に直接アクセスできるようになり、最適な方法でそうした機能を埋め込めるようアップルと協業できる。一方のアップルは、世界最大の企業向けソフトウェアベンダーの1社であるセールスフォースを通じて企業に深くアクセスできるようになる。

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(翻訳:Mizoguchi)

SalesforceがMarketing CloudをMicrosoft Azureに移行すると発表

エンタープライズソフトウェアの世界では、ときどき不思議な組み合わせが出てくるものだ。米国時間11月13日、Salesforce(セールスフォース)はCloud Information Modelに関してAWSとの大きな意味を持つ連携を発表した。そしてその翌日、セールスフォースは同社のMarketing CloudをMicrosoft Azureに移行すると発表した。エンタープライズの協力関係があっちに行ったりこっちに行ったりして混乱することがあるというのを体現しているようだ。

画像:Steve Jennings / Sean Gallup / Getty Images

セールスフォースとMicrosoft(マイクロソフト)は、セールスフォースのSales CloudとService CloudをMicrosoft Teamsと統合することでも協力すると発表した。

同社は、自社のデータセンターで稼働してきたMarketing Cloudを数カ月以内にMicrosoft Azureに移行する計画だ。ただし現時点では移行の明確なタイムラインは示されていない。AWSと熾烈な争いをしているマイクロソフトにとって、これは大きな意味を持つ。AWSが市場をリードしていることは明らかだが、マイクロソフトはここしばらく強力な2番手となっている。セールスフォースを顧客として迎えることは、マイクロソフトにとって品質の証明のひとつになる。

CRM Essentialsの創業者で長年業界をウォッチしているBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、この連携はビジネスに対するマイクロソフトの現在のアプローチを強く表していて、同社はゴールを達成するために幅広い連携を望んでいるのだと語る。リアリー氏はTechCrunchに対し「セールスフォースがアマゾンよりもマイクロソフトとの関係を深めることを選んだというのが重要なニュースで、セールスフォースの強化によってマイクロソフトのCRMツールであるDynamics 365が脅かされるおそれがあることをマイクロソフトは問題視していない。マイクロソフトの成長を最も大きく担っているのはAzureであることが、その主な理由だ」と述べた。

両社はこれまでもずっと複雑な関係にあった。マイクロソフトのCEOがSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏だった時代には、CRM製品をめぐって法廷で争っていた。その後、マイクロソフトのCEOになったSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は2015年のDreamforceカンファレンスで仲良くする意向を示した。それ以降、両社の関係は一進一退だったが、今回の発表で敵というよりは友に近づいたようだ

とはいえ、セールスフォースがCloud Information Modelに関してAWSとの連携を発表したばかりであることも見逃せない。Cloud Information ModelはAdobe、Microsoft、SAPのパートナーシップと直接競合するものであり、セールスフォースはデータの統合に関するAWSとの大規模な連携を昨年発表している。

こうした矛盾するような関係はややこしいが、現在のコネクテッドクラウドの世界においては、市場のある部分で激しく戦う企業同士であっても、別の部分では両社と顧客のためになるなら協力しあおうとすることの表れだ。今回の発表はこうしたケースと思われる。

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(翻訳:Kaori Koyama)

AWSとSalesforce、GenesysがLinux Foundationと組んで新たなオープン・データモデルを発表

昨年AdobeとSAP、Microsoftの3社はOpen Data Initiativeを結成した。負けてはならじとAWSとSalesforce、Genesysの3社もThe Linux Foundationと提携してCloud Information Modelを発表した。

2つの競合するデータモデルには共通点がたくさんある。どちらも、データを集めて共通のオープンモデルを適用する。こうした大会社のソフトウェアのユーザーがよく経験する問題であるプロダクト間の相互運用を容易にしよう、という考えだ。

Linux Foundationのエグゼクティブディレクター、Jim Zemlin(ジム・ゼムリン)氏は、このプロジェクトはCloud Information Modelの中立なプラットフォームを提供するものであり、コミュニティーの人々が協力して問題解決にあたることができる、と語った。「セントラルガバナンスモデルの下で協力することでコミュニティーの誰もが貢献できる。コミュニティー全体のデータ相互運用と規格開発の推進と、急速な普及に対応するための道をひらく」とZemlin氏は声明で語った。

当初は参加各社ごとに異なった形でモデルを使用する。AWSはAWS Lake Formation ツールと併せて使用することで、顧客がさまざまなデータソースから得たデータの移動やカタログ化、保存、事前処理などを行うのを助ける。一方、Genesysの顧客はクラウドとAIプロダクトを使ってさまざまなチャネルを横断してコミュニケーションをとる。

SalesforceのPatric Stokes氏は、Cloud Information Modelを自社のCustomer 360プラットフォームの基礎的データモデルとして使うと言っている。「AWS、Genesys、The Linux Foundationというパートナーを得て、このデータモデルをオープンソース化することを大いに喜んでいる」とStokes氏はTechCrunchに語った。

もちろん、競合する2つの「オープン」データモデルが出てきたことで、両プロジェクトが一緒になる道が見つかるまで何らかの摩擦は避けられない。事実はと言えば、多くの会社がこれら各社のツールを使っているので、もし競争が続くようなら、そもそもこうしたイニシアティブを作る目的に反している。

MicrosoftのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が 2015年にこう話していた。「それは私たちの責務なのです。特に私たちのようなプラットフォームベンダーは、顧客の抱える本当に困っている問題を解決するために、幅広いパートナーシップを結ぶことが求められているのです」。もしそうであれば、競合するモデルが存在していては目的を果たすことができない。

関連記事:価値の高いビジネスデータを共有、MSとアドビ、SAPがOpen Data Initiativeを拡大

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Salesforceがオペラ・ハウスを臨む立地にシドニー社屋を建設、5年間で1000人新規雇用へ

Salesforce(セールスフォース)は今週、新たな社屋を建設すると発表した。場所はオーストラリアのシドニーで、港とアイコン的存在のシドニー・オペラ・ハウスを臨むロケーションだ。Salesforceはまた、今後5年間で1000人を新規雇用し、持続可能なスタイルの社屋にすることを約束した。

実際、Salesforceはこの社屋が完成すれば、オーストラリアで最も環境に優しいビルのひとつになるとうたっている。「新ビルはシドニー初のWELL Certified Core(人間の健康と快適性の評価に特化した建物認証)の最上位グレードのWELL Platinumの認証も得ている。また、世界でも素晴らしい持続可能なデザインであることを示すレーティングで6star Green Starデザインを獲得する見込みだ」とSalesforceのElizabeth Pinkham(エリザベス・ピンクハム)氏はこのプロジェクトを発表したブログ投稿で述べた。

Salesforceの常として、ビルが完成すればシドニーで最も高い建築物になる。シドニーのオフィス街のCircular Quay(サーキュラー・キー)に立地し、1階には店舗やレストランが入居する予定だ。同社のモダンな他のタワーと同様に、最上階は社員や顧客、パートナーがフレキシブルに活用できる専用フロアになる。このビルはまた、社交ラウンジ、マインドフルネスのエリア、従業員がコラボするさまざまなスペース、そしてイノベーションセンターも備える。

Salesforceによると、同社がシドニーで事業を開始して15年超になる。そして今回のタワーはそのプレゼンスを1カ所に集約するもので、かつ今後5年間に数百人を新規雇用するだけのスペースを有する。

今回の発表より前の今年初め、同社は2001年から事業を展開している同国のダブリンでオペレーションを集約するため、シドニー同様の巨大タワーの建設を発表した。

イメージクレジット:Salesforce

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(翻訳:Mizoguchi)

TableauがAIで分析を高速化するツールを公開

Tableau(タブロー)はSalesforceに157億ドル(約1兆7000億円)で買収されると今年6月に発表されたが、そのずっと前から今秋のアップデート版を開発していた。米国時間9月18日、同社はAIで分析を高速化する「Explain Data」という機能など新しいツールをいくつか発表した。

Tableauの最高製品責任者であるFrancois Ajenstat(フランソワ・アジェンスタッド)氏は「Explain Dataは、データ上で何が起きているかを自動で明らかにし説明する。これによりユーザーは、何が起きたかを理解する段階から、なぜそれが起きたと思われるかを理解する段階へと進むことができる。我々は、先進的な統計エンジンをTableauに組み込んだ。このエンジンが起動すると、ユーザーの代わりにデータをすべて自動で分析する。そして、あるデータポイントの動きに最も関連があると考えられる要因を説明する」と説明する。

この機能のメリットは分析の自動化によってユーザーが時間を節約できること。「先入観を排除して適切に分析し、自動化を活用してデータをより深く見ることにつながる」とアジェンスタッド氏は補足する。

画像:Tableau

同氏は、ユーザーがこれまですべて手作業で分析していたことを考えると、これは大きな進歩だと語る。「人間はあらゆる組み合わせを試してすぐれたインサイトを得ていたかもしれないが、それは手作業だった。これからはこのエンジンを使ってほとんどのことを自動化し、インサイトを見つけることができる」とコメントしている。

この機能には大きな利点が2つあると同氏は言う。AIドリブンであるため、有意義なインサイトをこれまでよりずっと短時間で得られるということと、データを厳密に評価できるということだ。

Tableauは新しいカタログ機能も発表した。これはデータのソースを示す「パンくず」、つまりデータのある位置を提供するもので、ユーザーはデータの出所がどこなのか、関連性があるのか信頼できるのかを知ることができる。

さらに同社は新しいサーバ管理ツールも発表した。大企業全体にTableauを広く展開している場合に、集中管理しやすくするツールだ。

これらの機能はすべて、すでにTableauの顧客に提供されている。

画像:metamorworks / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

従業員アンケートのCulture Ampが約87億円を調達

不幸な企業がどう不幸かはそれぞれだが、従業員が何に満足し、何に満足していないかを理解する道はある。

メルボルンにある創業から8年のCulture Ampは、従業員が匿名で職場についての意見を伝えられるようにする企業のひとつで、多くの顧客から集めた匿名の従業員アンケートのデータをもとに、各社がお互いに学び、どのような取り組みをすべきかを提示している。

Culture Ampはカスタマーベースの拡大を狙い、Sequoia Capital Chinaが主導したシリーズEで新たに8200万ドル(約87億円)と大規模な調達を果たした。このラウンドには、Sapphire Ventures、Felicis Ventures、Index Ventures、Blackbird Ventures、Hostplus、Skip Capital、Grok Ventures、Global Founders Capital、TDM Growth Partnersも参加した。

これにより、同社がこれまでに調達した資金は1億5800万ドル(約168億円)と、それまでのおよそ2倍になった。同社は2018年7月にシリーズDで4000万ドル(約42億5000万円)を調達していた。

同社のアンケートソフトウェアはサブスクリプション方式で、従業員の感情を追跡し得られたデータを視覚化するためのテンプレート、質問、分析がすべてそろっている。このソフトウェアは四半期ごとのエンゲージメント調査などに使えるほか、業績評価、目標設定、自己評価にも活用できる。

従業員アンケートは画期的なものではないが、Culture Ampは匿名のフィードバックをチームレベルにまで落とし込み、従業員が自分の上司に直接フィードバックできるようにすることで、プロセスを改善しようとしている。

同社CEOのDidier Elzinga(ディディエ・エルジンガ)氏は、現在2500社の顧客がいて合計で300万人の従業員が同社のアンケートに参加していると語る。このネットワークの集団的知性を従業員の離職などの予測につなげられることが、おそらく同社の最大の価値提案だという。

同氏はTechCrunchに対し「従業員のエクスペリエンスを理解し、どこに力を入れればいいかがわかったら、お客様が行動するために我々は何ができるだろうか。我々には数千社の集団的知性がすでにあり、これを活用すれば同じような問題を抱える人々から学ぶことができる」と語った。

Culture Ampの従業員数は400人で、顧客にはマクドナルド、Salesforce、Slack、Airbnbなどがある。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Salesforceが中国でのローカライズと販売に向けてAlibabaと提携

20年の歴史があるCRMツールのリーダーSalesforce(セールスフォース)は、中国テック企業最大手のひとつ、Alibaba(アリババ)と提携してアジア進出を進める。

両社が7月25日に発表したところによると、Alibabaは中国本土、香港、マカオ、台湾の企業に対してSalesforceを独占的に提供し、SalesforceはAlibabaが販売する企業向けの独占的なCRMソフトウェアスイートになる。

中国のインターネットは、TencentのWeChatメッセンジャーやAlibabaのTaobaoマーケットプレイスなど、もっぱら消費者向けのものとして利用されてきた。しかし企業向けソフトウェアが企業や投資家から注目を集め始めている。例えばワークフローオートメーションのスタートアップのLaiyeは最近、Cathay Innovationの主導で3500万ドル(約38億円)の資金を調達した。成長段階のファンドであるCathay Innovationは、中国では「企業向けソフトウェアの急速な成長が始まった」と見ている。

このパートナーシップにはお互いに利点がある。Alibabaは、膨大な数の中小企業に対してeコマースのマーケットプレイスで販売したり、自社のクラウドコンピューティングサービスで提供したりすることのできる、Salesforceに相当する製品を持っていない。Salesforceのような大手と組めば、この欠落が埋まる。

一方のSalesforceは、Alibabaを通じて中国で売上を伸ばすことができる。Alibaba Cloud IntelligenceのKen Shen副社長は声明の中で、AlibabaのクラウドインフラとデータプラットフォームはSalesforceにとって「ソリューションをローカライズし、多国籍企業のお客様にとってよりよいサービスを提供できる」ものだと述べている。

Salesforceは声明で「多国籍企業のお客様から、世界中どこでも、事業を展開しているところでは対応してほしいという要望が増えている。このことが、今回Alibabaとの戦略的パートナーシップを発表した理由だ」と述べている。

430日までの3カ月間のSalesforceの売上は、20%がヨーロッパ、70%が米国で、アジアはわずか10%にすぎない。

Salesforceはこの提携により、顧客獲得のチャネルを得るだけでなく、中国ベースのデータをAlibaba Cloudに保存することもできるようになる。中国では、海外企業はすべて、中国のユーザーに由来するデータの処理と保存は中国国内の企業と連携しなくてはならない。

Alibabaの広報はTechCrunchに対し「この提携により、中華圏で事業を展開しているSalesforceのお客様はAlibaba CloudでローカルにホストされているSalesforceに独占的にアクセスできるようになる。Alibaba Cloudはローカルのビジネス、文化、規則を理解している」と述べた。

クラウドはAlibabaにとって垂直成長の重要な部分だ。大手の提携先の獲得は、中国最大のクラウドサービスプロバイダとしての基盤強化につながる。Salesforceは2018年12月に日本のスタートアップへの投資を目的とした1億ドル(約108億円)のファンドを設立して、アジア進出を前進させた。今回のAlibabaとのパートナーシップにより、いよいよアジアの顧客を獲得していくことになるだろう。

画像:Alibaba

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(翻訳:Kaori Koyama)

セールスフォースのタブロー買収は大規模だが史上最大ではなかった

160億ドル(約1兆7382億円)というような金額の話をしていると、数の感覚が麻痺してくる。今日(米国時間6/10)Salesforce(セールスフォース)がTableau(タブロー)を157億ドル(約1兆7056億円)で買収した。それが巨大な企業買収であったことは間違いないが、史上最大ではなかった。

2017年に新たしい税法が施行されたとき、大手IT企業は巨額の資金を海外に保管して税を逃れ、一方ではM&Aの波がやってくるだろうと、多くの人々が憶測した。たしかにそれは起こった。

BoxのCEO Aaron Levie氏がTwitterで指摘したように、これは既存の支配的なツールを打ち負かすような最高のツールを開発すれば、マルチビリオン企業を作れることの証明でもある。われわれはこれまでに何度もそれを見てきた。150億ドル(約1.6兆円)企業までいかなくても、マルチビリオンの値札のついた巨大企業がたくさん生まれた。

昨年だけで、10件の買収が行われ総額は870億ドル(約9兆4517億円)に上った。最高金額の称号はRed Hatを340億ドル(3兆6938億円)で買ったIBMが勝ち取ったが、それでさえ史上最大の企業買収ではなかった。そこで本誌は、歴代の巨大企業買収のベストテンを作ることにした。これで、今回の契約の位置づけが感じ取れるかもしれない。

SalesforceがMuleSoftを65億ドル(約7062億円)で買収(2018年)

当時これはSalesforce史上最大の買収であり、今も続いている。それまでも同社は買収を繰り返していたが、その多くは比較的コンパクトなものだった。しかし、なんとしても企業データにアクセスしたい同社はMuleSoftが欲しくなり、そのための費用を払う決断を下した。

MicrosoftがGitHubを75億ドル(約8148億円)で買収(2018年)

ライバルに遅れを取るまいと、Microsoftはちょうど一年前にGitHubを大枚75億ドルで買収した。当時デベロッパー・コミュニティーには心配する向きもあったが、これまでのところMicrosoftはGitHubが独立子会社として活動することを許している。

SAPがQualtricsを80億ドル(約8691億円)で買収(2018年)

SAPは、QualtricsがまさにIPOしようとしていたところに割り込み、断れない条件を提示した。Qualtricsは、顧客満足度を測るツールをSAPにもたらした。それはSAPに欠けていたものであり、大金を払うことに躊躇はなかった。

OracleがNetSuiteを93億ドル(約1兆104億円)で買収(2016年)

OracleがNetSuiteを買収したことは驚きではなかった。当時Oracleはクラウドへの移行を進めていたときであり、すぐれたSaaSツールを必要としていた。NetSuiteは、すぐに使えるパッケージ化されたクラウドサービスをOracleにもたらし、Oracleが喉から手が出るほど欲しかった顧客も一緒についてきた。

Oracle、エンタープライズ向けクラウドサービスのNetSuiteを93億ドルで買収

SalesforceがTableauを157億ドル(約1兆7056億円)で買収(2019年)

ここが今日の案件。Salesforceはふたたびすばやい動きを見せ、巨額を支払ってデータビジュアル化ツールを買い、顧客がSalesforceに限らずどんなデータでもビジュアル的に見られるようにした。さらに言えば、これは昨年のMuleSoft買収を非常にうまく補完するものでもある。

BroadcomがCA Technologiesを189億ドル(約2兆532億円)で買収(2018年)

巨大買収の年の巨額の案件。Broadcomは、半導体メーカーが伝統的ソフトウェア開発・ITサービス会社にこんな金額を払ったことで一部の人々を驚かせた。189億ドルは時価総額の20%に相当した。

MicrosoftがLinkedInを260億ドル(約2兆8246億円)で買収(2016年)

これは当時Salesforceが欲しくてたまらなかった会社だが、Microsoftが財力を生かして勝ち取った。LinkedInの大きな贈り物はデータだった。以来Microsoftはそのデータを製品に変える作業を続けている。

IBMがRed Hatを340億ドル(約3兆6938億円)で買収(2018年)

昨年の終わり近くなってIBMが大きく動き、Red Hatを340億ドルで買収した。IBMは何年も前からハイブリッドクラウドの方式を説いてきたが、Red Hatの買収によってハイブリッドストーリーの説得力がぐっと増した。

DellがEMCを670億ドル(約7兆2789億円)で買収(2016年)

これが全体のトップ。今日の案件をはるかに上回る。この買収は契約締結までにさまざまな障害を超えなくてはならず何ヶ月もニュースに取り上げられた。中でもこの契約に入っていた宝物はVMwareとPivotalで、後者は その後IPOを果たした。この買収のあと、Dell自身も上場した

画像クレジット: Madmaxer / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Salesforceがビジュアルデータ分析のTableauを157億ドルで買収

先週Googleがデータ分析のスタートアップ Looker26億ドルで買収したのもつかの間、米国時間6月9日にSalesforceはビッグニュースを発表した。データのビジュアル化をはじめ、企業の持つ膨大なデータに意味を持たせるビジネスに参入すべく、SalesforceTableau157億ドルで買収する。支払いはすべて株式交換で行われる。

Tableauは上場しており、同社のClass AおよびClass Bの一般株は、Salesforceの一般株 1.103株と交換されると同社は言っている。つまり157億ドルという数字は、Salesforceの2019年6月7日時点の平均株価に基づく会社価値で表した買収金額になる。

これはTableauの最新時価総額から見て大きな飛躍だ。Google Financeによると米国時間6月7日の取引終了時点で同社の時価総額は107.9億ドルだった。(このニュースに伴い同社の株は取引が停止された)。

両社の取締役会はすでに契約を承認している、とSalesforceは言った。両社の経営チームは東海岸時間の午前8時から電話会見を行う。

CRMソフトウェアからデータ分析の深い部分へと多様化を目論むSalesforceにとっても、実に大きな契約だ。

かつて同社はLinkedInを買収しようと力を入れたが失敗に終わった(代わりにMicrosoftが買った)。LinkedInとTablearuに類似点はあまりないものの、今回の契約もSalesforceの既存顧客との結びつきを強化するのが狙いだ。

「世界の#1CRMと#1分析プラットフォームが一緒になった。Tableauは人々がデータを見たり理解したりするのを助け、Salesforceは顧客をつなぎとめ、理解するのを助ける。あらゆる顧客が世界を理解するために必要とする2つの最重要なプラットフォームを組み合わせることで、両方の世界の最高の部分を提供することができる」とSalesforce共同ファウンダー・チェアマン兼CEOのMark Benioff氏が声明で語った。「Adamと彼のチームをSalesforceに迎えるのを非常に楽しみにしている」

Tableauは約8万6000社の顧客を持ち、Charles Schwab、Verizon(TechCrunchの親会社)、Schneider Electric、Southwest、Netflixなどの企業が名を連ねる。買収後もTableauは現在のブランドを継続し独立に運営されるとSalesforceは言った。ワシントン州シアトルの本社やCEO Adam Selipsky氏率いる経営陣もそのまま残る。

ただしそれは両社が今後一緒に仕事をしないという意味ではない。むしろSalesforceは、現在同社がEinsten(2016年に同社が提供開始したプラットフォームで、SalesforceのAIプロジェクトはすべてこの上に作られている)で行っていることを拡大する計画をすでにTableauと検討中だ。オムニチャンネルの営業・マーケティング向けサービスの「Customer 360」についても同様だ。Tableauのサービスの大きな特徴が、大局的な洞察力の提供であることから、この協業は相補的で理にかなっている。

「Salesforceと力を合わせることで、あらゆる人々がデータを目で見て理解するのを手助けする我々の能力が強化される」とSelipsky氏は語った。「世界#1のCRM会社に加わることで、Tableauの直感的で強力な分析機能が、より多くの企業と人々に有意義な洞察を与えられるようになる。」

「Salesforceの驚くべき成功は、顧客のニーズを予測し、顧客のビジネスが成長するために必要なソリューションを提供することから生まれた」とSalesforceの共同CEOであるKeith Block氏は言った。「データはあらゆるデジタル活動の基盤であり、Tableau が加わることで、あらゆるデータを統合しすべてを見渡す強力をツールを提供して顧客に成功をもたらすことができるだろう」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Salesforce Ventures初のハードウェア投資先はエンタープライズドローンのKespry

業務用のユーザーにサブスクリプション方式でドローンサービスを提供しているKespryは米国時間3月27日、Salesforce Venturesからの資金調達を発表した。それは、Salesforceのベンチャー部門としては初めてのハードウェア方面への投資だ。これによりSalesforceとKespryとのパートナーシップが実現し、前者の保険業界向けツールに後者のドローンサービスが統合されることになった。資金の調達額は公表されていないが、Salesforce Venturesのそのほかの投資に比べて相当大きいと思われる。

2013年に創業されたKespryは、主に鉱業や骨材業界(砂利、砕石など)に強く、ドローンで撮影した画像から採掘容積を求める。その他に同社は、最近では建設や保険、エネルギー部門にも顧客を広げている。

CEOのGeorge Mathew氏によると、Kespryの現在の顧客は300社あまりで内200社以上が鉱業と骨材業界、そして40社以上が過去1年以内の新規登録ユーザーだ。

今は、ドローンも人気の盛りを過ぎたかもしれないが、同社のように初期にニッチ市場を見つけた企業は好調だ。CEOはこう言う。「今では活用範囲が広がっているからドローンビジネスは活気があり、また変化も激しい。うちはもっぱら商用利用に目をつけてきたから、産業界の非常に難しい課題にも対応できる。しかしドローンで大規模で有効なビジネスモデルを見つけるのは容易じゃないから、問題を抱えているドローン企業もある」。

彼によるとKespryが好調な主な理由は、そのサブスクリプションモデルと顧客にエンドツーエンドのハードウェアとソフトウェアのソリューションを提供していることだ。

Salesforceからの投資は、ある業界イベントでCEOのMarc Benioff氏にたまたま会ったことがきっかけだ。Salesforceは保険業界向けの業種特定型アプリケーションを目指していたから、当然そこにはKespryの役割もあった。「大きな災害などのあとには保険会社への支払い請求がどっと押し寄せる。すると保険会社は、大量の土地や建物の被害の査定を短期間でしなければならない。明らかにそれは、ドローンの出番であり、その需要は今きわめて多い」とMathew氏は言う。そんな場合Salesforceのツールを使って査定官を現場に送り込むが、彼ら請求査定官は今度はKespryのサービスを利用してドローンを飛ばし、家の屋根がどれぐらい壊れているかなどを調べる。

KespryはSaleforceとのパートナーシップの一環として後者のPledge 1%プログラムに登録している。それは、社員の全労働時間の1%を企業の社会的責任とチャリティ努力に投ずるという企画だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

20歳になったSalesforceから学ぶ、スタートアップ成功の心得

Salesforceは、3月8日に創立20周年を迎えた。当時はOracleやSiebel Systems(シーベル・システムズ)などの1990年代のCRM市場の巨人たちを追いかけていた、この小さくて元気な企業が、今や本格的SaaS企業へと成長した。年間収益が140億ドルを超える同社は、これまで作られたものの中で最も成功している純粋クラウドアプリケーションである。

20年前の時点では、それは製品を出荷することを狙う、アイデアを抱えたスタートアップの1つに過ぎなかった。今では、同社の起業当時にまつわる伝説が語られるようになっている。それマーク・ザッカーバーグ氏の大学寮の部屋や、スティーブ・ジョブズ氏のガレージのようなものではなく、すべては1999年のサンフランシスコのアパートの一室から始まった。元Oracleの幹部だったマーク・ベニオフ氏と開発者のパーカー・ハリス氏がインターネット上で実行されるビジネスソフトを開発するためにチームを組んだのだ。彼らはそれをSalesforce.comと名付けた。

1999年の営業初日に、そのアパートに集まったほんのひと握りの従業員たちの中で、20年後の姿を想像できていた者はおそらくいなかっただろう。特にそれがドットコムクラッシュの始まる一年前だったことを思うとなおさらだ。

今や歓喜の頂点へ

すべては1999年3月8日に、サンフランシスコのモンゴメリー通り1449番地にあるアパートから始まった。そこがSalesforceの最初のオフィスが置かれた場所である。最初に集結した4人の従業員は、ベニオフ氏とハリス氏、そしてハリス氏のプログラミング仲間であるデイブ・メレンホフ氏とフランク・ドミンゲス氏だった。この場所を彼らが選んだのは、ベニオフが近くに住んでいたからだ。

SaaS(Software as a Service)という名のもとに、最初に市場に投入されたものがSalesforceだ、という表現は正確なものではないだろう。この用語はその数年後に登場したものだからだ。実際に、当時は他にもたくさんのエンタープライズソフトウェアのスタートアップたちが、ビジネスをオンラインで行おうとしていた。たとえばその中には、後にNetSuiteに名前を変え、2016年にはOracleに93億ドルで売却されたNetLedgerなどがいた。

ほかにもオンラインCRM競合企業としては、Salesnet、RightNow Technologies、そしてUpshotといった企業が存在していた。いずれの企業も数年のうちに売却されることになる。だがSalesforceだけが独立した会社として生き残った、それは2004年に株式公開され、最終的には世界のトップ10のソフトウェア企業の1つに成長することになる。

共同創業者でCTOのハリス氏は、当初こうしたことが起きることは想像していなかったと、最近語っている。もちろんベニオフ氏とは出会っており、彼がなにか凄いことが起きると考えていることは知っていたのだが。「当時私達が20年後にこんなにも成功した企業となり、世界にこれほどの影響を持つようになるとは、私自身はほとんど想像していませんでした」とハリス氏はTechCrunchに語った。

止めるものは何もなかった

ベニオフ氏とハリス氏が出会ったのはまったくの偶然というわけではなかった。ベニオフ氏は、オラクルからサバティカル(長期一時休暇)を取って、インターネット上で実行されるセールスオートメーションツールを開発することに狙いを定めていた。一方ハリス氏、メレンホフ氏、そしてドミニゲス氏の3人は営業自動化ソフトウェアソリューションを開発していた。そして両者のビジョンが合体することになったのだ。しかし、クライアントサーバーソリューションを構築することと、オンラインソリューションを構築することはとても異なるものだった。

1998年に送られた、マーク・ベニオフ氏からパーカー・ハリス氏へのミーティング出席依頼電子メール(パーカー・ハリス氏の厚意による)

これが1999年だったということを思い出して欲しい。この頃にはサービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS)という概念は存在していない。Amazonが2006年にAmazon Elastic Compute Cloudを発表するまでには、まだ何年も待たなければならなかった。そこでハリス氏と彼の勇敢なプログラミングチームは、スケール可能で成長するソフトウェアの開発とサーバーの提供を、自力で行うことになった。

「ある意味では、それが私たちを成功させた理由の1つなのです。何より先に、私たちは世界規模で考えなければならないことに気付いていたからです」とハリス氏は言う。解くべき問題は、ある大企業向けにCRMツールを1つ構築しては、その組織の需要に合わせて拡張して行ったり、それを次々に横展開して行ったりすることではなかったのだ。本当に行おうとしていたのは、人びとがサインアップするだけでサービスを使い始めることができるような方法を編み出すことだったのだ、と彼は語る。

「ある意味では、それが私たちを成功させた理由の1つなのです。何より先に、私たちは世界規模で考えなければならないことに気付いていたからです」(ハリス・パーカー氏)(Salesforce

それはいまでは、ありふれたやり方に思えるかもしれないが、1999年にビジネスを行う方法としては決して一般的ではなかった。当時のインターネットは、消費者向けの無数のドットコムたちによって支配されていたが、その多くは翌年、またはさらにその翌年に破綻することになる。Salesforceは、オンラインでエンタープライズソフトウェア企業を立ち上げることを望んでいた。そうした試みをする企業は彼らだけではなかったものの、先行者の常として前例のない課題に直面し続けていた。

「当時『サービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS)』が世の中になかったために、ハードウェア層での最適化が行えなかったために、私たちは大規模マルチテナントと呼ぶソフトウェアを作成しました。そしてその上で、最適化を行ったのです。実際には、初期段階では私たちはとても小規模なインフラストラクチャを持っているだけでした」と彼は説明した。

夢を追い続けて

当初からベニオフ氏はビジョンを持っており、ハリス氏はその構築の責任を負った。2007年にZuoraの共同創業者となるティエン・ツオ氏がSalesforceの11番目の従業員になったのは、ビジネスのためのアパートオフィスがオープンして5ヶ月後のことだった。その時点では、まだ公式の製品は存在していなかったが、ベニオフ氏がツオ氏を雇ったときにはそのリリースは迫っていた。

ツオ氏が言うには、彼はプロダクトマネージャーとしての役割を期待していたのだが、彼のOracleでの営業経験を見たベニオフ氏は、彼をADR(Account Dvelopment Representative、マーケティングの集めた見込み客情報を、適切な営業チームに引き渡す役割)として雇用した。「私の本能は、この男に逆らうな、ただ引き受けよ、と告げていました」とツオ氏は語る。

Salesforce.comの初期プロトタイプ(写真提供:Salesforce)

ツオ氏が指摘するように、少数の人間しかいないスタートアップでは、結局肩書には、あまり大きな意味はなかったのだ。「あなたの肩書が何だったかなど、誰も気にしません。私たち全員がそのような姿勢でした。コードを書くか書かないかの違いがあるだけです」と彼は言った。コーダーたちは、サンフランシスコ湾を眺めることのできる2階で隠れるように仕事をしており、ベニオフ氏からは彼らの邪魔をしていけないという厳命が下されていた。残りの従業員たちは階下にいて、顧客を獲得するために電話をかけていた。

「あなたの肩書が何だったかなど、誰も気にしません。私たち全員がそのような姿勢でした。コードを書くか書かないかの違いがあるだけです」(ティエン・ツオ氏)。

Salesforce.comのWayback Machine上の最初のスナップショットは、1999年11月15日のものである。洒落たものではないがCRMツールに期待するものがひととおりそろっていることがわかる。アカウント、連絡先、商談、予想、報告が、タブで分類されている。

このサイトが正式に立ち上げられたのは2000年2月7日だった。そのときの顧客数は200人だった。

遠い道のり

成功したスタートアップの背後にはみな、強力に推進するビジョナリーが控えているものだ。Salesforceの場合、その人物とはマーク・ベニオフ氏だ。彼が会社のコンセプトを思いついたとき、ドットコムブームは加速していた。それから1年か2年で、それらの多くは退場して行くのだが、1999年の時点は何でもありの状況だった。ベニオフ氏は大胆で無鉄砲で、そしてアイデアにあふれた人物だったのだ。

しかし、たとえいいアイデアであってもさまざまなな理由から上手くいくとは限らない。このことは多くの失敗したスタートアップの創業者なら骨身に染みて知っていることだ。スタートアップが成功するためには、この先どうなっていくかについての長期的なビジョンが必要である。ベニオフ氏はビジョナリーであり、そしてフロントマン、チャンピオン、チーフマーケターのすべてを兼ね備えた人物だったのだ。そう言われても彼は否定しないだろう。

The 56 GroupのマネージングプリンシパルでありCRM業界に関する複数の書籍(2001年に出版された「CRM at the Light」などを含む)があるポール・グリーンバーグ氏はSalesforceの初期ユーザーだった。彼によれば、初期の製品にはあまり感心しなかったそうである。ある記事の中ではそのエクスポート機能に対する不満を述べている。

当時のSalesforceの競合相手だったSalesnetは、グリーンバーグ氏の投稿に気付くと、その不満を自社のウェブサイトに掲載した。ベニオフ氏はそれを読むと、早速電子メールをグリーンバーグ氏に送信した。「私どもの製品に疑いを感じていらっしゃるようですね。説得力のある疑念は大歓迎です。納得していただけるよう話を聞いていただけるでしょうか?」グリーンバーグ氏は、ニューヨーカーらしく1行で返信したと語った。「お好きなように」。20年後、グリーンバーグ氏はベニオフ氏はその仕事をやってのけたと語った。彼をついに納得させたのだ。

「私どもの製品に疑いを感じていらっしゃるようですね。説得力のある疑念は大歓迎です。納得していただけるよう話を聞いていただけるでしょうか?」(初期のマーク・ベニオフ氏のメール)

SMBグループの共同創業者兼パートナーであるローリー・マッケーブ氏は、1999年にベニオフ氏がSalesforceを彼女のチームにプレゼンするためにやって来た当時は、ボストンのコンサルティング会社で働いていた。彼女はすぐにマーク本人に感銘を受けただけでなく、エンタープライズソフトウェアをオンラインにして、多くの企業の手に届くものにするという概念にも感銘を受けたと話す。

「彼は、SaaSでもクラウドでも、その他何と呼ぼうと構いませんが、そうしたものの舞台監督だったのです。決して他の人たちが素晴らしいビジョンを持っていなかったという意味ではありませんが、彼のドラムはひときわ大きく鳴り響いていたのです。そして、彼は非常に優れたストーリーテラー、マーケター、その他全てを兼ね備えた人物であるという事実に加えて、オンプレミスソフトウェアはほとんどのビジネスにとって手を出せないものであるという正しい認識を持っている人物だと思いました」と彼女は語った。

極端にやろう

ソーシャルメディアが登場するよりも前の時代に、ベニオフ氏が世間の注目を会社に集めるために行った方法の1つは、ゲリラマーケティングのテクニックだった。彼はインターネット上のソフトウェアを説明する方法として「ソフトウェア不要(no software)」というアイデアを思いついた。2000年2月にモスコーンセンターで開催されたSiebelの会議に、彼は初期の従業員の何人かを「抗議」のために送り込んだ(下の写真)。彼は主要な競争相手の1つにゲリラ的に挑んだのだ、そのことによって、テレビニュースクルーたちによる十分な注目を集め、ウォールストリートジャーナルの中で言及されるほどの騒ぎを巻き起こすことに成功した。こうしたことはみな、まだ初期段階にあった会社にとって、貴重な宣伝となった。

写真提供:Salesforce

ブレント・ラーリー氏は、2003年に業界コンサルタントとして独立し、現在の自分の会社であるCRM Essentialsを立ち上げた人物だ。彼によればこの製品を売り込む力こそが、同社にとっての差別化の力であり、彼の注意を引いた点だと言う。「私はSalesnetやその他のものについても聞いたことがありましたが、Salesforceは本当に良い製品を提供していただけでなく、すでにそれを力強く推進していたのです。彼らは『ソフトウェア不要』の福音を全面的に打ち出すことで、この競争を有利に運んでいるように思えました。そしてそれもショー全体の一部だったのです」とラーリー氏は、Salesforceとの初めての協業体験について語った。

さらにラーリー氏は「私が最初にDreamforce(Salesforceの年次ユーザー会議)に参加したのは2004年でした、その年の会議は特に印象的なものでした。なぜならそれは2004年のエレクションデイ(米国の公職選挙の日)に開催され、ジョージ・W・ブッシュ大統領のそっくりさんがやってきて開会宣言を行ったのです。それが本物の大統領だと思った人もいたことでしょう」と付け加えた。

グリーンバーグ氏は、「ソフトウェア不要」キャンペーンは、ソフトウェアをオンラインで提供するというアイデアを、人間のレベルで語ったことが素晴らしいと語った。「マークが『ソフトウェア不要』と言うとき、もちろん彼自身はソフトウェアがあることは知っていました。ですが、彼が本当に素晴らしい点は、ビジョンを人びとに届ける力に長けているところなのです」。1990年代から2000年代初頭にかけてのソフトウェアは、主にCD(または3.5インチフロッピーディスク)の箱に入って出荷されていた。よってソフトウェア不要という言葉は、そうしたソフトウェアに直接触る必要がないことを人びとに理解させた。単にサインアップして使うだけでよいのだ。グリーンバーグ氏によれば、このキャンペーンは、当時提供手段として一般的でないオンラインソフトを、人びとに理解させる役に立ったということだ。

カルチャークラブ

Salesforceを会社として差別化している大きな要因の一つは、創業1日目から続くその企業カルチャーである。ベニオフ氏は責任ある資本主義のビジョンを持ち、その最初期の計画文書の中に、彼らの慈善1-1-1モデル(1%の誓約)を記している。そのアイデアとは、Salesforceの株式の1%、製品の1%、および従業員の労働時間の1%をコミュニティに提供するということだ。ベニオフ氏がかつて笑いながら述べたように、その誓約を行ったときには、彼らは製品を持っておらず、まったくお金を稼いでもいなかった。しかし彼らはその誓約を忘れず、他の多くの企業もSalesforceが生み出したモデルに従っている。

画像提供:Salesforce

Wildcat Venturesのパートナーであり、ジェフリー・ムーア氏(著書「キャズム」で有名)と「Traversing the Traction Gap」という本を共同で著したブルース・クリーブランド氏は、まさしくベニオフ氏がやったように、初期にカルチャーを確立しておくことが、スタートアップにとって不可欠だと語る。「CEOは、そうしたカルチャーを、自社の運営基準だと言い切らなければなりません。私たちが価値を置くのはそういうところなのです。こうすることで社員たちは、お互いに責任をもって日々の運営を行っていくのです」とクリーブランドは語った。それがベニオフ氏のやったことなのだ。

また別の要素は、顧客との信頼関係を築くことだった。これは今日に至るまでベニオフ氏が追求し続けているテーマである。ハリスが指摘したように、1999年の時点では、まだ人びとはインターネットを完全には信頼していなかったので、同社はクレジットカード情報をオンラインで入力することに対する抵抗を克服しなければならなかった。だがそれ以上に困難だったことは、利用する企業たちに、彼らの貴重な顧客情報をインターネット上で預けることに同意させることだった。

「私たちは規模について考えるだけでなく、顧客の信頼をどのようにすれば得られるのかについても考えなければなりませんでした。顧客に向かって私たちは、ご自身で管理なさるよりも、私たちの方が同等以上に良い情報保護をご提供できますと説得したのです」とハリス氏は説明した。

成長する

同社はもちろんこれらの抵抗を克服し、さらに進むことができた。現在Oktaで共同創業者兼CEOを務めているトッド・マキノン氏が2006年にエンジニアリング担当副社長としてSalesforceに入社したのは、会社が1億ドル規模の会社に成長を始めた頃だった。彼は当時を振り返り、ある程度の成長痛があったことを語る。

2006年から現在に至るSalesforceの収益の成長(グラフ出典:Macro Trends

彼が就任したとき、Salesforceは3台の中規模Sunサーバーを、コロケーション施設に置いて運用していた。マキノン氏はそれは現代の基準から考えるとハイエンドとは言えないものだったと言う。「現代のMacBook Proに搭載されているものよりもおそらく少ないメモリーしか搭載されていなかった筈です」と彼は笑いながら言った。

着任時には同社にはまだ13人のエンジニアしかおらず、実際のインフラストラクチャへの要求はまだとても低かった。それは彼が任にあたっていた6年の間に変わることになるのだが、彼が入社時点ではそれは上手く動作していた。5年以内に、それは劇的に変化したと彼は語る。その当時同社は自社データセンターを運営し、Dell X86サーバーのクラスタを運用するようになっていたが、変更は不可避だった。

その変更を行うために、彼らはもう一度Sunに戻って、そのとき売られていた最大のサーバーを4台購入し、そしてすべてのデータを転送した。問題は、Oracleデータベースがうまく機能していなかったことだった。そのため、マキノン氏が語ったところによれば、Oracleのラリー・エリソン氏に電話をかけることになった。設定について話を聞いたエリソンは、どうしてそのような設定にしているのかと質問してきた。彼らがそれを設定した方法は単純に上手くいかないやり方だったのだ。

彼らはそうしたことをすべて解決して、先に進むことができたが、こうしたことは現代のスタートアップなら出会うことのない危機だっただろう。なぜなら現代なら企業は自社ハードウェアではなく、クラウドインフラストラクチャサービスを利用するからだ。

ウィンドウショッピング

これとほぼ同じ時期に、Salesforceは買収を通じて成長する戦略を開始した。2006年には、その後続いていく買収の最初の1社として、Sendiaという名の小さなワイヤレステクノロジー企業を1500万ドルで買収した。これは最初のiPhoneが発売される1年前の2006年の時点だが、同社はすでにモバイルについて考えていたのだ。

昨年、同社は52回目の買収を行った。これはこれまで行ったものの中でも最も高額なものだった。MuleSoftを65億ドルで買収したのだ。そのソフトウェアを使うことでSalesforceの顧客はオンプレミスとクラウドの世界の橋渡しを行うことが容易になる。グリーンバーグ氏が指摘したように、これは会社からのメッセージに大きな変化をもたらした。

「SalesforceによるMuleSoftの買収により、バックオフィスとフロントオフィスの間、およびオンプレミスとクラウドの間のサイクルを、ほぼ完全に自己完結させることができるようになりました。そして突然気付くのです、彼らは『ソフトウェア不要』と言っていないということに。彼らはオンプレミスを攻撃していないのです。おわかりのように、そうした話はみな脇へ追いやられてしまったのです」とグリーンバーグ氏は語った。

成長して優先順位が変化していく中で、完全に一貫性を保てる企業は存在していないが、もしどのように成功する企業を成長させるべきかの青写真を、スタートアップとして探しているのなら、Salesforceは学ぶべきとても優れた企業である。20年が経った今も、彼らは成長し続けており、まだ強くなっている最中だ。そして責任ある資本主義のための力強い発言力でもあり続けている。仕事をしながら多くのお金を稼ぎ、コミュニティに対しても還元を行っている。

さらに学ぶことができるもう一つのレッスンは、これで終わりではないということだ。20年というのは大きな節目だが、成功した組織にとっては長めの1歩に過ぎないのだ。

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:sako)

今日でCEO就任満5年、サティヤ・ナデラがMicrosoftの企業文化を一変させた秘密

5年前の今日、サティヤ・ナデラがMicrosoftのCEOに就任し、以後ほとんどあらゆる面で成功を収めてきた。CEOのパフォーマンスを見るには株価の推移 を取り上げるのが一般的だ。ナデラは株価をアップさせた以上にMicrosoftを根本的に改革した。しかしこの成果となると測定は難しいものとなっている。ナデラが改革したのは企業文化というさらに微妙なものだからだ

Microsoftでのナデラの任期は、たまたたま私(Ron Miller)がTechCrunchに参加したのと同時期だ。私は2014年の4月にTechCrunchに加わった。最初期の記事の一つはMicrosoftという巨大企業における根本的改革の困難さについて書いたものだった。この頃、前任のスティーブ・バルマー、ビル・ゲイツのコンビの時代には見られなかったサービス事業へのシフトがMicrosoftに起こり始めていることに私は気付いた。

ナデラCEO就任以降、5年間の株価の推移。資料:Yahoo Finance

ナデラが就任したのは、IT分野がMicrosoft、Oracle、IBMなどの巨大ベンダーが事業分野ごとにすべてのサービスを提供する一枚岩から、分散化に向けてシフトする時期だった。ユーザーはクラウドサービスを利用して、必要に応じてもっとも適するサービスを選択するようになった。

これは、全社を一元的に管理するIT部門から個別のチーム、ユーザーに主導権が移り初めていた。このITのコンシューマライゼーションという背景を考える必要がある。ナデラはこうした変化を正しく理解していた。

もちろんMicrosoftの戦略シフトはナデラの就任以前に始まっていたのだろう。しかしMicrosoft Corporationという巨艦の方向転換にはナデラのような新しいリーダーが必要だった。大小を問わず、企業には社内政治や特有のバイアスが存在する。Microsoftにもあったことは間違いないが、ナデラはこうした障害を乗り越えて全面的な組織改革を成功させた。その過程ではレイオフなどの痛みも経験した。2017年には数千人がMicrosoftを離れることになった。長年Microsoftを指揮してきたCOOのKevin TurnerやWindows及びデバイス部門のトップTerry Myersonも辞めた。

しかしMicrosoftはなにからなにまで24時間自社製品をユーザーに強制する会社であることを止め、マルチ・プラットフォームで広い範囲のパートナーと協力するようになった。就任1年後にナデラがどれだけ真剣であったかを示す出来事があった。MicrosoftとSalesforceは長年競争関係にあったにもかかわらずナデラはそれを脇に置いて、Salesforceの大規模なユーザー・カンファレンスであるDreamforceに登壇した。両社が長年にわたって激しく法廷で戦っていたことを考えると、非常に象徴的なジェスチャーだった。これはMicrosoftの新しい日であり、ナデラはそれを実証した。

この数年私は何度も引用しているが、ナデラのビジョンは協調だった。もちろん競争すべき場面では容赦なく競争する。しかしナデラは協調することに意味がある場面を見逃さなかった。ナデラの場合、すべては顧客メリットの面から判断したからそのようなことが可能だった。ナデラは「プラットフォームのベンダーであるわれわれにとって、顧客が抱えている真の問題点を解決するために幅広くパートナーと協調することが義務だ」と述べた。シェアを他人に渡すこともライバルに遅れを取ることもなかったが、本当に重要なのは顧客をハッピーにすることだと認識していた。

ナデラ以前の時代にはプラットフォーマーとデベロッパーの間では協調の精神が乏しかった。そうすることが利益であってもリソースを共有したり共同で開発を行ったりすることはほとんどなかった。ナデラの大きな功績の一つはこうした敵対的な空気を一掃したことだろう。

この点は非常に重要だ。ナデラがDreamforceのキーノートで述べたように、クラウド化の時代ではベンダーが協調することがユーザーの利益になるからだ。ユーザーがクラウドを活用するためにはAPIが公開されていなければならない。またプラットフォームはデベロッパーの開発作業が容易なものでなければならない。ナデラのリーダーシップの下でMicrosoftはこうしたことを実現していった。

またMicrosoftはリアルタイム字幕機能や、足でも使えるようにカスタマイズ可能はXboxのアダプティブ・コントローラー などアクセシビリティ機能を重視するようになった。またアクセシビリティの強化のためにAIを利用する研究も進められた。今年のスーパーボウルCMでもMicrosoftはAIによるアクセシビリティ機能の充実を強調している。

ナデラのアグレッシブなM&A戦略も見逃せない。巨大な資金力を生かして、Microsoftは大小の企業の買収を進めた。特に目立ったのは 2016年にLinkedIn買収になんと262億ドルを投じたことだろう。また昨年、GitHubを75億ドルで買収したことも記憶に新しい。10億ドル以下の「小型」の買収も数えきれない。これらはセキュリティーやデベロッパー生産性、ゲーム、クラウド処理などでMicrosoftの既存プロダクトに欠けていたピースを埋めるものとなっている。

繰り返すが、こうした企業文化の根幹にかかわる改革をMicrosoftのような歴史ある巨大企業で実行することは非常に困難な事業だ。改革はまだ道半ばだろうが、これまでのところナデラは事前の予想を上回る成果を挙げている。株価の復調はこうした大規模な改革の成果を市場が認識し始めたことを意味する。しかし市場の反応はまた別に論じるべきだろう。ここではどんな巨大な企業だろうととリーダーシップが自己改革の要だということを指摘しておきたい。

画像:Stephen Brashear (Image has been modified)

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滑川海彦@Facebook Google+