SalesforceはCustomer 360で、顧客サービスの不満解消を狙う

これまである会社に問い合わせの電話をして、問い合わせに関する山のような予備的な質問に答えたのに、最終的につながった顧客サービス担当者(CSR)にはその回答が伝わっていなかった、という経験を何回繰り返したことがあるだろうか?

こうしたことが起きるのは、通常システムAがシステムBと話し合うことができないからで、ただでさえ同じ情報を繰り返し答えさせられて腹が立っているのに、それは問い合わせをした側にとっては強く不満の募る出来事だ。Salesforceは、今週サンフランシスコで開催されているユーザー会議のDreamforceで発表したCustomer 360という新しい製品で、この問題を解決することを望んでいる。

製品開発の観点からみた場合に、Customer 360が興味深い点は、Salesforce65億ドルで買収したMuesoftの技術を取り込んでいるところだ。そして単にその技術を製品に転用したのではなく、対応する技術の断片を内部的に組み合わせて、Salesforce製品ファミリーに対して一体感のあるビューを提供しているのだ。理論上は、これによって電話で話している顧客サービス担当者は、顧客が会社に対するどのようなやりとりを行って来たかを全体的に把握できるようになる。これによって顧客は、話が伝わっていなかったことによって、同じ話を繰り返す必要性が減ることになる。

スクリーンショット:Salesforce提供

ここでのアイデアは、販売、サービス、コミュニティ、コマース、マーケティングなどのさまざまな製品を、すべて顧客ごとの単一ビューにまとめることである。同社の発表によれば、こうしたことを1行のコードも書くことなく実現できるという。

Customer 360にデータソースを追加する様子:Salesforce提供

これによって、顧客と対話する誰もが(多くの企業を逃し、たくさんの顧客を怒らせてきたプロセスの)全体像を見ることができるようになる。Salesforce CRMの中にある顧客レコードは、マーケティングアプローチやeコマース履歴と同様に、ストーリーの一部に過ぎない。それらがすべて合わせられることによって、顧客のストーリーは明らかになるのだが、ありがちなようにデータがサイロの中に閉じ込められていたとしたら、誰もそれを見ることはできない。それこそがCustomer 360の解決しようとしている問題なのだ。

Salesforceの社長兼最高製品責任者であるBret Taylorは、これまでもSalesforceの中でこれを実現する手段はあったが、このような直接的なやりかたで提供できる製品はなかったと説明した。彼は、Apple、Amazon、そしてGoogleなどの大手ブランドは、顧客がブランドとつながったときに、どのように扱われるかという観点の期待を変えてきたのだと語る。Customer 360は、企業がそうした期待レベルを達成することの支援に、重点を置いている。

「今や、顧客は自分のことを知らない企業とやりとりをしている場合にも、他での喜ばしい体験から期待を膨らませています。私たちはそれを顧客から繰り返し聞かされています。それこそが、私たちが統合に重点を置いている理由なのです。統一された顧客のビューこそが、そうした体験に対する究極的な価値の提供になるのです」とTaylorは説明する。

この製品は、これまで各部署や組織全体の固有の要求に応えて、Salesforce製品を設定しカスタマイズする責任を負ってきたSalesforce管理者向けのものである。Customer 360を設定して、Salesforceやその他の製品からデータを引き出すこともできる。

Customer 360は現在北米でパイロット運用されているが、来年の適当な時期には一般的に利用できるようになる筈だ。

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(翻訳:sako)

画像クレジット:Jose Luis Pelaez Inc / Getty Images

Salesforceが音声アシスタントEinstein Voiceを発表

営業マンたちは、日頃話すことに時間を費やしている。彼らは電話で喋り会議に出席しているが、Salesforceに入力をする段になると、キーボードの前に座ってノートや進捗をタイプしたり自分の営業成績に関する指標を検索したりする。本日(米国時間9月19日)Salesforceは、その状況を変えるためにEinstein Voiceを導入することを決定した。これは営業マンたちがタイピングする代わりにプログラムに対して話しかけることを可能にするちょっとしたAI魔法だ。

Einstein Voiceをご紹介します。誰でもSalesforceに話しかけることができるようになりました。
詳しくは9月25日〜28日の#DF18(第18回Dreamforce)にて

Amazon AlexaやApple Siriが、仕事以外の日常生活の中で、デバイスに対して語りかける行為をありふれたことにしている世界の中で、企業がそのようなインタラクションを仕事の場所に持ち込もうと考えることは自然である。

この場合、利用者は会話を通して会議の情報を入力したり、その日の会議から重要事項を抜き出したり(車で移動する営業マンには特に有益である)、問い合わせをタイプする代わりに質問することでSalesforceのデータダッシュボードとやり取りしたりといったことが可能になる。

これらのツールはすべて、忙しい営業マンたちの日常業務を楽にするためにデザインされている。大多数の人は仕事の中の管理業務的な部分を嫌っている、なぜなら情報を入力する行為は(長期的には記録を残すことで有益であるとしても)、商品を売るという最も重要な仕事以外の行為だからだ。

会議のメモに関しては、スマートフォン上でタイプする(まあそれだけでも一苦労なのだが)代わりに、ただEinstein VoiceモバイルツールのMeeting Debrief(会議報告)ボタンをタッチして、メモを喋って入力を始めれば良い。するとツールが、言っていることを解釈する。ほとんどの文字起こしサービスと同様に、これは完璧ではなく多少の修正が必要かもしれないが、ほとんどの仕事はおこなってくれるだろう。

また、日付や取引金額などの重要なデータを取り出すことができ、フォローアップするアクション項目を設定することができる。

GIF:Salesforce

CRM Essentialsの創業者でプリンシパルアナリストを務めるBrent Learyは、人びとが音声インターフェイスの使用をより快適に感じるようになって来ているため、これはSalesforceにとっての自然な進歩だと述べている。「私は、顧客体験と従業員の生産性の両方の観点から見て、これは音声ファーストのデバイスとアシスタントを、CRMパズルの重要なピースにするものだと思っています」と彼はTechCrunchに語った。

既にTact.AIが、Salesforceのユーザーたちにこのような音声サービスを提供してきたことは指摘しておく価値があるだろう。TactのCEOであるChuck Ganapathiは、Salesforceの参入をあまり心配しているようには見えない。

「会話型AIはエンタープライズソフトウェアの未来です。そこで問われているのはもしそうなったらとか、いつそうなるのかということではありません。そこで問われているのは、ではどのように提供するのかということなのです。その解を提供するための唯一の道は『中立戦略』だと私たちは強く信じています。私たちがMicrosoft、Amazon、そしてSalesforceの支援を受けている唯一の企業であることは当然のことなのです」と彼は語る。

Learyは、誰にとっても成長の余地は大きく、Salesforceの参入によって全てのプレイヤーたちの採用が加速されることになると考えている。「Salesforceによる満ち潮が全てのボートを上昇させて、Tactのような企業は大いに注目されるようになるでしょう。Salesforceはこのカテゴリーのリーダーですが、マーケットシェアはいまだに20%未満なのですから」。

EinsteinはSalesforceの人工知能レイヤーの中の「なんでも引き受けますブランド」(catch-all brand)である。今回の場合は、自然言語処理、音声認識技術、その他の人工知能技術を使用して、人の声を解釈し、内容を書き起こしたり要求をより良く理解しようとする。

通常、Salesforceは小さな機能セットから始めて、時間の経過とともにその機能を追加していく。これは、来週行われる大規模な顧客会議であるDreamforceに合わせて、製品を発表し、同じような手段をとろうとしているのだろう。

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(翻訳:sako)

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ZuoraのIPOは企業向けSaaS黄金時代への新たなステップだ

Zuroaの創業者兼CEOであるTien Tzuoは、多くの人たちの意識に上るはるか前から、サブスクリプション経済のビジョンを持っていた。彼は、企業がサブスクリプションで成功するためには、課金状況を簡単に知るための簿記システムが必要であることを理解していたのだ。同社は4月12日株式の公開を果たした。これはSaaSの成熟を示す、新たな道標のひとつである。

TzuoはSalesforce初期の従業員であり、同社最初のCMO(最高マーケティング責任者)を務めた。彼が勤め始めたのは、SalesforceのMarc Benioffが会社を立ち上げるためにアパートを借りたことで知られる、会社黎明期の90年代後半のことである。TzuoはSalesforceに9年間在籍し、そのことが、Salesforceのようなサブスクリプションベースのビジネスの本質を理解するのに役立った。

「私たちは、ソフトウェアを開発し、マーケティングし、そして提供するための素晴らしい環境を作りました。私たちが書き換えたのは、開発方法、マーケティング、そして販売に至るまでの全てのルールです」とTzuoは2016年のインタビューで私に語った。

彼は、単体製品の販売と計上のためにデザインされている従来の会計手法が持つ、基本的な問題点を認識していた。サブスクリプションはまったく異なるモデルであり、収益を追跡し、顧客とコミュニケーションをとるためには新しい方法が必要だったのだ。Salesforceのような成長企業における確実な仕事を捨て去って、2007年の初めに会社を設立したTzuoは、既に長期的な視点を持っていたのだ。

彼がそれに踏み切ったのは、他の誰よりも早く、SaaS企業がサブスクリプション向けの簿記システムを必要とするという見通しを持っていたからだが、他の無関係な企業たちも、やがてそれを必要とするだろうということに、やはり早い段階から気がついていたのだ。

サブスクリプションシステムの構築

彼が2016年のインタビューで語ったように、もし顧客が毎年1ドルずつ10年間の支払を約束したなら、会社は確実に毎年その1ドルを手にすることができて、最終的に
10ドルを手にすることができることを知っていることになる。しかしその金は実際に手に入れるまで計上することはできない。その繰り返し発生する収入はそれでも価値を持っている、なぜなら投資家たちは、まだ帳簿にのっていなくとも、会社がこの先10年間収益を挙げることができることがわかるからだ。そこがZuoraの登場する場所だ。他の誰もがそれをできなかったときに、その定期収入を織り込んで報告することを可能にしたのだ。さらに、時間に沿って請求を追跡し、リマインダを送信し、企業が顧客との関わりを保ち続けることを助けることができる。

写真:Lukas Kurka/Getty Images

Constellation Researchの創業者兼主席アナリストのRay Wangが語るように、Zuroaがサブスクリプション経済のアイデアを切り拓いたのだ。そしてそれはSaaS企業だけを相手にしたものではない。ここ数年私たちは、企業たちが1回限りのアイテム販売ではなく、サービスとSLA(サービス水準合意)の販売について語るのを耳にしている。しかし少し前には、大部分の企業がそれについて考えることはなかったのだ。

「Zuroaは企業たちが収益化を考える方法を開拓したのです」とWangは語る。「例えばGEのような大企業は、風力タービンの売り切りから、サブスクリプションの販売へと移行することが可能です。例えばあるレベルのキロワット時のグリーンエネルギーを、午後1時から5時までのピークタイムに98%の可用率で提供するなどという形です」。Zuoraが登場する前には、これを支援する手段は存在していなかった。

SaaSスタートアップに投資するSaaStrの創業者Jason Lemkinは、Tzuoは本物のビジョナリーであり、SaaSサブスクリプションの基本システムを作り上げることに貢献していると語った。「Zuoraの最も興味深い点は、それがSaaSの盛衰に依存するものだということです。それが繁栄するためにはSaaSが主流になる必要がありますし、その他の定期収入ビジネスと一緒に伸びることしかできないのですから。Zuoraは、SaaS企業が課金を行うことを助けるニッチプレイヤーとしてスタートし、SaaSが『ソフトウェア』そのものになることで劇的に拡大し、繁栄したのです」。

市場がアイデアに追いついてきた

Tzuoが2007年に会社を設立したとき、おそらく彼は遠くの地平線の向こう側へ彼のアイデアが伸びていることを知っていた。彼は、この先SalesforceのようなSaaS企業たちが、自分が作ることを決意した会社が提供するようなサービスを必要とすることになる確信があったのだ。初期の投資家たちは、彼のビジョンがまだ尚早で、エグジットのためにはゆっくりと着実な道を登っていくことを理解していたに違いない。彼らがその報酬を手にするまでに、11年の年月と2億4200万ドルのVC資金が必要だった。11年後の収益は、1億6700万ドルと報告されている。成長のための余地は、まだ大きく残されている。

ともあれ、同社は12日にIPOを行い、それはいかなる意味においても大成功と呼べるものだった。TechCrunchのKatie Roofによれば、「14ドルでのIPOによって、1億5400万ドルが調達された、終値は20ドルで評価額は20億ドルとなった」ということだ。この記事を執筆している今日の時点(米国時間4月13日)では、もう少しアップしている。

Tzuoが以前勤めていた会社が200億ドル規模の会社になったことや、Box、Zendesk、Workday、Dropboxなどの企業がみな公開に踏み切ったこと、そしてDocuSignSmartsheetなどの企業がそれに続こうとしていること等を考慮すると、私たちがSaaSの黄金時代に突入したことは間違いないようだ ―― そしてそれが良くなる一方であることも。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: Zuora

SalesforceのBenioffが語る:シリコンバレーのすべてのVCが私たちを追い返した

先月行われた、Business InsiderのJulie Bortとのインタビューの中で、Parker HarrisとMarc Benioffは、初めて会社を立ち上げたとき、彼らがどのようにお金を稼ぐ努力をして、それにも関わらず一銭も手に入れることができなかったかを語った。Benioffは、シリコンバレーのあらゆるベンチャーキャピタルに行ったものの、毎回拒否されて終わったのだ。

これはビジョンを持ちながら、通常のやり方でアイデアに対する資金調達を行うことができない、スタートアップたちのための教訓となるだろう。Salesforceは資金を調達できたが、それは伝統的なVCルートではなく、投資家たちと1対1での資金調達だった。

同社はBenioffが借りていたアパートで起業したことは有名だが、同社の最初のコンピュータを購入するために、彼は自分のポケットマネーを供出した。それから、街に出てVCにお金を頼む段階となったが、それはうまくいかなかった。

「まるでハイテク乞食のように、私は帽子を手にして、資金調達のためにシリコンバレーに行きました…そして、私はベンチャーキャピタリスト、次のベンチャーキャピタリスト、また別のベンチャーキャピタリストと訪ね歩きました。多くは私の友人たちで、一緒にランチに行きました。でもことごとく全員がNOと言ったのです」とBenioffは語る。「Salesforceはベンチャーキャピタリストから1ドルたりとも調達することはできなかったのです」と彼は付け加えた。

彼はそれには多くの理由があったことを示唆した。その中には、彼とのミーティングの後に相手に電話を掛けて意図的に妨害した競合相手の存在や、単純にクラウドがソフトウェアの未来だと信じない人びとなども含まれている。

その理由が何であれ、結局Salesforceは2004年に株式公開を果すまでに、個人投資家たちから6000万ドルを調達することができた。現在のようなベンチャーキャピタル環境の中では、Benioffのような人物が、ただ1社の引受先も見つけられないなどとは想像しにくい。特に彼が全く未知数の人間ではないと考えられている場合にはなおさらである。それでも当時彼に小切手を渡すVCは誰もいなかったのだ。

しかし、当時は今とは違っていた。それは1990年代後半で、クラウドコンピューティングについて考えている者はなく、インターネット上のソフトウェアという発想はまだはるかに遠いものだった。Benioffは全く違うものを想像していたものの、何が来ようとしているのかを見極めるビジョンをもつVCはいなかったのだ。いまやSalesforceは100億ドル企業であり、それを追い返した人びとは、その時自分たちが一体何を考えていたのかを振り返る必要がある。

「Salesforceのようなものを始めるときには、自分を信じてくれている人たちや、自分が成功すると思ってくれている人たちに囲まれていたいものです。なにしろ、いやでもお前は成功しないという大勢の人間に囲まれることになるのですから」とBenioffは語った。

すべての起業家が心に留めておくべきことだろう。

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(翻訳:Sako)

Salesforceはブロックチェーンプロダクトに取り組んでいる

Salesforceは、モバイル、ソーシャル、IoT、人工知能といった、次の大きなテクノロジーにいつでも目を向けている企業である。セールスフォースの共同創業者Marc BenioffとParker Harrisは、3月末に行われたBusiness InsiderのJulie Bortとのインタビューの中で、様々なテーマについて語ったが、そのうちの1つは次のホットテクノロジーであるブロックチェーンプロダクトへの取り組みについてだった。

Benioffは、スイスで行われた世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に参加したときに得たセレンディピティ(偶然のひらめき)について語った。このひらめきがBenioffにブロックチェーンと、それがSalesforceの製品ファミリーの中にどのように組み込まれるかを考えさせ始めたのだ。

開催時になって認識されたのだが、世界経済フォーラムと並行して、とある暗号通貨会議が開催されており、SalesforceがIntercontinental Hotelで開催したイベントでその2つの世界が交流することになったのだ。その際に、暗号通貨会議の参加者の1人がBenioffに声をかけたことが「何か」の始まりだった。

「私はそれまでにSalesforceのブロックチェーン戦略とは何かについて、そしてSalesforceの暗号通貨関連の戦略とは何かについて、そしてそれら全部をどのように関連付けて行けば良いかについて、ずっと考えていたのです」とBenioffは語った。実際彼はセレンディピティの力を強く信じている人物であり、そのイベントでの会話をきっかけに、この発展途上技術に対するSalesforceの役割をより真剣に考え始めたのだという。

彼は、考えを深めれば深めるほど、SalesforceがBlockchainを利用できるという信念が固まったと言う。そして突然新たなひらめきが訪れ、ブロックチェーンと暗号通貨をSalesforceに組み込む方法が見えたのだという。「それはどのように機能するかに関するアイデアです。Dreamforceイベントまでにはブロックチェーンと暗号通貨ソリューションをまとめられたら良いなと思っています」。

Benioffはもちろん先見性のある人物だが、ダボスで交わした会話に対して注意を向けた結果、多くの事に気がついたのだという。そのことで、Salesforceを有意義に拡張できるチャンスを見出したのだ。「沢山のこうしたアイデアは、注意深く聴くことによってもたらされています。常に新しいアイディアが生まれていますよ」と彼は語った。彼は、自分たちでは手が回りきれないほど沢山のアイデアがあることに気がついているが、彼の仕事の一つは、その中でSalesforceの顧客にとって最も重要なものはどれかを見出すことだ。

ブロックチェーンは、Bitcoinやその他の暗号通貨を追跡に使われる電子元帳であるが、さらに一般的なビジネス上の役割も担っている。動かぬ証拠を伴う改竄不可能な記録として、いかなる価値も追跡することができるのだ。

なおDreamforceとはSalesforceの大規模な年次顧客向け会議である。今年は9月25日から28日にかけてサンフランシスコで開催されるが、もし予定通りにプランがまとまったならば、今年はブロックチェーンプロダクトが発表されることになるだろう。

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Salesforceの創業者Parker HarrisMarc Benioffに対する、Business InsiderのJulie Bortによるインタビュー全体の様子はこちら。

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(翻訳:sako)

DropboxがIPOを前にしてSalesforceの深い統合を発表、エンタープライズの評価アップをねらう

Dropboxはこのところ忙しい。2週間前にはIPOを発表した。ついこないだの先週には、Googleとの大型パートナーシップを発表し、そして今日(米国時間3/9)は、Salesforceとのより深い統合のニュースが飛び込んできた。

DropboxとSalesforceは共にクラウド企業だから、過去に多少の関わりはあったが、しかし今日の発表はもっと大きい。たとえば、DropboxのフォルダがSalesforce Commerce CloudとMarketing Cloudに埋め込まれて、それらがあたかも、軽量版のデジタルアセット管理ソリューションのような様相になる。

たとえば、企業を顧客とするクリエイティブエージェンシーなら、写真などマーケティングキャンペーン用の素材を作り、それらの一部をSalesforceのマーケティングクラウドに保存するだろう。しかしそのフォルダは完全に統合化されているから、マーケティングとは無縁な現場のクリエイターがそれらのアセットの一部を自分たちのDropboxのフォルダでアップデートしても、マーケティングのための素材が入っているSalesforceのフォルダも自動的にアップデートされる。両者は物理的には同一のフォルダだから。

このような統合化によって、ユーザーの、あれをしたらこれをして、というステップが省略できる。Dropboxをオープンしてそのフォルダへ行き、アップデートされているアセットを見つけたらそれらを手作業でSalesforceにも持っていく、…こんな手間が、一発で済むようになる。

Salesforce本体だけでなく、同社が2016年に7億5000万ドルで買収したコラボレーション型ワードプロセッサQuipとも、同様に統合化される。それは、先週発表されたGoogleのG Suiteの統合の場合と同じく、エンドユーザーが自分のコンテンツに、どこで仕事をしていてもアクセスできるようにするためだ。

しかしQuipの場合は、双方向の統合になる。DropboxのフォルダがQuipに埋め込まれるのは、MarketingやCommerceのCloudの場合と同じだが、逆にQuipのドキュメントにDropboxの中でアクセスして仕事ができるようにもなる。これもまたユーザーが、そのとき使いたいツールや、アクセスしたい場所を自由に選べるためだ。

このようなパートナーシップは一見わかりにくいが、DropboxのSVP Quentin Clarkが先週、G Suiteの統合のとき言ったように、すべてはユーザーを楽にし、自由にするためだ。

“仕事の性質や都合などで、そのときどきの、ベストのツールは変わってくる。でもそんなとき、今の仕事のコンテンツに、そのときのベストのツールでアクセスできると便利だ。ツールや場所を変えても、そこに仕事がついて来る。それが、いちばん気楽だ”、と彼は語る。

今後はこのパートナーシップをさらに進めて、SalesforceはクラウドストレージにDropboxを使い、Dropboxは社内でSalesforceを活用する、という状態にしていく。Salesforcは前にも、G Suiteの統合Office 365ツールの統合に際して、同様の発表をしている。

Dropboxは、パートナーシップの発表はIPOと何の関係もない、と言うだろう。でも今や、同社のあらゆることがIPOと関係している。IPO申請のS-1ファイルで、売上の大半が消費者サイドからと言っている同社は、エンタープライズからの信任をできるかぎり厚くしてからIPOに臨みたい。今回のパートナーシップもそのことに寄与するはずだが、まだまだ実際の数字は薄い。

先週のG Suiteの統合パートナーシップと同じく、今回のSalesforceの統合も、まだ発表だけであり、ローンチはない。ローンチはたぶん、今年の後半だろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

テクノロジーの問題に対するテクノロジーによる解決を書いた本“How to Fix The Future”

[筆者: Larry Downes](ジョージタウン大学のMcDonough School of Businessのフェロー)

今回のInnovate 2018は、主宰者のAndrew Keen自身がゲストだ。

今月初めに出たKeenの近著“How to Fix the Future”(未来の直し方)は、テクノロジー世界の著名なオピニオンリーダーたちが、従来のユートピア主義を捨ててその逆を主張し始め、しかもそれが突然、一種のファッションになってる現況を論じている。IPOの第一世代の勝利者たちが、今ではテクノロジーのもっとも声高な批判者になり、しかもその批判は都合よく、若い世代の起業家たちが立ち上げた新しいプロダクトやサービスの批判にもなっている。

たとえばTeslaのElon Muskは、人工知能の進歩が“文明の存在基盤を脅かすリスク”になる、と言っている。

SalesforceのCEO Marc Benioffは、Facebookはたばこ企業のように規制されるべきだ、ソーシャルメディアには(文字通り?)発がん性があるから、と信じている。

そしてロシアの大富豪George Soros*は先週Googleを、 “社会に対する脅威”と呼んだ。〔*: George Sorosの国籍はハンガリーとアメリカのはず。〕

そしてメインストリームのメディアも、極端なアンチ・テクノロジーを装う。“シリコンバレーはあなたの友だちではない”(The New York Times)、“スマートフォン地獄を恐れるテクノロジー・インサイダーたち”(The Guardian)、などなど。

Keenは、このような極端に走ることは避けつつ、公・民両面にわたる個人監視、大規模失業、フェイクニュースなど、現代のテクノロジーのさまざまな否定的側面に対する解決策を提案する。

エストニアやスイス、シンガポール、インドなど、デジタルの最前線の国々で経験したことを基に、Keenは未来を直す(fixing the future)ための5つのツールを挙げる:

  • 規制の強化、とくに独禁法の有効利用
  • テクノロジーによる初期のディスラプト(破壊的生産)がもたらした意図せざる副作用を解決するイノベーション
  • テクノロジーの上位富裕企業による的をしぼった博愛事業
  • テクノロジーから置き去りにされている労働者や消費者のための社会的安全ネット
  • 21世紀の生き方に適合した教育システム

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

2ステップでマーケ用チャットボット作成、「chatbook」がSalesforceと資本業務提携

チャットボットによるマーケティングオートメーションサービス「chatbook」を提供するチャットブックは2月19日、Salesforce VenturesイーストベンチャーズYJキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は非公開だが、数千万円規模と見られる。

chatbookは、マーケティング用のチャットボットをプログラミングの知識なしでも簡単に作成できるサービスだ。必要なのは2ステップだけ。あらかじめ用意されたテンプレートを選べばボットが完成する。Facebookと連携したデータによってマーケティングに活用でき、その後のフォローアップにも対応。ユーザーへの情報提供やアンケート機能も備える。

今回の調達ラウンドで米Salesforce.com(以下、Salesforce)との資本的な関係を築いたことは、チャットブックにとって大きな意味をもつ。同社はこの資本業務提携により、2018年上旬頃からSalesforceのSFAサービスである「Salesforce Sales Cloud」とchatbookの連携を始めるとしている。すでに幅広い顧客基盤をもつSalesforceと手を組むことにより、chatbookの普及促進を目指す。

chatbookは本日より正式にサービスを開始。個人利用は無料だ。法人利用では10日間のトライアル期間を設け、その後は月額6万円〜の料金で利用できる。これまでは招待制で提供されてきたchatbookだが、現在のユーザー企業数は数十社だという。バイトルを運営するディップや、石川県加賀市の観光事業などの自治体などにも利用されている。

同社は今回調達した資金を利用して営業体制を強化するほか、今後は「一つのチャットボットでFacebookメッセンジャーボットとウェブボットを作れるサービスを展開する予定で、そのための人材採用やデータ解析を手がける開発人員も強化する」(チャットブック代表取締役の小島舞子氏)としている。

チャットブックは2016年9月の創業で、TechCrunch Tokyo 2016のスタートアップバトルにも出場している(創業当時の社名はヘクトだった)。また、同社は既存投資家のYJキャピタルとEast Venturesが運営するアクセラレータプログラム「コードリパブリック」の卒業生でもある。今回のラウンドは、同プログラムへの参加時に調達した約700万円に続く、2度目の外部調達となる。

GoogleとSalesforceの提携、第一弾登場――顧客データの統合ツール各種発表

昨年秋のDreamforceカンファレンスでSalesforceとGoogleは提携を発表した。今日(米国時間1/17)、両社はこの提携の第一弾を公開した。手始めとして、Google Analytics 360のユーザーはSalesforceのCRM〔顧客関係管理〕ツールからリード、売り込みチャンスなどのデータをインポートできるようになる。

これにより企業のマーケティング部門は有望顧客の発見、コンタクトからセールスの実現までの顧客関係をAnalytics 360で簡単に展望し、管理できる。これは顧客関係における成功を助けるために大きな効果があるだろう。もちろんSalesforce自身はMarketing CloudにSalesforce WaveやEinstein Analyticsなど独自の分析ツールをを持っている。

しかし今回の提携で、Googleのアナリティクス・ツールを利用しているユーザーはSalesforceのアナリティクスのデータを統合して処理できる。多くのユーザーは複数のアナリティクス・ツールを併用しており、これがそもそも両社の提携をもたらした背景だった。つまり複数のアナリティクスを比較することでさらに広い視野から顧客関係を見渡すことができる。

両社は提携の効果をアップするために、SalesforceのデータをGoogleののデータ・ウェアハウス・サービス、BigQueryで利用するためのコネクター・ツールを提供する。ユーザーは顧客関係データをBigQueryにアップして他のエンタープライズ・データと比較することが可能になる。

最後にSalesforceとGoogleの広告システムを結びつけ、適切な広告を適時に表示してセールスの完結を助けるツールも発表された。Googleの公式ブログではこれをAdvertising Linkと呼んで紹介している。【略】

今回発表されたいくつかのサービスはGoogleとSalseforceの広汎な提携の第一弾であり、今年は両社のシステムをさらに密接に深いレベルで統合するプロダクトが各種続くものとみられる。これにはユーザーが販売する特定のプロダクト別のデータの統合、リードが実際の販売に結びつく可能性やトータルでの顧客価値を算定するツールが含まれるはずだ。

画像;Andy Ryan/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

分散データベースNomsを抱えるAttic LabsをSalesforceが買収、Quipとの統合を目指す

オープンソースの分散データベースNomsを作っているAttic Labsが今日(米国時間1/8)、Salesforceに買収されたことを発表した。これはSalesforceの2018年初の買収だが、その契約条件は公表されていない。Crunchbaseによると、昨年の同社の買収はデジタルクリエイティブエージェンシーSequence一社のみで、10社あまりを買収した2016年に比べ、一休みという形になった。

Nomsがローンチしたのは2016年の8月で、そのとき同時にAttic Labsは、Greylockが率いるシリーズAで810万ドルを調達した。ファウンダーのAaron BoodmanとRafael Weinsteinをはじめ、Attic Labsのチームのメンバーの多くが、それまでGoogle Chromeを手がけていた。Boodmanは、Greasemonkeyの作者でもある。

Gitと同じように、Nomsでもユーザーは複数のマシンのオフライン上でデータを複製し、それをシンクしたり編集できる。バージョニングの機能があるので、編集してもデータの前のバージョンは壊れないから、必要なら復活できる。Gitと違うのは、Nomsはテキストファイルよりも定型データの保存に適していて、とても大きなデータ集合もサポートする。Attic Labsは今日の発表声明の中で、Nomsは今後もオープンソースであり続ける、と言っている。NomsのフォーラムでBoodmanは、そのデータベースに対して、“今すぐやらなければならないことはない”、と述べている。

買収が完了したらAttic Labsのチームは、Salesforceが2016年に7億5000万ドルで買収したドキュメントコラボレーションプラットホーム〔“コラボレーション型ワープロ”〕Quipに加わる。Attic Labsによると、Nomsの技術が“Quipの能力を拡張して、ライブのデータソースに接続できるようにし、人びとが容易に迅速で効果的なコラボレーションをできるようになる”、という。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Salesforceは今期も絶好調、新目標は年間売上200億ドル――トップ人事も発表

クリスマスを控えてSalesforce絶好調の四半期決算を発表した。売上は25%アップして26.8億ドルだった。同社は年間売上100億ドルという目標をすでに大幅に超える勢いで、今回は2022年度までに年間売上200億ドルを目指すと発表した。これは見逃せない大胆な目標だ。

またSalesforceではトップ人事にも大きな動きがあった。これについても後述する。

SalesforceはそもそもアンチIBMとして登場した。その敵、ビッグブルーは22四半期連続で売上がダウンしている。逆にSalesforceはこの数年着実に売上を伸ばしてきた。3年前にさかのぼると、2015年第3四半期は13.8億ドルだったから今期の26.8億ドルは倍近い伸びだ。

年間売上100億ドルに駆け上がるスピードは過去のあらゆるソフトウェア企業より早く、会長兼CEOのマーク・ベニオフが電話記者会見で何度も自慢してもその権利があったというべきだろう。

「年商100億ドルに最短で達したエンタープライズ向けソフトウェア企業として、われわれは次の目標をオーガニックな成長の結果として2022会計年度までに年商200億ドルを達成するというところに置きたい。そうなればこれは200億ドルを最速で達成するソフトウェア企業でもある」とベニオフは宣言した。

こうした大胆な成長を実現する方法の一つは国際展開だろう。CNBCの記事によれば、事実、Strategic Wealth PartnersのアナリストMark Tepperは「今回の四半期決算ではこの点について詳細に観察する」つもりだと述べていた。

Teppeは四半期レポートの内容に満足したに違いない。Salesforceの副会長、COO、プレジデントのKeith Blockは今年の新規採用の40%はアメリカ国外で実施されたものだと明かした。国外の成長がアメリカにおける成長を上回ったところからみて、こうした国際的拡張への投資は十分実を結んだようだ。

写真:: Salesforce

ベニオフはまたブレット・テイラーをプレジデント兼最高プロダクト責任者(CPO)に昇進させたことを発表した。テイラーはクラウドベースのワープロ、Quipのファウンダーで、昨年、7億5000万ドルで同社が買収されたときにSalesforceに加わった。「ブレット(Bret Taylor)はわれわれのプロダクトについてビジョン、デザイン、開発、マーケティング戦略の全般にわたって指揮をとることになる」とベニオフは説明した。いっぽう、これまでCPOだったAlex Dayonはプレジデント兼最高戦略責任者(Chief Strategy Officer)に昇進した。「Alexはわが社の戦略を指揮し、プロダクトの方向性や発展に関してこれまでより直接に顧客と接することになる」ということだ。

どちらの人事もトップの世代の若返りを狙ったもので、Salesforceが成功に安住して活力を失う危険性を防ぐだろう。もっともテイラーらの任命でプレジデントの人数はだいぶ増えた。前述のKeith Block、 CFOのMark Hawkins、最高人事責任者(Chief People Officer)のCindy Robbinsはいずれもプレジデントの役職を持っている。Saleseforceではプレジデントが他社のバイスプレジデントを意味するようだ。

Constellation Researchのファウンダー、プリンシパル・アナリストのRay WangはSalesforceの人事について、「同社には最高xx責任者が多数いるが、その中で重要な職はプレジデントの肩書を同時に保有しているかどうかだろう。いずれにせよ昇進の人選は順当、件数も最小限〔であり、同種の他社に比べてトップヘビーということはない〕」と説明している。

WangによればテイラーはQuippの買収後の社内での奮闘ぶりが認められたとし、Dayonは「新し役割」を担うと見ている。「Alex 〔Dayon〕はこれまで何年もプロダクトとサービスの洗練に専念してきたが、今後は全社的戦略を考えることになるだろう」という。

ただし、この四半期発表を受けて株価は今朝やや下げた。107.49ドル〔現在は106.83ドル〕は最近記録した高値〔109ドル〕にわずかに届かなかった。ウォールストリートが好調な決算になぜ(少なくとも今のところ)もっとポジティブに反応しなかったかは不明だが、Salesforceの長期的な将来は明るいと思われる。

画像: Justin Sullivan/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Microsoftの友好的協業時代は終わりを告げるのか

数年前のこと、SalesforceのユーザーカンファレンスDreamforceのステージ上で、マーク・ベニオフのゲストとして登壇したMicrosoft CEOのサタヤ・ナディラは、彼の会社の新しい友好的協力の時代の幕開けを告げるかのようだった。しかし時は移り、いくつもの証拠から、2015年に華開いた友好な協力関係は終わりを告げそうに見える。そしてそれは対Salesforceに限られた話ではない。

2015年当時、ナディラは、クラウド時代に向けての、大手ブランドとの協業の必要性について熱心に語っていた「それは私たちの責務なのです。特に私たちのようなプラットフォームベンダーは、顧客の抱える本当に困っている問題を解決するために、幅広いパートナーシップを結ぶことが求められているのです」と語っている。

当時の状況の中でこのコメントを振り返れば、これはMicrosoftがお互いに利点のある競合相手と新しい提携関係を結ぶことにオープンな姿勢を取り、そして彼の言う「顧客の抱える本当に困っている問題」を解決することを目指す、強いメッセージのように見える。

基本的にナディラが述べていたのは、クラウドの時代には、顧客がそれを要求するので、これまで以上に共同作業をする必要があることが明らかになった、ということだ。その時でさえナディラは、彼の会社が市場の中で、Salesforceその他の競合と激しく競争する意図を隠すことはなかった――とはいえ、これまでのところは協力だけが先行していたが――しかし彼はMicrosoftが、気さくなパートナーの役割を果すチャンスを見ていたのだ。

これは、ビル・ゲイツやスティーブ・バルマーがのやり方とはまったく対照的なものだった。当時は、顧客を自分たちのコンピューティングアプローチに縛り付けようとして、他の大企業たちとより激しく戦っていた。その世界では、協業は目指すべきゴールではなかった。それこそが、2015年当時ナディラの懐柔的な口調が、驚きと共に迎えられた理由なのだ。

同じことが長年のライバルAppleとの間にも見られた。Appleと何年にもわたって争ったあと、Microsoftは少々やり方を和らげた。おそらくティム・クックが2015年のBoxWorksで聴衆にこう語りかけたときには、パートナーシップを誇らしく思っていたことだろう「AppleとMicrosoftは競合する以上に、より多くのもので協業することができます。それを顧客が望んでいるのです、Mac用Officeがその原動力です。Microsoftとのパートナーシップは私たちの顧客に対して望ましいことであり、それが私たちがそうする理由なのです」このとき、まだ協調精神は栄光に溢れていた。

しかし、2017年までに徐々に明らかになってきたのは、私たちが耳にした筈のメッセージは、実は協業の部分ではなく、Microsoftが市場で激しく競合するという部分だったという事実だった。時とともに、ナディラの下で見られたMicrosoftの軟化した側面が、徐々に硬化しているように思える。トーンは変わり少し厳しいものとなり、彼が私たちに語ったように、競争は激しさを増している。

昨年Microsoftが、HPのCRMビジネスをSalesforceから奪った時、Microsoftのクラウド責任者のScott Guthrieはこの契約を、「Salesforce takeout」(Salesforceはお持ち帰りいただく)と呼んで、競合に勝った喜びを隠そうとはしなかった。突如両者はより激しく競争を始めた、トーンは少々厳しくなり、友好的な語らいと笑顔の時代は終わりを告げた。

先週のDreamforceでは新しい友人であるDiane Greene(Google Cloudの責任者)との提携を発表する一方で、ベニオフはMicrosoftのフラッグシッププロダクトのOfficeに攻撃を加えた。「私たちにはG Suiteを使う3万人の利用者がいて、それはとても長い期間に渡っています。Microsoft Officeから離れることは、おそらく私たちが今までに行った最善の決定の1つです」とベニオフは語った(退屈してる暇はなさそうだ)。

一方先週には、インドでの講演で、ナディラはiPadを使っていた2人のインド人ジャーナリストに向かって、「本物の」コンピューターを使うべきだと言っている。それは冗談めかして言われたものの、明らかにAppleへの攻撃だった。彼の会社のハードウェアが本物のコンピューターならば、Appleは何だろう?おもちゃのコンピューター?その先は想像にお任せしよう。

ここ数年にわたる広告キャンペーンでも、Microsoft Surface Proのようなコンピューターができて、Appleのコンピューターではできないことをあげつらって、Appleを標的にしている。もちろんライバルを標的にするのは広告の常套手段だが、CEO自らそれをするというのはまた別の話だ。

競合他社に対してより厳しい言葉を使い続けているにもかかわらず、Microsoftはは引き続きライバルたちとの協業を模索しており、それがなくなることはない。同時に、Microsoftはナディラの下、オープンソースコミュニティへの重要な貢献者となっていて(例としては、ここここ、そしてここなど)、その動きも変わる様子を見せていない。

まあ、競合する会社たちが、手に手をとってキャンプファイヤーの周りでフォークダンスを踊るとは、誰も思っていないだろう。しかしここ数年の間に明らかにトーンは変わっている。Microsoftとそのテクノロジー業界のライバルたちは、依然として顧客たちのために製品を連携させる方法を模索しているようだが、どうやらその動きにも少々ためらいが見られるようになってきたようだ。

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(翻訳:Sako)

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SalesforceとGoogleが提携を発表

SalesforceとGoogleは本日(米国時間11月6日)、Salesforceのツールと、GoogleのG SuiteおよびGoogle Analyticsとのクラウド連携を容易にするための契約に署名した 。またこの契約の中で、Salesforceは国際インフラ拡張の一環として、Googleをコアサービスのための推奨クラウドプロバイダー(a preferred cloud provider for its core services)と呼んでいる。

「推奨プロバイダー」(preferred provider)という部分に聞き覚えがあるかもしれない、そう2016年5月にSalesforceはAWSと似たような契約を結んでいるのだ、確かそこではSalesforceはAWSを…(ああやっぱり)…「推奨クラウドプロバイダー」と呼んでいて、同様に国際インフラ拡張にも注意を向けていたのだ。

Salesforceが、2つの国際的な推奨プロバイダを持っても何の問題もないし、AWSは引き続きSalesforceのパートナーなのだが、その外からの見え方にはちょっとした変化が加わったかもしれない。Microsoftも同様にそれを感じているだろう、なぜなら今回のGoogleとの契約の一部では、G SuiteがSalesforceの推奨電子メールならびにプロダクティビティプロバイダーとして挙げられているのだ。もちろん、SalesforceはOutlookならびにOffice 365との統合を続けて行くが、ここで同社は、Microsoftに対して1つのメッセージを送ったことになるのかもしれない。

おそらくMicrosoftとSalesforceが、2014年に同様の大規模統合プランを発表したときのことを覚えている読者も居ることだろう。サタヤ・ナディラとマーク・ベニオフの微笑みと嬉しそうな様子から、それは記念すべき日だったことがわかる。

写真提供:マーク・ベニオフ

ナディラは翌年、Salesforceの豪華なユーザー会であるDreamForceにも登壇したが、2016年7月に統合クラウドプラットフォームであるにDynamics 365をリリースしてSalesforceの領土に侵攻を始めて以来、両者の関係は厳しいものになり始めた。その後の9月には、MicrosoftはSalesforceから、HP向けのCRMビジネスを奪い去って行った (そしてそれについて声高に宣伝もした)。Salesforceは、LinkedInを買おうとするMicrosoftの260億ドルの取引を、規制当局に対して許可しないように働きかけたが失敗した。両社はまだ協力しているものの、その関係は少し冷えているようだ。

そしておそらく、こうしたこと全てに対するしっぺ返しとして、昨年Salesforceは、Quipを7億5000万ドルで買収した。自社のコラボレーションツールをSalesforce上に持つためだ――そして同時に、AWSならびにGoogleとより良い関係を結ぶことに決めたのだ。

幾つかのツールが既に利用可能になっている、例えばGMailやGoogle Sheetsに対するSalesforce Lightingコネクターが、Google DriveとGoogle Calendar向けのQuip Live Appsと同時に提供されている。今朝発表されたばかりのLive Appsは、アプリとQuipの間で、双方向の更新が可能なライブコネクターを提供する。また同社は、Google Hangouts Meetsスペースに、SalesforceのCRMデータを統合したSalesforce Hangout Meetsも発表した。

Analyticsの部分に関しては、Constellation Researchの創業者で主席アナリストのRay Wangによれば、これは分析ビジネス領域における、SalesforceからAdobeへの挑戦だということだ。Adobe AnalyticsとAdobe Experience Cloudは、ともにSalesforceのマーケティングと分析ツールに匹敵するものだが、今回Googleと提携することで、Salesforceはビジネスの分析機能を強化したいと考えている。

現在Googleは、推奨パートナーになることで何がもたらされるかの論争を乗り越えて、企業の利益を求めようとしている。また大企業の中核へGoogle Cloud Platformを浸透させたいGoogleは、実績ある企業向けソフトウェアベンダーであるSalesforceとの関係を活かすことで、同社が熱望している企業からの信頼性を増すことが可能になる。

今回の契約は明らかにSalesforceそしてGoogleの双方に対して良いものである。関わるその他の企業たちもSalesforceのパートナーのままなので、正確には負けたというわけでもないが、少なくとも今日はGoogleが舞踏会の華である。

(訳注:トップの画像が「雲を眺める2人の子供」の写真なのは、記事の原題が ”Salesforce and Google are the latest pals in the cloud” (SalesforceとGoogleはクラウド世界の新しいお友達)というものだから)。

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(翻訳:Sako)

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Salesforceが新しいIoTの枠組みであるIoT Explorer Editionを発表

誰もがIoTを求めている、そうしない理由もない。もし予測通りに進むなら、2020年までには何十億ものデバイスとセンサーが情報をブロードキャストし、誰かがそれを理解し、重要なデータを私たちに指摘しなければならないSalesforceはそうした会社(少なくともその中の1社)になりたいと考えている。

Salesforceは、これまでも流行りの最新技術に飛びつくことにためらいを見せたことはない。ビッグデータ、人工知能、そしてIoTでもおかまい無しだ。実際Salesforceは、2015年にはSalesforce IoT CloudをDreamforce Conferenceで発表し、IoTについて語っている。これは多くの企業よりも遥かに早い動きだった。

本日(米国時間10月10日)Salesforceは、新しいIoTイニシアチブであるIoT Explorer Editionを発表した。顧客がIoTデータを収集し活用するための仕掛けである。CEOのMarc Benioffが、IoT Cloudを立ち上げた2015年の段階では、同社が大いに将来性があると判断したテクノロジーに関して、とにかく先行することが目的だった。

IoT Explorer Editionは、そのビジョンをより多くのビジネスに広げるためにデザインされている。それはまず最初に、Salesforceが「ローコード(low code)」と呼ぶIoTビジネスワークフロー生成手段を提供する。非技術者は、何らかの自動化ワークフローを作成するために、プロセスの一覧から選択して、複数のデバイスやセンサー同士を接続することができる。

たとえば、風力タービン会社を所有していたとしよう(あり得るシナリオだ)、そしてタービンが保守を必要としている時に、通知を受けられるようにしたいとする。この場合、能力が一定レベルを下回ったときに、通知をトリガするワークフローを作成することができる。

Salesforceらしいところは、こうした情報をただかき集めて配信するだけには止まらないということだ。例えばSalesforce Service Cloudのような、他のSalesforceプロダクトにその情報を結びつけたいと考えている。もしワークフローがサービスコールをトリガーした時には、サービス担当者がこれまでのサービス履歴と、顧客が風力タービンの問題について、今週初めに電話をかけてきた事実にアクセスできることが有益だ。

そして、Salesforceは顧客のサービスコールについて、積極的に手助けをしたいと考えている。もしこのツールを使用して将来を予測し、デバイスがサービスを必要とすることを、ある程度の確実性で知ることができるなら、顧客から電話がかかってくることをただ待っている必要はない。こちらから顧客に連絡して、彼らの設備が故障しようとしていると告げ、新しい設備を売ることもできる。そんなことができるならどんなに素晴らしいことだろう。

新しいIoT Explorer Editionは、Salesforceのさまざまなクラウドへのアドオンとして、10月17日から一般的利用が可能となる。

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(翻訳:Sako)

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SalesforceがAIを利用して自然言語の質問をSQLに翻訳、事務系社員でもデータベースを利用できる

SQLはプログラミングの世界ではやさしい方だが、ふつうの人たちがリレーショナル・データベースを対話的に利用したいと思ったときには、やはりその学習曲線は急峻だ。そこでSalesforceのAIチームは、SQLを駆使できない人でもデータベースを使えるために、機械学習を利用できないか、と考えた。

彼らの最近のペーパーSeq2SQL: Generating Structured Queries from Natural Language using Reinforcement Learning(強化学習を使って自然言語からSQLを生成する)は、機械学習でよく使われるシーケンス変換モデルを利用している。強化学習の要素を加えたことによりチームは、自然言語によるデータベースへのクェリをSQLに翻訳するという課題に対し、かなり有望と思われる結果を得た。

すなわちミシガン大学のデータベースに対し、データベースにフットボールの優勝チームを尋ねるクェリで、正しい結果が得られた。

このプロジェクトに関わった研究員の一人、SalesforceのVictor Zhongは、こう語った: “クェリの正しい書き方は一つではない。自然言語で言われた質問*に対し、それを表すSQLのクェリは二つも三つもあるだろう。われわれは強化学習を利用して、同じ結果が得られるクェリを使うよう、学習を誘導した”。〔*: 自然言語は、語形はまったく同じでも、話者の込めた含意がさまざまに異なることが多い。〕

どなたもご想像できると思うが、ボキャブラリーがとても大きいと、機械翻訳という問題はたちまち複雑困難になる。しかし、翻訳の可能性の多様性を野放しにせずに、どの語に関しても少数に限定してやると、問題はよりシンプルになる。そのためにSalesforceにチームは、ボキャブラリーを、データベースのラベルに実際に使われている語に限定した。つまりそれらの語は、SQLのクェリに実際に登場する語だ。

SQLの民主化は、これまでにもいろいろ試みられている。たとえば最近Tableauに買収されたClearGraphは、データをSQLでなく英語で調べることを、自分たちのビジネスにしている。

“データベース本体の上で実行されるようなモデルもある”、とZhongは付言する。“しかし、社会保障番号を調べるような場合は、プライバシーの懸念が生じる”。

ペーパー以外でSalesforceの最大の貢献は、モデルの構築に利用したデータセットWikiSQLだ。最初に、HTMLのテーブルをWikipediaから集める。これらのテーブルが、ランダムに生成されるSQLクェリのベースになる。これらのクェリを使って質問を形成するが、それらの質問はAmazon Mechanical Turkで人間に渡されてパラフレーズ(語形変化)される。それぞれのパラフレーズは二度検査され、人間によるガイダンスが付く。そうやって得られたデータセットは、このようなデータセットとしてはこれまでで最大のものだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Salesforceの第二四半期決算報告を見ると年商100億ドルがいよいよ現実的に

今年早くからSalesforceは、同社の年商が100億ドルに達すると予想された。そしてどうやら、今後とくに問題なければ、実際に100億に達するようである。

Salesforceが今日(米国時間8/22)発表した第二四半期の決算報告によると、売上は25億6000万ドルで、EPSは33セントとなった。どちらも予想を上回ったが、株価は時間外取引でやや下げた。今年は一貫して、驚異的な上げ潮続きだったから、すこし引いたという感じだ。今年の1月以降これまでの上げ幅は36%近かったが、今日の決算報告後では約3%下がった。

Salesforceはこのまま行けば年商100億に乗りそうだが、人びとが注目しているのは年後半のDreamforceカンファレンスだ。そこでSalesforceはいくつかの新製品を発表するだろうし、同社のAIシステム“Einstein”に関する詳しい報告もあるだろう。Salesforceは、ネットを利用するCRMツールの元祖だが、最近ではもっと若くて小さい競合企業の成長が著しい。

そこで同社は、製品を現代化して今後も先頭を走り続けようとしている。その現代化には、企業がワークロードを機械学習を利用してダイエットしていくためのツールなどが含まれる。機械学習は今、エンタープライズソフトウェアの分野にも入り込みつつある。その方面ではSalesforceがとくに積極的で、これからはカスタマーサービスのツールを半日で作れる、とまで豪語している。SalesforceはCRMサービスのAI化を、今後も強力に推進していくつもりのようだ。

同社はデベロッパーが自分のアプリケーション開発のために利用するAIのAPI(EinsteinのAPI)を、すでに提供している。そこで今年の後半に関しては、ウォール街ですら、同社がそのサービスをAI利用でますます自動化していくこと、そしてそのための一連の新製品がカンファレンスで発表されることを、期待しているのだ。

そのウォール街の予想では、Salesforceの第二四半期のEPSは32セント、売上は25億1000ドルだった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

SalesforceのAIがソーシャルメディア上に自社製品が写ってる画像を見つけてくれる

企業が自分の社名やブランド名、製品名などへの言及をソーシャルメディア上に探すことは前から行われているが、画像中にロゴや製品が写っているのを見つけることは、当時はできなかった。しかしSalesforceの人工知能Einsteinは最近、そんな能力を持つに至った。

同社が今日発表したEinsteinのVision for Social Studio機能はマーケターに、言葉を探す場合と同じやり方で、ソーシャルメディア上に製品等の関連画像を探す方法を提供する。そのためにこのプロダクトは、Einsteinのとくに二つのアルゴリズム、画像分類アルゴリズムとオブジェクト検出アルゴリズムを利用する。前者はビジュアルサーチにより、製品やブランド名を画像中に見つける。そして後者は、それらが載っていた品目を同定する(例: 雑誌のページの上)。

最近のAIはとりわけ、感知や認識の能力が優れている。それは、画像の認識能力を訓練するアルゴリズムが進歩したためだ。最近では電子計算機の計算能力のコストは大幅に下がっており、そこに大量の画像をネット経由で放り込んでもそれほどの費用にはならない。そのために、大量の画像データでAIを教育訓練することが、誰にでもできるようになったのだ。

Salesforceのマーケティング担当VP Rob Beggによると、それ(画像認識とそのための訓練)は、人間よりもマシンに適した仕事でもある。“企業のマーケティングという視点から見ると、今のソーシャルメディア上のツイートやポストはものすごく多い。しかしAIは、その大量の情報の中にわれわれが求めるものを見つけることが得意だ”、と彼は語る。

彼によるとたとえば、ネット上に車に関するポストは山ほどあるが、でも今やっている広告キャンペーンと関連性のあるものは、ほんのわずかしかない。AIは、その、わずかしかないものを、簡単に見つけてくれる。

Beggが挙げるユースケースは三つある。まず、自分たちの製品を人びとがどのように使っているかが、分かること。第二に、画像中に隠れている自社製品やブランドを見つけ出すこと。そして三つめは、俳優やスポーツ選手など有名人が自社製品を使っているシーンを見つけること。

EinsteinのVision for Social Studioは、訓練により、今では200万のロゴと、60のシーン(空港など)、200種の食品、そして1000種のオブジェクトを認識できる。どの企業にとっても、はじめはこんなもので十分だ。ユーザーがカスタマイズすることは現状ではできないから、特定のロゴやオブジェクトを認識しないときは、今後の、カスタマイズ可能バージョンを待つべきだ。

Beggによると、Vision for Social Studioはマーケターのような技術者でない者でも容易に利用でき、彼/彼女にビジュアル認識ツールという新しいレパートリーが加わる。この新しい機能は、Salesforce Social Studioのユーザーなら今すぐ利用できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

SalesforceはAIで電子メールとドキュメントを要約し、あなたの時間を節約しようとしている

1日に6時間以上も電子メールの処理に時間をとられる米国人労働者もいる ― 私たちはこんな研究を目にしてきている。それは時間の有効な使い方ではなく、生産性を損ない、最終的にはビジネスコストに跳ね返る。SalesforceのMetaMind研究者のチームが書いた新しい論文によれば、最終的にはプロフェッショナルコミュニケーションのサマリーを提供することができる。もし研究がいくつかの不都合を解決することができれば、より効果的なテキストサマリーツールが、Salesforceユーザーたちに素晴らしい価値をもたらしてくれるものだ。

特に非常に長いテキストブロックを処理する場合に、機械学習を使用してテキストサマリーを作成することは容易ではない。サマリーを生成するために、単純にソーステキストを頼りにする手法はあまり柔軟ではなく、全く新しい文章を生成する手法はしばしば支離滅裂な文を生み出す。

Salesforceは後者の手法の精度を高めようとしている。すなわち新しい文章でサマリーを生成しようとしているのだ。標準的な方法へに対してチームが行った変更には、強化学習の追加と、反復的な文書の削除、そして精度の最大化のために使える文脈量の増加などが含まれる。

Salesforceによって生成されたサマリーの例

強化学習を用いて、最適な振舞が確立される。この場合は、既存のテストによる正確性が最大化するように測定が行われる。そしてモデルが連続したサマリーを返す度に、その正確性に対するスコアをモデルにフィードバックする。モデルはそのスコアを参考にして、次回はより高いスコアを得ることができるように適応の努力を行なう。

この手法について想像するための簡単な手段としては、無制限に再試を受けられる模擬試験を大学で受けている状況を想像してみると良い。模擬試験を受ける度に、あなたは実際の試験での成績を最大化することを狙って、勉強の戦略を変更する。人間ならば、それを上手くやるためにはそれほどの繰り返しを必要としないだろうが、機械はかなり多くの試行錯誤を行なう必要がある。

強化学習は、文章生成を必要とするタスクでは徐々に一般的になりつつある。強化後に変更されたモデルは、ソース文書のコンテキスト情報も使用して、関連する新しい文章の生成を支援し、重複するフレーズを減らす。

SalesforceはそのアプローチをROUGE(Recall-Oriented Understudy for Gisting Evaluation)テストで評価している。ROUGEは、生成されたサマリーの精度の高速分析を可能にする一連のテスト手法である。

テストでは、生成されたサマリーの断片を、受け入れ済みのサマリーの断片と比較する。テストのバリエーションは、異なる長さの断片を一致させようとするだけだ。以前の試みよりも、Salesforceの手法は、2〜3ポイント高いスコアを達成している。これはあまり大きな違いではないように思えるかもしれないが、機械学習の世界ではとても大きなことだ。

すべての研究と同様に、まだ実用上成熟しているものとは言えない。しかし、この研究は幾つかのことを示している。ピンと来ていないひとのために言うと、SalesforceはCRMへのマシンインテリジェンスの適用に真剣に取り組んでいる。その中での最初の大切な目標の1つがセールスを支えるテキストサマリー技術なのだ。

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(翻訳:Sako)

Hillary Clintonがあらゆる差別の撤回に向けてシリコンバレーの能力をおだてる

サンフランシスコで行われたPBWC(Professional BusinessWomen of California)のカンファレンスでHillary Clintonがシリコンバレーに、ダイバーシティ(diversity)とインクルージョン(inclusion)をもっと活発に、と訴えた*。その重要な鍵のひとつが、有給育児休暇の普及だ、とも言った。Clintonは、インクルージョンがうまくいってない企業の例としてセクハラ・スキャンダルのUberを挙げ、男女の給与差を廃したSalesForceを賞揚した。〔*: diversity, 多様性、主に性や人種による差別・排他性の廃止; inclusion, 統合化、主に障害、年齢、犯罪歴など人生の‘履歴’による差別の廃止。 〕

“未来志向を誇る企業でステレオタイプや偏見が蔓延しているのはひどい皮肉だ”、とClintonは述べた。“Uberのセクハラの例にように、そのことを社会に公言して一部の女性が直接的な敵意にさらされることもある”。

Clintonが挙げたのは、先月、Uberの元ソフトウェアエンジニアSusan Fowler Rigettiが会社で受けたセクハラについて書いたブログ記事が口コミで広まった結果、同社としては初めてのダイバーシティ報告書を作成公表せざるを得なくなった件だ。

“それは一時的な流行語や、‘やってます’にチェックを入れればすむ問題ではない”、とClintonは言う。“問題を解決するために重要なのは、企業におけるフェミニズムの尊重などではなく、至るところで具体的に女性の生活が改善されていくことだ”。

Clintonは、SalesforceとGapを、同一賃金や有給の育児/介護休暇を具体的に実践している企業の例として賞揚した。

“シリコンバレーが持つ優れたツールやクリエティビティをもってすれば、暗黙の偏見のような捉えにくい問題にも挑戦して、みなさんが選んだ議員たちを動かしていくこともできるはずだ”、と彼女は付言した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

IBMとSalesforceがパートナーシップを締結 ― WatsonとEinsteinによる統合サービスを提供

人工知能の分野で先行する2社が手を組んだ。IBMとSalesforceがパートナーシップ締結を発表したのだ。

このパートナーシップにより、IBMはEinsteinとWatsonの両方を通じて同社のコンサルティングサービスを売り込むことができる。

今後、Watsonのビジネスから得たノウハウが直接SalesforceのIntelligent Customer Successプラットフォームにもたらされることになる。Einsteinがもつカスタマーリレーションシップのデータと、Watsonがもつ天気、ヘルスケア、金融、リテール分野の構造化/非構造化データが組み合わさるかたちだ。

「今後数年のうちに、私たちはAIや認識技術の手を借りて主要な意思決定 ― 個人、ビジネスを問わず ― を行うことになるでしょう」とIBM最高経営責任者のジニ・ロメティー氏は語る。

ロメティー氏によれば、Watsonに「触れた」ユーザーは10億人にものぼる ― 腫瘍学などの医療分野、リテール分野、税務分野、クルマ分野など、その入り口はさまざまだ(この数字に広告分野が含まれているかどうかは定かではない。たぶんそうだろうが、、、IBMはWatosonを頻繁に宣伝している)。

「EinsteinとWatsonのコンビネーションによって、ビジネスがよりスマートになり、私たちの顧客も恩恵を受けることができます」とSalesforce最高経営責任者のMarc Benioff氏は話す。「IBMと手を組むことができ、とても興奮しています ― これほどまでにSalesforceのコアバリューと共通した理念をもつ企業は、IBMの他にありません。両社にとってベストなパートナーシップだと言えます」。

Benioff氏の話は多少誇張されている部分もあるが、この2つの企業が手を組んだことによって奇妙なパートナーシップが出来上がったことは紛れもない事実だ。両社が展開する知能プロダクトがどのレベルまで統合されていくのか、そして彼らがどの程度手を取り合うのかは、まだ明らかにされていない。

両社の発表によれば、今後彼らはAPIを利用してWatsonとEinsteinの統合を進めていくという。彼らが例としてあげた用途として、Einsteinがもつ顧客データとWatsonがもつ天気データやリテール業界のデータを組み合わせることで、顧客にEメールキャンペーンをうつというものがある。

まさしく、天気データの統合はこのパートナーシップのなかで最も重要な要素だといえる。IBM傘下のWeather CompanyのサービスがSalesforceのアプリマーケットプレイス「AppExchange」に加えられるのだ。これにより、顧客に天気情報をもとにしたアップデートを提供することができるようになる。

最も重要なのは、WatsonとEinsteinを統合した機能の導入を支援するサポートチームをIBM傘下のコンサルティング企業「Bluewolf」が組織するという点だろう。両社の統合サービスは3月末から利用可能になる予定だが、すべての機能が利用できるようになるのは今年後半になる見込みだ。

この件についてSalesforceとIBMからコメントを入手することはできなかった。