Tencentがニューヨーク証券取引所上場の長年の検索パートナー中国Sogouの買収を計画

Tencent(テンセント、腾讯)が、オンライン検索マーケットでライバルのBaidu(バイドゥ、百度)の攻勢をかわすために、Sogou(ソゴウ)の株式の36.5%を取得(PR NewsWire記事)してから7年になる。ソーシャルとゲームの巨人Tencentは、現在長年のパートナーを買収し、非公開とすることを提案している。

IPOを祝うためにニューヨーク証券取引所(NYSE)を訪れたSogou(NYSE:SOGO)の幹部とゲスト。特別な瞬間を祝うために集まったCEOのXiaochuan Wang(シャオチュアン・ワン)氏、Sohuの会長でCEOのCharles Zhang(チャールズ・チャン)氏、そしてNYSEの代表であるTom Farley(トム・ファーレイ)氏がThe Opening Bellを鳴らしている。

ニューヨーク証券取引所に上場されているSogouは、今週Tencentから、まだTencentが所有していない残りの米国の預託株式(ADS)を1株あたり9ドルで取得したいとする、拘束力のない暫定的な提案を受け取ったと語った(Sogouリリース)。この事が意味するのは、中国のデスクトップ時代の主要なウェブポータルであり、Sogouの支配株主であるSohu(ソフウ、捜狐)が、検索会社Sogouから手を引くことになるということだ。

Sohuの声明によれば、同社の取締役会はまだ提案内容を検討したり、申し出を受けるかどうかを議論できていないとのこと(PR NewsWire記事)だ。この7月27日のニュースを受けて、Sogouの株式は48%上昇して8.51ドル(約899円)になったが、この価格はIPO時に記録した最高価格13.85ドル(約1463円)を遥かに下回っている。

2005年に創業したSogouは、自らを中国最大の検索サービスBaiduへの挑戦者だと宣言し、2017年の後半に株式公開を行った(未訳記事)が、長らくBaiduには大きく水を開けられたままだった。また第1四半期の収益報告書によれば(Sogouリリース)、同社は毎日4億8200万人がタイピングしたり音声をテキストに変換したりして利用している、中国のトップ入力ソフトウェアを運用している。

Tencentとの戦略的パートナーシップが始まって以来、中国語で「検索犬」を意味するSogouはWeChatのデフォルト検索エンジンであり、Tencentのトラフィックから多大な利益を得ている(WeChat自身も独自の検索機能を開発してはいる)。

米中間の緊張が高まる中で、この買収はSogouを米国からの排除対象の中国企業の1つに加えることになるだろう。またこの買収は、WeChat SearchがSogouを邪魔者にしてしまうのではないか、という投資家たちの懸念を和らげることになるだろう。これまでのところ、WeChatの独自の検索機能は、ユーザーのニュースフィード、ユーザーが書いた記事、eコマースストアから、WeChatに統合された軽量アプリなどの、主に個別アプリ内でのデータ収集に使われているようだ。

これは、WeChatの12億人のアクティブユーザーを対象としたコンテンツとサービスの多くをカバーしている(Tencentリリース)。多くの人は、消費者向けニュース、食べ物の注文、ゲームプレイ、食料品の購入などを、チャットアプリを離れて行う必要がない。しかし、巨大なエコシステムの外にはまだ情報が残されていて、それがSogouの得意分野だ。つまり、オープンウェブで利用できるものをWeChatユーザーの手に届けるという役割だ(もちろん、それは中国のすべてのサービスと同様に政府による検閲を受けている)。

このやり方は、大企業同士がお互いをブロックしたり、ライバルが自分のコンテンツにアクセスするのを難しくするという、中国のインターネット上の常習的な慣行を反映している。目的は、トラフィックを固定し、ユーザー情報を抱え込むことだ。例えばWeChatで公開された記事をBaiduで検索することはできないし、ユーザーは、WeChatを離れずにAlibaba(アリババ)ショッピングリンクを開くこともできないのだ。

なおSogouはWeChatにとって唯一の検索パートナーではない。WeChatは、あらゆる情報ニーズを捉えるために、仲間内のマイクロブログプラットフォームであるWeibo(ウェイボー、微博)や、Quora(クオーラ)に似ているZhihu(ジーフー、知乎)、ソーシャルコマースサービスのXiaohongshu(シャオホンシュ、小紅書)とも提携を行っている。

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(翻訳:sako)

Tencentと中国の科学者たちがディープラーニングを使用してCOVID-19症例の重症化確率を予測

世界中のハイテク企業が、コロナウイルスパンデミックとの闘いを支援するために、フル回転している。研究によれば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)患者の6.5%(ネイチャー記事)が突然重症化する可能性があり、その重症例の中での死亡率は、高ければ49%(JAMA記事)にも達することがある。したがって、保健当局の重要な任務の1つは、重度または致命的な症候群に陥る可能性のある患者を早期に特定して治療することだ。

これが、Tencent AI Lab(テンセントAIラボ)と、中国の公衆衛生科学者のグループによって結成されたチームで行われている研究だ。公衆衛生科学者のグループを率いているのは2月の発足以来(Tencent記事)、COVID-19に関わる中国の上級医療顧問を務めるZhong Nanshan(鍾南山、チョン・ナンシャン)氏である。

今週このチームが、コロナウイルス患者が重症化するリスクを予測できる、深層学習ベースのモデルを発表した。詳細はネイチャーコミュニケーションズで発表された。そこでは同ラボが、中国の575箇所の医療センターの1590人の患者群に基づいてモデルをどのように考案したのか、そしてさらに1393人の患者を使ってどのように検証を行ったのかが詳述されている。

共同ラボはこの予測機能をオンラインで利用できるようにして(Tencentサイト)、世界中の臨床スタッフが10種の臨床パラメーターを使って、5、10、30日以内に重症になる確率を計算できるようにした。これが直接焦点を当てているのはCOVID-19だが、研究室の長期的な使命は、自身の言葉で表現するなら「ビッグデータとAIを使用して、大規模感染、呼吸器疾患、および胸部疾患に向けての、スクリーニング、予防、制御、および警告を行うこと」である。

中国の他のハイテク大手も、この致命的なウイルスを封じ込めるために同様のプロジェクトを進めている。Alibaba(アリババ)は、機械学習とディープラーニングを使用して、90%の精度でCOVID-19の拡散を予測できるとする、公共機関向けのツール(Alibabaサイト)を開発した。Baidu(バイドゥ)はウイルス構造解析のアルゴリズムをオープンソース化(Baiduサイト)したが、同社はこの手法が従来の方法より120倍速いと主張している。

Tencent AI Labは、ビデオゲームやソーシャルネットワークなどの収益ビジネスと並んで、最先端のテクノロジー開発競争に身を投じようとする、Tencentの取り組みである。2016年に発足した研究部門は、70人の研究者と300人のエンジニアのチーム(Tencent AI Labサイト)を抱え、コンピュータービジョン、音声認識、自然言語処理、機械学習に取り組んでいる。

同ラボは、アリババのDamo Academy(ダモアカデミー)やBaidu Research(バイドゥリサーチ)などの国内ライバルと競争しながら、世界最高のAI人材を追い求めている。多くの場合、それは著名な科学者を雇って若い才能を引き付けることを意味している。近年、BaiduはAndrew Ng(吳恩達、アンドリュー・ン)氏とLu Qi (陸奇、リー・キー)氏の辞任に苦しみ、Tencent AI Labもまた、昨年その代表的な人物である Zhang Tong (張潼、チャン・トン)氏を失っている(未訳記事)。

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(翻訳:sako)

カナダのコーヒーチェーンTim Hortonsが中国展開強化に向けテンセントから資金調達

カナダのコーヒー&ドーナツチェーンのTim Hortons(ティム・ホートンズ)は、中国進出をさらに進めるための有力なパートナーを確保した。同社は米国時間5月12日の火曜日にWeiboの同社公式アカウントで、中国のソーシャルネットワーキングとゲーム業界の巨人であるTencent(テンセント)から資金を調達したと発表した。ただし、その規模は明らかにしていない。

TechCrunchはTim Hortonsにコメントを求めたが、回答は得られなかった。またテンセントの広報担当者も、この投資についてコメントを避けた。

55年の歴史を持つカナダのコーヒーチェーン店であるTim Hortonsは、2019年2月に中国に進出している。Alibaba(アリババ)はすでにスターバックスと提携しており、同社の最大のライバルであるテンセントはTim Hortonsと組むことになった。同社によると、今回調達した資金はWeChatベースのミニアプリなどのデジタルインフラストラクチャの構築や、店舗の拡大に充てられるという。現在、Tim Hortonsは中国では約50店舗を展開し、そのほとんどが上海に存在しており、またスケジュールは明かされていないが1500店舗の展開を目指している。

投資家や企業は近年、オンラインとオフラインの小売を融合させることで、お茶を好む中国の人々をコーヒー消費者に変えようと躍起になっている。スターバックスはアリババとの一連の「新しい小売」の取り組みとして、メンバーシップの特典の共有やアリババのEle.meによるデリバリー、音声注文、オムニチャネル・スーパーマーケットことHemaとの流通パートナーシップといった提携を発表している。一方、最近は会計スキャンダルに巻き込まれている中国のコーヒー新興企業のLuckinは、アプリからの注文と30分以内の配達というデジタル化に力を入れている。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

中国テンセントが新型コロナ対策に約110億円のファンドを立ち上げ

Tencent(テンセント)は今週、新型コロナウイルス(COVID-19)の壊滅的な蔓延を抑えるための、1億ドル(約110億円)の取り組みである「Global Anti-Pandemic Fund」を立ち上げたと発表した。このニュースは、Netflix(ネットフリックス)やFacebook(フェイスブック)といった他のテック企業による1億ドルの基金の立ち上げに続くものだ。

深センを拠点とするテンセントの場合、当初この資金は病院や医療機関の救急隊員のための防護服やその他の製品を含む、実用的で極めて重要な医療品の寄付に当てられる。

テンセントは、この取り組みは同社にとって最新のものにすぎないと述べている。テンセントは以前、中国本土の医療従事者を支援するためにパンデミック対策基金を設立し、その取り組みの一環として約2億1100万ドル(約230億円)が割り当てられている。

「新型コロナウイルスは世界中の人々に大きな影響を与えている」と、テンセント社長のMarin Lau(マリン・ラウ)氏はプレスリリースで述べた。「我々は共にこの課題に直面しており、テンセントは国際的な緊急対応を支援することを約束する。中国での経験と世界中の病院から集められたフィードバックに基づき、特にパンデミックの発生時には、従来の供給ルートでは突然のニーズに対応できない場合、PPEやその他の医薬品への緊急のニーズがあることを認識している」。

今のところ、最も適切な寄付は間違いなく医療用品であり、世界中でマスクや人工呼吸器などの重要な機器が大量に不足している。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Tencentが約162億円でノルウェーのゲーム会社Funcom買収へ

売上高で世界最大のビデオ・オンラインゲーム会社の1つTencent(テンセント)は1月22日、その地位をさらに確たるものにするための動きに出た。ビデオゲームConan Exiles(Conanシリーズも)、Dune、その他28タイトルの制作を手掛けたFuncom(ファンコム)の完全買収提案だ。このディールが承認されれば、ノルウェー・オスロ拠点のFuncomの買収額は1億4800万ドル(約162億円)となり、同社は次世代のゲームをめぐる長期的戦略につぎ込む資金を手に入れることになる。

Funcomはオスロ証券取引所に上場していて、取締役会はすでに買収提案受け入れを推奨している。これにより、同社の株価は17クローネ(約206円)となり、前日(1月21日)の終値から27%上昇した。

このニュースはいくぶん興味深いタイミングで発表された。Tencentは大衆市場向けのゲーム売上高でソニーMicrosoft(マイクロソフト)、任天堂としのぎを削っている。しかし今週初め、大ヒットしているソーシャルメディアアプリTikTokを展開しているByteDance(バイトダンス)がゲーム市場参入の準備をしているとの報道があった。

もしこの通りになれば、2社の敵対関係は別のレベルへといく。Tencentはまた、特に自社のメッセージアプリのWeChatを通じてソーシャルメディア業界にもかなりの関心を持っている。多くの消費者が複数のアプリを利用するだろうが、実際にそうなったとき、1つのアプリで金を使うというのは他のアプリでの支出を制約することを意味する。ByteDanceは現在、Tencentのゲームに関係するソーシャルアプリに掲載するコンテンツから収益をあげている。この2社は(当然だが)、部分的にはゲームコンテンツに関連する不当競争をめぐり中国の法廷で争っている。

Tencentはいまや世界最大のビデオゲーム会社の1社だ。直近の四半期決算(昨年11月に発表した第3四半期)で同社は、オンラインゲームの売上高は286億元(約4500億円)で、そのうち243億元(約3830億円)はスマホゲームによるものだったと発表した。

買収と経営支配は同社のゲーム分野における成長戦略の鍵を握る。これまでの大きな案件としては、Tencentは2016年にフィンランドのSupercellの過半数株取得に86億ドル(約9400億円)払った。Tencentはまた、Riot Games、Epic、Ubisoft、Paradox、Frontier、Miniclipなど数多くのゲーム会社にも投資している。そうして投資を受けたゲーム会社も買収を行なっている。ちょうど今月初め、Miniclipがイスラエルのllyon Gamesを1億ドル(約109億円)で買収したことが報じられた(TechCrunchも情報筋に確認した)。Funcomのケースのように、Tencentの投資の一部は少数株だ。大きな視点で見ると、そうした企業はTencentにとって潜在的に買収対象となる。

Funcomに話を戻すと、TencentはFuncomに出資している。KGJ Capital買収という2度目のディールで2019年9月にFuncomの株式の29%を取得した。KGJ CapitalはそれまでFuncomの最大株主だった。

「Tencentは信頼できる長期的投資家として、そしてオンラインゲームでのオペレーション能力で名を馳せている」とFuncomのCEO、Rui Casais(ルイ・カザイス)氏は話した。「Tencentがもたらす識見、経験、知識は我々にとってかなりの価値があり、緊密に連携して引き続き素晴らしいゲームを制作し、またFuncomの輝かしい未来を構築することを楽しみにしている」。

今から考えてみると、この発言はわずか数カ月後にくる買収に向けた基礎準備と両社の関係を示していた。

「我々は最大の株主であるTencentと素晴らしい関係を築いていて、Tencentのチームの一部になることにとても興奮している」とカザイス氏は声明文で述べた。「今後も世界中の人がプレイする素晴らしいゲームの開発を続ける。またTencentのサポートによりFuncomが次なるレベルにいくと確信している。Tencentはゲーム分野におけるリーダーとして幅広い知識を持ち、運用レバレッジや見識をFuncomにもたらすだろう」。

背景には、Funcomが長期的戦略に沿って業務を推進するためには、さならる投資が必要と判断したことがある。買収受け入れを提案する前に出した声明文によると、同社はGaaSビジネスモデルを活用しながら「Open World Survival部門」の構築を続け、2年以内の提供が予定されている野心的なDuneプロジェクトを開発中だ。

「これらにさらに注力するには他のイニシアチブのリソース投入を必要とする。他のイニシアチブを代表するものとしては、当初2020年中のリリースが予定されていた共同制作のシューターゲームがある。このゲームは、その後競争の激化と内部の遅れによる外部からのプレッシャーにより余儀なくされたスコープの変更で大きな影響を受けた」。もし戦略通りに物事が運べば、「Funcomは現在の事業活動であげている売上高を補うためにさらなる資金調達を必要とすることになる」と取締役会は書いている。

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(翻訳:Mizoguchi

【中国ニュースまとめ】アリババ傘下のAnt Financialの新トップとテンセントの新アプリ

こんにちは。TechCrunchによるまとめ中国ニュースにようこそ。これは中国の技術情勢を伝える最新情報と、それが世界中の人々にとって何を意味するのかをお知らせするダイジェストだ。今週は、Ant Financial(アント・フィナンシャル)の経営層の交代がAkibaba(アリババ)の金融施策に与える影響と、なぜTencent(テンセント()がアプリを大量に発表したのかを見ていくことにする。

古いボスの帰還

今週、アリババが33%の株式を握り、Jack Ma(ジャック・マー)氏が経営している、オンライン金融サービス会社のAnt Finantialは、Hu Xiaoming(フー・シャオミン)氏を新しい最高経営責任者として発表した。アリババで経営の交代は珍しくない。アリババ自身も競争環境の中で、新鮮で機敏な状態を保つために、数カ月ごとに幹部を交代させることを誇りにしている。最新の交代は、世界で最も評価額の高い未公開フィンテック企業であるAntが、今後数年間でどこに向かうのかを示す手掛かりを提供している。

フー氏はこの先、Antの国内決済および金融サービス部門の成長を牽引し、前任者で現在会長を務めるEric Jing(エリック・ジン)氏が新技術の海外展開と開発を管理することになる。中国のいくつかの大手銀行で働いた経験を持つフー氏は、2005年にアリババの新しい金融サービスを拡大するために同社に入社し、それ以来Ant Financialがマネタイズへの道を切り拓く手助けをしたことで有名だ。

2009年頃、フー氏はアリババの電子商取引プラットフォーム上で中小の販売店を対象としたマイクロローンサービス を開始するという大胆な施策を行った。これは、銀行との取引履歴がなかったために従来の金融機関から借り入れを行うことができなかった何百万もの業者たちにとっては有り難い施策だった。アリババは、取引履歴の代わりにオンラインセールスや顧客評価などのデジタル記録に基づいて信用力を評価した。現在、小規模ローンは、拡大を続けるAnt金融帝国の多数の提供物の1つに過ぎない。この帝国は、10億ユーザーを誇るAlipay支払いアプリや、世界最大のマネーマーケットファンド、そして信用格付けシステムSesame Creditなどの運用も行っている。

2014年、同氏はアリババのクラウドビジネスをリードするように任命され、やがてそれを同社の最も急成長しているセグメントの1つとして成長させ、アマゾンウェブサービスに対する真の競争相手とすることに成功した。フー氏は当時、アリババクラウドとは無縁ではなかった。フィンテックユニットの既存の(中国語)IT環境にクラウドコンピューティングの導入に すでに取り組んでいたからだ。実際、アリババクラウドの初期のアプリケーションのほとんどはアリババ社内で開発されていた、これは同社が、大規模なほとんどの国際ベンダーが提供できるものよりも、スケーラブルでカスタマイズ可能なITシステムを開発する緊急性を感じていたためだ。

フー氏の指揮の下、クラウド部門は、中国東部のアリババの故郷である杭州政府と、データ分析とクラウドコンピューティングソリューションを利用して交通渋滞を緩和する大規模な契約を結んだ。政府との契約は、コストのかかる最新技術を開発する企業にとって重要な手段だ。イノベーションが実際に実証されればすぐに、民間の需要もやがて上向くことになる。

アリババの金融関連会社Ant Financialの新CEOフー・シャオミン氏

新しいテクノロジーの商業化と州機関との協力の経験をもつフー氏の経験は、彼を重要な時期にAntの理想的なリーダーの地位に押し上げた。伝えられるところでは、北京政府が民間企業があまりにも大きな影響力を持つことを心配したために、昨年期待されていたAnt FinancialのIPO計画が延期されたという。規制当局と大手銀行からの懸念を和らげるために同社は最近、金融サービスそのものではなく、テクノロジーソリューションの販売により重点を置くようになった。

ソーシャルネットワーキングへの不安

テンセントは、2019年の初めから、少なくとも7つの新しいソーシャルネットワーキングアプリをリリースしている。大学生をターゲットにしている場合でも、ビデオベースのチャットを専門にしている場合でも、それぞれの狙いはわずかに異なっている。業界のオブザーバーたちは、テンセントのこの動きは、挑戦者たち、特にTikTok、中国では抖音(Douyin)で世界を席巻したByteDance(バイトダンス)と戦うために行ったものだ述べている。(TikTokの)短い動画は、テンセントのメッセンジャーWeChatと直接競合することはないが、確実に人びとのスクリーン時間をより多く消費している。また、ByteDanceが ビデオゲームメッセージングに参入することで、テンセントのコア市場に侵入しつつある兆候が現れている。

テンセントはまた、WeChatの成長の鈍化についても心配しているのかもしれない。この減速の一因は、アプリが既に膨大な利用者ベースに到達した(毎月10億人以上のユーザー)からであり、成長は必然的に落ち着いてきていたのだ。中国のPC時代を席巻した、テンセントのメッセンジャーであるQQの最盛期に始まった、モバイルインターネット革命のスタート時に、WeChatはテンセントへタイムリーな後押しを与えた。現在テンセントは、WeChatアプリを若返らせるための画期的な機能や、WeChatとQQの成功を再現する新しいソーシャルネットワークといった、新しい成長エンジンを必要としているようだ。

テンセントは、中国の他のすべての大手インターネット企業と同様に、ハイテク業界の変化する環境に対応するために、常に新製品をテストしていることに留意する必要がある。テンセントは社内で「競馬」と呼ばれている手段によって、各部門を競わせることで有名だ。WeChatもおよそ10年前にこの動きから生み出されたものだ。こうしたプロジェクトのほとんどは成功しないが、開発プロセスの大部分が標準化されているため、テンセントのような巨人にとっては、新しいアプリの作成コストは無視することが可能だ。必要なのは、WeChatのAllen Zhang(アレン・チャン)氏のような先見の明を持つ人が率いる、10人余りの従業員からなるスカンクワーク(革新技術開発)チームなのだ。

その他の注目情報

GPUで知られるチップメーカーのNvidia(エヌビディア)はすでに、自動運転の分野で約370の自動車メーカー、ティア1サプライヤー、開発者、そして研究者たちと協力している。今週、そのパートナー集団に中国最大の配車企業であるDidi Chuxingが加わった。両社は共同で、Didiのレベル4自動運転車(基本的な状況下で、人間の介入なしに動作することができる)用のGPUの開発に取り組むことを、声明で述べている。8月に自動運転部門を別の会社に分離したDidiは、先月の業界会議の中で、上海の路上で自動運転車のテストをもうすぐ開始する計画があると発表している。

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(翻訳:sako)

自撮りビデオをスターの顔に変えてしまうZaoをWeChatが制限

中国で先週末クチコミで広まったZaoは、ビデオの顔を他人の顔にリアルに変えてしまうアプリだが、そのポリシーをめぐる騒動のあとWeChatは、同社のメッセージングプラットホームの上でそのアプリの使用を禁じてしまった

中国で人気最高のデートアプリであるMomoの開発元が作ったZaoは、ユーザーがアップロードするセルフィービデオ(自撮りビデオ)の顔を、人気映画や音楽ビデオなどの中のセレブの顔に変えてしまう。

今は中国でしか利用できないアプリだが、ユーザーがWeChatやそのほかのソーシャルメディアでビデオをシェアすることによってどんどん広まり、同時にディープフェイク技術の悪用に関する懸念から論争も広まった。現在は削除されているZaoの最初の利用規約では「アップロードされたビデオの所有権やその他の権利がすべて永久にZaoにある」とされていたので論争にいっそう火がついた。

急速に広まったのと、セルフィーが1つだけあれば使える気安さから、ディープフェイク技術に対する関心が高まり、また、誤った情報やいじめなどの拡散も懸念された。なお、この顔変えアプリは元のセルフィーが複数あったほうが結果がいいそうだ。

今現在、Zaoで作ったビデオはWeChatにアップロードできるが、アプリをダウンロードしたり、リンクをほかのWeChatユーザーに送ろうとすると、「このウェブページは何度も報告されており、セキュリティリスクを含んでいる。安全なオンライン環境を維持するためにこのページへのアクセスをブロックした」というメッセージが表示される。

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App Annieによると、Zaoは先週金曜日の8月30日にリリースされたあと、急速に中国の無料iOSアプリのトップになった。9月1日にZaoのWeiboアカウントにポストされた声明によると、「プライバシーに関する皆さまのご心配を十分理解している。この問題は私たちも認識しており、解決方法を考えている。あと少し、お時間をいただきたい」とある。そして今の利用規約では、ユーザーが作ったコンテンツはアプリを改良するためにのみ使用し、削除されたコンテンツはサーバーからも削除される、となっている。

今TechCrunchはZaoにコメントを求めている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Nintendo Switchが中国でTencent経由で発売へ

数カ月前から期待されているNintendo Switchの中国での販売が近づいてきた。日本のゲーム最大手とTencent(テンセント)は、世界最大のゲーム機市場にSwitchを持ち込むべく「懸命の努力」を続けている、とWeibo(中国のTwitter相当サービス)で発表した。

両社は正式発売日を明らかにしていないが、これは政府の承認手続きに数カ月を要するからだそう。しかし、順調に進みそうな兆候はある。例えば、Tencentは「NewスーパーマリオブラザーズUデラックス」などいくつかの大ヒット作品のトライアルバージョンを中国で実行するための許可を得ている。

Tencentは両社がSwitchの共同記者会見(発売はまだ)を8月2日に上海で行うことをTechCrunchに正式に伝えた。中国最大のゲーム展示会であるChina Joyが同じ日に同市で始まることから、これは戦略的な行動と言えそうだ。

共同イベントにはTencentのSteven Ma上級副社長と任天堂の柴田聡取締役が出席する予定

中国でのSwitch発売がTencentとの販売契約によって可能になることで、任天堂は成長の鈍化に歯止めをかけられそうだ。これはTencentのゲーム事業の多様化にも貢献する可能性がある。昨年同社は、中国政府がオンラインエンターテイメントの取締を強化したことで痛手を受けている。

Switchは、ソニーのPS4やMicrosoft(マイクロソフト)のXboxとの厳しい競争の中、中国でも苦戦していた。理由は多岐にわたる。中国は未成年を有害コンテンツから守るために、2014年までゲーム機を禁止していた。さらに、ゲーム機はモバイルゲームと比べてずっと高価なことから、モバイルファーストの同国で社会的交流の手段となることは難しい。

画像クレジット:Tencent、 Nintendo Switch

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

BMWは中国市場にさらに食い込む、自動運転でBaiduに続きテンセントと提携

中国はBMWにとって最大のマーケットだ。そしてこのドイツの自動車メーカーは、中国の要求の多い消費者を引きつけためには、将来のモデルはしっかりと自動運転能力をサポートするものでなけれればならないことを知っている。

しかし中国でそうしたものをつくるのはほとんど不可能だ。自動運転を実現するには部分的に高解像度のマッピングに頼っていて、これは広範の地理情報を必要とする。法律で外国企業は中国のパートナー企業なしに中国のデータを扱うことはできないことになっている。Apple(アップル)はユーザーの電子メールやテキストメッセージ、その他の形での中国におけるデジタルのデータを保存するために中国企業と協業している。

これが刺激となって、BMWのテンセントとの新たな提携に結びついたようだ。WeChatでよく知られ、クラウドコンピューティング事業を拡大しつつある中国のテック大企業であるTencent(テンセント)は米国時間7月19日、BMWのためにデータコンピューティングとストレージプラットフォームを準備していると語った。ロイターは、両社が今年末までに北京近くの海に面している都市・天津市にコンピューティングセンターを立ち上げる計画だと報じた。

この2社の提携に先立ち、BMWは世界最大の乗用車マーケットである中国でデータを拡大させている。GoogleマップのライバルでBMWが出資するHereは、2月に中国のナビゲーションサービスNavinfoと提携した。この提携ではHereが現地でデータを収集するのをNavinfoがサポートする。 NavinfoとTencentの両社が3年前にHereのわずかな株式を購入していたのはおそらく偶然ではないだろう。

BMWは中国の道路のデータに詳しくなりつつあり、このデータを新たに設立した配車サービスベンチャーに応用しない手はない。

TencentにとってBMWとの提携は大きな幸運となるかもしれない。というのもTencentの主力のゲーム事業は当局の圧力を受けてこのところ困難を抱えていたからだ。「輸送業界でTencentはデジタルトランスフォーメーションにおいて自動車会社をサポートするのに注力する」とTencentのクラウドスマート産業部門のトップであるDowson Tong(ダウスン・トン)氏は発表文で述べた。

もう一つの提携

BMWはこれまでにも車両を自動化するために他の中国テック企業との提携を模索している。同社は、中国最大の検索エンジンを展開しているBaidu2014年から自動運転について協業してきた。

昨年10月、BMWがBaiduの自動運転オープンプラットフォームであるApolloに加わり、両社は提携を強化した。この提携は、中国の李克強首相がドイツを訪問してアンジェラ・メルケル首相に面会したときに発表され、大きな外交的意味合いを持つことになった。その際、Baiduの会長Zhang Yaqin(チャン・ヤーキン)氏は「この提携は中国マーケットと結びつく自動運転テクノロジーの開発を加速させるものだ」と語った。

一方、BMWのTencentとの関係は、TencentのKeen Security Labも関わっての自動運転の安全性やテストのための共同研究など、Baiduとは別の意味を持つ。

BaiduとTencentは主力事業では基本的に競合しない。しかし両社とも、車内エンターテイメントや自動運転といったモビリティの将来に向けた取り組みを進めている。中国ではライバル同士のテック企業が同じパートナーを持つことは珍しいことではない。BMWの広報はTechCrunchに対し、「コラボレーションで重なっているところはない。それぞれの分野で最高の企業と協力している」と語った。

実際、Tencentとの提携は一見、より包括的なもののようだ。広報によると、Tencentは「BMWの自動運転研究と開発の全プロセスをサポートするITアーキテクト、ツール、そしてプラットフォームを提供する」。そしてBaiduとの提携について、広報は他に10社のパートナーが関わっている自動運転安全の白書に取り組んでいるとの例を示した。

これは、Baiduとの提携は緩やかなものであることの間接的な表現かもしれない。自ら自動運転のAndroidと広告しているApolloに参加しているのはBMWだけでなく、世界中の100社超の自動車関連会社が名を連ねている。

大きなネットワークが相互にやり取りし、それは今後につながっていくかもしれない。しかし深く掘り下げた“コラボレーション”を妨げるものにもなるかもしれない。中国の自動運転ユニコーンであるMomentaの創業者のCao Xudong(カオ・シェートン)氏は以前TechCrunchに対し、自動車部門のコラボレーションは「深みのある、資源集約型のコラボレーションを必要とし、提携する企業が少ないほうが意義は大きいと考えられている」と語った。

同様に運転の将来に関して独自の計画を展開したいテック大企業Alibabaはどうだろうか。eコマースとクラウドコンピューティングを展開している同社は国営車メーカーSAICとすでに親しい関係にあり、自動運転ソリューションを生み出すためにBanmaというジョイントベンチャーを立ち上げた。この提携からわかるのはBMWがオートメーションでAlibabaと提携することはないだろうということだ、と中国の自動運転スタートアップのある従業員は話している。

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(翻訳:Mizoguchi)

中国テンセントが社債発行で6700億円調達へ

アジア最大のテック会社Tencent(テンセント)が60億ドル(約6700億円)調達しようとしている。香港に上場している同社が今日、社債発行を発表した。

Tencentは2018年1月に50億ドルを調達している。今回は5本立ての発行で、これは今週初めに報じられた内容とほぼ同じだ。その報道では、50億ドルを調達しようとしていると推測されていた。社債は4月11日に発行されるとTencentは話した。

新たに調達する資金を何に使うのかは明らかではない。Tencentは発表文では詳細を語っておらず、この記事執筆時点でコメントの求めにも応じていない。

「Tencentはかなりのキャッシュポジションと豊富な上場証券を持っていて、財務内容は健全だ。今後も引き続き財務面をしっかり管理し、資本支出、投資、収益の正しいバンラス維持に努める」とCFOのJohn Lo氏は発表文で述べている。

Tencentは、中国で人気のメッセージアプリのWeChaで知られている。また、儲けの多いゲーム事業、そしてフィンテック、クラウド、ソーシャルメディアなども展開している。加えて、中国外の企業への投資も増やしていて、RedditSnapTeslaなどに出資しているほか、中国の公共事業もサポートしてきた。

Tencentの成功は、アジアで初の5000億ドル企業になった2017年末がピークで、その後は紆余曲折をたどっている。特に昨年は中国政府がゲーム向けの新たなライセンスの発行を凍結したことで売上を大きく減らし、そして投資家にも背を向けられかなり苦しんだ。

しかし、2019年は明るい兆しが見えている。中国のゲームライセンス発行が再開し、またIPOで40億ドルを調達したMeituanへの投資のおかげで再び増収となっている。Tencentは収益面でのゲーム事業依存を見直そうと、大きな組織再編も実行した。直近の四半期決算は全体的に芳しいものではなかったが、ソーシャルメディアやクラウドコンピューティング、フィンテックといった新手の事業が成長を見せた。Tencentの株価は2018年末から20%ほど上昇していて、これにより時価総額は約4560億ドルとなっている。

イメージクレジット: Qilai Shen/Bloomberg

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(翻訳:Mizoguchi)

新たに承認された80タイトルにTencentは含まれず――中国政府、ゲーム認可再開

中国政府は3月に停止していたゲームの認可を再開したが、最初のグループにはTencentのタイトルが含まれていなかった。

中国政府当局はこの土曜日、9か月ぶりにゲーム認可の凍結を解除し、新たに80タイトルを承認したとReutersが最初に報じた。しかし認可されたゲームには中国最大のゲーム企業であるTencent Holdings製作になるタイトルが1本も含まれていなかった。

TechCrunchがデベロッパーに取材したところでは、当局は通常、申請が提出された順で承認を決定するという。中国の21st Century Business Herald〔21財経〕によれば、現在少なくとも7000タイトルが承認待ちとなっており、うち3000は2019年に承認を受けられる見込みだ。とすれば第一陣に含まれる可能性は非常に低いことになる。中国の2大ゲーム企業、TencentとNetEaseのタイトルが含まれていないことに不思議はないのかもしれない。

中国政府高官は12月21日に.厳重な統制下に徐々にゲーム認可を再開する方針を発表した。「承認待ちのタイトル数が非常に多いが、担当者はできる限り迅速に処理を進める」という。ゲームに承認が得られなければ企業は合法的に料金を得ることができない。承認の凍結は世界最大のゲーム市場に大打撃を与えていた。北京に本拠を置く調査企業のGPCおよび中国の公式ゲーム団体、CNGの発表によれば 2018年上半期の対前年比成長率は5.4%で、過去10年で最低を記録した。

Tencentは中国でもっとも普及しているチャット・サービス、WeChatの運営者としてよく知られている。しかし同社の収入の主要な部分はゲームから来ている。そのゲーム収入が打撃を受けたわけだが、過半数株主であるActivision、Grinding Gears Games、Riot and Supercellなどのゲーム企業のビジネスは好調だ。2012年にTencentは世界的大ヒットを記録しているFortniteの運営者、Epic Gamesの株式40%を取得している。またTencentはトゥームレイダー・シリーズで知られるSquare Enixなどのゲーム企業と中国における配信契約を結んでいる。

しかし新しいゲーム・タイトルへの承認の凍結はTencentの収益に悪影響を与えた。これにより第3四半期にゲームの売上が4%ダウンしたという報道が多数出ている。.当初Tencentは課金ゲーム15タイトルが承認待ちだと述べていた。コンシューマー向けゲーム・ビジネスでの逆風に対処するため、Tencentは10月に全社的な機構改革を実施した。これはクラウドのようなエンタープライズ向けサービスやマップ事業にこれまで以上に注力するものだ。ファウンダー、CEOのPony Ma(馬化騰)は「この機構改革はTencenctを次の20年に備えさせるものだ」と述べている。

中国政府は2018年に入って違法、不道徳、低品質、社会的悪影響があるゲームを禁ずる方針を固めた。これには子供に中毒性が高かったり視力低下を引き起こしたりする懸念のあるゲームも含まれる。 ゲーム・スタジオは規模の大小を問わず、新しいゲームにこの方針を反映させる方策を取られねばならない。Tencentは当局を納得させるために独自の規制をゲームに導入している。これに年齢認証の強化や一日当たりプレイ時間に上限を設けるなど若年者の保護の方策が含まれる。

Update:今日(米国時間12/30 10:00 am,)、この記事の中国のゲーム産業とTencentについて内容を補った。

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滑川海彦@Facebook Google+

中国人が熱狂するショートビデオにネットの巨人も気が気ではない

[著者:Rita Liao]

中国で地下鉄に乗ると、多くの人がスマホのTikTok(ティックトック)の動画に見入っている。

モバイルインターネット専門調査研究会社QuestMbileの調査によれば、中国人のインターネット利用時間のうち、TikTokなどの動画の視聴に占める割合は、2017年には5.2パーセントだったものが、現在は90パーセント近くまで跳ね上がっているという。

750億ドル(約8億5500万円)という世界最高の評価額を誇るスタートアップByteDanceが運営するTikTokのようなアプリは、これまでカメラに映ることを嫌がっていた人たちの間で人気を博した。動画編集の技術を持たない人でも簡単に操作でき、フィルターで映像をきれい加工できる。また、音楽を加えて作品を楽しくすることもできる。

Douyin(抖音)で動画を制作を楽しむ老夫婦 / 提供:Douyin ID @淘气陈奶奶

これには、近年のスマートフォンのデータ通信料の値下げや、スマートフォンの普及も手伝っている。中国政府の資料によれば、現在、中国には8億人のスマートフォン利用者がいる。CBNDataのデータベースによれば、インターネット利用者の中で、スマートフォンで動画のストリーミングを利用していた人は2013年には40パーセント以下だったが、2017年にはその割合は80パーセントに急上昇しているという

当初は若い人たち向けに開発されたショートビデオ・アプリだが、高齢者を含むあらゆる世代での人気が高まっている。中国の14億人の総人口のうちの3分の1以上の人たちが、毎月、活発にこれらのアプリを利用しており、50歳以上の人たちも、今では毎日50分もの時間をこのアプリに費やしてる。ちなみに、昨年は17分だった。

Tencentの不安

近年、中国では、Tencentのメッセージング・アプリWeChatのように、多くの注目を集めるモバイルアプリは少ない。WeChatは、買い物、タクシーの配車、ホテルの予約、その他の日常的な作業がワンストップで行えるサービスを提供するまでに発展している。

そこへショートビデオ・アプリが登場し、人々のスマートフォン利用時間が奪われるようになった。TikTokなどのアプリは、そもそもの目的が違うため、WeChatと直接競合するものではないが、本格的な動画の配信アプリに包囲されて、インスタントメッセージ・サービスの利用回数が減少していることをデータが示している。

今年、WeChatとその同類のアプリが、人々のインターネット利用時間で占めた割合は、前年比で3.6パーセント減少したとQuestMobileは報告している。

Tencentが、人気の陰りとByteDanceの台頭を心配するのは無理もない話だ。普段は低姿勢なTencentのCEO馬化騰(ポニー・マー)は、ByteDanceのCEO張一嗚(チャオ・インミン)に対し、盗作とWeChatでのTikTokのブロックに関して、珍しくネット上で喧嘩を売った。

十代の女性による、よくあるフィンガーダンスの動画 / 提供:Douyin ID @李雨霏2007

別のところで、Tencentは行動に出た。4月から、この巨大テック企業はTikTokに対抗するアプリをいくつも展開し始めた。しかし、今のところはまだ、世界に5億人のアクティブユーザーを抱える王者の数字に近づくことすらできていない。この中には、2017年後半にByteDanceが買収し、8月に合併したMusical.lyの総利用者数1億人は含まれていない。

だが、Tencentには代替策がある。同社は、TikTokの中国での最大のライバルKuaishou(快手)の株式を保有している。Kuaishouは、データ集計サービスJigunag(極光)によれば、9月には22.7パーセントの普及率を記録した。それでも、TikTokの33.8パーセントの前では小さな数字に見える。Jigunagの調査では、TikTokは、3分の1以上のモバイルデバイスにインストールされていることになるという。さらに、ByteDanceのHoushan(火山)、Xigua(西瓜)といった、その他のショートビデオ・アプリも、別のニッチ市場で健闘している。それぞれ、13.1パーセント、12.6パーセントという普及率だ。

Alibabaとの同盟は微妙

最近まで、ByteDanceは、中国のもうひとつのインターネットの巨人、Alibabaとうまくやって来たように見える。両社は、3月、TikTokが自社製アプリでの電子商取引にAlibabaのインターネット・マーケットプレイスTaoBaoを利用することを目的に提携した。認証されたTikTok利用者(大変に多いのだが)は、動画を自分のTaoBaoショップにリンクできる。金儲けを可能にするこのシステムで、TikTokは、より質の高い動画クリエイターを集めることができる。一方、Alibabaは、新種のソーシャルメディア・アプリからのトラフィックが得られ、WeChatにブロックされた電子商取引アプリの損失を補える。

だが、蜜月は続かないものだ。ByteDanceはAlibabaのテリトリーに急襲をかけた。ByteDanceは、電子商取引プラットフォームを導入し、長尺の動画ストリーミングの分野に進出してきたのだ。そこは、Alibaba、Tencent、BaiduのiQIYIが支配する領域だ。

ライフハックも人気だ。この男性は植木栽培のコツを伝授している / 提供:Douyin ID @速效三元化合肥

ByteDanceは独立を目指しているようだ。大半の中国のスタートアップとは違い、設立から6年目のByteDanceは、Baidu、Alibaba、Tencentの技術系大手トリオからの資金援助を受けていない。この3社はBATと呼ばれ、中国の一般消費者向け技術を独占してる。

ByteDanceの新分野への進出は、フィードに広告を掲載する以外の新しい収益チャンネルの獲得を急いでいるようにも見える。同社は、2018年の収入目標を72億ドル(約8200億円)に引き上げた。Bloombergによると、昨年の収益を25億ドル(約2850億円)上回る数字だ。

ホームとアウェイ

ブームとは裏腹に、中国のショートビデオ市場に対する規制の逆風が強まっている。この数カ月間、Kuaishou、ByteDanceの動画アプリ、その他の同様の企業やアプリは、違法または不適切とされるコンテンツを排除するとの理由で、当局から締め付けられている。

違反すればアプリストアは閉鎖され、Miaopai(秒拍)のように厳しい罰則を受ける。中国版TwitterのWeibo(微博)の支援を受けたMiaopaiだが、そのおかげでアプリのインストール件数は激減した。

Douyinは真面目な動画も流す。北京のテレビ局はDouyinにアカウントを持ち、動画を配信している / 提供:Douyin ID @BTV新闻

ByteDanceはまだ閉鎖にはなっていないが、そのAIを使った推薦アルゴリズムは攻撃の的になっている。同社自慢のアルゴリズムなのだが、メディアの監視機関は良い顔をしない。TikTokは、未成年の妊娠など「許容できない」動画を推薦することで注意を受けた。ByteDanceの人気のニュースサイト今日头条(今日のヘッドライン)も、1日1億2000万人の利用者に「失言」をして、同様の批判を受けた。

これを受けてByteDanceは、提供するアプリのAIによる推薦を監視する人材を、数千人単位で増員した。

ByteDanceは、TikTokを通じてそのテリトリーを中国の外にまで広げようとしている。今年、このショートムービー・アプリは、世界のアプリストアのランキングを上昇し、Musical.lyと一緒になってその速度を高めている。それに警戒しているのは、もはやTencentだけではない。FacebookTikTokのクローンを作っていることを、先日、TechCrunchがお伝えしたばかりだ。

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(翻訳:金井哲夫)

8億ユーザーを誇る中国最大のストリーミングサービスTencent Musicが、米国でIPOを申請

今年は、大部分を、あるいは実質的に、中国の大企業に所有されている多くのテック企業が株式公開を果たしている。例えばBaiduのiQiyiサービス、Xiaomiの支援を受けたHuamiやViomiの名前などが挙げられる。そして今度は沢山の予想が出される中で、Tencentの音楽部門であるTencent Music が公開の動きを見せ始めた。

TME(Tencent Music Entertainment )が、突然米国での公開に向けて最初の書類を提出したのだ(取引所は指定されていない)。最初の調達目標額は10億ドルだが、それは変更される可能性がある。今年初めのSpotifyのIPOのデータから考えれば、Tencent Musicは少なくとも120億ドルの評価額が付くはずだ。このため現在の目標学から、どれほど高い目標額が設定されることになるかが興味の対象となる。

Tencentの4つのストリーミングサービスであるQ Music、Kugou Music、Kuwo Music、そしてWeSingを擁し、Tencentの子会社でもあるTMEを、スタートアップと呼ぶことははばかられる。これらには、オーソドックスなストリーミングサービスやカラオケアプリ、そしてライブストリーミングサービスなどが含まれている。それらは一般に、中国トップ4の音楽アプリであると認識されており、月間ユーザーは8億人以上だと言われている。

Apple MusicやSpotifyあるいはPandoraとは異なり、TMEは収益性の高いビジネスであるが、その総売上額や収益化の方法はそうした「西洋の兄弟たち」とは全く異なったものである。Spotifyやその類似サービスたちは、サブスクリプションと広告付き無料サービスで成り立っているが、Tencent Musicはその売上の大部分を、ソーシャルアクティビティ、広告、そして楽曲販売から得ている。

Tencent Musicの2017年の売上は17億ドル(110億人民元)で、1億9900万ドル(13億人民元)の利益をもたらした。既に2018年上期には、13億ドル(86億人民元)の売上と、2億6300万ドル(17億人民元)の利益が計上されている。サブスクリプションの比率は売上のわずか30%であり、残りはライブストリーマーに送られるバーチャルギフトや、プレミアムメンバーシップから得られている。


この成功の大部分は、Tencentのサービスとの連携に由来するものだ。特に10億人のユーザーを抱えるWeChat、そしてQQなどの寄与が大きいが、Tencent Videoの存在も大きい。これはTencent Musicのサービスたちがユーザーにリーチするための手段を提供し、友人グラフやネットワークを通しての拡散を可能にする。それによってマーケティング費用は抑えられ、最終的な利益を上げるのに役立っている。売上に対するTencent Musicのコストは60%で、これはユーザーを呼び込むために、より多くの仕事を行わなければならないSpotifyの75〜80%とは対照的だ。

興味深いことに、Tencent Musicはその目見書の中で、サブスクリプションによる売上が、時間とともに増加することを期待していると指摘している。

「2018年第2四半期の課金率は3.6%であり、これはiResearchによって挙げられている、中国のオンラインゲームやビデオサービスや、世界的にみたオンラインミュージックサービスに対する課金率の数字に比べて遥かに低い。このことが意味することは、この先大いに成長する余地があるということである」と同社は書いている。

だが、中国内における違法コピーの氾濫を考えると、それを額面通りに受け取ることは難しい。業界関係者は、その状況は変化していると主張している。それは自分たちのための発言ではあるが、Tencent Musicの代替「ソーシャル」収益モデルが、この先のサブスクリプションベースのサービスと食い合いになるかどうかは明らかではない。

いずれにしても、同社は西側からも学ぶことができるかも知れない。Spotifyは昨年の株式交換を通してTencentの9.1%を保有していて、反対にTencentはSpotifyの7.5%を保有している。このことによって、Spotifyは東南アジアでTencentの所有するJoox(TMEの一部ではない)と競合はしているものの、双方からのシナジー効果が期待される。

現段階での重要なポイントは、Tencent Musicが中国のトップストリーミング企業であり、それが中国の主要なメッセージングプラットフォームであるWeChatに依存しているということだ。 それは幸先が良い事実だが、目論見書の中で何度も繰り返されているように、音楽の収益化は中国の中ではまだ新しい概念であるため、参考にできる事例はほとんど存在していない。

それでもこれは、中国のテック企業にしては珍しく大量に現金を失っていないIPOの例である(大量の累積赤字を抱えたままIPOを行ったNioの例を考えて欲しい)。Tencentとのコネクションを考えると、人気が出る可能性は高い。

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(翻訳:sako)

写真クレジット:Qilai Shen/Bloomberg

古いメディア大企業が次なる策としてVCに目を向け始めた

ウェブ1.0とウェブ2.0の時代は、世界の大きなメディアコングロマリットにとって優しいものではなかった。それまでのビジネスモデルに疑問符がつくようになり、コンテンツ消費する全く新しいカテゴリーをつくり、オンライン上での購読や価格設定などでの競争を展開することになった。1990年代から2000年代はじめにかけてのメディア大企業の多くは、数十億ドルもの企業価値を持ったマーケットリーダーであったが、会社を発展させるための戦略としてスタートアップに積極的に投資するようになった。

コーポレートVCをするようになった従来のメディア企業には、はっきりとした2つの戦略がある。一つは、長年展開されてきた新聞の広告に取って代わり、消費者向けマーケットプレイスを多様化させるための投資だ。もう一つが、メディアを再形成するスタートアップの動きをいち早くとらえることを(初期の株取得も)狙った投資だ。

広告に代わり、マーケットプレイスに投資する

ベルリン、ドイツ – 6月6日:2018 NOAH会議で話すAxel SpringerのCEO、Mathias Doepfner。この年次会議にはスタートアップのリーダーや起業家、投資家、メディアが参加した(写真: Michele Tantussi/Getty Images)

1990年代と2000年代初期にテックスタートアップによって新聞グループにもたらされた初の危機はオンライン広告のサイト(Craigslistとか)と取引マーケットプレイス(eBayやAmazonなどの興隆で、それまで儲かっていた広告収入が減ることで彼らの注意はeコマースへと向かった。

ハースト社はさておき、新聞や雑誌を複数発行している米国の主な企業ーガネット、ニューズ・コーポレーション、メレディス・コーポレーション、タイム、デジタル・ファースト・メディアなどーはこれまでさほどスタートアップに投資してこなかった。おそらく、ほとんどの新聞社の経営は苦しく、数年間は見返りがないVC投資に回すだけの現金が手元になかったからだろう。

しかし北欧や中欧では、ニュース会社や出版社の財政状況は比較的健全で、主要なメディアグループは過去10年間、マーケットプレイスや欧州にまたがるeコマーススタートアップに積極的に投資している。

欧州をリードする出版社Axel Springerはすでに欧州スタートアップ業界では確固たる地位を築いている。Axel Springerのデジタルベンチャーチームは車のCaroobiやAirbnbなどのマーケットプレイスに出資し、Axel Springerのベルリン拠点のアクセラレータ(Plug & Playと共同運営)はデジタル銀行N26やボートレンタルマーケットプレイスのZizoo、インフルエンサーブランドのマーケットプレイスblogfosterなど、100以上の若いスタートアップに投資してきた。本業での戦略として、従業員1万5000人を抱えるこのメディアグループはARのユニコーン、Magic Leapに今年2月に大規模な投資を行なった。その際、コンテンツIPをレバレッジするパートナーシップも締結した。

一方、ノルウェーのSchibsted、スウェーデンのBonnier、ドイツのHubert Burdaメディア(テックに詳しい人にとって、ミュンヘンで毎年開かれるDLD会議で知られている)とホルツブリンク出版もグローバルで積極的に動いていて、主にeコマースブランドやマーケットプレイスの初期または成長段階VCポートフォリオで活発で、何十億ドルも投資している。

新聞コングロマリット(または類似する他企業)による最も象徴的な企業ベンチャー投資は、2001年に南アフリカの出版グループNaspers(1915年創業)が、設立3年の中国のソーシャルウェブスタートアップTencentに3200万ドルもの投資を行った一件であることに疑いの余地はない。Tencentの企業価値は現在4000億ドルで、アジアで最も大きく、そしてパワフルなデジタルメディア企業だ。Naspersが今年3月に保有するTencentの株式を100億ドルで売却したとき、Naspersの保有株式31%の価値はおおよそ1750億ドルだった。

当然の帰結として、Naspersは世界中のオンラインマーケットプレス事業を支援・育成し、買収し、そして投資するホールディング・カンパニーへと姿を変えた(かなり小さい出版部門はまだ残しているが)。

メディアという領域外のスタートアップに投資する従来のメディア企業にとっての課題はというと、たとえその投資がかなり成功したとしても、メディア業界での目立ったアドバンテージにならないこと、ビジネスモデルをじわじわとテック企業のモデルのようにはできないことだ。これらの投資は経営上、大きな混乱を引き起こしかねず、主要事業を再度見直すのに失敗すると、株主たちは会社に刷新を要求する。AirbnbやBaubleBarに投資をすることは、従来の出版グループにとって重要なチャレンジやチャンスを意味するものではない。

それゆえに、この戦略でメディア企業にとって一番良いシナリオは、 Naspersがとった方法にある通り、まずはコンテンツ競争を抜け出して経営で成功を収め、他の消費者向けブランドのホールディング・カンパニーになることだ。しかしその後の道のりは不透明かもしれない。他の全ての活動にかかわらず、Naspersの時価総額はTencent株の時価総額より小さい…一番良いシナリオが必ずしも中心的な組織の変更であるかどうかは不透明だ。

次世代メディアへの投資

社の年次報告会に出席するドイツのメディアグループBertelsmannのCEO、Thomas Rabeー2018年3月27日、ベルリン / AFP PHOTO / Tobias SCHWARZ (Photo credit should read TOBIAS SCHWARZ/AFP/Getty Images)

 

“古いメディア”がとる別の道は、メディア事業の将来を明らかにする手段としてVCにフォーカスするというものだった。そうすることで古いメディアは新世代のメディア起業家から学ぶことができ、競合相手よりマーケットの変化に素早く対応できる。興味深いことに、こうした戦略をとったコングロマリットは、新聞事業よりもテレビやラジオ、データ、通信事業を運営しているところだった。

ベルテルスマン、ハースト、そして21世紀フォックスは、ストリーミングビデオサービスやクラウドソースストーリーテリングプラットフォーム、または拡張現実といったメディアの将来を作ろうとしているスタートアップに最も積極的にCV投資している企業だ。

年間170億ユーロの収益を上げているベルテルスマンは世界で最も大きなメディア企業の一つで、事業はテレビ制作や放送(RTLグループ)、書籍出版(ペンギン・ランダムハウス)、新聞、雑誌出版(GrünerとJahr)、そして教育など多岐にわたる。しかしメディア企業には珍しく、メディアスタートアップへのベンチャー投資をサイドプロジェクトとしてではなく、社の主要部門と位置付けている。

社の主要事業であるベルテルスマン・デジタルメディア投資(BDMI)はAudible、Mic、The AthleticそしてWonderyといった米国、欧州の企業に投資しているが、と同時に中国、インド、ブラジルにフォーカスして投資するファンドと、ニューヨーク市を拠点とする教育にフォーカスした大学ベンチャーファンドも抱える。2017年の年次報告書によると、ベルテルスマンのチームは2017年、スタートアップに合計40もの新規投資を行い、その見返りとして1億4100万ユーロの収入を得た。

2017年の収益が108億ドルと米国最大の出版社の一つ、ハーストの投資部隊はBuzzFeed、Pandora、Hootesuite、Roku、そして言うに及ばないが中国の言語アプリLingoChamp、ライブエンターテイメントブランドのDrone Racing League、VRスタートアップの8i、その他数十ものメディア関連スタートアップに投資してきた。こうしたベンチャーにおけるハーストのオーナーシップは戦略的なものだ。主要事業に関連するマーケットの動向をとらえ、素早く提携を結ぶ機会を確保する。変化するマーケットの中で企業の存在意義を高めるような戦略的買収のターゲットを探すことにもなる。

21世紀フォックスとスカイ(21世紀フォックスはスカイの株式39%を保有し、すぐにも買収しようとしている)の両社は過去数年、メディア部門の多くのスタートアップに投資してきた。ライブストリーミングプラットフォームCaffeineへの1億ドルもの投資(9月5日に発表された)に加え、Meg Whitman主導のWndrCoのNewTVベンチャーへの巨額投資、そしてフォックスは、スポーツ中心のOTTサービスfuboTV、ヒットしたニュースレターブランドTheSkimm、VRスタジオのWITHIN、ファンタジースポーツアプリDraftkingsにスカイとともに繰り返し投資してきた。スカイはiflix(東南アジアと中東における主要ストリーミングビデオサービス)のような国際的なスタートアップに共同で投資したり株式を取得したりしてきた。

従来のメディア大企業は、ヒットしたショーや映画など広範にわたる知的財産、人気のライブイベントの権利ー何百、何千万人に配信するチャネルは言わずもがなだろうーを所有し、メディア企業そしてスタートアップ双方に益をもたらすような、パートナーシップも目下抱える。こうしたメディア企業は所有権を構築するのに往々にして繰り返し投資を行い、提携を深める。これはメディア企業がマーケットプレイススタートアップに投資するときにはあまり起こらない。

Tencentの常に展開するモデル

NetflixやSnap、VICEそしてBuzzFeedを含むデジタルメディア大企業の新たな収穫は、戦略的な投資でもしない限りさほど多くはない。その代わり、彼らは主要プロダクトの成長にフォーカスしている。大きな例外がTencentだ。

中国でブームとなりつつあるメッセージアプリ部門をWeChatとQQで独占しているのに加え、中国における音楽ストリーミングの75%のマーケットシェアを持っている。また、自社スタジオ(Riot Games、Supercellなど)により世界でも有数のゲーム開発元でもある。Activision Blizzard、Epic Games、その他の少数株式も保有し、Tencentは度々、成長が見込めるデジタルメディアスタートアップに初期段階での戦略的投資を行うという戦略をとってきた。彼らは全てに対して触覚を働かせている。

Crunchbaseデータに基づくと、Tencentはスタートアップに300件超も投資してきた。中国において、最もアクティブなベンチャー投資家だ。投資は中国内に集中しているが、SoundHound、Wattpad、Spotify、Smule、そしてWonder Workshopといった西側のメディアスタートアップにも投資している。

Tencentはこれらのスタートアップに多くのデジタル資産を通して流通手段を提供し、これによりどういう新しいコンテンツフォーマットやビジネスモデルが伸びているかを常にウォッチすることができる。Tencentは常に展開するという方針のもとに動いていて、コンテンツの制作や流通、収益化で将来重要な資産となり得るプロダクトを持つスタートアップに飛びつこうとしている。こうしたアプローチというのは、古いメディア大企業、そして次世代のユニコーンとなるメディアスタートアップが検討すべきものだ。

イノベーションのペースは速く、購読制ストリーミングやesportsといったものから音声インターフェース、ARに至るまで、新たな扉が多く開かれている。“古いメディア”と分類されてしまう前に、コーポレートベンチャーを主要戦略とすることで発展する機会を組織は手にすることができる。

イメージクレジット: Mark Kauzlarich/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

投資アプリRobinhoodからADR経由で外国の上場企業に投資できるようになった

アメリカ国内を対象とする投資と投機のアプリRobinhoodで、米国預託証券(American Depositary Receipt, ADR)を利用して外国で上場されている企業に投資する(株を買う)ことができるようになった。

ADRを利用すると、アメリカの投資家が、ニューヨーク証券取引所ナスダックなどアメリカの証券取引所に上場されていない外国企業に投資できる。そして同社(Robinhood)によると、今では同社からグローバル企業250社に投資できる。

同社が挙げる投資対象には、TencentやNintendo, Adidasなどが含まれている。そして中国や日本、ドイツ、カナダ、イギリスなどの、株式がアメリカで上場されている企業にも投資できるようになるだろう。

対象企業の完全なリストは、Robinhoodアプリまたはデスクトップアプリケーションのページで、“New on Robinhood”で検索すると見られる。

この部屋にもフランス大好き人間が何人かいるけど、LVMHやMichelin, Ubisoft Entertainmentなどフランスの企業も、近くRobinhoodから投資できるようになるそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

TencentがLinux Foundationのプラチナ会員になる、Huawei、Alibabaに次ぎ中国勢活発

時価総額5000億ドルの、中国のインターネット巨人Tencentが、Linux Foundation(LF)のプラチナ会員になり、オープンソースへのフォーカスを一層強化しようとしている。

同社はかなり前からLFやLinuxそのものと縁が深く、今年の初めにローンチしたLFのディープラーニング事業の創設メンバーでもある。このたび最高ランクのプラチナ会員になったことにより、同社はLFの理事会にも加わり、同団体とより密接に協力していくことになる。すなわちTencentはLFのプロジェクトやコミュニティに“さらなるサポートとリソース”を提供していくとともに、LFが持つ専門的能力や経験を利用していく。

その一環として同社は、オープンソースのマイクロサービスプロジェクトTARSと、オープンソースのネームサービスプロジェクトTseerをLinux Foundationに寄贈する。同団体のディープラーニングファウンデーションには、オープンソースのAIプロジェクトAngelを提供する。

Tencent Mobile Internet GroupのゼネラルマネージャーLiu Xinが、声明で述べている: “The Linux Foundationのプラチナ会員になれたことは光栄である。オープンソースは、Tencentの技術戦略の中核である”。

そのほかのプラチナ会員は、Cisco, Huawei, Microsoft, AT&T, Samsung, IBMらだ。

今年初めにTencentは、ハードウェア方面のオープンソースを推進する取り組みの一環として、もうひとつのオープンソース団体Open Compute Project(OCP)に加盟した。

Tencentの主要なライバルであるAlibabaも、オープンソースのコミュニティに大きなプレゼンスを維持している。

Alibabaは昨年来、Linux Foundationのゴールド会員だが、その貢献度は大きくて、クラウドコンピューティングサービスAlicloudなどを提供している。また、初の中国の外のクラウド投資として、MariaDBに2700万ドルを投資した。中国国内ではクラウドストレージのQiniuやビッグデータのDt Dreamなどに投資している。

画像クレジット: Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Google、中国eコマース大手JD.comに5億5000万ドル戦略投資

Googleは近年、中国でその存在感を高めつつあるが、さらに強化する。中国eコマースの大手JD.comと戦略的提携を結ぶことに合意し、JD.comの株式5億5000万ドル分を購入する。

Googleは中国での投資を続けている。中国マーケットに商品を投入し、AIハブを含むオフィスを開設した。そしていま、JD.comと共同で主に中国以外のマーケットで事業を展開しようとしている。GoogleとJD.comの共同リリースによると、2社は欧州、米国、東南アジアで“小売ソリューションの共同開発を含む、幅広い戦略的取り組みを共同で展開する”としている。

JD.comは人間の代わりにロボットを使った倉庫を中国で展開しているが、同社のサプライチェーンとロジスティック分野における経験、そしてテクノロジーを、Googleのオンライン小売を展開する上での顧客へのアプローチ力やデータ、マーケティングなどと融合させるのが最終目的となる。

手始めに2社は、JD.comの商品をGoogleの世界中の買い物プラットフォームで展開する。もちろん、2社が次のコラボの青写真を描いているのは明らかだ。

NASDAQでの株価に基づくと、JD.comの時価総額は約600億ドルだ。JD.comはウォルマートなどと提携していて、倉庫のオートメーション化技術やドローン、他の次世代小売ロジスティックに積極的に投資している。

配信プラットフォームのGoogleがJD.comのようなサービスプロバイダーを支援するという動きは興味深い。というのも、検索と広告を手がけるこの会社はすでに、JD.comのライバルであるアリババを含むさまざまなeコマース企業と提携しているからだ。

JD.com、そして時価総額5000億ドルのインターネット巨大企業Tencentと関係を築いたことは、Googleの今を象徴している。この3企業は、東南アジアのライドシェアリング新興企業Go-Jekに出資している。その一方でTencentとGoogleは先ごろ、特許シェアリング提携に調印しており、中国のAIスタートアップXtalPiへの共同投資も行なっている。

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(翻訳:Mizoguchi)

Google、中国Tencentと特許権クロスライセンスに調印

Googleからまた中国関連のニュースが出た。Googleは中国のテクノロジーの巨人、Tencent(騰訊)と特許に関するクロスライセンス契約を結んだことを発表した。

契約の詳細は明かされていないがTencentは時価総額5000億ドルの巨大企業であり、Googleではこの契約は「広汎なプロダクトとテクノロジーが含まれる長期的なもの」としている。両社は今後もイノベーションとテクノロジーに関して協力していくことを約束した。

Googleの特許部門の責任者、Mike Leeは「われわれはTencentと特許に関するクロスライセンス契約を結んだことを報告する。両社がこのような協力で合意できたことは喜ばしい。このような協力によりテクノロジー企業はユーザーのためのプロダクトとサービスの改良に努力を集中することができる」と声明で述べた。

Googleの主要事業である検索サービスは中国で依然としてブロックされているが、Googleはそれ以外の分野で中国との関係を深める一連の行動を取ってきた。昨年12月にGoogleは北京にAIラボを開設している。Googleが最初にこのような施設を中国に設けたのは、 深センの施設だが、最近ではスポーツ・ストリーミングの Chushou(触手)に投資している。

Tencent側にとっても今回の契約はグローバル企業に発展する上で重要なステップとなる。同社は長く中国最大の企業の一つであり、巨大かつ高収益のゲーム・ビジネス、圧倒的な規模のWeChatサービスなどをベースに、昨年は世界的な存在に向けてSnapTeslaSpotifyなどに大型の投資を行っている。

画像:Bloomberg/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google、今もブロックされている中国でAIエンジニアを求人

中国では、Googleの中核をなす検索サービスが7年以上ブロックされているが、それでもインターネットの巨人は、人工知能と機械学習の人材をこの国から呼ぼうとしている。

AIはテクノロジーの未来の鍵になりつつある。 かつてGoogle ChinaのトップだったKaifu Leeも、AIは「あらゆる専門分野と業界」に多大な影響を与えると言い、その可能性に賭けてきた。

Googleは今も中国では控えめながら存在を続けており ―― 2015年のTechCrunch Chinaイベントで講演したEric Schmidtは、この国から撤退したことはないと語った ―― 北京事業所ではAIあるいは機械学習にかかわる職を少なくとも4名求人している、と公式ウェブサイトに書かれている。また、Bloombergによると、上海と広州でも求人広告を出している。

Googleの積極的な求人のきっかけとなったのは、中国企業の雇用戦略が米国、特にシリコンバレーへと拡大し、世界最高峰のエンジニアを集めにかかっていることだ。Alibaba、Tencent、Didi、Baiduなどの企業はカリフォルニア州に研究開発センターを持ち、需要に答えるべく人材仲介サービス ―― 元Google社員によるAIを利用した求人プラットフォームなど ―― も急成長した。

現在のテクノロジー人材の中心地はアメリカかもしれないが、中国も互角に渡り合おうとしている。今後も成長することは間違いなく、中国政府自身もAIを重視している。

この夏に発表された国家主導開発計画は、2030年までに中国が世界のAIリーダーになることを目標に掲げている。この野心的プログラムは、年間1500億ドル相当の国内産業を築くことを目的にしており、政府はこのビジョン実現のために教育と開発に多大な投資をする用意がある。

こうした熱意と中国のトップ企業でAIエンジニアが増え続けている事実を踏まえると、Googleが現地の人材に目を付けたのは正しい選択といえる。

今のところ中国で本格的な求人を始めたのはGoogleだけだ。やはりこの国でブロックされているFacebook、Twitterなどのサービスは中国に営業職を置いているが ―― 中国企業が海外の人々にリーチする手助けをしている ―― 地元での存在感は小さい。それでもFacebookは中国向けソーシャルアプリを実験したが、すぐに行動を起こす可能性は低い。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Tencentが決算を発表:当期純利益は15億ドル

Tencent Holdings Ltd.'s new headquarters stand under construction in Shenzhen, China, on Monday, Aug. 22, 2016. The new headquarters for Tencent is a $599 million project aimed at creating a campus-like atmosphere for the urban setting. Scheduled for completion next year, the Shenzhen skyscraper could become one of the largest labs for new internet services and connected devices. Photographer: Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images

アジアのテック系企業のなかで最も企業価値の高いTencentが決算を発表し、同社が順調に利益を拡大していることが明らかとなった。メッセージング・アプリのWeChatとモバイルゲーム事業がこの好業績の牽引役だ。

2016年Q3における同社の当期純利益は昨年比43%増の106億人民元(15億ドル)で、収益は同52%増の404億人民元(60億ドル)だった。Wall Street Journalによれば、S&O Capital IQに掲載されていたアナリストの事前予想は当期純利益が109億人民元、収益は393億人民元であり、その予想と概ね一致していると言える。

今年はTencentの創業18周年の年だ。先日、同社はその記念として従業員に合計で2億2000万ドル分の株式を分け与えている。しかし、Tencentの名を世界に轟かせるきっかけとなったのは、つい2年前にローンチしたばかりで、中国では「Weixin」と呼ばれるメッセージング・アプリのWeChatだ。

現在、WeChatのMAUは8億4600万人だ。この数字は前年に比べて30%増加しており、前四半期の8億600万人と比べても順調に成長を続けていると言えるだろう。Tencentが抱えるビジネスのなかでも急速に成長中なのが広告ビジネスであり、それを牽引しているのがWeChatなのだ。

同社のオンライン広告収益の合計は、2015年Q2比で51%増の75億人民元(約11億ドル)だ。なかでも、同社が「パフォーマンス・マーケティング」と呼ぶ分野の収益は同83%増の44億人民元となっている。Tencentによれば、WeChatのタイムラインに表示される広告、同社のモバイル・ニュースアプリ、WeChatのオフィシャル・アカウントとして登録されたブランドからの収益がこの成長の原動力となっているという。

その一方で、今でもTencent最大の事業として君臨するのがモバイル・ゲーム事業だ。今年6月に「Clash Of Clans」の開発元であるSuperCellを買収したことからも分かるように、モバイル・ゲームはTencentが集中的に投資を続けている分野でもある。

2016年3QにおけるTencentのモバイル・ゲーム事業の収益は前年同期比87%増の99億人民元(約15億ドル)だった。一方で、モバイルとPCを合わせたゲーム事業全体の収益は182億人民元(約27億ドル)である。依然としてPCゲーム部門の存在感は大きいが、その成長率は前年比でわずか10%に留まっている。

今年初め、同社はWeChatと統合されたモバイル・ペイメントサービスのWePayに関する数字を初めて公開し、WePayを通して送金された金額の合計が500億ドルに達したと発表している。送金データの詳細については明らかにしなかったものの、WePayとそのクラウド・サービスによって、Tencentがもつその他のビジネスの収益が四半期ベースで348%増加したとコメントしている。金額にすると四半期ベースで50億人民元の引き上げ効果だ。

Tencentの会長兼CEOであるPony Maは決算発表資料のなかで、「私たちのモバイル・ゲーム事業とソーシャル事業の前年比成長率は業界平均を上回っており、健全なマージンを生み出し続けています。その一方で、私たちのエコシステムのインフラストラクチャーとなるようなサービス、つまりオンライン・ペイメントやクラウド・サービスなどのサービスも、急速にユーザーから受け入れられ、利用され始めています」と語っている。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter