Dropboxがビジネス向けと家庭向けの新機能を大量投入

Dropbox(ドロップボックス)は以前から、ファイルの保存、共有、共同作業のためのサービスとして知られてきたが、同社はその垣根を乗り越え、ユーザー、とくに有料コースであるDropbox Plusの利用者にさらなる利便性を提供しようと考えている。これには、パスワードの管理、オンライン保管庫、コンピューターの完全なバックアップなどが含まれる。同社はこれらの新機能投入に加え、ビジネスユーザー向けのアップデートも複数実施している。

まずDropboxは、私たちの生活全般に深く結びついた大量のパスワードの管理を手助けしようと考えた。これは、LastPass(ラストパス)や1Password(ワンパスワード)のパスワード管理事業の領域に足を踏み入れるということだ。ご想像のとおり、パスワード管理機能は私たちのパスワードをすべて保管し、パスワードの自動入力を行ってくれる。

Dropboxはまた、オンライン保管庫の事業にも参入する。基本的には、大切な書類を保管する安全な場所を提供するという、昔からある貸金庫のようなサービスだ。遺書や保険証書といった重要書類をそこに保管しておき、万一のときには信頼できる家族がアクセスできるよう暗証番号を共有できる。

さらに同社は、バックアップ事業にも参入する。Dropbox Plusのユーザーは、定期的に自分のPCまたはMacの全体的なバックアップが取れるようになり、コンピューターを失ったときや、マシンが完全にお釈迦になってしまったときにデータを呼び戻すことができる。

Dropbox Plusユーザーは、間もなくコンピューターの完全なバックアップが可能になる(画像クレジット:Box)

現在、これらの機能はまだベータ版だが、数週間以内にDropbox Plusのユーザーが利用できるようになると同社は話している。Dropbox Plusは月額9.99ドルで2テラバイトのストレージと、その他数多くの機能が利用できる(日本では月額1200円)。

さらに、Dropbox Businessのユーザーは、去年買収したHelloSign(ハローサイン)の電子署名機能も使えるようになる。当然の流れとしてDropboxは、HelloSignをデフォルトの電子署名ソリューションに位置付け、ユーザーがDropboxから外に出ることなく、書類の送付、署名、返却が楽にできるよにしようと考えている。この機能は間もなくプライベート・ベータ版がリリースされ、来月には一般に公開されると同社は話している。

しかもDropboxは、Google Docs、Slack、Zoomなど、ビジネスユーザーがDropboxに簡単に統合できる他社のクラウドサービスを探せるApp Center(アプリセンター)も新たに開設する。

最後に、一般のホームユーザーの生活を快適にするため、家族6名までが利用できるファミリーアカウントを導入する。ファミリーアカウントでは、家族写真や重要書類などのアイテムを共有できる共通のストレージと、各自用に個別のストレージが利用できる。最初はDropbox Plusの機能として提供されるが、今年後半にはより広いユーザーにも使えるようになるとのことだ。

かなりの数の新機能だが、これはDropbox製品ファミリーの利便性を広げるためにデザインされたものであり、Dropboxユーザーがひとつの製品で仕事と家庭とのバランスが取れた利用を可能にするものだ。同時に、無料コースに対して有料コースに大きな差別化をもたらすものでもある。

Dropbox、e署名とワークフローのHelloSignを2.3億ドルで買収(日本語訳)


画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

人気C向けアプリはいかにして初期ユーザー1000人を獲得したのか?

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、D2C企業の話や最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

元Airbnbのグロース担当のLenny Rachitskyさ(レニー・ラチツキー)さん「How the biggest consumer apps got their first 1,000 users」の記事を直接許可を頂き翻訳しました。レニーさんのコンテンツをもっと読みたい方はぜひ彼のメルマガにご登録ください!Lennyさんの「マーケットプレイスの作り方」の翻訳もしていますので、そちらも気になった方はご一読ください!

C向けサービスがいかにして最初の1000人を獲得するかしっかりまとまってる記事は意外とありませんでした。レニーさんの記事は、実際に創業者のヒアリングを行い、過去インタビューを遡り、Twitterで質問したりした事実に基づく濃密なレポートです。UberやTikTok、Tinder、最近話題のSuperhumanなどの著名スタートアップの学びをシェアしたいと思います。

サマリー

  1. C向けの初期グロースは7つの戦略に分けられる
  2. Product HuntやPinterestは複数使ったが、ほとんどのスタートアップは1つの戦略で成長する。3つ以上使って成功した事例は今のところ見てない
  3. 一番人気な戦略はオンラインでもオフラインでも直接ユーザーに行くこと。スケールしないことをやろう
  4. 戦略を実行するために、ターゲット層を狭く定義づけることが大事
  5. 最初の1000人の獲得と1万人までの獲得方法は変わる

初期ユーザー獲得戦略は以下の7つの戦略となる。

  1. オフラインで直接ユーザーと会う
  2. オンラインで直接ユーザーと会う
  3. 友達を招待する
  4. 取り残されることへの恐れ(FOMO)を作ること
  5. インフルエンサーを活用
  6. PR・メディアを活用
  7. コミュニティを作る

1. オフラインで直接ユーザーと会う

Key Question
初期ターゲットユーザーは誰で、どのオフラインの場所で集まっている?

■大学キャンパス
Tinder:創業メンバーのWhitney WolfeとJustin Mateenは南カリフォルニア大学で走り回ってフラタニティとソロリティでTinderを紹介してた。ほかの独身の人とつながれる、そして自分に興味があるかを知りたいニーズに合わせられたのでバイラルになった(Jeff Morris Jr.氏)。

DoorDash:初期バージョンはpaloaltodelivery.comと言うサイトでパロアルトのレストランメニューにPDFが載っていただけ。社長のTonyとDoorDashチームはチラシを印刷してスタンフォード大学でバラまいた。6ドルのデリバリーフィーで需要があるかを知りたかった。単純にPDFメニューのサイトとチラシで始まっただけ(Micah Moreau氏)。

■スタートアップのオフィス、駅や交通ハブ
Lyft:周りのスタートアップの各社にドアノックをして、無料でカップケーキやドーナッツと一緒にLyftの無料クーポンを渡していた(Emily Castor氏とBenjamin Lauzier氏)。
Uber:Streetチームをかなり使った。SF内の各Caltrain(カルトレイン、郊外向けの通勤列車)駅に行ってリファラルコードをばらまいていた。元CEOのTravisさん自身がTwitter本社に行ってリファラルコードを従業員にばらまいていたと。これが後ほどUberのグローバルアンバサダープログラムとなった(Andrew Chen氏)。

■ショッピングモール
Snapchat:CEOのEvanは一人ひとりに見せ始めて、使い方を教えたり、なぜ面白いかを説明した。アプリのダウンロードまで彼が代わりにやってあげていた。ユーザー獲得のために何でもやった。ショッピングモールに行ってSnapchatのチラシもばらまいてた。ショッピングモールで「消える写真を送ってみたいか?」と聞いて、よく断られてた(Billy Gallagher氏、How to Turn Down a Billion Dollars, The Snapchat Storyより)。

■近所のHOA(Home Owner Association、管理組合)
Nextdoor:当時は創業チームは近所のSNSのコンセプトを受けれて検証してくれる場所を探さないと意味がないとわかっていた。どの場所を選ぶかが重要だった。その場所はLorelei(ローレライ)だった。小さく親密なコミュニティであり、カリフォルニア州で最も古い管理組合がある場所だった。すでにコミュニティ内でコミュニケーションの取り合いをする方法があったのでNextdoorに合うと思った。管理組合の上層部に連絡したら話を聞いてくれた(Sarah Leary氏)。

■クラフトフェア
Etsy:米国中に開催されているクラフトフェアに行くことにした。そこで売り手を探しに行った。売り手は買い手をどうやってサイトに誘導させるのをわかっていたので、売り手を囲い込むのが大事だった(Thales Teixeria氏)。

■アップルストア
Pinterest:正直、かなりヤケクソなことをやってた。家の帰り道のアップルストアに入って置いてあったパソコンをPinterestページを表示するようにした。そしてその後にちょっと後ろのほうに行って「へーこのPinterestと言うサイトはバズっているんだなー」と他の人が聞こえるように言ってました(Ben Silbermann氏)。

2. オンラインで直接ユーザーと会う

Key Question
初期ターゲットユーザーは誰で、オンラインのどこで集まっている?

■Hacker News
Dropbox:CEOのDrewは簡単なプロダクトのデモ動画を2007年4月にHacker Newsに投稿した。そのタイトルは「My YC app: Dropbox – Throw away your USB drive」(僕のYCアプリDropbox:USBドライブを捨てよう)。その動画で初期ユーザーを集めた(John Popel氏)。

■アプリストア
TikTok(Musical.ly):当時はアプリストアに秘策があった。アプリ名をすごく長くできた。そしてアプリストアの検索エンジンはキーワードよりアプリ名にウェイトをかけるのを知ってた。なので、アプリ名を「make awesome music videos with all kinds of effects for Instagram, Facebook, Messenger」にしたら検索からの流入が入ってきた(Alex Zhu氏)。

ProductHunt:初期3000人はProductHunt初日とその1日、2日後で獲得できた。3000人から2万人ユーザーは初期ユーザーが入っている組織のエヴァンジェリストを探し、1対1の関係性を作った。そして2万人以降はPMのシステム(同僚を紹介するたびに5ドルのクレジット、50ドルぶんまで)で獲得(Shahed Khan氏)。

■既存のオンラインコミュニティ
Netflix:ユーザーとつながるためにCorey Bridgesをユーザー獲得するために採用した。彼はライターとしての才能があった。Coreyが気づいたのはDVDオーナーはネットのウェブフォーラムなどで集まっていたこと。そのコミュニティに入り込もうとした。CoreyはNetflix従業員とは名乗らず、映画好きな人として会話に参加したり、友達を作った。そこで、徐々にコミュニティ内のモデレーターや一番リスペクトされてたユーザーにNetflixと言う素晴らしいサイトを宣伝し始めた。ローンチ前から大きく種まきをしてくれてた(Marc Randolph氏、That Will Never Workより)。

Buffer:最初の9カ月はゲストブログ(自社ではないブログ)に書き続けただけで10万人を獲得できた。徐々に上がった感じだった。9カ月間で約150件投稿した。まったく流入しなかったものもあったし、徐々にしか改善されなかった。最適な投稿頻度を見つけるまで時間がかかった(Leo Widrich氏)。

3. 友達を招待する

Key Question
自分の友達は初期ターゲット層に当てはまるか?当てはまっていれば、サービスに招待したか?

Yelp:初期ユーザーは自分たちのネットワーク(ほぼ元PayPal同僚)を招待して獲得した。自分たちのネットワークに周りの友達を招待するようにお願いした。スタートアップを経験したメンバーが多かったので、お互い助け合うことに慣れてたのでいろいろ招待してくれた。そこだけで1000人ぐらいまで行った。一人のリファラルネットワークを侮らないことが大事で、招待させるインセンティブや方法を考えるのが大事(Russel Simmons氏)。

Lyft:ウェイトリスト制度を始める前には友達へメールにて招待状を送っていた(Emily Castor Warren氏)。

Facebook:Thefacebook.comは2004年2月4日にローンチした。普通の寮で過ごす夜だった。Mark Zuckerbergがサイトを完成させた時に数名の友達に共有した。その友達が学生寮「Kirkland House」に住んでいる300人が入っているオンラインメールリストに送ることをお勧めした。十数名が入って、その時にはすでにほかの寮にサイトの話が回ってた。夜の終わりには部屋にいた人たち全員が登録したユーザー数をひたすら見ていた。24時間以内で1200〜1500人が登録してくれた(Dustin Moskovitz氏、New Yorkerより)

Quora:Quoraは2010年1月にローンチした時のユーザーは主にAdam D’AngeloとCharlie Cheeverの高校・大学時代の友達が集まっていた。そのおかげで初期Quoraの情報を見ると、Cheeverが育ったペンシルベニア州のピッツバーグでのおいしいレストランなどの情報が多かった。サイトに他の人を招待できる機能を入れてユーザーを増やした(Wiredより)。

LinkedIn:LinkedInのCEOであるReid Hoffmanはプロダクトの初期は成功した友達やつながりに入ってもらった。憧れられるブランドを作るには初期ユーザーの質が重要だと理解してた。成功している会社や人ほど常に次の採用する人材を探しているので、成功した人たちを初期から入れてなければ会社は成功しなかった(Keith Rabois氏)。

Slack:ほかの会社で働いている友達に頼み込んで試してもらってフィードバックをもらった。最初の6社から10社はこう言うかたちで獲得した(Stewart Butterfield氏)。

Pinterest:アプリをローンチした時に友達全員にメールした。最初は誰もサービスの良さを理解しなかったが、ある小さいグループだけ使い続けてくれた。それはアーリーアダプターっぽくなく、一緒に育った友達や知り合いだった。彼らは人生の一環として使ってくれて、家や食べ物写真を上げてくれた(Ben Silbermann氏)。

4. 取り残されることへの恐れ(FOMO)を作ること</h2.

Key Question
・ユーザー生成コンテンツ「UGC」に頼るプロダクト?初期コミュニティはキュレーション型にすることを検討するべき
・強い企業価値があるか?その場合はウェイトリストを検討するべき
・ソーシャルなプロダクトか?その場合は既存ユーザーに新規ユーザーの招待させるように検討するべき

■初期コミュニティを制限、キュレーション
Clubhouse:プライベートテストフライトを見てると面白い(Todd Goldberg氏)。

  • キュレーション(クオリティー担保)
  • 制限・招待制(FOMO: Fear of Missing Out)
  • 早い改善とアップデート(アプリストアのレビュープロセスが必要ない)
  • 初期ユーザーは信頼できるネットワークからのリファラル

Instagram:プロトタイプと検証をしてたときにTwitterフォロワーが多い人に渡したのがよかった。しかもそれはある一定のコミュニティでのフォロワー数が重要だった。そのコミュニティはデザイナー、オンラインウェブデザインのコミュニティだった。我々がフォーカスしている写真やビジュアル要素がこのコミュニティに最もアピールすると思った。彼らがTwitterで共有してくれたおかげで、ほかの人たちは「これはいつローンチして、いつ使えるのか?」と聞き始めて、そのタイミングでローンチした(Kevin Systrom氏)。

Pinterest:最初は招待制のコミュニティだった。初期ユーザーはSilbermannが呼びかけたデザインブロガーだった。呼びかけた人たちにはユニークなアイデアとクリエイティブな人たちにしか招待するなと教えた。そうやって2012年まで招待ベースで伸び続けた(Entrepreneurより)。

■事前登録、ウェイトリスト
Mailbox:iPhone用のメール管理アプリのMailboxがリリースされた時にすでに70万人のユーザーがウェイトリストに登録していた。これはMailboxのサーバーに異常なる負担を与えないためと、需要をより増やすマーケティング戦略だ(Darrell Etherington氏)。

Superhuman:初年度は開発している最中にLP(ランディングページ)を公開した。Squarespaceで作った最小限のダメなLPを2時間だけかけて作り上げた。LPにはメールアドレスしか入れられないようにした。そしてメールアドレスを入れた際には2つの質問が自動送信された(Rahul Vohra氏)。

  1. どのメールブラウザーを使っている?
  2. メールの不満は何?

Robinhood:リリースした際には初期サイトがバズるとはまったく思ってなかった。そのためシンプルなコピーを入れて、登録するためのボタンを押して、メールアドレスを入力してもらってウェイトリストにジョインできるようにした。そしてウェイトリストの何人中、何番目かを表示するようにした。プレスを出すその前の金曜日の夜にウェイトリストの準備をしていた。その次の日の土曜日にGoogle Analyticsを開くと600人ぐらいの同時アクセスユーザー数を見かけた。何が起こったかを見たらほとんどのユーザーはHacker Newsから来ていた。Hacker Newsを見たら3番目にRobinhoodについて投稿されてた(Business Insiderより)。

■既存ユーザーからの招待制
Spotify:2008年にSpotifyがベータ版をローンチ。正式ローンチまでは招待制オンリーで進めていた。Spotifyの初期成長はこの招待制度が鍵だった。Spotifyのグロースをコントロールできたのと、よりバイラルな要素をサービスに与えた。ユーザーは最初に5人の友達に招待できるようにしてた(TNWより)。

5. インフルエンサーの活用

Key Question
ターケット層のインフルエンサーは誰で、どうやって自分のプロダクトについて話してもらえるか?

Twitter:以下図が初期ローンチのグラフだ。最初にインターネットでTwitterについてメンションがあったのは7月13日のEvan Williamのブログだったが、その前日に登録が結構入ってたのがわかる。そしてOm Malikの投稿で次の日には250人が登録。まだ600人ぐらいしかいなかったときだった。Evanの人気度とOmの推薦をもとに最初にバズるような状況を作れた(Pete Warden氏)。

Product Hunt:インフルエンサーを見つけた時に私かNathanが個人的にメールを送って、プレスでProduct Huntに言及していたPandoDailyやFast Companyの記事にリンクして我々のストーリーを説明した。マニュアルなプロセスだったが、いい寄稿者を採用するのにいい方法でよりフィードバックをもらえやすい状況を作っていた(Ryan Hoover氏)。

Instagram:創業者は初期ユーザーを慎重に選んでいた。良い写真家、特に高いTwitterフォロワー数のデザイナーを選んでた。その初期ユーザーが最初のトーン、良質なコンテンツを出した最初のInstagramをプロモーションするインフルエンサーキャンペーンと言えるだろう。Jack DorseyはInstagramの一番の営業マンだった。最初は彼の投資が(Instagramの前身のサービスである)Burbnではないアプリに行くことに対してショックだったが、すぐにInstagramをBurbn以上に好きになった。そしてInstagramが2010年10月6日にローンチした時に、Jack Dorseyが共有してくれたおかげですぐにバズった。アップルのアプリストアのカメラアプリの中でいちばんになった(Sarah Frier氏、No Filter: The Inside Story of Instagramより)。

6. PR・メディアの活用

Key Question
プレスやメディアにピッチできる新しく、面白く、そしてユニークなストーリーとは?

Superhuman:プレスをうまく使うのは時代精神的な瞬間に入り込むこと。我々の場合はMailboxがシャットダウンする時だった。私はかなり読まれたM&Aの生き残り方についての記事を書いたが、それはMailboxのシャットダウンと合わせて書いたもの。投稿はMediumで出したが、qz.comにも転載された。時代精神的な瞬間に入り込めた。その記事を書くのに3日間それだけに集中したのと、あと1日記事をいろんな人に共有するのに時間をかけたので、合計4日間フルフルかかった。でもその4日間で5000人の登録が入ってきた(Rahul Vohra氏)。

Product Hunt:FastCompany記事のようにゲスト投稿をテックメディアで書いて認知を得た。初期はプレス・メディアで登録を伸ばすのに効果的だった。TechCrunchを読む人はProduct Huntを見る人と同一だった。さらにProduct Huntでローンチしたいいプロダクトを知り合いの記者に情報を流すようにした。記者の興味に合わせてプロダクトを送り、それについて記事を書いてもらってProduct Huntにリンクしてもらった。しかもそれによってよりクリエイターやアーリーステージの会社に認知を与えてた(Ryan Hoover氏)。

Airbnb:ターニングポイントはコロラド州デンバーで行われた2008年の民主党全国委員会(DNC)だった。Airbnb創業メンバーはイベントのキャパの4倍以上の人が参加すると知っていて、その影響で部屋のレンタルの需要が高まると知ってた。部屋を譲ってもらうのは簡単だったが、知名度がなかったのでその部屋に宿泊してもらうことが難しかった。

それを解決するためにまずは小さいオーディエンスを持っているブロガーに当たった。直感に反するかもしれないが、小さいブロガーがAirbnbについて投稿することによって大きめのメディアが取り上げる必要があると感じた。それがどんどん加速して、最終的には全米に放映するNBCやCBSがAirbnbの創業者をインタビューしていた。

DNCはAirbnbにとってよかったが、結局1週間しか続かなかった。創業者がイベントからのインパクトを最大限に広げられないかとキッチンで座ってたときに、シリアルを売って黒字化するアイデアを思いついた。2人ともデザイナーで名門ロードアイランド・スクール・オブ・デザインの卒業生だった。嘘のシリアルの「Obama O’s, the Cereal of Change」と「Cap’n McCain’s, a Maverick in Every Box」を考えた。箱のアートは彼ら自身で考え、カリフォルニア大学バークレー校の生徒にお願いして安く箱を印刷してもらった。箱はフラットな長方形で印刷されたので、1つひとつ形を切り取って手作りした。
創業メンバーはいろんなテックブロガーに箱を送り、それについて記事を書いてもらった。その後に一箱40ドルで売った。Obama O’sが売れすぎて、Cap’n McCainを無償でつけるようになった(Pandoより)。

Slack:ベータ版をベータ版と呼ばなかったのは、そうするとサービスがあまりよくないと思われるからだった。チームの過去の経験を活用してプレス戦略を行った。それでSlackを使うリクエストが遅れるようにした。初日に8000人、2週間後に1万5000人まで上がった。ローンチ時のメディアの力は強い(Stewart Butterfield氏)。

Instagram:PR会社を使わずに直接プレスにコンタクトした。これは正しい戦略だったとKevin Systromが語る。いいプロダクトと熱い創業者からピッチするといい記事となる。プロダクトを好きになりそうな人に関しては躊躇なく連絡した。それがうまくいった。New York Timesとかに連絡する意味がないといろんな人から言われたが、NYTは話すだけではなく、直接会いにきてくれた。そして2010年10月にローンチした同日にプレスが出て、サーバーへの負担がハンパなかった(TNWより)。

7. ローンチ前にコミュニティを作る

Key Question
あとあと活用できるコミュニティを今作れるか?

Product Hunt:Linkydinkと言うメルマガツールを使ってメルマガとしてスタートした。Product Huntを開発している間にMVP版に貢献してくれる人たちやプロダクト関連の人にモックを共有してフィードバックをもらってた。これは顧客開発のためだけではなく、共有してた人たちにプロダクトに貢献してプロダクトの一部として感じてもらうようにしていた(実際に貢献してくれてた)。その5日後、MVPが完成した。Product HuntのURLをサポーターたちにメールして、周りに共有しないようにお願いした。サポーターたちは自分たちが開発に貢献した感情を抱いてたので、プロダクトにすぐに愛着が生まれた。それで最初の30人を獲得した。週の終わりには100人集まったので、公開できると思った(Ryan Hoover氏)。

Stack Overflow:創業メンバーのJoel SpolskyとJeff Atwoodは過去の経歴のおかげで大きなフォロワーコミュニティを持っていた。お互いのコミュニティに対してプライベートベータ版に招待した。コンテンツが最初からないと微妙に見えるので、招待する前に創業メンバー自らコンテンツを作っていた(Jon氏)。

おさらい

最初の1000人を獲得するには、以下7つの戦略が使われた。

  1. オフラインで直接ユーザーと会う
  2. オンラインで直接ユーザーと会う
  3. 友達を招待する
  4. 取り残されることへの恐れ(FOMO)を作ること
  5. インフルエンサーの活用
  6. PR・メディアの活用
  7. コミュニティを作る

どの戦略にフォーカスするべきか決めるために自分に聞くべき質問は以下のとおり。

  1. 初期ターゲットユーザーは誰で、どのオフラインの場所で集まっている?
  2. 初期ターゲットユーザーは誰で、オンラインのどこで集まっている?
  3. 自分の友達は初期ターゲット層に当てはまるか?当てはまっていれば、サービスに招待したか?
  4. ユーザー生成コンテンツ「UGC」に頼るプロダクト?初期コミュニティはキュレーション型にすることを検討するべき
  5. 強い企業価値があるか?その場合はウェイトリストを検討するべき
  6. ソーシャルなプロダクトか?その場合は既存ユーザーに新規ユーザーの招待させるように検討するべき
  7. ターケット層のインフルエンサーは誰で、どうやって自分のプロダクトについて話してもらえるか?
  8. プレスや¥メディアにピッチできる新しく、面白く、ユニークなストーリーとは?
  9. あとあと活用できるコミュニティを今作れるか?

Dropboxの新しい機能がアプリで利用可能になった

画像:Dropbox

6月にDropboxは「新しいDropbox」のプレビュー版を公開した。スタンドアロンのアプリのインターフェイスを中心にして、Slack、G Suite、Zoomのコールなどの仕事のツールをすべて1カ所に統合することに取り組んだものだ。これまでよく知られてきたシンプルにフォルダを共有するDropboxからすると、かなり劇的な刷新だ。

誰もがこの変化に賛同したわけではない。例えば有名ブログ「Daring Fireball」のJohn Gruber(ジョン・グルーバー)氏は、自分がDropboxに望むのは、もともとそうだったようにシンプルなフォルダが本当に間違いなく同期することだと指摘した

あなたもそう思っているかもしれないが、新しいDropboxはすでにすべてのユーザー向けに公開が始まっている。共有フォルダは、共有ファイルを中心とした「Dropbox Spaces」と呼ばれるハブとなる。

主な新機能は以下のとおり。

  • Dropbox Spacesには、テキストによる説明を追加して目的を伝えたり、今後のタスクを管理するためのTo-doリストを作成したりすることができる。
  • Windowsではシステムトレイから、macOSではメニューバーから「For you」タブを表示すると、カレンダーの情報とミーティング中に必要になりそうなファイルや、チームの最近のアクティビティ(編集やコメント)に関するタイムラインを見ることができる。

  • 「Peopleページ」には、チーム内の特定のメンバーと共有や共同作業をしているものがすべて表示される。
  • Slack、Zoom、Trello などのツールをDropbox Spacesに統合すると、Dropbox SpacesからZoomミーティングに参加したりTrelloのカードに項目を追加したりすることができる。
  • Google DocsやOffice 365アカウントなどにあるクラウドのファイルをDropbox Spacesに読み込める。
  • DropboxがコンピュータビジョンでJPG、PNG、GIF画像内のコンテンツを認識するため、画像内の検索ができる。Dropboxによれば、この機能は米国時間9月25日からDropbox Proで公開されており、Dropbox Businessプランでは「間もなく」利用できるようになる。

  • Dropbox Transferで、大容量のファイル(Basicユーザーでは最大100MB、ProとBusinessのユーザーでは最大100GB)を、相手がDropboxアカウントを持っていなくても共有できる。ファイルをアップロードして、共有リンクを作成する。ファイルがダウンロードされたときに通知を受ける設定、パスワードの追加、一定期間後にリンクを無効にする設定が可能。

Dropboxはストレージ「だけの」企業とは見られたくない。DropboxのCEOであるDrew Houston(ドリュー・ヒューストン)氏は6月の発表の場ではっきりとそう語り、これからはストレージ企業とは考えないでほしいと述べた。「私たちのやり方では不十分だ」と書かれたスライドの前に立った同氏は、すべての仕事のハブになろうとしている同社の新しい取り組みを説明した。

これまでのDropboxのとおり、OSの中にDropboxフォルダがあるほうが好きという人もいるだろう。これはなくならないようだ。前述の新しい機能を使うには新しいアプリが必要だが、DropboxフォルダとファイルはこれまでどおりFinderウインドウから利用できる。Dropboxの担当者は筆者に対し、これを変更する予定は今のところないと語った。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

Dropboxがエンタープライズ向けのコラボスペースとして再始動

Dropboxはファイルストレージシステムから、チームで協調して仕事をするためのエンタープライズ向けソフトウェアポータルへと進化しつつある。米国時間6月11日、同社はDropboxの新バージョンを公開した。G Suiteなどのアプリをショートカットで起動できるほか、Slackのメッセージを送信したりZoomのビデオコールをしたりする機能も搭載されている。デバイス上とエンタープライズのツール内のすべてのファイルを検索したり、コミュニケーションをとりチームの仕事にコメントを付けることもできる。ファイルに付けたTo Doリストにメモを追加したり同僚をタグ付けしたりする機能もあり、Dropboxはタスクマネージャーにもなろうとしている。

新しいDropboxは米国時間6月11日に、40万チーム、1300万人のすべてのビジネスユーザーに加え、コンシューマーユーザーにも公開された。ユーザーはここから先行アクセスに申し込むことができる。企業の場合は管理パネルで先行アクセスを有効にする。同社CEOのDrew Houston氏はミッションステートメントで「もっと素晴らしい働き方をデザインするために、我々はやり方を変える」と述べている。

Dropboxは、ファイルストレージのビジネス自体は終焉を迎えつつあると認めたようだ。ストレージの価格は下落し、どのアプリでも専用のストレージシステムを追加できる。Dropboxはエンタープライズ向けのスタックへと進化し、ほかのツールを開いてまとめるポータルになる必要があった。エンタープライズのコーディネーションレイヤーになることは賢明な戦略だ。Slackは自社でそうしたレイヤーを構築するのではなく、連携することを選んだようだ。

今回のアップデートの一環として、Dropboxは全ユーザーを対象とした新しいデスクトップアプリを提供している。これによりmacOSやWindowsのファイルシステムの中で動作する必要がなくなる。ファイルをクリックするとプレビューを見ることができるほか、そのファイルを誰が見たか、誰がいま見ているか、誰がアクセス権を持っているかのデータを表示することができる。

今回のリリースはSlackと深く統合されているため、Dropbox内でファイルにコメントを付けられる。Zoomとも統合されていて、ワークスペースを離れずにビデオチャットができる。Webとエンタープライズアプリのショートカットを活用すれば、さまざまなツールをタブで聞きっぱなしにしておく必要がなくなる。検索ツールも改良され、コンピュータのファイルシステムとほかの生産性向上アプリのクラウドストレージをすべて探せる。

しかし今回の変更で最も重要なのは、Dropboxがタスクマネジメントアプリになろうとしていることだ。ひとつひとつのファイルには、説明、ToDoリスト、タスクを割り当てるための同僚のタグが記録される。ファイルごとのアクティビティフィードには同僚からのコメントとアクションが表示されるため、GoogleドキュメントやSlackのチャンネルで別途共同作業をする必要はない。

連携する相手(SlackとZoom)と真似する相手(Asana)をどのように決めたかについて問われたビジネス部門担当副社長のBliiy Blau氏は基本的には返答を避けたが、Dropboxのパートナーの「共有の精神」を引き合いに出した。

サンフランシスコで開催された発表イベントの冒頭、Houston氏は、社員のコンピュータとクラウドに散らばっている企業の知識よりも公開されている情報のほうが見つけやすいと指摘した。コンピュータの「Finder」はポストダウンロード時代に対応した進化を遂げていない。Houston氏は、オフィスで仕事をしている時間のうち60%は、仕事そのものではなく整理やコミュニケーションといった仕事のための仕事に費やされていると説明した。これはタスクマネジメントのスタートアップ、Asanaがよく使うマーケティングの視点だ。DropboxはAsanaとこれからさらに直接戦っていくことになる。Dropboxは「我々はこうしたあらゆる『仕事のための仕事』をこなすお手伝いをしていく」としている。一方のAsanaは2013年以来、核となるメッセージとしてこのフレーズを使い続けている。

Dropboxはクラウドのためのファイルツリー、Finder、デスクトップを目指している。問題は、コメントやタスクを付けたファイルが常に仕事の中心的な単位なのか、あるいは注目すべきものはファイルが添付されたタスクやプロジェクトであるべきなのかだ。

Dropboxはコンピュータのデスクトップやブラウザに代わるワークスペースであると考えられるようにチームをトレーニングするには、しっかりした導入と粘り強さが必要だろう。しかし、もしDropboxがアイデンティティとなり、ばらばらのエンタープライズソフトウェアを結びつけるコラボレーションレイヤーになれるなら、ファイルストレージは生き延び、新しいオフィスツールが登場しても意義のあるものであり続けるかもしれない。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

Dropboxはファイル保存コスト削減のためコールドストレージを採用

Dropbox(ドロップボックス)は、AWSから独自のデータセンターへと、負荷を移動する作業に何年も前から取り組んできた。ファイルの保存とアクセスの方法を細かく制御する必要があったからだ。そのために、Magic Pocketと呼ばれるストレージアーキテクチャを開発して活用してきた。しかしその過程で気付いたことがある。多くのユーザーは、バックアップ目的でDropboxにファイルを移動すると、その後はめったにアクセスしなくなるということだ。

そしてエンジニアが悟ったのは、すべてのファイルを同じ方法で保存するのは、ほとんど意味がないということ。多くのファイルは、Dropboxに預けた日の翌日以降、あまりアクセスされなくなるからだ。そこでDropboxでは、2種類のストレージを用意することにした。これまでのMagic Pocketを使うウォームストレージと、長期保存に適した新たなCold Storage(コールドストレージ)だ。そうすることでDropboxは、ファイルの保存コストを下げつつ、ユーザーの要求に応じて素早いアクセスを提供することもできる。

Dropboxのユーザーとしては、当然ながら、同社がどのような技術的な課題に直面し、それをどのような方法で解決しているかなどといったことに興味はない。ユーザーは、ファイルをクリックしたとき、特に遅れを感じずに開くことができれば、それでいいのだ。ファイルの古さなど関係ない。しかしDropboxでは、古いものは別のレイヤーに保存する手法を編み出した。

「コールドストレージには、通常、アクセス頻度の低いものを保存することになります。そのため、そうしたファイルの場合、ストレージ容量、パフォーマンス、そしてネットワークのバンド幅の間でバランスを考える必要があります」と、コールドストレージのプロジェクを担当するエンジニア、Preslav Le氏はTechCrunchに語った。

というわけで、コールドレイヤーに保存されたファイルを、許容範囲の待ち時間以内に取り出すことのできるシステムを設計するのは、エンジニアの責任だった。ユーザーが気付いてしまうような遅れは許されない。そのような仕事は、設計上のきわどい綱渡りを必要とする。こうしたアプローチでは、すべの要素のバランスをうまく取る必要があるからだ。

「私たちのコールド階層は、ウォーム階層と同じハードウェア上で動作し、同じネットワークに接続されています。それでも画期的な方法によってディスクの使用量を25%削減することで、コストを節約しています。耐久性やアクセス性を犠牲にすることもありません。ユーザーは、2つの層の違いにほとんど気付くことはないはずです」と、Dropboxはこの新機能を紹介するブログ記事に書いている。

同社では、耐久性と信頼性を確保しつつ、新たなストレージのレイヤーを開発して全体的なコストを削減する必要があった。そのプロジェクトは容易ではなかったが、2つの層を持つシステムによって、やがて10〜15%ほどのコストの削減につながるものと期待している。

画像クレジット:Chris Clor/Getty Images

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

Dropbox、e署名とワークフローのHelloSignを2.3億ドルで買収

今日(米国時間1/28)、 DropboxHelloSignを買収することを発表した。HelloSignは電子署名と軽量のドキュメント・ワークフロー・サービスを提供するスタートアップで、買収価格は2億3000万ドルだったという。

Dropboxのエンジニアリング担当副社長、Quentin Clarkは「この買収は単にDropboxのサービスに電子署名機能を追加するだけでない」という。2017年にHelloSignが追加したワークフロー機能が買収の本当の鍵だったという。ClarkはTechCrunchの取材に対して次のように述べた。

HelloSignのユニークな点は、APIやワークフロー製品への投資が、われわれの長期的な方向性と非常によく一致している点にある。Dropboxに機能が増えるというのに留まらず、幅広いビジョンの下にわれわれの事業を拡張していくために役立つ。現在のDropboxソリューションの核心はストレージ機能だが、われわれは長期的にこれを拡大していくビジョンを持っている。

Dropboxが昨年追加したエクステンション機能もこの文脈で見る必要がある。実際にHelloSignはDropboxエクステンションのローンチ時点で機能を提供した企業の1つだった。。 Clarkによると、同社は引き続きDropboxソリューションの拡張をサードパーティーに求めていくが、今日の買収により他社との提携を必要としない独自機能が提供され、すでにエクステンションを介してDropboxに連携されているという。
.

インテグレーションのスピードアップ

Deep Analysisのファウンダー、プリンシパルアナリストのAlan Pelz-Sharpeは、この市場を長年モニターしてきたベテランだが、「HelloSignがエクステンション・サービスのパートナーであることが重要。買収した企業を本体に統合することが通常の場合よりはるかにスピードアップされる。また大企業以外の企業では大部分の文書がオフラインで個別処理されている。HelloSignが不動産、保険、顧客社員関係などの一般的なソリューションに加えて、すでにDropboxの既存のエクステンション機能を備えている。このためHelloSignの各機能がDropboxの事業拡大にすばやく利用できることを意味している」という。

Pelz-Sharpeは、買収金額からするとDropboxがこうした能力を強く欲していたことが推定できると付け加えた。「財務指標からすると非常に高い価格だがこうした急成長分野における有望スタートアップの買収としては不合理な金額ではない。同時にここまで価格がアップしたことは他にもHelloSignの買収に意欲的な企業があったことがほぼ確実に推定できる」と述べた。

HelloSignのCEO、Joseph Wallaは、同社のブログ記事でこう述べている。

Dropboxのメンバーとなることで、HelloSignが上場大企業のリソースにアクセスできるようになり、これまでよりいっそう広い市場に参入できるようになる。Dropboxと連携させることで、幅広い顧客によりシームレスなドキュメントワークフローを提供し、われわれのソリューションのインパクトの拡大を劇的に加速することができるだろう。

HelloSignは独立を維持する

元Box、元EMC Documentumで現在はHelloSignのCOO、Whitney Bouckは「われわれは後も独立したブランドとして運営される」と述べた。つまりHelloSignはDropboxファミリーのメンバーとなるが、運営形態は現状のままということだ。またClarkはHelloSignの社員全員がDropboxで雇用されることを保障するのが買収条件の一環だったと示唆している。【略】

エンタープライズワークフローを専門とするConstellation Researchのアナリスト、Alan Lepofskyは、「HelloSign買収でDropboxは有力なエンタープライズ向けワークフローツールを獲得したわけだが、エンタープライズのドキュメント管理に高い実績、ノウハウを持つWhitney Bouckをスカウトできたのも大きなボーナスだ」と述べた。また 「これはもちろん人材獲得のための買収ではないが、Dropboxは、エンタープライズ向けにサービスを拡大する事業分野ですでにリーダーと認められているWhitney Bouckを獲得することにも成功した。Bouckは彼女の以前の雇用者であるBoxとの競争でDropboxに大きな助けになる可能性がある」 とLepofskyはTechCrunchに述べた。

DropboxのClarkは、「現在のエクステンションとは別にHelloSignの機能ををDropbox本体にバンドルしていくかは具体的に説明するには時期が早すぎる」と語った。しかしClarkはHelloSignが独自の顧客を持つ独立ブランドとして運営されていても、両社それぞれのプロダクトを統合する方法を見出すだろうと期待してると述べた。

HelloSignはサンフランシスコを本拠として2011に創業したスタートアップだが、これまでに1600万ドルしか資金調達を行っていない。今回の買収は投資家には大きなリターンを約束するものだし、もちろんHelloSignにとっても理想的なエグジット(現金化)となった。

買収手続きは2019年第1四半期中に完了できる見込みだという。通常どおり、規制当局による承認を必要とする。


(日本版)恋人がデートに契約文書とスキャナー、携帯発電機を持ってやってきた。なんでスキャナー? HelloSign使えば? というCM(音に注意) DropboxのHelloSignエクステンションを利用すれば契約書をDropboxに保存して関係者の電子署名を求めることができるという。

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

DropboxのExtensionsでストアしたコンテンツへの仕事がDropboxに居ながらにしてできる

Dropboxには前から、そこに保存したファイルにプログラムからアクセスするためのAPIがある。また同社は、Adobe, Google, Autodesk, Microsoftなどの大企業とパートナーシップを結んできた。そして今日(米国時間11/5)は、サードパーティのパートナーとのワークフローの構築と統合を(Dropbox内で)していくための、Dropbox Extensionsと呼ばれるサービスをローンチした。

Dropboxでエンジニアリングとプロダクトとデザインを担当しているSVP Quentin Clarkによると、同社はかねてから、ユーザーがDropboxに保存したコンテンツを、彼らが使っているそのほかのツールと統合するニーズがあることを、認識していた。“Dropboxだけに限定されないもっと広いエコシステムを支えることに、最大の価値がある。Extensionsはそのための障害を取り除き、エンゲージメントを広く深くしていくための方法の一つだ”、とClarkは語る。

彼によると、APIを使えば、コンテンツを取り出して、それで何かをして、結果をDropboxの置くことは可能だが、ExtensionではユーザーがDropboxの中で直接、アクションできる。ほかのアプリケーションを開かなくても、ユーザーが今いるところで何でもできる、というエンタープライズツールは目下のトレンドであり、Dropboxもそのトレンドに乗りたいのだ。

またそのやり方で、ある種の自動化が可能になる場合もある。その一つの例として、Dropbox Extensionsを電子署名のサービスAdobe Sign, DocuSign, HelloSignなどと統合すると、契約書をDropboxに保存し、それをあちこち送って署名を求め、すべての署名が集まったら、すべての署名入りドキュメントが自動的にDropboxへ返される、という使い方がありえる。そのとき、そのプロセスを始動した者には、完了通知が行く。

今日のリリースに含まれているそのような統合は、Vimeoでビデオの編集、Pixlrで画像の編集、NitroやairSlate, SmallpdfなどでPDFの編集、HelloFaxでFAXを送る(まだFAXが必要なところへ!)、などだ。Clarkによると、これら初期に導入した統合は、ユーザーが、Dropboxとのディープな統合を一番多く望んでいたアイテムだ。

Dropboxのパートナーチームは、Extensionsのそのほかの使い方も追究していくが、実装はエンジニアリングチームとの協働になるので、ユーザーの要望が多いと思われるものから順に着手していく、という。

Extensionsの発表は今日だったが、一般公開は11月27日だ。企業ユーザーだけでなく、すべてのユーザーが利用できる。それは、Dropboxでは単なるストレージだけでなく、いろんな使い方ができることを、広く知ってもらいたいからだ、とClarkは言っている。また、このやり方によって、統合の便利さが知れ渡り、今後の企業ユーザー、企業向けプロダクトのユーザーも増えるであろう、という皮算用もしている。

画像クレジット: TechCrunch

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

DropboxがコラボツールPaperにタイムラインを加えてプランニングツールとしても使えるように

Dropboxはその、ドキュメント・コラボレーション・ツールPaperを、2015年の発表以来一貫して、多機能化してきた。今日(米国時間10/25)加わったのはタイムライン機能で、これにより単純なコラボレーションだけでなく、Paperを軽量級のプロジェクトプランニングツールとしても使えるようになる。

Dropboxの顧客は前から、Paperに計画立案機能がほしい、と要望を寄せていた。この新しい機能を発表する同社のブログ記事は、こう述べている: “プランニングには、さまざまな可動部品を調整する面倒な作業があります。今回Dropbox Paperでは、新しいタイムライン機能により、その苦痛を取り除きます”。

そういうツールに誰もが期待するように、タイムラインを作ってその上にマイルストーン(スケジュール項目)を置いていくが、土台がPaperなので各マイルストーンをチームメンバーに割り当てることができる。いろんな情報のノートも付記できるが、それには関連ドキュメントのリンクがあってもよい。

タスクを割り当てられた人のためのトゥドゥリストをタイムラインに埋め込んで、その仕事の無事完了を補佐できる。それが、プロジェクトを割り当てられた全員のための単一のアクセスポイントになる。

Gif画像提供: Dropbox

発表のブログ記事にはこうある: “トゥドゥや@mentionや締め切り(予定日)などによってチームメンバーはお互いが容易にプロジェクトを調整できる。しかも、この一歩進んだタイムライン機能では、チームメンバーの誰もが、いつ・何が・誰の担当で起きるかということを、明確に視覚化できる”。

Dropboxが最近理解しているのは、ストレージツールが単なるストレージツールでは仕事の役に立たない、ということだ。だからコラボレーションやコーディネーションに手を広げて行かざるをえない。Dropbox Paperは、まさにそのためにある。タイムラインが加わると、その多機能化がまた一歩前進する。

Constellation Researchで“仕事の未来”を研究しているAlan LepofskyはPaperについて、コラボレーションツールの変化の兆候、と言う: “こういう新種のコンテンツクリエーションツールは、いわばデジタルのキャンバスのようなものだ。複数のソースからのコンテンツを統合する作業を、単純化してくれる。ワードプロセッサの進化形、と言えるかもしれない”。

プロジェクトマネージャーのもっと完全なプランニングツールを今日明日にもリプレースするわけではないが、少なくとも、Dropboxのユーザーがそこに保存したコンテンツからさらなる価値を作り出せるためのツール、とは言えるだろう。

画像クレジット: Dropbox

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Dropboxにユーザーのすべての画像とPDFを自動的にOCRする機能が登場

Enterprise Dropboxに、一部のユーザーが待ち焦がれていたと思われる便利な機能がやってきた。それは画像やPDFファイル中の文字を自動的にテキストデータへ書き起こす光学式文字認識(optical character recognition/reader, OCR)機能だ。これからは、セーブした写真をかき回してレシートを探さなくてもよいし、目的の情報を探してたくさんのファイルを開かなくてもよい。単純に、テキストで検索できるのだ。

Dropboxのテキスト認識エンジンは今後数か月で、DropboxのPro, Business Advanced, そしてEnterpriseアカウントに実装されるが、アーリーアクセスがあるかもしれないから、ときどきチェックしてみよう。

このOCR機能は、ユーザーのすべての画像やPDFをスキャンしてテキストを取り出し、それらをメタデータに加えるので、ユーザーはそれを検索できる。もちろんそのデータは、正規のドキュメントとして安全に保存される。便利だが、問題は書き起こしの精度だ。OCRはときどき、気難しいからね。

Dropboxに永久につきまとう、もっと簡潔な名前のコンペティターBoxは昨年、多機能なOCRを導入した。多機能というのは、文字だけでなくオブジェクト(物)も認識するからだ。これに比べてDropboxのは、機能的にやや劣るかもしれないが、でも日常のOCRニーズには十分だろう。

これまで、指定したドキュメントをOCRすることはできたが、もちろんこっちの方が便利だ。Dropboxの技術情報のブログには、この自動化OCR機能の開発史が語られている。Boxは、GoogleのOCR機能を下敷きにしたらしい。〔訳注: Google Drive -> Google DocsにもOCRがある(全自動ではない)。〕

Dropbox Enterpriseのようなグループアカウントのメンバーは、全員がこの機能を利用でき、しかもこの機能が有効になったときは自動的に、既存のドキュメントもすべてOCRされる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

トラック運送のUber、Convoyが評価額10億ドルで1.85億ドルを調達

Alphabetの未公開株投資部門であるCapitalGは、Convoyの1.85億ドルの調達ラウンドをリードした。同社にとってシアトル拠点のIT利用トラック輸送ネットワークへの初めての投資だ。

このラウンドによってCovoyの総調達額は2.65億ドル、企業評価額は10億ドルとなった。新たな投資家として、T. Rowe PriceとLone Pine Capitalが既存投資家とともに参加した。

Convoyは長年Greylock Partnersの支援を受けてきた。同社は2015年のシリーズAラウンドをリードしている。 Y Combinatorも支援者のひとつだ。昨年 Y CombinatorはConvoyの6200万ドルのラウンドをリードするという異例の行動にでた。アクセラレーターであるY Combinatorが、Continuity Fundの資金をYC卒業生以外のレイトステージ企業に投資したのは初めてだった。

Salesforce CEOのMarc Benioff、Dropbox CEOのDrew Houston、Bezos Expeditions、および元Starbucks社長のHoward BeharもConvoyに出資している。

元AmazonのDan LewisとGrant Goodaleのペアが設立したConvoyは、8000億ドルのトラック業界に変革をもたらそうとしている。これは至難の業だ。トラックのUberとも呼ばれるConvyのアプリは、トラック運転手と荷物を運ぶ必要のある人たちをつなぐ。同社は新たな資金を使って、全米に規模を拡大するとともに運送マッチンク以外の事業にも進出しようとしている。

「トラックは40%の時間、からっぽで走っている。また、非効率的なスケジューリングのために何もせずに止まっていることがしょっちゅうだ」とConvoyのCEO Dan Lewisが声明で言った。「これは経済や環境だけでなく、荷主や運送会社の利益にも悪影響を及ぼす」

GeekWireによると、Convoyは、トラック運転手が仕事をうまく組み合わせて時間の無駄を省けるように新しいツール群を開発している。また、荷主にはシステムを通じて荷物追跡や価格データの利用を可能にしようとしている。

CapitalGのパートナー、David Laweeは出資契約の一環としてConvoyの取締役会に加わる。
[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Dropboxが電子署名機能を追加しようとしている?ユーザー調査が示唆

Dropboxによって最近送られたユーザー調査は、同社がDropbox Professional製品に電子署名機能を追加することを検討していることを明らかにした。その機能は単に“E-Signature from Dropbox”という名前で参照されている。調査のポイントは、ユーザーはそのような製品を使いたいのか、どれ位の頻度でそう思うのか、そして他のものに比べて、それはDropbox体験に価値を付け加えると思うかどうか、といった点に対するフィードバックを得ようとしたものだ。

調査だけではその機能が実際に動作しているかどうかは確認できないが、Dropboxがそのプロフェッショナル製品について、どのように考えているかは示している。

同社のE-Signatureに関する説明によると、この機能は「あなたとあなたのクライアントにとってシンプルで直感的な電子署名体験」を提供し、「わずか数回のクリック」で署名をして貰うために文書を送ることができるという。

この場合、文書を受け取り署名をするクライアントは、Dropboxユーザーである必要はないと調査票は説明している。そして製品は署名ワークフローの全てのステップにおける更新状況を提供する。例えば、文書が開かれたことの通知や警告、クライアントが疑問を持っているかどうか、そしていつ文書が署名されたかなどだ。署名された文書が返信された後は、ユーザーは署名済の文書へのアクセスが簡単にできるように、自分のDropboxのアカウントへ受信する、と同社は説明している。

Dropboxは、製品に関する一般的なフィードバックを求めることに加えて、調査回答者たちに、Adobe e-Sign、DocuSign、HelloSign、そしてPandaDocなどについても質問し、同時に直接対面や郵便による文書の送付などの従来型の手法の利用についても尋ねている。

今日市場に多数の選択肢があることを考えると、Dropboxがそのような製品の開発をさらに進めて、実際に開始することを選択するかどうかは不明瞭である。しかし、もし本当にそうした場合には、独自のE-Signatureサービスを持つ利点は、その機能がDropbox全体の製品体験に、より緊密に組み込まれるということだ。また、より多くのビジネスユーザーに対して、基本消費者アカウントからProfessional層へのアップグレードを促す可能性もあるだろう。

この種の直接統合は、Dropboxのビジネス・ワークフローのコンテキストで意味を発揮するものだ。例えば、ある企業が契約ワークフローを進めている場合、コンテキストを変更することなく署名フェーズに移行できる(あるいはDropboxを使用しないユーザーと共有できる)ならば、単に文書を保存できるだけよりも、遥かに素晴らしい価値が加わることになる。

Dropboxのような企業は、純粋なストレージ提供を超えて、特に顧客が仕事を完了するためにアプリケーションを離れることなく、共同作業を行いコンテンツを共有する能力を提供する手段を探し続けてきた。タスク切り替えなしで仕事をできるこうした機能は、DropboxがDropbox Paperで取り組んできたものだ。

彼らがこのようなソリューションをどのように実装するのかはまだわからないが、既存のベンダーと提携するか、小さな企業を買収することの方が、機能をゼロから構築するよりは合理的な例かもしれない。まあひとつの簡単な調査だけでは、彼らの現時点での究極の目標ははっきりしないのだが。

Dropboxはコメントに対するリクエストにはまだ応答していない。

[原文へ]
(翻訳:sako)

Dropboxのコラボレーション層Paperがメジャーアップデートで多様なコンテンツに対応

Dropboxのようなストレージサービスが企業ユーザーの獲得を目指すときは、単純なファイル共有を超えた機能の提供が必要になる。Dropboxが、これまで欠けていたコラボレーションの層としてPaperを作ったのも、そのためだ。今日(米国時間9/3)同社は、プログラムを切り替えたりせずにコラボレーションツールの中だけで仕事ができるための、拡張機能をPaperに導入した。

“Paperは、チームのためのDropboxのコラボレーションの場だ。複数のユーザーが一緒に仕事をできるための機能がいろいろあり、締め切りを決めてオーナーにタスクを割り当てたり、YouTubeやSoundCloudやPinterestなどのマルチメディアコンテンツを埋め込むこともできる”、とDropboxは説明している。

今日発表された拡張機能で、Paperの中にさらにほかの要素を取り込めるようになった。たとえばPaperの中でDropboxのフォルダーへリンクして、ファイルの中身を見たり、サブフォルダーへ降りて行ったりもできる。リンクはフォルダーそのものへのリンクなので(コピーではないので)、ファイルへのアップデートはPaperの中のビューにもすぐ反映する。これはDropboxのような企業にとって、かなり思い切った機能だ。

画像提供: Dropbox

今のDropboxは、スプレッドシートをパワーアップしたような機能Airtableをサポートしているが、今回のPaperのアップデートで、Airtableを埋め込みコードでPaperに取り込めるようになった。これも、Airtable本体のアップデートが即、Paperのビューに反映される。

さらにこれからのPaperは、Googleのコラボレーション機能のように、図表を作れるLucidchartをサポートする。これも、フォルダーやAirtableと同じく、ライブのビューをPaperの中で見られる。つまり図表本体が変わればPaper上の図表も変わる。

Paperの中で、これだけいろいろなことができるから、プログラムをあちこち切り替える必要がない。最近BoxがActivity StreamとRecommended Appsを発表したのも、同じような理由からだ。Slackが企業で人気が高いのも、同じ理由だ。つまり、ひとつのコラボレーションツールの中で、いろんなアプリケーションのコンテンツをシェアできる。そのために大量のタブや、別のアプリケーションを開かなくてもよい。

Dropbox Paperではさらに、ユーザーがあちこちのアプリケーションのコンテンツサイロを訪ねなくても、一箇所でいろんなプレビューを見ながら、最後まで中断なく仕事ができる。Dropboxはこの機能を、企業顧客獲得の決め手にしたいのだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

消費者のストレージはますますクラウドへ移行する――Google Oneとライバルを比較

われわれはDropbox、Googleドライブ、Microsoft OneDriveなどのクラウドの利用料金がどんどん安くなっていくのを目撃してきた。昨日(米国時間8/15)、アメリカでGoogle Oneが公開され、テラバイトの当たりの月額がなんと半額になった。消費者向けストレージのクラウド化というトレンドをなお一層明確なものにしたといえそうだ。

TechCrunchのFrederic Lardinoisが記事に書いたとおり、 2TBのストレージの月額が9.99ドルになった。 Google One以前のGoogleドライブでは1TBがこの金額だったからGoogle Oneに参加するとストレージ容量が一挙に2倍になる。正直、1TBでさえ巨大な容量だ。

ではクラウド・サービスのライバルを比べてみよう。それぞれ特色は少しずつ異なるが、ともあれストレージのコストを比較してみる。

Google Oneが2TBで月額9.99ドルとなったことで、Appleのクラウドと並んでコストパフォーマンスがライバルのトップに立った。Googleが追いつくまでAppleがユーザーに最安のプロダクトを提供していたと聞けば意外に思うユーザーも多いかもしれない。もちろんMicrosoft OneDriveの場合はOffice 365がバンドルされており、WordやPowerPointなどのOfficeアプリを自由に使えるというメリットがある。多くのユーザーにとってこれは単なるストレージの提供に比べて大きな価値があるだろう。

とはいえ、クラウドのストレージ料金だけに関して言えば、AppleとGoogleは1TBあたり5ドルだ。これは安い。これはクラウド・ストレージのコモディティ化が進んでいることを示すと同時に、クラウド・ストレージで利益を出すためには途方もないスケールが必要だということを意味している。

Deep Analysisのプリンシパル・アナリスト、Alan Pelz-Sharpeはこの分野を長年観察してきたエキスパートだが、コンシューマー向けクラウド・ストレージの料金は常にゼロに向かって下落していくと指摘している。Pelz-Sharpeは「マスのスケールがなければ利益を出すことができない。このジャンルの企業はMicrosoft、Amazon、Googleによって非常に厳しい立場に追いやられてきた。Google
Oneの登場はこのトレンドを一層明確にした」と述べた。

たとえばDropboxは5億人のユーザーがいると推定されている。これほどのスケールがあってそのうちの一部でも1TBあたり8.25ドルの有料プランに参加してくれるなら事業として成立するだろう。Dropboxは今年2月に株式上場の準備としてS-1書式を提出しているが、それによれば一般ユーザーからの収入は10億ドルあるとしている。現在、スタートアップが新たにクラウド・ストレージの分野に参入するのは、不可能とまでは言えなくても極めて困難だろう。それでもなおかつ既存の巨大プレイヤー同士は激しくコストダウン競争を繰り広げている。

Google Oneのスタートはコンシューマー・クラウド事業における料金引き下げ戦争の新たな一歩といえる。ある朝突然、料金は据え置きのままでストレージ容量が倍に増えるというのはこの動きが容赦なく進んでいることの何よりの証拠だ。

画像:Vladimir_Timofeev / Getty Images

原文へ


滑川海彦@Facebook Google+

プログラマーのための即席ファイル共有ツールTransfer.shはコマンドラインで使う

今日このごろファイル共有ツールはあまりにもありふれている。Dropboxがあり、Google Driveがあり、iCloudがある。でも、コマンドラインで迅速容易にシェアしたい、と思ったらどうだろう? そこでプログラマーのRemco Verhoefは、Transfer.shを作った。

このサービスは要するにファイルダンプで、curlでtransfer.shにファイルを送ると14日間保存されて、その後自動的に削除される。たとえばぼくは、この画像を、自分の.bashrcにちょっとコードを加えることによってアップロードした。

このシステムは、よくある、必要な仕事だけをしてくれる小さくて巧妙なツールの例だ。Verhoefは、仕事中に簡単にファイルをアップロードしたいから、これを作った。

彼曰く: “ぼくがこのアプリケーションを作ったのは、sshシェルの中から誰かにログのデータをシェアする必要があったからだ。そこでぼくは、コマンドラインを使ってcurlでファイルを簡単にアップロードしたり変えたりできるWebアプリケーションを作った。コンテンツを暗号化したり、それらに対してgrepなどを使ったりもできる。curlは、ほとんど、どんなプラットホームにもあるからね。アプリケーションはオープンソースにしたから、ほかの人たちも使えるし、みんなぜひ、自分のサーバーを動かして使ってほしい”。

“ビジネスモデルなんか、ないよ。今でもサイトを動かしているのは、一種の礼儀だな。でも人気が出てきてユーザーが増えてるから、このまま動かすのは難しい”、とも言っている。彼には自分のデベロッパーショップがあって、ICOのセキュリティなど、いろんなプロダクトを売っている。

Verhoefは、彼のプラットホームのセキュリティは約束していない。単純に便利なツールであるだけだ。彼は、ファイルをgpgにパイプしてアップロードすることを勧めている。

このプロダクトが、善いことだけに使われていないことが、彼のチームの不満だ。

“たくさんの人たちが使っている。ログファイルをアップロードするために使っている人もいれば、隠し撮りビデオを全部エクスポートするやつもいる。マルウェアやボットネットなどの配布に悪用されることもある。でもそれらは、なるべく早く見つけてやめさせている。ポルノサイトがポルノ写真のサーバーとして使ったこともあるが、それを見つけたときは、写真を全部、犬と子猫の写真にリプレースしたよ”。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Dropboxの最新アップデートでモバイル上のコラボレーションがとてもスムーズに

Dropboxが今日(米国時間5/22)発表したアップデートで、モバイルからの利用機能が強化され、外回りの社員がDropboxに保存されているファイルの変更に追従しやすくなった。

典型的なユースケースを挙げると、チームで共有しているファイルについて、AさんがBさんの意見や承認を求めている、とする。Bさんがそれをちゃんとやってくれたか知りたいときには、メールやテキストメッセージを使う。これでは、なめらかなワークフローとは言えない。

そこでDropboxの最新のモバイルアプリでは、メールなどほかのアプリを使わなくても、Dropboxアプリの中で、誰がそのファイルを見たか、誰が何をやったか、などが分かる。

またファイルのレビューを求めるときも、通知が相手のホーム画面に出るから、メールなどを見る必要がない。

写真提供: Dropbox

DropboxのプロダクトマネージャーJoey Loiによると、チームメンバーのいろんなアクティビティがDropboxの中ですべて分かるから、すっきりとしたワークフローになる。“今回のアップデートでは、コラボレーションのループがDropbox内で完全に閉じることを考えた。コラボレーションとは要するにフィードバックのフローだから、Dropboxの外へ出なくても最後まですべてのフィードバックができる、ということだ。ぼくがファイルのどこかを変えたら、同僚はすぐにその変更が分かる”、とLoiは説明する。つまり、フィードバックループが閉じるのが早い。ループの形もシンプル。

また今度からは、頻繁に開いているファイルはホーム画面の上部に、Google DriveのRecentsのように出るから、仕事の流れがワンステップ早い。また、頻繁にアクセスするファイルをDropboxのリストの上部に集めることもできる。今の仕事で使っているファイルを、いちいち探さなくてもよい。

そして、メールで送ってきたファイルをドラッグ&ドロップでDropboxに入れることが、モバイルでもできるようになった。

ひとつひとつはどれも些細な変化だけど、これでモバイルのDropboxでファイルを扱うことが、ずいぶん楽になる。Loiはこう言う: “モバイル上でチームのコラボレーションを円滑にすることに、とくに配慮した”。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

DropboxがオンラインドキュメントサービスPaperにテンプレートを導入

Dropboxは、現在市場に出回るコラボレーションツールよりも、よりシンプルなものを提供することで、さらに大規模なビジネスに訴求しようとしている。同社はこの目的に迫るために、オンラインドキュメントツールPaperに、さらに便利な機能を追加した。

Dropboxの発表によれば、Dropbox Paperのために用意された新しいツールによって、ユーザーはテンプレートを使ったドキュメント作成を行うことが可能になった。Google Docsのようなオンラインドキュメントツールを作成しようとしている企業にとって、これは当たり前の仕掛けのように見えるかもしれないが、Paperのコアユースケースがどのように見えるべきかを検討するためには、実際の導入の前に慎重な検討とユーザーリサーチが行われた筈だ。Dropboxは利用者がプロダクトに親しみを感じるようになって欲しいと願っているため、より堅牢なツールの構築は、この新規公開企業にとっての大きな課題である。

このテンプレートツールは、他のツールでも見られるものとほぼ同様に動作する:Dropbox Paperのページを開くと、沢山のテンプレートからドキュメントを作成するオプションが提示される。Dropbox Paperの一般的な利用法としては、製品開発タイムラインやデザインスペックへの継続的な利用などがある、しかし同社はそうした利用法を、ドキュメントプレビューなどの新しい機能の統合を続けて、拡大していこうとしているようだ。Dropbox Paperは白紙の状態から始まったが、世の中にある沢山の類似製品を前にして、最終的には自分自身を差別化する手段を探し出さなければならない。

同社は、他にもいくつかの小さな機能を展開することを公表している。例えば、文書をピン止めしたり、プレゼンテーションを開始したり、テキストに書式設定したり、他の文書やステッカーを挿入したりする機能だ。Paperのコメントセクションには、新しい会議ウィジェットと書式オプションが追加された。さらには、最近利用したPaperドキュメントをアルファベット順に表示したり、iOS上でコメント通知を解除したりドキュメントのアーカイブを行ったり、ドキュメント間でToDoリストを集約したりするなど、数多くのささやかな便利機能アップデートを追加している。

Dropboxは今年の初めの上場を劇的に成功させ、望んでいた注目を集めたあと、2012年の最初の大ヒットIPOの1つとして、多かれ少なかれその勢いを維持してきた。そしてDocuSignなどがその波に続こうとしている。新規IPOに対する投資家の需要への窓が開かれたように見える中で、複数の企業たちがドアを出ようとしているのだ。

どうやらPaperはDropboxの思い描くパズルの重要なピースのようだ。同社は、消費者向け会社としてのルーツから出発して、シンプルなコラボレーションツールを中心とした会社を常に目指してきた。これは徐々に大きな企業に食い込もうと考える企業が(Slackなども同様だが)取ってきたアプローチである。そのシンプルなアプローチのおかげで、ユーザーたちを引きつけることはできたが、企業向けの取引はより利潤の高いものであり、Dropboxに対してより強力なビジネスを提供してくれるだろう。

Dropboxは、Google Docsや他のツールとの差別化を図り続けるだけでなく、オンラインドキュメントツールの中核的なユースケースを追求するスタートアップたちとも差別化を図らなければならない。例えば、Sliteは、組織内のwikiとGoogle Docsのようなオンライン文書システムによるノート作成機能を取り込もうとしている。このスタートアップは今月初めに440万ドルを調達した。また、ドキュメントの見え方そのものを完全に再考しようとするスタートアップCodaもあり、こちらは6000万ドルを調達した 。こうした中で、テンプレートは、ユーザーの手間を減らしシンプルなドキュメントツールのように感じさせ、大企業の注意を自社の製品に引きつけるための手段の1つである。

[原文へ]
(翻訳:sako)

Dropbox、上場2日目も株価7%アップ

Dropboxの株価が急騰を続けている。上場2日目も7%高で取引を終えた。

終値は30.45ドルで、完全希釈後の時価総額は130億ドルを超えた。

IPO価格が設定されたとき、果たしてDropboxが最後の調達ラウンドで達成した会社評価額100億ドルを超えられるのかという疑問があった。同社はそんな懸念を一夜のうちに一掃した。

上場直後の数日間は、このクラウドストレージ会社に対する投資家の需要を表す重要な指標になっている

おさらいしておくと、当初DropboxはIPO価格を16~18ドルと希望し、後に18~20ドルへと引き上げた。最終的には21ドルでIPOを果たし、28ドル以上で初日の取引きを終えた。そして今も上がり続けている。

通常主幹銀行はIPO価格を、IPO Popと呼ばれる初日の急騰で20%程度上がるように設定する。今の上昇ぶりは、Dropboxがウォール街の予想を上回ることを示唆している。これは、Dropboxが株価をもっと高く設定していればもっと多額の資金を得られたであろうという意味でもある

Dropboxは募集価格21ドルでIPOを実施して7億5600万ドル調達した。仮にそれを24ドルにしていれば、調達額は8億6400万ドルとなり、それでも新規投資家は大きな利益を得ていた

企業の財政が好転することを喜ぶ株式市場の投資家らにとって、これは間違いなく勝利だ。

Dropboxは直近の年度に11億ドルの収益をあげ、2016年の8億4500万ドル、2015年の6億0400万ドルから上昇した。

しかし、キャッシュフローは2016年以来黒字だが利益はまだ出ていない。昨年Dropboxは約1億1200万ドルの損失を出した。それでも、2016年の2億1000万ドル、2015年の3億2600万ドルと比べて利幅は改善されている。

月曜日(米国時間3/26)は株式市場全般に好調の一日だった。Dowは600ポイント急上昇し、Microsoft、AppleといったIT株の値上がりが理由のひとつだった。

Dropboxの筆頭株主は、共同ファウンダー・CEOのDrew Houstonで、IPO前に同社の25.3%を所有していた。Sequia Capitalの持ち株比率は23.2%だった。

Dropboxは、来週上場予定のSpotifyとはまったくタイプの異なる会社だが、投資家はこの好調なデビューをIPOの窓が「開いている」証拠と見ている。つまり、IT企業の新規上場に対する需要が高まっている、という意味だ。

最近、ZuoraPivotalSmartsheetもIPO申請したことを公表し、いずれも4月中の上場を予定している。そして本誌はDocuSignのIPOが近いというニュースもいち早く報じた。

ここ数年、テクノロジー企業のIPOは低調だったが、今年は変わる、と専門家は期待している。ニューヨーク証券取引所(NYSE)の国際上場責任者、John Tuttleは「市場環境が安定すれば好調の一年になる」と予想している。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Dropbox、上場初日の株価は36%アップ――終値は$28.48、100億ドル企業の仲間入り

今日(米国時間3/23)、Dropboxが上場を果たし、公開企業の仲間入りをした。1株当たり21ドルで売り出し、7億5600万ドルを市場から調達した後、株価は一時31.60ドルまで跳ね上がった後、28.48ドルで取引を終えた。上場初日のアップ幅は36%となった。

Dropboxのパフォーマンスは市場がクラウドストレージサービスの将来に強い期待を寄せていることを間違いなく示している。同社は上場売り出し価格の範囲を16ドルから18ドルに設定したが、その後18ドルから20ドルに上方修正していた。

またDropbox の終値は、前回の資金調達ラウンドの際の評価額、100億ドルを大きく超えたことを意味する。 希釈後のDropboxの時価総額は120億ドルとなった。

Dropboxの3017年の売上は11億ドルで、. 2016年の8億4500万ドル、2015年の6億400万ドルから順調な伸びを見せている。

2016年以降、キャッシュフローは黒字であるものの、損益では1億1200万ドル近くの赤字を出している。しかし赤字幅は2016年の2億1000万ドル、2015年の3億2600万ドルと比較すると大きく圧縮されている。

有料ユーザー1件当たりの売上は111.91ドルだ。

フリーミアムモデルを採用しているDropboxが一般ユーザー向け企業なのかエンタープライズ向け企業なのかについてはこれまでも議論があった。同社の登録ユーザーは5億人いるものの、有料ユーザーは1100万に留まっている。

Dropboxは創立1年後の2008年にTechCrunch 50カンファレンスに登壇したが、ステージでピッチを行ったCEOのドルー・ハウストンはデモの途中、WiFiの不具合で立ち往生した苦しい経験を語っている。この記事でそのときのビデオが見られる

上場時点でSequoia Capitalが発行済全株式の23.2%を所有し、最大の投資家となっている。SequoiaのサイトにはDropboxが2007年にシード資金を調達するために作成したスライドが掲載されている〔Original seed pitch from 2007というキャプションが付されている〕。2位の投資家はAccelで5%を所有している。

ドルー・ハウストンは25.3%を所有している。

Greylock Partnersも若干の株を保有しており、ジェネラル・パートナーのJohn Lillyは「Dropboxに投資したのはドルー・ハウストンとそのチームが仕事のやり方の将来に関して非常に明確なビジョンを持っていたからだ」と述べている。

しかしクラウドサービスを提供するライバルは数多く、Dropboxの市場では激しい競争が繰り広げられている。【略】

メディアではDropboxと比較されることが多いBoxに関してハウストンは「正面からのライバル関係ではない」と必要以上に重視しない姿勢を見せている。たしかに両者のサービスには類似点も多いが、ビジネスモデルではBoxはエンタープライズ寄りであり相当に異なる。Dropboxは投資家にこの点に留意するよう求めていた。初日の値動きを見ると、Dropboxの戦略は功を奏したようだ。

NasdaqのティッカーシンボルはDBXとなった。

われわれがDropboxの上場と将来像に関して討論した内容をポッドキャストとして下にエンベッドした。参加者のEric KimはGoodwater Capitalのマネージング・パートナーで、このレポートを執筆している

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Dropbox、IPOを明日に控え売出価格を21ドルに引上げか

本日(米国時間米国時間3/22)Dropboxは、明日の株式公開の売出価格を 当初の予定より高く設定すると発表した。時価総額は目標の100億ドルに近づく。

今週Dropboxは、IPO価格を1株あたり18~20ドルの範囲として時価総額最大80億ドル(完全希薄化した株数に基づけば約87.5億ドル)に設定すると発言していた。新しい価格設定によるとDropboxの評価額は約84億ドル(完全希薄化株数では90億ドル)になる。18~20ドルという価格範囲も当初提示された16~18ドルよりは上がっていた。DropboxはこのIPOで7億ドル以上の資金調達を見込んでおり、並行して既存株主が900万株以上を売りに出す。

つまりはDropboxが世間の関心を試したということで、実際関心は非常に高い。IPOの価格範囲を控えめに設定しその後その価格で買いたいという投資家候補がどれだけいるかを見て価格を上げる企業もある。Dropboxは明日、株式市場デビューを果たす予定で、時価総額を最大化するとともに、IPOポップとよばれる急騰(通常20%前後の値上がり)も確保したい。正式な価格は今日のSEC申請資料でわかるはずた。

順調に行けばDropboxは最後の調達ラウンドの評価額を上回り、消費者プロダクトスタートアップのブームの中、時価総額100億ドルに届く可能性がある。オンラインストレージの先駆者であるDropboxは、近年では大企業ユーザーを徐々に獲得して高収益な第2の事業も進めようとしている。同社は、まず企業内チームの顧客を取り込み、成長とともに会社幹部にリーチを伸ばす古典的なシナリオを展開しているが、Dropboxが普及するにつれ逆のパターンも可能になるだろう。

CNBC が最初にこのニュースを取り上げた

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Dropboxの上場予定価格は16-18ドル、時価総額100億ドルには届かず――別途Salesforceが1億ドル出資

先月、上場準備中であることを発表したDropboxは、今日(米国時間3/12)、証券取引委員会に提出したS-1書式をアップデートし、売出し価格を改定した。DropboxはNasdaqに上場して1株当たり16ドルから18ドルで3600万株を売り出す。18ドルの場合、売却総額は6億4800万ドルとなる。ティッカーシンボルはDBXが予定されている。

またDropboxは新たなインテグレーション・パートナーとなったSalesforceに対して株式で1億ドル分を売却すると発表した。時期は上場の直後で、1株当たり価格は「上場売り出し価格に準じる」という。

上場の正確な期日は明らかにされていないが、今月末となるはずだ。

上場時のDropboxの時価総額は上場プレミアムを考慮すると70から80億ドルになるとみられる。 これはテクノロジー企業として昨年のSnap以来の大型上場となる。しかしDropboxが2014年に3億5000万ドルのベンチャー資金を調達した際の会社評価額、100億ドルには届かない模様だ。

Dropboxはその将来性と共に上場が他のテクノロジー系大型上場のいわば風見鶏となるものして各方面から注目されている。この中でSpotifyはすでに上場を準備中だが、Airbnbのように上場に関してまだ何も発表していない大型スタートアップもある。

もちろんDropboxのようなクラウド・ストレージと宿泊の共有経済(Airbnb)や音楽ストリーミング(Spotify)では全くビジネスモデルが異なるので比較は無理だという意見もある。特にSnapが上場後大きな株価下落―30%以上―によって投資家に手痛い損害を与えたことを考えればDropboxの上場にも慎重にならざるをえないかもしれない。

しかしプラスとして、Dropboxはクラウド・サービスというコンセプトを一般ユーザーに拡大したパイオニアだという点が考えられる。モバイルの急速な普及、端末アプリの軽量化、インターネット接続の高速化といった要素によりユーザーがデータをローカルデバイスから追い出ししクラウドに保存する傾向が一気に強まった。これらのトレンドを追い風として、現在Dropboxには180カ国以上に5億人のユーザーがいる。

マイナスの面は、この5億人のうち、有料メンバーが1100万しかいないという点だ。2017年の売上は11億ドルと発表されている。これは216年の8億4500万ドル、2015年の6億400万ドルから十分にアップしているものの、依然としては利益を出すまでに至っていない。2017年の赤字額は1億1200万ドルだった。

ただし2016年の赤字額は2億1000万ドル、2015年は3億2600万ドルだったから大きく改善されている。しかしDropboxには無料ユーザーを有料ユーザーに転換するための効果的なプランがあるのかというのは重要かつ緊急性の高い疑問だ。これは黒字化を待つために投資家はどれくらいの期間忍耐を続けられるかという問題と関連する。

この点、Salesforceが自社サービスにDropboxをインテグレーションすると同時に1億ドルを出資するというのはこの上ない信任投票といえるだろう。またDropboxが設定した上場売り出し価格が控えめであることも信頼性を高めている。Salesforceは顧客関係管理をクラウド化するサービスだ。ティッカーシンボルをCRMとしてもいいくらいだし、ロゴにはブルーのクラウドがあしらわれている。スタートアップから出発して現在は確固たる大企業の地位を築いている。

SalesforceがDropboxと密接な関係を築くことになったのは短期的にDropboxのビジネスモデルにとって有利な材料なのはもちろんだが、中長期的にはDropboxにイグジットの可能性を与えるかもしれない。Salesforceはクラウド・ストレージ・サービスにおいて重要な地位を築こうと年来努力してきた

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+