クラウド会計のfreeeが経費精算APIをアップデート、外部サービスからワークフローを完結可能に

クラウド会計のfreeeが経費精算APIをアップデート、外部サービスからワークフローを完結可能に

freeeは10月7日、クラウド会計ソフトfreee(会計freee)の経費精算APIについてアップデートを発表した。今回APIアップデートにより、経費精算の申請の作成や申請に対する承認・差し戻しなどのアクションといった経費精算のワークフローに関して、最初から最後までAPI経由で完結できるようになった。

経費精算APIの新設・拡張により、「経費精算の申請」「会計freeeで作成された申請経路の利用」「申請に対する承認や差し戻しなどのアクションの実行」といった操作がAPI経由で可能。詳細は、開発者向けコミュニティ「freee Developers Community」の「会計freeeの経費精算APIの使い方」「会計freee APIリファレンス」といったドキュメントにまとめられている。

クラウド会計のfreeeが経費精算APIをアップデート、外部サービスからワークフローを完結可能に

また経費精算APIは、経費精算機能を提供している以下の会計freeeのプランで利用できる。

  • 個人: プレミアムプラン
  • 法人: ベーシックプラン、プロフェッショナルプラン、エンタープライズプラン
カテゴリー: フィンテック
タグ: freeefreee Developers Community日本(国・地域)

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会社設立に必要な書類を一括作成する「会社設立freee」がiOS対応スマホアプリを提供開始

会社設立に必要な書類を一括作成する「会社設立freee」がiOS対応スマホアプリを提供開始

会計・人事労務クラウドのfreeeは8月27日、3ステップで会社設立に必要な書類を一括作成する「会社設立freee」のiOS対応スマホアプリの提供開始を発表した。同アプリでは、必要項目に沿って入力するだけで、会社設立に必要なすべての書類を自動で作成。利用料金は無料(電子公告や電子定款サポートを利用する場合は費用が発生)。

日本で会社を設立する場合、11種類の書類の手配や作成から関係者の捺印、役所への提出手続きなど、手続きが多く煩雑となっている。また各種書類には同じ情報を何度も記載しなければならず、非常に非効率だ。

同社は、2015年6月に会社設立freeeをリリースし、3ステップで会社設立に必要な書類が作成できるプロダクトとして2万社以上の法人設立をサポート。新たな試みとなるiOS対応スマホアプリでは、ガイドに沿って必要情報を入力するだけで、会社設立に必要なすべての書類を自動で作成。提出までをユーザー自身で行える。なお、PCおよびAndroidでは、ウェブブラウザーで同サービスを利用可能。

会社設立に必要な書類を一括作成する「会社設立freee」がiOS対応スマホアプリを提供開始

会社設立に必要な書類を一括作成する「会社設立freee」がiOS対応スマホアプリを提供開始

また、会社のルールをまとめた定款という書類を公証役場で認証する手続きがあり、このとき定款の媒体を電子定款にすると、本来必要な収入印紙代を削減できる。会社設立freeeで設立手続きが完了すると、自動でクラウド会計ソフトfreee人事労務 freeeのアカウントを作成。設立当初からバックオフィスの最適化をスムーズに進められるという。

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会計・人事労務クラウドのfreeeがグローバルIPO、公開価格2000円で初値2500円、時価総額1200億円超え

会計・人事労務クラウドサービスサービス事業を展開しているfreeeは12月17日、東証マザーズ市場に上場した。主幹事証券会社は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、大和証券、メリルリンチ日本証券の3社。公募543万5200株、売り出し1204万1100株、オーバーアロットメント108万9700株。オーバーアロットメントとは、当初の募集・売出予定株数を超える需要があった場合に実施される株式の販売方法。主幹事証券会社が対象会社の株主から一時的に株式を借り、売出予定株数を超える株式を、募集・売出しと同じ条件で追加販売すること。

主幹事証券会社の顔ぶれからもわかるように、今回の同社の株式公開は国内の投資家はもちろん、海外の投資家に対しても募集・売出しなどを同時に行うグローバルIPO(グローバルオファリング)だ。過去には、LINEやメルカリなどが採った方法でもある。

同社の既存株主には、米国シリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルであるDCM(DCM V LPが11.6%、A-Fund, L.Pが6.84%.)のほか、日本や中国での投資を行っているインフィニティ・ベンチャーズ(IVP Fund II Aが5.04%、IVP Fund II Bが2.66%)、シンガポール拠点のベンチャーキャピタルであるPalace Investments(2.66%)が名を連ねるなど、グローバルIPOを意識した構成になっていた。

東証マザーズでの公開価格は2000円で初値はそれを500円超上回る2500円となった。12月17日10時現在の最高値は9時59分につけた2640円で、時価総額は1238億2900万円。現在は2630円前後で推移している。

同社は、「クラウド会計ソフトfreee」や「人事労務freee」などのスモールビジネス向けクラウドERP(統合基幹業務システム)サービスを展開している、2012年設立のスタートアップ。会計ソフトウエアや人事労務ソフトなど、中堅中小企業や個人事業主のバックオフィス向けSaaS(サービスとしてのソフトウエア)を開発・提供している。このほか「クラウド会計ソフトfreee」と連係した税務申告ソフト「申告freee」を会計事務所向けに提供している。起業家向けとして、起業時の書類を無料で作成できる「会社設立freee」や「開業free」や事業者用クレジットカード「freeeカード」などもある。

直近の業績は、2019年6月を決算期とする2018年度(2018年7月〜2019年6月)は売上高45億1600万円、営業損失28億3000万円、経常損失28億5000万円、当期純損失は27億7800万円。2020年度(2019年7月〜2020年6月)の予想は、売上高69億4100万円、営業損失28億7600万円、経常損失31億2700万円、当期純損失31億3500万円。

大幅な赤字上場となるが、SaaSビジネスに長けた海外ファンドが既存株主に入っていることから、今後の成長カーブがどのように描かれるのか注目だ。

フリーランス向け報酬即日払いサービスのyup先払いがfreeeとAPI連携

請求書を送るだけで報酬などを先に受け取れるフリーランス向け報酬即日払いサービスを開発・提供しているyup(ヤップ)は11月21日、クラウド型会計サービスを提供するfreeeとのAPI連携を発表した。yupは、TechCrunch Japanが11月14日、15日に開催したスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2019」のスタートアップバトルのファイナリスト。書類選考約130社の中から選出された20社の中の1社だ。

具体的には、「クラウド会計ソフトfreee」で作成した請求書情報を利用して「yup先払い」への申し込みが可能になる。会計freeeで作成した請求書であれば、請求書のPDFへのアップロードや必要情報を入力する手間もなく、わずか数クリックでyup先払への申し込みが完了する。

yup先払いはフリーランスの資金繰りをサポートするサービス

yup先払いは、取引先に送った入金前の請求書情報を登録すると、報酬を即日で受け取ることができるファクタリングサービス。手続きはすべてオンラインで完結するため、面談や書面でのやり取りが一切不要なのが特徴だ。

審査は最短60分で完了し、会員登録をした当日から利用できる、報酬を支払う側の取引先とyupが直接関わることはなく、利用者が取引先から実際の報酬が支払われた際に、その報酬をyupに支払うことで取が完了する。つまり、取引先から見るとフリーランスがyupを使っていることはわからないようになっている。

yupはフリーランスから報酬の10%を手数料として徴収することでマネタイズする。またyupが独自のアルゴリズムを駆使して、フリーランス側と取引先側の信用度をチェックするため、銀行やクレジットカードの審査とは異なり、フリーランス側の情報が信用情報機関に照会されることはない。

日本発の強いSaaSビジネスを作るには?SaaSビジネスモデルを7年の経験から徹底解剖

編集部注:この記事はfreeeのCEO、佐々木大輔氏による寄稿だ。佐々木氏はGoogleで日本およびアジア・パシフィック地域での中小企業向けのマーケティングチームを統括を経験した後、20127freeeを設立。Google以前は博報堂、投資ファンドのCLSAキャピタルパートナーズにて投資アナリストを経て、レコメンドエンジンのスタートアップALBERTにてCFOならびに新規レコメンドエンジンの開発を兼任した。freeeは「スモールビジネスが強くかっこよく活躍する社会」を目指し、「クラウド会計ソフト freee」などを提供する。

日本でもビジネスとして関心が高まるSaaS

freeeを創業してから7年以上が経った。創業当時はまだSaaSビジネスをどう評価すべきか、何を指標として伸ばすのか、そのノウハウはまだ日本にはなかっただろう。僕自身は、Googleの頃にSaaSビジネスについては少しだけ馴染みはあったものの実際に事業として運営をするのは、ほぼほぼ、初めてであった。よって、多大なる試行錯誤、海外VCとのディスカッション、海外の記事の読み漁りなどを重ね、SaaSビジネスについて理解を深めてきた。

海外では、SaaSの草分けとも言えるSalesforceは2004年より上場しており、SaaSビジネスモデルについての世の中への理解促進の活動を繰り返してきた。そして今や米国に上場する主要SaaS企業のリストだけでもこれくらいの大きなリストになっており、ビジネスが理解されることで、ビジネスモデルへの大きな期待が集まっていることが良くわかる。

SaaSのビジネスノウハウにおいても海外が先行している。最近では日本のSaaS業界の人も多く訪れるようになったSaaStr Annualというイベント(以前はサンフランシスコ、今はサンノゼで開催されている)に僕も数年前に訪れたが、SaaSの主にビジネス面をテーマとしてこれほど大規模なカンファレンスが行われているということ自体に、この業界に対する日本と海外での注目度に圧倒的な差を感じた。

そして、ついにここ数年、日本においてもSaaSが大きく注目を集める領域となってきた。SaaS企業への投資は圧倒的に増えているし、今年は、Sansan、スマレジ、Chatwork、カオナビなどSaaS企業の上場などがあり、日本にもSaaS分野の上場企業が増えている。

SaaSはテクノロジー業界における総合格闘技

SaaSは「テクノロジー業界の総合格闘技」とも言える産業であると、僕は日々思っている。技術、プロダクト戦略、営業やマーケティング、カスタマーサクセス、事業計画やシミュレーション、組織づくり、ファイナンス、など、あらゆる力を駆使して初めて顧客への価値とビジネスに結びつくのだ。

技術やプロダクト戦略は当然ながら最も重要なピースだ。「クラウドでソフトウエアを提供すること」自体が価値になるわけではない。例えば、会計ソフトの文脈で言えば、クラウド型の会計ソフト自体はfreee以前からも存在していた。しかし、freeeの登場によって市場が大きく変わったのは、単に「会計ソフトをクラウド化する」というコンセプトで参入したのではなく、「会計帳簿づけを自動化する、会計だけでなく、業務全体を効率化する」というこれまでの会計ソフトで焦点があたっていなかった価値を提供することができたからだ。

営業、マーケティング、カスタマーサクセスも当然重要だ。後述するように、LTV(生涯価値)ベースで従来とは異なる管理が求められるし、販売する製品は日々進化していくものであるので、個別の機能をアピールして販売するのではなく、コンセプトを理解いただき販売することが重要である。そして、販売後も、実際に使われていないと解約となってしまいビジネス上の価値がないことも当然ながら課題である。自然と強い顧客目線が求められるのが、SaaSビジネスの面白い部分だ。

また、後述する通り、SaaSビジネスには成長投資が求められ、中長期的に価値を生み出し投資を回収していく。故に、まとまった資金を確保できないとビジネスは成立しづらい。資金調達力や資金余力がなければ、ビジネスを支えられない。実は、この点は日本においてSaaS産業の立ち上がりが遅れた大きな理由の一つでもあると僕は考えている。最近、SaaSに対するVC投資が活発であることは大きな追い風だ。

SaaSビジネスは、しっかりシミュレーションすれば、将来が非常に読みやすいという大きな特徴があるため事業計画も非常に重要だ。個人的には若いころにPEファンドで、キャッシュフローモデルなどをつくりまくる仕事などをした経験などは大きく活きたし、計画や分析をしっかりできる状態になっていないと、将来の読みやすさを武器にできない。

このように、技術やプロダクト戦略を中心として、ビジネスのあらゆる部分がこれまで以上にチャレンジングな側面を持ち、それらを持ち寄って噛み合っていないと成功しない、強い組織力と総合力の求められる面白い分野だと思う。

SaaSがつくるソフトウエアの未来と「評価できない」というボトルネック

「あらゆる人々がパソコンやスマホに限らず、さまざまなデバイスからソフトウェアを操作し、自分や自分のビジネスに関するデータを見る、AIがインサイトを届ける」ということは今後、ますます当たり前になっていくであろうし、その際に「クラウド化」や「SaaS化」は重要な前提条件だ。

ここ20年くらいの間は、いわゆるホワイトカラーと呼ばれる人たちの中では、エクセルなどのスプレッドシートをいかに使いこなせるかは一つの重要なスキルであったが、ある程度の分析はスプレッドシートと格闘しなくとも、それこそスマートスピーカーに聞くだけで結果がでてくるようになっていくだろう。

SaaSはこのようなソフトウェアのパラダイム・シフトを牽引する産業であり、この産業が強いことは、そのマーケットのソフトウエア産業の実力値であるとも言える。SaaSビジネスが成長していくには、サービス提供とイノベーションをおこすために求められる様々な技術はもちろんのこと、ソフトウェアを育てる上で求められるビジネススキルや、それを取り巻く資本市場などのエコシステムが、そのマーケットにおいていかに充実しているか強く求められるためだ。

そういったエコシステムの形成において特に妨げとなる重要な事実は、会計ソフトの会社を経営する僕が言うのもおかしな話ではあるが、SaaSビジネスは、伝統的な決算書(すなわち会計上のP/Lやキャッシュフロー)からはなかなか正しくビジネスを評価できないこと、そして一般的に成長投資のための資金が必要という部分にある。

freeeは、会計や人事という、あまり業界を選ばないソフトウエアの領域で、個人事業主や小規模法人をターゲットとしたビジネスから急速に成長し、多額の資金調達も行い、今日では中堅規模の企業もターゲットとして販売活動に力を入れ、広い顧客セグメントを対象に急成長をしてきた。こんな経験を踏まえ、SaaSビジネスにおけるKPIを対象となる顧客セグメントの特性や僕たちの学びを交えながら解説していきたい。

SaaSで短期に会計上黒字化するには顧客を獲得しないのがベスト?!

SaaSでは、決算書にある期間損益ではなく、ユニットエコノミクス(顧客1件あたりの経済性)を見ながら投資判断することが非常に重要である。なぜそれが重要なのかをまずは見てみよう。

サブスクリプションビジネスであるSaaSにおけるキャッシュインとキャッシュアウトは次のようになる。

青で表されるキャッシュインはすなわち、毎月SaaSビジネスが頂けるソフトウェア利用料から原価を引いたものである。SaaSの原価としては、一般的にサービス運用のための原価(サーバー運用やカスタマーサポート)などが含まれる。

赤で表されるキャッシュアウトは、顧客獲得コスト(CAC:Customer Acquisition Cost)である。CACは顧客1件を獲得するためにかかるマーケティングおよび営業コスト。マーケティング費用と営業およびマーケティングに関連する当月の人件費を当月の新規顧客獲得件数で割ったものである。

つまり、サブスクリプション型であるSaaSモデルの特徴は、このようにCACを何ヵ月もかけて取り返すというところにあり、新規顧客獲得は先行投資的な性質を持つのだ。

(簡便のため、キャッシュインとキャッシュアウトという言葉を使っているが、会計上の粗利と販管費の関係と基本的には同じ構造である。キャッシュ・フローに関しては、1年分などの利用料を前受する場合などもあり、さまざまなテクニックがあるが、会計上の収益構造は原則にこのような構造となる)。

では、顧客1件あたりのキャッシュフローが上記のようになっていたとして、毎月1件ずつ顧客を獲得するとどうなるか、それが次の図だ。

青のキャッシュインは、毎月顧客が増えるにつれ増えていく。オレンジのキャッシュアウトは、毎月1件の新規の顧客獲得なので固定で毎月80かかる。このとき、既存の顧客からのキャッシュインが新規顧客獲得のためのキャッシュインを超える8ヵ月目で、このビジネスは会計上(もしくはキャッシュフロー上)黒字化することになる。新規顧客獲得コストを既存顧客からの売上でまかなえるかどうか、これがSaaSにおける会計上の黒字化の意味するところである。

ここには一つの面白い示唆がある。つまり、SaaSにおいて会計上黒字化を達成する最短の方法は顧客獲得をしない、ということになる。それではどのように投資判断をするべきなのか、次のセクションにて考えていきたい。

その時点でのサブスクリプションの実力値を評価するARR

サブスクリプションビジネスにおいて、いわゆる会計上の売上はトップラインを示す指標としては遅行指標である。オンプレのソフトウエアのようにライセンス販売の場合、販売時点で数年分の利用にかかる売上が会計上の売上として一括計上されるが、サブスクリプションの場合には利用月毎に売上が案分される。例えば、会計年度の最後の月に始まるサブスクリプション契約については、1か月分のSaaS利用料しか反映されないため、売上は期末時点でのSaaS企業の実力値を正しく評価できない遅行指標となる。

そのため、SaaSビジネスでは、その月の契約におけるその月のSaaS利用料の合計を年換算(12倍)した数値であるARR(Annual Recuring Revenue)をトップラインのKPIとしておき、その時点でのサブスクリプション契約の価値を評価する。

次のグラフは毎月ARRが5%成長する際のARRと会計上の売上の比較となる。

ARR成長のための3つの要素

ある期間におけるARRの成長は大きく3つに分けることができ、SaaSの事業計画を考えていく上では、大まかにはこの分解に則って考えるのが通常である。以下、それぞれについて解説するが、海外記事としてはこの SaaS Metrics 2.0がバイブルとも言える。

    • ①既存顧客の解約(Churn)によるARRの減少
    • ②新規顧客獲得によるARRの増加
    • ③既存顧客へのアップセルによるARRの増加

①顧客に価値を届けられているのか:Churn Rate(解約率)

SaaS企業は、顧客企業に見合った価値を提供できていないと容赦なく解約されてしまう。自分たちがしっかり顧客に価値を届けているかを白黒つけてモニタリングする指標として、Churn Rate(解約率)は重要な指標だ。

Churn Rate=当月の解約顧客数 / 前月末の顧客数

Month 0において、1000社の顧客がいたとして、月次のChurn Rateに応じてどれほど顧客が自然減してしまうかが次のグラフである。

このChurn Rateは通常は対象とする顧客が大きな企業であるほど低く、小さな企業や消費者であるほど高くなる傾向にある。

大きな企業がSaaS製品を利用する場合、適切な評価プロセスを通り、その企業のニーズにフィットするのかはしっかり検証されるし、導入に伴うデータ移行や各種設定、社内での運用ルール徹底などにコストがかかることもあり、大きな組織において頻繁にソフトウエアを変えることは得策ではない面がある。

一方、小さな会社では、SaaS導入自体のコストが低かったり、導入に際する評価プロセスが整っていないことも多く、導入後にフィットしない要因が見つかりやすい傾向にある。また、当然廃業の率も高まるため、一般的にChurn Rateは高めになる。

freeeでは、リリース後1年ほどは、このChurn Rateを一切見ていなかった。当時持っていたダッシュボードと言えば、課金の度に来るメール。解約の度にも来るようになっていたが、圧倒的に頻度は低かった。一年ほどすると、それなりに顧客基盤もできたので解約の絶対数が気になるようになった。そこで初めてChurn Rateを見るようになった。既存顧客基盤がまだ小さいときは解約数も絶対数では気になりにくいということだ。もちろん、もっと早く気づいておくべきだった。見るべきものは率だ。

新規顧客の獲得を一定とした場合、顧客ベースの増え方はChurn Rateによって大きく影響を受ける。Churn Rateが高いほど、顧客ベースの成長は当然スローダウンしていく。そのため、Churn Rateが高い場合、全体としてのARRの成長をするためには、より新規顧客の獲得を増加させたり、既存顧客からの売上拡大を増加させるなどの対応が必要となる。

コーホート別のChurn Rate

Churn Rateを改善するために、アクショナブルな示唆を得るための最も一般的な分析は、コーホート別のChurn Rate、もしくは生存率の分析である。顧客の獲得月毎のコーホートに分けて、獲得時から時間が経つにつれどのような生存曲線を描いているかを見るものだ。

例えば、営業手法が悪ければChurn Rateは増加する。値引きなどのインセンティブを武器にアグレッシブな営業をした月のコーホートの生存率が低いというようなことから検出できる。

一般的に、Churn Rateは、最初の更新時などのマイルストンまでの間で最も高く、その後はそれよりも低い水準に落ち着く。最初の更新時までのChurnは、販売の仕方やコミュニケーションあるいは、導入における課題が原因である可能性が高い。一方で最初の更新時以降のChurnはプロダクトやサポート体制の実力値が数値に表れる。

Revenue churnという考え方

ここでまとめてきたように、Churn Rateを顧客ベースではなく、金額ベースで見る見方もある。顧客ベースのChurnがCustomer churnやLogo Churnと言われるのに対して、こちらはRevenue Churnと呼ばれる。顧客ベースも金額ベースもどちらも見るべき重要な指標であるが、Revenue Churnは複数の料金プランを持っていたり、顧客企業のなかで何ユーザーがIDを持っているかで料金が大きく変わるSaaS企業において、より重要性が高い。

②新規顧客の獲得

一般的に急成長フェーズのSaaSにおける最も大きな成長ドライバーは新規顧客獲得からのARR増加である。前に触れている通り、新規顧客獲得は、会計上のP/Lには短期的にネガティブなインパクトがある。そのため新規顧客獲得に投資する判断のため、ユニットエコノミクス(顧客一件あたりの経済性)に着目するのが一般的である。このユニットエコノミクスを表す指標として、LTV/CAC(エルティーヴィートゥキャックとか呼ばれる)が非常に重要である。

顧客のLTV(生涯価値)

顧客1社あたりの生涯価値。(顧客の平均月額単価x粗利率)x平均ライフタイムで求められる。粗利率をかける、すなわち売上から原価分を除いて評価すべきである。ライフタイムは通常、平均ライフタイム(月)=1/(月次Churn Rate)で算出される。これは、同じChurn Rateが今のまま続いたら、この値に収束するという理論値である。

この計算手法は一般的には、LTVを過小評価する傾向にはある。なぜならば、コーホート別Churnの箇所で触れた通り、Churn Rateは契約の1年目などの初期段階でもっとも高い傾向にありがちであるからだ。つまり、製品利用後になんらかのミスフィット要因が見つかり、利用継続できないというケースが多く、一定期間安定利用が続いた顧客のみで見るとChurn Rateは相対的に低くなる傾向にある。一定期間利用した顧客の割合が高くなる(つまり、全顧客の中での新規顧客の割合が減る)につれ、Churn Rateは通常下がっていく傾向にあり、この傾向からのアップサイドは上記の計算式では捉えることができない。

SaaSの原価としては、一般的にサービス運用のための原価(サーバー運用やカスタマーサポート)などが含まれる。原価を抑えられればLTVはあがる。

グローバルレベルで見るとSaaSの上場企業の原価率は急成長フェーズで少しずつ原価率が下がってきて20〜30%程度に落ち着くことが多い。

freeeでは、当初原価率はあまり気にしていなかったし、それが正しいと今でも思っている。明確な指針として、AWSのサーバー代の節約のためのアクションをとる暇があったらユーザーのための開発をする、カスタマーサポートの原価を気にするよりは神対応をして一社でもハッピーカスタマーを増やすことの方が大事、としていた。原価率については、改善余地だけは大まかに認識しておいて、大きく資金調達をしてバーンレート(毎月失ってしまうキャッシュ額)が億単位になってから、向き合うでよいだろう。

LTV/CACへ着目した成長投資

このLTVがCACを上回るようであれば、顧客を獲得すればそのSaaS企業にとっては中長期的にプラスといえるので、可能な限り多くの新規顧客を獲得のための成長投資をすればよいというのがユニットエコノミクスの考え方だ。

ただし、実際にはSaaS企業は顧客獲得コスト(CAC)以外にも、プロダクト開発のための開発コスト(R&D)や、企業全般の管理コスト(G&A)を支払っている。そして、安定期には利益率を確保するという観点からも一般的には、LTV/CACが3以上で成長投資をすること望ましいとされている。

実際には、プロダクトマーケットフィットとGo-to-Marketがある程度確立するまでは、様々な試行錯誤が行われる。なので、新規プロダクトの投入時や新規セグメント参入時は、LTV/CACが低い状態でプロダクトの精緻化や販売手法の確立のための試行錯誤を続けることになる。この低LTV/CAC状態での投資が、ある意味SaaS業界における本来の先行投資とも言える。健全なLTV/CACにおける投資は健全なリターンの実現が見込める投資であり、成長投資である。

freeeの場合は、このLTV/CACは、Series Aの資金調達後、積極的にマーケティング投資をする中ですぐに見始めたメトリクスだった。Googleにて広告製品の中小企業向けのマーケティングをする中でも似たようなアプローチで投資判断をしていたことがきっかけであったが、当時はここまで広く使われている指標だと想像していなかった。LTVは原価を引いて算出するべき、といったことは、その後グローバル・スタンダードを学ぶ中で取り入れたことであった。

回収期間(Payback period)

LTV/CACは、さらにライフタイムと回収期間(Payback Period)に分解することができる。

回収期間はCACを「平均月額単価から原価を引いたもの」で割ったものであり、月額利用料の何ヵ月分でCAC(顧客獲得費用)を取り返すかを表すものである。

この回収期間はダイレクトに成長に必要な資金に関連する指標で、短ければ短いほど、同じ成長をしたときに短い期間で会計上orキャッシュフロー上の黒字化を達成できる。回収期間によるキャッシュフローへのインパクト(R&D投資やG&A費用は考慮していない)は下記の図でわかりやすいだろう。

freeeでは、この回収期間の重要性については、すでに頭で理解したり海外の様々な記事などや投資家との議論を中心に見聞きしていたものの、実際に強く意識し始めたり、重要性を体感するようになったのは、はじめて上位のプランを追加してからであった。違う単価のプロダクトがあることにより、回収期間に差が出てくることから、そのインパクトを実感したものであった。

③既存顧客へのアップセル(Revenue Expansion)とNet Revenue Retentionについて

既存顧客のアップグレードや、自社が提供する他のSaaS製品からの売上がRevenue Expansionの部分に該当する。一般的には顧客のエンゲージメントが取れた状態で営業やマーケティングができるため、この部分のARR獲得コストは新規顧客からのARR獲得コストに比べて低い構造にある。これがビジネス上のRevenue Expansionの魅力といえる。

大企業向けのSaaSなどの場合で既存顧客からの新規ARRの割合が高くない場合には、上記の新規顧客獲得のROIとしてLTV/CACを見るよりも、新規顧客も既存顧客も関係なく、売上1円あたりの獲得コストを見ていく方が実用性が高い場合もあるだろう。

Net Revenue Retention

近年注目される指標として、Net Revenue Retentionという指標がある。これは、あるコーホートからのある期間の売上が、その前期の売上の何%であったかという指標だ。同じコーホートだけを見るので、新規獲得は見ずに、Revenue ChurnとRevenue Expansionではどちらが大きいかを表すことになる。100%を超えていれば、Revenue ExpansionがRevenue Churnを上回り、100%以下であれば、Revenue ChurnがRevenue Expansionを上回るという構図だ。言い換えると、Net Revenue Retention が100%を上回れば、理論的には獲得した顧客からの売上が増え続けるということになる。

大企業向けで、組織の一部から使い初めて、その組織の中でどんどん広まっていくと売上が上がるという性質を持つようなSaaSの場合、特に Net Revenue Retention はよい数字になる(Atlassian、Zoom、SlackなどはNet Revenue Retentionの高い企業としてよく知られている)。

中小企業向けSaaSの場合には、アップセル余地がある程度限られるので、Net Revenue Retention が 100%を超えることは容易でないと言われるが、一方で、中小企業向けSaaSでは通常新規獲得の余地が非常に大きいという特性もある。

ユニットエコノミクスの代替指標

SaaSのユニットエコノミクスに関する指標は、上場企業であっても詳細に開示されていない場合も多い。その際に代替案として、Sales Efficiency という指標が多く用いられる。これは、(ある期間から翌期の間のネットでの売上成長額)/(その期間のセールス&マーケティングコスト)で表される。この指標のよいところは、成長において新規顧客獲得を重視するタイプのSaaSであっても既存顧客の売上拡大を重視するタイプのSaaSであっても、共通の尺度で図れるという簡便性がひとつである。もうひとつの利点として、現時点で日本のSaaS企業において、セールス&マーケティングコストとして切り出して開示しているケースはレアである(広告宣伝費だけが区分開示されていて、セールス&マーケティングに係る人件費等が含まれない)が、海外のSaaS企業であれば必ず開示している項目であるため、上場企業であればほぼ必ず比較可能な指標となっているという点だ。分子の売上成長額はサブスクリプション売上のみを利用するべきであろう。

R&D投資とG&Aコスト

ここまでのLTV/CACというフレームでは、獲得コストの回収という観点で考えられているものの、実際にはSaaS企業は顧客獲得コスト(新規顧客獲得が中心の会社では、セールス&マーケティングコスト)に加えて、R&D投資やG&Aコストなどの費用をかけていることを加味していなかったが、事業計画という観点ではR&DやG&Aについても当然加味するべきである。これらを加味することで、顧客獲得コストの回収という意味で考えてきたキャッシュフロー上や会計上の黒字化はさらに時間がかかる傾向にあることに注意が必要である。

R&D投資

シード~アーリー期のスタートアップにおいては、R&D投資はボトムアップだけで決める(何を開発したくて、そのためにどれだけの投資が必要かで考える)ことが多い。財務面をしっかりと管理するようになると、売上のx%程度という基準を持っておくというのが一つの考え方になる。

海外SaaS企業で、ある程度成熟期にはいると売上の15%-40%くらいにおいている会社が多い。売上の成長率が高い段階では高めで、成長率が下がるにつれて開発投資の売上に対する比率も下がってくるというのが一般的だ。

freeeでも、開発投資の計画はどのようにつくるべきか非常になやんだ。常にやりたいことにはきりがないというのがスタートアップの本音であるが、かといって無限の投資をする訳にもいかない。そこで数年スパンで開発投資の対売上比率のゴールを決め、それをひとつの基準として考え始めるようにしたところ考えやすくなった。もちろん、そのようなターゲットに制約されずに考えるべきタイミングもあるだろう。

G&Aコスト

G&Aコストは海外の上場SaaS企業の場合、売上の10%〜20%くらいの範囲となっている。こちらは主にコーポレート部門の人件費や経費だ。

成長投資のインパクト、どれだけの成長率を支えられるのか

ここまで、ARRが増えるメカニズムとユニットエコノミクスについて議論をしてきたが、ユニットエコノミクスに加えて、キャッシュフローに大きなインパクトを与えるのは、冒頭でも振れている通り、売上成長率(特に新規顧客の成長率)である。

 

次のグラフは、次の3つのシナリオにおいて、どのような売上と営業利益をもたらすかを図示している。

      • シナリオ1:新規顧客からの売上が毎年200
      • シナリオ2:新規顧客からの売上が初年度300で毎年100ずつ増える
      • シナリオ3:新規顧客からの売上が初年度300で毎年300ずつ増える
      • すべてのシナリオにおいて、顧客獲得コストだけでなく、R&Dコスト、G&Aコストを売上に対して固定の割合で想定

ここから明らかになるのは、成長率が高ければ高いほど、赤字の期間が長くなるが長期的な売上や利益は圧倒的に大きくなるという構図である。だからこそ、SaaSで大成するには、ユニットメトリクスにより成長投資の質を担保した上で、将来の成長のために大きな投資をしていく必要があり、そのための資金調達環境があることが非常に重要なのだ。

salesforce.comは現在でもP/Lの利益よりは、成長率を中心においた戦略をとっており、継続的な成長を実現しているが、このように科学的に成長を管理し、そのような管理に基づき、積極投資を続けていくという考え方が根付いていくことは、今後の日本のソフトウエア産業の進化において、非常に重要なカギになっていくと考えられる。

最後に

以上、本稿ではSaaSビジネスモデルの特性、SaaSビジネスにおける主要KPI、SaaSビジネスにおける投資の考え方について、freeeの経験を踏まえつつ紹介してきた。今後、日本国内においてもSaaSビジネスはさらに活況を呈し、ソフトウェア産業の進化を担っていく上で、このビジネスモデルについての本質がより広く理解されていくことは非常に重要だと考えられる。本稿がその中での一助となれば、非常に嬉しく思う。

クラウド会計システムのfreeeが新元号「令和」への対応を発表

5月1日から使用される新元号「令和」について、クラウド会計システムなどのサービスを提供するfreeeが、対応方針と対応スケジュールを発表した。

freeeのサービスは基本的にすべてクラウドベースなので、ユーザー側での対応を必要とせず、無償かつ自動的に新元号表記に対応する。なお、各種帳票への新元号の対応は、原則として管轄する省庁・市区町村などの対応方針の発表後になる予定とのこと。

サービス別詳細の対応箇所とスケジュール(現時点)

  • 会計freee
    5月以降順次。元号表記のある各種出力帳票を改修。実際には、帳票フォーマットが確定次第の順次対応になる予定。
  • 会計freee
    年内対応予定。インポート・エクスポート機能。
  • 人事労務freee
    5月以降順次。元号表記のある各種出力帳票を改修。実際には、帳票フォーマットが確定次第の順次対応になる予定。
  • 人事労務freee
    5月1日対応予定。入力フォーマットを改修。
  • 申告freee
    5月以降順次。申請書類すべてを改修する。実際には、帳票フォーマットが確定次第の順次対応になる予定。
  • 会社設立freee/開業freee/税理士登録freee
    5月以降順次。申請書類すべてを改修する。実際には、書類変更の発表があり次第の対応になる予定。

確定申告に必要な書類をLINEが教えてくれる「確定申告の書類診断 by freee」が2月27日にスタート

freeeは2月25日、LINE Payと共同で確定申告書作成時に必要な書類を診断する機能「確定申告の書類診断 by freee」を開発し、2月27日から提供することを発表した。確定申告が必要なユーザーがスムーズに作業できるように支援する。

同機能は、LINEのトーク上で15問の質問に答えるだけで確定申告に必要な書類がわかるのが特徴。初めての確定申告はもちろん、昨年副業を始めた、6カ所以上の自治体にふるさと納税した、住宅を購入したので住宅ローン減税を受けたい、といったさまざまなケースに対応している。

なお、飲食・小売・美容などの店舗運営に従事しているユーザーには、LINE店舗経理内の「LINE確定申告診断」機能で確定申告書類診断を行うことを案内している。

2018年の確定申告の期限は3月15日。最近では副業を認める企業も増えており、企業勤めのビジネスパーソンが確定申告するケースも増えてきた。ギリギリになって焦らないよう、まずは確定申告の書類診断 by freeemを使ってみるのもいいかもしれない。

人事労務freeeがSlackと連携、勤怠管理・年末調整をよりスムーズに

バックオフィス業務効率化のソリューションを提供しているfreeeは11月6日、同社のクラウド型人事労務ソフト「人事労務freee」がビジネスコラボレーションツール「Slack」との連携を開始したことを発表した。

人事労務freeeは10万事業所以上が利用する、給与計算や労務管理を大幅に効率化するHRプラットフォーム。給与明細作成や年末調整、入社手続きから勤怠管理まで対応している。同社はこれまでにも「クラウド会計ソフトfreee」とSlackの連携を発表していたが、今回発表された人事労務freeeとの連携によりさらなる「人事労務領域での利便性向上」が実現されるという。

人事労務freeeとSlackの連携で可能になることは以下のとおりだ。

  • Slackで勤怠打刻を行い、人事労務freeeに反映させる
  • 人事労務freee上の月次勤怠情報をSlackで参照する
  • 給与明細の発行通知をSlackで受け取る
  • 年末調整に関連した人事労務freee上の入力ステータスに応じてSlackで通知を送る

多くの労務担当者は給与計算前に従業員に勤怠を入力してもらうことに時間がかかると頭を抱えていた。だが今回の連携により日本でも多くの従業員が使っているであろうSlackから「出勤」や「退勤」「休憩開始・終了」などの勤怠打刻を簡単に行うことができるようになるため、入力漏れの防止につながることが見込める。それにより、労務担当者は僕みたいに(笑)勤怠打刻を失念する従業員に対して入力をリマインドする頻度が少なからず減るため、「締め日に間に合うように給与計算できる」など業務の軽減や効率化につながる。

また、連携では勤怠管理だけでなく年末調整の情報管理も効率化。年末調整では労務担当者が全従業員の情報を一斉に集める必要があるし、何せ“年に一度のイベント”のため、従業員から不明点などに関する問い合わせが殺到することも想定できるだろう。ミスや勘違いを防ぐためにも“密なコミュニケーションが”必要となってくるわけだ。今回の連携により必要情報の入力依頼などの通知をSlackで送ることが可能となるので、労務担当者はよりスムーズに年末調整作業を終えることができる。

freeeは今回の発表に際し、「今後も“オープンプラットフォーム戦略”のもと、APIを活用した外部サービスとの連携を強化していく」とコメントしている。

Slackの日本語版がリリースされたのは2017年の11月17日。その日に開催されていた「TechCrunch Tokyo 2017」に同社CTOのCal Henderson氏が登壇し、ローンチを発表した。報道によると2018年6月の時点で日本におけるSlackのDAU数は50万以上で世界2位。外部との連携などを通じて日本でもより“必要不可欠”なツールになっていくであろうSlackから今後も目が離せない。

freeeが65億円の追加増資、LINE・三菱UFJ銀行と連携強化

右からfreee代表取締役CEOの佐々木大輔氏、取締役CFOの東後澄人氏

クラウド会計ソフト freee」などを提供するfreeeは8月7日、合計で約65億円の追加増資を発表した。第三者割当による資金調達で、引受先はLINE、三菱UFJ銀行、ライフカード、海外ファンドなど、合計で6社。今回の増資で累計資金調達額は約161億円となる。

freeeといえば7月2日に五反田にある同社オフィスで初となる戦略発表を開催し「スモールビジネスを世界の主役に」という新たなミッションを披露したばかりだ。今後はそのミッションを達成するため、LINEならびに三菱UFJ銀行とは連携も強化し、新サービスならびにプロダクト開発への投資を進める

創業者で代表取締役CEOの佐々木大輔氏ならびに取締役CFOの東後澄人氏はTechCrunch Japanの取材に対し、同社は今後も「開発を加速させていく」と語った。

「これまでは(バックオフィス業務などの)効率化を加速させるのがミッションだった。これはfreeeに期待されていることなのでやり続ける。それに加えて、これからはビジネスを伸ばす支援をしていく。その会社が本業で動いている部分においても価値が提供できるサービスをやっていきたい」(佐々木氏)

東後氏は「サービスとしてできることを拡充していくためには中長期的な開発への投資が必要だ」と説明。今回調達した資金は今まで過去7回行なった調達以上に開発に充てられるのだという。

大きく投資する開発対象は3つあり、その1つがこれまでやってきたバックオフィス業務の自動化ならびに経営の見える化を加速させること。最近だとfreeeは7月2日に財務データを活用する「予算・実績管理機能」を新たにリリースし、財務・経営データを自動分析・集約した上での可視化を実現しているが、更なる領域での自動化が期待できそうだ。

2つ目はスモールビジネスに対する資金調達の支援。freeeに蓄積されたデータをうまく活用することによって、最適なパートナーから最適な手段で最適な条件で資金を調達することが可能となるシステムの構築を目指している。

3つ目はフロント業務に近い部分の業務の効率化。freeeといえば会計・給与計算などバックオフィス業務の効率化のためのツールというイメージが強いが、今後は在庫管理やプロジェクト管理などといった、よりフロント業務に近い領域のオートパイロット化を目指していくという。

LINEとの業務提携に関して、「今後は共同でサービスを開発したり、共同のサービスを展開するなども考えていければと思っている」と東後氏は話した。freee は2018年5月、「freee 開業応援パック」に、LINEが提供する店舗・企業向けのLINEアカウント「LINE@」を新規特典として追加したと発表している。今後の業務提携に関して、「LINE@のユーザーに対しfreeeを提供、freeeユーザーに対しLINEのサービスを提供することが直近まずやれること」だと東後氏は語った。

また、freeeは2017年5月に三菱UFJ銀行とのAPI連携を発表したりこれまでも業務提携を行なってきたが、連携をさらに強化していく。詳しいサービス内容は不明だが、「決済面でよりオンラインで完結するようなスペースをお客様に提供していくことは双方にとって大きなメリットとなる」と東後氏は話した。

freeeはサービス提供開始から約5年で利用事業所数が100万を突破、「BCN RETAIL- 3強が戦うクラウド会計ソフト」によるとクラウド型会計ソフトおよび給与計算ソフトのシェアでNo.1。佐々木氏は「今回調達した額は日本の中ではかなり大きく、時価総額も結構な額になっている。上場をちゃんと選択肢としてとれるように、準備を進めている」と述べた。

クラウド会計ソフトのfreeeが「予算・実績管理機能」をリリース、「スモールビジネスを世界の主役に」

freee代表取締役の佐々木大輔氏

会計の専門知識がなくても経理をまとめて効率化できる「クラウド会計ソフト freee」を提供するfreeeが7月2日、財務データを活用する「予算・実績管理機能」を新たにリリースした。

同社はこれまで会計freeeを提供することで経理業務の効率化や新しい時間の創出を実現してきたが、「さらなるお客様への貢献」を目指し、サービスの最重要価値を「時間創出から利益創出へシフトする」と宣言。そのために必要となるツールがこの予算・実績管理機能だという。

新ツールは「スモールビジネスを世界の主役に」という同社の新たなミッションのもと、開発された。代表取締役の佐々木大輔氏が同日、2012年の創業以降初となる事業戦略発表でそのように語った。

同氏によると「世の中の99パーセントの企業は中小企業」だが「労働生産性は大企業の半分くらい」しかなく、テクノロジーの浸透度、クラウドサービスの利用率、ウェブサイトの保有率も大企業にくらべると「圧倒的にまだまだ」だという。

新ツールの提供を皮切りに「あらゆるスモールビジネスが経営企画をできる」ようにし、大企業と比べても「スモールビジネスのほうが強くてスマートでかっこいい」と思われる時代をつくりたい、と同氏は意気込んだ。

同ツールは法人向けの新料金プランである「プロフェッショナルプラン」にて利用することが可能だ。20〜100名からなる法人が対象となっている。

予算入力機能を使うと勘定科目ごとに予算を作成することができる。前年対比や構成比を確認しながらの作成、また、月別に作成することも可能だ。

実績比較機能はfreeeに反映された実績を財務諸表とグラフにリアルタイムに反映し、それぞれ予算との比較が行える。グラフは利益、売上高、販管費、月次など様々な切り口での表示が可能だ。また、月次の予算達成度を自動分析し年間の着地予測を確認することもできる。

同社は同日、新ツールに加えて収益性管理が行える「エクセルアドイン」機能を2018年9月にリリースするとも発表した。会計freee上にあるデータをエクセルの任意セルに自動連携することが可能になる予定だという。

国税庁による平成28年度分の会社標本調査によると国内企業のうち赤字企業の割合は6割を超えており、法人の多くは中小企業だ。このような状況だからこそ「計画と実績を比較しつつ経営改善に向けて迅速かつ最適な意思決定ができる環境を中小企業にも提供することが重要だ」と同社は考えている。

freeeにAIが会計上のエラーを自動チェックする新機能、今後は修正提案の自動化も

近年さまざまなWebサービスの登場によって、これまで手間のかかっていたアナログな作業の効率化、自動化が進みはじめている。「クラウド会計ソフト」の知名度が増してきている会計の領域は、まさにこの代表的な例といえるだろう。

クラウド会計ソフトといえば、銀行口座と連携することで入力や仕分けを自動化したり、領収書などのデータをスキャンすることで電子化したりなど、「入力業務」の負担を大きく削減してきた。それだけでも大きな効果があるが、会計業務にはテクノロジーによってさらに効率よくできる部分がまだまだ残されている。

クラウド会計ソフト freee」を提供するfreeeが5月28日にリリースしたのは、会計上のエラーを自動でチェックする「AI月次監査」機能だ。同機能は試算表の作成に必要な月次監査業務を効率化するもので、まずは会計事務所向けに提供する。

会計上のエラーを自動でチェック

月次監査とは、会計士や税理士が毎月顧問先の企業に対して行っている業務のひとつだ。残高試算表や仕訳帳をチェックし、請求書や領収書、立替経費などと照合を行った上で、月次試算表を確定。それをもとに経営や経理処理上のアドバイスを行い、月次報告書としてまとめて顧問先に送付する。これらの一連のプロセスを指す。

税務においてはもちろん、経営状況を把握するという意味でも重要な業務である一方で、freeeの担当者によると「これまではアナログかつ属人的な側面が強く、効率化のニーズがあった」という。具体的には資料のチェックがひとつひとつ目視で行われ、スタッフによって知識のレベルやチェックの質がバラバラであることも珍しくないそうだ。

「たとえばあまり知見のないスタッフが担当すると、同じような間違いを複数繰り返してしまっていることもあるが、それをアナログで見つけるのはかなり難しい。あらかじめルールを設定することで、ある程度機械的にチェックをすれば負担は軽減できる」(freee担当者)

AI月次監査機能では、貸借対照表や損益計算書の各勘定科目について「税務上のルールとの相違」「freeeを利用する際に発生しやすい作業漏れや誤り」「過去との変動率が大きいなどの異変」に基づいて、修正の必要がありそうな仕訳を自動で探し、ハイライトする。

また該当する仕訳を修正すると「類似の仕訳」も自動で判定。これによって知識のスタッフが誤った仕訳をまとめて登録してしまっていたとしても、漏れなく修正点を探しやすくなる。

「入力業務」だけでなく「チェック業務」も自動化

今後は会計事務所がチェック項目を柔軟にカスタマイズできるようにするほか、エラーをチェックするだけでなく「どのように修正すべきか」を提案するところまで対応する予定。従来力を入れていた「入力業務」の自動化に加え、「チェック業務」の自動化をさらに進めていくという。

「ユーザーからも『データの電子化や自動仕訳など入力業務は自動化されていて楽だけど、それ以降のフローはまだまだ効率化できそう』といった声はあるし、会社としても強化していきたいという思いは強い」(freee担当者)

今回のAI月次監査機能については会計事務所向けとなっているものの、今後は一般ユーザー向けに機能を調整して提供していくを検討している。また、たとえば資金繰り計画の自動化など、経営の意思決定をサポートする機能にもAIを活用していく計画もあるという。

今後はこれまで以上にAIが会計業務をサポートする時代へと突入していきそうだ。

freeeがAPIエコノミー形成に向け「オープンプラットフォーム戦略」発表、バックオフィス効率化から全社最適化へ

クラウド会計ソフト freee」や「人事労務 freee」などバックオフィス業務を効率化するクラウドサービスを複数展開するfreee。同社は5月15日、APIを活用した外部サービスとの連携を強化しAPIエコノミーの形成を目指す「freee オープンプラットフォーム」戦略を発表した。

今後は財務会計や人事労務分野以外のクラウドサービスともAPI連携を進めることで、クラウド上にあるさまざまなデータの一元管理、バックオフィス部門を超えた全社での業務最適化の実現を目指していく方針。開発者向けのコミュニティサイト公開、API連携の専任チーム設置など、サポート体制も強化する。

また具体的な連携サービス拡充の第1弾として、セールスフォースやサイボウズなど販売管理領域における連携パートナー8社を発表。営業部門と経理部門の連携をスムーズにし、債権管理業務の効率化を推進する。

複数クラウドサービスの導入により生まれた、新たな課題の解決へ

freeeの新戦略の背景にあるのは、クラウドサービスが普及したことによって生じた新たな非効率だ。ここ数年で業務効率化や生産性向上を目的に、クラウドサービスの導入が加速。2011年から2016年の5年間で普及率が2倍以上になっているという。

クラウドの導入によりチームや部門単位でデータの共有が進み効率化が進んできた一方で、1社当たりの導入サービス数も増加すると「システムごとにデータがバラバラになっていること」が新たな課題になるケースが増えてきた。つまりチーム単位では効率的だけど、各ツール間は連携できていないためにデータの転記業務や二度打ちが発生し、会社全体で見ると最適化がされていないという課題だ。

この状況を解消する手段として各システムをAPIでつなぎ、データを一元管理できるようにするという動きが進んでいる。freeeでも会計freeeをリリースした2013年からパブリックAPIを公開。その後も請求書APIや人事労務APIなどAPIの公開範囲を広げてきた。

とはいえ当初はクラウドサービスが今ほど普及していないこともあり、連携するサービスや領域もある程度限定的なものだったという。「ここ数年間でマーケットが大きく変化している。クラウドサービスを複数導入する企業も珍しくなくなり、(freeeでこれまでやってこなかったような領域の)他サービスとの連携の要望も増えてきた」(freee担当者)

第1弾は販売管理システムとの連携強化から

そのような流れを受けて、今後freeeでは会計、人事労務の領域で各種APIを順次公開していくとともに、販売管理や勤怠システム、グループウェアやコミュニケーション領域の各サービスとの連携を強化していく。

「これまでのAPI連携では経理部や人事部などバックオフィス領域の効率化に取り組んできた。これからはfreeeを使う前の工程や、freeeでは対応していない工程で使われているサービスとの連携を進める。経理や人事のためのサービスから、全社最適のサービスを目指していきたい」(freee担当者)

freeeでは連携サービス拡充の第1弾として、販売管理領域に取り組む方針。以下8社のパートナー企業と連携を開始し、営業部門と管理部門における債権管理業務の効率化から始める。

  • セールスフォースドットコム「Salesforce Sales Cloud 」
  • サイボウズ「kintone」
  • ゾーホージャパン「zoho CRM」
  • 日本オプロ「soarize」
  • ジオコード「ネクストSFA」
  • トレードシフトジャパン「Tradeshift」
  • レッドフォックス「cyzen」
  • 三和システム「NT-golf」「NTG-head」

また並行してAPI連携の専任チームによるサポート体制の強化や開発者コミュニティの形成にも力を入れる。その一環として開発者向けポータルサイト「freee Developers Community」を公開。freee APIを利用する開発者に対してテクニカルサポートや他の開発者に質問・相談できる仕組みを整えるほか、ハッカソンやミートアップを通じてエンジニアコミュニティを広げていく方針だという。

freeeが今回発表した新戦略の狙いは、API連携を通じてサービスの付加価値をあげていくこと。ただその先には「APIマーケットプレイス」という形で、APIを使ったマネタイズなどを進めていく展開も可能性の一つとして検討していくという。

たとえば2018年1月にはKDDIが、APIプロバイダーとAPI利用者をつなぐマーケットプレイス「KDDI IoTクラウド API Market」を公開している。これと似たように、将来「freee API マーケット」のようなものが生まれてくるのかもしれない。

 

freeeが「民泊を始めたい人」をサポートする新サービス、事前届出開始の3月15日に公開へ

クラウド会計ソフトなど複数事業を展開するfreeeは3月12日、⺠泊事業を始めたい人向けの新サービス「⺠泊開業 freee」を発表した。民泊事業の事前届出が開始する3月15日より、同サービスを提供する予定だ(サービスサイトも同日公開)。

「6月15日の民泊新法(住宅宿泊事業法)施行」は2018年上半期において、多くの人が注目するトピックのひとつだろう(スタートアップの動向に関心があるTechCrunch読者であればなおさら)。

TechCrunch Japanでも「SUUMO」を運営するリクルート住まいカンパニーがAirbnbと提携して民泊事業を展開することを1月に紹介したが、すでに多くのプレイヤーが参入を発表している。

国内の大手IT企業では楽天がLIFULLとタッグを組んで、民泊事業会社の楽天LIFULL STAYを設立。ヤフー傘下の一休は2016年から11月から「一休.comバケーションレンタル」を運営している。スタートアップも「Relux」提供元のLoco Partnersが「Vacation Home」を、「スペースマーケット」提供元のスペースマーケットが「スペースマーケットSTAY」を通じて民泊事業を本格化する。

そのほかJALも「STAY JAPAN」を運営する百戦錬磨と資本・業務提携をして民泊領域に参入する動きが見られるなど、この盛り上がりは今後も続いていきそうだ。

2月末には観光庁が民泊制度のポータルサイトを開設。6月の新法施行に先駆けて、まずは3月15日から住宅宿泊事業の事前届出が開始する。これを機に民泊の間口が広がり、多くの法人・個人が民泊ビジネスを始めることも予想される。

ただし民泊新法によって民泊を始めやすくはなるものの、ポータルサイトの説明を見る限り届出に必要な手続きにはある程度の手間がかかるだろう。この届出手続きを中心に、個人事業主の開業手続きや民泊サイトへのホスト登録までを一気通貫でサポートしようというのが、冒頭で紹介した⺠泊開業 freeeだ。

ポータルサイトで紹介されている、届出の際に必要な添付書類(個人の場合)

届出手続き、開業手続き、ホスト登録を一気通貫でサポート

民泊開業freeeの主な機能は「住宅宿泊事業(民泊)の届出手続きサポート」「個人事業主としての開業手続き書類の作成」「⺠泊予約サイトSTAY JAPANへのホスト登録」の3つだ。

民泊の届出手続きのサポートについては同サービス上で必要書類が確認できるほか、行政が提供する「⺠泊制度運営システム」へのリンクを設置。リンク先から書類を作成する流れになる。そのためリリース時点では、ものすごく使い勝手がいいとまでは言えないかもしれない。

ただ担当者によると「今後は民泊開業freee上で必要書類の作成機能を提供することも検討していく」とのことで、この機能が実装されるとより使いやすくなりそうだ。

個人事業主としての開業手続き書類の作成は、以前から提供している「開業freee」を民泊用に少しカスタマイズした形で提供。簡単に質問に答えれば、開業届や青色申告承認申請書など各種書類を自動で作成できる仕様になっている。

またfreeeではサービスリリースにあたって百戦錬磨との業務提携を締結。STAY JAPANへのホスト登録をサポートする(登録ページへのリンクを設置、リンク先でホスト登録をする)。

民泊に興味はあるけれど、何をやったらいいか全くわからないという人も一定数はいるはず。そのようなユーザーにとって、民泊開業freeeは順番に沿って作業を進めると最低限やっておくべきことが一通り完結するため、便利なサービスといえるだろう。

必要書類の作成が同サービス上だけでは完結できない点や、民泊サービスのホスト登録がSTAY JAPANのみの対応となっている点などについては、今後さらに良くなる余地もありそうだ。

仮想通貨の確定申告サービスが続々公開――freeeが損益計算ツールをリリース、マネフォも支援プログラム

2018年に入ってもう1カ月が過ぎた。いよいよ今年もあのイベントがやってくる。そう、確定申告だ。

毎年この時期はバタバタする人が増えるけれど(まさに僕もその1人だ)、今年はビットコインを中心とした「仮想通貨」が急速に広がったことで、例年以上に混乱する年となるかもしれない。

国税庁は2017年9月に「ビットコインを使用することにより生じる損益は、原則として雑所得に区分する」という旨のタックスアンサーを発表。12月には所得の計算方法に関するガイドラインも公開した。

ただし大枠については見解が示されているものの、完全に制度が整っている段階とは言えず、「正直どうしたらいいのかわからない」という人もいるだろう。

詳しくは後述するが、そのような「仮想通貨の確定申告」の問題を解決しようとするスタートアップが、2018年に入り増えてきている。クラウド会計ソフトなどを展開するfreeeもそのうちの1社。同社は2月5日、仮想通貨の損益計算ツール「会計freee for 仮想通貨」をリリースした。

制度が追いついておらず、納税のハードルが高い

確定申告の対象者にとって大きな障壁となるのが、国税庁が示す方法に対応するために必要な「取引時のレートの取得」だろう。

「取引所ごとにレートが異なるため、正確な計算には各取引所で当時のレートを取得する必要がありかなりハードルが高い。また仮想通貨の課税制度も複雑。今後新たな技術がでてきた時にイノベーションを阻害しないためにも、もう少し制度や仕組みが追いついてくる必要がある」(freee 担当者)

国税庁のガイドライン公開などに伴って、freeeにも仮想通貨が絡んだ確定申告についての問い合わせが増加。対象者向けのセミナーの募集をしたところ、公開から2時間もたたない間に200人以上の申込みがあり、想定していた400人の枠が1日で埋まってしまったという。

「今まで自分で申告をやったことがないサラリーマンも多い。周りに話の聞ける専門家がいないケースも多く、そもそも確定申告が必要なのか把握できていない人もいる状況」とのことで、年明けから急ピッチで損益計算ツールを開発した。

会計freee for 仮想通貨は対応する取引所の履歴(CSV)をアップロードすると、国税庁のガイドラインに基づく形で仮想通貨の損益計算をしてくれるツールだ。売却と仮想通貨のトレードに対応し、取得価格の計算方法は総平均法を用いる(freeeが利用許諾を得ている外部サービスの過去レート情報をもとに計算)。仮想通貨を利用した商品購入については対象外となる。

現時点での対応取引所はbitFlyerとbitbankの2つで、今後は取引所の拡大や移動平均法での計算に対応することも検討するという。損益計算ツールの利用については無料。会計freeeのユーザーであれば、取得した結果を確定申告書類にも反映できるのが特徴だ。

無料で利用できる一方で、対応する取引所の数が限られるなど他のツールに比べて圧倒的に優れているとは正直言えないかもしれない。

ただその点については「損益計算ツールでマネタイズしたい、他社に負けないツールを作りたいというわけではなく、困っている人が多いので少しでも助けになればと開発した。会計ツールこそがウリなので、仮想通貨に関する申告が(初めて申告する人でも)わかりやすいような設計をした」としている。

マネーフォワードなど複数社が申告サポートサービス公開

冒頭でも触れたとおり、損益計算ツールを中心とした仮想通貨の税務関連サービスが増え始めている。TechCrunch Japanでは1月に「G-tax」を提供するAerial Partnersを紹介した。G-taxは10の取引所に対応する無料の損益計算ツール。これに加えて同社では仮想通貨税務に詳しい税理士を紹介する「Guardian」も手がけている。

ゴールドマン・サックス出身の起業家が手がかる「Cryptact」は13の取引所、1476種類の仮想通貨に対応。すでに8500人が登録していて、EY税理士法人との税務顧問契約も発表した。

また損益計算ツールではないが、マネーフォワードもAerial Partnersと連携した仮想通貨申告サポートプログラムを2月2日に始めたばかり。仮想通貨取引に関する確定申告者に対して、認定仮想通貨税理士が損益計算や申告書作成などを支援するという。

確定申告期間に向けて、この領域は今後さらに盛り上がっていきそうだ。

freeeがクラウドワークフロー機能をリリース、稟議の申請・承認のムダをなくし業務効率化を支援

「ITを活用した業務効率化や生産性向上」は多くのスタートアップが取り組んでいる課題だが、その代表ともいえるのがバックオフィス業務の効率化ではないだろうか。

総務や労務、経理といったバックオフィス業務には工数がかかるルーティン作業も多く、担当者が本来やりたい業務にあまり時間を割けない原因にもなっていた。だからこそITによる効率化のポテンシャルも大きく、実際FinTechやHR Techの領域ではこれらの負担を減らすサービスが注目を集めている。

これまでTechCrunchで何回も取り上げてきたクラウド会計サービス「freee」もそのひとつだ。運営元のfreeeは会社設立や開業支援、人事労務など幅広い業務の効率化を目指してきた一方で、3月に発表したエンタープライズプランなど主力の会計サービスの改善も継続して進めている。そんなfreeeが8月10日、新たにクラウド型の稟議ワークフロー機能をリリースした。

このシステムは中堅中小企業を中心に紙で行われることが多かった稟議の申請・承認業務を、クラウド上で完結させるもの。上述した会計freeeエンタープライズプランの機能として提供される。

従来の現場では「紙で行うためオフィスにいないと申請や承認ができない」「管理部の担当者は紙が回ってくるまで作業できず、不備があった際の差し戻しも大変」「書類だと管理が面倒」といった課題があり、管理担当者だけでなく業務に関わる全社員の負担となっていた。

freeeのワークフロー機能では一連の業務をクラウド上で完結できるようにすることで、業務の効率化と同時に情報の一元化を実現していくという。

「企業の担当者の話を聞くうちに、会計や請求など業務ごとに別々のツールを使って最適化を図る場合が多いことがわかった。それでは結局ツールが切り替わる部分で新たな工数が発生し、必ずしも全体最適とは言えない。今回のワークフローシステムでは単に稟議の申請・承認業務の負担が減るだけでなく、freeeが提供してきたサービスと連動し会計や人事労務など一連のワークフローを、一気通貫で行えることを目指している」(freee担当者)

そもそも今回のワークフロー機能は当初から考えていたわけではなく、エンタープライズプランを導入している企業からの要望があり実用化されたそうだ。

ある企業で業務フローの見直しをした結果、稟議の申請・承認業務において多くの無駄が発生していることがわかり、一連の管理業務を一括で対応できるツールを求める声があった。他の企業の担当者にも話をしてみたところ、同様のニーズがあったため満を持して実用化に至ったという。

現在40社以上が導入するエンタープライズプランは、上場を目指す企業を主なターゲットにしたもの。上場準備中の企業にとってはfreee上に情報を一元化できれば、会計監査を受ける際に取引の裏付けとなる情報をすぐに参照できるなどのメリットもある。

まずは稟議申請・承認業務や書類管理のクラウド化からはじめ、今後は財務会計における仕訳の連携や人事労務に係る社員マスターの変更など、freee上で業務のワークフローを完結できるような機能を目指していくという。

freeeが事業用クレジットカードに参入、スモールビジネスのキャッシュレス化促進へ

クラウド会計サービスなどを提供するfreeeは7月24日、ライフカードと提携して事業用クレジットカード「freee カード」を共同で発行することを明らかにした。主な対象は事業用クレジットカードを利用する機会が少なかった、個人事業主や中小企業。経費精算や仕入れなど現金取引のキャッシュレス化を通じて、ユーザーのバックオフィス業務の効率化や経営状況の可視化をサポートしていくことが狙いだ。

カード発行日は2017年9月15日の予定で、本日より事前申込みを行っている。

会計データを審査資料に活用、導入しやすい仕組みの構築へ

会計ソフトを筆頭に、給与計算会社設立開業届けなど中小企業や個人事業主をサポートするサービスを複数手がけてきたfreee。そんな同社が次に本腰を入れるのは事業用のクレジットカードだ。

freeeは2017年3月にライフカードと業務提携を結び、法人クレジットカードの申込にfreeeに蓄積された情報を活用することで、発行手続きを簡略化する取り組みを発表していた。担当者によると「これまではデータを提供するという色が強かった」そうだが、freeeカードは中小企業や個人事業主が利用することを前提に、より踏み込んだ内容になっているのだという。

「ライフカードさまとの取り組みが好調だったということもありfreee上のデータを提供するだけでなく、年会費の無料化、中小企業や個人事業主にメリットのある特典の整備など、さらに使いやすい仕組みを考えていた。その結果新たなカードの共同開発に至った」(freeeカード担当者)

freeeカードでも「クラウド会計ソフト freee」上の会計データをライフカードの審査資料に活用することで、導入したいユーザーのハードルが下がるのは大きな特徴だ。会計ソフトと併せて利用することで経理業務の取引データを会計ソフト上に集約でき、バックオフィス業務の効率化や経営状況の可視化も見込める。

それらに加えて中小企業や個人事業主向けに以下のような機能や特典を備えている。

  • 年会費無料
  • 1法人当たり50枚の従業員カードを発行可能
  • 決済限度額を自由に設定可能
  • 弁護士や税理士など士業への無料相談
  • オフィス備品サービスやスーツ衣料などの割引特典

「事業用クレジットカードの発行では、審査に決算書が求められるなど発行のハードルが高かった。それが現金取引が主流となりキャッシュレス化が遅れ、バックオフィスの生産性が上がらないことにも影響している。freeeカードではまずカード導入のハードルを下げた上で、特典などを充実させスモールビジネスをサポートしていきたい」(freeeカード担当者)

freeeにスタートアップと投資家をつなぐ新機能 ― 会計データをリアルタイム共有

会計支援の「クラウド会計ソフト freee」などを提供するfreeeは4月19日、ベンチャーキャピタルや投資家向けの新機能「freee VCアドバイザーアカウント」(以下、VCアドバイザーアカウント)の提供を開始すると発表した。

VCアドバイザーアカウントは、企業と投資家が財務データや経営情報をクラウドで共有・管理することを可能にする新機能。「クラウド会計ソフト freee」のユーザーであれば誰でもVCアドバイザーアカウントを利用でき、通常料金のほかに追加料金が発生することもない。

言うまでもなく、投資家にとって出資先の資金状況を把握することは重要である。例えば、毎月いくらのお金が消費されているかを表すバーンレートは、そのお金の出どころである彼らにとって非常に気になる指標の1つだろう。しかし、銀行やクレジットカード会社からデータを入手し、レポートにまとめ、報告するという一連の作業は投資先の企業に大きな負担を与える。

その一方、VCアドバイザーアカウントを利用すれば、会計データ以外にも取引データなどの細かな情報を自動的に投資家と共有することができる。企業は本業にフォーカスできるし、投資家はリアルタイムに更新されるデータをもとにしたアドバイスに集中できるというわけだ。

ちなみに、freeeが提供する既存のクラウド会計ソフトでもデータを共有すること自体は可能だった。しかし、VCアドバイザーアカウントでは複数の出資先の管理がより簡単にできるようになっているという。

VCアドバイザーアカウントの開発背景について、プロダクト担当者の木本俊光氏はこう語る:

「以前から、当社では銀行など金融機関向けの専用カウントを運用していました。それをVC向けにも適用できるのではないかと考えたことがきっかけの1つです。また、ベンチャーキャピタリストの方々との話のなかで、出資先から受ける資金状況の報告をいまだにスプレットシートで管理していると聞いたこともありました。VCアドバイザーアカウントを利用することで、確認や報告作業などにコミュニケーションコストをかけるのではなく、もっと本質的なところに時間を使えるようになれば良いと思います」。

同社は現在、会社設立や開業を支援する「会社設立 freee」や「開業 freee」、そして会計支援の「クラウド会計ソフト freee」などを提供している。また、2017年3月より内部統制に対応した「エンタープライズプラン」をリリースするなど、企業のあらゆるフェーズに対応できる体制を整えてきた。2016年12月には33.5億円の大型調達も実施している。

freeeは今後、これらのソリューションをさらに使い易くするためのサービス開発にフォーカスしていくようだ。今回リリースしたVCアドバイザーアカウントも、その策の1つだと言えるだろう。

freeeがHR Techに本格参入──「人事労務 freee」を2017年初夏に提供

日本でも盛り上がりを見せつつあるHR Tech業界。TechCrunch JapanでもHR Techに関するイベント「TechCrunch School」を開催したばかりだが、またひとつ、日本のHR Tech分野にビッグプレーヤーが参画してくることとなった。

会計クラウドサービスでおなじみのfreeeが3月22日、発表した新サービスは「人事労務 freee」。これまでfreeeが提供してきた「給与計算 freee」の機能を大幅に追加する形で、労務手続きや勤怠管理、従業員管理などの人事労務に関する業務をクラウド上で一気通貫できるサービスとなるという。サービス提供開始は2017年初夏を予定する。

長時間労働の是正や柔軟なワークスタイルの推進、生産性の向上など、人事労務部門が“本業”として時間をかけるべき業務はいわゆる「労務事務」ではないという話題はTechCrunch Schoolでも挙がっていた。freeeが企業の人事労務担当者に対して2月に実施した調査でも、同様の結果が出ている。

一方で人事労務の現場では、入退社や社会保険など労務手続き書類の作成と申請、従業員マスターの管理、勤怠管理や給与計算など、定型ではあるが複数の業務が複雑に絡み合う業務フローが存在し、そのフローをこなすことで手いっぱいとなっているのが実情だ。

しかも中小規模の企業では、それぞれの業務が集約されているシステムを利用しているケースはほとんどない。個々の業務システムを連携させて利用できていればまだよい方で、Excel社員マスターと給与計算システムとの間でコピー&ペーストしたり、紙の書類から入力し直す、なんてこともありがちで、それでは転記ミスも起こりうるし、効率が悪いのも当然だ。

人事労務 freeeでは、給与計算 freeeに一部含まれていた労務手続きの機能を強化、勤怠管理機能も拡充し、人事マスターとして利用できる機能が追加される予定だ。人事労務に関する従業員のデータの一元管理が可能になり、勤怠情報や従業員情報などを入力することで、人事労務業務の核となる計算作業を自動化できるようになる。また、入退社手続きなどの労務手続き書類も自動出力し、電子申請も可能になるという。

全機能が使える人事労務 freeeビジネスプランの利用料金は、従業員1人あたり月額600円から。現在の給与計算 freeeは、人事労務 freeeのライトプランとして、既存機能を引き続き提供する予定だ。

TechCrunch Schoolでは、労務管理クラウドサービスSmartHRを提供するKUFU代表取締役の宮田昇始氏が「1ブランドのサービスへの集約はユーザーにとっては理想だが、HRの全領域をカバーするのは無理。個別業務に必要な機能に対して“とがって”ちゃんと価値を提供しなければ」と話していた。給与計算から労務手続き、人事マスターまでカバーするというfreee 人事労務は、どこまできめ細かく機能を提供できるのか。

クラウド会計ソフト「freee」から内部統制に対応した新プラン——上場準備企業の利用を推進

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クラウド会計ソフト「会計freee」を筆頭に給与計算ソフト会社設立サービス開業支援サービスなどのクラウドサービスを通じて、中小企業や個人事業主といったスモールジビネスをサポートしてきたfreee。2016年12月には33.5億円の資金調達を実施し、さらなるサービス拡充を目指していた。そんな同社は3月6日、上場企業や上場準備段階の企業などに向けた、内部統制に対応する会計freeeの新プラン「エンタープライズプラン」をリリースした。

これまで会計freeeでは創業期の企業向けに「ライトプラン」を、拡大期や安定期の中堅企業向けに「ビジネスプラン」(2016年5月に発表)を提供しており、今回のエンタープライズプランは上場準備期や上場企業をターゲットとした3つ目のプランとなる。

上場企業はもちろんのこと、上場後に投資家へ財務諸表を公開することになる上場準備中の企業は、会計上の不正やミスを発見、防止するための内部統制が必須だ。エンタープライズプランでは経済産業省が公表している「システム管理基準 追補版 (財務報告に係るIT統制ガイダンス)」に準ずる形で、内部統制に必要な新機能を追加するとともに、有償の専用サポートデスクを新たに設置する。

新機能で代表的なのは「操作履歴」「仕訳の承認履歴」「権限の変更履歴」といった会計freee上での操作ログを保持、確認できるもの。この機能により、事前に入力範囲やアクセス範囲を制限して入力ミスや不正を予防するとともに、ミスや不正の監視や追跡ができるようになる。新機能については「必要なものをカバーし監査法人のチェックも受けているので、上場準備中の企業や上場企業に安心して使ってもらえる」(freee)とのことだ。

なお利用料金は一律ではないため、個別で見積が必要になる。

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ビジネスプラン利用企業からの要望により誕生

冒頭でも触れたように、freeeでは2016年5月に中堅企業向けにビジネスプランをリリースしている。このプランは中堅企業の基幹システムを「クラウドERP」化することを目指し、財務会計にとどまらず管理会計の分野まで対応領域を広げたもの。従来の会計ソフトだけでは対応できず、紙やエクセルを併用していた受注から入金消し込みまでの作業を一気通貫でできるようになるなど、バックオフィスの最適化を進めるサービスだ。

同プランのリリース以降、上場企業や上場を見据えたスタートアップなど従業員数が100名を超える中堅規模の企業へも導入が進む中で、内部統制に対応したプランの要望が増えてきたという。「上場準備をするためにクラウド会計ソフトを諦め、泣く泣く内部統制に対応したインストール型に乗り換えた」というユーザーもいたそうで、freeeとしてもこのフェーズの企業でも安心して使えるプランを用意する必要性を感じ、今回新たなプランのリリースに至った。

freeeはエンタープライズプランを通じて「3年後に新規上場する企業のうち、約半数のシェア獲得」を目指していく。

係争中のクラウド会計「freee」が33.5億円を追加調達、佐々木CEOが競合提訴の背景も語る

freee創業者で代表取締役の佐々木大輔氏

freee創業者で代表取締役の佐々木大輔氏

クラウド会計サービスを提供する「freee」がシリーズDラウンドとして33.5億円の追加増資を今日発表した。第三者割当による資金調達で、引受先は未来創生ファンド、DCM Ventures、SBIインベストメント、Salesforce Ventures、日商エレクトロニクス、日本生命保険相互会社、Japan Co-Investのファンドおよび事業会社。今回の増資で2012年7月創業のfreeeの累計資金調達額は96億円となる。未来創生ファンドは2015年の設立。2016年11月現在、トヨタ、三井住友銀行など17社が出資していて、2016年5月末時点で運用額は216億円。

前回のfreeeの資金調達は2015年8月の35億円で、このときのバリュエーションは約300億円。今ラウンドのバリュエーションは約400億円。また今回新たにSBIインベストメントが出資者に加わっている。

調達資金の用途としては開発、マーケティング、営業と全ての面の強化というが、freee創業者で代表の佐々木大輔CEOはTechCrunch Japanの取材に対して3つの点でサービス拡充を進めると話す。

会計、税務、労務を統合して「クラウドERP」へ進化

1つは2016年5月に発表した中堅企業向け「クラウドERP」を推進すること。freeeは企業の財務会計クラウドサービスとして発展してきたが、2014年には「クラウド給与計算」をリリース。労務管理まで含めて50〜500人規模の中堅企業向けに、管理会計分野にまで適用領域を広げていく方向性だ。これまで大企業では生産管理まで含めた本格的ERPとしてオラクルやSAPといったアプリケーションが導入されてきた。「ERPという考え方は数十人規模でも使ったほうが圧倒的に効率化できます。ただ、SAPとかオラクルといったERPアプリケーションは(高価すぎて)1000人規模の企業でも導入していません。われわれfreeeは基本利用料4000円で1ユーザー当たり300円といった価格帯です」(佐々木CEO)

一方中小企業ではこれまで、弥生やOBIC、OBCといったベンダーの個別パッケージをWindowsサーバーに入れて組み合わせて使うとか、Excelで何とかするといったケースが多かっただろう。オンプレミスの部門サーバーがクラウド(SaaSアプリ)へ移行するタイミングで、業務パッケージや個別開発の市場をディスラプトしているのがfreeeという構図だ。

給与計算や労務管理もサポートできるようになると、「社員が勤怠情報を入れると、それがそのまま財務会計に入っていくような仕組みが実現できます」(佐々木CEO)という。弥生会計で入力した会計データをNTTデータの達人シリーズという申告アプリと繋ぐといったように異なるアプリ間でインポート作業が発生するといったこともなくなるという。

2017年の年明けには法人税申告も可能な「クラウド申告freee」をリリース予定であるなど、会計→税務→労務というようにfreeeはクラウド上で対象領域を広げている。従来のオンプレミスの会計ソフトと比較したとき、金融機関連携による情報量の差も大きいと佐々木CEOは指摘する。これまでパッケージソフトの世界ではデータを手入力していた情報が、freeeでは銀行振込の詳細データがそのままクラウドに入ってきて残る。「どこの会社に売掛金がいくらあるかぐらいは今までも分かりましたが、じゃあ、この数字は合ってるのかと確認するような作業、これがクラウド上の共同作業でできるようになるのです」(佐々木CEO)。

もともとfreeeは会計や税務のプロよりも、むしろ対象ユーザーは個人事業主や規模の小さな事業者にいる経営者だという言い方をしてきた。この点については「小さな会社のほうが変わりやすい。その突き上げで世の中が変わってくるものです」(佐々木CEO)とボトムアップによる変化の構図を指摘する。実際、最近では200人規模のグループ企業の事業再生で会計の見える化のためにfreeeを導入した事例などもあるという。freee自身も、社員数270人と規模が拡大しつつあるが、経費精算はクラウドで自動化されているため経理の専任は1名。煩雑な事務作業がなく「分析ばかりやっている」という。

サービス拡充の2つ目はボトムアップの構図とも関係するが、税理士・会計事務所向け機能と、サポート体制の強化。経営分析やリスク分析機能の開発を進めるほか、地方支社の増設と人員増強を進めるという。

資金調達による投資強化の3点目はAIを活用した経営分析、未来予測。そして経理業務における人間のミスの自動検知だ。作業漏れやダブリ、ミスといったものを正しく処理する提案機能を2018年末までにサービスに入れていくという。

マネーフォワード提訴は「独自技術への投資を促すため」

freeeといえば12月8日に同業のスタートアップ企業であるマネーフォワードに対して、「MFクラウド会計」の差止請求訴訟を東京地方裁判所に提起した、と発表したことで業界を驚かせた。関係者が驚いた理由は2つある。

1つは、スタートアップ企業同士が問題を法廷へ持ち込むほど協議が不調に終わるというのが日本ではきわめて珍しいこと。この点について佐々木CEOの言い分は次の通りだ。

photo02「自動仕訳のコンセプトはfreeeの原点となるもので、プロダクトのリリース前から出願していたものです。われわれはゼロワンのイノベーションにフォーカスしてやってきています。ここはコストがかかるところです。そうやって出てきた良いものについてリスペクトするようお願いをしているということです。世の中の技術の発展を阻害しよういうつもりは全くなく、ライセンスを拒むものでもありません。囲い込みをしようとは思っていません」

ライセンスを拒まない、というのは、つまり正しくライセンスを受けるのであれば当該技術を使って構わないという意味だ。マネーフォワード側は権利侵害を否定しているが、もし仮に裁判で侵害が認められた場合には自動仕訳の特許についてマネーフォワードが対価を支払って利用するということになる、ということだ。

ただ、ソフトウェア産業で先行する米国では、むしろ特許は必要悪とみられる風潮が強い。特に近年、大手テック系企業の訴訟は減ってきている。むしろ特許は核兵器のように牽制力や抑止力として機能しているように見える。

佐々木CEOは「パテント・トロールが流行ったので悪いイメージがあるのかもしれません。でも米国の状況とは違います」と説明する。例えばGoogleが2011年にモトローラを125億ドルで買収したのは、膨大な量の特許を買うことが目的だったと言われている。独自技術に投資しているGoogleのような企業にしてみたら、抑止力として特許ポートフォリオを保持するために必要なものだった。ただ、その後Googleが濫訴しているわけではない。つまりシリコンバレーのネット系、モバイル系企業は独自技術を開発しつつ、クロスライセンスや牽制をするなどして均衡状態になっている。これは日本でも電機産業や自動車産業といったオールドエコノミーがやってきたことだが、現状の日本のスタートアップ業界はそんな状況になっていない。もっと日本のスタートアップ業界は独自技術をそれぞれが開発するべきだ、というのが佐々木CEOの主張だ。「独自技術にみんなが投資するようになればイノベーションは生まれていきます」。

佐々木CEOはゼロワンの技術開発に投資しやすい環境を作っていくのも重要だとしていて、「スタートアップ業界でもクロスライセンスが増えると良いのではないか」と話す。

産業史的な視点でみれば、佐々木CEOの言い分には説得力がある。一方、もう1つの論点については疑問の声が大きいのではないだろうか。それはfreeeの自動仕訳の特許が、そもそも特許が成立するほどの技術に思えないというソフトウェア・エンジニアたちの声だ。

freeeの特許にある「自動仕訳」とは、取引情報に含まれる文字列などから「対応テーブル」と「優先順位」に基いて仕訳項目を自動判別するというもの(参考リンク)。一方マネーフォワードが8月にアップデートした「勘定科目提案機能」は機械学習ベースのもの。つまり実装が異なる。freeeのようにルールベースのほうが実際的で精度が高い可能性もあるし、モデルと利用データの質・量次第では機械学習のほうが精度が良いのかもしれない。ここは実装次第の勝負なので両社ともに競うべきところのように思われる。

文字列をみて賢く自動仕訳する、というのはソフトウェア・エンジニアであれば誰でも思いつくことだろう。機械学習のライブラリは掃いて捨てるほどあり、やってみるだけならインターンの大学生の夏のプロジェクトレベルの話ですらある。2013年にさかのぼって考えてみれば、いまと事情が違うかもしれない。今ほど機械学習のことでネット系エンジニアたちは騒いでいなかったし、多くのライブラリは存在しなかった。であればなおさら、機械学習を適用した自動仕訳というマネーフォワードの実装に対して、2013年の権利を持ち出してfreeeが侵害を主張するのは無理があるのではないだろうか。

実際、マネーフォワード側は「当社技術は、本件特許とは全く異なるものと判断しており、フリー株式会社の主張は失当であり、特許侵害の事実は一切ないものと判断している」とのコメントを発表している

もっとも、この辺りは特許明細が主張する内容と、実際の技術詳細についての比較を行った上で法廷で議論すべきことだろう。freeeによる提訴は10月21日。12月8日には東京地裁で第1回弁論が行われ、1月20日には答弁が予定されている。今後2社の訴訟がどう推移するかは分からないが、1年から2年で何らかの結論がでるものと見られる。