会計・人事労務クラウドのfreeeがグローバルIPO、公開価格2000円で初値2500円、時価総額1200億円超え

会計・人事労務クラウドサービスサービス事業を展開しているfreeeは12月17日、東証マザーズ市場に上場した。主幹事証券会社は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、大和証券、メリルリンチ日本証券の3社。公募543万5200株、売り出し1204万1100株、オーバーアロットメント108万9700株。オーバーアロットメントとは、当初の募集・売出予定株数を超える需要があった場合に実施される株式の販売方法。主幹事証券会社が対象会社の株主から一時的に株式を借り、売出予定株数を超える株式を、募集・売出しと同じ条件で追加販売すること。

主幹事証券会社の顔ぶれからもわかるように、今回の同社の株式公開は国内の投資家はもちろん、海外の投資家に対しても募集・売出しなどを同時に行うグローバルIPO(グローバルオファリング)だ。過去には、LINEやメルカリなどが採った方法でもある。

同社の既存株主には、米国シリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルであるDCM(DCM V LPが11.6%、A-Fund, L.Pが6.84%.)のほか、日本や中国での投資を行っているインフィニティ・ベンチャーズ(IVP Fund II Aが5.04%、IVP Fund II Bが2.66%)、シンガポール拠点のベンチャーキャピタルであるPalace Investments(2.66%)が名を連ねるなど、グローバルIPOを意識した構成になっていた。

東証マザーズでの公開価格は2000円で初値はそれを500円超上回る2500円となった。12月17日10時現在の最高値は9時59分につけた2640円で、時価総額は1238億2900万円。現在は2630円前後で推移している。

同社は、「クラウド会計ソフトfreee」や「人事労務freee」などのスモールビジネス向けクラウドERP(統合基幹業務システム)サービスを展開している、2012年設立のスタートアップ。会計ソフトウエアや人事労務ソフトなど、中堅中小企業や個人事業主のバックオフィス向けSaaS(サービスとしてのソフトウエア)を開発・提供している。このほか「クラウド会計ソフトfreee」と連係した税務申告ソフト「申告freee」を会計事務所向けに提供している。起業家向けとして、起業時の書類を無料で作成できる「会社設立freee」や「開業free」や事業者用クレジットカード「freeeカード」などもある。

直近の業績は、2019年6月を決算期とする2018年度(2018年7月〜2019年6月)は売上高45億1600万円、営業損失28億3000万円、経常損失28億5000万円、当期純損失は27億7800万円。2020年度(2019年7月〜2020年6月)の予想は、売上高69億4100万円、営業損失28億7600万円、経常損失31億2700万円、当期純損失31億3500万円。

大幅な赤字上場となるが、SaaSビジネスに長けた海外ファンドが既存株主に入っていることから、今後の成長カーブがどのように描かれるのか注目だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

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