IBM Researchが細菌の抗生物質耐性を破る高分子を開発

新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミック以外にも、深刻な健康危機が発声している。抗生物質耐性がその1つで、この厄介なトレンドは上向き傾向であり、治療の困難な「スーパーバグ」の増加が始まろうとしている。IBM Researchは、シンガポールのInstitute of Bioengineering and Nanotechnology(生物工学とナノテクノロジー研究所)と協力して、既存の抗生物質の有効性を大幅に高め、台頭してきているスーパーバグを撃退できる合成高分子のポリマーを開発した。

学術誌「Advanced Science」で発表された研究論文でIBMの研究者たちは、一連の抗生物質と組み合わせることのできるポリマーの作成過程を詳述している。その抗生物質は非耐性菌株の感染症の治療に使われるもので、投与の量は、抗生物質を克服するする能力のない感染症の治療でよく見受けられる程度、あるいはそれより少ないことすらあるほどの量だ。

この高分子は、感染症が抗生物質を使って治療され、まだ完全に排除されていないときに細菌が変容させる酵素に取りつき、効果を発揮する。抗生物質を処方されたとき必ず、すべて服用しなさいといわれるのはそのためだ。細菌が完全に排除されていないときには、リバウンドして、再び治療されたときには治療への抵抗性を身につけている。

IBMのポリマーは基本的に、細菌が抗生物質の効果に対抗するために開発した防護策をショートさせ、抗生物質の効力を取り戻したり、可能性としてはやや改善したりする。

これはまだ、研究室の高度にコントロールされた環境で行われている比較的初期段階の研究であり、実用までには人間の患者による臨床試験を含むさらに多くの開発努力とテストを要するだろう。しかし今回の実験室での結果は、実用性に向けたかなりの有望さを感じさせる。特に、複数の薬品に対する抵抗力がある細菌の感染でも有効性を実証したことは素晴らしい。

画像クレジット: IBM Research

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

マイクロソフトは警察には顔認証技術を売らないと公言

Microsoft(マイクロソフト)は、IBMAmazon(アマゾン)との協議を通じて、少なくともより厳しい規制が設けられるまでは、顔認証技術を警察が利用することに反対する立場を固めた。

今朝、ワシントンポストのライブイベントで行われたリモートインタビューで、マイクロソフト社長のBrad Smith(ブラッド・スミス)氏は、同社のテクノロジーを適切に使用するための「原則的立場」を、同社はすでに取っていると話した。

「私たちが導入した原則に従い、私たちは顔認証技術を、現在の米国の警察署には売らないことにしました」とスミス氏。「しかしこれは、もっとよく知り、もっとよく学び、もっと行動せよと私たちが呼び掛けられている時期なのだと、私は強く思っています。それを受けて私たちは、人権に基づいてこの技術を管理できる国法が制定されるまで、米国の警察署には顔認証技術を販売しないことを決断しました」。

さらにスミス氏は、この技術を「他のシナリオ」で使用する場合の管理に用いる新しい「審査要素」を追加するとも話していた。

ワシントンポスト・ライブ:マイクロソフト社長ブラッド・スミス氏は「人権に基づく」国法が制定されるまで、同社は顔認証技術を今の米国の警察署には売らないと語った。

George Floyd(ジョージ・フロイド)氏殺害を受けて発せられたこうしたコメントは、米全国、そして全世界での抗議活動を招き、人種間の平等や法執行に関する幅広い議論を促す結果となった。

マイクロソフトの立場は、より厳重な規制が施行されたときにこの問題を再検討することを示唆したアマゾンの立場に似ている(ただし、どちらの企業も民主党議員が提出した「警察の正義」法案が警察署によるこの技術の使用を制限できるかに関して、明言は避けている)。双方とも、顔認証技術の販売を全面的に取り止めると発表したIBMほど踏み込んではいない。

ACLU(アメリカ自由人権協会)北カリフォルニア支部のテクノロジーおよび人権担当弁護士Matt Cagle(マット・ケイグル)氏は、このニュースに対して次の声明を発表をした(以下は抜粋)。

「顔認証の開発企業ですら、危険だとの理由でその監視技術の販売を拒否した今、政治家はもう、それによる私たちの権利と自由への脅威を否定できなくなりました。全国の議会と規制当局は、警察の顔認証の使用を速やかに禁止しなければなりません。そしてマイクロソフトなどの企業は、人権コミュニティーと(敵対するのではなく)協力して、それを実現させるべきです。これには、警察の顔認証の使用を合法化し全国の州に広めるための法律の制定を推進する取り組みを中止することも含まれます」。

「これらの企業が、ほんのわずかにせよ、またずいぶん時間がかかったにせよ、ようやく行動に出たことを私たちは歓迎します。私たちはまた、これらの企業に、黒人や有色人種のコミュニティーに不条理な危害を加える監視技術を含む、彼らを過剰に監視する卑劣なアメリカの歴史に永遠に幕を閉じるための努力を強く求めます」。

一方、アムネスティー・インターナショナルは、大量監視のために警察が顔認証技術を使うことを全面禁止するよう訴えている。

関連記事:アマゾンが顔認識技術を地方警察には1年間提供しないと表明、FBIへの提供についてノーコメント

画像クレジット:Riccardo Savi / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

IBM Cloudに長期にわたるが障害発生、同プラットフォーム上の複数サービスもダウン

IBM Cloudが大規模な障害に見舞われており、同プラットフォーム上で運営されている複数のサービスもダウンしている。その中には、人気のテックニュースアグリゲータであるTechmemeも含まれる。

太平洋時間6月9日午後2時30分ごろから、障害の規模が拡大したようだ。これは世界規模の問題であり、ネットワークのトラブルが関係しているようだが、IBMのステータスページは実際には読み込まれておらず、内部サーバエラーを返している。このため、サービス停止の程度や原因は不明だ。IBM CloudのTwitter(ツイッター)アカウントも沈黙しているが、我々はIBM Asperaのステータスページがサードパーティーのサーバーにホストされていることを確認しており、これが世界的なネットワークに関する問題である可能性が高いことを裏付けている。

IBM Cloudは2020年4月にゼロ・ダウンタイムの実現に関する論文を発表しているが、3月にはダラスのデータセンター(DCD記事)で小規模な障害が発生している。

TechCrunchはIBMの広報チームに連絡を取っており、詳細が確認でき次第この記事を更新する予定だ。

アップデート1(太平洋標準時午後5時06分):IBM Cloudが徐々に復旧しているという報告がいくつ寄せられ、また同社のステータスページも復旧しており、当分の間はクラウドサービスの停止が続くことが示されている。

アップデート2(太平洋標準時午後5時25分):IBMはステータスページはさらに情報を追加し続けており、問題の核心にはネットワークにあるようだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

IBMはレイオフを認めたが、その詳細は明かさず

IBMは同社がレイオフを行なっているという報道をひと晩で認めたが、部門や関係する従業員の人数などに関する詳細は明らかにしていない。しかし同社はこの度のレイオフを、新CEOであるArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏の采配による必要性の高いスキルの導入と、それにともなう再配置だとしている。

IBMのスポークスパーソンはTechCrunchに対して「競争の激しい市場におけるIBMの業務には、より高い価値スキルにリミックスする柔軟性が必要であり、労働力に関する決定は、弊社のビジネスの長期的な利益のために行われている」と語っている。

Moor Insights & Strategyの主席アナリストであるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏によると、レイオフは全社的に行われるという。「聞くところによると、それは事業部間のバランスをとるためのものだ。IBMは今、できるだけ多くのリソースをクラウドへ移行しようとしている。基本的には必要なスキルを持たず、再教育もできない者が解雇し、特定のスキルのある者を採用する。だからいわゆる人減らしではない」とムーアヘッド氏は語っている。

ちなみにIBMは、2015年にレイオフが報道されたときにも同じ理屈を述べた。公式の数字はないがBloombergによると、今回の数字は数千人単位だという。

Constellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミュラー)氏によると、現在、IBMは厳しい立場にいる。「過去の成果が利益を産んでない。IaaSとしてのIBM Cloudはなくなり、Watsonは期待はずれ、ブロックチェーンは遅すぎて、何千人もコンサルタントが仕事にならない」とミュラー氏は話す。

ミュラー氏によると、作業員が現場ではなく家にいることの影響もある。「企業は大規模のソフトウェアプロジェクトをリモートで行う方法を知らず、学んでもいない。現在のところ企業は計画の再開で忙しく、プロジェクトの進行が遅くなっている」という。

このニュースの背景には、大企業も中小企業もパンデミックのために大量の従業員を解雇しているという事情がある。IBMも現在のマクロの状況に関係なく、新CEOが建て直しを図ろうとしているように、人員削減が必要なのかもしれない。

同社はここ数年間、苦戦が続いており、2018年にRed Hatを340億ドル(約3兆6600億円)で買収したときには、もっとオープンなハイブリッドクラウドという選択肢を模索していた。今同社が必要としているのは、それを実現に導くスキルに焦点を当てたいようだ。

同社は2021年6月まで、レイオフした社員の医療費を補助するという。まあ、当然だろう。

関連記事: Incoming IBM CEO Arvind Krishna faces monumental challenges on multiple fronts…IBMの新CEO Arvind Krishnaを多方面からの難題が包囲(未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

IBMとRed Hatが5GエッジとAIへ全力投球、シスコやインテル、サムスンなども支持

IBMとRed Hatは5月4日のThink Digitalカンファレンスで、5GエッジとAIを中心とした多くの新しいサービスを発表した。企業はこの2分野に注目している。いずれも法人向けで最も急速に成長しているビジネスであることを考えれば驚くにはあたらない。事実上すべての通信会社が今後の5G普及を最大限活用する方法を検討している。将来を見据える企業は、自社のニーズに合わせた最善の対応方法を見つけようとしている。

最近就任したIBMのJim Whitehurst(ジム・ホワイトハースト)社長は本日の発表に先立って筆者に対し「IBMはRed Hatと協力して、高度に差別化したサービスを企業に提供できると信じている。なぜならIBMは超大規模クラウドを提供する企業とは違い、1つのクラウドに企業を縛り付けることには興味がないからだ」と語った。

「IBMが優位性をもって差別化している点は、クライアントがハイブリッドクラウドへ移行する際の支援方法だ」とホワイトハースト氏は述べた。同氏は社長就任後、メディアのインタビューに応じる機会があまりなかった。社長としての役割にはRed Hatの経営もまだ含まれている。「正直なところ、誰もがハイブリッドクラウドを持っている。もっと差別化された用語があればいいのにと思う。当社が異なる点の1つは、必要にせまられ複数の形態で運用するアプリケーションポートフォリオについて企業がどう考えるべきか、そのことについての方法論だ。大企業の場合、メインフレームに一連のトランザクションワークロードを実行させているかもしれない。メインフレームに代わる良いものがないため、この先も長期間そのままかもしれない。さて、メインフレームのデータにアクセスする一連のアプリケーションは分散環境で実行したいと考えているとする。工場の床を大々的に塗装する前にペイントスプレーに欠陥がないか確かめたいなら、まずドアを塗装して試してみる必要がある」。

MWC 2019の期間中にIBMのロゴが表示された(バルセロナ、カタロニア、スペイン – 2019/02/25、写真:Paco Freire/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

IBMが中心に据えているのは、企業のワークロード最適化をソフトウェア、ハードウェア、サービスの観点から支援することだと同氏は主張する。「パブリッククラウドは驚異的だが、一連のサービスを企業に同質的に押し付けている。一方IBMは異なるピースを1つに織り成す試みをしている」と主張した。

同氏は議論の後半で、大規模なパブリッククラウドは企業のワークロードをむしろクラウドサービスにあわせるよう強いていると主張した。「パブリッククラウドの能力は桁外れで、当社の素晴らしいパートナーだ。だが彼らのビジネスの柱は同じサービスを大量に提供することであり、その主張は『ワークロードがクラウドにあう限りにおいて、より良く、より速く、より安価に実行できる』ということだ。明らかにそういうやり方で拡大しているし、サービスも増やしている。彼らはオンプレミスで使ってもいいとは言わない。ユーザーが彼らのモデルにあわせなければならない」。

新しいビジネスとしてIBMは、事業計画、予算編成、各種予測などを自動化するサービスや、AIの力で自動化アプリを開発・実行するツールを立ち上げようとしている。自動化アプリは、完全に自律的にまたは人間の助けを借りながら日常的なタスクを処理できるものだ。同社はまた、コールセンターの自動化のための新しいツールも手掛けている。

AIに関する最も重要な発表はもちろんWatson AIOpsだ。これは企業がIT関連の事故やシステム停止による悪影響を減らすために、異変を検出、診断してそれに対応するためのツールだ。

通信面では、例えばEdge Application Managerなどの新しいツールを発表した。これはIBMのオープンソースのエッジコンピューティングプロジェクトであるOpen Horizonを利用して、AI、アナリティクス、IoTのワークロードをエッジで簡単に動かせるようにするものだ。IBMはまた、Red Hat OpenShiftの上に構築された新しいTelco Network Cloudマネージャーと、Red Hat OpenStack Platform(今後も重要な通信プラットフォームで、IBM / Red Hatの成長事業の代表)を活用する機能も立ち上げようとしている。さらに顧客の5Gおよびエッジ対応ソリューション開発を支援するために、エッジコンピューティングおよび通信クラウドのための新しいIBMサービスチームも準備している。

通信会社は、5Gおよびエッジの展開の中核を形成するさまざまなオープンソーステクノロジーにも大きく賭けている。Red Hatはすでにこの分野の主要なプレーヤーだったが、IBMによる買収がさらにそれを加速したとホワイトハースト氏は主張する。「買収以来、通信会社は、IBMが長期的にかつミッションクリティカルな局面でサービスを提供できる点に大きな信頼を寄せている。重要なのは、IBMにそれを実現する能力があるということだ」

エッジとハイブリッドクラウドの多くはRed Hatのテクノロジーに基づきIBMが構築した。両社のいずれも単独では実現できなかっただろう。Red Hatには、こうしたプロジェクトを成功させるために必要な規模、幅、スキルがなかったとホワイトハースト氏は主張する。

ホワイトハースト氏はまた、同氏が持ち込んだRed Hat DNAの一部は、エコシステムの観点からIBMが考えを深めるのに役立つと主張した。「私が重要だと考えるRed HatのDNAはエコシステムの重要性だ。Red Hatが持ち込み、IBMが採用した。両社が同じDNAを持って共に走っている。Red Hatのソフトウェアはすべてオープンソース。本当にそうでRed Hatが持ち込んだのはエコシステムなのだ」。

こうした通信関連の取り組みが、Cisco(シスコ)、Dell Technologies(デル・テクノロジーズ)、Juniper、Intel(インテル)、Nvidia(エヌビディア)、Samsung(サムスン)、Packet、Equinix、Hazelcast、Sysdig、Turbonomics、Portworx、Humio、Indra Minsait、EuroTech、Arrow、ADLINK、Acromove、Geniatech、SmartCone、CloudHedge、Altiostar、Metaswitch、F5 Networks、ADVAなどのパートナーらに支持されたのは驚くにあたらない。

Red Hatは多くの方法でオープンソースのビジネスモデルを開拓している。ホワイトハースト氏は、Red HatがIBMファミリーの一部となって、IBMはオープンソースにさらに投資する決断を下すことが容易になったと主張した。「ハイブリッドクラウドの世界へ加速を進めながら、オープンソーステクノロジーの活用によって実現に最善を尽くす」と付け加えた。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Red Hatの新CEOが新型コロナ禍で直面する市場開拓面の課題、IBMを特別扱いしない

今月初めにRed Hat(レッドハット)のCEOであるJim Whitehurst(ジム・ホワイトハースト)氏が親会社IBMの社長に就任したとき、同氏に代わる人物は、論理的な帰結として長年経営幹部を務めたPaul Cormier(ポール・コーミア)氏だった。混乱を極めるこの時期に経営を引き継ぐコーミア氏は、企業がワークロードを次々にクラウドへ移行し開発アプローチをする中で、Red Hatは顧客を支援できる最適な立ち位置にいると考えている。

TechCrunchは4月29日にテレビ会議でコーミア氏と話した。新しい立場に違和感はないように見えた。テレビ会議では、新しい役割が同氏個人にもたらした変化、現在の状況でどのように会社を導いていくのか、IBMとの関係はどうなるのかについて話した。

同氏が強調したことの1つは、Red HatはIBMファミリーの一員ではあるが完全な独立経営であり、IBMを特別扱いしないということだ。IBMは一顧客にすぎないと同氏が主張するアプローチは極めて重要だ。

コミュニケーション

長年にわたりエンジニアリング、ビジネスユニット、CTOとさまざまな仕事を経験し、この役割に十分に備えてきたと同氏は言う。CEOになった今、これまでと大きく異なる点は、今までのポジションでは技術者であって、同僚とエンジニアリングの言葉で話していたことだ。CEOになってこれは大きく変わった。コミュニケーションが重要視されるこの状況ではなおさらだ。

パンデミックの状況下でこれは大きな挑戦だ。オフィスに出向き、打ち合わせをしたり、カジュアルにコーヒーを飲みながら談笑したり、誰かにばったり会ったりする代わりに、オフィスに出なくても従業員がつながりを感じられるようコミュニケーションをより慎重に行う必要がある。

「私は隔週で全社会議を行っている。普通に仕事をしていると自然とコミュニケーションが減ってしまうため、コミュニケーションしすぎるということはない。意識的に増やさねばならない。それがおそらく一番重要なことだ」とコーミア氏は語った。

市場開拓面の課題

コーミア氏は、エンジニアリングの面ではほとんど変化がないと見ている。多くの人々がしばらくリモートで働いている。一方、市場開拓チームは、顧客との関係構築で深刻なハードルに直面する可能性がある。

「市場開拓や営業面の課題は、顧客がこの状況からどう抜け出すかがわからないことだ。どの会社も今の状況からどう抜け出すかについてさまざまな戦略を立てるだろう。それがいろんなことを動かす大きな原動力になるはずだ」と同氏は述べた。

今週、コーミア氏がCEOに就任して最初のRed Hat Summitがあった。世の中の多くの会議と同様、ライブイベントからバーチャルイベントに迅速に変更する必要があった。シャットダウン以来、顧客と再会する本当に最初の機会となった。顧客はナーバスになっていた。「うまくいったのは嬉しい驚きだった」と同氏は語った。交通費を払わなければならないライブイベントよりも多くの人々が参加できた。

カンファレンスは、営業チームが将来の営業の基礎を築き、しっかりと磨き上げる場所だ。直接会えないことは大きな変化だったはずだが、コーミア氏は「今週は思っていたよりも良かった」と述べた。営業チームにとっても将来のバーチャルイベント実行に向けて学ぶ点が多かった。

「我々は皆、フェイストゥフェイスのコミュニケーションがなくなって残念に思っているが、新しいことを学んでいると思う。当社のチームは学びながら素晴らしい仕事をしたと思う」と同氏は語った。

IBMを特別扱いしない

IBMファミリーの中でコーミア氏がRed Hatのリーダーの役割を果たす一方で、同社は非公開となったため、IBMの新しいCEOとなったArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏が実質的にRed Hatの取締役会に入っているとコーミア氏は説明した。IBMが2018年に340億ドル(約3兆6000億円)を払ってRed Hatを買収したとき、Red Hatは会社を時代に合ったものにし、ハイブリッドクラウド市場で真の意味でのプレーヤーになる方法を探っていた。

「ハイブリッド」というのは、オンプレミスとクラウドの両方に存在するインフラを管理する際に、2組のツールを使用しなくても良い方法を見つけることだ。IBMはRed Hatに全面的に関与しているが、コーミア氏は顧客との関係構築のために絶対に不可欠なこととして、IBMを特別扱いしないこと、IBMが絡む取引に特別価格を設定しないことを挙げた。

それにとどまらず、Red Hatには適切だと思う方法で会社を経営する自由があると同氏は言う。「IBMが当社のプロダクト戦略を策定するわけではないし、優先順位を決めるわけでもない。IBMは、当社のオープンソースプロダクトが徐々にIBMのプロダクトと競合していくと見込んでいるが、彼らはそれでもいいと思っている。 そのことは理解していると思う」とコーミア氏は語った。

同氏は「こうした方向性を認めないなら、そもそもIBMが大金を払った理由がないがしろにされてしまう」と言う。Red Hatが行ってきたことを継続し、それによって顧客満足を実現できるかどうかはコーミア氏の手腕にかかっている。これまでのところ、同社は上場企業だったときと同じように上昇軌道を保っているようだ。

IBMの1月の最新決算発表によると、Red Hatの四半期売上高は10億7000万ドル(約1100億円)だった。やはり非公開企業だった前期の8億6300万ドル(約920億円)から増加した。これは年換算で40億ドル(約4300億円)を超える数字で、数年前にホワイトハースト氏が設定した50億ドル(約5400億円)の目標をも射程に収める。

目標を達成し、さらにその先へ進むのは今やコーミア氏の仕事だ。確かにパンデミックがそれを難しくする。だがコーミア氏は、IBMファミリー傘下の会社のCEOとしてバランスを取りながら会社を次の段階へと導く準備ができている。

画像クレジット:Ron Miller

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(翻訳:Mizoguchi

AWSとIBMは新型コロナ問題に挑むデベロッパーを支援する

社会が新型コロナウイルス(COVID-19)のため高まりつつある世界的な危機に直面する中、多くの企業がさまざまな方法で取り組みを強化している。米国時間3月20日、2つの大手IT企業、Amazon(アマゾン)とIBMはそれぞれ、このパンデミックに関連するさまざまな問題の解決策を見つけられるようデベロッパーを支援するプログラムを発表した。

画像クレジット:VectorMine/Getty Images

アマゾンでは、クラウド部門のAWSが「AWS Diagnostic Development Initiative」を発表した。予算として2000万ドル(約22億2000万円)を確保し、AWSクレジットとテクニカルサポートとして提供する。このプログラムは、新型コロナウイルス診断問題に取り組むチームを支援し、鼓舞するように設計されており、より優れた診断ツールが開発されることを目指している。

「AWSビジネスにおいて、緊急の必要性を突きつけられた分野の1つは、新型コロナウイルスの診断方法の研究開発です。迅速で正確な検出と診断が必要とされています。優れた診断法は、治療と封じ込めを加速し、やがてこの流行期間を短くすることにつながるでしょう」と、Teresa Carlson(テレサ・カールソン)氏は、3月20日の同社のDay Oneブログに書いている。

このプログラムは診断ソリューションの開発に取り組んでいる顧客が、製品をより迅速に市場に投入できるよう支援することを目的としている。さらに、関連する問題に取り組んでいる複数のチームが、協力して作業の奨励も目指す。

同社はまた、科学者と健康政策の専門家から構成される諮問グループを設立し、このイニシアチブに参加する企業の支援も発表した。

一方IBMは「2020 Call for Code Global Challenge」というデベロッパーコンテストに、改めて注力することにした。このコンテストの2020年における憲章は、地球規模の気候変動に関する問題を解決するというものだったが、拡大するウイルス危機に関する問題の解決も目指すことにした。いずれも、オープンソースのツールを開発することで貢献しようというものだ。

「新型コロナウイルスは、非常に短い間に私たちが当たり前のことと考えていたシステムの限界をさらけ出してしまいました。2020 Call for Code Global Challengeは、3つの主要な新型コロナウイルス対策の領域について、オープンソースのテクノロジーソリューションを開発するためのリソースを提供します。その3つとは緊急時の危機報道、遠隔学習環境の改善、地域コミュニティの協力関係の増進です」と、同社はブログ記事に書いている。

そうした領域は、かなり多くの人がウイルスを封じ込めるために屋内に留め置かれていることで、大きな負担を強いられている。IBMは、そうした問題に取り組むデベロッパーのインセンティブを鼓舞し、問題の解決につなげることを願っている。

社会のあらゆる状況が影響を受ける社会的、経済的な激変期には企業、学界、政府が協力して、このウイルスに関する無数の問題を解決する必要がある。これらは、そのほんの一例に過ぎない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

エンタープライズ・ソフトという言葉は「新スタートレック」起源

1993年ごろにシリコンバレーにいたか訪問したことがあれば現在「エンタープライズ・ソフトウェア」と呼ばれている同じものが「インフォメーションシステム・ソフトウェア」と呼ばれていたことを覚えているだろう。この変化はいつ、どのようにして起きたかご存知だろうか?

読者の同僚にトレッキーがいれば大いに満足するだろうが、答えは「新スタートレック」(Star Trek: The Next Generation)だ。意外かもしれないが間違いない事実だ。

この時期にBoole & Babbage(現在のBMC)は精力的なマーケティング・キャンペーンを打ち、自身を「システム・ソフトウェア」企業から「エンタープライズ・ソフトウェア」企業にイメージチェンジさせた。

もちろん1993年よりずっと前から「エンタープライズ」はなんであれ複雑なシステムを表わす単語として使われていた。しかしBoole &Babbageが全米ネットワーク番組として当時最高の視聴率を誇った「新スタートレック」をプロデュースしたパラマウントと2年のライセンス契約を結んでからすべてが変わった。

スタートレックのファンはこのクレイジーなマーケティング契約について何年も語り草にした。詳しいことが知りたければファンサイトのTrekCoreで読むことができる。しかしいかにコアなトレッキーでさえ、このキャンペーンがテクノロジー業界にどれほど大きな長期的影響を与えることになるかは予想できなかった。Boole&Babbageはパラマウントと結んだライセンス契約でスター・トレック関連のコンテンツをほぼ無制限に制作、配信する権利を得ていた。BooleはVHSテープ(!)を顧客に郵送し、雑誌に広告を掲載し、カンファレンスでは社員に連邦宇宙軍のコスプレをさせた。このキャンペーンでBooleは「エンタープライズ・オートメーション」を提供する会社というイメージを確立した。

上のインフォマーシャルには副長のライカー中佐が登場し、「エンタープライズ号の指揮を取る機能が艦橋に集中しているように、Booleのソフトウェアは今日の企業が必要とする複雑な情報システムを一元化するのだ」と説明している。他の会社にはそうした機能を提供する力がないという印象を巧みに与えるような仕上がりだった。

Booleのキャンペーンに対抗意識をかきたてられたIBMは、1994年にスタートレックのワープ航法をヒントにOS/2をOS/2 Warpというブランド名に変えた。さらにエンタープライズ号のピカード艦長役のパトリック・スチュワートをプロダクト発表のホストに起用しようと試みた。残念ながらパラマウントはこの話に乗らず、IBMは代わりにスタートレック ヴォイジャーでジェインウェイ艦長を演じたケイト・マルグルーを起用.した。Booleの独占ライセンスはあったものの、IBMはイベントの最初に流す5分間のイントロにスタートレックのミスター・スポック(レナード・ニモイ)を使うことができた。

1994年のIBMの新製品発表を眺めるとOS/2以外でも13件もの「エンタープライズ」プロジェクトを数えることができる。大手ソフトウェア企業は「エンタープライズ」という用語が自社ブランドのイメージを高めるために効果があると認めるようになり、ブランドやプロダクトの名称に利用するようになった。SAPやBaan(現在はInfor)などの企業向けソフトウェアベンダーは1993年以降、そろって「エンタープライズ」という言葉を使い始めた。1995年にLotusは「エンタープライズ・ソフトウェア企業」だと名乗るようになった。

1996年にIBMがLotusを買収した後、すべての企業向け製品をエンタープライズと分類したことで、「エンタープライズ」は公式に業界で最もクールな新語となった。 GartnerがWileyから出版したERP: A Vision of the Next-Generation MRP II(ERP、次世代MRP IIのビジョン)はEnterprise Resource Planning(統合基幹業務)ソフトウェアというテクノロジーの誕生を告げた論文だが、1990年に発表されたにも関わらず、ライカー中佐がインフォマーシャルで「今日の企業が必要とする複雑な情報システムを一元化するのだ」と言うまでほとんど注目を集めなかった。Googleが提供している書籍の中に特定の単語が現れる頻度を示すサービス、n-gram Viewerは大変興味深いが、ご覧のように「enterprise software」(青線)と「enterprise resource plannning」(赤線)やという言葉がポピュラーになるのは1994年後半からだ。

それから30年。我々はあらゆるビジネスが「エンタープライズ・ソフトウェア」で実行される世界に住んでいる。ソフトウェア・ビジネスの企画書がデスクに届き、その中に「エンタープライズ」という言葉が現れるたびに私はライカー副長の貢献にもっと光が当てられてもいいと思うのだ。

【編集部注】この記事はベンチャーキャピタルのMercury Fundでマネージング・ディレクターを務めるAziz Gilani(アジズ・ギラニ)氏の寄稿だ。同氏はMercuryでSaaS、クラウド、データサイエンスなどのスタートアップへの投資を手掛けている。

【Japan編集部追記】トップ写真のジョナサン・フレイクスはCBS AllAccess配信の新スタートレック・シリーズにもライカー副長としてゲスト出演している。

画像:Greg Doherty/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

誤報でSlackの株価が一時急騰

米国時間2月10日午後のTwitterはSlackの話でもちきりだった。一体何が起きたのか。忙しい読者のために、かいつまんでご紹介しよう。

Slackとその株価をめぐる騒動は、Business Insiderの記事に端を発している。

Slackが最大の顧客を獲得した。IBMは35万人の社員全員を、このチャットアプリへ移行させた

Slack vs Teamsというバトルが注目を集めているため、Slackが新たに大きな契約を勝ち取ったことはニュースになる。Slackの株価は上がり、今見ると少し愚かな見出しがメディアに溢れていていた。

例えばこんな見出しがあった。

Slackは結局生き延びるかもしれない。IBMが35万人の社員専用アプリに指定

Slackの株価は終日急上昇した。前日と比べて15.4%上がり、そして突然、天気の良い本日2月11日の午後、Slackの株の売買は突如停止して、新材料待ちとなった。

関連記事: SaaS kicks off 2020 with an extra billion in VC funding as round count halves…SaaSの2020年はラウンドの件数が減り投資額は大幅アップ(未訳)

混乱が生じ、みんな何が起きたのかを知ろうとした。GoogleがSlackを買収したのか? Slackが小さなスタートアップを買ったのか? IBMはSlackの顧客ではなかったのか? それは誰もわからない。

株取引の停止は、確かに重大な事件だ。各メディアはいっせいにSlackに注目した。突出した話題がないかぎり、上場企業はニュースにならない。決算報告が取引終了後に出てくるのは、そのためだ。

その後SlackはSECの提出文書を公表した。そこには、IBMは以前からの顧客だとある。つまりIBMは、今日新たな顧客になったのではない。またSlackの発表のどこにも、35万人の社員という言葉はない。

そして同社は自らの言葉で、市場の熱狂を鎮めようとした。

IBMは数年前からSlackにとって最大の顧客であり、同社におけるSlackの利用者も年々増えている。Slackは2020年1月31日に終わる会計年度と、その第4四半期の財務見通しを修正しない。

これで、一件見落着だ。

取引は再開したが、しかし今日起きたことは結局、何の意味もなかった。

Slackがやっと、時間外取引で浮上してきたときには、その日の稼ぎの約半分を返上した。Slack株は現在、時間外で24.56ドル(約2699円)だ。2月11日は約23ドル(約2527円)で始まり、27ドル(約2967円)台の半ばまで上がった。

そして今は、落ち着いている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米国特許登録は2019年に過去最高の33万3530件を記録、FAANGではなくIBM、Samsungが他をリード

巨大IT企業が、知的財産権の侵害をめぐって法廷で争っているというニュースが毎日のように駆け巡るような状況は一段落したかもしれない。とはいえ、特許というものは、企業や人々の進歩を測る指標となるものであり、将来の収益につながることを期待して、自分たちの仕事を守るための堀を築く重要な礎石となるものでもある。米国の特許活動を追跡調査している企業、IFI Claimsは、米国時間1月14日、知的財産に関する実績の年間集計を発表し、その意義を再確認した。それによれば、2019年には、米国特許商標庁によって認可された特許の件数は、33万3530件という最高記録を達成した。

画像クレジット:Bill Oxford/Getty Images

この数字は、いくつかの点で注目に値する。1つは、これまでに1年間で取得された最多の特許であったということ。そしてもう1つは、この数字は前年に比べて15%も増加しているということだ。全体の数が多いことは、知的財産の保護に対する関心が、依然として高いことを示している。また、15%の増加は、実は一昨年の特許の取得数が、その前年から3.5%ほど減少していたのと無関係ではない。ただし、その年も、出願されて未認可だった特許の数は、それまでで最多だった。そこから言えるのは、出願人と米国特許商標庁の両方が、出願とその処理に少し余計に時間がかかっていたのかもしれないということ。特許の出願数そのものが減っていたわけではなさそうだ。

しかし特許の件数だけでは、別の非常に重要な点を見逃してしまう可能性があり、全体像は見えてこない。というのも、世界で最も金銭的な価値が高く、最も知名度の高いハイテク企業が、特許の出願に関しては、常に最高ランクに位置しているわけではないからだ。

一般にFAANGグループと呼ばれる、Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Googleを見てみよう。Facebookが昨年取得した特許は989件で36位だった。伸び率は高いが、まだトップ10には届いていない。同期間にAppleは2490件の特許を取得し、7位につけている。Amazonは2427件で9位だ。Netflixはトップ50にも入っていない。そして、Android、検索、広告の巨人Googleは、2102件の特許を取得しているが、15位に甘んじている。伸び率についても目立ったものはない。それを考えると、IT企業としては最古参のIBMが、最多の特許を取得しているという事実は、なんだか皮肉のようにも思える。

IBMは、例年どおり(正確に言えば27年間連続で)年間最多の特許を取得した。昨年の件数は合計9262件だ。Samsung Electronic(サムスン電子)が6469件で、大きく離された2位だった。

繰り返しになるが、こうした数字だけで、すべてを物語ることはできない。IFI Claimsによれば、子会社を含むいくつかの部門にまたがって出願された、すべての有効な「特許ファミリー」を考慮し、昨年1年だけでなく、歴代のすべての特許をカウントすると、サムスンが1位にランクされるという。そうした特許ファミリーの数では、サムスンは7万6638件となり、IBMは3万7304件で、遠くおよばない2位となる。

そのような数字も、ビジネスの範囲を考慮すると理解しやすいだろう。Samsungは、消費者向けにも企業向けにも、幅広い分野の製品を製造している。一方のIBMは、数年前に消費者向けの市場から基本的に撤退し、最近では主にエンタープライズとB2Bに焦点を合わせている。またハードウェアの比率もはるかに小さい。つまり、そのような種類の研究開発と、そこから生じる特許ファミリーに関して、ずっと低いプライオリティしか置いていないというわけだ。

注目に価する他の2つの領域は、伸び率の高い会社と技術のトレンドだ。

前者としては、自動車会社がトップに挙げられるという事実は、非常に興味深い。韓国の自動車メーカーKiaは、58位上昇して、41位(921件)にランクインした。車は次世代の「ハードウェア」であり、コネクテッドカーや自動運転車、そしてそれらを駆動する代替エネルギーといった、非常に刺激的な時代に入ることを考えると、象徴的のように思える。

大きく順位を上げた他の企業としては、28位上昇して48位(794件)となったHewlett Packard Enterprise(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)、22位上がって36位(989件)となったFacebook、9位上がって25位(1268件)のMicron Technology(マイクロン)、6位上げて10位(2418件)のHuawei(ファーウェイ)、4位上げて13位(2177件)となったBOE Technology、3位上がって4位(3081件)を獲得したMicrosoft(マイクロソフト)などがある。

技術のトレンドに関しては、IFIはこの5年間を視野に入れている。現状では、医療およびバイオテクノロジーの革新に、一連の力強い流れがある。まず、ハイブリッドプラントの建造が、その流れの筆頭にあり、遺伝子編集技術CRISPRが続く。さらに、がん治療を代表とする医薬製剤が続いている。コンピュータープロセッサーという意味での「IT技術」としては、ようやく4番目に挙げられていて、それもダッシュボードや、その他の自動車関連技術としてだ。また、量子計算機、3Dプリンター、飛行車両技術なども挙げられている。

もはや、モバイル、インターネット、コンピューターそのものといった技術革新が停滞期に入ってしまったのではないかと疑う人も、その考えが正しいことを証明するために、リストをこれ以上確認する必要はないだろう。


IFI Claimsが挙げる10の急成長技術分野

意外なことではないが、米国企業が、2019年に認可された米国特許の49%を占め、前年の46%から増加している。それに続く2番目は日本の16%で、韓国の7%(その大部分はSamsung占めていると思われる)が続く。そして中国が5%を占め、ドイツを抜いて4位に入った。

  1. International Business Machines Corp 9262
  2. Samsung Electronics Co Ltd 6469
  3. Canon Inc(キヤノン) 3548
  4. Microsoft Technology Licensing LLC 3081
  5. Intel Corp 3020
  6. LG Electronics Inc 2805
  7. Apple Inc 2490
  8. Ford Global Technologies LLC 2468
  9. Amazon Technologies Inc 2427
  10. Huawei Technologies Co Ltd 2418
  11. Qualcomm Inc 2348
  12. Taiwan Semiconductor Manufacturing Co TSMC Ltd 2331
  13. BOE Technology Group Co Ltd 2177
  14. Sony Corp(ソニー) 2142
  15. Google LLC 2102
  16. Toyota Motor Corp(トヨタ自動車) 2034
  17. Samsung Display Co Ltd 1946
  18. General Electric Co 1818
  19. Telefonaktiebolaget LM Ericsson AB 1607
  20. Hyundai Motor Co 1504
  21. Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd(パナソニック) 1387
  22. Boeing Co 1383
  23. Seiko Epson Corp(セイコーエプソン) 1345
  24. GM Global Technology Operations LLC 1285
  25. Micron Technology Inc 1268
  26. United Technologies Corp 1252
  27. Mitsubishi Electric Corp(三菱電機) 1244
  28. Toshiba Corp(東芝) 1170
  29. AT&T Intellectual Property I LP 1158
  30. Robert Bosch GmbH 1107
  31. Honda Motor Co Ltd(ホンダ技研工業) 1080
  32. Denso Corp(デンソー) 1052
  33. Cisco Technology Inc 1050
  34. Halliburton Energy Services Inc 1020
  35. Fujitsu Ltd(富士通) 1008
  36. Facebook Inc 989
  37. Ricoh Co Ltd(リコー) 980
  38. Koninklijke Philips NV 973
  39. EMC IP Holding Co LLC 926
  40. NEC Corp(日本電気) 923
  41. Kia Motors Corp 921
  42. Texas Instruments Inc 894
  43. LG Display Co Ltd 865
  44. Oracle International Corp 847
  45. Murata Manufacturing Co Ltd(村田製作所) 842
  46. Sharp Corp(シャープ) 819
  47. SK Hynix Inc 798
  48. Hewlett Packard Enterprise Development LP 794
  49. Fujifilm Corp(富士フィルム) 791
  50. LG Chem Ltd 791

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

グーグルがIBM Power Systemsを自社クラウドに統合

Google Cloudがプラットフォームに移行する企業を増やそうとしている中、企業が簡単にレガシーなインフラやワークロードをクラウドに置き換えたり移行したりできる必要がある。これらのワークロードの多くは、Powerプロセッサを搭載したIBMのPower Systems上で稼働しており、これまでクラウドベースのPowerシステムを提供しているベンダーは実質的にINMだけだった。しかし今回グーグルはIBMと提携して、IBM Power Systems on Google Cloudをローンチすることで、この分野に参入しようとしている。

「既存のインフラストラクチャを近代化し、ビジネスプロセスを合理化するためにクラウドを検討している企業には、多くの選択肢がある」と、Google Cloudのグローバル・エコシステム担当副社長のKevin Ichhpurani(ケビン・イチプラニ)氏は述べている。「一部の組織はクラウドを採用するために、レガシーシステム全体を再構成している。しかし他の多くの企業は、クラウドの柔軟な消費モデル、スケーラビリティ、人工知能、機械学習、アナリティクスなどの分野での新たな進歩から恩恵を受けながら、既存のインフラを引き続き活用したいと考えている」。

多くの企業がSAPやOracleのアプリケーションやデータベースに基づくミッションクリティカルなワークロードにPower Systemsのサポートを利用していることを考えると、グーグルによるPower Systemsのサポートは明らかにこの分野に適している。これにより、アプリケーションやインフラストラクチャを再設計することなく、ワークロードを段階的にクラウドに移行できる。Power Systems on Google Cloudは明確にGoogleのサービスや課金ツールと統合されている。

これはエンタープライズ向けのサービスであり、価格は公開されていない。Powerベースのサーバコストを考えると、分単位の格安な価格が存在しない可能性がある。

IBMは自前のクラウドサービスを提供していることから、グーグルと組んで自社サーバーを競合他社のクラウドに導入するのはいささか奇妙だ。もちろん、Powerサーバーをもっと売りたいのだろうが。一方で、より多くのエンタープライズワークロードを自社プラットフォームに移行させることを使命としているGoogle Cloudにとって、今回の動きは理にかなっている。グーグルが取り除くことのできるあらゆる障害は同社を有利にし、企業がそのプラットフォームに慣れるにつれ、他のワークロードを持ち込む可能性が高い。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

IBMは魚介類の安全性をブロックチェーンで向上させる

画像クレジット:Ivan/Getty Images

IBMは、さまざまな業界と協力して、ブロックチェーン技術を応用した食品の安全性向上に取り組んできた。米国時間の10月17日、その最新の取り組みを発表した。マサチューセッツの会社、Raw Seafoods(ロー・シーフード)とのパートナーシップにより、そのアプローチをシーフードにも拡げるもの。まずはホタテ貝から始める。

最近では、ビジネスにおいてブロックチェーンを取り巻く騒ぎは落ち着いてきた。しかし、サプライチェーンは、依然としてその強固なユースケースとみなされている。農場、工場、さらに漁船などからの出荷が市場へ届くまで、関連する人たちが追跡できるようにしようというもの。課題は、そこにサプライヤーを参加させることだった。というのも、サプライチェーンのサポートに関しては非常に広範な技術的選択肢があるからだ。

今回の取り組みでIBMは、マサチューセッツ州のニューベッドフォードに本拠を置くホタテ貝漁の船団と協力する。そしてホタテ貝漁に関するデータを、いつどこで漁獲したのかを含めてサプライチェーンのすべての関係者と共有できるようにする。IBMの説明によれば「このプラットフォームでは、漁船が接岸したこと、帆立貝の個々のロットが手作業で等級に分けて選別され、梱包され、目的地に向けて出荷されたことなども、すべて追跡できます」とのこと。また、漁船が港に到着する前から、漁の画像やビデオも共有される。

アクセス権のある人ならブロックチェーン上の情報にアクセスして、漁船から市場までの間のどこにホタテ貝があるのかノードをクリックするだけで確認できる。このようなデジタル化をしていなければ、食品の追跡は時間のかかる作業となる。ブロックチェーンを利用すれば追跡は瞬時に可能となる。

「伝統的な方法では、特定の食品を原産地までたどるのは、もし可能だとしても何日もかかるものでした。特に天然のホタテ貝の場合は面倒でした。それにかかる時間を、ほんの数秒に短縮することで、消費者がシーフードを敬遠してしまいがちな3つの懸念を解消できると考えています。それは安全性、持続可能性、それに信ぴょう性です」と、IBM Food Trust(フード・トラスト)のゼネラルマネージャーを務めるRajendra Raom(ラジェンドラ・ラオ)氏は述べている。

Raw Seafoodでは、このプラットフォームに接続するアプリの開発も計画している。それにより、レストランを訪れた消費者が、メニューに記載されたQRコードをスキャンして注文の前にホタテ貝の詳細情報を確認できるようになる。

昨年IBMは、Walmart(ウォルマート)とも同様のパートナーシップを発表した。そちらは、緑色葉野菜を農場からスーパーの棚まで追跡できるようにするものだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

完全自動航行する「メイフラワー号」が2020年にIBMのAI技術で大西洋を横断

完全自動航行船 「メイフラワー号」が来年9月に大西洋を航海する。自動とは程遠かった最初のメイフラワー号の航海から400周年を記念する。過去4世紀の技術進歩を振り返る素朴な方法だが、自動航海技術の重要なデモンストレーションでもある。海洋研究開発組織であるPromare(プロメア)がIBMから技術面の支援を受けて取り組む。

自動航行するメイフラワー号は表面を覆うソーラーパネルのほか、ディーゼルおよび風力タービンによる推進力で、英国のプリマスから米国マサチューセッツ州のプリマスまでの3220マイル(約5200km)の航海に挑む。成功すれば大西洋を自動運航する初めてのフルサイズの船舶になる。Promareは、この試みによってさまざまな自動航行船の研究開発への扉が開かれることを望んでいる。

船にはプリマス大学の研究者が開発した研究用ポッドを搭載する。具体的には3つあり、海上でのサイバーセキュリティ、海洋哺乳類の観察、海上マイクロプラスチック問題の分野で実験を行う。

IBMがこのミッションでリサーチとナビゲーションの技術面をサポートした。Power Systemサーバーが支えるPowerAIビジョンテクノロジーを提供したのはその一例。Promareと開発した深層学習ベースのテクノロジーが、レーダー、ライダー(レーザーを使った距離測定機器)、光学カメラを駆使して、海上の障害物やさまざまな危険を回避する。

システムはローカル処理とリモート処理の両方を想定した設計になっている。船上のデバイスは通信接続せずに動作可能だ。条件が整って両岸どちらかのノードを介して通信できる場合、本部から定期的に船上のデバイスにアクセスできる。

これは非常にクールなプロジェクトだ。海、深い湖、その他の水生環境の研究方法を変えるかもしれない。自動運航するメイフラワーへの乗船を仮想体験できるVRやARツールを開発する計画もある。来年の航海に向けてプロジェクトの進行から目が離せない。

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(翻訳:Mizoguchi)

AIで消防士の安全を守るスタートアップ「Prometeo」がIBMのCall for Codeチャレンジで優勝

ニューヨークの国連内にあるカフェ、Delegates Dining Roomで行われたイベントで、IBMは毎年恒例の「Call for Code Global Challeng」の優勝者を発表した。世界的問題のコンピューターによる解決を目的としたコンテストで、救急の初期対応から医療情報まで5組が表彰された。

Prometeoは、ワトソンを使った消防士のためのAIソリューションで最優秀賞を獲得した。33歳の熟練消防士率いるチームは、作業中の医療と安全に関する情報を、長期および短期にモニターするツールを開発した。スペイン拠点のスタートアップが開発したスマートフォンサイズのデバイスは、利用者の手首につけて温度、煙、湿度などを測定する。

「カラーシグナルがグリーンなら消防士の健康状態はOK」と共同創業者のSalomé Valero(サロメ・バレロ)氏がIBMのサイトで説明した。「カラーシグナルがイエローやレッドになったら、指令センターが行動を起こす必要がある。救助あるいは消防士を現場から退避させるための緊急行動を起こさなくてはならない」

チームはこのデバイスをスペインでテスト展開する準備を進めているが、プロジェクトの資金源も探している。IBMからの賞金20万ドル(2160万円)がいくらか助けになるはずだ。

第2位は、インド/中国/米国拠点のSparrowで、自然災害時の身体的・心理的な健康状態を扱うプラットフォームを開発した。U.C.L.A(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のチームは似たコンセプトのRoveで、第3位に入った。

Call for Codeは5年間のプログラムで、世界で起きている社会問題に取り組むチームたちに総額3000万ドル(32億円)を授与することを目的としている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

IBMが53量子ビットの量子コンピューターを近日公開

量子コンピューティングの探究を続けるIBMは、53量子ビット(Qubit)の量子コンピューターを近々顧客に提供すると、米国時間9月18日にIBM Q Networkで発表した。来月中旬に稼働予定の新システムは、一般利用向けとしては最大の汎用量子コンピューターになる。

新しいマシンは、IBMがニューヨークに新設し、同じく今日発表された「Quantum Computation Center」内に設置される。新センターは実質的にIBMの量子コンピューター用データセンターであり、ほかに20キュービットのマシンが5台設置され、来月にはその数が14に増える予定だ。IBMは同社の量子コンピューターについて95%のサービスアベイラビリティを約束している。

IBMによると、新しい53量子ビットシステムにはいくつもの新しい技術が盛り込まれており、クラウド向けにこれまでより大規模で信頼性の高いシステムの提供が可能になる。スケーリングが容易になり、エラーレートを下げるコンパクトなカスタム回路を導入し、プロセッサーも新たに設計した。

ibm q

「2016年、それまで一部の研究者しか利用できなかった量子コンピューティングを何万人ものユーザーに解放することを目標に、最初のクラウド向け量子コンピューターを公開した。以来、当社は全世界で大きく力を入れてきた」とIBM ResearchのディレクターであるDario Gil(ダリオ・ギル)氏は語る。「この熱意あふれるコミュニティーの目標は、Quantum Advantage(量子コンピューティングの優位性)と我々が呼ぶことを成し遂げ、今日の古典的な方法ではなし得なかった問題解決に役立てることだ。IBMの量子コンピューターシステムを広く普及させることで、その目標を達成できると信じている」。

こうしてIBMが量子コンピューティングを広く公開し始めたことは、同社の量子コンピューターへの取組みの真剣さを示すものだ。現在同社の量子プロジェクトは、商業、学術、研究合わせて80の団体と提携しながら進められている。現在あるマシンで実用的問題解決を始めている例もあるが、最先端の量子コンピューティングは、未だに基本アルゴリズムをテストしたり簡単な問題を解決することしかできていない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

IBMのメインフレーム事業は健在、新機種z15を発表

いまどき、メインフレームをテクノロジーの恐竜だと思うのは簡単だ。でも実際には、これらのマシンは今でも多くの大企業や大きな組織のコンピューティング戦略の基幹的部位だ。米国時間9月13日、IBMは、同社のメインフレームコンピューターの最新機種z15を発表した。

まず、たぶん多くの読者の想像どおり、それは巨大なワークロードを処理できるでっかくて強力なマシンだ。例えば1日に最大1兆件のウェブトランザクションを処理できる。240万のDockerコンテナを扱える。そしてそれだけのパフォーマンスにふさわしくセキュリティもずば抜けている。例えば、データを一度だけ暗号化すると、それは暗号化されたままの状態をずっと維持する。それがシステムを去るときでも暗号化されているから、ハイブリッドな構成を使っている企業にとって大きなアドバンテージだ。

そして忘れてならないのは、IBMが昨年340億ドル(約3兆6700億円)でRed Hatを買収したことだ。その買収は7月に完了し、その後両社はRed Hatの技術をIBMの事業全体に組み入れる努力をしてきた。その対象にはz系列のメインフレームも含まれる。

IBMは先月、Red HatのKubernetesベースのクラウドネイティブツールOpenShiftを、Linuxが動くメインフレーム上で使えるようにすると発表した。これで、他のシステムでOpenShiftの仕事をしていたデベロッパーが、特別な訓練なく円滑にメインフレームに移行できる。

IBMはメインフレームを、ハイブリッド環境の橋と見ている。それはセキュリティの高い場所をデータに提供し、Red Hatのツールと組み合わされば企業は、アプリケーションとデータがどこにあってもそれらに対する統一的なコントロールができる。

クラウドコンピューティングの時代に合わない高コストのマシンと思われがちだが、Constellation Researcの創業者で主席アナリストのRay Wangに言わせると、ある種の顧客にとってはコスト効率が良いそうだ。彼はこう言う: 「これまでクラウドにいてLinux上で開発していたとしても、I/Oが非常に多くて高度な暗号化とセキュリティが必要なら、メインフレームの方がパブリッククラウドより安くつく」。

彼はさらに、「高い料金でパブリッククラウドのベンダーの人質になるよりは、長期的に見てzの方がコスト効率が良いし、大きな計算能力を安全に得られる。とくにマルチクラウドやハイブリッドクラウドの環境では検討に値するオプションだ」、と言う。

航空会社や金融企業などが今でもメインフレームを使い続けており、しかも彼らがその巨大なマシンのパワーを必要とするのは現代的な事業課題に対応するためだ。そういう意味でz15は未来へのリンクであり、企業はその実現のために必要なパワーを得られる。

関連記事: 巨額買収を完了したIBMはRed Hatの翼で飛翔する

画像クレジット: IBM

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

IBMの耐量子磁気テープ記憶装置には聞き流せない重要な意味があった

技術業界で誰かが「量子」という言葉を使い始めるたびに、私は両手で耳をふさいで、話が終わるまで歌をうたうことにしている。IBMが発表した量子コンピューティングに対する安全性が保たれるテープ記憶装置の件でも私は歌いかけたのだが、よく見てみると、けっこう重要な話だった。

断っておくが、その言い方はちょっと誤解されやすい。テープ自体が耐量子というわけではまったくないからだ。量子ビットが超低温の牢獄から逃げ出してデータセンターや企業の本社の地下室にあるテープ記憶装置にちょっかいを出すなどといった心配があるわけでもない。問題は、量子コンピューターがいよいよ実用化されたときに何が起きるかだ。

量子のウサギの穴の奥深くまで身を投じるまでもなく、量子コンピューターと従来型のコンピューター(現在みなさんが使っているやつ)がまったくの別物であることは誰もが承知している。ひとつ例を示せば、現在のスーパーコンピューターでも膨大な時間がかかる計算を、量子コンピューターなら一瞬で済ませてしまうというような点だ。原理は聞かないで欲しい。ウサギの穴には入らないと言ったはずだ。

量子コンピューターが得意とするであろうものに、特定のタイプの暗号がある。量子コンピューターは、現在使われている暗号化技術の多くを簡単に破ってしまうと推測されている。最悪のシナリオはこうだ。ある人が暗号化されたデータを大量に保管していたとする。今は鍵がなければ使えないデータなのだが、未来の悪者はそれを解錠できてしまう。これまでどれほど情報漏洩があったかを考えると、また自分たちの人生が丸ごと盗まれずに済んでいるのは暗号化のお陰であることを考えると、深刻な脅威だ。

関連記事:BlackBerry races ahead of security curve with quantum-resistant solution(耐量子セキュリティー競争でBlackBerryが先行、未訳)

IBMやその他の企業は先を見ている。量子コンピューターは今はまだ脅威ではない、よね? ハッカーでもなければ、それを本気では使っている人はまだいない。しかし、今買ったデータの長期保存用にテープ記憶装置は「業界標準」の暗号化技術を使っているため、10年後にはハックされてすべてのデータが漏洩してしまうとしたらどうする?

それを予防するために、IBMはそのテープ記憶装置の暗号化アルゴリズムを、最先端の量子コンピューティングによる暗号解読技術に耐え得るものに切り替えている。具体的には「格子暗号」だ(またもやウサギの穴だ。入りたい方はどうぞ)。このような機器は数十年間使い続けられることが想定されているのだが、その間にコンピューター事情が根底から変わってしてしまう可能性がある。将来、どの方式の量子コンピューターが登場するかを正確に予測することはできないが、少なくとも、ハッカーが大好きなカモにならないよう対策しておくことはできる。

テープそのものは、ごく普通のものだ。事実、システム自体は先週あなたが買ってきたものと、まったく変わらない。違うのはファームウェアだけだ。つまり、古いテープ記憶装置でも、後から耐量子技術を実装できるということだ。

量子コンピューターは、今のコンピューターと同じようには使えないが、来年どうなるかは誰にもわからない。10年後は当たり前になっているかも知れない。そのため、これから数十年先まで業界で頑張るつもりでいるIBMのような企業は、今から対策を考えておく必要があるわけだ。

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(翻訳:金井哲夫)

IBMが約3.7兆円でRed Hat買収を完了

昨年から既定路線ではあったが、IBMのRed Hat(レッドハット)買収が完了した。買収価格は340億ドル(約3.7兆円)とテクノロジー企業のM&Aとしては史上最大級となる超大型案件だった。

IBMがLinuxの巨人を買収しようとしていることを最初に発表したのは昨年10月だった。その後、米司法省はこの5月に合併を承認し、続いて先月下旬にEUが無条件で合併を承認したことで最終的に障害が取り除かれた。

IBMは「Red Hatは引き続き、CEOのJim Whitehurst(ジム・ホワイトハースト)氏のもとで独立の企業として運営される」と述べている。 ホワイトハースト氏はIBMの経営陣に参加し、IBMのCEOであるGinni Rometty(ジニー・ロメッティ)氏の直属となる。

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滑川海彦@Facebook

GoogleとIBMは、いまでもクラウド市場シェアを広げようと必死だ

クラウド市場の場合には、知られている名前は多くない。たとえば、AWSは約32%の市場シェアを持つマーケットリーダーである。Microsoftは、はるかに少なく、そのシェアは14%であるが、AWSを除いて唯一の2桁シェアを持っている企業だ。また、IBMとGoogleが、3位と4位に留まっていることも知られている。どちらを見ようとも1桁台のシェアだ。市場は拡大し続けていいるものの、これら2つの大企業のシェアが広がる様子は見えない。

もちろん、どちらの会社もそのことに満足はしていない。そのことを強く憂えたGoogleは、これまでの責任者だったDiane Greeneに代えて、OracleのベテランであるThomas Kurianを採用し、部門の停滞状態を脱しようとしている。一方IBMは、10月にRed Hatを340億ドルで買収したことで 、さらに大きな話題を提供した。

今週、両社はさらに動きを見せ、彼らがクラウド市場を誰にも明け渡すつもりがないことを、市場に知らしめた。例えばIBMは、今週サンフランシスコで大きなIBM Thinkカンファレンスを開催しているが、この中にはWatsonを競合他社のクラウドに開放することも含んでいる。IBMのような会社にとって、これは大きな動きだった。ちょうどMicrosoftがiOS用のアプリケーションを開発し始めたときと同じだ。プラットフォームをまたがって展開することが大切なことは周知の事実だ。もし市場シェアを得たいなら、自分の枠を超えて考え始めた方が良いだろう。

クロスプラットフォーム互換になること自体は、一般的には特に急進的と呼ぶことはできないが、IBMのような会社の場合には確かに急進的ということができる。もし同社が選べる立場で、もう少し高い市場シェアを持っていたならば、おそらく現状を維持するだけで満足していたことだろう。しかし、大多数の顧客がマルチクラウド戦略を追求しているのならば、バンドワゴンに飛び乗るのは良い考えかも知れない。そしてそれはまさに、IBMがWatsonへのアクセスをクラウドをまたがって開放することによって行ったことだ。

明らかにRed Hatの買収はハイブリッドクラウドへの転換だった、そしてIBMがそのアプローチに真剣であるなら(340億ドルもつぎ込んだのだからそうであるとは思うが)、立派なことを言うだけではなく、実践が伴わなければならない。IBM WatsonのCTO兼チーフアーキテクトのRuchir Puriが、この動きについて私の同僚のFrederic Lardinoisに語ったところでは、「これらはハイブリッド環境の中にあります。顧客は複数クラウド実装を採用していますし、プライベートクラウドの中にもデータを保持しています。しかしAIのプロバイダたちは、顧客をこのハイブリッドクラウド環境に適さない特定の実装にロックインさせようとしてきました」ということだった。これはRed Hatを使った戦略にうまく当てはまる。そして今年はIBMからの様々な製品ラインで似たようなアプローチを目にすることになると思う(Googleも昨年、独自のハイブリッド戦略を発表した際にこれを認めている)。

その一方で、本日サンフランシスコで開催されたGoldman Sachs Technology and Internet Conferenceで、Thomas KurianがGoogleとしてのお披露目パーティを開催した。Bloombergによれば 、彼は元の雇用主であるOracleのやり方を踏襲し、営業担当者の数を増やし、特定の分野の知識を習得するためのトレーニングを施すと発表したということだ。

彼の発言は、Googleが従来の企業顧客に積極的にアプローチすることを示唆しているが、私は彼の前任者であるDiane Greeneが、売上を増やすために、単にインバウンドマーケティングだけに頼っていたとも思っていない。実際、彼女は会社の意志よりもはるかに積極的に、政府相手の契約を追求していたという噂がある。ともあれ、いまや売上を伸ばすのはKurianの役割だ。もちろん、Googleがクラウド収益を公表していないことを考えると、どのような成長が見込まれるのかを知ることは困難だが、おそらくそれがより成功した場合には、より積極的に開示するようになるだろう。

BloombergのShira Ovideが本日ツイートしているように、実証済の真の企業戦略に目を向けることは1つの方法だが、そのアプローチの実践がシンプルで、Googleが最終的にそのやりかたで成功できるということは意味していない。

これら2つの会社は、これまでのところあまり景気の良くなかったそれぞれのクラウドの命運を、変えたいと必死であることは明らかである。本日発表された動きは、明らかに市場シェアを伸ばすためのより広範な戦略の一部だが、それが可能になるかどうか、そして固まってしまった市場ポジションを変えることができるかは、まだわからない。

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(翻訳:sako)

IBM、CESで史上初の商用量子コンピューターを発表――20Qビットだがパイオニアとして大きな意義

今日(米国時間1/8)、ラスベガスで開幕したCESでIBMは世界で初となる実験室の外で稼働する商用量子コンピューターを発表した

このIBM Qシステムには20Qbitの量子コンピューターと伝統的なコンピューターが統合されている。ビジネス、研究の双方で、従来のコンピューターとほぼ同様にアプリケーションを作動させることができる。物理的にはまだ相当にかさばるシステムだが、量子コンピューター部分の冷却システムを始め、利用に必要なすべてのハードウェアがパッケージに含まれているとう。

IBMは発表にあたって「作動に必要なすべての要素を統合した初の汎用量子コンピューター」だと強調した。もちろん 20Qbitというのは量子コンピューターとしてはきわめて小規模であり、量子コンピューターが必要とされる典型的に困難な課題を解くにはまったく力不足だ。このシステムのQbitの持続時間は100マイクロ秒レベルだという。

IBM が「現在のコンピューター・テクノロジーでは計算が困難と考えられている課題を解決するための第一歩が踏み出された」とパイオニアとしての意義を強調するのは無理ない。ある種の問題は規模の拡大と共に指数関数的に計算量が爆発し、現行のコンピューター・システムでは実用的な時間内でも処理が不可能となる。量子もつれを利用した量子コンピューターではネックが一挙に解消されると期待されている。ただしわれわれはまだそこまで来ているわけではない。そうではあるが、このシステムは第一歩ではある。IBMはシステムは将来アップグレードできるし、メンテナンスが容易であると述べた。

ハイブリッドクラウドおよびIBM Research担当 上級副社長のArvind Krishnaは「IBM Qシステムは量子コンピューターの商用化に向けての大きな一歩だ。このシステムは量子コンピューティングが研究施設の外でも稼働することを実証した点が決定的に重要だ。我々はビジネスや科学研究に役立つ実用的な量子コンピューティング・アプリケーションの開発を進めていく」と述べた。

またQシステムのデザインも見逃せない。 IBMは十分誇りにしていいだろう。スーパーコンピューターの普及にあたったは 「世界でもっとも高価なベンチ」と呼ばれたCrayコンピューターの独特なデザインが果たした役割も小さくなかった。IBMはMap Project OfficeUniversal Design Studioなどのスタジオと提携してデザインを決定したという。また英王室の宝石やモナリザなどの名画の展示のデザインで知られるGoppionも協力した。 
IBMでは Qシステムは単なるハードウェア以上のアート作品だと考えているという。たしかにその成果は驚くべきものだ。高さ幅が2.7メートルの気密された直方体で、伝統的コンピューターなど他の部分はシャーシー内に隠されているが.、中央の透明な部分に量子コンピューターがシャンデリアのように輝いている。

この量子コンピューターが欲しいならIBM,と提携する必要がある。量子コンピューターはAmazonのプライム会員になれば送料無料で翌日届く、というようなレベルにはなっていない。

ちなみに IBMは石油メジャーのExxonMobilやCERN、Fermilabなどの著名な研究機関と提携してIBM Q Networkを作った。これはビジネス利用と研究利用を統合し、 量子コンピューティングのユースケースを共有するコミュニティーの確立を目指すものだ。参加メンバーは量子コンピューティング・ソフトウェアを共有することができる。またクラウドベースの量子コンピューティングも計画されている。

CES 2019 coverage - TechCrunch

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滑川海彦@Facebook Google+

【以上】