SpaceXのStarlink衛星打ち上げは延期、画像撮影とデータ分析を行うBlackSky衛星のライドシェアを予定

アップデート:SpaceX(スペースX)は米国時間6月25日、実施予定だったのStarlinkミッションを中止した。次回の日程は不明だが、おそらく同社が次に計画している6月30日のGPS衛星の打ち上げの後なる確率が高い。

SpaceXは米国時間6月25日木曜日の米国東部夏時間午後4時18分(日本時間6月26日午前5時18分)、追加のStarlinkミッション(1カ月間で4回目)を打ち上げる。今回のミッションではStarlink衛星57機を搭載し、衛星ブロードバンドインターネットサービスのローンチに向けて、宇宙空間にある既存のコンステレーション(衛星群)に加わることになる。

打ち上げられるFalcon 9ロケットには2基のBlackSkyの衛星も搭載されており、これは地球の画像撮影およびデータ分析サービスに使用される。これはSpaceXが昨年導入したプログラムに基づいて導入された、小規模な事業者が共有ペイロードの一部としてミッションを予約し、約100万ドル(1億1000万円)から始まる打ち上げサービスへのアクセスを可能にする、同社のもう1つのライドシェアミッションだ。SpaceXは今月初めに、顧客のPlanetのための3機つの衛星に加えて、同社のStarlink衛星の58機を含むペイロードを搭載し、このライドシェアミッションの第1回目を打ち上げた。

ミッションで使用されるFalcon 9はこれまでに4回飛行しており、その中にはCrew Dragonの初の無人デモミッションも含まれる。SpaceXはStarlinkのコンステレーションを急速に成長させ続けており、ブースターの再利用と相乗りを組み合わせることで、打ち上げコストを大幅に削減できるだろう。

今回の打ち上げではすべてのStarlink衛星に、同社が開発した展開式のサンバイザーシステムが搭載される。

打ち上げでは第1段ブースターの着陸も実施される。これはSpaceXがわずか3週間で行った4回目の打ち上げであり、これには5月30日に実施された歴史的な乗務員によるCrew Dragonのデモミッションが含まれる。また、10回目のStarlinkの打ち上げでもある。さらに同社は、別の打ち上げミッションとしてケープカナベラル空軍基地からのGPS衛星ミッションを6月30日に予定している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

イーロン・マスク氏が天文観測の邪魔をしないStarlink衛星の新機能を解説

今週開かれたバーチャル記者会見で、SpaceXの創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社のStarlink衛星のコンステレーションが夜間の天文観測を邪魔しないようにする新計画の詳細を解説した。マスク氏は、以前、衛星の視認性を低減させるための「サンバイザー」を作るつもりだとTwitterで明かしていたが、その仕組みや以前にSpaceXが試した黒く塗る方法と比較してどうなのか、詳しいことをマスク氏もまだわかっていなかった。

Space Newsの記事によると、SpaceXの新しい「VisorSat(バイザーサット)」のアイデアは、基本的にサンバイザーで太陽の直射光をブロックし、衛星に搭載されている反射率の高いアンテナに光が当たらないようにして、反射光が地上に届くのを阻止するというものだ。その反射光が、夜空の明るい光として見える原因になっている。

将来のStarlinkに追加予定のこの新しいハードウェアは、その他の対策を補完するものでもある。その1つが、打ち上げ後に目標の軌道にのるまで、特に地上から見えやすくなる期間に衛星の向きを変えるという対策だ。全体的なゴールは「1週間以内に衛星を肉眼では見えないようにして、天文学への悪影響を最小限にする」ことであり、コンステレーションによるいかなる影響も科学者や研究者による新発見を妨害しないよう重点的に取り組むことだと、マスク氏は言う。

Starlinkコンステレーションを見えにくくするSpaceXの最初のテストでは、反射しやすい表面を暗い色で覆う方法に重点が置かれていた。テスト当初はある程度の効果が示されたものの、VisorSat方式の方が効果的であり、明るさを少し下げるといった程度ではなく、大幅に低減してくれるものだとマスク氏は確信している。

今のところSpaceXは、次のStarlinkの打ち上げでVisorSatシステムをテストしたいと考えている。2020年に入ってからこれまで、月に1度のペースで打ち上げが行われてきた。だが、このシステムには機械工学上の問題が残されている。太陽の直射光を遮る日よけを飛行中に展開する必要があるのだが、それはまったく新しい装置だ。しかもStarlinkの本来の仕事を邪魔しないよう、日よけの素材は電波を通すものでなければならない。そうでなければ、地上の利用者に低遅延の高速ブロードバンドを提供できなくなってしまう。

これがうまくいけば、その後のStarlink衛星にはVisorSatが搭載されることになる。ちなみに、現在軌道上にある衛星は比較的寿命が短く、それらに対策を施さなくても、ほんの3、4年で運用を終えて軌道から落ちることになっているとマスク氏は話す。そのころには、さらに工学的に進歩した衛星に置き換わっているはずだという。

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXが60個以上のStarlink衛星の打ち上げに成功、2020年のサービス開始に布石

SpaceXは、新たにStarlink(スターリンク)衛星の一団を打ち上げた。地球低軌道に展開されたこれらの衛星は、地球全域での高帯域ブロードバンドのインターネット通信網の利用を可能にするものだ。今回の打ち上げで軌道上のStarlink衛星は合計422基となったが、SpaceXではそのうち2基(最初の2つのプロトタイプ)は早急に軌道から外すことにしている。

すでにSpaceXは、民間人工衛星運用企業としては世界最大規模になっているが、まだ余裕も伸びしろも十分にある。また、Starlinkの打ち上げ頻度も、世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)危機にも関わらず増加している。前回の打ち上げは3月18日だった。SpaceXは今年に入ってわずか4カ月の間に、トータルで4回の衛星打ち上げを実施している。

この攻めのペースを保つのには理由がある。打ち上げを行うごとに、この衛星がネットワークの屋台骨を構成するStarlinkブロードバンドサービスの開始が近づくからだ。SpaceXでは、今年後半のいずれかの時期に、カナダと米国北部をカバーするネットワークの提供を始めたいと考えている。さらに、この方式を有効に展開するためにも欠かせない。従来の静止インターネット衛星よりもずっと地表に近い軌道を回り、サービス提供地域の上空を通過する衛星同士で接続を引き継ぐ必要があるため、一般消費者や企業に安定的で信頼性が高く遅延の少ないインターネット接続を提供するためには、たくさんの衛星を飛ばす必要があるのだ。

Starlinkは、来年には全世界へサービスを拡大したいと考えている。そのためには、さらに多くの衛星を打ち上げ、ずっと大きなコンステレーションを構築しなければならない。SpaceXが公表した資料には、需要や性能に応じて、1万2000基から4万2000基の小型衛星を打ち上げてネットワークを完成させると記されている。

SpaceXのCEOで創業者のElon Musk(イーロン・マスク)氏は、Starlink衛星が地上からの夜間の天体観測を妨害するとの苦情への対処について詳しい説明も行った。その人工衛星が反射する光は、天体写真に点や筋となって現れる。それが地上の望遠鏡や天文台からの天文観測や研究に支障をきたすと天文学者は主張している。

今回の打ち上げには、使用を終えたFalcon 9(ファルコン9)ブースターロケットの回収も試みられた。これは、SpaceXのDemo-1 Crew Dragon(デモ1・クルー・ドラゴン)の打ち上げにも使用されたものだ。さらに2019年には2回使われている。Falcon 9は、大西洋上で待機していたSpaceXのドローン船に計画どおり着艦した。これで、今年の初めに数回あったFalcon 9ブースターの着陸失敗が挽回されることを願う。

SpaceXはまた、打ち上げの際にStarlink衛星を保護し、後に2つに割れるフェアリングの回収も試みることにしている。だが、システムのアップグレードにより、パラシュートで減速しながら降下してくるフェアリングを網で捕まえる方式は使えない。その代わりに、海に着水したところを拾い上げる方法が検討されている。SpaceXがその方法を確定し発表したときには、この記事を更新する予定だ。同社では、フェアリングももっと頻繁に再利用したいと考えているのだが、網で捕まえる方法のほうが再使用のための整備が楽になる。これも、現在建造中の完全に再利用可能なStarship(スターシップ)宇宙船を実現させるべく、事業を継続したいSpaceXのコスト削減策のひとつだ。

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXがエンジントラブルでStarlink衛星の6回目の打ち上げを中止

SpaceX(スペースX)は、衛星ブロードバンド計画ことStarlinkの第6弾を打ち上げる予定だったが、カウントダウンタイマーが0になるとともに打ち上げは中止された。打ち上げの生放送では、同社のエンジニアが「エンジン出力が高いので打ち上げを中止する」との報告を受けており、生放送をしていたアナウンサーもMerlinエンジンの出力に関連した中断であると述べ、同社は後にシーケンスがシステムによって自動的に中断されたとの追加の詳細を発表した。

アナウンサーは「機体の状態は良好だ」と発言し、SpaceXも後にこれを確認した。これは、次回の打ち上げに向けたいい兆候だ。同社は米国時間3月16日にバックアップのウィンドウを設けているが、実際の次の打ち上げスケジュールはまだ決まっていない。同社としてはエンジン出力の問題の原因を調査して特定し、その後に打ち上げを決定するのが理にかなっているだろう。

今回の打ち上げで使われるFalcon 9のブースターは記録的な5回目の飛行となり、ペイロードを保護するフェアリングは初めて再利用される。SpaceXは詳細が確認でき次第、最終的な打ち上げスケジュールを明かすとしており、TechCrunchも情報が得られ次第お伝えする予定だ。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

SpaceXが60基のStarlinkミニ通信衛星打ち上げは成功、ブースター回収は失敗

 

SpaceXはミニ通信衛星60基を軌道に投入した。SpacXのStarlinkは大量の小型衛星で世界をカバーしインターネット接続を提供しようとするシステムだ。60基ずつの打ち上げは今回で5回目の成功となり、これで300基の衛星を軌道に投入したことになる。Starlink衛星は今年だけで3回の打ち上げとなる。SpaceXは世界最大の商用衛星通信運用会社となった。

Starlinkプロジェクトは低軌道にある大量の小型衛星を利用するもので、次々に飛来する衛星がインターネット接続を引き継ぐことにより遠隔地を含めて全世界のユーザーに低コストで高速な接続を提供しようとしている。当面の目標は、2020年中にアメリカとカナダのユーザーをカバーすることだという。その後、衛星群の数の増加とともにサービスを世界各地に拡大する予定だ。

SpaceXがSarlinkで用いた打ち上げ方法は多少変わっている。ロケットの2段目は1回噴射して楕円軌道に入った後、同種の衛星打ち上げミッションよりずっと早く衛星を放出する。衛星はそれぞれのスラスターを噴射して所定の軌道に移る。これは複雑な運動となるがSpaceXによると燃料その他の打ち上げコストを大きく節約できるという。

2月18日の打ち上げはStarlinkシステムを稼働に向けて前進させただけでなく、SapceXにとって今後大きな意味を持つ再利用テクノロジーの改善も目的だった。1段目のFalcon 9ブースターは2019年すでに3回飛行しており、利用回数だけでなく、再利用に要する期間も前回の飛行からわずか62日とSpaceXとして最短だった。

SpaceXは今回もブースターを地上回収しようとしたが(成功していれば50回目の回収となった)、残念ながら失敗した。ブースターは着地のための減速噴射までは予定どおりだったものの、中継ビデオを見ると、ブースターは着地点を大きく外れて海に落下したようだ。SpaceXの前回の回収失敗はFalcon Heavyの中央ブースターが計画どおりに作動しなかったためだった。それ以外のケースでは回収は成功している。「ブースターは海に落下したものの、十分に減速されており破壊されていなかったため再利用の可能性はある」とSpaceXは述べている。

またSpaceXはカーゴベイを覆うフェアリングの回収も試みており、前回は二分割のフェアリングの片方を専用回収船のネットでキャッチすることに成功した。今回、SpaceXは大西洋上に専用船を2隻航行させフェアリングを2個とも回収する試みを行っているのでSpaceXから発表がありしだいその模様をアップデートしたい。

Starlink衛星の打ち上げはこの後も引き続き行われる予定だ。3月にも次の発射が計画されているという。

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滑川海彦@Facebook

衛星コンステレーションによる夜空の光汚染を天文学者たちが懸念

国際天文学連合(International Astronomical Union, IAU)がこのほど、StarLinkなどが製造している何千もの人工衛星からなる衛星コンステレーションの影響の可能性に関する初期的調査報告書を発表した。報告書は、地球からの天体観測に深刻な悪影響が及ぶ恐れがあるため、衛星の削減とルール作りが早急に必要だとしている。

同団体は2019年の夏に懸念を表明し、その後、衛星コンステレーションの影響に関する大規模な調査研究を、各地の天文台や組織の協力を求めて実施した。その一般的な感触は「最善を望み最悪に備える」というものだ。

IAUの推計によると、低地球軌道に数万の衛星があれば、地平線上には常時1500ほどの衛星が存在することになる。ただし、通常の天体観測の対象となる30度以上の上空にあるものは、250から300と少ない。

関連記事: Astronomers fret over ‘debilitating threat’ of thousands of satellites cluttering the sky…天文学者たちが空に散乱する何千もの人工衛星に懸念(未訳)

その圧倒的多数は、まだ空が暗い早朝など、太陽の光が人工衛星の表面から反射する特定の時間帯以外は、肉眼で見えないだろう。しかし、これら膨大な数の人工衛星の可視性と反射性を下げる方策はすでに採られているが、実際の効果は未知数であり、今からでは何をするにも遅すぎる、という状況になることもありえる。

IAUがそれ以上に心配を指摘するのは、ルービン天文台から改名した大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(Large Synoptic Survey Telescope、LSST)のような広域的観測に対する影響だ。そのような望遠鏡が行うおよそ30秒の露出のほぼ1/3は、頭上の衛星の影響を受けるだろう。そして高感度の機器が作る像への影響は、肉眼よりも鮮明だろう。

それを避ける方法はあるだろうが、IAUの声明から同団体のフラストレーションが伝わってくる。

理論的には軌道を正確に予測して、その通過時に必要に応じて観測を中断することで、新たな衛星の影響は軽減できるだろう。データ処理によって結果の画像をより鮮明にすることもできる。しかしながら大量の衛星による大量の飛跡は、天体観測のスケジュールと運用を損なう複雑で無視できないオーバヘッドを作り出すだろう。

言い換えると、衛星コンステレーションの事業者たちが何もしなければ、我々に対策をしなければならない。そしてそれには費用と欠陥が伴う、ということだ。

問題はすべて可視光線に関連している。衛星コンステレーションからの電波や、その他の目に見えない放射による観測の妨害は未知数である。

関連記事: SpaceX successfully launches 60 more satellites for its Starlink broadband internet constellation…SpaceXがStarlinkコンステレーション用の衛星をさらに60基打ち上げ(未訳)

結局のところ、IAUの声明は中立を装ってはいるものの、明らかにその本音では怒っている。

「暗い場所で見える美しい夜空を保護したい、という人々の意識はとても強い。それは捨ててはならない世界遺産と見なすべきだ。軌道を周回する人工物の輝度について、国際的に合意された規則や指針がない。今日までそれは、優先度の高い話題として取り上げられることすらなかったが、現在、ますます重要になりつつある。したがってIAUは今後、国連の外宇宙平和利用委員会の会議で常時その所見を述べ、世界の政府代表者たちの注意を、新たな宇宙計画が天文学と科学全般にもたらす脅威に向けていきたい」

ひと握りの企業が夜空を散らかすことを、彼らは天文台にじっと座ったまま黙認したくないのだ。

画像クレジット: IAU

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXがStarlink衛星インターネットを60機追加打ち上げ

SpaceX(スペースX)は追加で60機のStarlink衛星を打ち上げた。これは衛星ブロードバンドにおける4回目の打ち上げで、今年だけでも2回目となった。打ち上げは米国フロリダのケープ・カナベラル空軍基地から米国東部標準時1月29日の9時06分(日本時間同日23時6分)に実施され、ブースターは2019年にSpaceXの2回のミッションで使用されたものだ。

さらに同社は、ペイロードがロケットの第2段から分離された後、Falcon 9のブースターを大西洋のドローン船に着陸させて再び回収した。同社のブースターを回収する能力はかなり信頼性が高く、56回のすべての着陸のうち48回成功しており、最後の失敗は2018年12月だった。

Starlinkの衛星の配備は計画通りに進んでいるようで、現在SpaceXはStarlinkにて約240機の衛星を運用している。同社は1月初めに前回の衛星群を打ち上げた後、世界最大の民間衛星オペレーターとなり、今回さらにリードを広げたことになる。

衛星群の打ち上げは続けられており、SpaceXのCOOであるGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏によると、今年中にも米国とカナダの顧客向けに衛星ブロードバンドサービスを開始する予定だという。また、今年末までに少なくともあと6回の衛星打ち上げを予定しており、合計24回の打ち上げにより、全世界でのサービスが提供される。

一方でSpaceXは、衛星コンステレーションが地球からの天体観測に与える影響について天文学者から批判されているが、それに関してStarlink衛星の地球側を暗く塗る処理の実験を含む、対策を講じていると述べている。本日同社は、前回打ち上げた前述のコーティングを施した試験衛星の結果を評価しており、結果を分析しアップデートを提供すると発表した。

十分な衛星数が確保されれば、Starlinkはこれまで高速インターネットにアクセスできなかった地域に、スムーズなビデオ通話とストリーミングを提供する。SpaceXによると、これは遠隔地だけでなくクルーズ船や飛行機も含まれるという。

今回の打ち上げでは、ロケットの打ち上げ時にペイロードを保護する2個のフェアリングの両方を回収する試みが行われた。これらはロケットが宇宙に到達すると地球に落下し、SpaceXは大きなネットを装備した「Ms.Tree」と「Ms.Chief」という2隻の専用船を用いて捕獲を試みた。パラシュートにより落下するフェアリングをキャッチすることで、同社は1回の打ち上げにつき600万ドル(約6億6000万円)を節約できる可能性があり、これはFalcon 9の第1段ブースターに加えて、さらに再利用可能なパーツを追加することになる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXがStarlink衛星打ち上げでフェアリングの片方を捕獲

SpaceX(スペースX)は米国時間1月29日のStarlink衛星の打ち上げで使用されたフェアリングの半分を回収し、再利用可能な打ち上げシステムに一歩近づいた。なお、フェアリングの半分は回収用に特別に大きなネットを貼った回収船「Ms.Tree」により、大西洋にて捕獲された。

同社はフェアリングの両方を回収しようとしていたが、もう一方の回収船「Ms. Chief」では回収に失敗し、海へと落下した。しかし同社はは海上に「軟着陸」したと伝えており、残りの半分も回収しようとしている。回収船を利用する目的は、海からフェアリングを回収するという困難で費用がかかり、さらにフェアリングに損害を与える手順を避けることにある。

SpaceXが回収しようとしている主な理由は金銭的なもので、使用されたフェアリングを再使用することで、打ち上げ費用をさらに600万ドル(約6億50000万円)ほど節約できる。同社の全体的なアプローチは、ロケットと同じく再使用に焦点を当て1回あたりの打ち上げコストを削減することだ。

同社がフェアリングを回収しようとしているもう1つの理由は、Crew Dragonのにおける同様の回収システムの可能性を証明するためだ。同社CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は最新の業績発表で、Crew Dragonの飛行中での中断テストが成功したことについて話し、将来的にはこのような回収船を使って宇宙飛行士を乗せた宇宙船を捕獲し、洋上でのクルー回収や地上への着陸と比べてプロセスを簡易化できると語った。

SpaceXはこれまでに3個のフェアリングを回収しているが、Falcon 9の第1段ブースターと同じくらい信頼性の高いフェアリング回収の実現には至っていない。それでも成功率は上昇しており、これは良い兆候だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXがStarlink衛星群打ち上げへ、約180機の運用予定で民間として最大規模に

 

SpaceX(スペースX)は、2020年中に衛星インターネットサービスを開始する準備を進めるために、さらなるStarlink(スターリンク)の衛星群を打ち上げる。打ち上げは米国時間1月6日の東部標準時で午後9時19分(太平洋標準時で午後6時19分)から始まり、ミッションのライブ配信は打ち上げ時間の約15分前(東部標準時で午後9時4分、太平洋標準時で午後6時04)に始まる。

今回の打ち上げは2019年末に打ち上げられた60機と、テストと実験の目的で2019年に打ち上げられた60機のスペースXのStarlinkコンステレーションの合計120機に、60機の衛星を追加するものとなる。スペースXは約180機の衛星(なお、一部の打ち上げ済み衛星は稼働していない)を運用する予定で、これは現在活動している民間の衛星事業者の中で最もアクティブな運用例となる。

スペースXは、Starlinkのためにさらに多くの衛星を打ち上げる計画だ。その目的は、利用エリアが限られていたり、低速だったり、あるいはサービスがまったく提供されていない地域に高速ブロードバンドを提供することだ。Starlinkはまず、2020年末までにアメリカとカナダでサービスを開始し、60機のStarlink衛星をさらに20回打ち上げたいとしている。

スペースXは同社のグローバルインターネットサービスのために、3万機の衛星打ち上げ許可を申請しており、「Starlinkの総ネットワーク容量とデータ密度を、予想されるニーズの増加にあわせて拡張するための対策を講じる」と記している。同社は、Starlinkが天体観測に与える影響のために科学者から批判されてきたが、地球に面した衛星の側面を黒く塗るなど、その影響を最小限に抑えるための対策を講じるとも伝えている。

今回の打ち上げは、スペースXにとって2020年最初のものとなる。1月初旬からの打ち上げは、2020年に同社が計画している積極的なペースでのそれを期待させるものだ。打ち上げにはFalcon 9ロケットが使用される。このロケットは2019年の2回を含め、これまでに3回使用されている。今回の打ち上げにはブースターだけでなく、ロケットのペイロードを保護するフェアリングの半分の回収の試みも含まれている。

 

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXがFalcon 9ブースターの4回目の回収、フェアリングも再飛行と回収に成功

 SpaceXのStarlinkのミニ通信衛星衛星の大量打ち上げは計画どおり、60基を軌道に乗せることに成功した。今朝Falcon 9によって打ち上げられた60基は今年5月に打ち上げられた60基に続くものだ。前回までの打ち上げがテストだったのに対して、今回からは宇宙インターネット網を構成するStarlink衛星群の第一陣だ。

打ち上げは米国フロリダ州ケープカナベラルで実施され、Falcon 9の第1段ブースターは単なる「再」利用どころか、すでに3回打ち上げに用いられており、今回無事に地上回収に成功したことで4回目の宇宙飛行となった。これはSpaceX自身にとっても再利用回数の新記録だ。ブースターロケットについてSpaceXでは「最大10回の宇宙飛行に耐えるよう設計されている」と述べている。

今回SpaceXはペイロードを大気との摩擦から保護するフェアリングの回収にも成功した。これは大西洋を航行する回収専用船「Of Course I Still Love You」の船上に張り渡されたネットによってキャッチされた。SpaceXがファエリングの再飛行、再回収を試みたのはこれが最初だ(もちろん他の宇宙企業も試みていない)。前回のフェアリング回収は大型のFalcon Heavyによって中東上空をカバーする Arabsat-6Aを打ち上げた4月のミッションで実施された。 SaceXのCEOであるイーロン・マスク氏によれば、フェアリングの回収は1回ごと600万ドル(約6億5400億円)の節約となるという。

SpaceXでは当初からフェアリングの回収を図っていたが、最初の打ち上げでは海の状況やその他の理由で成功しなかった。

SpaceXは最終的に1万2000基程度の衛星によってStarlinkを構成する計画だ。この衛星コンステレーションは地球上のあらゆる場所でインターネットへのアクセスを可能にする。衛星群は軌道上を周回しながら次々に中継機能を別の衛星にスイッチしていく。これは地球の自転に同期する少数の大型静止衛星によって通信を行うのとはまったく異なるアプローチだ。赤道上空に静止する衛星によるカバー範囲は衛星の経度によって限定されるほか、高緯度地方では接続が困難になる。

今年、イーロン・マスク氏はStalinkを利用した最初のツイートを行っている。SpaceXでは今後6回の打ち上げによって米国とカナダのユーザーがStarlinkを利用できるにようにする計画だ。その後24回の打ち上げでサービスは全世界に拡大される。

【Japan編集部追記】打ち上げ、回収のライブビデオを含む記事はこちら

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceX Falcon 9の打ち上げライブビデオ、ブースターは4度目の宇宙飛行へ

米国時間11月11日の朝、SpaceXは米国フロリダ州ケープカナベラル宇宙基地からビッグな打ち上げを行う。 Falcon 9にはイーロン・マスク氏が推進する衛星通信網であるStarlinkを構成するミニ衛星60基が搭載されている。

今回のStarlink衛星は実験ではなく、実用衛星の第1陣だ。SpaceXではこの通信網を広く一般ユーザーに開放し、世界のどこにいても高速インターネット接続が得られるようにする計画だ。

SpaceXは過去に2回の打ち上げで合計62基のStarlink衛星を軌道に乗せている。2018年にカリフォルニアのバンデンハーグ空軍基地からスペイン政府の地球観測衛星のPazを打ち上げる際に、Starlink衛星も2基搭載した。その後、今年5月には地上の通信システムのテストのために60基を打ち上げた。このときは衛星を操縦して意図のとおりに大気圏に再突入させて廃棄する実験も目的だった。60基のうち57基は現在も軌道を周回中だ。

今回さらに60基を打ち上げるミッションでは通信能力の拡大を実証すると同時に、Starlink衛星のdemisability、つまり衛星の運用寿命が尽きたときにロケットを燃焼させて大気圏に再突入させ、軌道上に宇宙ゴミとなって残らないようにする能力が100%作動することを確認するのも大きな目的だ。Starlinkのように大量のミニ衛星で地球をカバーする通信システムの場合、この能力は実用化に向けての必須の機能だ。【略】

Starlink網建設の重要な第一歩となるペイロードに加えて、Fakcon 9自身もも重要なミッションが貸せられている。SpaceXではFalcon 9の1段目となるブースターの再利用に力を入れているが、今回利用されるブースターはすでに過去3回飛行している。さらにペイロードを大気との摩擦から保護するフェアリングは今年のFalcon HeavyのArabsat-6A打ち上げの際に用いられている。SpaceXではブースターを地上回収すると同時に、大西洋上の専用船によってファエリングの回収も図る。発射と回収の模様は上のライブ中継で見ることができる。

【Japan編集部追記】このビデオは録画となっており、打ち上げシーンは19時57分でエンジンスタート、21時18分でマックスQ(最大空気抵抗)、22時42分でブースター切り離し。ブースターのグリッドフィン展開、ペイロードのフェアリング切り離しなどが続く。28時24分でブースター着陸、4度目の飛行成功。再利用に関しては別記事に解説がある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

イーロン・マスクがSpaceXの衛星インターネット「Starlink」を使ってツイート

SpaceX(スペースX)でCEOを務めるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社の衛星コンステレーションことStarlinkが提供するインターネット接続を米国時間10月22日の午前に利用した。Musk氏は軌道上のStarlinkの衛星によるネットワークを通じてシンプルにツイートを発信し、現在の状況を説明した。

Starlinkは、独自の衛星ブロードバンドネットワークを立ち上げて運用するSpaceXの野心的なプロジェクトで、これまで高速なインターネットへの信頼性の高いアクセス方法がなかった地域を含む、世界中へのブロードバンド接続を提供する。

SpaceXは今月、これまでに計画されていた1万2000機に加え、さらに3万機のStarlinkの衛星を軌道に乗せる計画を提出した。同社は非常に高い需要に対応する準備を進めており、将来的にはすべての潜在的な顧客に信頼性の高いサービスを提供するために、小型衛星のネットワークをどの程度拡大する必要があるのかを検討しているという。

SpaceXは昨年の2機のプロトタイプ衛星に続き、2019年5月に最初の60機の衛星を打ち上げた。これらの衛星は、無線信号を受信して変換する、Musk氏のコメントによればピザ箱サイズの地上基地と連携して機能する。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXがStarlink衛星3万台追加打ち上げの申請書を提出

SpaceXは、同社の衛星ブロードバンドプロジェクトであるStarlinkのために、3万台の衛星を追加打ち上げする申請書を国際電気連合(ITU)に提出とSpaceNews reportsが伝えた。ITUは世界の帯域利用を管理しており、これまでに1万2000台の打ち上げ許可を取っている。なぜこんなに多く打ち上げるのか?SpaceXはこれについて、ネットワークが予想される需要に「責任を持って」答えるためだと言っている。

「高速で信頼性の高いインターネットに対する需要が世界中で高まる中、特にネットワークが存在しなかったり、高価であったり、信頼性が低い地域のために、SpaceXはStarlinkのネットワーク総容量とデータ密度を責任を持ってスケールすることで「予想されるユーザーニーズ」の高まりに段階を踏んで答えようとしている」とSpaceX広報担当者がTechCrunch宛てのメールで語った。

ITUへの申請は、SpaceXが今すぐ3万台の衛星を打ち上げるという意味ではない。実際には来年打ち上げるのは数百台程度の予定だ。しかしSpaceXは、低遅延大容量ブロードバンドの需要が全世界で急速に高まると予測しており、初期の展開計画はそうした需要のごく一部しか満たさない。加えて、軌道からの通信への関心が高まる中、今後数年間で爆発的な需要増加が予想される。

当初Starlinkは米国北部およびカナダの一部にサービスを提供する計画で、ネットワークが開通する来年早々には開始する予定だった。その後計画は拡大し、約24機の衛星を打ち上げた段階で全世界をカバーするよう変更された。現在のカバレージ対応モデルは、初めてブロードバンドが設置される地域のことを勘案していないため、需要を満たすには最適なノード配置を行う必要がある。

SpaceXは、Starlinkの密集内での運用にも備えている(衛星群すべてが同じ軌道領域にいるわけではなくが、これまで宇宙に打ち上げられた飛行体が累計で約8000体であることを考えると、かなりの追加だ)。SpaceXが想定している対策は、自動衝突回避システムの開発、軌道離脱計画の策定、衛星の軌道情報の共有などで、これまで確立されていた業界標準を満たすか上回るものだと同社は言っている。

天文学者たちの懸念に対応するために、SpaceXは将来のStarlink衛星の地球に面したベース部分を回収する計画だ。 天文学者は衛星群の反射光が天体観測や研究に影響を及ぼすことを心配している。SpaceXは、衛星軌道についても科学研究に重大な影響を与えないよう配慮すると言っている。

Starlinkは5月に最初の衛星群60基を打ち上げた。それぞれ約230kgの衛星が相互に協力しながら地上基地局と通信することで一般利用者はブロードバンド・ネットワーク信号を受けとれるようになる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

イーロン・マスクのStarlinkが成功すれば世界のインターネット接続は一変

5月末にSpaceXがStarlink衛星最初の打ち上げに成功したことで、インターネット接続は新しい時代に向かって大きく一歩進んだ。 小型通信衛星60基はSpaceXとして過去最大のペイロードだった。このマイクロ通信衛星はやがて地球全体を覆い、どんな場所にもインターネット接続をもたらす通信衛星群を構成する最初の一波だという。同社は打ち上げ成功後、謎に包まれたStarlink構想に関していくつかの新しい情報を公開した。

SpaceX とCEOであるイーロン・マスク氏はStarlink構想に関してこれまでいくつかのヒントは出してきたものの、具体的内容については非常にガードが固かった。

配布されたプレスキットで、衛星は225kg程度、カーゴベイへの充填率を最大化するためフラットパネル型であり、Startrackerと呼ばれるナビゲーションシシテムを備えてくることなどはわかっていた。

しかし打ち上げ成功後にスタートしたStarlinkのサイトではもう少し詳しい情報が公開されている。イラストではあるが細部がはっきりわかる画像も掲載されていた。このCGで衛星の仕組みの概略がわかったので簡単に紹介してみよう。

Starlinkでは地上と通信するだけでなく、相互にも通信可能な数千の衛星が常時ある地域の上空にあってインターネット接続を提供する。衛星の数、被覆地域の広さ、提供できるトラフィックの量など詳しいことは不明だ。それでも上のGIF画像でだいたい仕組みは分かる。

4基の衛星が一組となってフェーズドアレイ・アレイ・アンテナを構成する。これにより打ち上げ時にはコンパクトでフラットだが、展開されると大口径のアンテナが実現できる。またカバー方向を変更するために通常のレーダーのように大きなパラボラアンテナの方向を変える必要がない。もちろんフェーズド・アレイ・アンテナは高価だが、衛星はできるだけ小型軽量で可動部分が少ないほうがいいに決まっている。

個々のStarlink衛星は太陽電池パネルを一枚だけ備える。パネルは紙の地図のように折り畳まれており、軌道上で展開される。上の図では衛星本体の右側に展開された一部が示されている。多くの衛星と異なり、太陽電池パネルを1枚しか備えていないのは機構の単純化、コストの削減が目的らしい。Starlinkのように数千個の衛星がシステムとして協調動作し、かつ寿命も数年と想定される場合、個々の衛星の信頼度さほど必要ない。いずれにせよ太陽電池パネルは枯れたパーツでもともと信頼性は高い。

クリプトン・ガスを利用するイオン・スラスターが姿勢制御を担当する。名前を聞くとSFっぽいがイオン推進は数十年前に実用化されている。陽電荷をもつプラズマを放出し負極が電磁力で吸引すると、反作用で推進力を得られる。長時間にわたって推進が可能であり精度も高いが推力自体は微小だ。

陽イオン源としてキセノンが使われることが多いが、Starlink衛星では推進剤にクリプトンが選ばれている。その理由は説明がやっかいだが、ひとつは同じ希ガスでもクリプトンのほうがやや入手しやすい点だ。現在稼働しているイオンエンジンの数は多くない。しかし数千個を動かす予定ならほんのわずかのコスト差でも収益に大きく影響する。

衛星には天体を観測して自機の姿勢を制御するStartrackerと他の衛星と衝突を防ぐシステムも搭載されている。この部分はSpaceXから具体的な説明がないのわれわれの側で推測するしかない。星を観測し、自国や地表との相対的位置をベースに位置、姿勢を計算するのだろう。このデータと政府のデータベースに掲載されている他の衛星や既知の宇宙デブリのデータと照合すれば衝突防止が可能になる。

Starlinkサイトには直交する5枚の円板の画像があった。これはリアクション・ホイールだろう。それぞれのホイールは一定速度で回転することで運動エネルギーを蓄えており、加速、減速によって反作用を生じさせて衛星の姿勢を制御する。きわめて巧妙なしくみだが、これも現在の衛星で標準的に用いられている。リアクション・ホイールとイオン・エンジンによって衛星の姿勢、相互の位置関係を精密に制御し、またデブリとの衝突を回避するわけだ。

SpaceXは私の取材に対して「われわれのデブリ・トラッカーはアメリカ空軍の統合宇宙運用センター(Combined Space Operations Center)に接続されており、あらゆるデブリの軌道を取得できる」と答えた。デブリの軌道データとStarlink衛星の軌道データを照合し、衝突の可能性が発見されれば衛星軌道が変更される。イオン・エンジンの推力は微小なため、充分な時間の余裕が必要だ。ボールが飛んでくるのを見てから避けるような動作ではなく、航空管制官が衝突を防止して旅客機を運航するのに似ている。

しかしStarlinkについてはまだ分からないことが多い。たとえば地上局はどうなっているのだろう? Ubiquitilink構想とは異なり、Starlinkの電波は微弱でユーザーのスマートフォンで直接受信することはできない。 そこで地上局が必要になるわけだが、マスク氏は以前、「ピザの箱程度のサイズにする」と述べていた。しかしピザといってもS、M、L、XLいろいろなサイズがある。どこに、誰が設置するのか? コストは?

先週のメディア向けブリーフィングでマスク紙はもう少し詳しく説明した。「地上受信設備は円盤型だ。しかしDirecTVなど静止衛星を利用した宇宙放送の地上アンテナとは異なり、特定の方向に向ける必要がない。Starlinkのディッシュは空に向いてさえいればいい」という。

また通信システム自体にもまだ謎が多い。たとえばアメリカのユーザーがStarlinkを利用してクロアチアのサイトを開こうとしたとしよう。なんらかのアップリンクで信号はStarlink衛星に到達する。衛星から衛星へ中継され、サイトの最寄りの衛星から地上に戻るのだろう。このダウンリンクは目的の地域のインターネットの基幹回線に接続するのだろうか? 最後の1マイルが光回線になるかどうかはテキストや音声通話などの場合ほとんど問題にならない。しかし最近急速に成長してきた動画ストリーミング・サービスにとっては大きな障害となり得る。

そして、ここが最大の問題かもしれないが、コストはどうなるのだろうか? SpaceXではこのサービスを地上の接続サービスと競争できる料金にするとしている。都市部における光ファイバーの普及度合いを考えるとこれが実現できるかはやや疑問だ。しかしテレコム各社は人口密度の低い遠隔地に光回線を設置したがらず、昔ながらのDSLに頼っている。こうした地域ではStarlinkは非常に高い競争力がありそうだ。

しかし実際の運用が始まるのはまだかなり先だ。今回打ち上げられた60基の衛星は第一陣に過ぎない。構想どおりに作動するかどうかを試すフィージビリティ・スタディーだ。テストが成功すればさらに数百機が打ち上げられテストは次の段階に進む。こうなれば一部の地域でごく初歩的なサービスが提供されるようになるかもしれない。とはいえ、SpaceXは計画の推進を急いでおり、早ければ年内にもこの段階に達するという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXの7518個のミニ衛星ネットワークをFCCが承認

何千個ものミニ衛星で地球全体をカバーするStarlinkコミュニケーションシステムを構築するSpaceXのプロジェクトがFCC(通信委員会)からを承認を受けた。ただしSpaceXが実際にこの衛星の打ち上げを開始するまでにはしばらくかかる見込みだ。

今日(米国時間11/15)、FCCは今月の定例会で承認されたプロジェクトを発表した。Starlinkの他にKepler(衛星140基)、Telesat(117基)、LeoSat(78基)が含まれている。しかし打ち上げ予定衛星数ではStarlinkが文字通り桁違いに大きい。これ以外にももっと小規模な衛星コミュニケーション計画がいくつか承認を受けている。

SpaceXが発表した計画では最終的に7518基の衛星を軌道に投入される。これとは別に、われわれが2017年3月に報じたとおり、4409基のプロジェクトがすでに承認を受けている。先月、FCCは決定のドラフト (PDF)を公開し、申請があった衛星コミュニケーション・プロジェクトを承認する意向であることを示唆していたが、今回の発表で公式な決定となった。

SpaceXのの衛星は340キロという(衛星としては)非常に低い軌道に打ち上げられる。これは他のプロジェクトにくらべて550キロも高度が低い。

低軌道の衛星は大きな空気抵抗を受けるため寿命が短い。打ち上げてから大気圏に突入して燃え尽きるまで数年とみられている。.しかし地表に近いということはそれだけ通信のレイテンシーも必要とする電力も小さくてすむ。その代わり1基のカバー範囲が狭くなるため多数の衛星が必要となる。しかし計画どおりに運用できるのならコミュニケーション需要が大きい地域に高速かつ信頼性の高いネットワーク接続を提供できる。ただしSpaceXがこれまでに打ち上げたのは2基の実験用衛星に過ぎないので、現実に可能かどうかは今後検証されることになる。

Starlinkの衛星は現在主流のKa/KuバンドではなくVバンドを使う。これは総計1万2000基にもなる衛星の電波でKa/Ku帯域を飽和させないようにという配慮だ。

Starlink衛星の打ち上げは来年中に始まるはずだ。このスケジュールが守れないとStarlinkの幹部はイーロン・マスクの怒りを買うことになるだろう。しかしネットワークを機能させるためには非常に多数の衛星を打ち上げる必要があり、部分的にでもシステムが稼働するまでには相当の年月を必要とする。

こうした多数のミニ衛星打ち上げはそれでなくとも混雑している宇宙をさらに混雑させ、宇宙ゴミを大量に作り出すことになるのではないかという懸念を抱く読者もいるかもしれない。この点ではSpaceXは優等生だ。まず一段目ブースターを再回収することにより、海洋の粗大ゴミとなることを防ぐ。また現在ほとんど使われていない低軌道を利用するため他の衛星と干渉する可能性も低い。

奇妙に聞こえるかもしれないがFCC宇宙ゴミを所管する主要な官庁の一つで、現在これに関する規則の見直しに着手している。【略】

新規則は最終決定に至るまでまだ時間がかかるもようだが、近々ドラフトが公開されるはずだ。宇宙デブリが深刻な危機に発展する前にFCCがどのような対策を考えているのか注目だ。

画像:Moment / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

SpaceXの衛星星座Starlinkは1000基あまりの通信衛星を超低軌道で運用する

同社がFCCに提出した申請書類によると、SpaceXが計画している通信衛星コンステレーションStarlinkは、最初の計画よりもずっと低い軌道に、少なくとも1000あまりの衛星を配備する。これによって宇宙ゴミが減り、同社の地上ユーザーに高品質な信号を提供できる。

Starlinkが計画している1584基の衛星は、同社が計画している4409基の約1/3に相当する。軌道は地表からわずか550キロメートルの高さで、多くの通信衛星はその倍以上の高さの軌道を回っている。静止衛星の軌道は、その20倍以上の約58000キロメートルだ。

この距離なら、軌道縮小も速く、数年後には大気圏に落下して燃え尽きる。しかしSpaceXは泰然としている。それどころか申請書類には、低軌道には“正常運用時と、そして万一の異常時でさえ、いくつかの魅力的な特長がある”、と書かれている。

まず第一に、低軌道では何でも地球に速く落ちて軌道上に散らからないから、宇宙ゴミの問題がほとんどない。第二に、信号の送受の所要時間が短くて、pingの時間は15ミリ秒程度だ。そして500キロメートル以下ならビーム通信の拡散も少ない。

一方、大気抵抗が大きいから最適高度を維持するためにいろんなことをしなければならない。一つの衛星の、惑星上のサービス範囲が狭い。でも数が多いから、その問題は回避できる。

今回の決定は、同社が今年初めに打ち上げたテスト衛星“Tintin”からの実験データに基づいている。“SpaceXが学習したことにより、上述の、よく知られていて有意義な利点を獲得しつつ低高度で運用することの不利を軽減できる”、と同社は書いている。

この変更は、衛星通信がさらに広く普及したときに競争上の有利になると思われるが、Starlinkの鳥たちがどんどん落ちてくるようになると、維持管理費が高くなるだろう。低軌道は確かにリーチが容易だが、売上が損益分岐点に達するのはそれほど容易ではないだろうな。

Starlinkの最初の本番稼働は来年初頭を予定しているが、そのタイムラインもやはり、ちょっと無理かもしれない。でもSpaceXは、無理に挑戦する企業だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa