PCの売上が6年ぶりに増加、企業のWindows 10リプレースが主な原因

幽霊かもしれない。でもPCはまだ生きていた。調査会社のGartnerによると、全世界のパーソナルコンピューターの売上台数〔推測値〕は、2012年以来初めて、前年比で増加した。2018年第二四半期の総発売台数は6210万台で、前年同期比では1.4%の増だ。報告書は“1年前に比べて若干の成長を経験した”、と述べているが、それに続けて、PC業界の回復を宣言するのはまだ早い、とも言っている。

上位5社のPCベンダーがすべて成長を経験した中で、最大の成長率はLenovoの10.5%だが、これは富士通との合弁事業の寄与が大きい。以下、HPが6.1%, Dellが9.5%, Apple 3%, Acer 3.1%となっている。長年停滞していた業界にしては、良い数字だ。しかしこの報告書からはChromebookが抜けている*。Chromebookは近年のノートブックコンピューターにとって脅威だったが、今回業界は、それ抜きでも成長を記録した。〔*: 報告書原文より: Data includes desk-based PCs, notebook PCs and ultramobile premiums(such as Microsoft Surface), but not Chromebooks or iPads.

Gartnerによると、好調の主因は企業需要の増加だ。消費者市場は依然としてモバイルの増加が続き、PCは減少が続いている。しかし企業セクターの成長も長くは続かないだろう、と同報告書は言っている。

Gartnerの主席アナリストMikako Kitagawaが報告書中で書いている: “企業分野におけるPCの増勢は、Windows 10への置換がピークを迎える2年後以降は弱まるだろう。PCベンダーは、Windows 10へのアップグレードサイクル終了後の企業市場の成長を維持する方策を、探すべきである”。

消費者の多くは今後も身辺にコンピューターを置き続けると思われるが、しかしWebが第二のデスクトップになって以来、カジュアルユーザーのアップグレードサイクルは年々長くなっている。多くの人びとにとって、家にあるコンピューターはChromeブラウザーが使えればそれで十分なのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

富士通、Boxのクラウドストレージを企業向けソフトウェアに統合

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Boxは、海外での成長に焦点を絞る中、アジアで最大の契約を完了した。日本の大手ITサービスプロバイダー、Fujitsuは今日(米国時間6/7)、クラウドストレージ会社のBoxと戦略的提携を行い、同社の企業向けソフトウェアにBoxを統合することを発表した。

Fujitsuはまず、全世界16万人の従業員が使うコミュニケーションツールで送受信されるファイルの保存と管理にBoxを使用する。同社は、Boxのサービスを社内利用することによって、2017年3月までにリリースしアジア全体での販売を計画している、顧客関係および企業コンテンツ管理ソリューションをはじめとする、同社の新しい企業向けソフトウェアの開発に役立てると言っている。

Fujitsuは同社の新しいクラウドプラットフォーム、MetaArcにも来年Boxを統合する。MetaArcはサードパーティーサービス(Boxのストレージのような)の他、インフラストラクチャーとホスティングサービスも備えている。Boxにアップロードされた顧客データは、日本のFujitsuデータセンターに保存される。これは、自社データを海外に保存したくない企業にBoxをアピールするのを後押しすると共に、同社のBox Zonesと呼ばれるクラウドデータセンターをアイルランド、ドイツ、シンガポール、および日本に提供する新しい計画とも一致する。

Boxのファウンダー・CEO、Aaron Levieは、ヨーロッパとアジアでの拡大は同社の優先課題であると言っている。Boxは2015年1月に上場したが、好調な収益にもかかわらず、それ以来IPO価格以下で取り引きされている。

Boxは他にも海外への拡大を目指して提携を結んでおり、IBMとの契約では、BoxがIBMの16ヵ国にわたるクラウドデータセンターにデータを保存できるようになった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Fujitsuのシニア向けスマートフォンはAndroidを賢く使って複雑さを隠している

日本の電子機器メーカーFujitsuは、国内スマートフォン市場からの脱皮に慎重だった。同社はその細身で洗練されたハイエンド機で知られているが、今月ヨーロッパ進出を発表し、そこでは混み合っている高級機市場を避け、カスタム化Androidベースのスマートフォンでシニア層のニッチを狙う。 Stylistic S-01は、年長の人たちが使いやすいようにデザインされている。Fujitsuは、同機をFrance Telecom/Orangeと提携して6月にフランスで発売する予定だが、今回モバイル・ワールド・コングレスでお披露目し、本誌も手に取ることができた。

ちなみに、シニアモバイル分野に参入するのはFujitsuが最初ではない。実績のあるところで、Emporiaはもっぱら簡素化した多機能電話を作っているし、Doroもさまざまな端末を作っている(タブレット用ソフトにも手を出している)Doroは、昨年のMWCで独自のAndroidベースのシニア向けスマートフォンを発表している。

本体は持ちやすいようにラバー地でコーティングされ、〈今日の〉スリムで洗練されたハイエンド機よりも曲線的で手になじみやすく、通常の板状電話よりも落としにくい。前面には4インチのタッチ画面の下に明瞭に表記されたホームボタンが置かれている。ボタンはわずかに出っぱっていて押しやすい。側面には、電源、音量の上下ボタンがあり反対側には専用のカメラボタンがついていて、それぞれラベルがついている(ただしアイコンによる)。これらのキーはわずかに出っぱっているが、うっかり押してしまうほどではない。

Fujitsuは、静電容量タッチスクリーンの感度を意図的に低くすることによって、ターゲットのユーザー層が誤ってキーを押す可能性を減らしている。私がいじっている間、レスポンスが悪いと感じたことはなかったが、画面上のボタンを意識的に強く押さなければならない場面はあったが、これは狙っている機能を再確認させるものだった。

ハードウェア面にはいくつか奇妙な点が見られた。Micro USBポートにはカバーがかかっていて、爪で開いてやる必要がある。このカバーは防塵防水のためと思われるが、充電が簡単ではないことを意味している。

本機は、非常時のためのアラーム機能も備えている。これは、持ち主がトラブルに見舞わらた時に近隣に大きな音の警報を鳴らすと同時に、事前に選んでおいた相手に自動的に電話がかかるしくみだ。アラームボタンは本体背面のカメラレンズの左側にある。この機械式ボタンはやや小さい上に、これまた爪などで引っぱり出す必要がある。もちろん、誤ってアラームが鳴るのは困るが、非常時に鳴らすのは少々難しそうだ。

AndroidであってAndroidでない

ソフトウェアに話を移そう。ここはまさしくこの端末が他のAndroid集団と一線を画している部分だ。簡易化されたカスタムUIは、キーを前面に押し出し、複雑さを奥にしまい込み、持ちやすさがよく考えられている。ヘルプボタンとガイドの他、説明書も電話機に内蔵されている。ホーム画面には大きくはっきりと名前を付けられたアイコンが並べられ、下方へスクロールして使用頻度が少ないと思われる機能になるとアイコンが小さくなる。2つある大きなボタンは、「発信」と「電話帳」(”phonebook”。”contacts”[連絡先]よりもシニアに優しい表現)だ。

メッセージとメールもホーム画面のトップにあり、他に1~3の数字がついたプリセットできるボタンがある。ずっと下までスクロールすると、最新ニュースと天気を表示する情報ウィジェットがある。その下には、様々な機能が格子状に配置されていて、これも明確に名前が付いている。インターネット、カメラ、マップ、ビデオ、ギャラリー、ヘルプフォーラム、マニュアルなどだ。唯一やや地味で目立っているのが「Play Store」と書かれたボタンだ(ありがとうGoogle)。

Androidアプリは、Play Storeまたは「アプリをダウンロード」ボタンを使ってダウンロードできる。他のプレインストールされたアプリは「その他のアプリ」と「Orangeのサービス」の下に隠されているので、簡易化されていると言っても機能そのものが削除されているわけではない。むしろ、利用者が少し堀り下げてみる勇気がでるまで危険を回避している。

デザインにはよく考えられた小さな工夫が数多くある。電話帳アプリは伝統的ファイロファクスに似せてあり、「私の電話番号」というボタンが自分の番号を覚えられない人を助けてくれる。ギャラリーにも「写真を撮る」ボタンがあり、カメラを探してギャラリーに行った人を正しい方向へ導いてくれる。バックボタンにもはっきり”back”と書かれていて、暗号めいたシンボルで混乱させられることがない。そしてブラウザーのトップには “?” ボタンがあり、初めてのモバイルウェブ利用者にブラウズ方法を説明してくれる。

他のアプリもうまく削ぎ落として簡易化されわかりやすく表示されている。例えばカメラアプリにはカメラボタンとフラッシュのオンオフ切換ボタンしかないし、電話アプリにはダイアルオプションと通話履歴のフォルダー型タブが2つあるだけだ。FujitsuのUIデザイナーたちは長い時間をかけ、シニアユーザーがスマートフォンに慣れるための小さな一歩を心地よく踏みだせるよう、見事にAndroidを隠している。

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(翻訳:Nob Takahashi)