スティーブ・ジョブズの伝記映画はユニバーサルから配給(Sonyから$30Mで買い取りか?)

Aaron Sorkin作、待望のスティーブ・ジョブズ映画の配給元がUniversal Picturesに決まった。制作会社Sony Picturesは、今月、この映画の2年がかりの制作を終え、配給権をユニバーサルに譲渡した。

Hollywood Reporter誌の記事によると、月曜日にユニバーサルの広報がこの件を確認した。記事によるとユニバーサルはSonyに3000万ドルを支払った、とされているが、これについては確認がない。

映画はWalter Isaacsonが書いて好評を得たジョブスの伝記が下敷きで、監督はDanny Boyle、脚本がSorkin、彼はFacebook未公認のFacebook映画The Social Networkの脚本も書いた。

Inglourious BasterdsやX-MenのMichael Fassbenderは、確かに出演している。 プロデューサーはScott Rudin(初めてエミー賞とグラミー賞とオスカーとトニー賞を全部取った人)とMark Gordon(The Chronicles of Narnia: The Silver Chairなど)だ。

Sorkinによると、この映画はAppleの故CEOの生涯を‘ゆりかごから墓場まで’忠実に追ったものではない。アカデミー賞を取ったこともある彼が、プレッシャーを感じた、と認める。最初は、対象があまりにも大物すぎるので、脚本の仕事を引き受けるのをためらったそうだ。“ビートルズ映画の脚本を書くようなものだからね”、と彼は語った。

彼がほのめかしたところによると、それは30分の映画3本からなる作品で、その各篇がAppleの重要な製品発表を軸にしているそうだ。やっと配給会社も決まったことだから、もうそんなに長く待たされることはないだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Webサミットで見た、未だに大きいスティーブ・ジョブズの影


今週ダブリンで行われたWeb Summitに参加していた私は、没後3年以上が過ぎた今も、われわれはAppleの共同ファウンダー、スティーブ・ジョブズに取り付かれていると思わずにいられなかった。当時の彼を知っていたり、ましてや彼とミーティングをしたことのある人がいれば、インタビュアーは必ずそれについて聞きたがる。

TechCrunchでさえ、ジョブズの未公開写真で追想にふけるくらいだ。ジョブズと何らかのつながりのある人には需要があるようだ。例えば、元Apple CEOのジョン・スカリー。彼は1983年、ジョブズに誘われてAppleに入ったことで有名だが、蜜月時代は短命に終り、失意のジョブズは会社を去り1985年にNeXT Computersを立ち上げた。スカリーはAppleに来る前、経営者として成功していた。彼は11年後に黒字のAppleを去り、その後20年間にも様々なことをしてきたが、それを知る機会はない。

誰もが知りたいのは、スティーブがどんな人間だったのか、そして彼がジョズブを会社から追い出したことだけだ(本人は反論しているが)。その事実から30年近くたった今も、人々はそれを話題にし、当時の社内政治を詳細に分析しては、何が起きたのかをスカリーに尋ねる。彼は関係によって有名であるわけで、奇妙な力が働いている。

しかし、ジョブズについて聞かれたのはスカリーだけではなかった。DropboxのDrew Houstonは、2009年に彼がジョブズと会った1度のミーティングこついて質問された。彼がこれについて話したのは初めてではなかった。常に聞かれていると言ってもよい。なぜか? それは、われわれがあの男の話を聞きたいからだ。Houstonにとって、自分の会社を買いたがっていた英雄とミーティングは、あらゆる意味で非現実的体験だった。しかし、彼は売るためにそこへ行ったのではなく、話は先に進まなかった。なぜならHoustonが今週Web Summitの壇上で話したように、会社を売りたくないなら、会社を売るためのミーティングには参加すべきではないからだ。買収話はそれで終ったが、5年後にわれわれは、Houstonがあの男と会話をしたというだけの理由で、今も話を聞きたがっている。

Web Summitの最終セッションで、U2のリードボーカル、ボノが、House of Cardsのプロデューサー、Dana Brunetti、SoundCloudの共同ファウンダー、Wahlforssと共にパネル討論に参加した。そこではもちろん多くの業界トークが交されたが、モデレーターを務めていたNew York TimesのDavid Carrは、ボノに7年前彼がジョブズとフランスで会った時の話を聞かずにはいられなかった。ジョブズに、iTunesはスプレットシートみたいだと言ったという有名な話だ。ボノは、あれほどデザインにこだわっていたジョブズが、iTunesをもっと美しくしなかったことに驚いていた。正直なところ私に言わせれば、iTunesのルックスは数ある問題の中で最も小さなものだが、とにかく彼はジョブズと直接顔を合わせているので、世界はそれについて聞きたかったのである。

ジョブズは3年以上前に死んだが、IT業界に対する彼の影響は今後も長く続くに違いない。そしてWeb Summitが何かの兆候であるなら、この業界に多大なインパクトを与えた男に関する話を聞きたいというわれわれの欲求もまた、続くに違いない。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook


『沈みゆく帝国』の著者、ケイン岩谷ゆかり氏がセミナーでDanbo山田昇氏と対談

ケイン岩谷ゆかり氏の『沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか』(日経BP刊) についてはTechCrunch JapanでもApple CEOティム・クックが名指しで批判した「沈みゆく帝国」で詳しい書評を掲載しているが、岩谷氏が昨夜(7/16)東京でセミナーを行ったので取材してきた。

このセミナーは出版元である日経BPが企画し、趣旨に賛同したサイバーエージェントがビジネスパーソン向けイベント事業、SHAKE100の一環として運営協力したものという。

セミナーはサイバーエージェントの渡邉大介氏がモデレータとなり、岩谷氏とMacお宝鑑定団の会長、山田昇(Danbo)氏が対談するという形で行われた。

なお、岩谷氏の日本での発言については本書の編集者である日経BP出版局の中川ヒロミ部長の、「ジョブズが去って一番変わったのは広告」、『沈みゆく帝国』著者がアップルの今後を語るという記事がたいへん参考になる。

執筆の動機―「Appleはもうクールじゃない」

岩谷氏は、もともとAppleについて、ジョブズを支えたチームに焦点を当てた本を書こうと考えていたという。しかしウォルター・アイザックソンによる膨大な伝記の出版とジョブズの死で、Appleの過去についてはひとつの答えが出たと感じ、その未来について考えてみたくなった。そのモチーフは、「偉大な創業者を失った会社がその後も偉大でいられるのか?」という疑問だった。この点は、20世紀末に井深大と盛田昭夫という創業者を失った後のソニーがいつの間にか不振にあえぐようになったことが念頭にあった。

はたして、スティーブ・ジョブズという不世出の天才を失った後もAppleは全盛期の輝きを維持し続けることができるのか? 岩谷氏はこの点について最近体験したエピソードを語った。岩谷氏は1月ほど前にサンフランシスコの名門中学で話をする機会があった。そのときに「自分(岩谷)はiPhone、iPadのユーザーだが、最近のAppleのプロダクトには問題もあると思うが、UIやアプリ連携の点でまだAndroidには移行しにくい」と言ったところ、すかさず中学生から「後で教えてやるよ!」と返されたという。新しいものを追う若者の間ではiPhoneはすでに一時のような「クールなプロダクト」ではなくなっていることを感じたという。

情報源は「歴史に残りたい」と協力

ガードの固いことで知られるAppleからこれほど豊富な内部情報を取材できた秘密について岩谷氏はこう語った。「Wall Street Journal時代もAppleは厳しい取材相手で、記事の個々の単語のニュアンスについてもAppleから要請を受けることがあった。ジョブズの生前であればあれほど多くの情報は得られなかったと思う。しかしジョブズの死後、その呪縛が薄れた。一方でジョブズに近い場所で働いていた人々には『この偉大な企業で果たした自分の役割をきちんと歴史に残したい』と考える人々がいて、取材に応じてくれた」という。

またジョブズが後継者としてクックを選んだのは「ジョブズの栄光を薄れさせるような独自性を発揮せず、かといってAppleを傾けもせず、堅実に経営してける人物」ということだったのかもしれないと岩谷氏は推測する。

ジョブズ時代には驚くほど細かいこと点ジョブズがすべてを決めていたという。データの出る幕はなく、M&Aだろうと製品開発だろうとジョブズの一言がすべてだった。その結果、エンジニアの地位は高く、MBAの出る幕はほとんどなかった。しかしティム・クックはデータと多数決が好きだという。この点はAppleが世界有数の巨大企業になってきたことからの必然だったかもしれないが、それでも官僚化は進んでいる感触だという。山田昇氏によるとは「以前のAppleは副社長(VP)が15人くらいだったが、今は50人くらいに増えた」という

ジョブズ後にAppleの空気が変わった例として、岩谷氏はApple内でG2Gという言葉が使われていることを挙げた。”Go to Google”の略で「誰それは最近見えないね」というと「ああ、奴はG2Gさ(Googleに転職したよ)」というような会話が交わされているのだという。

Appleのビジネスは絶好調ではないか?

山田氏は「Appleの現状は売上、利益ともに世界有数で、株価も高い水準を維持している。危機というのは当たらないのでは?」と疑問を呈した。

岩谷氏は『沈みゆく帝国』というのは日本語版のタイトルだと断った上で、「ソニーも創業者を失った後何年も好調を続けた。またジョブズがAppleから追放された当初、経営のプロのジョン・スカリーの下で業績は好調に見えた。しかし岩谷氏が取材したところでは、1985年当時も、ジョブズが去った後ですぐに社内ではエンジニアの地位が低下し、リスクを取ったプロジェクトがなくなるなどカルチャーの変化が感じられたと証言する人が多かったという。「業績の低下が表に出たときには事態はすでに相当悪化している」として岩谷氏は現在伝えられるAppleのカルチャーの変化に懸念を示した。

岩谷氏はスカリーにもインタビューしたが「創業者でないCEOはやはり自由が効かない」と語ったという。「スティーブなら通ってしまうようなことが自分の場合は株主や幹部が反対してやりずらかった」のだそうだ。ティム・クックはスカリーと同様、経営のプロで、ジョブズのパートナーとしては理想的だったが、ジョブズの天才の輝き、超人的な説得力はない。またAppleの社内文化は非常にタイト(結束力が強く)で、M&Aで外部から参加した人材は溶け込むのに苦労するという。

つまり、外部の人間がCEOになれるようなカルチャーではなさそうだ。岩谷氏はApple Store事業のチーフにスカウトされた元バーバリーのCEO、アンジェラ・アーレンツがAppleに溶け込めるか、その動向に注目していると語った。

どんな企業も永遠に輝き続けるのは無理なのかも

筆者(滑川)は、たまたまその朝、飛び込んできた速報:AppleとIBMがハード、ソフトで全面提携―エンタープライズ分野に激震という記事を翻訳したところだったので、Q&Aの際に「AppleとIBMの提携はうまくいくと思うか?」と質問してみた。

岩谷氏は「その成否はわからないが、もしうまく行かないとしたら、それはティム・クック自身の能力不足などによるのではなく、Appleという組織が巨大化し、官僚化したことによる結果だろう」と答えた。

岩谷氏はこれに続けて「本書はAppleを批判するために書かれたという誤解があるが、私はそうしているつもりはない。しかしAppleといえども永遠にあの輝きを放ち続けるのは無理なのかもしれないと感じることはある」と締めくった。

ティム・クックという人物の謎

最後に筆者(滑川)の感想を少し付け加えると、まず岩谷氏の徹底した取材ぶりにもとづく事実の積み重ねに圧倒される。さまざな場面が印象に残っているが、その一つがティム・クックCEOの人物像を得るためにアラバマ州南部のスモールタウン、ロバーツデールにまで足を運んでクックを教えた高校の教師などにインタビューした部分だ。

私はそこで描写された南部の町の雰囲気はハーパー・リーのベストセラー『アラバマ物語』にそっくりなことに気づいた。グレゴリー・ペック主演の映画も有名な『アラバマ物語』の舞台は1934年、ヨーロッパでヒットラーが権力を握った頃の南部の町だが、その町のモデルになったハーパー・リーの生地モンローヴィルをGoogleマップで調べてみると、ロバーツデールから車で2時間くらいの近所だった。

『沈みゆく帝国』を読んでいくうちに、アラバマの田舎町では80年経っても(物質的な面は別として)人々の行き方がほとんど変わっていないのに驚かされた。岩谷氏は本書でティム・クックがゲイ・レズビアン向けの雑誌の人気投票でナンバーワンになったことを紹介しながら、「(ゲイであるかどうかは)大きな違いはない。クックに私生活の時間はほとんどないからだ」とユーモラスに述べている。

それやこれを考えるとティム・クックの容易に人を寄せ付けない性格は、桁外れの才能と独自の感性を秘めた少年が「全員が全員のことを隅から隅まで知っている」南部の町に違和感を感じながら育ったことからも形成されたのではないかなどと勝手な想像が膨らんだ。そういえば、『アラバマ物語』には「おもしろい作り話をいくらでも作ってくれる」ディルという「変わった」少年が登場する。このディルのモデルであり、ハーパー・リーの従兄弟で一時隣家に住んでいたのが後年のゲイの天才作家、トルーマン・カポーティだったという。

外村仁Evernote Japan会長、林信行氏、小林啓倫氏を始め、Appleに詳しく、IT分野で影響力ある方が大勢出席しており、岩谷氏の著書への関心が高いことが感じられた。Appleの今後に興味があれば必読の基礎資料とといっていいだろう。

滑川海彦 Facebook Google+ 写真撮影:滑川)


【書籍】Apple CEOティム・クックが名指しで批判した「沈みゆく帝国」

編集部:この記事は、本の要約サイト「flier(フライヤー)」と共同で選書したIT・テクノロジー関連書籍の要約を紹介するものだ。コンテンツは後日、フライヤーで公開される内容の一部である。

タイトル 沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、Appleは偉大な企業でいられるのか
著者 ケイン岩谷ゆかり 著、井口耕二 訳、外村仁 解説
ページ数 540
出版社 日経BP社
価格 2160円(税込)
要約者の評点 総合:3.7(5点満点、下記3点の平均値)
革新性:3.5、明瞭性:4.0、応用性:3.5

要約者によるレビュー

Appleの偉大な経営者スティーブ・ジョブズが存命中には、彼のリーダーシップやプレゼンテーションに注目が集まり、それにまつわる多数の書籍が出版された。その後ジョブズが膵臓がんで亡くなると、『インサイド・アップル』(早川書房)や『アップル帝国の正体』(文藝春秋)といった、Appleの組織構造について言及した書籍が発表されるようになる。

そしていま、世間の関心は「ビジョナリーなリーダーが去っても、偉大な会社が偉大なままでいられるのか」という点に寄せられている。たとえば、昨年末に日本で発売された『アップルvs.グーグル―どちらが世界を支配するのか―』(新潮社)では、GoogleとAppleがテクノロジーの領域にとどまらずメディア業界まで視野に入れた戦いを繰り広げるなかで、AndroidがiPhoneのシェアを追い抜き、優勢に立っているのはGoogleだと主張している。

対する本書はAppleの内部について深く掘り下げた1冊だ。社員が辞め、イノベーションが生まれないばかりか、アプリまで失敗作続きという状態に陥ってしまった内情を探るとともに、下請けの台湾企業フォックスコンの労働環境やサムスンとの特許裁判における争点など、次々と明らかにされる事実は衝撃的なものばかりである。

Appleの現CEO、ティム・クックが「寝言だ」と名指しで批判したと言われる本書は、米国の読者レビューを見ても肯定派と否定派に二分されているようだ。しかしながら、仔細にわたる著者の調査や分析は現経営陣が陥っている苦境を白日の下に晒している。日本に多いApple信者にこそぜひ読んでいただきたい一冊だ。著者のケイン岩谷ゆかりは、ウォール・ストリート・ジャーナルでApple担当として活躍した人物。ジョブズの肝臓移植やiPadの発表など数々のスクープを出した後、本書執筆のために退職した。

本書の要点

・ジョブズの後継者としてAppleのCEOに就任したティム・クックは、「在庫のアッティラ王」と呼ばれるほど管理面には強いが、ビジョナリーではなく、イノベーターの経験もない。

・帝国と化したAppleはSiriや地図アプリの失敗、Androidの台頭によるスマートフォン市場でのシェア低下、終わらない特許係争、制御不能になったサプライヤーなど、多くの課題を抱えている。

・ジョブズ亡きあと、問題が噴出しているAppleにはもはや世界を再発明するような製品を生み出す能力はなく、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」の例外ではなくなってしまった。

【必読ポイント】沈みゆく帝国

Siriの失敗

ジョブズの死去前日に発表されたiPhone 4Sは、見た目は前機種と変わらないものの、いくつかの機能が改良されたほか、新たな機能としてSiriが搭載されていた。未来を感じさせるものとして当初センセーショナルを巻き起こしたSiriだが、「バーチャルアシスタント」という謳い文句ほど役には立たないことがすぐに明らかになる。関係のない答えを返してきたり、わけのわからないことを言ったりすることが多いのだ。聞き間違えによって質問すら理解できないことすらある。

未熟な段階であるにもかかわらず、Appleは世間のSiriに対する期待値を上げすぎてしまっていた。それゆえ、Siriは「洗練されている」というAppleのイメージを叩き壊すとともに、今後もAppleが並外れた新製品を生み出せるということに疑問を抱かせてしまったのだ。

イノベーションのジレンマ

ハーバード・ビジネス・スクールの教授であるクレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」は、巨大企業が新興企業に敗れる理由を説明した理論だ。技術がどんどん進化していく世界においては、既存市場を破壊する能力がなければ生き残りは難しい。

新たな製品を発表するたびに大きく、また無敵になっていくAppleは、これまでこの理論が適用できない例外となっていた。市場に新たな可能性を拓き、新たな消費者の欲求を生み出すことを一番の目標とし、利益は二の次にするのが特徴だった。しかし最近はライバルをたたくことに重きを置きすぎており、製品をより完璧に近づけることに邁進している。その結果、安さを武器にライバルが市場参入する隙ができてしまったのだ。

ソニーが共同創業者である盛田氏の引退を機に偉大な企業から単なる良い企業になってしまったように、Appleもイノベーションのジレンマに囚われてしまう可能性があるとクリステンセンは指摘する。そうならないためには、オペレーティングシステムをオープンにして技術を供与するという形でイノベーションを推進し、自社開発では得られないほどの存在感を業界内で確立すること。もしくは、破壊的な製品カテゴリをまた生み出すことが必要だ。クックは「最高の製品をつくることこそ、我々の道しるべだ」と繰り返し述べている。あとは、それができることを証明しなくてはならない。

地図アプリの失敗

スマートフォン市場におけるAppleのシェアが低下する一方、サムスンのシェアが急伸している。失敗が許されない状況の中で、新たに発表されたiPhone 5に標準搭載となる地図アプリは悲惨な結果を招いてしまう。それまで搭載されていたGoogleマップではなく、自社開発の地図アプリに差し替えることにしたのだが、あるはずの道路が表示されない、お店やランドマークの名前が間違っている、と地図自体が使い物にならない有様だったのだ。

AppleはGoogleを超えるものを作ろうとするあまり勇み足になってしまった。さらに、Siriと同様に開発を秘密裡に進めたために十分な試験ができなかった。地図アプリの試験を担当したディベロッパーはバグを報告しており、その問題がトップに報告されていなかったのか、それとも大した問題ではないと判断されたのかは定かではない。いずれにせよ、Appleの仕事の進め方がおかしくなってしまっていた。

クックは自ら謝罪を表明するとともに、ライバルのアプリの利用を促すという屈辱を受けた。さらにこのアプリを監修していたフォーストールが謝罪を拒否したため、クックは次期CEO候補と言われていたフォーストールを辞任させる。失敗を厳しく追及するクックのやり方では、部下がリスクを嫌ってイノベーションが生まれにくくなるおそれがある。このように見てくると、「Appleの未来を描く人物としてクックが最良の人物なのか」という疑問が湧いてくる。

弱まるAppleの支配力

Appleは自社工場を持っていない。iPhoneなどの製品の多くは、サプライヤーである台湾の巨大メーカー、フォックスコン(鴻海精密工業)に作らせている。軍隊にたとえられるフォックスコンの工場では教育と訓練が施された100万人もの工員が計画通りに製品を作っている。Apple製品に対する需要が高まるにつれ、Appleはフォックスコンに対して圧力をかけ、その厳しい労働環境は自殺者が相次いで問題になるほどであった。

そしてフォックスコンがiPhone 5の製造を受注し、組立ラインをフル稼働させるよう工場のマネージャーに指示が下されたとき、工員たちの堪忍袋の緒が切れた。今回は自殺ではなく、外に対して怒りを爆発させたのだ。2000名もの工員が暴徒と化し、建物を破壊した。別の工場では製造の基準が高すぎるとして、工員と品質管理係がストライキに入った。美しいiPhoneやiPadを製造する現場の暗い実態が明るみに出てしまった格好だ。

Appleにとって痛手なのは、こうしたイメージ面での失敗だけではない。クックがCEOに就任してからもAppleとフォックスコンの蜜月関係は続いていたが、Appleがあまりにフォックスコンに依存してしまったため、最近では力関係が逆転し、フォックスコンの方がAppleの要求を押し返し、価格の引き上げを交渉できるようになってしまったのだ。

Appleは委託先を拡大してフォックスコンへの依存を引き下げようと努力しているが、製造ノウハウはサプライヤーが握っているため、なかなか一筋縄ではいかない。新しいサプライヤーをAppleが要求する高い品質基準を満たすよう鍛えるのは容易ではない。最近ではシャープのようにAppleの販売減速の影響を受けて窮地に立たされる企業も出てきており、以前のようにAppleとの取引には大きなメリットがあるわけではなくなってしまったのだ。

沈みゆく帝国

ジョブズが亡くなって2年あまりのうちに、彼が生み出し、愛した会社は四方八方から押し寄せるたくさんの課題に直面している。

業界自体を変えてしまう夢のような新製品が出なくなったことだけではない。世間からの憧れは消え失せ、厳しい目が注がれるようになった。フォックスコンに依存していることに伴う危険が明らかになった。スマートフォンやタブレット市場はAndroidが席巻しつつあり、Apple製品のシェアが低下した。士気が低迷した社員が次々と辞め、あろうことかGoogleに行く人も多い。

こうした課題が大挙して押し寄せているなかで、株価は低迷し、利益もこの10年で初めて減少してしまった。株主総会でクックは新製品の開発に注力していると繰り返し述べたが、「クックが話すたびに株価が下がる」とまで揶揄される始末だ。

Appleに求められていることは、もう一度世界をあっと言わせる魔法のような新製品を出し、Appleの売上や利益にはっきりと貢献するような成功を収めることだ。だが、ジョブズが後継者に選んだクックはビジョナリーではなく、イノベーターの経験もなく、強みは表計算ソフトでしかない。クックの口から出てくる言葉は単調で、ちょっと調子が外れている。きらめきも、炎のような活気も感じられない。

元Apple取締役で、ジョブズの親友でもあったOracleのCEOであるラリー・エリソンは、「ジョブズがいなくなったいま、昔ほどの成功はもう無理だ」と語っている。


Dropboxは、あなたの写真保管場所になりたがっている

ここ数年Dropboxを見てきた人にとって、今日発表された新機能は何の驚きでもないだろう。Mac版アプリに、スクリーンショットを自動的に検知し、アップロードしてリンクで共有できる 新機能が追加された。

これはCloudappなどのアプリが存在する主な理由であり、Dropboxはその邪魔をしようとしている。しかし、実際にはこの機能を便利に感じるのはDropboxユーザーの一部だけだ。スクリーンショットの自動アップロードは「インターネット・ピープル」にとってはすばらしいだろう。ジャーナリスト、Twitterのヘビーユーザー、アプリ開発者、デザイナー、および協同作業チーム等の人々だ。これは、〈わずかな〉一部ではなく、私もCloudAppの代替を手に入れたことを喜んでいる。また、Dropboxがこの機能をサポートしたいう理由〈だけで〉、スクリーンショットの共有がより一般的になると私は信じている。どうしても皮相的な見方をしたければ、この機能は日頃から〈大量の〉スクリーンショットを撮る ― そしてこの機能について記事を書くであろう(hi!</a)ジャーナリストに対するファンサービスだと言っても構わない。

しかし、今日はもう一つの発表の方がずっと大きい。iPhotoライブラリー全体をDropboxにアップロードし、イベント毎に整理するまでを一気に行うインポートツールだ。

以前Dropboxは、iPhoneやAndroid端末で撮影した写真を自動的にアップロードする機能を発表した。今日の発表がこれらと異なるのは、過去の、Dropbox以前の写真も含めて全てコピーすることだ。

これは、Dropboxビジネスのロードマップを考える上で重要な一歩だ。もし、今の「押し」のゴールが、ユーザーの写真保管場所の標準になるためであるなら ― そうだと私は信じている ― これで何が可能になるのか。もし、スマートフォンやデジカメで撮った写真の全部が自動的にアップロードされるようになると、答えは「たくさん」だ。

何よりもあなたは、驚くほど強力な〈囲い込み〉にあう。もちろんファイルは自分のものであり、いつでもダウンロードして他のクラウドに持っていくことはできる。しかし、囲い込まれるのは「データ」だけではない。Dropboxが「安全に保管している」という「記憶」もだ。もし、別のプラットフォームに移ったときに、主要な保管場所としてDropboxから離れる理由はあるのか? 使っているどのプラットフォームにも自動アップロードを設定していれば、「入ったら、入ったまま」になる可能性は高い。

ここまで書くと、AppleやGoogleが写真をどうしようとしているかが気になるだろう。AppleはiCloudを使って、ユーザーがiPhone(多くの人がメインのカメラとして使っている)で撮った写真を最優先で捕えている。Googleも、Google+の写真で同じことをしている。そして、サードパーティーであるDropboxは、自動化ツールによって両方からさらっていこうとしている。Dropboxに乗る、ということは、iOSとAndroidの間を行き来しても、写真はクラウドで自由に利用できることを意味している。Googleは、iOS用G+アプリで利用することを可能にしているが、どちらかといえば片道切符だ。

ここで改めて思い出されるのは、スティーブ・ジョブズが、Dropboxのパートナー、Arash FerdowsiとDrew Houstonの2人と行ったとされるミーティングだ。ジョブズはHoustonに、君には機能はあるが商品はないと言い、Appleが「クラウドストレージ」市場で後を追うところだと告げた。当時Dropboxが、消費者市場で写真に注目することを考えていたかどうか私にはわからないが、ユーザー行動の検証を数多く重ねた結果今に至ったのだろう。

しかし結局Dropboxは、スタンドアロン機能として存在している方が、他の主要エコシステムの交換可能な歯車の一つとして生きるよりも得策かもしれない。つまるところiCloudも本当に信頼できるとは言えず、Googleは、データを広告に活用する以外の関係を顧客との間に築いたことがない。中立的なサードパーティーの一「機能」が、実は私たちの写真を安全に保管する最良の方法なのかもしれない。もちろん、存続する方法をDropboxが見つければの話ではあるが。

画像提供:Frédéric BISSON/ Flickr CC

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)


アシュトン・カッチャーは、スティーブ・ジョブズの果実食を真似た結果入院していた

メソッド俳優は、自分が演じるキャラクターを理解するのに夥しい時間をかけることで知られている。ナタリー・ポートマンはブラック・スワンでバレリーナを演じるために20ポンドも体重を落とした。

アシュトン・クッチャーは、評伝jOBSでスティーブ・ジョブズを演じるための準備が極限に達し、病院に搬送される結果となった。USA Todayによると、彼はスティーブ・ジョブズの果実ダイエットを実践しようと試みた結果、2日間の入院生活を強いられた。果物とナッツ、種子類だけを食べていた。

「撮影が始まる2日前くらいに入院しました。痛みで身をよじらんばかりでした。私の膵臓は完全に機能不全に陥っていました。本当に恐ろしくて・・・あらゆることを考えました」

「あらゆることを考えた」というのは、2011年にジョブズを死に致らしめた膵臓ガンのことかもしれない。ジョブズは果実食を続けてきたことで知られており、クッチャーはそれを役作りに取り入れたほか、ジョブズの猫背の歩き方や身ぶりを真似するために何時間も彼の映像を見て研究した。

しかしクッチャーは、テクノロジーへの愛以外にも、故Apple共同ファウンダーとの共通点が多いと感じている。

「彼は失敗の後立ち直った男です。私は、何かを目指して進んでは失敗する人生のどこかで、誰もが共感できることだと思います。立ち直ってもう一度進むためには勇気が必要です。私はそれも共有していると思っています」、クッチャーは語った。

もう一人のApple共同ファウンダー、スティーブ・ウォズニアックは、同映画の初めて公開されたクリップを見て、期待していたほど現実に即していないと言った。彼は、ジョシュ・ギャッドによるウォズの描写の方が、クッチャーのジョブズよりもリアルだったとも指摘した。しかし、アシュトンの不断の努力は、映画の他の未公開部分で役立っているだろう。

jOBSは、金曜夜のサンダンス映画祭で主要作品として上映された。劇場では4月公開の予定。


[Image credit: AP]

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)