LINEはどのようにイノベーションを創出しているのか?–森川氏が掲げる3つの鍵

ITを核にしたビジネスで世界を変革させる国内外の経営者らが登壇する「新経済サミット2014」が4月9日から4月10日にかけて開催された。10日朝に行われたセッションでは、LINE代表取締役社長の森川亮氏、AME Cloud Ventures共同創業者のJerry Yang氏、Matt Wilsey氏が登壇。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特別招聘教授の夏野剛氏の進行のもと、「Accelerating the innovation」をテーマに語りあった。

ここではその中から森川氏が語った、LINEがイノベーションを創出するために重視している3つの「鍵」について紹介したい。

その1:意思決定の仕方について

森川氏がイベントに登壇する際やメディアへのインタビューに答える際にもよく話していることだが、LINEでは、長期の事業計画を立てないのだという。「昔はある程度決まったことを推進して成功する、まっすぐな道があった。しかし今は道が曲がりくねって先が見えない」(森川氏)。

特に日本企業は計画通りに物事が進まないことに違和感を持つが、世の中の変化についていくためには、そういった計画の通りに時間をかけることはできない。そのため、「3カ月先とか、身近なところを見て意思決定をする」のだという。

その2:組織の作り方について

何か決まった物事をトップダウンで動かすのではなく、常に物事に対して柔軟に対応できるように考えているという。

森川氏はこれを「サッカー型」の経営だと説明する。日本企業は野球型——先攻後攻が決まっていて、打順も決まっている——の経営をしていることが多いが、LINEでは、サッカーのように監督はいるがフィールドで意思決定をすることが多いのだと語った。ただし、バラバラに動いている訳ではなく、現場のリーダーがいかにその瞬間瞬間に意思決定できるかが重要になるという。「開発、デザイン、企画がコラボレーションしながら、分厚い仕様書でなく、リアルタイムで意思決定してモノを作っていく」(森川氏)

その3:サービスの考え方について

実はLINEでは、あまり会議をしないのだそうだ。森川氏は「(話し合うことで)アイデアを伸ばすことは必要だが、偉い人と会議をすると角が取れて丸くなって、良くも悪くもないものになる」と語る。

最終的にサービスの善し悪しを判断するのは経営者ではなくユーザーだ。そうであれば、作り手が考える「やるべきこと」「作りたいもの」ではなく、ユーザーが潜在的に求めているものをいかに顕在化させるかが大事になる。プロダクトを提供して、ユーザーの反応が見えれば、素早くニーズに合わせて形を変えることも大事になる。

このほかにも森川氏は「Aか、Bか」という形式で、イノベーションが起きる環境について持論を語ってくれた。

大企業か、ベンチャーか
昔ならば、体力のある大企業のほうがイノベーションを起こせたのかもしれない。しかし今は企業規模の大きい小さいではなく、変革を起こせるメンバーが居て、彼らのための環境があるかどうかが重要だ。

森川氏は現在イノベーションを起こすことに成功した事例について、「既存のプロダクトを持っており、それを壊すような正反対の性質を持ったプロダクトであることが多いのではないか」と指摘する。しかしそんなプロダクトを作ろうとすると、「内部に邪魔する人がいて、調整が必要になる」(森川氏)とのことなので、結局小さい組織が早く成長すると考えているそうだ。とにかく速いスピードでユーザーに価値を提供できることが重要となるという。

人か、金か
当たり前だが、もちろんお金は大事だ。ただしイノベーションはお金が起こすのではない。人が起こすものだ。アイデア、技術、スピード、すべての鍵は人にある。

また、イノベーションを起こすのは「頭のいい人」ではなく「変わった人」。こういった人をいかに受け入れるかも重要だとした。

サービスか、利益か
前述の金ではないが、当然利益も必要だ。しかしそれよりも大事なのは利用者へどう価値を提供するかだという。「これは投資家にも理解してもらいたい」(森川氏)。そして経営者は価値創造に注力すべきだとした。

技術か、スピードか
技術面での差別化は重要だが、つまるところは前述のとおりで利用者に価値を提供しているかどうかにある。特に技術者出身の経営者は技術を愛しすぎてしまいがちで成功しないケースがある。そして後発の会社がその要素だけをもってして成功してしまうケースもある。

潜在的なニーズをいかに顕在化するか。そこにまず求められるのはスピードだとした。


British Airways、UnGroundedプロジェクトを発表 ― テック界の著名人たちを同じ飛行機に乗せてイノベーションをせまる

British Airwaysが「UnGrounded」なるイベントを行うと発表した。これはシリコンバレーの著名人100名を乗せてフライトするという試みだ。機内では、世界の大問題が、才能豊かなテック系人物たちにぶつけられる。国連のパートナーシップのもと、初めての「UnGrounded」フライトは6月12日に行われる予定だ。Google、Andreessen Horowitz、RocketSpaceなどからの人物が乗り込む予定になっている。

British Airways EVPのSimon Talling-Smithは「UnGrounded」のプレスカンファレンスにて「偉大なイノベーションというのは、個別に部屋に閉じこもっているときではなく、お互いに顔を合わせているときに生まれてくるものだと思うのです」と述べていた。ファウンダー、投資家、エンジニア、アカデミック分野の人びとに、若干のジャーナリストを加えて100名を構成したい考えだ。その100名で10時間のフライトを行い、ともに難問にチャレンジする。

UnGround計画での「イノベーションラボ」(innovation lab in sky)は、今後も飛行計画などを変更しつつ定期的に行なっていく予定にしているそうだ。最初のフライトではテクノロジーイノベーターと、世界的な問題の間に横たわる「ミスマッチ」について論じるものとなるとのこと。

ロンドンに到着した際には、第1回UnGroundedに参加したメンバーたちが国連もサポートするDecide Now Act (DNA) Summitにおいて、また、国際電気通信連合の事務総局長に対して成果のプレゼンテーションを行う。具体的な搭乗者はAndreessen HorowitzのTodd Lutwak、GoogleのLeor Stern、Innovation EndeavorsのCelestine Johnson、RocketSpaceのDuncan Logan、Silicon Valley BankのGerald Brady、そしてStanford GSBからMarguerite Gong Hancockなどとなっている。

Eric SchmidtのInnovation EndevorsやRocketSpaceなどが資金を拠出し、IDEOが飛行中のプランを練る。上に記したような人びとが一堂に介することはそうあることではなく、またせっかくのアイデアも、実現組織を用意できなければ無駄になってしまう。これはかなりチャレンジングな出来事となりそうだ。ちなみに客席は搭乗者数に合わせて100席ほどに減らされ、作業空間としてかなりまともなスペースを用意できそうだとのこと。

ところで、この計画がなぜBritish Airwaysにより実現されることになったのだろうか。Talling-Smithは次のように述べている。「私たちは実績豊かな航空会社であると自負しています。製品とサービスを皆様にお届けし、イノベーションを生み出す努力も続けております。但し、イノベーションの実現方法はいろいろと変化し続けています。テクノロジーの世界ではさまざまなことが日々起こっています。そこで私たちは、自分たちにできることは何なのかをもう一度問いなおしてみたのです。そして、私たちにとっては見慣れた存在である“機体”を、進化のための“坩堝”として利用できるのではないかと思い至りました。また、このUnGroundedは“イノベーター”として、まさにやりがいのあるプロジェクトであると考えたのです」。

「イノベーターと、世界的な問題の間に横たわる“ミスマッチ”」について論じるというのは、少々具体性に欠けるもののように聞こえるかもしれない。しかし、TechCrunchとしてもそうした視点の重要性を日々感じている。世界をより良いものにするという発想を持たず、目先にある小さな利便性にばかりとらわれるスタートアップもある。才能あふれる人びとをひとところに集めて、世界的な大問題に集中させることは、より多くのイノベーターたちを、より生産的な問題解決に向かわせる手段となり得るかもしれない。

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(翻訳:Maeda, H)