透明化を真剣に考えるなら広告産業はSDKをオープンソース化せよ

広告トラフィックの出所、その販売方法、測定方法は、いつまで経っても不透明のままで、いろいろな広告技術プロバイダーを利用したい広告主にとって、それがフラストレーションの元となり、参入障壁にもなっている。GDPR(EU一般データ保護規則)やCOPPA(児童オンライン保護法)などの法律により、個人データの保護やプライバシーの面では進展が見られたものの、広告マーケティングの透明性という大きな視点からすれば、状況はほとんど変わっていない。

その理由のひとつに、運用型広告やその他の広告テクノロジーの仕組みが圧倒的に複雑である点が挙げられる。毎日数十億件ものインプレッションが自動的に処理される世界では、物事をもっとシンプルに明確にするための共通のソリューションが存在しない。したがって広告業界が対処すべき課題は、透明化への意欲を持つことのみならず、透明化を実現させる手段を備えることだ。

苛立たしいことに、個人データの収集方法と一部企業の個人データの扱い方が、オンライン広告への人々の信頼を損ねる大きな要因になっている。これは一夜にして現れた問題ではない。長い間に築かれたものであり、自分の個人データの使われ方、分析のされ方、商品化のされ方に、消費者はフラストレーションを募らせてきた。同時に、支払いを要求されるクリック報酬型広告の透明性と合法性に、広告主は同様のフラストレーションを溜めている。

IAB(インタラクティブ広告協会)やTAG(トラストワージー・アカウンタビリティー・グループ)といった団体は、ads.txtのような透明性の高い指針構築の取り組みを続けている。しかし、厳格な法律がともなわなければ、責任は個々の企業に委ねられてしまう。

だがひとつだけ、大変に不評ながら比較的シンプルで、すべての関係者(ブランド、消費者、広告またはマーケティングの提供者)の利益となる透明性と信頼性を引き出せる方法がある。業界が結束して、すべての企業がそれぞれのSDKをオープンソース化することだ。

オープンソース化が広告主、パブリッシャー、広告業界に利益をもたらす理由

オープンソースソフトウェアとは、誰もが無料で使え、解析や変更や改良が許されたプログラムことだ。

プログラムを解析して、SDKの機能を個別の必要性に応じて調整するという作業は、よく行われている。アプリによる不正行為を公正に審査するセキュリティ企業や利害関係者も、同じようにプログラムの解析が行える。開発者とその依頼主にとれば、SDKを構成するプログラムがどのように記述されているかを公開することが、秘密の機能や好ましくない仕様がないことを証明する最良の手段となる。

オープンソースSDKを使う人は、誰もがその構造を正確に知ることができる。またオープンソースライセンスの元で公開されるため、誰もが修正や改良を提言できる。

オープンソースにもリスクはあるが恩恵ははるかに大きい

SDKのプログラムを公開する際の最大のリスクには、第三者が悪意あるプログラムを組み込んで悪用する恐れと、脆弱性を突いたバックエンドのサービスやデータへの不正アクセスを許してしまう恐れとがある。しかし、そこに注意を払っていれば、攻撃されやすい部分が見つかり次第、SDKの提供者は即座に修正できる。

オープンソース化の恩恵は、信頼と透明性を引き出せる点だ。それは顧客ロイヤリティーと消費者信頼感に確実につながる。結果として、広告主と開発者の全員が、誰とどのような条件で仕事をしたいかを自由に選べる市場での事業展開が可能になる。

身勝手なようだが実際の話として、SDKをオープンソース化すれば、我々の業界の企業は、自社製品の売り込みを目的とした他社からの根拠のない批判から身を守ることができるようにもなる。

オープンスタンダードの下では、宣伝目的の根も葉もない不当な非難はできなくなる。万人の目前で潔白を証明できるからだ。

アドテクノロジーはオープンソース化をどう受け入れたか

アドテクノロジーの分野では、MoPub(モーパブ)、Appodeal(アポディール)、AppsFlyer(アプスフライヤー)が、一部またはすべてのSDKをすでにオープンソースライセンスの下で公開している数少ない企業だ。

これらの企業はみな、透明性と信頼性が重要であることに気づき、オープンソース化に踏み切っている。自社ブランドの安全性と評判をアルゴリズムの手に委ねる場合は、なおさら透明性と信頼性が重要になる。だが大半のSDKは、未だ非公開のままだ。

自社の透明化のレベルを、先進的な企業に倣って設定しているようでは、業界の現状を乗り越えることはできない。今や、信頼とデータの透明性に関する精力的な行動が求められている。企業にプライバシー保護を要請し、最終的に必要とされる変革を推進するよう強要するGDPRやCOPPAの手法を採り入れ、SDKのオープンソース化を義務化すれば、広告マーケティングの世界は新たな高みへ導かれ、顧客、競合他社、規制当局そして消費者に対する新しいレベルの信頼が得られ、より高度なデプロイが可能になる。

業界全体におよぶ透明化の試みは、すぐに結果を出せるものではないが、正しい方向への動きを示す良いニュースだ。すでに実践している企業があるため、他の企業も追随しやすい。ブランドセーフティーを確かなものにする手段を備え、広告詐欺の抑制を促すことで、ブランド、広告代理店、プログラマティックパートナーとの関係は改善され、消費者の個人データの用途は明確化され、広告業界の信用は高まり、やがてはビジネスチャンスが増大する。

だからこそ私たちは、すべての広告およびマーケティング企業に対して、信頼と透明性と業界改革を引き出すSDKのオープンソース化に向けて、ともに一歩踏み出そうと呼びかけている。これは、私たちの消費者、ブランド、広告技術プロバイダーそして業界全体の利益を生む。そうすれば、ブランドとブランドの広告への信用を増した消費者から、そしてやがては、私たちを信頼し、より高度なソリューションを導入してビジネスを大きくしたいと考えるブランドから、私たち全員が恩恵を受けることになるのだ。

【編集部注】著者のErick Fang(エリック・ファン)氏はMintegral(ミンテグラル)のCEOとして、同社グローバルモバイル広告プラットフォームの経営、顧客関係、製品開発を監督している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:アドテックオープンソース透明性

画像クレジット:MirageC / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Googleが身元確認義務を広告主全員に拡大

米国時間4月23日、Google(グーグル)のプロダクトマネジメント、広告および遵法担当ディレクターのJohn Canfield(ジョン・キャンフィールド)氏は、「Googleは利用約款を改定し、身元確認を(政治広告以外の)すべての広告主にもとめていく」と発表した

2018年に広告約款に追加された条項では一部の国々への政治的広告の掲載に際して出広者の身元確認が必要とされており、これは広告そのものにも表示される。

前回の大統領選挙の前後から政治広告に対して「実際の広告主はみかけと)違うのではないのか?」という不信感が高まり、身元確認は透明性を高めることを目的としていた。 今回、Googleはこれを一歩進め、トピックに関係なく本人確認を広告購入プロセスの必須の部分とする。

Googleネットワークで広告を購入しようとする場合、個人、法人ともに身元を証明できる書類が必要となる。この夏以降、身元情報がGoogle広告の一部として表示されるようになり、ユーザーがクリックすると広告を購入者の名前や所在地を場所を含む情報が表示される。

キャンフィールド氏はブログ記事で「この広告プロセスの変更により、オーディエンスはGoogle広告の購入者が誰であるかを簡単に知ることができるようになり、広告による情報を利用する際によりよい意思決定を行えるようになる。また、悪質な出広者を検出し、偽装の試みを制限することにも役立つ。これはデジタル広告のエコシステムの健全性を維持するために役立つ」と説明している。

政治広告の身元確認の義務化は現在30か国で実施されている。政治以外の広告への拡大はまずアメリカで実施され、逐次その他の国や地域が対象となる。Googleでは、広告ネットワークが巨大であるため新プロセスを世界に拡大するには「数年かかる」としている。広告主に身元確認を提出するよう求める通知があったら30日以内にフォームに記入しなければならない。その後提出書類はGoogle社員によって審査される。

実在の人物、企業と広告を結び付けるには膨大な作業が必要だが、さらに悪意ある行為者を特定するとなればその道のりは長いものとなることが予想される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

スマート家電メーカーは見聞きした情報を政府に開示するのか?

1年前、TechCrunchは名の通ったスマートホーム機器のメーカーに対して、ユーザーの個人データを政府に提供するか否かを質問した。その結果はさまざまだった。Amazon(アマゾン)、Facebook(フェイスブック)、Google/Nest(グーグル/ネスト)のビッグ3はみな、政府がユーザーの個人データを求めてきたときの対処法を透明性報告書で公表した。Apple(アップル)は収集したデータは匿名化されるので報告書は必要ないと話していた。残りのメーカーは、政府からの個人データ提出の要求への対応を公表しなかった。

あれから1年が経過し、スマートホーム市場は急成長したが、その残りのメーカーの対応に関する情報公開は、ほとんど、あるいはまったく進展していない。中には以前より悪くなったケースもある。スマートホーム機器に限らず、インターネットに接続できる機器は便利で、どこでも売られているが、それらは私たち自身や私たちの家庭の情報を大量に収集している。スマートロックは、いつ人が家に入ったかを知っている。

スマートドアホンは訪問者の顔をキャプチャーする。スマートTVは、どんなテレビ番組を見たかを知っている。一部のスマートスピーカーは、私たちが何に興味を持っているかを知っている。使われていない間は、スマートホーム機器の多くはデータを集め、メーカーに転送している(なかには、無線ネットワークの情報のような、こちらが思いも寄らない要素のデータ点を収集するものもある)。製品や私たちの家をよりスマートにするためというのが表向きの理由だ。

そのデータはメーカーによってクラウドに保存されるため、警察や政府の役人が犯罪捜査のためにそのデータを提供せよと要求できる。しかし、収集したデータの量が膨大になると、企業の、データの提出要求に関する透明性が低下する。私たちに届くのは事例報告だけだが、その数は非常に多い。警察はAmazon Echoのデータを入手して殺人事件を解決。Fitbitがデータを提出したことにより男を殺人罪で起訴。Samsung(サムスン)は児童虐待画像を見ていた性犯罪者の逮捕に協力。Nestは監視映像を提出してギャングのメンバーの逮捕に協力。そしてAmazon傘下のRingの最近の事例報告では、スマートホーム機器メーカーと警察との密接な関係が露わになった。

各メーカーの回答は次のとおりだ。スマートロックとスマートドアホンのメーカーであるAugustは、去年とまったく同じ声明を返してきた。「現在は透明性報告書を作成していませんが、外国諜報活動偵察法(FISA)に基づくユーザーコンテンツまたは非コンテンツの提供を求める国家安全保障書簡(訳注:FBIからの令状を必要としない情報提供命令書)も命令も受け取たことがありません」というものだ。しかし、Augustの広報担当者Stephanie Ng(ステファニー・エン)氏は、裁判所の召喚状、捜査令状、裁判所命令などの国家安全保障関係以外の要求を同社がどれほど受け取ったかは明らかにしていない。法的な要求があった場合には「あらゆる法律」に準拠するとだけ話している。

ロボット掃除機のRoomba(ルンバ)のメーカーであるiRobotは、去年と同じく、政府からのデータ提出要求は「受け取っていない」と答えた。「現在iRobotでは、透明性報告書を発表する予定はない」が「政府から顧客データの提出を要求された場合」には報告書の公表を検討するとのことだ。

Netgearのスマートホーム部門から2018年に独立したArloは、コメントの求めに応じなかった。今でもスマートホーム技術を所有しているNetgearは「透明性報告書の一般公開はしない」と話している。

Amazonの子会社であるRingは、警察との協力関係が国会議員たちの怒りを買い、ユーザーのプライバシーを守る能力に疑問を持たれているが、去年、時期は明言しないものの、将来的に透明性報告書を公開するつもりだと話していた。今年、Ringの広報担当者Yassi Shahmiri(ヤッシ・シャミリ)氏はコメントを出さず、その後繰り返し送った電子メールへの返信も止まってしまった。

Honeywellの広報担当者Megan McGovern(ミーガン・マクガバン)氏はコメントせず、元Honeywellのスマートホーム部門で1年前に独立したResideoに私たちの質問を投げたが、ResideoのBruce Anderson(ブルース・アンダーソン)氏もコメントしなかった。

また、スマートホーム機器やインターネットに接続できるテレビや家電のメーカーであるサムスンも、昨年とまったく変わらず、コメントの依頼に応答しなかった。

全体として、これらの企業の反応はほぼ去年どおりの回答だった。さらに昨年、「2018年末」の透明化報告書の公開を約束していたスマートスイッチとセンサーのメーカーのEcobeeは、約束を果たさないままだ。理由を尋ね再三コメントを求めたが、Ecobeeの広報担当者Kristen Johnson(クリステン・ジョンソン)氏は応答しなかった。

入手可能な範囲で最も信頼できる情報から判断するに、August、iRobot、Ringそしてその他のスマートホーム機器メーカーは、貴重な個人データが政府に差し出される可能性を秘めたまま、全世界に数億人のユーザーや顧客を擁しているが、ユーザーも顧客も、それに関して一切説明を受けていない。

透明性報告書は完全ではないかも知れない。透明度が他より低いものもある。しかし、メディアで叩かれたり、監視国家への協力を要求された後であっても、大企業がその情報を開示したなら、小さな企業も言い逃れができなくなる。

今年は、ライバルよりもややマシな企業がいくつかあった。しかし、プライバシーに関心の高い人間なら(誰もが高くあるべきなのだが)これでは満足できない。

関連記事:スマートテレビのセキュリティーについてFBIが警告

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(翻訳:金井哲夫)

Facebookが広告ターゲティングの理由説明を改善

これまでFacebookは、なぜその広告やコンテンツが表示されるのか(そして、それに対して何ができるのか)をユーザーが知るための新しい方法を追加してきた。しかし今日のブログ記事で、プロダクトマネジャーのScreethu Thulasi氏は、「まだ理解するのが難しく、操作方法がわかりにくいことがユーザーからのフィードバックでわかった」と書いた。

同社はそれに対処するべく2つの変更を行う。第一に「この広告が表示される理由」(Why am I seeing this ad?)に表示する情報を増やす。

これまで「この広告が表示される理由」では、地域・年代情報や過去にウェブサイトを訪問したかなど関係ありそうな理由を1つか2つ挙げていた。今後はもっと詳しく、その広告と一致したユーザーの興味分野やカテゴリーなどのターゲティング情報も表示されるようになる。また、その情報がどこから来たか(例えば、過去に訪れたウェブサイトや「いいね!」をつけたFacebookページなど)をより明確にして、ユーザー体験を自分に合わせるために使用できる機能を明示する」。

ブログに掲載されたビデオには、ユーザーの関心事や居住地、年代、さらには過去に広告主のウェブサイトを訪れたことがあるかなどの情報がどのようにターゲティングに利用されたかが表示されている。そのような広告を見たくない場合は、Facebookに登録した興味分野を加減するか、「What You Can Do」セクションをクリックすれば、その広告主の広告をブロックしたり、第三者に提供される個人データを制限するためのオプションが案内される。

そして第三者へのデータ提供に関して、ユーザーに関するデータをアップロードしている企業について今まで以上に詳しく知らせるとFacebookは言っている。広告設定の中にある企業一覧を2つのセクションに分け、過去7日以内にそのユーザーの情報を含むリストをアップロードしそれを利用して広告を掲載した企業、および、そのユーザーを含むリストを別の広告主に提供し、過去7日以内にそのリストが広告掲載に使われた企業をそれぞれ表示する。

多くのプライバシー機能と同じく、ほとんどのFacebookユーザーはこれらの機能になじみがない。しかし、こうした問題に関心があり、気にかけている人たちにとって、これは機能レベルを下げすぎることなく、情報をアクセスしやすくするすぐれた方法といえるだろう。

そしてもちろん、これは最近強まっている当局の監視(Facebook分割の提案さえある)を受けて同社が取り組んでいる透明性拡大への取組みのごく一部にすぎない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

欧州の研究者団体がFacebookに政治広告の透明性を調査できるAPIを要求

Facebookは、そのプラットフォーム上で政治広告がどのように拡散し増幅してゆくかを調査可能にするAPIを、誠実な研究者に提供するよう求められている。

Mozillaが率いる欧州の学者、技術者、人権団体、デジタル権団体の連合は、5月に行われる欧州議会選挙の前に、政治的な宣伝の拡散と増幅の様子がわかるようFacebookにその透明性の拡大を要求する公開書簡に署名した。

我々は、この公開書簡に対するFacebookの反応を探った。

Facebookは、それ以前に、欧州において独自の「選挙セキュリティー」基準を設けることを発表していた。具体的には、政治広告の承認を行い透明性を持たせるというものだ。

元欧州議会議員でありイギリスの副首相を務めたこともあるFacebookの新しい国際広報担当責任者Nick Cleggは、翻訳された政治ニュースが同社のプラットフォーム上でどのように配信されるかを人間の目で監視するオペレーションセンターを、来月にもEUに複数ある中のアイルランドの首都ダブリンにあるセンターに立ち上げ、運営を開始すると先月発表した。

しかし、公開書簡に署名した人々は、Facebookが盛んにPRする政治広告の透明性に関する基準は甘すぎると主張している。

さらに彼らは、Facebookがとってきたいくつかの手順が、同社が断言する政治広告の透明性を外部から監視しようとする取り組みを拒んでいると指摘している。

先月、ガーディアン紙は、Facebookが同社のプラットフォームに加えた変更により、政治広告の透明性を外部から監視できるよう求める団体WhoTargetsMeの、同プラットフォームでの政治広告を監視し追跡する行動が制限されたと伝えた。

イギリスを本拠地とするその団体は、公開書簡に署名した30を超える団体の中のひとつだが、彼らが言うところの「貴社のプラットフォームでの宣伝の透明性を高めるためのツールを構築しようとする誠実な研究者への嫌がらせ」を止めるよう訴えている。

署名した団体には、Center for Democracy and Technology、Open Data Institute、国境なき記者団も含まれている。

「Facebookユーザーに用意された広告を透明化するツールへのアクセスを制限することは、透明性を低下させ、政治広告の分析に役立つツールをインストールするというユーザーの選択を奪い、貴社プラットフォーム上でのデータの評価を目指す誠実な研究者を支配下に置くことである」と彼らは書いている。

「貴社がこうしたサードパーティー製ツールの代わりに提供しているものは、単純なキーワード検索機能であり、それではレベルの浅いデータにしかアクセスできず、有意義な透明性をもたらすことはできない」

この書簡は、Facebookに対して「高度な調査と、EUのFacebookユーザーに向けられた政治広告の分析ツールの開発を可能にする、実用的でオープンな広告アーカイブAPI」を公開するよう求めている。そしてその期限を、欧州議会議員選挙の前に外部の技術者が透明性ツールを開発する時間が得られるよう、4月1日までと定めた。

書簡の署名者らはまた、政治広告が「他の広告と明確に区別」できるようにすること、さらに「広告主の身元やEU加盟国全体で同プラットフォームに支払われた金額など、鍵となるターゲティング・クライテリア(設定)」を添えることをFacebookに求めた。

昨年、イギリスの政策立案者たちは、ネット上のデマが民主主義にどれほどの影響を与えるかを調査し、政治広告のターゲティング・クライテリアに関する情報として何をユーザーに提供しているのかを教えるようFacebookに圧力をかけた。また、政治広告を完全に拒否できる手段をなぜユーザーに与えないのか問いただした。FacebookのCTO、Mike Schroepferは、明確な答を出せず(あるいは出そうとせず)、代わりにFacebookが提供すると決めたデータのほんの一部を繰り返すことで質問をかわす作戦に出た。

1年近く経過した今でも、欧州市場の大半のFacebookユーザーは、政治的透明性の初歩的な段階すら与えられていない状況だ。同社は自社の規定を採用し続け、対応はマイペースだ。困ったことに、「透明性」の定義(つまり、ユーザーにどこまで提示するか)も自分で決めている。

Facebookは、昨年の秋、イギリスにおける政治広告に関して、「広告料の支払者」の提示機能を加え、広告はアーカイブに7年間保管されることを発表するなど(非常に簡単に回避できることを示されて検証方法を見直すはめになったが)、独自の透明化対策の一部を適用し始めた。

今年の初めには、Facebookは、アイルランドでの中絶を巡る国民投票の間、一時的に海外団体が出資する広告の掲載停止も行っている。

しかし、地方選挙など、その他の欧州での選挙では、表示された政治広告に関して、または誰が広告料を支払っているのかといった情報がユーザーに示さないまま、Facebookは広告の掲載を続けていた。

EUの高官は、この問題を注視していた。先月末、欧州委員会は、先月発表された政治的偽情報に対する自主規制の実施に署名したプラットフォームや広告代理店からの進捗状況を知らせる月間報告の第一号を12月に発表した。

欧州委員会によれば、とくにFacebookには、消費者エンパワーメントのためのツールをどのように展開するか、さらに、どのようにしてEU全域のファクトチェッカーや調査コミュニティーとの協働を強化してゆくかについて「さらなる明確性」を求めた。とくにジュリアン・キング委員は、外部の研究者へのデータアクセス権の提供をしなかった企業としてFacebookを名指ししている。

本日(米国時間2月12日)送られた学者や研究者からの公開書簡は、Facebookの最初の消極的な対応に対する欧州委員会の評価を援護するものであり、翌月の月次評価に向けて力を添えるものとなる。

欧州委員会は、プラットフォームが政治的偽情報の問題に自主的に取り組む努力を拡大できないのであれば、法制化の可能性もあると警告を出し続けている。

プラットフォームに自主規制を迫ることには、もちろん批判的な人もいる。彼らは、それを行っても、強大な力を持ちすぎたというプラットフォームの根本的な問題には、そもそも対処できないと指摘している……。

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この書簡は左派でリバタリアニズムがどう働いているかを示している。Zuckerbergに彼の力を合法化する民主主義を守れと求めている。それは彼が決めることではない。

Facebookに関する事実(本文は英語)

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(翻訳者:金井哲夫)

スマート家電が見聞きした情報を政府に開示するかどうかメーカーに聞いてみた

10年前には、ほぼすべての家電製品がインターネットにつながることなど想像もつかなかった。今では、スマートではない家電製品のほうが大変に貴重になっている。だが、スマート家電は、普段、私たちが考えてもいない新しいデータを大量に吸い上げているのだ。

暖房の温度調節器は部屋の温度を知っている。スマートカメラとセンサーは、家の中で誰かが歩き回われば、それに気づく。スマートアシスタントは、我々が何を求めているかを知っている。スマート・インターホンは、誰が来て誰が出て行ったかを知っている。クラウドのお陰で、そうしたデータはどこからともなくやって来る。スマートフォンを使えば、ペットの様子を見たり、ロボット掃除機が仕事をしているかを確かめることが可能だ。

スマート家電のメーカーは、そうしたデータを蓄積したり利用したりできる。そこで、犯罪解決のためにそれを利用できないかと、警察や政府機関は考え始めている。

スマート家電が、我々を監視するために使われているかどうか、などという質問にはメーカーが答えるはずがない。

何年もの間、技術系企業は透明性に関するレポートを発表してきた。彼らは、ユーザーのデータを提出するよう政府から要求されたり依頼された回数を、半定期的に公開している。最初は2010年のGoogleだった。その他の企業も、ユーザーをスパイするよう政府から協力を求められているとのエドワード・スノーデンの暴露騒動に押されて追従するようになった。盗聴国民の通話記録を提供して政府に加担してきた電話会社ですら、信頼を取り戻そうとその件数を公表するようになっている。

スマート家電が普及し始めると、警察も、これまで持ち合わせていなかったデータの新しい入手方法に期待するようになった。警察は、殺人事件の解決のために、Amazonから提供されたEchoのデータを検証した。Fitbitのデータは、養女を殺した容疑で90歳の男性を起訴する手助けとなった。最近では、Nestが監視映像の提出を強要され、これがギャングのメンバーに窃盗事件の有罪答弁をさせることにつながっている。

しかし、大手スマート家電メーカーの中で、データ提供の要請の件数を公表したのはGoogleの傘下であるNestただ一社だ。

あまり知られていないNestの透明性レポートだが、先週、Forbesは、多くのことは示されていないと指摘した。2015年半ばから、500件分のユーザー情報を約300回提出したという内容に留まっている。またNestによれば、テロやスパイなど国家の安全保障に関連する秘密の依頼は、今日まで受けていないという。Nestの透明性レポートは、地方や政府からの合法的なデータの要求案件を開示したApple、Google、Microsoftの詳細な報告書と比較すると、かなり曖昧だ。

Forbesは「スマートホームは監視ホームだ」と書いているが、その規模はどれほどなのだろう。

我々は、市場でよく知られているスマート家電メーカー数社に、透明性レポートを発表するか、またはスマート家電のデータを提出するよう要求された数を公表するかを聞いてみた。

その返事は、ほとんどが泣きたくなるような内容だった。

最大手4社の返事

Amazonは、Echoのデータの提出要請の数を公表するかという質問には答えなかった。去年、データ提供のニュースに関連して広報担当者に質問した際も、Echoのデータに関する報告は行うが、そうした数字は公表しないと話していた。

Facebookは、透明性レポートには「Portalに関連するすべての要求」が含まれると話している。Portalは、Facebookが先日発売を開始したカメラとマイクを搭載したディスプレイ装置だ。新製品ではあるが、広報担当者は、このハードウエアに関するデータ提出要請の件数を公表するかについては答えなかった。

Googleは、Nestの透明性レポートについては話したが、Google自身のハードウエア、とくにGoogle Home製品に関連するレポートの開示については答えていない。

Appleは、HomePodなどのスマートホームに関する数字の公表は必要ないという立場だ。なぜなら、報告するような事例がないからだそうだ。Appleによれば、HomePodへのユーザーからの命令にはランダム・アイデンティファイアが割り当てられるため、個人の特定は不可能だという。

最大手以外の重要なスマート家電メーカーの場合

スマートロックのメーカーAugustは、「透明性レポートは作成していないが、外国諜報活動偵察法に基づく国家安全保障に関する書簡も、ユーザーのコンテンツまたは非コンテンツの情報の提出を求められたこともありません」と言っている。しかし、召喚状、令状、裁判所の命令の件数については答えていない。「Augustは、あらゆる法律に準拠しており、裁判所からの命令や令状があったときは、応じる前に、かならずその内容を吟味しています」と広報担当者は話していた。

ルンバのメーカーiRobotは、「政府から顧客データの提出を求められたことはありません」と話しているが、透明性レポートを将来公表する予定はあるかとの質問には答えなかった。

Netgearのスマートホーム部門であったArloと、Signify(旧Philips Lighting)は、透明性レポートは作成していないとのこと。Arloは将来についてはコメントせず、Signifyは作成の予定はないと話している。

スマートなドアホンやセキュリティー製品のメーカーRingは、なぜ透明性レポートを作成しないのかという我々の質問には答えなかったが、「市民に適正な利益をもたらす合法的で法的義務が伴う要請がなければ、ユーザー情報は提供しません」と話している。さらにRingは、「当然のことながら、利用範囲が広すぎたり不適切な要求は受け入れません」とのことだ。さらに尋ねると、将来的には透明性レポートを公表する計画はあると答えたが、いつとは言わなかった。

どちらもスマートホームのセキュリティー製品を製造販売しているHoneywellCanaryの広報担当者は、こちらが指定した期限までには返事をくれなかった。

スマートセンサー、トラッカー、インターネットに接続できるテレビなどの家電製品を製造販売しているSamsungは、コメントの依頼に応じなかった。

スマートスイッチとスマートセンサーのメーカーEcobeeだけは、「2018年末に」最初の透明性レポートを公表する計画があると話してくれた。「2018年以前、Ecobeeは政府機関から、いかなるデータの提供の依頼または要請も受けたことがありません」と広報担当者は強調していた。

ともかく、家の中の家電製品が、自分たちのためではなく、政府を助けるためにあると考えるとゾッとする。

スマート家電はますます便利になるが、それが収集するデータがどれだけ広範囲に及ぶものか、さらに使っていないときもデータを集めているということを理解している人は少ない。スマートテレビにスパイ用のカメラが付いていなかったとしても、我々がいつどんな番組を見ているかは把握している。それを使って警察は、性犯罪者を有罪にできる可能性がある。殺人容疑者が家庭用警報装置のリモコンキーのボタンを押したというデータだけで、殺人罪が確定してしまうかも知れない。

2年前、元米国国家情報長官James Clapperはこう話していた。政府は、スマート家電を諜報機関が調査を行うための新しい拠り所として視野に入れていると。インターネットに接続された家電製品の普及が進めば、それは普通のことになってしまう。情報通信アドバイザリー企業Gartnerは、2020年までに200億台以上の製品がインターネットに接続されると予測している。

インターネットに接続された居間のカメラや温度調節器を通して、政府が我々の行動をスパイする可能性は低いだろうが、不可能だと考えるのはお人好し過ぎる。

スマート家電のメーカーは、それをユーザーに知らせようとはしていない。少なくとも、大半のメーカーは。

‘Five Eyes’ governments call on tech giants to build encryption backdoors — or else


アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのいわゆる「ファイブアイ」国家同盟は、大手技術系企業に対して、ユーザーの暗号化されたデータの解読を可能にする「バックドア」を作るよう秘密裏に要請していた(本文は英語)

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(翻訳:金井哲夫)

Facebookが検閲やテロ対策の方針に関する意見を公募――ユーザーとの対話を図る

Facebookはどのようなコンテンツであれば掲載してもよいと考えればいいのだろうか? また、多様な意見や文化の違いが存在する中、彼らはどのようにユーザーの安全と真実のバランスをとればよいのか? Facebookはこのような一筋縄ではいかない問題の解決に向けて、本日(現地時間6月15日)7つの”難問(hard questions)”に関する記事を公開した。ユーザーは各項目に対するフィードバックや、他にFacebookが取り組むべき問題を、所定のメールアドレス(hardquestions@fb.com)に直接送ることができる。

Facebookは今後それぞれの問題に対する考えをまとめたブログ記事を公開しようとしており、まずは本日、インターネット上でのテロリズムの拡散とFacebookがどのようにこの問題に取り組んでいるかについての記事がアップされる予定だ。

[アップデート:こちらから最初の”難問”に関するFacebookのブログ記事を確認できる。予定通りこの記事ではテロ対策が取り上げられており、詳細については以下で触れている]

「私たちの選択に疑問を抱いている人もいるかと思いますが、Facebookの考え方やどれだけ真剣に私たちがそれぞれの問題に取り組もうとしているかについて、このブログシリーズを通じて知ってもらえればと考えています」とパブリックポリシー担当VPのElliot Schrageは記している。「また、こういった情報を公開して説明責任を果たすことで、今後間違いを犯す回数が減り、何か問題が起きてもすぐに対応できるようになると信じています」

Facebookが取り組んでいる7つの”難問”は以下の通りだ。各項目には関連情報を追記している。

  • ネット上のプロパガンダの拡散を防ぐためにソーシャルメディアはどのようなアプローチをとればいいか?

Facebookはこれまでにテロ支援を表明しているページやアカウントを閉鎖してきた。しかし、テロリズムとの関連が不明確なものへの対応や、忌憚のない意見とプロバガンダの線引きに関しては明確な指針を示せないでいる

  • アカウントの持ち主が死んでしまった場合、その人の情報をどのように扱うべきか?

現在のところ、Facebookでは亡くなった人のアカウントが追悼アカウントに変更され、事前に「追悼アカウント管理人」に定められた人がそのページを管理するようになっている。しかし、もしもアカウトの持ち主が生前に管理人を定めていなければ、たとえ家族の誰かに対してであっても、管理権を移譲するためには複雑なプロセスを経なければいけない。

  • ソーシャルメディアは、問題となりそうな投稿や画像をどのくらい積極的に監視・削除すべきなのか? 特にさまざまな文化的背景を持つ世界中のユーザーが利用しているサービスでは、誰がコンテンツの問題性を判断すればいいのか?

Facebookはさまざまな年代のユーザーや広告主の安全を守りつつも、熱い議論が交わされるトピックを検閲しないようにするという難しい綱渡りを強いられている。最近では、警察による暴力がおさめられた動画や、裸の子どもが写った戦争の恐ろしさを伝える歴史的な写真を一時的にブロックしたことで批判を受けていた。この点に関しマーク・ザッカーバーグは、各ユーザーがフィルター機能を自分で調節できるようにし、各地域のユーザーの平均的な設定をその地域のデフォルト設定にしたいという考えを示していた。しかし、各地域の基準が国際的な基準と一致しない場合、Facebookは依然として厳しい選択を迫られることになる。

  • 誰が「偽ニュース」と「賛否の分かれる政治的な発言」の線引きを行うのか?

2016年のアメリカ大統領選挙以降、Facebookは偽ニュースの拡散に対して十分な対策をとっていないと批判を浴びており、特に右派の陰謀論やドナルド・トランプの勝利に繋がったとされる情報の拡散が話題になった。しかし、もしもFacebook自体が偽ニュースを取り締まり始め、思想的に偏った決断を下すようになると、ユーザー間の議論が沈静化し、オンラインコミュニティがさらに分裂してしまうだろう。その一方で、彼らが何もしなければその判断は有権者の手に委ねられることになる。

  • ソーシャルメディアは民主主義にとってプラスなのか?

ひとつ前の問題にも関連しているが、ユーザー間で”ニュース”が勝手に広まることで、これまで誤報や不正確な情報から読者を守ってきたプロの編集者が入りこむ余地がなくなってきてしまった。残念ながら、扇情的な虚偽のコンテンツほどエンゲージメント率が高く、結果的にニュースフィード上でも目立つ位置に配置され、これがさらなる拡散に繋がってしまっている。これに対し、Facebookは偽ニュースが目立つ位置に表示されないようにアルゴリズムを改変し、外部のファクトチェッカーとも協力してきたが、フィルターバブルが縮小化したことでユーザーが多様な意見に触れる機会が減ってしまう可能性もある。

  • どのようにユーザーデータを活用すれば、ユーザーの信頼を損なわずに利便性を高めることができるのか?

Facebookはいい意味でも悪い意味でもデータ発掘機のような存在だ。大量のデータがあるからこそ彼らはユーザーの好みにあったコンテンツを表示することができるのだが、ユーザーデータは広告の効率化にも使用されており、Facebookの影響力はさまざまな業界に留まらず、私たちのプライバシーにまでおよぶ。

  • 若いネットユーザーが安全な環境で自分を表現するためにはどうすればよいのか?

大人にとっては重要なニュースだったり軽いエンターテイメントだったりするものが、子どもにショックを与え動揺させてしまうことがある。そんな中、Facebookはお互いに繋がりあえるような環境を子どもに与えつつも、悪意を持ったユーザーから子どもたちを守るようなネットワークを構築していかなければならない。既に同社は成人ユーザーがグラフ検索で18歳未満のユーザーを見つけられないよう制限を設けているほか、親向けにさまざまなリソースを公開しているが、子どもが投稿した内容は一般公開できるようになっているため、見知らぬ大人が子どもと関わりを持つ可能性を根絶できてはいない。

テロリズム対策

テロ対策に関するFacebookのブログ記事はユーザーとの対話のスタート地点に過ぎず、AIや人間のスタッフ、外部パートナーといった、プロパガンダ拡散を防ぐための手段をリストアップしただけのものだった。

Image via BuzzNigeria

彼らの取り組みは以下の通りだ。

  • 既に削除対象となったコンテンツが再びアップロードされるのを防ぐための類似画像検索機能の実装
  • テロ行為を支援するような文章を特定できるアルゴリズムを使い、似た文章を見つける機能のテスト
  • テロ支援を理由に削除されたアカウントと繋がっている、もしくは似たアカウントの削除
  • 削除後に再登録したと思われるアカウントの動きを特定し”再犯率”の低下を狙う
  • プラットフォームを超えてテロリズムの撲滅を目指すためInstagram、WhatsAppと協力
  • 現状Facebookでは、警察からの要請に対応する緊急時用の専門スタッフを含め、何千人というモデレーターが同社の社員としてフラグの立てられたコンテンツのレビューを行っている。ここにさらに3000人のモデレーターを追加し、150人の専門家をテロ対策専用のチームに配備する。
  • FacebookはTwitterやYouTubeをはじめとする企業とパートナーシップを結び、テロ関連コンテンツのフィンガープリントを共有しているほか、世界各国の政府機関からブリーフィングを受け、反過激主義・反ヘイトスピーチプログラムを支援している。

残念ながら、今回の記事にはフィードバックのためのメールアドレスは記載されておらず、プロパガンダとされるコンテンツをチェックする際の基準に関する哲学的な問題も提起されていない。

[アップデート:この記事でメールアドレスが記載されていないということを指摘した結果、当該ブログ記事にhardquestions@fb.comが追記され、今後”難問”に関連する全ての記事にメールアドレスを記載するという連絡をFacebookから受け取った。この対応から、実際にフィードバックに耳を傾け行動を起こそうとする同社の姿勢を感じられた]

透明性だけでは事態の重大さは変わらない

この度公開された”難問”からは、どうすればザッカーバーグが「これまでとは違うメディア企業」と呼ぶ存在であり続けられるのかというFacebookの葛藤が感じられる。ソーシャルネットワークというものは、ユーザーが肉付けしていく骨格のようなプラットフォームであると同時に、何が有益で楽しいコンテンツで何が誤解を招く邪魔なコンテンツなのかを判断し、自分たちの色を出していく出版社のような存在でもある。

そういう意味では、考えていることを社内に秘めておかずに公開すると決めたFacebookの判断は賢明だったと言える。また、情報が公開されたことで、人々はFacebookが少なくとも問題に真剣に取り組もうとしているのだと安心できるかもしれない。問題は、透明性が高まったからといって、急を要する事件が起きたときに、何十億もの四半期売上高を誇るFacebookが時間をかけてそれに対応する余地が与えられるかということだ。フィードバックや解決策をクラウドソースするだけでは足りない。たとえ解決策がビジネスの妨げになるとしても、Facebookは実際にアクションを起こしていかなければならないのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter