500 Startupsの第22回デモデイで、目立ったスタートアップたち

Dave McClureが今年の7月に、複数の女性にアプローチし、薄気味悪い思いをさせていた事を認めて500 Startupsのジェネラルパートナーを辞任したことで、500 Startupsの立場は微妙なことになっている。 それ以来、同社のプログラムにはずっと不安がつきまとっているが、デモデイと新しいクラスの登録を始めた今はその不安が一段と高まっている。

それは同社の22回目のデモデイにますます強いものとして現れていたように思う。この日、CEOのChristine Tsaiがステージに上り、起こり始めた同社の改革についての説明を行った。

「8月には、500 Startupsが包括性、多様性、ハラスメントへの対処を図ることを目指すことを宣言しました」とTsaiは語る。「どれも、他のものへ同時に対処する事なしに解決を図ることはできません。私たちは、直ちに多くのフランクで本音の議論をチーム内で行いました。同時に共通の理解に達するため…そして500 Startupsの文化がうまくいっている場所、欠けている場所を見出すための調査も立ち上げました。私たちは多くの素晴らしい学びを得ることができました。そして私たちはこれを定期的にモニターし続けるつもりです」。

そしてデモデイがやって来る:以前私たちは、デモデイは非常に忙しくなる可能性があると指摘した。1つあたり、わずか数分のプレゼンテーションから本当に素晴らしい会社を選び出すのは、本当に困難なことなのだ。しかしそれでも、そのうちの幾つかはきちんと取り上げる価値がある。それらは背後にあるアイデアや、彼らが解決する問題、そして創業者のチームといった幾つかの要因から判断される。

同じことが、今日(米国時間10月25日)の500 Startupsの、22回目のデモデイにも当てはまった――ということで、以下に示すものが数時間にわたるプレゼンの結果、私たちが選びだしたものだ:

1/8 :Nextplay

企業内キャリアのための論理的な道筋を持つことは、おそらく企業が従業員を留めておくために必要とする最も重要なツールの1つである――そして多くの企業が失敗する。

なので、従業員たちがどのようなゴールを達成し、どのように前へ進もうかと悩むとき、彼らはしばしば社外に進むべき道を見出してしまう。Charu Sharmaと彼女の共同創業者Nawar Noryは、企業がそうした従業員たちに、メンタリングと希望の持てる一連のゴールを提供するためのツールを開発するために、Nextplayを創業した。最終的な製品はEllenと呼ばれる。このアプリはメンターとのマッチングを行い、自身のキャリア対し安心感を得る手助けをするものだ。

「キャリア開発は不確定な道筋です、自分の目標を特定し、自分のメンターを見つけることは従業員自身に任されています」とSharmaは語った。「女性は苦しみ、少数派も苦しみ、内向的な人も苦しんでいます」。

Sharmaによれば、Ellenを6ヶ月間使用した後、25%以上の従業員が自分たちの会社で働くこと強く推奨するようになっているそうだ。同社は10万ドルの収益を上げている。

2/8 :Mobile Forms

アフリカは世界で最も重要な発展途上市場の1つであり、拡大しようとしている企業たちに対して大きなチャンスを提供している――しかしそこでどのように始めるべきかのデータを収集することは、最も難しい課題だとMobile FormsのCEOであるTomi Ayorindeは語る。

「アフリカの経済は2桁台の成長を遂げていて、それが世界中の企業たちの注目を集めています」とAyorindeは語った。「企業は市場を理解しようと何十億ドルも費やしていますが、ほとんどの企業にとって、市場はまだブラックボックスのように見えています」。

企業は必要な調査の要求を定義して、それをMobile Formasに送信する。その後Mobile Formsは、何千人ものフィールドエージェントのチームに要求を送信し、企業がより良い決定を下すために必要とする情報を収集する。ナイジェリアを皮切りに、同社はこれまでに約15万ドルの収益を上げていると述べた。

3/8 :Fincheck

これまで経費精算をしたことが一度もない人はわからないかもしれないが――まあ楽しい経験とは言えない代物だ。おそらく読者も、そうした経費をインターネット上で、Googleカレンダーや電子メールその他の様々な場所に置いてクロスチェックを行っていることだろう。

これがFincheckの役に立つ場所だ。基本的にはそうした作業の後半を受け持ってくれる。複数のデータソースをタップすることで、Fincheckは最後に経費のサマリーを表示してくれる。こうしてこれまで経費ソフトウェアの操作に費やしていた時間から解放してくれるのだ。

CEOのRuth Polachekは、同社がプライベートベータで10万件を超えるトランザクションを処理したと語った。バックエンドで一連のアルゴリズムを使用して、基本的にはブラウザのタブを何度も表示することで得られるすべてのものをデジタル化するのだと語っている。

4/8 :Plum

都市部に住んでいたり、真に平均的な人物ならば、長期的に貯蓄を積み上げていくことに困難を感じているかもしれない。

Victor Trokoudesも確かにこの問題を感じていた――30代の時には基本的に貯金がなかったのだ。だからこそPlumのアイデアが生まれたのだ。これは、あなたの支出パターンを学習するだけではなく、支払いを抑えてより節約することができる場所を把握するために、請求書も追跡してくれる。

「これは『気付かせる力』(the power of nudge)と呼ばれるもので、人びとに暮らし向きが良くなる判断ができるようにさせるものなのです」とTrokoudesはノーベル賞受賞者のRichard Thalerに言及しながら語った。「PlumはAIを使って皆のお金が、煩わしさなしに、あるべき形で管理されるようにするチャットボットです」。

Trokoudesによれば、1月に発売されて以来、アプリのユーザー数は5万人に達し、毎月20%ずつ増えているという。

5/8 :Mira

生命保険は、特にリスクの高い人にとっては、常に見通しが難しいものだ。しかしShuo Zhangは、例えば糖尿病のような「危険性の高い」カテゴリーに陥る人もいるものの、そういう人たちも本当にリスクが高い顧客とはいえない場合がある、と述べている。

「私たちのオンラインアプリケーションでは、40のユニークな医療、財務およびその他の追跡データを統合することができます。つまり、顧客に関する更に大きな洞察を得ることが可能なのです」と彼は語る。「私たちは、彼らが健康的な食事をし、頻繁に運動を行い、血糖値が安定していることを知ることができます。そうした人たちは、保険会社が考えるほど高リスクではないのです」。

ある顧客が潜在的にハイリスクかもしれないと報告されると、保険会社はそれMiraに照会することができる。Miraは、顧客の実際のリスクプロファイルを把握するための深い探索を行う。この結果、顧客は彼らにハイリスク顧客というラベルを貼る典型的な保険会社と、より有利な条件で保険を契約することが可能になるのだ。

6/8 :MailHaven

もしAmazon Primeの顧客で、大量のパッケージを受け取るような人物なら、荷物の受取に付き纏う不安は――そしてそれが玄関先から盗まれないことを祈ることは――深刻な問題だ。

このため、返品のためのピックアップを行なう、オンデマンドのスタートアップのような、よりスマートなデリバリサービスを提供しようとする試みは、これまでも沢山あったが、MailHavenはもう少しレトロなやり方を考えている。同社はあなたの家の前に置かれる、文字通り「箱」を販売している。配送業者たちはこの箱に荷物を自動的に投入することが可能で、逆に返品の必要がある荷物をピックアップすることも可能なのだ。

「もし何かを返品をする必要が生じる度に、それを家の前に置かれた箱の中に保管しておいて、それを持っていって貰えるようにできたら便利だと思いませんか。そうした仕掛けが無いために、生産性に対して年間450億ドルの損失が生じているのです」とCEOのKela Ivonyeは語る。「2700万人の人がなんとか郵便局まで持ち込むか、高価なオンデマンド配送サービスと契約さぜるを得なくなっているのです」。

399ドルの初期費用と月額15ドルのサブスクリプションを考えると、これは先進国向けのオプションのように見える。しかし、商取引がますますオンライン化されるつれて、MailHavenのようなものが、パッケージを適切なタイミングで入手するための回答になるのだろう。

7/8 :LaborVoices

衣料品ブランドがその生産立ち上げようとするときには、実際にその衣料を作るための工場群に接触しなければならない。しかし全ての工場の正確な状況に、いつでもアクセスできるわけではない。

「現在私たち全員が服を着ていますが、今着ている服が児童労働や強制労働で作られたものなのかどうかを知る術はありません」と語るのはLaborVoicesのCEOであるKohl Gillだ。「不都合な真実は、ブランド自身もその実体を把握していないということなのです。彼らは世界中の工場で何が起こっているのかを知りません」。

ここがLaborVoicesの登場する場所だ。工場の従業員たちが現在の労働状況を、携帯電話を使ってサービスに対して送ってくる仕掛けだ。LaborVoicesはブランドと提携し、全てが標準に準拠して運営されていることを保証する。

Gillによれば、今でもブランドは検査に数十億ドルを費やして、工場からの供給を管理しようとしているものの、そのプロセスは依然として、破綻し上手く行っていない場合が多いということだ。過去1年で、LaborVoicesは60万ドル以上の収益を計上したと、同氏は述べている。

8/8 :Sendoso

おそらくあなたは、朝の仕事を数十(あるいは数百)に及ぶ電子メールの処理で始めなければならないことにうんざりしていることだろう――そしてそれが見込み客を見つけるためだとしたら、その電子メールの山と注意深く格闘することになる。

ということで、実際の物理的メールを受け取ることに喜ぶ人たちの側に振り子が戻っていることは驚きではない。そしてその流れを追う企業たちが存在する。

Sendosoは、そうした企業たちに、潜在的な顧客たちの注意を喚起する手段として、実際の物を送るサービスを提供する。企業はSalesforceを通じて、潜在的な顧客の関心を呼ぶかもしれない物を追跡し、発送する手段を見出すことができる。

「見込み客や顧客を、電子メールや電話で引きつけることはこれまでにないほど難しくなっています」とCEOのKris Rudeegraapは語る。「企業は影響力の強いダイレクトメールのような他のアウトリーチ手段に向かいつつありますが、企業がダイレクトメールを運用し、拡大し、ROIを追跡することはとても困難なのです」。

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(翻訳:Sako)

500 Startups 22期のスタートアップ36社一挙紹介――デモデーは10月24日

立ち上げ直後のスタートアップを支援、育成する500 Startupsの22回目のデモデーは10月24日に予定されている。36チームがこの22期のバッチに選ばれている。

500 Startupsではこのアクセラレーター・プログラムに参加するスタートアップは「グロースとマーケティングに関する総合的な支援が受けられる」としている。参加する各社はみなこの主張に沿ったものとなっている。業種は金融からデジタル・ヘルスまでさまざまだが、いずれも大きくスケールする可能性があり、かつそのためには有力な支援者を必要とするスタートアップだ。

ただし今回のデモデーはやや微妙なものになりそうだ。500 Startupsの顔だったデイブ・マクルーアが女性に対するセクハラを繰り返したことを認めて辞任した後だからだ。マクルーアはデモデーではいつも奇抜なコスチュームを身に着けて走り回っていることで知られていた。10月のデモデーにはマクルーアの姿はないはずだ―しかしある種の亡霊のようにつきまとうことになる。

しかしタイムマシンを作動させて現在のバッチに選ばれた36社を簡単に紹介しておこう(ABC順)。

Agentbong — アジア発のマーケットプレイスで、家庭における介護、家事補助などのサービスを希望する家庭と資格をもった信頼できる人材との間を仲介する

Botsociety — 会話的なインターフェイスをデザインしプレビューするためのプロトタイピング・ツール。

COR — 専門的サービスを提供する企業のプロジェクトを管理し、収益性を改善するためのプロジェクト・マネジメント・ソフト。

Core Labs — 資格情報、評判、口コミなどを総合して若い知識労働者を助ける「目的志向型」のマイクロ・ネットワーク作成サービス。

Cryptomover — 各種の暗号化デジタル通貨を総合したインデックスファンドを作成して投資家の安全性を向上させ煩雑な手間を省く。

curio.io — フィナンシャルタイムズ、ガーディアンなど一流媒体に掲載された優れた記事を注意深く選択し、プロが読み上げるキュレーション・サイト。

Cushion — ユーザーに代わって不当な手数料に対し銀行に抗議するボットを提供。

Elyse28 —ヘルスとウェルネスを維持するために一対一のアドバイスを提供する女性剥けブスクリプション・プログラム。

FalaFreud —モバイル・デバイスを通じて音声、テキストを通じて資格を有する専門家によろセラピーを受けられるブラジルのユーザー向けサブスクリプション・サービス(ポルトガル語)。

FreightRoll — ユーザーと信頼できる輸送会社、ドライバーとを仲介し、貨物輸送の手配を効率化するマーケットプレイス。

Fyodor Biotechnologies — 血液の代わりに数滴の尿を用いることで発熱の原因がマラリア感染であること非侵襲的に診断するテクノロジー。

Jones — 保険の適用を受ける際の煩雑なコンプライアンス・チェックを自動化して企業の負担を軽減する。

Judolaunch — ドイツ市場参入を目指す中小eコマース企業向けにグロースを助けるサービス。

LaborVoices — 実際に働く労働者の声により外注先企業の労働実態を明らかにしアパレル企業を守るサービス。

MailHaven — 郊外居住者が配線やWiFi接続の必要なしに安全に荷物や郵便の受取りができようになるスマート郵便受けと専用モバイルアプリのペア。

Mediation Online — ブラジルにおける企業と消費者との紛争を迅速、経済的、かつ強制力をもって仲裁するウェブ・サービス。

Mira — 新しいテクノロジーと機械学習にハイリスク・グループを生命保険に加入しやすくするサービス。

Mobile Forms — アフリカ企業の地域および国際的ビジネス展開をクラウドソーシングで助けるプラットフォーム。

Myndlift — 有資格セラピストの指導による「脳波トレーニング」でユーザーの集中力を増強する。

Next Play — 規模拡大可能な個人別メンターによる社員の能力開発プログラム。

Ohalo — 金融機関に対し、データの正当性確保やコンプライアンスを助けるブロックチェーン・ベースのデータ管理ツール。

OpenUp — オンライン、オフラインを総合して消費者行動における広告効果を測定する。

Payment24 — 企業における多数の車両の燃料消費、ガソリンスタンドへの支払処理を一括管理、不正請求を排除して効率性を高める。

Plum — ユーザーの金銭処理を自動化して貯蓄を助け不正請求を防ぐチャットボット。

Prodsmart — 工場におけるペーパーワークを追放し、スマートフォンを利用して製造過程の情報をリアルタイムで入手するトラッキング・システムをメーカー企業に提供する。

Public Goods — 健康によい家庭向け製品を手頃な価格でパッケージで提供する。

Rapa — 外国不動産を購入するアメリカ居住者に対して不動産抵当による新しい資金貸付の枠組み。

reDock — 大企業による複雑な提案募集に応募する専門知識企業がプロポーザルを作成するためにオンデマンドで 企業情報を発掘、カスタマイズするサービス。

Rever — 世界のバイク・ライダーがツーリングの体験や各種のノウハウを投稿、交換できるモバイルアプリ。

Sendoso — B2B企業が潜在顧客の注目を引きつけるためのメール、手書きメモ、ギフトなどのマーケティング・ツール一式を提供。

ShortPoint — コーディングの知識を必要とせずにOffice 365のような既存のコンテンツ・システムをを利用してイントラネットが簡単に作成、管理できるサブスクリプション・ベースのソフトウェア。

Sofy.ai — テスト、デプロイ、サポートなどソフトウェア・デベロッパーの時間を大量に食う反復的作業をインテリジェントかつ訓練可能なボットが代行する。

Texel — ユーザーの既存の行動、視聴データを分析し、VR/ARによるストリーミングの帯域幅を50%以上圧縮するテクノロジー。

TrueFace.Ai — プライバシーに注意を払う企業に対し顔認証システムをターンキー方式で提供する。

VCV — 求職者の履歴書や音声通話をAIを利用して自動的に予備審査し、面接のビデオ録画するなど企業の求人を効率化する求人用ボット。

WayPay — 中小企業向けオンライン支払いシステムを効率化し、地元または国際的企業のオンライン・システムと自動的に統合する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

500 Startupsの第20期が来週デモ―全スタートアップ一挙紹介

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500 Startupsの最新のクラスが来週プレゼンを行う。これは同時に、500 Startupsではすでに新しいクラスをスタートさせる準備が進んでいるということでもある。以下にバッチの全スタートアップを紹介する。

今回、第20期のスタートアップの大半はヘルス、金融に加えて公共機関に効率化のテクノロジーを供給することを目的としている。つまりこうした分野がトレンドだということだ。今回のバッチの3分の1はアメリカ以外のチームだった。

  • AllVirtuous — オンデマンド、クラウドソーシングで偽造商品を発見、撲滅する
  • Alta5 — 金融市場の取引をイベント・ドリブンで処理するプラットフォーム.
  • BenRevo — 保険会社、保険ブローカー、雇用主をデジタルに接続する
  • Bloom Credit — データ・ドリブンでローン申し込み者の財務状態を把握、改善する
  • Boon — 社員のSNSデータと人工知能を利用した人材リクルート・ネットワーク
  • Cadence — 通訳者と業務依頼者をマッチングさせるためのAPI
  • Clanbeat — 管理職の業務評価を継続的に実行できる フィードバック・ツール
  • Court Buddy — 個人事業主の弁護士を予算に応じて探すテクノロジー・プラットフォーム
  • Digital Mortar — l現実店舗のための経営最適化サービス
  • EquitySim — 金融ビジネスにおける学生の研修を助け機械学習を利用して雇用主とマッチングする
  • FinCheck — 財務サービスに関する会話ボット
  • FriendlyData — データベースの自然言語インターフェイス
  • Funderful — 大学向けオンライン資金集めソフト
  • Govlist — 文書オートメーションとアナリティクスを用いて公共機関の購入を最適化する〔注〕
  • Halo Home — スマートホームのセキュリティー
  • Hyphen — 管理職、人事部向けの機械学習を利用したリアルタイムで匿名化された社員の要望を聞くシステム
  • Littlefund — 子供たちの財政感覚を養うための貯蓄とギフトのためのスマート・ツール
  • Biomarker.io — ユーザーのサプリ服用などをトラッキングできるヘルス・モニター・プラットフォーム
  • Mycroft — SiriやAlexaなどのオープンソース版
  • Nazar — エージェントを用いないデータベースのパフォーマンス監視システム
  • Numina — A センサー・プラットフォーム コンピューター・ビジョンを利用してリアルタイムで都市の活動状況を分析する
  • Obie (Tasytt Inc.) — チームのデータを横断的にアクセスできるSlackbot
  • Optimity — ヘルスコーチングサービスにより社員の健康を改善し雇用者の健康保険負担を軽減する
  • Orderly Health — AIを利用してユーザーの医療コストの質問に答えるコンシェルジュ.
  • Preteckt — ハード、ソフトのデータを機械学習を利用して分析、自動車の故障を予測するオーナードライバーのためのソリューション 
  • Printivo — アフリカ企業、デザイナーのためのワンストップ高品質プリント・サービス
  • Raxar Technology Corporation — 大企業、政府機関向けにインテリジェント・データ管理プラットフォームを利用してワークフロー効率化を提供する
  • Regard — 病気、負傷による収入ダウンを保障するオンライン収入保険
  • SentiSum — 大企業が顧客の要望データを利用するための人工知能アナリティクス・プラットフォーム
  • Shoelace — eコマースの運営者がソーシャルメディア上でリターゲティングを行うことを助ける人工知能アシスタント
  • Skeyecode — 新しい暗号化システムを利用した認証ソフト
  • Text To Ticket — 「メッセージ入力しながら運転」などの危険運転をビデオ撮影して送付すると報酬が支払われるサービス
  • TopDocs — 医師を募集している病院のためのソフトウェア・プラットフォーム〔注〕.
  • TrueCare24 — 家族のためのワンストップ総合医療サービス
  • UrbanLogiq — 機械学習によるアナリティクスを利用して都市計画の精度、スピート、コストパフォーマンスをアップする
  • WellTrack — ストレス、不安、うつ状態改善のためのオンデマンドのオンライン・セラピー・プラットフォーム
  • Win-Win — スポーツ・ゲームのプラットフォーム。プロやセレブと1週間にわたる試合が体験でき、エントリー料金はチャリティーのために寄付される
  • YayPay — 売掛金処理にAIを利用してキャッシュフロー改善する
  • Zyudly Labs — ディープラーニングを利用して金融サービス市場における詐欺と戦いサイバーセキュリティーを確保する
  • VIA Global Health — 途上国市場で入手困難な医薬品を探し必要な人々と結びつけるプラットフォーム
  • Visabot — 人工知能を利用してアメリカのビザ取得プロセスを効率化する
  • Smile Identity — 身分証明書類と「スマート・セルフィー」写真を結びつけてバイオメトリクス認証を可能にするAndroidデバイス.
  • Credit Stacks — クレジットカード履歴のない外国人向けクレジットカード

〔日本版〕原文ではGovListのURLが404、TopDocsのURLが次のTrueCare24と同一だったため、それぞれ正しいと思われるアドレスに訂正してある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

エンジニアVC誕生、始動した500 Startups Japanの日本人パートナーは元野村證券のハッカー

シリコンバレーの著名アクセラレーター「500 Startups」が36億円規模(30Mドル)のファンドで日本で投資活動を本格化するとお伝えしたのは9月のことだ。そのとき、元起業家でDeNA投資部門のVCだったジェームズ・ライニー(James Riney)氏のほかに、もう1人日本人パートナーがいると書いた。その彼が今日、正式に500 Startups Japanのパートナーに就任したことを発表した。

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500 Startups Japanのパートナーに就任したジェームズ・ライニー(James Riney)氏と澤山陽平氏

500 Startups Japanのパートナーに就任した澤山陽平氏は、この11月まで野村證券でベンチャー企業の調査を担当していた。野村證券の未上場企業調査部門である野村リサーチ・アンド・アドバイザリーで副主任研究員として、スタートアップ界隈のイベントやミートアップで活動していたから知っている人も多いことだろう。野村在籍期間中の3年10カ月の間にITセクター担当として、約150本のレポートを執筆し、計9件のIPOに関わったという。関わったIPO案件は、アライドアーキテクツ、みんなのウェディング、ディー・エル・イー、フリークアウト、弁護士ドットコム、レアジョブ、VOYAGE GROUP、ロックオン、Gunosy、AppBankと、アドテクやEdTech、ビッグデータ解析など多ジャンルにわたる。

150本ほど書いたという「レポート」というのは、経営者へのインタビューを通して会社や事業の内容や、その将来性を8〜20ページでまとめる仕事。野村グループ内で、「IT系スタートアップ→金融」という橋渡しをしていたことになる。「例えばアドテクのことなんて、金融側の人からしたら良く分からないわけです。バナー広告とどう違うの? という感じ」(澤山氏)なのだそうだ。もちろんアドテクは証券市場をお手本として発展してきていたので、金融関係者なら説明すれば分かるのだろうけど、ベンチャーやスタートアップは規模が小さい。アンテナ役として澤山氏のような「通訳者」が必要だということだ。

澤山氏の経歴はちょっとユニークで、彼が通訳できるのは、ITと金融の間だけじゃない。もともとは研究者タイプで、東京大学理科2類在学時代はバイオ関連を志していた。

「大学に入ったときから研究室に遊びに行ってたんですが、そこで気付いたのはバイオは時間がかかるということ。実験でなんかやったらすぐ何十時間待ち、とかがあるんですね。それを見てバイオ・インフォマティクスに関心が移って。だんだんとITそのものに傾倒していき、シミュレーションをやるようになったんです。大学を終えて、東大の大学院で医学部に受かっていたんですけど、そちらではなく原子力のシミュレーションのほうへ行きました。2007年4月のことです。まだ原子力ルネッサンスといわれて東芝も日立も勢いがあった頃ですね」

澤山氏はTechCrunch Japan主催のハッカソンに過去2度参加してくれたことのあるハッカーでもある。

「高校生のころは、Windows 98でネットサーフィンとチャットをしていたんですが、その頃に古本屋で見つけたJavaの本でプログラミングを始めました」

そんな彼は「趣味はプログラミング」だといい、Javaのほかに使える言語として、C、C++、FORTRAN、PHP、Ruby、Objective-C、Scalaなどを挙げる。2014年のTechCrunch Tokyo Hackathonで入賞したクラウドファンディングのウォッチ系サービス「CFTraq」は実はいまも動いているが、これはRuby on Railsで動いているそうだ。手を動かして何かを作るのも好きなのだといい、先日はミニ四駆に小型カメラを搭載してVR動画を見ながらコースを走れるなんていうガジェットを自作していたりもした。

理系の修士号を持ち、コードも読み書きすることから、エンジニアと深いところまで話しができるのがVCとしての自分の強みと澤山氏。日本には比較的数の少ない「ハッカーとしてのエンジニアVC」が誕生したと言えそうだ。もともと関心のあった領域であるバイオ関連のベンチャーも広く動向をウォッチしているようだ。

野村證券以前に澤山氏は、JPモルガン証券の投資銀行部門に約3年間勤務し、大手企業に対するM&A戦略の提案や実施時のアドバイザリー業務、資金調達を始めとするコーポレートファイナンス全般を担当していたそう。だから企業規模として大きいところも小さいところも金融を軸足に幅広く見てきたことが強みだという。スタートアップ関連でも「野村證券時代はシードからレイターまで全部みていました。VCだとレイヤー別になりがちですが、調査なので全部みるんです。まだアプリだけで会社も設立していない超シード期の起業家にも会っていました」(澤山氏)という。4年弱で交換した名刺の数は3000枚ほどになったというから、これを読んでいる人の中にも澤山氏に会ったことのある人が少なくないことだろう。

500 Startups Japanで日米を繋ぐ

金融とテクノロジーをバックグラウンドに持つ澤山氏だが、500 Startups Japanのパートナーとして活動していくにあたっては、もう1人のパートナーであるジェームズ・ライニー氏と同じ立場だ。

「(500 Startups Japanは)日米の架け橋になっていけると考えています。2人ともバイリンガルでバイカルチャー。日本もアメリカも、どちらも分かっているというのは、なかなかいません。日米を繋ぐことを求めている人は、日本にもアメリカもいます。例えば、ニューヨークに行ったときにEdTechのKnewtonに会いに行ったんですね。いきなりinfo宛にメールを投げて。彼らは教育関連スタートアップですけど、日本の学研やベネッセ、リクルート、そしてEdTechスタートアップが何をしているかって全然知らないわけです。それで説明したり日本に来た時に色々な人に紹介したりしたんですが、その後もろもろ経て、今では国内で2社と事業提携している。海外から見ると日本はブラックボックスなんですよ」

500 Startups Japanのパートナーの2人は「アメリカを良く知る日本人」と「日本を良く知るアメリカ人」の組み合わせだ。澤山氏いわく、「ジェームズと私は、もともと2人ともJPモルガン出身という繋がりがあるのですが、色んな意味で相互補完関係なんです。ジェームズはビジネスとマーケティング、私は技術の理解とファイナンス。ジェームズには起業家経験があって、一方私は大企業にいたという違いがあります」。

そんな2人は500 Startupsファミリーのメンバーとして日本を拠点に活動する。現在、500 Startupsのメンバーは100人ほどいて、このうち約20人がパートナーだそうだ。過去5年間で500 Startupsは3号ファンドまで組成し、約50カ国で1500社以上に投資している。成功事例としては、GrabTaxiCredit KarmaTwilioなどのユニコーンや、MakerBotWildfireVikiSunriseSimpleといった大型M&Aエグジットが挙げられる。

500 Startups Japanが始動、元DeNAのVCと日本人パートナーが30億円規模運用へ

シリコンバレーの著名アクセラレーター「500 Startups」が日本にやってくる。

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500 Startups JapanパートナーのJames Riney氏

新たに発足した「500 Startups Japan」にアメリカ人と日本人と2人のパートナーが就任し、まもなく日本のスタートアップ企業への投資を開始する。もともと500 StartupsはNTTドコモと提携したり、GengoMakeLeapsPeatixWhillなど日本のスタートアップ企業に投資をしてきた経緯があるが、明確に日本に拠点を構えるのは今回が初めて。

パートナーの1人はディー・エヌ・エーの投資部門で1年半にわたってスタートアップ投資をしてきた元起業家でキャピタリストのジェームズ・リネイ(James Riney)氏。もう1人についてはまだ詳しくは書けないのだけど、日米スタートアップに詳しく、金融とテクノロジーのバックグラウンドを持つ日本人だ。ともに東京を拠点に活動するバイリンガルで、バックグラウンドと得意分野で相補関係にある2人が日本と米国を繋ぐという。

TechCrunch Japan読者には説明が不要かもしれないが、500 Startupsは、技術やアイデアを持つ少数精鋭のチームに少額の投資をして、ビジネス・企業を大きく育てる「アクセラレーター」としてY CombinatorやTechStarsなどと並んで知られている。Y Combinatorが米国指向が強いのに対して、500 Startupsは地理的にも投資ポートフォリオ的にも分散する傾向が強く、すでに韓国と、東南アジア、タイと3つがブランチとして立ち上がっている。今回の500 Startups Japanが海外拠点としては4つ目になる。500 Startupsは2010年の開始以来、50カ国以上で1200社以上に投資してきた。500 Startupsが投資したスタートアップ企業の成功例には、VikiTwilioWildfireSendGridMakerbotなどがある。9月4日にはグローバル投資のための3号ファンドとして8500万ドルを調達したことを発表している。

日本のスタートアップを米国へエグジットさせる

本家といえる米500 Starups(ファイブハンドレッド・スタートアップスと読む。念のため)同様に、シードからアーリーステージにある国内スタートアップ企業に投資をしていく。アメリカ企業による日本のスタートアップ企業の買収というクロスボーダーのM&Aを増やす、というのが500 Startups Japanのミッションの1つだ。

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最近でこそ少し増えてきたとはいえ、国内M&Aの件数はまだまだ少ない。買う側の企業の数が限られていることもあって、日本のスタートアップが目指すエグジットとしてはマザーズへのIPOが主流というのが現状だ。そのIPOも年間100件程度と上限がしれている。エグジット数が少ないのが日本のスタートアップエコシステムの成長にとってボトルネックの1つなのであれば、アメリカ企業が買いやすい座組を用意するのが最も効果的なのではないか、というのがパートナー2人の考えだ。「アメリカ企業が買えば、日本のM&A件数は10倍になる」とジェームズは言う。

過去にはZyngaによるウノウの買収や、GoogleによるSchaftの買収、最近だとIACによるエウレカの買収、直近には米イングリッシュセントラルによるラングリッチの買収というM&A事例はあるものの、アメリカ企業が日本のスタートアップ企業を買うのは例外的だ。

この背景には、いくつか理由がある。ジェームズは以前、老舗で有力VCのセコイア・キャピタルに、なぜ日本で投資をやらなのかと聞いたことがあるといい、その時に返ってきた理由というのはバブルなどマクロな経済環境のことをのぞくと以下の2つという。1つは日本のスタートアップ界隈が外部から見えない「ブラックボックス」であること。もう1つはM&Aに至るまでの日本チームとのコミュニケーションが難しく、米企業やVCなどシリコンバレー関係者からすれば買収後の企業・事業統合、いわゆるPMI(Post Merger Intergration)をうまくくやり切れる自信がないこと。一般的には買収に至るまでに2年くらいは対話をするもので、そうしたリード期間なしに、いきなり国境を超えた買収は難しいということだ。

逆に500 Startups JapanのVCとしての強みは、シリコンバレーにネットワークを持っていること。ジェームズは「We are not just 口先」と日本語と英語を交えて、これまでの日本のVCとは現地でのコネクションの広さと深さが違うと説明する。「日本人がサンフランシスコ・オフィスに駐在しているとしても、現地のテック・エリートのコミュニティーには溶け込めないことが多い。われわれはベン・ホロウィッツなどとも交流があるし、シリコンバレーのほとんどのテック・エリートとは1ホップか2ホップで繋がっている」。

全部で70人ほどいる500 StartupsのVCやスタッフはSlack上で日々情報交換をしていて、「例えばHomejoyがもうダメだというのは、それがメディアで広く伝えられる前からわれわれは知っていた」りするのだといい、この辺の情報力も日本のVCに対する差別化となると言う。アメリカでうまく行っているモデルを日本に持ち込むという点でも、この情報の速さがカギになると言う。

グローバルな投資スキームを、そのまま使う

500 Startupsからは資金と運営ノウハウなどで支援を受ける。ちなみに、お隣の韓国で500 Startupsが「500 Startups Kimchi」(キムチ)、東南アジアで「500 Startups Durian」(ドリアン)と名付けるなら、日本の500 Startupsは「500 Startups Sushi」となるべきではないのかと聞くと、「Only がいじん insisted stupid names like sushi or sakura」(スシとかサクラとか、そういうバカな名前がいいと言ったのはガイジンだけだよ)なのだそうだ。ジェームズは幼少期も合わせると、もうかれこれ日本に13年くらい住んだことになり、日本語もかなり話す。だから500 Startups Sushiとの命名に反対するくらいには日本のことが分かっているというわけだ。

ジェームズは東京のJPモルガンでキャリアをスタートし、後にSTORYS.JPを運営するレジュプレスの共同創業者として起業。その後はディー・エヌ・エーでVCとして投資を担当し、インドやインドネシア、タイ、ヨーロッパ、シリコンバレーなどで広く投資をしてきたという。その中にはAndreessen Horowitzや、Eric Schmidt、Vinod Khoslaなど、いわゆる「スマートマネー」が投資している企業もあるという(スマートマネーというのは、単なる資金提供だけでなく、ノウハウや知見、コネクションを提供することで、多くの起業家が投資してほしいと考えるトップ・ティアのVCやエンジェル投資家による資金のこと)。

国内VCの多くは「投資事業有限責任組合」だが、500 Startups Japanは組織としては「ケイマン・ストラクチャー」と呼ばれるシリコンバレーと同じ枠組みに沿う。投資契約のタームシートもグローバルのものを使うという。これは海外企業へ売却するというときに有利に働くかもしれない。ファンド規模は約30億円をターゲットしていて年末をめどに投資を始める。現在までの調達額やファンドの出資者は非公開だそう。500 Startups Japanとしての投資開始時期は未定だが年内の活動開始を予定しているという。ジェームズ自身は500 Startups本体からの投資であれば、すぐにも開始する用意があると話している。

投資対象領域はパートナー2人の得意領域である、バイオ、ヘルスケア、VR、ドローン、ロボティクスなんかがキーワードとして上がってきたが、「ゲームはやらないと思う。ただ、あまり領域を決めてやろうというわけではない」そうだ。

日本とアメリカのベンチャー投資額やエンジェル投資額は、調査レポートや年によって違いはあるが、それぞれざっと20〜40倍くらいの差がある(例えば経済産業省が2015年3月に公開した調査報告、起業・ベンチャー支援に関する調査「エンジェル投資家等を中心としたベンチャーエコシステムについて」に数字がある)。人口や経済規模からすれば、差はもう少し小さくても良いはずだ。これは結局のところ、これまでアメリカほど日本のスタートアップ企業への投資がリターンを多く産んでいないことが要因の1つ。もし米企業による日本のスタートアップ企業の買収が増えれば、米国同様に資金の流れが生まれて風向きが変わってくる可能性もありそうだ。

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500 StartupsファウンダーのDave McClure氏(左)と、James Riney氏(右)