500 Startupsの第22回デモデイで、目立ったスタートアップたち

Dave McClureが今年の7月に、複数の女性にアプローチし、薄気味悪い思いをさせていた事を認めて500 Startupsのジェネラルパートナーを辞任したことで、500 Startupsの立場は微妙なことになっている。 それ以来、同社のプログラムにはずっと不安がつきまとっているが、デモデイと新しいクラスの登録を始めた今はその不安が一段と高まっている。

それは同社の22回目のデモデイにますます強いものとして現れていたように思う。この日、CEOのChristine Tsaiがステージに上り、起こり始めた同社の改革についての説明を行った。

「8月には、500 Startupsが包括性、多様性、ハラスメントへの対処を図ることを目指すことを宣言しました」とTsaiは語る。「どれも、他のものへ同時に対処する事なしに解決を図ることはできません。私たちは、直ちに多くのフランクで本音の議論をチーム内で行いました。同時に共通の理解に達するため…そして500 Startupsの文化がうまくいっている場所、欠けている場所を見出すための調査も立ち上げました。私たちは多くの素晴らしい学びを得ることができました。そして私たちはこれを定期的にモニターし続けるつもりです」。

そしてデモデイがやって来る:以前私たちは、デモデイは非常に忙しくなる可能性があると指摘した。1つあたり、わずか数分のプレゼンテーションから本当に素晴らしい会社を選び出すのは、本当に困難なことなのだ。しかしそれでも、そのうちの幾つかはきちんと取り上げる価値がある。それらは背後にあるアイデアや、彼らが解決する問題、そして創業者のチームといった幾つかの要因から判断される。

同じことが、今日(米国時間10月25日)の500 Startupsの、22回目のデモデイにも当てはまった――ということで、以下に示すものが数時間にわたるプレゼンの結果、私たちが選びだしたものだ:

1/8 :Nextplay

企業内キャリアのための論理的な道筋を持つことは、おそらく企業が従業員を留めておくために必要とする最も重要なツールの1つである――そして多くの企業が失敗する。

なので、従業員たちがどのようなゴールを達成し、どのように前へ進もうかと悩むとき、彼らはしばしば社外に進むべき道を見出してしまう。Charu Sharmaと彼女の共同創業者Nawar Noryは、企業がそうした従業員たちに、メンタリングと希望の持てる一連のゴールを提供するためのツールを開発するために、Nextplayを創業した。最終的な製品はEllenと呼ばれる。このアプリはメンターとのマッチングを行い、自身のキャリア対し安心感を得る手助けをするものだ。

「キャリア開発は不確定な道筋です、自分の目標を特定し、自分のメンターを見つけることは従業員自身に任されています」とSharmaは語った。「女性は苦しみ、少数派も苦しみ、内向的な人も苦しんでいます」。

Sharmaによれば、Ellenを6ヶ月間使用した後、25%以上の従業員が自分たちの会社で働くこと強く推奨するようになっているそうだ。同社は10万ドルの収益を上げている。

2/8 :Mobile Forms

アフリカは世界で最も重要な発展途上市場の1つであり、拡大しようとしている企業たちに対して大きなチャンスを提供している――しかしそこでどのように始めるべきかのデータを収集することは、最も難しい課題だとMobile FormsのCEOであるTomi Ayorindeは語る。

「アフリカの経済は2桁台の成長を遂げていて、それが世界中の企業たちの注目を集めています」とAyorindeは語った。「企業は市場を理解しようと何十億ドルも費やしていますが、ほとんどの企業にとって、市場はまだブラックボックスのように見えています」。

企業は必要な調査の要求を定義して、それをMobile Formasに送信する。その後Mobile Formsは、何千人ものフィールドエージェントのチームに要求を送信し、企業がより良い決定を下すために必要とする情報を収集する。ナイジェリアを皮切りに、同社はこれまでに約15万ドルの収益を上げていると述べた。

3/8 :Fincheck

これまで経費精算をしたことが一度もない人はわからないかもしれないが――まあ楽しい経験とは言えない代物だ。おそらく読者も、そうした経費をインターネット上で、Googleカレンダーや電子メールその他の様々な場所に置いてクロスチェックを行っていることだろう。

これがFincheckの役に立つ場所だ。基本的にはそうした作業の後半を受け持ってくれる。複数のデータソースをタップすることで、Fincheckは最後に経費のサマリーを表示してくれる。こうしてこれまで経費ソフトウェアの操作に費やしていた時間から解放してくれるのだ。

CEOのRuth Polachekは、同社がプライベートベータで10万件を超えるトランザクションを処理したと語った。バックエンドで一連のアルゴリズムを使用して、基本的にはブラウザのタブを何度も表示することで得られるすべてのものをデジタル化するのだと語っている。

4/8 :Plum

都市部に住んでいたり、真に平均的な人物ならば、長期的に貯蓄を積み上げていくことに困難を感じているかもしれない。

Victor Trokoudesも確かにこの問題を感じていた――30代の時には基本的に貯金がなかったのだ。だからこそPlumのアイデアが生まれたのだ。これは、あなたの支出パターンを学習するだけではなく、支払いを抑えてより節約することができる場所を把握するために、請求書も追跡してくれる。

「これは『気付かせる力』(the power of nudge)と呼ばれるもので、人びとに暮らし向きが良くなる判断ができるようにさせるものなのです」とTrokoudesはノーベル賞受賞者のRichard Thalerに言及しながら語った。「PlumはAIを使って皆のお金が、煩わしさなしに、あるべき形で管理されるようにするチャットボットです」。

Trokoudesによれば、1月に発売されて以来、アプリのユーザー数は5万人に達し、毎月20%ずつ増えているという。

5/8 :Mira

生命保険は、特にリスクの高い人にとっては、常に見通しが難しいものだ。しかしShuo Zhangは、例えば糖尿病のような「危険性の高い」カテゴリーに陥る人もいるものの、そういう人たちも本当にリスクが高い顧客とはいえない場合がある、と述べている。

「私たちのオンラインアプリケーションでは、40のユニークな医療、財務およびその他の追跡データを統合することができます。つまり、顧客に関する更に大きな洞察を得ることが可能なのです」と彼は語る。「私たちは、彼らが健康的な食事をし、頻繁に運動を行い、血糖値が安定していることを知ることができます。そうした人たちは、保険会社が考えるほど高リスクではないのです」。

ある顧客が潜在的にハイリスクかもしれないと報告されると、保険会社はそれMiraに照会することができる。Miraは、顧客の実際のリスクプロファイルを把握するための深い探索を行う。この結果、顧客は彼らにハイリスク顧客というラベルを貼る典型的な保険会社と、より有利な条件で保険を契約することが可能になるのだ。

6/8 :MailHaven

もしAmazon Primeの顧客で、大量のパッケージを受け取るような人物なら、荷物の受取に付き纏う不安は――そしてそれが玄関先から盗まれないことを祈ることは――深刻な問題だ。

このため、返品のためのピックアップを行なう、オンデマンドのスタートアップのような、よりスマートなデリバリサービスを提供しようとする試みは、これまでも沢山あったが、MailHavenはもう少しレトロなやり方を考えている。同社はあなたの家の前に置かれる、文字通り「箱」を販売している。配送業者たちはこの箱に荷物を自動的に投入することが可能で、逆に返品の必要がある荷物をピックアップすることも可能なのだ。

「もし何かを返品をする必要が生じる度に、それを家の前に置かれた箱の中に保管しておいて、それを持っていって貰えるようにできたら便利だと思いませんか。そうした仕掛けが無いために、生産性に対して年間450億ドルの損失が生じているのです」とCEOのKela Ivonyeは語る。「2700万人の人がなんとか郵便局まで持ち込むか、高価なオンデマンド配送サービスと契約さぜるを得なくなっているのです」。

399ドルの初期費用と月額15ドルのサブスクリプションを考えると、これは先進国向けのオプションのように見える。しかし、商取引がますますオンライン化されるつれて、MailHavenのようなものが、パッケージを適切なタイミングで入手するための回答になるのだろう。

7/8 :LaborVoices

衣料品ブランドがその生産立ち上げようとするときには、実際にその衣料を作るための工場群に接触しなければならない。しかし全ての工場の正確な状況に、いつでもアクセスできるわけではない。

「現在私たち全員が服を着ていますが、今着ている服が児童労働や強制労働で作られたものなのかどうかを知る術はありません」と語るのはLaborVoicesのCEOであるKohl Gillだ。「不都合な真実は、ブランド自身もその実体を把握していないということなのです。彼らは世界中の工場で何が起こっているのかを知りません」。

ここがLaborVoicesの登場する場所だ。工場の従業員たちが現在の労働状況を、携帯電話を使ってサービスに対して送ってくる仕掛けだ。LaborVoicesはブランドと提携し、全てが標準に準拠して運営されていることを保証する。

Gillによれば、今でもブランドは検査に数十億ドルを費やして、工場からの供給を管理しようとしているものの、そのプロセスは依然として、破綻し上手く行っていない場合が多いということだ。過去1年で、LaborVoicesは60万ドル以上の収益を計上したと、同氏は述べている。

8/8 :Sendoso

おそらくあなたは、朝の仕事を数十(あるいは数百)に及ぶ電子メールの処理で始めなければならないことにうんざりしていることだろう――そしてそれが見込み客を見つけるためだとしたら、その電子メールの山と注意深く格闘することになる。

ということで、実際の物理的メールを受け取ることに喜ぶ人たちの側に振り子が戻っていることは驚きではない。そしてその流れを追う企業たちが存在する。

Sendosoは、そうした企業たちに、潜在的な顧客たちの注意を喚起する手段として、実際の物を送るサービスを提供する。企業はSalesforceを通じて、潜在的な顧客の関心を呼ぶかもしれない物を追跡し、発送する手段を見出すことができる。

「見込み客や顧客を、電子メールや電話で引きつけることはこれまでにないほど難しくなっています」とCEOのKris Rudeegraapは語る。「企業は影響力の強いダイレクトメールのような他のアウトリーチ手段に向かいつつありますが、企業がダイレクトメールを運用し、拡大し、ROIを追跡することはとても困難なのです」。

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(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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