PayPalがFacebook率いるLibra Associationから撤退する最初の企業に

【抄訳】
PayPalは、Facebookがこの前発表した暗号通貨Libraとその関連団体から公式に脱退する最初の企業になった。

PayPalは次のように声明している。「PayPalは今回、Libra Associationへの今後の参加を見合わせ、誰にでもアクセスできる金融サービスの実現という弊社のこれまでのミッションの前進に引き続きフォーカスすることを決定した。Libraが志望しているものに対しては今後も支持を続け、協力のあり方について対話を維持したい。FacebookはPayPalにとって長年の貴重な戦略的パートナーであり、今後もいろいろな面でFacebookとパートナーしサポートを続けるであろう」。

PayPalのような高名なパートナー候補がこの取り組みから、まだ離陸すらしていない時点で撤退したことは、FacebookとLibra Association(Libra連合)にとって大きな打撃だ。それでなくてもLibraは、最初は協力的だった一部大企業の変心に苦しみ、規制当局などからの否定的な反応(反トラスト問題など)に足を引っ張られていた。このままでは、立ち上げとその後の成長も、思わしくないかもしれない。

これに対してLibra Associationは、PayPalへの対応として、口調は控えめだが厳しい声明を発表した。Facebookは本誌からの質問をこのグループに渡し、直接にコメントすることを控えたようだ。

すなわち、Facebookのスポークスパーソンは「Libraのような意欲的な事業は、ある種の大胆さと気丈さを必要とする。それは正しくより良いやり方で金融サービスへの平等なアクセスを目指す、現世代にとっての重要な機会であり、その旅路は厳しく困難なものになるであろう。金融のシステムを金融機関のものから人びとのものへ変えようとするこの変革努力は、きわめて困難な道のりであり、何よりも必要なのはそのミッションへの献身である。われわれは、この献身の欠如について、あとからではなく今知りたいと願っている」とコメントしている。

【中略】

今週初めのウォール・ストリート・ジャーナルの記事は「MastercardやVisaなどの企業がPayPalに倣ってLibraプロジェクトから撤退するかもしれない」と報じている。これに関しVisaのCEOであるAl Kelly(アル・ケリー)氏は公式声明で「規制やそのほかの問題が阻害要因にならないかぎり立ち位置は従来と変わらない」と語った。

【後略】

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社員たちのスマホに第2番号を割り当てるMoviusが新CEOを迎え約50億円を調達

アトランタ出身のMoviusは、企業が社員たちの電話機の音声通話とテキストメッセージングに、仕事専用の別の電話番号を割り当てられるようにする。同社は米国時間3月22日、JPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)が仕切るシリーズDのラウンドにより、4500万ドル(約50億円)の資金を調達した。これに既存の投資家であるPointGuard VenturesとNew Enterprise AssociatesおよびAnschutz Investmentが参加した。これで、同社の累計調達額は1億ドルになる。

さらにMoviusは、AdobeやSunの役員だったJohn Loiacono氏を新たなCEOとして迎えたことを発表した。Loiacono氏は、ネットワークアナリティクスのスタートアップJolataの創立時のCEOだった。

新CEOはこう言っている。「Moviusの商機はどんどん拡大している。地球という惑星の上のすべての企業でワークフォースが流動化しているが、それに伴い、さまざまな通信手段による顧客や社員たちとの安全な対話が難しい課題になっている。音声でも、SMSでも、あるいはそのほかの彼らが日常的に使用するどんな通信チャネルでもそうだ。私が今感激しているのは、すごく情熱的で実績のあるイノベーターたちのチームに加わろうとしているからだ。彼らはまさに、その難題のソリューションを提供することに、激しく燃えている人びとだ。この会社の成長の次の章を率いていくことが、楽しみである」。

Hyperloop Transportation Technologiesの最高戦略責任者(CSO)のSanjay Jain氏と、JPMorgan ChaseのTechnology Innovation, Strategy & Partnerships部門のトップのLarry Feinsmith氏が、Moviusの取締役会に加わる。

Moviusの現在の顧客数は1400社を超えている。そしてSprintとTelstra、Telefonicaなどがパートナーのキャリアだ。ここで重要なのは、Moviusが提供するものがスマートフォン向けのベーシックなVoIPアプリではない、という点だ。同社が約束しているのは、顧客にキャリア級の本格的なネットワークを提供して、彼らの社員のスマートフォンに第2の番号を割り当てることだ。そのため、社員が自分のデバイスを仕事に使っていても、雇用者は安眠できる。

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トランプ圧力で株式市場今度は反騰、いつか来た道の既視感、FRBもここは我慢

連邦準備制度が今後利率を上げないと言い、雇用も盛んなことからウォール街の株価が上がり、ニューヨーク証券取引所の今年の初商いの週は乱高下の‘高’の部分で終わった。

昨日のAppleが呼び込んだ下落と、世界と国内の契機減退を示す経済指標を受けて、連邦準備制度のJerome Powell理事長は、利率を上げることに関して中央銀行は“我慢する”、と言った。

そのニュースと雇用好調との報告により、株価は急騰した。ダウ・ジョーンズ工業平均は746.9ポイント、3.3%上げて、Nasdaqは275.4ポイント、4.3%上がった。

投資家が歓迎する2019年の利上げに関する見通しは、連邦準備制度理事長の単なる見方ではなく、日増しに強まるトランプ大統領からの圧力に直面しているPowellの保身策でもある。

アメリカ経済学会(American Economic Association)における、連邦準備制度の前理事長Janet L. YellenやBen BernankeとのパネルディスカッションでPowellは、大統領に辞めろと言われても辞めない、と言った。

Powellのそのコメントの直後に、株が上がり始めた。

The Washington PostによるとPowellはその席でこう言ったそうだ: “弱めのインフレ指標が目の前に迫っているが、今後の経済の動きを見るときには我慢が必要だ。しかし政策の方向を変える用意はつねにできているし、必要なら大きく変えなければならないだろう”。

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ビジネスプロセスオートメーションのWorkFusionが$50Mを調達して買収に向け力をつける

ビジネスプロセスオートメーションのソフトウェアを作っているWorkFusionが、同社の4月の5000万ドルの資金調達ラウンドに新たな投資家を2社加えた。

これで同社の新たな戦略的投資家は、大手保険会社のGuardian、ヘルスケアサービスプロバイダーNew York-Presbyterian、商業銀行のPNC Bankとなる。主に人工知能企業に投資しているベンチャー投資家のAlpha Intelligence Capitalも、この新たな投資に参加した。

企業が手作業で、あのサービスを使ったり、このサービスを使ったりしてやっているビジネスプロセスを、WorkFusionは最初のうち、クラウドソーシングで獲得した労働者にアルゴリズムを教育訓練して、それらのワークフローの自動化*を行っていた。そのころからすでに10年近い年月が経っているが、Crunchbaseによれば、その間に約1億2100万ドルの資金を調達している。それが今では同社の評価に結びつくし、同社の中核的市場である金融サービスと保険業界には、本物のファン層が形成されている。〔*: SaaSインテグレーション、クラウドインテグレーションなどとも呼ばれる。〕

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Fintechは金融ビジネスを一変させる―2016年の予測、トップ4

2016-02-26-crystalballmoney

「ユニコーン」〔評価額10億ドル以上のスタートアップ〕やGrexit/Brexit〔それぞれギリシャ、英国のユーロ圏離脱〕に加えて「フィンテック(Fintech)が2015年の金融ビジネスのバズワードのトップ10 にランクインしているという。

しかし他の単語と異なり、フィンテックはこのリストへの新顔ではない。またそれには十分な理由がある。ここ数年でフィンテック企業は金融ビジネスの 周辺からメインストリームへと成長した。フィンテックはテクノロジーを利用して新しい金融プラットフォームを構築しようとしれている。目的は消費者に従来よりも優れたユーザー体験を提供することにあり、消費者反応を示しつつある。

私はフィンテックを利用した金融スタートアップ、CommonBondの共同ファウンダー、CEOとしてこの変化を間近に見てきた。この特等席から見れば、金融ビジネスに根本的なシフトが起きていることが分かる。

今年(またそれ以降)フィンテックが金融ビジネスにどのような影響を与えるかについての私の予測のトップ4は以下のとおりだ。

資本の重要性が増し、最良のプレイヤーに集中する 壮大なアイディア、いくつかのバズワード、よくできたパワーポイントのスライドを武器とした昨年のフィンテック企業には今年も来年以降も資金が集まりそうにない。資本は大量に存在する。しかし誰もがそれを得られるわけではない。信頼性のあるプロダクトの開発に成功し、消費者の信頼を得られるようなブランドを築いた企業には必要とする自然と資本が集中する。

登場しつつあるフィンテック市場では大型の貸し手が優位だ。ビッグ・プレイヤーはますます強くなり、小さい企業は大きい企業の傘下に入るか消え去るかとなるだろう。フィンテックを利用する融資を専門とする企業は200社もあるが、その中で生き残るのはトップ20社程度だろう。これは市場の健全化のためにはいいことだ。

有力テクノロジー企業が金融ビジネスに参入する それがどの企業となるか名指しする用意はないが、 2016年はそういうことが起きてよい時期だ。ファイナンスはわれわれ全員の生活に直接関係を持つ。しかし伝統的なファイナンス企業のテクノロジーは古臭く、現代化への動きは遅い。むしろ消費者の方がテクノロジーの進歩に対してオープンであり、現在かじられている問題点が解決されることを期待している。

The Millennial Disruption Indexのアンケート調査によれば、ミレニアル世代の73%は現在取引している銀行の新商品よりも、Google、Amazon、Apple、PayPal、Squareなどから新しい金融サービスが登場した場合の方がはるかに大きな興味を持つという。

フィンテックの動きは速い。しかもますます加速するだろう。

テクノロジー企業はさらなる成長の道を探しており、同時にわれわれの生活でテクノロジー企業の重要性は増す一方だ。. FacebookやGoogleはユーザーに関する膨大な情報を握っている。Appleは2000億ドル以上のキャッシュを持っている。この金額は金融ビジネスの貸し手側としてすぐにも2兆ドルの資産価値生み出すのに十分だ。

これを伝統的金融ビジネスと比較してみよう。 JP Morgan Chaseグループはアメリカ最大の資産を持つ銀行だが、その価値は2兆6000億ドルだ。金融ビジネスのバックボーンは資本とデータだが、巨大テクノロジー企業にはその双方が高いレベルで存在する。しかもテクノロジーで最先端の能力がある。

伝統的巨大銀行はジリ貧を続けるか、フィンテック企業と提携する おそらくそういうことになるだろう。一部の関係者には不快な驚きかもしれないが、今となれば必然のコースだ。自動運転車とと同様、テクノロジーはすでに存在する。そして市場圧力は何ももってしても押しとどめることはできない。

アメリカでは人口動態上、ミレニアル世代が最大のグループであり、9000万人に達する。若く、しかも購買力も増加中だ。にもかかわらず、ミレニアル世代の71%は「銀行と取引するのは歯科の治療を受けるより不愉快」だとしている。31%は銀行を使わずにすむようになると期待しており、その代わりに巨大テクノロジー企業が金融サービスを提供してくれるだろうと考えている。

ミレニアル世代の71%は「銀行と取引するのは歯科の治療を受けるより不愉快」だとしている

Aそして現に金融ビジネスの市場はその方向に動いている。融資、資産管理、支払などの各分野でProsper、Betterment、Affirmなどの新顔がテクノロジーを武器に市場に参入し、急速にシェアを広げつつある。成功の原因はこうしたスタートアップが伝統的金融機関より消費者のニーズに敏感であり、対応が柔軟で迅速だからだろう。

JP MorganのCEO、Jamie Dimonもこうした事態を非常に正確に認識している一人だ。このことは同グループがスモール・ビジネスへの対応を改善するために最近OnDeck Capitalと提携したことにも現れている。また JP Morganはテクノロジー金融スタートアップのLending Clubのローン、10億ドル分を購入している。

「アンバンドリング」のトレンドは一転して巨大な「リバンドリング」の波に変化するだろう CB Insightsのこのチャートは私のお気に入りだ。Wells Fargo銀行のホームページのスクリーンショットに、学資ローンから保険や資産管理まで、伝統的金融ビジネスのあらゆる部分を代替しつつあるフィンテック企業のロゴが無数に重ねられている。このトレンドは一般に銀行業務の「アンバンドリング〔個別機能への解体〕」として知られている。

しかし私自身はこの「巨大なアンバンドリングの波」は、テクノロジーを統合の力として、今後は「巨大なリバンドリングの波」に逆転するだろうと見ている。般にフィンテック企業は一もっとも得意とする単一の業務に特化してスタートする。

フィンテック企業が特定分野で成功したした後、他分野に水平に業務を拡大するとすれば、それが「リバンドリング」だ。フィンテック企業のリバンドリングは、うまく実行されるなら、伝統的銀行よりも消費者の期待によりよく応えられると思われる。その理由の大きな部分は、消費者のニーズを重視する点に加えて、優れたテクノロジーをシームレスに活用できる点にあるだろう。

フィンテックの動きは速い。しかもますます加速するだろう。そして勝者がますます強くなる年になる。しかしこれは消費者も含めて金融市場にとって良い方向だろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+