Rocket Labは2022年にヘリコプターでElectronロケットブースターの空中キャッチを目指す

Rocket Labが3回目のブースター回収に成功したことを受けて、CEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、次のステップとして、2022年前半にヘリコプターを使ってブースターを空中でキャッチすることを目指していると語った。

Rocket Labは先に、地理空間画像衛星「BlackSky」2基を低地球軌道に運んだあとで洋上に着水したElectron打ち上げ機の第1段を回収した。そのミッションの間、同社はヘリコプターを着水領域の近くに配置したが、その目的は偵察だけだった。一貫して、同社の再利用化計画の究極の目標はブースターを空中でキャッチすることであり、それが今や近づいている。

ベック氏は米国時間11月23日の記者との電話会見で現在からそれまでの間に行われる主な作業は、ヘリコプターの準備だと述べている。空中キャッチに使われる航空機は、先の打ち上げ時に存在したものよりもかなり重く、積載量もかなり多いものになる(第1段の重量は約980kg)。

「また、非常に忙しいスケジュールの中で、フライトのスケジュールを組むことも重要な仕事のひとつです。最優先事項は、常にお客様を時間どおりにお届けすることです。それが次の課題ですが、2022年前半、もしくは可能な限り早くフライトを実現したいと考えています」。

同社は、現在から空中回収を試みるまでの間に、いくつかの商業飛行を計画しているが、これらは回収を目的としないミッションだ。Rocket Labにとって次の大きな学習のチャンスとなるのは、ブースターをキャッチして濡れていない状態で工場に戻すことができたときだとベック氏は付け加えた。

2022年に向けて、ベック氏はRocket Labにとって忙しい年になると予想している。その理由の1つは、ニュージーランドで新型コロナウイルスの規制が続いているため、2021年の同社打ち上げ回数が制限されていたからだ。来年の打ち上げ数については言及していないが、2022年はこれまでで最も忙しい年になるだろうという。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Rocket LabのElectronロケットブースター回収、三度目の挑戦を実況中継で見よう

Rocket Labが今夜(米国時間11/10)、その再利用事業をさらに一歩進めて、同社のElectronロケットから三度目のブースター回収を行なう。

その「Love at First Insight」と呼ばれるミッションは、東部時間午後11時25分(日本時間11月11日午後1時25分)に、ニュージーランドのマヒア半島の打ち上げ基地より離陸する。打ち上げの実況中継はRocket LabのWebサイトで見られる。

Rocket Labは一段ブースターの回収に過去二回成功している。それは、SpaceX以外では同社だけだ。最初の回収は2020年11月、次が2021年5月だったが、後者ではペイロードをすべて失った(後述)。どちらのブースターもパラシュートで着水し、すべてが計画通りなら今夜のブースターもそうなる。しかし今度の回収にはおまけがあって、ブースターの降下を追尾し観察するためにヘリコプターが近傍でホバリングする。

このヘリコプターの参加はたいへん重要で、Rocket Labsがその再利用計画の究極の目標に近づいたことを意味している。つまりそれは、パラシュートでブースターの降下速度を減衰して空中でそれを捉えることだ。今夜のヘリコプターはまだ空中捕捉を試みないが、今後のそのやり方の実行性を検証するためのテストを行なう。

CEOのPeter Beck氏は声明でこう言っている: 「私たちはElectronの降下の完全なコントロールに成功し、ステージを海から引き上げることができた。そこで今度は、次の段階へ進む。それは、ブースターが宇宙から地球へ下降するとき、ヘリコプターがロケットをキャッチすることだ。野心的な試みだが、これまでの各回の回収ミッションでハードウェアと工程を改良してきたから、不可能を当たり前に変えることができるだろう」。

ミッションの主な目標は画像衛星BlackSky Earthを二基、軌道へ送ることで、Rocket Labと打ち上げサービスSpaceflightの合意では、BlackSkyのために立て続けに五基を打ち上げる計画の一部だ。衛星の打ち上げは8月を予定し、ほかにも二基が計画されていたが、ニュージーランドの小規模なコロナウイルス禍によりロックダウンが敷かれ、ロケットの打ち上げも遅れた。

CEOのPeter Beck氏は第三四半期の決算報告で投資家に対し、「全世界的に厳しいCOVID-19対策により計画が阻害された。現在敷かれている在宅命令により、打ち上げの実行は妨げられている」、と弁解している。

二基のBlackSky衛星はすでに軌道にある他の七基と合流する。それはこの地理空間情報企業が、年内にそのコンステレーションを14基の衛星へと拡大する計画の一環だ。今年初めにBlackSkyの衛星二基が、Electronの第二段点火の直後に起きた重大な異状により失われた

これはRocket Labの22回めのElectronの打ち上げであり、今年の5度目のミッションだ。

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Rocket Lab

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Rocket Lab CEOインタビュー、宇宙開発のキャリアで学んだ教訓は「絶対にやらないとは絶対に言わない」こと

Peter Beck(ピーター・ベック)氏の一番古い記憶は、故郷であるニュージーランドのインバーカーギルで父親と一緒に外に立って星を見上げていたときに「その星の周りを回っている惑星にいる人たちが、お前を振り返って見ているかもしれないんだよ」と言われたことだ。

「3歳か4歳の子どもにとって、それは衝撃的な出来事で、私の記憶に刻まれ、それ以来、私は宇宙産業で働くことを運命づけられていたのです」と、Space Generation Fusion Forum(SGFF)で語った。

もちろん、後からなら何とでも言える。しかし、ベック氏のキャリアは、ロケットに一途に集中している。ベック氏は大学に行かずに貿易関係の仕事に就き、昼間は工具製作の見習い、夜はロケットエンジン作りに没頭していた。「これまでのキャリアで非常に幸運だったのは、一緒に仕事をしてきた企業や政府機関が、私が夜に施設を使って何かをすることを常に奨励してくれた─あるいは耐えてくれたと言った方がいいかもしれませんが─ことです」と彼はいう。

彼の腕前は経験とともに成熟し、ダブルワークが功を奏した。2006年、彼は宇宙開発会社Rocket Labを設立した。それから15年、21回の打ち上げを経て、同社は特別買収目的会社との合併により株式を公開し、7億7700万ドル(約853億3000万円)の資金を手に入れた。

スペースSPACの流行

Vector Acquisitionとの合併により、Rocket Labの評価額は48億ドル(約5271億5500万円)に跳ね上がり、宇宙開発企業の中ではElon Musk(イーロン・マスク)のSpaceXに次いで第2位の評価額となった。SPACは、多額の資金を確保したい宇宙産業企業にとって、上場にあたって人気のルートとなっている。ライバルの衛星打ち上げ企業であるVirgin OrbitAstraは、それぞれSPACの合併により上場しており、その他にもRedwirePlanetSatellogicなどの宇宙産業企業が存在する(一例)。

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ベック氏がTechCrunchに語ったところによると、上場はRocket Labが何年間にも渡って計画していたことで、当初の計画では、従来の新規株式公開を行う予定だったが、特にSPACルートが資本と評価を確実なものにした。SPACとの合併前に行われた3月の投資家向けプレゼンテーション(大いに半信半疑で見るべき資料だが)によると、将来は明るいとしている。Rocket Labは、2025年に7億4900万ドル(約822億7400万円)の収益を見込み、翌年には10億ドル(約1098億4600万円)を超えると予想されている。同社は、2019年に4800万ドル(約52億7200万円)、2020年に3300万ドル(約36億2400万円)の収益を報告しており、2021年は6900万ドル(約75億7900万円)程度になると予想している。

しかし彼は、収益を上げる前の宇宙産業スタートアップや、資金調達に失敗した企業がSPACを金融商品として利用することには、依然として懐疑的だ。「多くのスペースSPACが行われていますが、その品質には確実に差があると思います。民間市場での資金調達に失敗し、(SPACの合併が)最後の手段になっているものもあります。それは公開企業になるべき方法では決してありません」。

Rocket LabやSpaceXのような企業が衛星を軌道に乗せ、無数の新規参入企業がそれに加わろうとしている(あるいは、より楽観的にいうなら、主導権を握ろうとしている)現在、宇宙産業は比較的過密状態にあるが、ベック氏はその混雑は解消されると予想する。

「達成している会社、達成しようとしている会社がどれなのかは、投資家にとってすぐに明らかになるでしょう。今、私たちは興奮の渦中にいますが、結局のところ、この業界と公開市場は実行力がすべてです。使えるものと使えないものはあっという間に分かれてしまうでしょう」とベック氏はいう。

ElectronからNeutronへ

Rocket Labの収益は主に小型ロケットの打ち上げ市場からのもので、Electronロケットでトップの座を獲得している。Electronは、高さはたったの約17.98メートル、直径はかろうじて約1.21メートルと、現在宇宙に飛ばされている他のロケットよりもはるかにサイズが小さい。同社は、ニュージーランドのマヒア半島にある民間の発射場と、バージニア州にあるNASAのワロップス島施設(実際のRocket Labのミッションはまだ行われていない)の発射台の2つの場所から打ち上げを行う。

Rocket Labは、Electronの第1段ブースターを再利用可能なものに移行する作業を行っている。同社は、パラシュートを使ってブースターの降下を遅らせる、新しい大気圏再突入と海への着水プロセスを導入しているが、最終的な目標はヘリコプターを使って空中でキャッチすることだ。

これまでのところ、Rocket LabとSpaceXが市場を独占してきたが、これはすぐに変わる可能性がある。AstraとRelativityはともに小型のロケットを開発している。Astraの最新のロケットは高さが約12.19メートルで、RelativityのTerran 1はElectronとファルコン9の中間で約35.05メートルとなっている。

そのため、Rocket Labが待望の(そして非常に謎めいた)Neutronロケットで中距離ロケットに事業を拡大しようと計画しているのも納得がいく。当社はNeutronの詳細を明らかにしておらず、ベック氏はSGFFの参加者に、公開されているロケットのレンダリング画像でさえも「ちょっとした策略」であると述べている(つまり、下の画像はNeutronの実際の姿とはほとんど似ていないということだ)が、高さはElectronの2倍以上、約8000kgを地球低軌道に送ることができると予想されている。

画像クレジット:Rocket Lab

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「業界の多くの人々が、さまざまな方法で私たちをコピーしているのを目にしています。だから、私たちはもう少し先を行ってから、自分たちが行った仕事を明らかにしたいのです」と彼はTechCrunchに説明した。

Rocket Labは、エレクトロンとNeutronが2029年までに打ち上げられると予想される衛星の98%を搭載できると予想しており、追加のヘビーリフトロケットは必要ないと考える。

同社はNeutronに加えて、宇宙船の開発にも着手している。その名もPhotonで、Rocket LabではElectronロケットに簡単に組み込める「衛星プラットフォーム」として開発を進めている。Rocket Labでは、Photonを使った月やその他の場所へのミッションをすでに計画している。まず、NASAのCAPSTONE(Cislunar Autonomous Positioning System Technology Operations and Navigation Experiment)プログラムの一環として、月周回軌道に乗せる。

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2021年8月初めには、火星への11カ月間のミッションに2機のPhotonが選ばれ、ベック氏はPhoton衛星を使って金星の大気圏に探査機を送るという長期計画を公に語っている。

Rocket LabはPhotonの他にも、宇宙船製造のスタートアップであるVarda Space Industriesと契約を結び、2023年と2024年に打ち上げる宇宙船を製造している。

Neutronは、宇宙飛行士を運ぶための一定の安全基準を満たすように、最初から人間が解読できるように設計されている。ベック氏は「宇宙飛行の民主化が進む」と確信しており、Rocket Labが将来的にそのサービスを安定して提供できるようにしたいと考えている。また、Rocket Labが将来的に着陸機や有人カプセルなど、他の宇宙船の製造にも進出するかどうかについては、ベック氏は否定的だった。

「絶対にやらないとは絶対に言わないです」と彼はいう。「これが、私が宇宙開発のCEOとしてのキャリアの中で学んだ1つの教訓です」。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

米航空局がRocket Labに打ち上げ再開の許可、ミッション失敗から1カ月足らずで

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、20回目となるElectron(エレクトロン)打ち上げミッションが第2段燃焼中に失敗しペイロードを失った後、早くも米国連邦航空局(FAA)から打ち上げ活動再開の認可を得た。これはRocket Labの安全システム設計に対する信頼の表れであり、異常に遭遇してもすべてが意図した通りに機能したこと、つまり、ミッションが失敗したものの、地上の乗組員や一般の人々、他の軌道上の物体にリスクを与えることなく、安全に行われたことを意味している。

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だからといって、Rocket Labが実際すぐに打ち上げを再開するわけではない。FAAは今回の事故後も既存の打ち上げライセンスが有効であると判断しているが、Rocket Lab自身は原因究明調査を続けていく予定だ。Rocket Labの創業者兼CEOであるPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、第2段エンジン停止の原因究明のための継続的な取り組みを「複雑で重層的な故障分析」と称しているが、すでにテストでエラーを再現していることにも言及した。

今後は、一連の出来事を正確に把握し、何が原因で安全装置が自動的に停止したのかを解明することに集中するという。この作業は「数週間以内」に完了する予定で、その時点で活発な飛行活動の再開を進めることになる。

Rocket Labは今回のアップデートで、2020年7月に発生した以前のミッションの失敗については言及していない。その際の異常は最終的に電気的な接続不良によるものと結論づけられたが、第2段エンジンの安全停止という同様の結果になった。

ただし、同社が打ち上げ後に回収したElectronロケットの第1段から得られた情報によると、その部分は計画通りに進行したことが確認されている。Rocket LabではElectronロケットの1段目ブースターの再利用性を高めようとしており、今回は新たに大気圏再突入と着水のプロセステストを実施し、そちらはスムーズに進んだ。また、今回のフライトで使用された新しいヒートシールドは意図した通りに機能したとし、今後は回収した第1段エンジンでエンジン燃焼試験(hot fire test、ホットファイア)を行い、その性能を確認する予定だという。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket LabElectron米国連邦航空局(FAA)

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

再利用化を進めるRocket Labは次のElectron打ち上げでも第1段回収を実施

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は次の打ち上げ準備を行っている。今のところ、ニュージーランドの施設から2021年5月に打ち上げられる予定だ。このフライトのペイロードは、BlackSky(ブラックスカイ)の地上観測コンステレーションに追加される2基の衛星だが、Rocket Labにはもう1つ、Electron(エレクトロン)ロケットの再利用化に向けた重要な目標もある。つまり、宇宙から帰還したブースター(第1段)の回収だ。

Rocket Labにとって、第1段の回収はこれが初めてではない。2020年11月、Return to Sender(送り主に戻す)とそのものズバリの名が付けられたミッションの際、同社は第1段を海から回収している。Run Out of Toes(つま先が足りなくなる)と名づけられた今回のフライトの目標は前回とほぼ同じながら、Electronには部分的な改良と、同社が多くのデータを収集しやすくする改造が施されている。さらに、回収後の完全な再利用に向けて進歩もしている。

「私たちは、回収した第1段の状態に大変に満足しています。どの耐熱システムにも、基本的に変更を加える必要はありませんでした」とRocket LabのCEOにして創設者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏はインタビューに応えて話した。「私たちの第1段の再突入方法は、エンジンを下にして、大きな衝撃波を前方に逃がすというやり方です。次のフライトは次なる改良版であり、負荷の大きさが判明したことから、熱シールドを強化して負荷に耐えられるようにしています」。

最初のフライトでは、大気圏再突入の際にElectronの第1段にかかる実際の負荷に関する貴重なデータを大量に収集できた。そうした情報は、地上の技術者たちが専門知識から推測はできても、現実にやってみなければ本当に知ることはできないものだ。11月のフライトでロケットに装着したセンサーからのデータによって、Electronは、熱シールドの「性能と強度の大幅な向上」のためののデザイン変更が可能になったとベック氏はいう。

2回目のフライトでは、この改良策の効果を見極め、さらに多くのデータを回収して、3回目にして最後の回収テストに活すことにしている。これは、Electronの第1段が大気圏に突入する際の速度をさらに落とせるよう、再突入手順の調整に重点が置かれる。Rocket Labが回収計画の最終目標としている、パラシュートで降下速度を下げてヘリコプターで空中捕捉する方式の実現性を高めるためのものだ。

「その後に、空中での速度をさらに下げて、第1段の熱を取ることを目指して、もう一回、設計の見直しを行います。それにより、回収ヘリコプターのような要素を導入してまで、第1段をわざわざ取りに行ってもう一度飛ばすことに本当に価値があると感じられるレベルに、私たちは到達できます」とベック氏はいう。

その3回目にして最後の着水テストは、物事が順調に進めば、2021年後半に実施される。この3回の開発テストで回収した第1段を実際に再び打ち上げる予定はないが、最初に回収した第1段の部品の一部が、今回のテストで飛ばされる第1段に再利用されているとベック氏は教えてくれた。3回目のテストでは、さらに多くの部品を回収して再利用するという。

ベック氏によれば、再突入の際に何が起きたか、どの部分がいちばん損傷を受けているかを技術者たちが学ぶには、Rocket Labの工場に持ち帰った第1段を細かく切り刻むのが一番だと話す。

「第1段を工場に持ち帰ること以上に、本当にそれを理解する方法はありません」と彼はいう。「必要な道具はすべて揃っています。しかし、第1段をここへ運び込んで真っ先にするのは、切り刻むことでした。熱の影響を受けた部分、空気の流れから隠れていた部分をすべて切り取り、材料の特性を調べる張力試験を行いました」。

これらすべての作業が、回収したElectronの第1段を再び飛ばすという最終目標への推進力になっている。これが実現すれば大変な偉業となる。なぜなら、Rocket Labは打ち上げ回数を増やせるからだが、それだけではない。そもそも再利用を考慮せずに設計されたロケットだったという点が大きい。私は、Electronの回収した第1段の最初の再飛行は商用ミッションになるのか、または顧客のペイロードを積まないテスト飛行になるのかをベック氏に尋ねてみた。

「商用ミッションになることは考えられます。そのわけは、単に私たちは、心底自信を持てないものを打ち上げ台に載せたりはしないからです」と彼は答えた。「最初の再利用ロケットは、かなりの量の修繕が加えられると思います。他に再飛行を実際に行っている唯一の企業(SpaceX)を見てください。そこには長い長い年月におよぶ研究と知識があります。ロケットを回収して、大丈夫そうだから発射台に載せようなんて簡単にはいかないのです。自信と確実性を積み上げるには、何度も何度もやり直すプロセスを経る必要があります」。

Electronの再利用化は、このロケットにとって、それ自体に価値のあることだが、この機能を開発する過程は、Rocket Labの大積載量を誇る新型ロケットNeutron(ニュートロン)の建造に、かけがえのないものを与えているとベック氏は話す。Neutronは、推進力を使って離陸と着陸が行えるよう設計されている。また、最初から高い利便性がデザインに織り込まれている。

「Electronは、世界で最も建造しやすいロケットとして設計されました。Neutronは、もっとも再利用しやすいロケットとして設計されています」とベック氏。「これらはパラダイムが大きく異なるものですが、尋常でないことに、私たちはその両方の体験を有しています。Neutronでは、革新的技術は再利用性に集中しています。間もなく、おもしろい情報を少しだけお伝えしますが、このロケットの構造をほんの少しだけ見れば、私たちが作っているロケットが、どの程度まで再利用可能なのかが明白になるでしょう」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket LabロケットElectron

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)