Rocket Labのロケット「Neutron」、製造から着陸までを米バージニア州ワロップス島で

Rocket Lab(ロケットラボ)は、同社のロケット製造・発射施設の拡張について最新の状況を発表した。ニュージーランドと米国にある既存の発射場には、引き続き同社の小型ロケット「Electron(エレクトロン)」を配備する。一方、バージニア州では、将来打ち上げる、はるかに大型のロケット「Neutron(ニュートロン)」を格納する新しい施設を建設する予定だ。

Nettronを製造する新しい施設は、NASAのワロップス飛行施設の中にある。施設の28エーカー(約11万3300平方メートル)の敷地には、約25万平方フィート(約2万3000平方メートル)の屋内空間がある。これは大きなスペースだが、当然ロケットも大きい。同社は多数のロケットを製造する予定だ。

ロケットの組み立てだけでなく、それを構成する特殊な炭素複合材もここで製造される。炭素複合材のロールは、いわば「温めたオーブン」から取り出してすぐ、Neutronの周囲23フィート(約7メートル)の胴体を包むことになる。

「ロケット全体をこの施設で製造することを意図しています」とRocket LabのCEOで創業者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、米国時間2月28日のメディアブリーフィングで述べた。「ステージの直径は非常に大きい。私たちはその意思決定を本当に早く行いました。ワロップスとカリフォルニアの間にある一番大きい橋で直径を測るというようなことはしたくなかったのです」。

ベック氏は、Neutronの仕様が最初に公開された12月に、この大口径の利点を語った。

再利用を前提にゼロから設計されたロケットであるNeutronは、ペイロードを運んだ後にワロップスに戻り、生まれた場所と同じ施設で改修される。打ち上げと軌道上運用センターを含むオールインワンの複合施設は、この地域に何百もの仕事を提供し、宇宙産業におけるワロップスの長年の重要性をさらに強固なものにするはずだ。

バージニア州はワロップスNASAの施設の拡張と改善のために約4500万ドル(約52億円)の資金を計上済みだが、まだ議会で審議中だと、バージニア商業宇宙飛行局の代表Ted Mercer(テッド・マーサー)氏(米空軍少将、退役)は電話で述べた。

「もし議会で承認されれば、1500万ドル(約17億円)は施設の建設に、3000万ドル(約35億円)は新しい発射台の建設に充てられます」とマーサー氏は述べ、発射台はNeutron専用ではなく、多目的であることに言及した。

当然、早く建設すればそれだけ早く試せるため、ベック氏は「我々はすぐにでもにこの地で着工することを望んでいます」と述べた。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

Rocket Labが宇宙用太陽光電池を手がけるSolAeroを約91.6億円で買収

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、宇宙ソリューションの垂直統合というミッションに取り組んでいる。米国時間1月18日、この打ち上げ・宇宙システム企業は、宇宙用太陽光発電製品および精密航空宇宙構造物のサプライヤーであるSolAero Holdings(ソルエアロ・ホールディングス)を現金8000万ドル(約91億6000万円)で買収完了したことを発表した。

1998年に創立されたニューメキシコ州に本拠を置くSolAeroを買収したことで、Rocket Labは衛星製造のための重要なサプライヤーを社内に持つことになる。同時に、Rocket Labのリソースを利用することができるようになったSolAeroは、大量生産と規模拡大に必要な製造能力を得ることができ、他の顧客への供給を強化することが可能になる。

今回の買収は、宇宙市場のさらなる獲得を目指すRocket Labを支援し、その長期的なビジョンを後押すると、広報責任者のMorgan Bailey(モーガン・ベイリー)氏はTechCrunchに語った。

「例えば、Rocket LabがElectron(エレクトロン)やNeutron(ニュートロン)で特定の宇宙機を打ち上げることはないかもしれませんが、ソーラーパネルや、スタートラッカー、リアクションホイール、フライトソフトウェア、分離システムなどのコンポーネントを供給することによって、収益を得ることができ、ミッションの一翼を担うことができます」と、ベイリー氏はいう。「もちろん、SolAeroの技術は、Rocket Lab自身ののPhoton(フォトン)宇宙船にも組み込まれ、当社の垂直統合戦略をさらに後押しすることになります」。

今回の買収は2021年12月に一定の閉鎖条件を前提に発表されたもので、Rocket Labはその数カ月前に、コロラド州のAdvanced Solutions, Inc. (ASI、アドバンスト・ソリューションズ)という宇宙用ソフトウェア会社を4000万ドル(約45億8000万円)で買収することを発表している。ASIの買収は、Rocket Labが宇宙システム部門を構築し、宇宙船の製造、衛星のサブシステム、フライトソフトウェア、地上運用、打ち上げまでを網羅した「エンド・ツー・エンド」の宇宙企業になるという目標の達成を支援することが目的だという。

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SolAeroの合併は、Rocket Labが2021年12月に買収した宇宙機分離システム会社のPlanetary Systems Corporation(プラネタリー・システムズ・コーポレーション)と、2020年4月に買収した衛星部品メーカーのSinclair Interplanetary(シンクレア・インタープラネタリー)に続くものだ。

「SolAeroは、Rocket Labの垂直統合型ビジネスモデルを高度に補完するものであり、我々の顧客に完全な宇宙ミッションソリューションを提供することを可能にします」と、Rocket LabのCEOで創業者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏は声明の中で述べている。「これまで1000回以上のミッションを成功させた経験を持つSolAeroのチームは、James Webb(ジェイムズ・ウェッブ)宇宙望遠鏡や、InSight(インサイト)とIngenuity(インジェニュイティ)を含む火星でのミッションに、宇宙太陽光発電ソリューションを提供するなど、先駆的なミッションを実現してきました」。

InSight火星探査機は、火星表面に展開された史上最大の太陽電池アレイであり、Ingenuityは2021年4月に火星での飛行に初めて成功したヘリコプターである。

SolAeroの製品は、NASAのParker Solar Probe(パーカー・ソーラー・プローブ)宇宙探査機や、国際宇宙ステーションへのCygnus(シグナス)補給ミッションに電力を供給してきた。また、OneWeb(ワンウェブ)のブロードバンド衛星コンステレーションにも電力を供給しており、NASAのArtemis(アルテミス)月面探査計画では、将来の火星探査を可能にするSolar Power Modules(ソーラー・パワー・モジュール)の供給元に選ばれている。

SolAeroで働く425名のチームがRocket Labに加わることで、同社ではカリフォルニア、バージニア、コロラド、メリーランド、トロント、ニュージーランド、そして今後は(SolAeroの)アルバカーキの施設をを含め、合計1100名以上の従業員が働くことになる。SolAeroチームは引き続き、社長兼CEOのBrad Clevenger(ブラッド・クレベンジャー)氏が指揮を執る。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Rocket LabがNeutron打ち上げ機でロケット設計を再考、打ち上げの常識に挑戦

Rocket Lab(ロケットラボ)がついにNeutron(ニュートロン)ロケットの覆いを外した。ニュートロンは、CEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏が「2050年のロケット」と呼ぶ中型機である。Rocket Labは、現在SpaceX(スペースX)が支配する打ち上げ市場でシェア拡大を目指している。

今回、3月のニュートロンのアナウンス以来、同社のプロジェクトに関する最初のメジャーアップデートである。3月以来、Rocket Labは、特別買収目的会社を使った合併による株式公開Electron(エレクトロン)再利用計画の開発継続、宇宙サービス部門の拡大で忙しい。その間ずっと、今に至るまで、ニュートロンに関しては沈黙を保ってきた。

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炭素複合材

ニュートロンの特徴は、運用と開発の両面で同クラスの他のロケットとは異なる、いくつかの意外なイノベーションにある。まず素材である。約40メートルのロケットは、姉妹機のエレクトロン同様、特別な炭素複合材で作られる。

これは興味深い選択である。特に、周知のようにスペースXがStarship(スターシップ)システムで炭素複合材を捨ててステンレス鋼を取ったことを考えるとそうである。しかし、Rocket Labが炭素複合材を使うのはこれが初めてではない。ベック氏は、ニュージーランド政府の研究施設でキャリアをスタートさせて以来、エレクトロンロケットの大部分で使うだけでなく、高度な複合材や素材に取り組んできた。

「金属の扱いに慣れてきた場合、実際に複合材をてがけるのは本当に困難です。でも、ずっと複合材と関わりがあって経験があるなら、実際のところ、複合材はシンプルな素材です」とベック氏はTechCrunchに語った。

金属の構造体は重くてパフォーマンスが低い。高パフォーマンスエンジンで補うことはできるが、再利用の点で大きな余裕や高い信頼性にはつながらない、と氏は付け加えた。構造体が軽くなれば、氏が「ロケットの破綻のスパイラル」と呼んだものを避けることができる。構造体が重くなると必要な推進剤が増え、推進剤が増えると必要な推進剤タンクが大きくなり、タンクが大きくなると重量が増えて必要な推進剤がさらに増える、という終わりのないせめぎ合いだ。際限がない。

「これは、私のキャリアで破綻のスパイラルが逆転する最初の時です。軽量の構造体で破綻のスパイラルが逆転します。このことは、打ち上げの観点から重要なだけでなく、実際のところ再突入の観点からも本当に重要です」と氏は言った。なぜなら、ベック氏によれば、約7メートルというニュートロンの大きな直径と軽い重量によって、弾道係数、つまり空気抗力に対する物体の抵抗の大きさが大きくなるからだ。それで、構造体を重視することで、再突入で消費する推進剤は少なくなり、空気抗力は小さくなり(結果として熱も少なくなり)、エンジンはシンプルになる。

また、ニュートロンは新しいタイプのグラファイト複合材で仕上げられるので、耐熱性が向上する。これは、今後のエレクトロンロケットにも新たに導入される。

「口を大きく開けたカバ」

従来のロケット設計と大きく異なる別の点はニュートロンのフェアリングだ。この機材は、ノーズコーンのように伝統的にロケットの先端に取り付けられ、内部のペイロードを保護する。歴史的には、フェアリングは分離されて地球に落下し、使い捨てになるものと一般に見なされている。もっとも、スペースXでは、修理調整して再利用するために海から回収している。

Rocket Labではその代わりに、4枚のフェアリングが1段目に装着され、機械的に開く(ロボットのような風変わりな花を想像して欲しい)。これもまた、複合素材の使用によって導かれた設計上の決断であるとベック氏は述べた。

画像クレジット:Rocket Lab

「通常、フェアリングを付けたままにしたり、それと似たようなことをしたりする質量上の余裕はない。フェアリングはできるだけ早く切り離さねばならない。そのような寄生質量を抱えている余裕はないからだ。しかし、寄生質量が本当に小さければ、この種のことができる」。

ニュートロンは、最大1万5000キログラムのペイロードを低地球軌道に運ぶことができ、ちょうどスペースXのFalcon 9(ファルコン9)やRelativity Space(レラティビティースペース)が開発中のTerran R(テランR)ロケットと競合する。

しかし、2段目はどうだろうか?

Rocket Labは、ペイロードのノーズコーンフェアリングを無くすだけでなく、2段目も徹底的に見直すことにした。従来のロケットの設計では、1段目とペイロードの間に2段目を入れる。しかし、ニュートロンでは、2段目は1段目の中に置かれる。ロケットがペイロードを展開するときになると「口を大きく開けたカバ」のようなフェアリングが開いて、2段目とペイロードの両方を軌道に送り出す。

Rocket Labは、有人宇宙飛行を含むさまざまなタイプのミッションにニュートロンを使うことを意図している。ベック氏によれば、有人打ち上げの場合は、ただフェアリングを取り外して、クルーを乗せたカプセルを打ち上げることができるということだ。

2段目は使い捨ての設計である。他のロケット企業は完全な再利用に取り組んでいるが、ベック氏によれば、2段目の再利用が理に適っているかどうか、まだ結論は出ていないとのことである。特に、再利用にともなう質量要件の増大と回復に関連する運用コストを考えるとそうである。

地球への帰還

2段目が展開されると、1段目は地球に帰還し、正確に発射台に戻る。つまり、洋上のはしけに降りるのではない。この選択もまた、運用コストを節約するものになる、とベック氏は言った。

ニュートロンは、Rocket Labが開発した7基の新しいエンジンを使って軌道に上がり、戻ってくる。Rocket LabはこのエンジンをArchimedes(アルキメデス)と呼んでいる。この低圧エンジンは液体酸素(LOX)とケロシンではなくLOXとメタンで作動する。ちょうど1段目を打ち上げ場に戻すという決断と同様、推進剤の選択はミッション間のターンアラウンド時間が最小になるように行われた。

「これまで、エンジンには通常膨大な修理調整が必要とされてきました。また、推進剤としてLOXとケロシンが選ばれることから、膨大な修理調整が必要です。ケロシンからは大量のすすとコークスが発生するんです。それで、メタンを使う決定をしました。メタンでエンジンを作動させることは可能で、そうすればエンジンはまったくクリーンで、燃焼後もまだピカピカです」とベック氏は語った。

ニュートロンは結局、米国内のどこかから打ち上げられるだろう。Rocket Labは、打ち上げ場と製造所の選定をめぐる競争のさなかにある。多くのことが行われてきたが、ニュートロン打ち上げの具体的な期日は不明だ。Rocket Labは以前、2024年だと言ったが、今回のアップデートでは言及がなかった。しかし、ベック氏によれば、それは意図的なものではないとのことだ。

「私たちは、2024年にニュートロンを発射台に載せ、2025年に企業顧客を宇宙へ送るつもりです。しかし、私たちはこれがロケットの計画であることも認めています。膨大な仕事ですが、懸命に努力を続けること、それが私たちの計画です」とベック氏は断言した。

ここで、Rocket Labのニュートロンに関するアップデートをもう一度視聴してみよう。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

SynspectiveとRocket Labが小型SAR衛星2号機「StriX-β」の打ち上げで契約締結、2022年初旬に打ち上げ予定

SynspectiveとRocket Labが小型SAR衛星2号機StriX-βの打ち上げで契約締結、2022年初旬に打ち上げ予定

小型SAR衛星による観測データを活⽤したワンストップソリューション事業を展開するSynspective(シンスペクティブ)は12月8日、SAR(合成開口レーダー)衛星の実証2号機「StriX-β」の打ち上げ契約を、再利用型ロケットの開発と打ち上げを行うアメリカ企業Rocket Lab(ロケットラボ)と締結したことを発表した。2022年初旬の打ち上げを予定している。また、StriX-βに続くStriXシリーズ2機の打ち上げ契約も同時に締結している。

Synspectiveは、2020年12月にRocket LabのElectron(エレクトロン)ロケットにより「StriX-α」を打ち上げ、民間小型SAR衛星としては日本で初めて、衛星画像の取得に成功している。StriX-βは、地表のミリ単位の変動を観測する技術「干渉SAR」(InSAR)のための軌道制御機能を搭載した小型衛星で、今回は軌道上でその実証実験を行う。Synspectiveでは、2023年までに6機の衛星を打ち上げ、2020年代後半までには30機を打ち上げコンステレーションを構築する計画を立てている。

StriX-βはもともとドイツの衛星打ち上げサービスを行う企業Exolaunch(エクソローンチ)を通じてSoyuz-2(ソユーズ2)ロケットで2021年内に打ち上げられるはずだったが、打ち上げスケジュールが変更されたことにより、Electronロケットに切り替えられた。

巨大な電子レンジを使って短時間かつ安価に金鋳物を製造するFoundry Lab

Easy Bake Oveenを覚えているだろうか?色のついた粉と水を混ぜて生地を作り、それを型に入れてオーブンに入れると、いつの間にか「チーン!」と鳴って気持ちの悪いお菓子ができあがる。ニュージーランドを拠点とするスタートアップ企業のFoundry Lab(ファウンドリー・ラボ)は、化学物質と「オーブン」の代わりに、金属と電子レンジを使って同じようなことをする方法を発見した。

Rocket Lab(ロケット・ラボ)のPeter Beck(ピーター・ベック)氏から支援を受けているFoundry Labは、米国時間11月29日に800万ドル(約9億900万円)のシリーズA資金を調達してステルス状態を脱した。同社は「文字通り、巨大な電子レンジ」を使って、金属の3Dプリントよりもはるかに早く金属部品を鋳造すると、創業者兼CEOのDavid Moodie(デイヴィッド・ムーディ)氏は述べている。

「ユーザーにとっては非常に簡単です。文字どおりの型を取り、冷たい金属の粉末や金属の鋳塊を投入し、電子レンジに入れてボタンを押して立ち去るだけです」と、ムーディ氏はTechCrunchに語った。「出来上がったときには、チーンと音も鳴ります。電子レンジで夕食を温めるのと同じくらい簡単です」。

(Foundryの電子レンジは、ニュージーランドの典型的なミートパイの調理にも使用されたことがある。わずか数秒で出来上がったものの、ムーディ氏によるとすばらしい味ではなかったそうだ)

インベストメント鋳造、3Dプリント、ダイキャストなどの一般的な鋳造方法では、製造に1週間から6週間かかる。Foundryによると、同社ではコンピューター支援設計(CAD)で3Dプリントした金型と巨大な電子レンジを使って、自動車用のブレーキシューを8時間足らずで完成させたことがあるそうだ。現在は亜鉛とアルミニウムに対応しているが、ステンレススチールの試作にも成功しており、将来的には銅や真鍮などの他の金属にも挑戦したいと考えているという。

Foundryの技術は、将来的には金属の3Dプリントがカバーできない製造業に適用することが考えられるものの、当面の目標は、自動車メーカーの研究開発チームが量産に入る前のテストや試作に使用できる、量産型と同じように機能する金属部品を開発するのに役立つことだ。

「私たちが交渉中のある企業では、1台の自動車が市場に出るまでに600台もの試作車を作っています。その間に変更や改良を繰り返すため、あっという間に費用がかさむことになります」と、ムーディ氏は語り「そのための工具の費用は5万ドル(約560万円)から10万ドル(1120万円)以上になることもあります」と付け加えた。

ムーディ氏は、Foundryを設立する前、工業デザインのコンサルタント業を営んでおり、大量生産のための製品を設計していた。試作品では3DプリンターやCNCマシンで製造された部品を使用しているため、量産品とは物理的な構造が違っている可能性があるという理由で、試験機関から常に申請を却下されることに、同氏は不満を感じていた。

「そこで私は、ニュージーランド人らしく物置に行き、運良く機能する方法を見つけたのです」と、ムーディ氏はいう。最近のニュージーランドでロックダウンが行われていた期間には、ムーディ氏が作業場に入れなかったため、実験の多くは一般的な電子レンジを使って行われたという。「我々が解決しようとしているのは、実際の鋳造であり、ダイキャストをシミュレートしながら、それをより速く、安く行うことです。ダイキャストを作るために工具で機械加工をすると、3~6カ月かかってしまうのが普通です」。

Foundryはまだ設立から間もない会社だ。現在はその超大型の電子レンジを数台しか所有しておらず、潜在的な顧客に試用してもらっている段階だ。今回のシリーズAラウンドは、オーストラリアで設立されたVCのBlackbird(ブラックバード)を中心に、GD1、Icehouse(アイスハウス)、K1W1、Founders Fund(ファウンダース・ファンド)、Promus(プロマス)、WNT Ventures(WNTベンチャーズ)が出資している。同社ではこの資金を使って、2023年末までに生産体制を整える予定だ。

さらに資金の一部は、スタッフの増員にも充てられる。同社はここ数カ月で急速に成長しており、資金調達を開始した当初は6人だったスタッフが、現在は17人のフルタイム社員を擁するまでになっている。さらに今後数カ月で35人に増やすことを目標としているものの、ニュージーランドでは新型コロナウイルス感染拡大の影響で国境が閉鎖されているため、難しい状況だ。

「国境が閉鎖されていることが、私たちに打撃を与え始めています」と、ムーディ氏はいう。「この国にはマイクロ波の専門家が2人いますが、2人とも仕事を持っています。これが特に大変です。だから、誰かに助けに来てもらおうとしているところです」。

ニュージーランドでは、今週オークランドがロックダウンを解除し、12月中旬には都市の境界線が国内の他の地域に開放されるなど、内部的な開放が始まっている。オミクロンの新種が事態を悪化させない限り、2022年4月30日からワクチンを接種した旅行者の受け入れを始める予定だ。そうすれば、Foundryをはじめとするニュージーランドのスタートアップ企業は、海外から人材を採用するチャンスを得ることができる。

Foundryはニュージーランドを拠点に開発を進めながらも、米国や欧州の市場をターゲットにしている。同社のロングゲームは、電子レンジの研究を続け、大量生産に必要な台数を製造できるようにすることだ。

画像クレジット:Foundry Lab

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Rocket Labは2022年にヘリコプターでElectronロケットブースターの空中キャッチを目指す

Rocket Labが3回目のブースター回収に成功したことを受けて、CEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、次のステップとして、2022年前半にヘリコプターを使ってブースターを空中でキャッチすることを目指していると語った。

Rocket Labは先に、地理空間画像衛星「BlackSky」2基を低地球軌道に運んだあとで洋上に着水したElectron打ち上げ機の第1段を回収した。そのミッションの間、同社はヘリコプターを着水領域の近くに配置したが、その目的は偵察だけだった。一貫して、同社の再利用化計画の究極の目標はブースターを空中でキャッチすることであり、それが今や近づいている。

ベック氏は米国時間11月23日の記者との電話会見で現在からそれまでの間に行われる主な作業は、ヘリコプターの準備だと述べている。空中キャッチに使われる航空機は、先の打ち上げ時に存在したものよりもかなり重く、積載量もかなり多いものになる(第1段の重量は約980kg)。

「また、非常に忙しいスケジュールの中で、フライトのスケジュールを組むことも重要な仕事のひとつです。最優先事項は、常にお客様を時間どおりにお届けすることです。それが次の課題ですが、2022年前半、もしくは可能な限り早くフライトを実現したいと考えています」。

同社は、現在から空中回収を試みるまでの間に、いくつかの商業飛行を計画しているが、これらは回収を目的としないミッションだ。Rocket Labにとって次の大きな学習のチャンスとなるのは、ブースターをキャッチして濡れていない状態で工場に戻すことができたときだとベック氏は付け加えた。

2022年に向けて、ベック氏はRocket Labにとって忙しい年になると予想している。その理由の1つは、ニュージーランドで新型コロナウイルスの規制が続いているため、2021年の同社打ち上げ回数が制限されていたからだ。来年の打ち上げ数については言及していないが、2022年はこれまでで最も忙しい年になるだろうという。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Rocket Labが宇宙船分離システム開発のPlanetary Systems Corporationを現金と株式で買収

買収戦略が相変わらず止まないRocket Labは、キャッシュと株の両方を投じてPlanetary Systems Corporation(PSC)を手に入れた。

このニュースが発表されたのは同社の2021年第3四半期の決算報告の直前だ。Rocket Labによると、同社は4200万ドル(約47億9000万円)の現金と普通株172万841株を支払ったが、株式は今後の業績により増える可能性がある。

PSCは宇宙船の分離システムを開発しているメリーランド州の企業だ。これまで100ほどのミッションが同社の機械式分離システムと衛星ディスペンサーを使用した。同社の「キャニスター型衛星ディスペンサー」は、宇宙船をロケットから分離し、打ち上げ時にはそれを保護する機構だ。PSCのハードウェアは、SpaceX、United Launch Alliance、かつてのNASA Space Shuttle、米国以外ではArianespace、Japan Aerospace Exploration Agencyといった主要各社の打ち上げ機がこぞって装備している。

この買収は、Rocekt Labの企業ビジョンが単なる打ち上げ屋ではなく、また衛星などをペイロードとして軌道へ運ぶだけでもなく、宇宙船本体を軌道に乗せることも含むフルの宇宙サービス企業であることの表れだ。Rocket Labは声明で、そのハードウェアは同社のSpace Systems事業部全体で使用、それにはPhoton衛星バスや、宇宙船の部位製品も含まれると述べている。

今回の買収は、Rocket Labの過去18カ月で3度目のものとなる。2021年10月、同社はコロラドのAdvanced Solutions, Inc.を買収したが、同社は宇宙船の飛行ソフトウェアを開発している。2020年にはSinclair Interplanetaryを買収、同社は宇宙ハードウェアのメーカーだ。

PSCのトップは現在のCEOであるMike Whalen(マイク・ホレン)氏のままだ。買収の完了は2021年第4四半期を予定している。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Rocket Labが宇宙飛行ソフトウェア・ミッションシミュレーション企業ASIを45億円超で買収

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は米国時間10月12日、米コロラド州を拠点とする宇宙ソフトウェア企業Advanced Solutions, Inc. (ASI)を4000万ドル(約45億4000万円)で買収したことを発表した。今回の取引にはアーンアウト条項に基づき、CY2021の業績に応じて最高550万ドル(約6億2000万円)の追加支払額が含まれる。ASIの専門分野は、誘導・航法・制御(GNC)ソリューションを含む宇宙船フライトソフトウェア、およびミッションシミュレーションとテストソフトウェアだ。この買収は、Rocket Labが宇宙システム部門を強化し、真の「エンド・ツー・エンド」宇宙企業になるための取り組みを強化するものだ。

Rocket Labは創業以来、打ち上げを主な事業としており、Electron(エレクトロン)軽量物運搬ロケットの製造と飛行に関する独自の専門知識により、新興の商業打ち上げ市場において独自の地位を確立している。また、2020年、Sinclair Interplanetaryを買収し、宇宙船のハードウェアコンポーネントの開発・製造という点で重要な能力を加えた。ASIの20年以上にわたる宇宙ソフトウェア分野での経験は、複数の軌道および惑星間のミッションに利用されており、Rocket Labがミッションの打ち上げだけでなく、計画、テスト、運用などの面でも顧客に提供できるサービスを強化するのに役立つ。

今回の買収条件では、ASIチームはコロラド州に残り、同社の創業者兼CEOであるJohn Cuseo(ジョン・キュセオ)氏が引き続き経営を担当し、既存の顧客との関係も維持される。またこれによりRocket Labは、官民ともに宇宙産業が盛んなコロラド州に拠点を置き、チームを成長させることができる。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

米宇宙軍からBlue Origin、ULA、Rocket Lab、SpaceXの4社が次世代ロケット開発に関わる契約を獲得

2019年12月に空軍から軍種としてスピンアウトした米国宇宙軍は、次世代ロケットエンジンの試験や上段の改良に関するプロジェクトに向けて、次の契約を勝ち取った企業を発表した。

この契約は、宇宙軍の宇宙システム司令部が管理する「Space Enterprise Consortium(SpEC、スペース・エンタープライズ・コンソーシアム)」プログラムによって選定された企業に付与されるものだ。SpECは、米国防総省と宇宙産業の連携を促進し、約600社の参加企業が契約を競い合っている。今回の契約は総額8750万ドル(約97億5000万円)で、以下の4社のロケット打ち上げ企業が獲得した。

  • Blue Origin(ブルーオリジン)は、大型ロケット「New Glenn(ニューグレン)」上段用の極低温流体管理技術開発のために2430万ドル(約27億円)を獲得
  • United Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)は、新型「Vulcan Centaur(バルカン・ケンタウルス)」2段式大型ロケットのアップリンク・コマンド&コントロールのために2430万ドルを獲得
  • Rocket Lab(ロケットラボ)は、同社史上最高額となる2430万ドルの契約を獲得。この資金は、同社の次期中型ロケット「Neutron(ニュートロン)」の上段の開発に充てられる
  • SpaceX(スペースX)は「Raptor(ラプター)」ロケットエンジンの燃焼安定性分析および試験のために1440万ドル(約16億円)を獲得

SpaceXとULAは、宇宙軍の国家安全保障宇宙打ち上げプログラムのもと、米国政府のための打ち上げ業者としてすでに選定されている。Rocket LabとBlue Originの両社は、2024年に次回の打ち上げ契約を競うことになるだろう。今回の契約は、両社が入札に向けて準備を進めていることを窺わせるものだ。なお、Blue OriginとNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)は、2020年にSpaceXとULAに敗れている。

今回の契約獲得について、Rocket LabのPeter Beck(ピーター・ベック)CEOは、Neutronロケットに対する「信頼の証」であると声明で述べている。「私たちはElectron(エレクトロン)で信頼のおける打ち上げシステムを構築してきましたが、ニュートロンでも同じことを行い、より打ち上げ能力の大きな新型ロケットで、引き続き自由な宇宙へのアクセスを提供して参ります」。

画像クレジット:Aubrey Gemignani/NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Rocket Lab CEOインタビュー、宇宙開発のキャリアで学んだ教訓は「絶対にやらないとは絶対に言わない」こと

Peter Beck(ピーター・ベック)氏の一番古い記憶は、故郷であるニュージーランドのインバーカーギルで父親と一緒に外に立って星を見上げていたときに「その星の周りを回っている惑星にいる人たちが、お前を振り返って見ているかもしれないんだよ」と言われたことだ。

「3歳か4歳の子どもにとって、それは衝撃的な出来事で、私の記憶に刻まれ、それ以来、私は宇宙産業で働くことを運命づけられていたのです」と、Space Generation Fusion Forum(SGFF)で語った。

もちろん、後からなら何とでも言える。しかし、ベック氏のキャリアは、ロケットに一途に集中している。ベック氏は大学に行かずに貿易関係の仕事に就き、昼間は工具製作の見習い、夜はロケットエンジン作りに没頭していた。「これまでのキャリアで非常に幸運だったのは、一緒に仕事をしてきた企業や政府機関が、私が夜に施設を使って何かをすることを常に奨励してくれた─あるいは耐えてくれたと言った方がいいかもしれませんが─ことです」と彼はいう。

彼の腕前は経験とともに成熟し、ダブルワークが功を奏した。2006年、彼は宇宙開発会社Rocket Labを設立した。それから15年、21回の打ち上げを経て、同社は特別買収目的会社との合併により株式を公開し、7億7700万ドル(約853億3000万円)の資金を手に入れた。

スペースSPACの流行

Vector Acquisitionとの合併により、Rocket Labの評価額は48億ドル(約5271億5500万円)に跳ね上がり、宇宙開発企業の中ではElon Musk(イーロン・マスク)のSpaceXに次いで第2位の評価額となった。SPACは、多額の資金を確保したい宇宙産業企業にとって、上場にあたって人気のルートとなっている。ライバルの衛星打ち上げ企業であるVirgin OrbitAstraは、それぞれSPACの合併により上場しており、その他にもRedwirePlanetSatellogicなどの宇宙産業企業が存在する(一例)。

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ベック氏がTechCrunchに語ったところによると、上場はRocket Labが何年間にも渡って計画していたことで、当初の計画では、従来の新規株式公開を行う予定だったが、特にSPACルートが資本と評価を確実なものにした。SPACとの合併前に行われた3月の投資家向けプレゼンテーション(大いに半信半疑で見るべき資料だが)によると、将来は明るいとしている。Rocket Labは、2025年に7億4900万ドル(約822億7400万円)の収益を見込み、翌年には10億ドル(約1098億4600万円)を超えると予想されている。同社は、2019年に4800万ドル(約52億7200万円)、2020年に3300万ドル(約36億2400万円)の収益を報告しており、2021年は6900万ドル(約75億7900万円)程度になると予想している。

しかし彼は、収益を上げる前の宇宙産業スタートアップや、資金調達に失敗した企業がSPACを金融商品として利用することには、依然として懐疑的だ。「多くのスペースSPACが行われていますが、その品質には確実に差があると思います。民間市場での資金調達に失敗し、(SPACの合併が)最後の手段になっているものもあります。それは公開企業になるべき方法では決してありません」。

Rocket LabやSpaceXのような企業が衛星を軌道に乗せ、無数の新規参入企業がそれに加わろうとしている(あるいは、より楽観的にいうなら、主導権を握ろうとしている)現在、宇宙産業は比較的過密状態にあるが、ベック氏はその混雑は解消されると予想する。

「達成している会社、達成しようとしている会社がどれなのかは、投資家にとってすぐに明らかになるでしょう。今、私たちは興奮の渦中にいますが、結局のところ、この業界と公開市場は実行力がすべてです。使えるものと使えないものはあっという間に分かれてしまうでしょう」とベック氏はいう。

ElectronからNeutronへ

Rocket Labの収益は主に小型ロケットの打ち上げ市場からのもので、Electronロケットでトップの座を獲得している。Electronは、高さはたったの約17.98メートル、直径はかろうじて約1.21メートルと、現在宇宙に飛ばされている他のロケットよりもはるかにサイズが小さい。同社は、ニュージーランドのマヒア半島にある民間の発射場と、バージニア州にあるNASAのワロップス島施設(実際のRocket Labのミッションはまだ行われていない)の発射台の2つの場所から打ち上げを行う。

Rocket Labは、Electronの第1段ブースターを再利用可能なものに移行する作業を行っている。同社は、パラシュートを使ってブースターの降下を遅らせる、新しい大気圏再突入と海への着水プロセスを導入しているが、最終的な目標はヘリコプターを使って空中でキャッチすることだ。

これまでのところ、Rocket LabとSpaceXが市場を独占してきたが、これはすぐに変わる可能性がある。AstraとRelativityはともに小型のロケットを開発している。Astraの最新のロケットは高さが約12.19メートルで、RelativityのTerran 1はElectronとファルコン9の中間で約35.05メートルとなっている。

そのため、Rocket Labが待望の(そして非常に謎めいた)Neutronロケットで中距離ロケットに事業を拡大しようと計画しているのも納得がいく。当社はNeutronの詳細を明らかにしておらず、ベック氏はSGFFの参加者に、公開されているロケットのレンダリング画像でさえも「ちょっとした策略」であると述べている(つまり、下の画像はNeutronの実際の姿とはほとんど似ていないということだ)が、高さはElectronの2倍以上、約8000kgを地球低軌道に送ることができると予想されている。

画像クレジット:Rocket Lab

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「業界の多くの人々が、さまざまな方法で私たちをコピーしているのを目にしています。だから、私たちはもう少し先を行ってから、自分たちが行った仕事を明らかにしたいのです」と彼はTechCrunchに説明した。

Rocket Labは、エレクトロンとNeutronが2029年までに打ち上げられると予想される衛星の98%を搭載できると予想しており、追加のヘビーリフトロケットは必要ないと考える。

同社はNeutronに加えて、宇宙船の開発にも着手している。その名もPhotonで、Rocket LabではElectronロケットに簡単に組み込める「衛星プラットフォーム」として開発を進めている。Rocket Labでは、Photonを使った月やその他の場所へのミッションをすでに計画している。まず、NASAのCAPSTONE(Cislunar Autonomous Positioning System Technology Operations and Navigation Experiment)プログラムの一環として、月周回軌道に乗せる。

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2021年8月初めには、火星への11カ月間のミッションに2機のPhotonが選ばれ、ベック氏はPhoton衛星を使って金星の大気圏に探査機を送るという長期計画を公に語っている。

Rocket LabはPhotonの他にも、宇宙船製造のスタートアップであるVarda Space Industriesと契約を結び、2023年と2024年に打ち上げる宇宙船を製造している。

Neutronは、宇宙飛行士を運ぶための一定の安全基準を満たすように、最初から人間が解読できるように設計されている。ベック氏は「宇宙飛行の民主化が進む」と確信しており、Rocket Labが将来的にそのサービスを安定して提供できるようにしたいと考えている。また、Rocket Labが将来的に着陸機や有人カプセルなど、他の宇宙船の製造にも進出するかどうかについては、ベック氏は否定的だった。

「絶対にやらないとは絶対に言わないです」と彼はいう。「これが、私が宇宙開発のCEOとしてのキャリアの中で学んだ1つの教訓です」。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

「エンド・トゥ・エンドの宇宙企業」を目指すRocket Labが大規模な部品製造施設の新設を発表

Peter Beck(ピーター・ベック)氏は、Rocket Lab(ロケットラボ)を単なる打ち上げ業者ではなく、宇宙船を製造してそれを軌道に乗せるまで自社で行う完全な垂直統合型の宇宙企業に成長させたいという意思を隠そうとしない。ベック氏が2006年に設立したこの会社は、米国時間9月1日、これまで以上に大規模な人工衛星の部品を製造するための新しい製造施設を開設すると発表し、その目標に向けてさらに大きく前進した。

この新施設では、人工衛星の重要な姿勢・安定性制御システムであるリアクションホイールを製造することになる。Rocket Labによると、この施設は2021年の第4四半期に操業を開始し、年間最大2000個のリアクションホイールを生産できる能力を備えるという。宇宙機には一般的に3個から4個のリアクションホイールが搭載されていることを考えると、ロケットラボの顧客はこれらの部品を受け入れる約500基の衛星を計画していると見ていいだろう。Rocket LabのCEOであるベック氏は「これらは複数のコンステレーションに大量に供給するためのものです」と、TechCrunchによるインタビューで語った。

Rocket Labの宇宙システム事業は、自社開発の宇宙機「Photon(フォトン)」ですでに多忙を極めており、2020年には大手衛星ハードウェア製造会社のSinclair Interplanetary(シンクレア・インタープラネタリー)を買収したことで、さらに勢いづいている。Rocket Labは、個々の用途に合わせてカスタムメイドしたPhotonを提供しており、宇宙製造業のスタートアップ企業であるVarda Space Industries(バルダ・スペース・インダストリーズ)と共同で、近々打ち上げ予定の機体を設計したり、2024年に予定されている科学ミッションでは2基のPhotonを火星に送ることになっている。

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これまで宇宙機の部品は、数十から数百という規模で生産されるのが普通だった。軌道に乗るまでのハードルが高かったからだ。しかし、Rocket Labのような企業の技術革新によって、打ち上げコストが下がり、より多くの企業が宇宙にプロジェクトを送れるようになった。つまり、より多くの衛星と、より多くのリアクションホイールが製造されるということだ。現在でも、Rocket Labが製造したリアクションホイールは約200個が軌道上にあるが、1年で2000個というのは大幅な規模拡大となる。

これはすべて、Rocket Labが目指す「総合的な宇宙サービス企業」を実現するための取り組みだ。顧客にとって垂直統合型の大きなメリットは、同社によると、製造リードタイムを短縮できることだという。Photonの製造を開始した当初は、リアクションホイールの納入に数カ月を要したため、軌道に打ち上げるまでのタイムラインが大幅に遅れてしまったと、ベック氏は語っている。

「宇宙経済が予測通りに成長するためには、これを解決しなければなりません」と、ベック氏はいう。「これは解決しなければならない根本的な問題です。宇宙のサプライチェーン全体は、小規模な事業を特徴としており、どんな規模であれ大量生産する能力には本当に欠けています」。

Rocket Labは、宇宙システム部門と新しい生産施設をサポートするため、16人以上の人材を採用する予定だ。高度に自動化が進んだこの施設では、生産ツールと環境試験用ワークステーションはすべて自動化され、金属加工は無人で行えるように最適化されていると、Rocket Labは声明で述べている。これらの技術は、Rocket Labの他の製造プロセスと非常によく似ていると、ベック氏はいう。自動化を利用して製品を迅速にスケールアップする能力の礎として、同氏はRosie(ロージー)と呼ばれる製造ロボットのことを挙げた。

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Rocket Labが製造しているスタートラッカーのナビゲーションツールのような、他の宇宙機部品も生産を拡大する予定があるかと尋ねると、ベック氏は口を閉ざした。しかし、ベック氏によれば、同社では新製品の投入を計画しているという。それがどんな物になるかは、明言しなかったものの、ベック氏が宇宙システム部門を起ち上げた当時、掲げていたその目的は「宇宙に行くものにはすべてRocket Labのロゴがついていなければならない」というものだった。

この目標は、Rocket Labのさらに大きなビジョンである、打ち上げサービスと宇宙機製造を組み合わせ、軌道上のインフラを構築できるエンド・ツー・エンドの宇宙企業になることにもつながる。

「これらを組み合わせれば、軌道上でインフラを整備し、最終的にサービスを提供するための非常に強力なプラットフォームになります」と、ベック氏は語っている。

しかし、どのようなサービスを考えているのかという質問に対して、ベックは胸の内を明かさず、代わりに競合他社の有名な例を挙げた。それは、SpaceX(スペースX)が自社で製造・打ち上げを行うインターネット衛星プロジェクト「Starlink(スターリンク)」だ。ベック氏は、Rocket Labがどのような事業展開を目指しているのかについては口を閉ざしたまま、垂直統合によって新しいビジネスモデルを試すことができるとだけ語った。

「私たちが実験するための限界費用は、非常に低く抑えられます」。
画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Rocket Labの火星ミッションにNASAがゴーサイン

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、同社の宇宙機、Photon(フォトン)が次の科学ミッションに向けてNASAの承認を受けるための一歩を進めた。すべてが計画通りに進めば、2基の人工衛星は2024年に打ち上げられ、11カ月後に火星に到着し、赤い惑星の磁気圏を探査する。

このミッションはEscape and Plasma Acceleration and Dynamics Explorers(ESCAPADE、大気流出・プラズマ加速・力学探査機)と呼ばれ、去る2019年に小型衛星科学プログラムとして提案され、最終的にファイナリストに選ばれた。UC Berkeley(カリフォルニ大学バークレー校)の研究者らが科学部門を支える主要メンバーだ。

これらの人工衛星は質量180kg以下で単体で科学ミッションを遂行しなければならない。強力な商業産業連携のもとで遂行されるより軽量で期間の短いミッションを目指す新たなプログラムの一環だ。プログラムの発表以来いくつかのコンセプトが練られ、ESCAPADEはKey Decision Point C(重要決定ポイントC)を最近通過したところで、これはコンセプトを実現する準備ができたことを意味する。

このミッションは2基1組の衛星からなり、選抜されるのに貢献した特徴であることは間違いない。Rocket LabのPhotonプラットフォームの本来の目的は、軌道上の作業から今回のような惑星間科学ミッションまでさまざまな宇宙事業のために何らかのターンキーデザインを提供することだ。

Rocket Labがこのミッションの打ち上げに同社のロケットであるElectron(エレクトロン)を使わないのは興味深い。2基の衛星は「NASAが提供する商業ロケット」(選択はNASAに任せられている)に搭載される。おそらくそのときまでには同社も契約に名乗りを上げているだろうが、現時点でRocket Labは宇宙船だけを製造しており、ナビゲーション、方位、推進など、大部分の非科学機材部分を担当している。

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「ESCAPADEは、従来の何分の1かのコストで先進惑星間科学に手が届くことを示す革新的ミッションであり、当社のPhotonでこれを可能にしたことを誇りに思っています。NASAから飛行へのゴーサインをもらったことを大変喜んでいます」とRocket Labのファウンダー・CEOであるPeter Beck(ピーター・ベック)氏は節目の発表文で語った。

Rocket Labはすでに、Artemis(アルテミス)計画のためにCubeSat(キューブサット)をシスルナ(地球と月の間の)軌道に載せる契約を結んでおり、Varda Space Industries(バルダ・スペース・インダストリーズ)とは同社が2023年と2024年に打ち上げる宇宙船を製造する契約を確定している。

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微小重力の宇宙での製造業スタートアップVardaがRocket Labと宇宙船3機の購入契約締結画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Aurora Propulsion Technologiesの宇宙ゴミ除去技術が2021年第4四半期に宇宙へ

小型衛星用のスラスターや軌道離脱モジュールを開発しているフィンランドの企業Aurora Propulsion Technologies(オーロラ・プロパルション・テクノロジーズ)が、自社の技術を初めて宇宙に送り出す。同社はRocket Lab(ロケット・ラボ)と契約し、2021年第4四半期に、初の「AuroraSat-1(オーロラサット1)」と呼ばれるキューブサットを、Electron(エレクトロン)ロケットのライドシェアミッションに載せて、地球低軌道に送り出す予定だ。

Auroraは2018年に創設されたスタートアップ企業で、その他にあまり類を見ない技術は、私たちの多くにとって「見えないところにある、気に留めないもの」である宇宙ごみという厄介な問題の解決に役立つと考えられている。

宇宙ごみ(軌道上デブリ)とは、宇宙空間に存在する不要になった人工物のことだ。米国防総省は、Space Surveillance Network(宇宙監視ネットワーク)を通じて、約2万7000個の宇宙ごみを追跡し続けているが、地球低軌道上には数百万個のごみが漂っていると推定されている。

打ち上げやその他の技術コストが低下し続けているため、地球低軌道上は今後ますます混雑する傾向にあり、長期的には私たちの周囲に浮遊する不要なごみが増える可能性があるということだ。

2021年末に予定されているRocket Labによる打ち上げは、Auroraが宇宙でその技術を実証する好機である。AuroraSat-1は2つのモジュールを備える予定で、1つ目のモジュールには、6基の「レジストジェット」スラスタが搭載されており、キューブサットの迅速な離脱と姿勢制御(衛星の向き)の調整を行う。また、同社は電荷を帯びたマイクロテザーを用いて衛星の離脱時に抵抗力を発生させる「Plasma Brakes(プラズマ・ブレーキ)」のテストも予定している。

AuroraSat-1は当初、宇宙輸送事業者であるMomentus(モメンタス)によって、2021年初めにSpace X (スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットを使ったライドシェア・ミッションで飛ぶ予定だった。しかし、Momentusが米連邦航空局の承認を得られなかったため、その飛行は中止された。

今回の変更について、AuroraのRoope Takala(ルーペ・タカラ)CEOは「Momentusが難しい状況になったことを踏まえて、私たちは今回発表したRocket Labのフライトに衛星を載せ替えなければなりませんでした」と、TechCrunchに語った。Auroraは2021年3月、2022年6月にMomentusと衛星を打ち上げる契約を結んだと発表していた。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Aurora Propulsion TechnologiesRocket Lab宇宙ごみ人工衛星

画像クレジット:Aurora Propulsion Technologies

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

宇宙における製造活動のスタートアップVardaがRocket Labと宇宙船3機の購入契約締結

軌道上で製造を行うスタートアップのVarda Space Industries(バルダ・スペース・インダストリーズ)の動きが早い。4200万ドル(約46億円)のシリーズAを発表後わずか数週間で、最初のミッションに向け、打ち上げ会社のRocket Lab(ロケットラボ)から3機のPhoton(フォトン)宇宙船を購入する契約を締結した。

最初の宇宙船は2023年第1四半期に打ち上げられる。2機目は同年末、3機目は2024年の予定だ。創業8カ月のVardaにとって果敢なスケジュールであり、最初の3つの宇宙での製造ミッションとなる。契約には、4機目のPhotonを購入するオプションが含まれている。

実績ある企業との提携は理にかなっている。Photonの実績を考えればなおさらで、その中には、今年末のNASAから資金提供を受けた月へのミッションが含まれる。また、Rocket Labは、カリフォルニア大学バークレー校の宇宙科学研究所から、火星への1年間のミッションのためのPhoton宇宙船2機の設計下請け契約を獲得した。

画像クレジット:Rocket Lab

元SpaceXのWill Bruey(ウィル・ブリュイ)氏とFounders FundのプリンシパルであるDelian Asparouhov(デリアン・アスパロホフ)氏が創業したVardaは、宇宙でしか得られない製造条件である微小重力に大きな期待を寄せる。彼らは、バイオプリントした臓器、特殊な半導体、光ファイバーケーブル、医薬品など、地上では作ることのできない製品向け市場の潜在力が、宇宙船の製造や宇宙への打ち上げにかかるコストに見合うものだと考えている。

今回の契約では、それぞれのPhotonにVarda製の2つのモジュールを搭載する。1つ目は実際に宇宙で製造を行うための微小重力製造モジュール、2つ目は完成品を地球に持ち帰る再突入カプセルだ。アスパロホフ氏がTechCrunchに語ったところによると、再突入カプセルは、最初の2、3回のミッションでは「40〜60kg程度の材料」を持ち帰るよう設計されており、その後の打ち上げでの速やかな規模拡大を目指している。

Vardaによると、このアプローチはリスクが少なく、段階的に進められるという。「だからこそ、投資家や国防総省、NASAなどから多くの関心が寄せられているのです。これは非常に現実的で、一歩ずつ進んでいくアプローチなのです」とアスパロホフ氏は語る。「私たちは、この最初の宇宙工場を実証します。事業規模が拡大すれば、より大きな宇宙工場を送り込むことができ、最終的には国際宇宙ステーション(ISS)の10倍の大きさのものを作ることができるかもしれません。しかし、私たちはそのような規模から始めようとしているわけではありません。非常に小規模で短期的、かつ実用的なアプローチから始めようとしています」

各ミッションは打ち上げから着陸まで約3カ月間だとRocket Labは声明で述べた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

NASA火星探査ミッション用にRocket Labが双子の軌道上宇宙機の開発契約を獲得

Rocket Lab(ロケットラボ)では、火星の気候が時間とともにどのように変化してきたか理解を深めるため、火星を周回して磁気圏の研究を行うPhoton(フォトン)プラットフォームをベースにした2つの宇宙機を開発している。この科学ミッションはNASAのSIMPLEx(Small Innovative Missions for Planetary Exploration)プログラムから授与されたもので、2024年に、NASAがライドシェアロケットとして契約したまだ明らかにされていない商業打ち上げ用ロケットに搭載して火星に飛ぶ予定だ。

これは、Rocket Labが以前に発表した、地球の軌道を超えて移動する衛星プラットフォームとしてPhotonを使用するというビジョンを実現することを含め、いくつかの理由で注目すべき進展だ。また、Rocket Labの打ち上げ事業と宇宙船サービス事業が初めて切り離されるという意味でも興味深い。

Rocket Labの「Photon」は、同社の宇宙推進システム「Curie(キュリー)」を使用する衛星バスプラットフォームで、今回のミッションでは、状況制御システムや深宇宙探査システム、ウェイファインディングのためのスタートラッカーやリアクションホイールなどが搭載される予定だ。Photonの魅力は、深宇宙探査能力を小型で手頃な価格の、比較的質量の少ない打ち上げ用パッケージで提供することで、より多くの組織や機関に惑星間科学へのアクセスを広げることができるかもしれない。

Rocket LabがPhoton2機を投入するこの火星行きESCAPADEミッションは、2021年6月にデザインレビューが行われ、7月にはPhotonの製造、装備、飛行準備が始まる前に最終チェックが行われる予定だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket LabNASA火星

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

米航空局がRocket Labに打ち上げ再開の許可、ミッション失敗から1カ月足らずで

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、20回目となるElectron(エレクトロン)打ち上げミッションが第2段燃焼中に失敗しペイロードを失った後、早くも米国連邦航空局(FAA)から打ち上げ活動再開の認可を得た。これはRocket Labの安全システム設計に対する信頼の表れであり、異常に遭遇してもすべてが意図した通りに機能したこと、つまり、ミッションが失敗したものの、地上の乗組員や一般の人々、他の軌道上の物体にリスクを与えることなく、安全に行われたことを意味している。

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だからといって、Rocket Labが実際すぐに打ち上げを再開するわけではない。FAAは今回の事故後も既存の打ち上げライセンスが有効であると判断しているが、Rocket Lab自身は原因究明調査を続けていく予定だ。Rocket Labの創業者兼CEOであるPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、第2段エンジン停止の原因究明のための継続的な取り組みを「複雑で重層的な故障分析」と称しているが、すでにテストでエラーを再現していることにも言及した。

今後は、一連の出来事を正確に把握し、何が原因で安全装置が自動的に停止したのかを解明することに集中するという。この作業は「数週間以内」に完了する予定で、その時点で活発な飛行活動の再開を進めることになる。

Rocket Labは今回のアップデートで、2020年7月に発生した以前のミッションの失敗については言及していない。その際の異常は最終的に電気的な接続不良によるものと結論づけられたが、第2段エンジンの安全停止という同様の結果になった。

ただし、同社が打ち上げ後に回収したElectronロケットの第1段から得られた情報によると、その部分は計画通りに進行したことが確認されている。Rocket LabではElectronロケットの1段目ブースターの再利用性を高めようとしており、今回は新たに大気圏再突入と着水のプロセステストを実施し、そちらはスムーズに進んだ。また、今回のフライトで使用された新しいヒートシールドは意図した通りに機能したとし、今後は回収した第1段エンジンでエンジン燃焼試験(hot fire test、ホットファイア)を行い、その性能を確認する予定だという。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket LabElectron米国連邦航空局(FAA)

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

再利用化を進めるRocket Labは次のElectron打ち上げでも第1段回収を実施

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は次の打ち上げ準備を行っている。今のところ、ニュージーランドの施設から2021年5月に打ち上げられる予定だ。このフライトのペイロードは、BlackSky(ブラックスカイ)の地上観測コンステレーションに追加される2基の衛星だが、Rocket Labにはもう1つ、Electron(エレクトロン)ロケットの再利用化に向けた重要な目標もある。つまり、宇宙から帰還したブースター(第1段)の回収だ。

Rocket Labにとって、第1段の回収はこれが初めてではない。2020年11月、Return to Sender(送り主に戻す)とそのものズバリの名が付けられたミッションの際、同社は第1段を海から回収している。Run Out of Toes(つま先が足りなくなる)と名づけられた今回のフライトの目標は前回とほぼ同じながら、Electronには部分的な改良と、同社が多くのデータを収集しやすくする改造が施されている。さらに、回収後の完全な再利用に向けて進歩もしている。

「私たちは、回収した第1段の状態に大変に満足しています。どの耐熱システムにも、基本的に変更を加える必要はありませんでした」とRocket LabのCEOにして創設者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏はインタビューに応えて話した。「私たちの第1段の再突入方法は、エンジンを下にして、大きな衝撃波を前方に逃がすというやり方です。次のフライトは次なる改良版であり、負荷の大きさが判明したことから、熱シールドを強化して負荷に耐えられるようにしています」。

最初のフライトでは、大気圏再突入の際にElectronの第1段にかかる実際の負荷に関する貴重なデータを大量に収集できた。そうした情報は、地上の技術者たちが専門知識から推測はできても、現実にやってみなければ本当に知ることはできないものだ。11月のフライトでロケットに装着したセンサーからのデータによって、Electronは、熱シールドの「性能と強度の大幅な向上」のためののデザイン変更が可能になったとベック氏はいう。

2回目のフライトでは、この改良策の効果を見極め、さらに多くのデータを回収して、3回目にして最後の回収テストに活すことにしている。これは、Electronの第1段が大気圏に突入する際の速度をさらに落とせるよう、再突入手順の調整に重点が置かれる。Rocket Labが回収計画の最終目標としている、パラシュートで降下速度を下げてヘリコプターで空中捕捉する方式の実現性を高めるためのものだ。

「その後に、空中での速度をさらに下げて、第1段の熱を取ることを目指して、もう一回、設計の見直しを行います。それにより、回収ヘリコプターのような要素を導入してまで、第1段をわざわざ取りに行ってもう一度飛ばすことに本当に価値があると感じられるレベルに、私たちは到達できます」とベック氏はいう。

その3回目にして最後の着水テストは、物事が順調に進めば、2021年後半に実施される。この3回の開発テストで回収した第1段を実際に再び打ち上げる予定はないが、最初に回収した第1段の部品の一部が、今回のテストで飛ばされる第1段に再利用されているとベック氏は教えてくれた。3回目のテストでは、さらに多くの部品を回収して再利用するという。

ベック氏によれば、再突入の際に何が起きたか、どの部分がいちばん損傷を受けているかを技術者たちが学ぶには、Rocket Labの工場に持ち帰った第1段を細かく切り刻むのが一番だと話す。

「第1段を工場に持ち帰ること以上に、本当にそれを理解する方法はありません」と彼はいう。「必要な道具はすべて揃っています。しかし、第1段をここへ運び込んで真っ先にするのは、切り刻むことでした。熱の影響を受けた部分、空気の流れから隠れていた部分をすべて切り取り、材料の特性を調べる張力試験を行いました」。

これらすべての作業が、回収したElectronの第1段を再び飛ばすという最終目標への推進力になっている。これが実現すれば大変な偉業となる。なぜなら、Rocket Labは打ち上げ回数を増やせるからだが、それだけではない。そもそも再利用を考慮せずに設計されたロケットだったという点が大きい。私は、Electronの回収した第1段の最初の再飛行は商用ミッションになるのか、または顧客のペイロードを積まないテスト飛行になるのかをベック氏に尋ねてみた。

「商用ミッションになることは考えられます。そのわけは、単に私たちは、心底自信を持てないものを打ち上げ台に載せたりはしないからです」と彼は答えた。「最初の再利用ロケットは、かなりの量の修繕が加えられると思います。他に再飛行を実際に行っている唯一の企業(SpaceX)を見てください。そこには長い長い年月におよぶ研究と知識があります。ロケットを回収して、大丈夫そうだから発射台に載せようなんて簡単にはいかないのです。自信と確実性を積み上げるには、何度も何度もやり直すプロセスを経る必要があります」。

Electronの再利用化は、このロケットにとって、それ自体に価値のあることだが、この機能を開発する過程は、Rocket Labの大積載量を誇る新型ロケットNeutron(ニュートロン)の建造に、かけがえのないものを与えているとベック氏は話す。Neutronは、推進力を使って離陸と着陸が行えるよう設計されている。また、最初から高い利便性がデザインに織り込まれている。

「Electronは、世界で最も建造しやすいロケットとして設計されました。Neutronは、もっとも再利用しやすいロケットとして設計されています」とベック氏。「これらはパラダイムが大きく異なるものですが、尋常でないことに、私たちはその両方の体験を有しています。Neutronでは、革新的技術は再利用性に集中しています。間もなく、おもしろい情報を少しだけお伝えしますが、このロケットの構造をほんの少しだけ見れば、私たちが作っているロケットが、どの程度まで再利用可能なのかが明白になるでしょう」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket LabロケットElectron

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

Rocket LabのベックCEOがより大きなロケットが必要な理由と株式公開の理由を語る

米国時間3月1日月曜日、Rocket Labは多くのニュースを発表した。SPAC(特別買収目的会社)との合併による株式公開がその1つであり、またより重量のあるペイロードにも対応できる新しい大型打ち上げロケットであるNeutron(ニュートロン)の建造も発表された。Rocket Labの創設者兼CEOであるPeter Beck(ピーター・ベック)氏に、なぜ今ニュートロンなのか、そしてなぜ同時に株式公開しようとしているのかを聞いた。当然のことながら、この2つは密接に関連している。

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「当社は多くのクライアントのためにElectron(エレクトロン、Rocket Labの現在の小型打ち上げロケット)を飛ばして利益を得ています。また、メガコンステレーションを含む多くの宇宙探査機に資材を供給する宇宙システム部門もあります」と、ベック氏は語る。「多くの、さまざまなクライアントと非常に強い関係を築いていることから、業界の今後、そして問題点について独自のインサイトを得ることができると思っています」。

再利用可能な2段式ロケット、ニュートロンの開発にもこれらの問題点が意識されている。ベック氏はかつて打ち上げロケット市場のニーズについて別の考えを持っていたが、Rocket Labでは、エレクトロンを部分的に再利用可能にすることで、その過去の考えと決別したかたちだ。そして、同社はさらにこの新たなコンセプトを前進させており、ニュートロンではSpaceX(スペースX)のFalcon9(ファルコン9)のように、1段目のブースターが地球に戻り、海に配置されたプラットフォームに着陸するかたちとなる。しかし、Rocket Labによるエレクトロンの開発以降、市場はエレクトロンのもたらした成果により変化してきた。

「ニュートロンは2つの個別の要因が発端となり開発されました。1つは、現在の市場におけるニーズです。また、近い将来、ニュートロンは、地球を回る人工衛星、計画途上にある人工衛星の90%以上を打ち上げることになります。これらの衛星は、80%がメガコンステレーション用です。多くのクライアントと話をするうちに、市場が本当に必要としているのはメガコンステレーション構築用のマシーンであることが明らかになりました」。

ベック氏は、このような市場のニーズと、ほとんどの大型ロケットの積載量が最大積載量の半分であったことを示す現在までの分析を組み合わせた結果、ニュートロンの8トンという積載量が決まった、と話す。ほぼ毎回、最大積載量での打ち上げを行う必要があるとはいえ、将来に至るまで、ほぼすべての衛星における大量のニーズを満たすこともできる。

「エレクトロン開発の道のりは厳しいものでした。私がElon Musk(イーロン・マスク)氏に強く同意することの1つは、ロケット開発の最も難しい過程は実際のスケーリング(規模拡大)の過程だということです。ロケットを軌道に乗せるのも簡単ではありませんが、製造を実際にスケーリングするのは途方もなく難しいことです。幸いなことに、私たちはそのすべてを経験してきました。製造とは製品だけではなく ERPシステム、品質システム、財務、サプライチェーンなど、さまざまなものを内包します。これらのインフラすべてを構築する必要がありました」。

エレクトロンとニュートロンは、工場、製造プロセス、インフラストラクチャの他、コンピューティングやアビオニクスなど、サイズに依存しない要素を共有している。エレクトロン打ち上げの許可を取得するまでの作業の多くはニュートロンにも適用できるので、エレクトロンの開発から打ち上げ、飛行までに必要だったコストと時間に比較して相当の節約になる、とベック氏は指摘する。Rocket Labは、エレクトロンを製造するプロセスを経て、全体的なコストにフレキシブルに対応しており、これは必ずニュートロンでの競争力に反映される、とベック氏はいう。

「エレクトロンの価格は750万ドル(約8億円)です。そのため、私たちは物事を極めて効率的に行う方法を見つける必要がありました」とベック氏。「価格が750万ドルでは、飛行安全分析やペイロード環境分析などに200万ドル(約2億2000万円)を費やすことはできません。このコストを償却できるのは6000万~8000万ドル(約65億〜87億円)のロケットでしょう。そのため、私たちはすべてを非常に効率よく進める必要がありました。さらに、ここまでの過程には、システムだけではなく、基本的なロケットの設計が含まれています。私たちが学んできたことをすべてをニュートロンに適用すれば、非常に競争力のある製品を市場に投入できると信じています」。

SPACとの合併に関して、ベック氏は株式公開という決断は2つの理由に要約されると話す。1つ目は、ニュートロンの開発や「その他の」プロジェクト必要な資金を調達すること。もう1つは、一種の「公的通貨」を獲得して、Rocket Labが達成したいと考えているビジネス面での買収を行うこと。従来のIPOではなくSPACとの合併を決断した理由の根本には、効率と固定資本目標がある、とのことだ。

「当時、IPOに向けた計画を進める中で、私たちの念頭にあったのは自社のことだけでした。しかし非常に多くのSPACパートナー候補が当社に強い関心を持っていることがわかったのです」とベック氏は私に語った。「最終的には、タイムラインのバランスを考え、SPACとの合併が当社がやりたいことを進める能力を加速させてくれると判断しました。なぜなら、ご指摘のように、SPACとの合併によりプロセスを合理化できるだけでなく、収益の確実性も確保されるからです」。

SPACとの合併が完了すると、Rocket Labは約7億5000万ドル(約817億円)をキャッシュで持つことになる。SPACルートの利点の1つに、調達する金額がその日の株価に依存しないことが挙げられる。ベック氏とRocket Labは、合併完了に向け予期せぬ障壁や障害を排除しつつ、約7億5000万ドルを手にし、計画に組み込むことができる。

「現在私たちには必要とする資本があり、準備もできています。つまり、Rocket Labには強力な実行力があるということです」とベック氏は語る。「Rocket Labの歴史において、これまでに実行したすべてを合計しても、数億ドルの資金しか調達していません。したがって、7億5000万ドルを調達したことで、大きなことができると期待しています」。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Dragonfly)

Rocket Labが再利用可能な衛星打ち上げ用大型ロケットを発表、最大積載量8トン

SPAC(特別買収目的会社)との合併による上場のニュースだけでは十分ではなかったようで、Rocket Labは米国3月1日、開発中の新たなクラスのロケットを発表した。Neutronと呼ばれるロケットは最大8トンを軌道へと運搬することができる。同社が現在使用しているロケットElectronの最大積載量300kgをはるかに超える。NeutronはSpaceXのFalcon 9ブースターと違って海上ランディングプラットフォームから打ち上げられるように設計されており、1段目部分は完全に再利用可能だ。

Neutronは大型のマルチ衛星コンステレーションを立ち上げる顧客からの増大する需要に応えるべくデザインされる、とRocket Labは話す。これまでよりも大きな積載量での運搬は、衛星コンステレーションをすばやく軌道に乗せるためにより多くの小型衛星を一度に打ち上げられることを意味する。同社によると、この積載容量だと現在予測されている2029年までの打ち上げの98%に対応でき、国際宇宙ステーションへの物資供給にも使える。同社はまた、有人宇宙ミッションにも使えるとし、これは同社にとって初の飛行士が乗り込める宇宙船を開発するという野心も示している。

NeutronはRocket Labの顧客ベースを大きく拡大することになりそうだ。そして効率と再利用性にフォーカスした設計のため、現在使用しているElectronよりもコストや経済性で優れる。Neutronはバージニア州ワロップス島にある同社の施設から打ち上げられる予定となっている。施設にはすでに発射台が設置され、2024年までに最初のNeutron打ち上げを実施できると予想している。ロサンゼルスにある本社とワロップス島の打ち上げ場に加え、Rocket Labは新しいロケットを大量生産するために米国にNeutron生産施設も建設する予定だ。

SpaceXのFalcon 9の打ち上げ能力には及ばないが、それでもNeutronはFalcon 9より少ないペイロードを月や宇宙のはるか向こうに運ぶことができるロケットとなるよう意図されている。民官の組織が今後10年でかなりの量、そしてさまざまな衛星コンステレーションを軌道に乗せるとの予測があり、現在、中型ロケットはかなり大きな関心を集めている。衛星コンステレーションはコスト、そして通信から地球観測までを網羅するという点でかなりメリットがある。別のロケット打ち上げスタートアップRelativity Spaceも、最初の小型ロケットを補うためにより大型のロケットを開発するという似たような計画を発表したばかりだ

関連記事:Relativity Spaceが完全再利用可能な新しい大型ロケットの建造計画を発表

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロケット打ち上げのRocket LabがSPAC合併で上場へ、企業価値4370億円に

SPAC(特別買収目的会社)の波が宇宙開発スタートアップにも押し寄せている。現在流行しているSPAC合併が広がる前、この業界のエグジットするペースは比較的緩やかなものだった。Rocket Labは最新のSPAC合併例となり、最も注目すべきものとなりそうだ。VectorというSPACとの合併によりティッカーシンボル「RKLB」でNASDAQに上場する。合併は2021年第2四半期に完了する見込みだ。

ニュージーランドで創業されたRocket Labは本社をロサンゼルスに移したが、それでもニュージーランドでロケットを打ち上げている。合併による形式上の企業価値は41億ドル(約4370億円)、VectorやBlackRockなどからの4億7000万ドル(約500億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を通じて総現金残高は7億5000万ドル(約800億円)となる。Rocket Labの既存株主は合併会社の総株式の82%を保有する。

ロケット打ち上げ企業であるRocket Labは2006年に創業され、創業者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏が率いてきた。2013年にカリフォルニアに本社を置き、同社にとって米国では初の打ち上げ施設をバージニア州ワロップス島に設置した。すばやく、フレキシブルな打ち上げオプションを念頭に、同施設は成長中の小型衛星マーケットに対応すべくデザインされている。

Rocket Labは、国家安全保障のペイロードなど米政府に代わってロケットを打ち上げてきた。同社の成長にとってこれは売上高を確保する主要な機会だ。現在、同社は受注残を抱えており、調整後で2023年には「EBITDA黒字」となる見込みで、2024年までにキャッシュフローは完全に黒字に、2026年までに売上高ランレートは10億ドル(約1070億円)を超えると予想されている。

同社はさまざまな方法で頻繁に打ち上げる能力を高めることに注力してきた。自動化された大規模なカーボンファイバー生産能力にフォーカスし、生産能力を着実に向上させている。同社はまた、前述のどおり米国に打ち上げ場を設置し、同社所有のニュージーランドの打ち上げ場に次ぐ2つ目の発射台として間もなく開所する。それから部分的に再利用可能なロケットElectronの製造にも取り組んでいる。「これはより早く打ち上げを行うのに貢献する」とベック氏はいう。

最後に、同社は8トンまでのペイロードを搭載することができるNeutronという従来のものより大型の打ち上げロケットも発表している

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画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi