【レビュー】Mac Studio、すてきでパワフルで値段も高い、Macのデスクトップに求めるものがほとんど揃う

先週のイベントで行われた発表は、そのほとんどが事前に噂されていたものだった。しかし、多くの消費者向けハードウェアが変わりばえのしないものになったこの時代に、Apple(アップル)は驚きを与えることに成功した。イベントの発表の中で明かされたMac Studio(マック・スタジオ)は、大きな変化球ではなく、Appleがパーソナルコンピューター戦略を進化させ続けていることを示すサインだった。最初のAppleコンピューターの登場から半世紀近くが経過したが、このカテゴリーにはまだ寿命が残っている。

ほんの数年前なら、その言葉に自信を持てなかったと思う。Macはまさに「中年」の危機を迎えていたのだ。iPhoneが、Appleの象徴という意味でも売上シェアでもトップに躍り出て、iPadがその残りを吸収していたのだ。イノベーションという観点からは、macOSはモバイル版の残り物を再利用しているようにしか見えなかった。

一方、ハードウェアの面では、かつて同社の基盤の重要な部分を形成していたプロフェッショナル向けクリエイティブ分野を放棄し、MicrosoftのSurfaceシリーズのような製品が花開く余地を残したように見えていた。一時はTouch Barの追加で再び盛り上がりを見せようとしたが、結局Appleもまぼろしに見切りをつけ、その奇妙な実験を静かに終了させた。

数年前のMacは、訴訟沙汰にもなったキーボードの不良や、ポート不足に悩まされていた。後者をAppleの合理化のせいにすることは簡単だが、だからといって失望は抑えられなかった。

画像クレジット:Brian Heater

しかし、2020年に再びパラダイムシフトが起こった。この変化をもたらしたのはやはり、iPhoneの研究開発の直接的な成果だった。しかし、今回は新しいiOSアプリが追加されたわけではない。この間に、AppleはiPhoneのチップを自社開発へと移行し、Macのハードウェアを飛躍的に向上させたのだ。同社はこれまで、可能な限り単独で物事を進めたがってきたが、自社で主要な半導体(Appleシリコン)を開発したことで、その機会が大きく広がった。

Appleがその半導体をMacにも使うのは時間の問題だった。同社はM1チップを発表し、同時に、MacBook Air、MacBook Pro、Mac Miniの3つの新しいMacを発表してパンデミックの最初の年を終えた。Macは復活した──少なくとも性能の面では──というのがほぼ一致した評価だった。家のリフォームやウェブサイトのリニューアルをしたことがある人ならわかると思うが、解体には時間がかかるものだ。M1のデビュー戦は古い車体に新しいエンジンを搭載したようなものに思えた。

2021年5月、アップルは新しい24インチiMacを発表した。このときは新しい半導体(M1)を新しいデザインの筐体に搭載し、約10年半ぶりにオールインワンマシンを根本的に作り直した。こんなことは1度か2度あるかないかだ。私は、ハードウェアのデバイスを指して「cute(かわいい)」という形容詞を行うことはない。「かわいい」はウサギと赤ん坊のためにある形容詞だ。だが2021年のiMacも「かわいい」のだ。かわいくて、しかも力強い。1年以上、デスクトップを日々の手足として使っているが(以前ほど自宅から出なくなった)、M1の限界を超えたと感じた瞬間は一度もなかった。

画像クレジット:Brian Heater

24インチの画面領域で十分ならば、ほとんどのユーザーには、特に私のようにスペースに制約のあるユーザーには、iMacを心からお勧めできる。個人的な唯一の問題点は黄色にしたことだ。

しかし、あえていうなら、新しいMacの誕生は2021年10月だったのだ。私の話を聞いて欲しい。そのとき発表された最新のMacBook Proは単に新しいハードウェアだっただけではなく、ハードウェアに対する新しいアプローチを提示していた。Appleは、自社のデザイン決定に一心不乱に取り組むあまり、その過程で世論の反発を招くことがしばしばあると言っても、あまり驚かれはしないだろう。iPhone SEに関するDevin記者の熱のこもったエッセイを読めば、私が何を言いたいかわかるはずだ。愛着のある機能を失うこと、それは時には進歩の名の下に、時には美学のために行われるが、いつもおおごとなのだ。

2021年のMacBook Proは、いつもと違う感じがした。それが明らかになったとき、活気のないスタッフの間にそれなりの興奮が巻き起こった。何年も我慢を重ねてきたあとで発表された、新しいM1 ProとMaxチップを搭載したMacは妥協のないものだと感じられた。最近のMacのリリースで散見されてきたような不安要素はなく、Macユーザーにも勧めやすい製品だった。

では、Mac Studioはこの中でどこに位置するのだろうか?一見したときよりも、少々込み入った話になる。1つは、上にも書いたように、この製品の登場が意外だったことだ。先週の時点では、デスクトップは27インチiMacが確実視されていた。すなわち2021年のオールインワンをステップアップさせ、iMac Proの穴を埋めるような製品だ。今にして思えば、それはAppleがM1ロードマップを練り上げ、Mac Proのゆらぎを正している間のつなぎだ。

画像クレジット:Brian Heater

27インチiMacは出るのだろうか?おそらくはノーだ。報告によれば、それはすぐに起こりそうもなく、率直にいってMac Studioと重なる部分が多すぎるものだろう。2021年のモデルでは、iMacはAppleのエントリーレベルのデスクトップとしての正当な位置に事実上返り咲いた(非常に強力なマシンだがM1によって全体の水準が上がってしまったのだ)。そのカラーリングは、iPodやiPhone Miniのような製品の伝統を受け継ぐものであることは間違いない。

画像クレジット:Brian Heater

価格設定も、一見したところでは少々複雑だ。現在、M1 Mac Miniは699ドル(日本では税込7万9800円)から、iMac M1は1299ドル(税込15万4800円)からとなっている。一方、Mac Studioは1999ドル(税込24万9800円)からで、事実上2つの製品を合わせた価格だ。だが、もう少し複雑なのは、この中3つの中ではディスプレイを内蔵しているのはiMacだけだという点だ。要するに、お金を節約したい、あるいはすでに完璧なスクリーンを持っているのであれば、必ずしもApple製のディスプレイを使う必要はないということだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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もちろん、このレビューのためには、Appleから送られてきたStudio Display(スタジオ・ディスプレイ)を使っている。これでさらに1599ドル(税込19万9800円)が追加され、開始価格は約3600ドル(税込44万9600円)になる。本当のお金の話はこれからだ。テストした機種はM1 Max搭載だ。32コアのGPU、64GBのRAM、1TBのストレージを搭載し、価格は2799ドル(税込33万7800円)である。M1 Ultraが欲しい?その場合は3999ドル(税込49万9800円)からとなり、7999ドル(税込93万9800円)までとなる。しかし、このような価格帯では、議論しているのは全Macユーザーの0.1%(実際の数字ではない)以下のニーズということになる。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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予想通り、GeekBenchでは2021年のM1 Max Proと遜色ない性能を発揮している。Appleシリコン版テストでは、MacBook Proの1781/12674に対してStudioは1790/12851、Intel版テストではMacBook Proの1348/9949に対してStudioは1337/9975というスコアだった。GFXBench Metalテストでも、MacBookの279.6に対して307と差をつけている。残念ながらUltraチップは入手することができなかったが、それでも結果は非常にすばらしいものだった。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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さらに印象的だったのは、Intelモデル上では非常にリソースを消費するような作業を、Studioではファンをそれほど回すこともなく、触っても暖かくなることもなく実行できたことだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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先週のイベントで「最後に1つ」とMac Proを予告したAppleが、これからどこへ行こうとしているのか、気になるところだ。M2チップだろうか?おそらくは。とはいえ、ピクサー映画をフルにレンダリングしたり、本当にハイエンドなVRコンテンツを開発したりする必要のある人はあまりいないだろう。もちろん、そういう人はいるし、これからどんどん増えていくだろう。そして、ノートパソコン以上に、これらのデバイスを将来にわたって使えるようにすることが重要なのだ。3000ドル(約35万6000円)もするデスクトップなら、しばらくは使い続けたいものだ。

新しいMacBook Proと同様に、Mac miniよりもトレードオフは少ない。まず、一番大事なのはポートだ。ポートは重要だ。あなたの機器を他の機器につなげることができる。Studioは、前面にUSB-Cポートを2つとSDリーダーを備えている。特に後者は、頻繁に取り扱うものなので、前面に出しておくと便利だ。裏側には、さらにUSB-Cが4つ、USB-Aが2つ(iMacにはなくなって残念なもの)、Ethernet、ヘッドホン端子、HDMI出力(ただし、入力は不可)がある。Studio Displayを加えると、さらに4ポートのUSB-Cが手に入る。

画像クレジット:Brian Heater

Studio本体以上に、Studio DisplayはAppleのラインアップにある重要な穴を埋めるものだ。思い出して欲しいのだが、Appleは、5000ドル(約60万円)のPro Display XDRが登場するまでしばらくの間、自社製のディスプレイ提供から完全に撤退していた。Mac ProやM1 Ultraと同様、Pro Display XDRはほとんどの人が必要としているものをはるかに上回っているモニターだ。もしあなたがApple製のモニターを手に入れたいと考えているなら、27インチの5K Retina Apple Studioディスプレイはほとんどの人にとって十分なモニターだ。さらに300ドル(税込4万3000円)を足せば、反射防止コーティングとNano-textureガラスを採用し、映り込みが劇的に低減される。これはプロユーザーにもノンプロユーザーにもうれしい仕様だ。

iMac 2021のマイクテスト

Mac Studio 2022(Studio DIsplay)のマイクテスト

マイクの品質は良好で、Appleは「スタジオ品質」と位置づけているものの、ウェブ会議以上のことをするつもりなら、前述のポートのいずれかに外部マイクを接続することをお勧めする。とりわけ、よりタイトに入り込むことができる余裕が生まれるだろう。スピーカーのサウンドは最新のiMacよりも充実しているが、これは広くて厚いフレームのおかげで、下向きに音を出すグリルの表面積を広げることができるからだ。

左上から時計回りに:iMac 2020、iMac 2021、外付けウェブカメラOpal C1、Mac Studio(Studio DIsplay)

AVの観点から見て、一番残念なのは、間違いなくウェブカメラだ。センターフレームは追従性が良いが、最近のM1搭載Macと比べると驚くほど映像画質が落ちている。ホワイトバランスが崩れ、画像ノイズが多くなっている。最初は、誤ってそのままにしてあった保護フィルムをはがせばよいかと思ったが無駄だった。その結果が上の画像だ。1599ドル(税込19万9800円)以上のモニターとしては、かなりがっかりだ。

M1のISP(画像信号プロセッサー)に注力し、カメラそのものをアップデートしたので、新しいMacでは外付けのウェブカメラは必要ないとAppleが最近主張していることが、この状況をさらに悪化させている。上の画像を見れば、その意味は明らかだろう。少なくとも今のところ、仕事のインタビューやポッドキャストでは外付けカメラを使い続けるだろう(同じような照明条件で撮影しているが、Opalはデフォルトで画像を反転させることに注意して欲しい)。修正版が出たら、喜んで再挑戦する。

画像クレジット:Apple

カメラモジュールは事実上、新しいiPadに搭載されているものと同じなので、システムアップデートで修正されるのを期待したい。このようなシステムのチューニングは、ソフトウェア側で行われる場合が多いからだ。Matthew記者もStudioをしばらく使っていて、近々公開されるハードウェアに関する大きな記事の一部として、Studioについて説明する予定だ。その一部を引用する。

私たちが行ったテストでは、Studio Displayのカメラは、ローカルでもリモートでも、粒子が粗く、コントラストが低く、全体的に貧弱な画像を生成した。目の前の画像は、現時点では、2021年型24インチiMacのカメラが出力する画像よりも悪い。

ウェブカメラを初めて起動したときに、すぐに品質の問題に気づいた。他のデバイスともつないで確認したところ、MacOS 12.2を搭載したMacBook Proで使った場合、すばらしいとまではいえないものの、若干良くなることに気がついた。こうした違いがあることから、何らかの処理ミスがあるのではと推測している。私はAppleに、この結果が典型的なものであるかどうかを尋ね、サンプル画像とビデオを送った。検討の結果、Appleの広報担当者からは、システムが期待どおりの動作をしていないことと、カメラの性能に対応するためのアップデートを行うことが伝えられた。

それらのアップデートのタイムラインや具体的な内容はわからないが、AppleはStudio Displayのカメラ画質に問題があることを認識しており、修正に取り組んでいるとのことだった。このことは、購入の判断材料として知っておいて損はないし、アップデートで品質が向上するかどうかを確認できるまで待つ理由にもなる。

現時点では、ディスプレイ本体やインモニターオーディオの新基準を打ち立てたスピーカーの優れた性能に並ぶことはできない。

画像クレジット:Apple

Appleが「修理する権利」に関心を持ち始め、サステナビリティへの関心を広げている中で、ユーザー修理性は機会を逸したように思える。ケースを持ち上げて内側からファンを掃除したり、パーツを交換したりすることができれば、多くのユーザーにとってうれしい方向に向かうと思われる。しかし、Appleはその点については、まだコミットメントの準備が整っていない。必要が生じた場合には、ユーザーはApple正規代理店に持ち込む必要がありそうだ。つまり、おそらくWWDCで登場するだろうMac Proでは、モジュール性とアップグレード性が大きな差別化要因になる可能性が高いということだ。

画像クレジット:Brian Heater

iMacと同様に、Studioもデスクトップに置いて見栄えがする。背の高いMac Miniという形容が最も近いデザインで、Mini同様に丸みを帯びたコーナーとブラッシュドアルミニウムが特徴だ。最高にデザインされたMacと同じように、それはインダストリアルでありながら、冷たくはなく、同じアルミニウム製スタンドの上に置かれたStudio Displayの隣に置けば印象的だ。高さを調節できるスタンドオプション(2299ドル、税込4万4000円)や、縦長に傾けられるVesta Mountアダプターもある。少なくとも1人のTechCrunch編集者は、2台目のTweetdeck(ツイートデック)用モニターとして、これを欲しがると思う。

また、最大5台のモニター(USB-C経由で4台、HDMI経由で1台の4K)に対応し、その点でも大いに期待できる。今、Macに5台のスクリーンを接続する習慣がなくても事態はすぐに進展するものだ。テストしているStudioは、2799ドル(税込33万7800円)の構成だ。これに1899ドル(税込24万2800円)のディスプレイ(Nano-textureガラス版)を加えると、4700ドル程度(税込58万600円)になる。これに、Touch IDと数字パッドを備えた新しい黒いキーボード(税込2万800円)に、マウス / トラックパッド(99ドル[税込1万800円] / 149ドル[税込1万5800円])を追加すると良いだろう。気の弱い人や財布の薄い人には向かないマシンだ。

前回試用したIntel搭載27インチiMacより数百ドル(数万円)高く、単体のPro Display XDRとほぼ同じ価格だ。まあすべては相対的だよね?

Appleは、在宅勤務の推進に乗り遅れたことを反省しているに違いない。もし、新しいiMacとMac Studioが2020年の初めか半ばに発売されていたら、同社は大儲けしていたことだろう。しかし、それでも多くの人がオフィスに戻る日は来ないかもしれない。多くのユーザーはやはりiMacを選ぶだろう。しかし、映像や音楽など、リソースを大量に消費するクリエイティブな編集を行い、より大きな予算を持っているなら、これはすばらしいマシンだ。Mac Proは現時点では最後のクエスチョンマークだが、新しいStudioはほとんどの購入希望者にとって十分なマシンだ。

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画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

アップルが「M1チップ」搭載のiPad Air 5を発表、ノートパソコンの代わりに

米国時間3月8日開催されたイベントで、Apple(アップル)はピカピカの新しいiPad Airを発表した。M1 Appleシリコンチップが、私たちがよく知るiPad Airのボディに収められている。

A15チップではなくM1チップを採用したことは、iPadが単に大きくなったiPhoneではなく、ノートパソコンの代替品としての志を持っていることを示している。これは、iPad Proに搭載されているのと同じ種類のチップだ。iPad Air 5には12メガピクセルの超広角カメラが搭載され、iPadの全ラインナップが、ビデオ通話にカメラオペレーターを加えるセンターフレームをサポートするようになったことを意味している。

iPadのエンジニアリングプログラムマネージャーであるAngelina Kyazike(アンジェリーナ・カイザイク)氏は「これはiPad Proに搭載したのと同じM1チップで、8コア設計のCPUは前世代のiPad AirのA14に比べて最大60%高速のパフォーマンスを実現します」と発表した。「8コアのGPUは驚くべきグラフィックス性能を発揮し、実際、最大2倍の速さを実現します。新しいiPad Airに搭載されたM1は、最も速い競合タブレットよりも速く、同価格帯のベストセラーWindowsノートパソコンよりも最大2倍速くなっています」。

新しいiPad Air 5を紹介するiPadのエンジニアリングプログラムマネージャー、アンジェリーナ・カイザイク氏

新しいiPadは5Gチップを搭載し、従来よりも高速なUSB-Cポートを備え、Apple Pencilをサポートする。より優れたマルチタスクを可能にするiOSのiPadOSバージョンを搭載し、驚くような価格のデバイスに、率直にいってとんでもないパワーを詰め込まれている。

IPad AirはSmart Keyboard FolioとMagic Keyboardをサポートしており、ユーザーがiPad Airを機能的なノートパソコンにするために必要な追加機能が追加されている。

気候変動に敏感な筆者としては、Appleが持続可能性に向けた取り組みを続けていることに勇気づけられる。新しいAirは、筐体に100%リサイクルされたアルミニウムを採用し、ロジックボードのはんだなどにも多くのリサイクル素材を使用している。どれも小さなことだが、違いを生む。

スペースグレイ、スターライト、ピンク、パープル、ブルーと虹のようなカラーバリエーションが用意されている。価格は従来のiPad Airと同じ599ドル(日本での価格は税込7万4800円)を維持し、3月11日から注文を受け付け、3月18日に出荷を開始する。

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画像クレジット:Apple

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルの次期ハードウェアイベントは3月上旬か、新iPhone SE、iPad Air、27インチiMac Pro登場のウワサ

Bloombergによると、Appleは3月8日前後に次のハードウェアイベントを開催する予定だ。このイベントでは、第3世代のiPhone SE2020年のiPad Airの後継モデル、Apple Siliconチップを搭載した新しいMacが発表されるという。BloombergのMark Gurman(マーク・ガーマン)氏は、この日程は以前AppleがSEのデビューのために設定した3月から4月のタイムフレームと一致するが、潜在的な生産の遅れにより、同社が計画を変更せざるを得なくなる可能性があると警告している。

これまでどおり、記事ではiPhone SEシリーズとしては初となる5Gに対応すると報じられている。また、より高速なプロセッサやより優れたカメラも搭載されると予想されているが、現行モデルのiPhone 8時代のデザインは維持されるという。新型iPad Airにはプロセッサが刷新され、5G接続が追加される。Bloombergは、Appleが同イベントで発表するかもしれない新型Macについて多くを語らなかったが、最近のほとんどの報道では、同社が27インチのiMac Proの新モデルを発表すると指摘している。

新しいiPhone SEの話がいまいち盛り上がらなかった人への朗報は、AppleがiOS 15.4も2022年3月前半にリリースするとBloombergが報じていることだ。このアップデートでは、マスクを着用していてもFace IDでiPhoneのロック解除できる機能が追加される予定だ。

関連記事:ついにマスク姿でもiPhoneのロック解除可能に!アップルの最新ベータ版OSはマスク着用に対応したFace IDや待望のユニバーサルコントロールを提供

編集者注:本記事の初出はEngadget。執筆者のIgor BonifacicはEngadgetの寄稿ライター。

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Hiroshi Iwatani)

インテルの第12世代CoreプロセッサーはアップルM1 Maxより性能も消費電力も高いと明らかに

インテルの第12世代Coreプロセッサー「Alder Lake」はアップルM1 Maxより性能も消費電力も高いと明らかに

Intel

今年10月、アップルは新型14インチとおよび16インチMacBook Proとともに、最新AppleシリコンのM1 ProとM1 Maxを発表しました。ほどなくインテルが第12世代Coreプロセッサ「Alder Lake」を正式発表しましたが、その性能がM1 ProとM1 Maxをはるかに凌駕しながらも、代償として消費電力が高くなっているとのベンチマーク結果が公開されています。

第12世代Coreプロセッサの中で注目が集まっているのは、最上位モデルのCore i9-12900Kです。これには8基のPコア(高性能コア)と8基のEコア(省電力コア)が搭載され、高いパフォーマンスと電力効率の両立がうたわれています。

第12世代Coreプロセッサはデスクトップ向けですが、アップルのM1 ProおよびM1 Maxも今後27インチの新型iMacへの採用が噂されており、これらの性能を比較するのは興味深いことと言えます。

さて最初に登場したCore i9-12900Kのベンチマーク結果は、定番テストアプリGeekbenchの公式集計サイトGeekbench Browserに投稿されたものです。それによると同プロセッサの平均マルチコアスコアは約1万8500に対して、M1 ProおよびM1 Maxの平均マルチコアスコアは約1万2500であり、約1.5倍の数値となっています。

これだけ見ればCore i9-12900Kの性能は圧倒的ですが、ハードウェア情報サイトAnandTechは追加のベンチマークを公開しています。そちらでもCore i9プロセッサがM1 ProおよびM1 Maxよりもかなり高速であるには違いありませんが、同時にはるかに多くの電力を消費していると確認できます。インテルはこのチップにつきベース周波数で最大125W、Turbo Boost時には最大241Wの電力を使用すると記載しています。

また下位モデルの第12世代Core i7-12700Kも、Geekbench 5の結果ではM1 ProおよびM1 Maxよりも高速ではあるものの、やはり電力を多く消費しています。

デスクトップならば無制限に電力を使っても問題がなさそうではありますが、より小さな電力かつ発熱の低さ(およびファンが回らないこと)や、モバイルで使うときのバッテリー駆動での効率を重視する人には、M1 ProおよびM1 Maxが用途に合っていると言えそうです。

アップルは2020年6月にMacをAppleシリコンに移行すると発表したさい、自社のチップが市場で最も高速になるとは言わず「ワット当たりのパフォーマンス」が業界最高になると約束していました。最新のM1 ProとM1 Maxも確かに公約を達成しており、デスクトップ向けとしても性能のために電力消費を(ある程度は)度外視するインテル製チップとは上手く棲み分けできるかもしれません。

(Source:Geekbench BrowserAnandTech。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

【レビュー】Appleの14インチMacBook Pro(2021)、新・旧機能の融合

TechCrunchスタッフのリアクションはすばやく、私の知る限り、全員共通だった。特定の新機能についてこれほど多くの同僚たちが心から興奮したところを見たことがかつてあっただろうか。MagSafeが帰ってきた。iPhoneバージョンではないオリジナル(あちらにも魅力がないわけではないが)。MacBookバージョンだ。2017年にApple(アップル)が、オールUSB-C / ThunderboltのMacBook到来とともにあっさりと見捨てたあのバージョンだ。

これが、新しいプロ向けノートパソコンの長文レビューの始まりとして奇妙であることはよくわかっている。MagSafeが、2021 MacBook Proの最重要ポイントではない。最大の特徴はほぼ間違いなく、新しいチップ「M1 Pro」と「M1 Max」だ。しかし、この独自コネクターは重要な縮図である。ポートに喜び、ポートに悲しみながらこのシリーズにこだわってきた長年の信奉者にとっては魅力的な目玉となる。

新モデルは全部のせノートパソコンではない。実際Appleはそういう製品を出さない。しかし、同社はいくつかの新機能を追加するとともに、多くのユーザーが消えてしまうことを恐れていたに違いないかつての大好物を復活させた。MacBookが進化する過程において、さまざまな機能がやってきてはいなくなった。去る2016年にヘッドフォンジャックが廃されたとき、Appleはそれを「勇気」と呼び不評を買った。あれはAppleが明確に時代の先頭にいた数多くの場面の1つだった。ただし、それは勇気の話だ。ものごとはいつも予定どおりに運ぶわけではない。

画像クレジット:Brian Heater

我々消費者は、変化を要求し、一方でそれについて不満をいう。我々を満足させるのは大変だ。中には、ヘッドフォンジャックやその前のディスクドライブのケースのように、メインストリームの消費者の利用形態が追いつき、多くの人にとってその機能がほとんど惜しまれないこともある。メーカーの勇み足だったこともある。USB-AからUSB-Cへの転換についていえば、あれは明らかに不可避な進化の兆候だった。しかしMagSafeを失ったのは痛かった。

そのコネクターは、幸いにも帰ってきた。改良された形状で。他にSDXCカードスロット(SD 4.0規格、UHS-I、UHS-II SDXCカード対応)、HDMIポート、そして現在のMacラインナップから消えていたファンクションキーの隊列(窮地にたたされたTouch Barを置き換えた)も。USB-Cポートは3つで、13インチモデルの4つから減った。ポートを失いたい人などいないが、HDMIとMagSafeの復活は多くの人が正当なトレードオフだと感じているに違いない。個人の意見だが。

Appleは、同社のパソコン製品ラインナップにとって長年基盤となっているクリエイティブのプロたちを奪還しようと組織的な努力を行った。そして、多くの意味で、新しいProモデルはその最も純粋な意思表示だ。それはパワフルで図体の大きいMacの未来を示唆するマシンであるとともに、過去のヒットをいくつか再現している。

1年経ってみると、2020年の13インチMacBook Proは一種の珍しい存在になるのだろう、2016年のMacBookと同じように。現在も14インチ、16インチモデルの13インチの姉妹として製品ラインナップに残っている。奇妙な位置づけだ。実際のところ13インチMacBookのDNAは、同時に発売されたAirとの共通点の方が多く、たぶんMacBook Pro LiteかMacBook Air+ のようなものだ。当時、2つのモデルに我々が期待したような違いは見られなかったが、2021年のProモデルは「差」をはっきりさせた。

新モデルの中心は、もちろん、Appleの最新シリコンだ。我々は2021年10月の「Unleashed(パワー全開)」イベントで新チップが登場することを予測していたが、Appleは2種類のチップで我々を驚かすことに成功した。M1 ProとM1 Maxだ。いずれもM1(同じ5nmアーキテクチャーで作られている)のパワーアップ版だが、ほとんどのユーザーのほとんどのシナリオでは、2つのチップの違いは取るに足らない。そもそもほとんどのユーザーのほとんどのシナリオでは普通の古いM1が十分仕事をこなす。しかし、Appleのデモがターゲットにしているのはほとんどのユーザーではない。それはクリエイター層という、3Dレンダリング、8Kビデオ編集をはじめとする10年前のノートパソコンでは不可能に近かった作業でシステムを限界まで押し広げる人たちだ。

画像クレジット:Apple

要約すると。

  • M1:160億トランジスタ、8 CPUコア、7/8 GPUコア、メモリ帯域幅68.25 GBps、最大メモリ16 GB
  • M1 Pro:337億トランジスタ、8/10CPUコア、14/16 GPUコア、メモリ帯域幅200 GBps、最大メモリ32GB
  • M1 Max:570億トランジスタ、10CPUコア、24/32 GPUコア、メモリ帯域幅400 GBps、最大メモリ64GB

AppleがProとMaxを発表した後、すぐに湧いた疑問はAppleが2つのチップをどう使い分けるかだった。結局、同社は正しい選択をしたと私は思う。Maxを両方のシステムのアップグレードとして提供した200ドル(日本では2万2000円)で。もちろん金額はすぐにかさむが、Apple.comのショッピングカートにとっては歓迎だ。AppleはM1 Max、10コアCPU、32コアGPU、64GB RAM、2TBストレージという構成のシステムを編集部に送ってくれた。


メモリのオプションは16~64GB(後者はMaxでのみ使用可)、ストレージは512GBから最大8TBまで選択可能。この構成のシステムは4100ドル(日本では税込47万5800円)。ストレージを8TBに増やすと5899ドル(税込67万3800円)になる(ちなみに16インチにすると約68万円を超える)。これはエントリー構成の1999ドル(税込23万9800円)より3900ドル(約43万円以上)高い。



このベンチマークはスペックの違いを裏づけている。GeekBenchのAppleシリコン向けシングルコア・テストは大きな違いを見せておらず、2020年MacBook Proの1711に対して1781だが、マルチコアのスコアは7549から1万2674と飛躍的に向上している。



このGFXBench Metalグラフィックテストでは、新しいGPUがAztecデモで3490フレーム(54.3fps)から7717.5(120fps)へ、オフスクリーン版で4981フレーム(77.4fps)から1万7981(279.6fps)へと急上昇している。前者では一部のNVIDIA GPUより劣っているが、後者では他を圧倒している。中でも特に注目すべきなのは、Appleが高い性能数値をほとんどのライバルより著しく少ない電力消費で実現していることだ。

画像クレジット:Brian Heater

本機が熱を持たないという表現は行き過ぎだ。アルミニウム筐体の底部は快適な温かさになるが、真実はといえば内蔵ファンを働かせるためにはシステムにかなりの負荷をかける必要がある。バッテリー持続時間も長い。1回の充電でApple TV+を17時間29分見ることができた(新作のドキュメンタリー、Velvet Undergroundはいい。なぜわかるかというと「何度も」見たから)。ちなみに復活したMagSafeによる充電は高速で、0から50%まで30分で充電できた(96または140Wの電源アダプター使用)。3つあるUSB-Cポートでも充電が可能(専用プラグを家に忘れた時に重要)だが、速度は落ちる。

MagSafeプラグにはすてきなブレイデッドケーブルが付いてくるが、外見を除けばみんなが知っていてほとんどの人が愛する簡単着脱プラグと驚くほどよく似ている。

新しいMacBookは新しい内部に合わせてデザイン変更もなされている。たとえば16インチモデルは先行機よりも厚く、重くなり、4.3から4.7ポンド(2.1、2.2kg)に、高さ0.64(1.62cm)から0.66インチ(1.68cm)に増えている。14インチは13インチの3ポンド(1.4kg)対して3.5ポンド(1.6kg)だが高さは小さな姉妹と変わらない。

2020年版Airを持ち歩いている1人(時々アパートを離れるとき)として、これは無視できる違いではない。私の大胆な憶測は(少なくとも今のかたちの)13インチMacBookの将来を危ぶんでいるが、薄くて軽いAirがいなくなることは想像できない。

画像クレジット:Brian Heater

14.2インチのディスプレイは大きくて明るい3024×1964画素。13インチの227ppiに対して254ppiだ。2020年の輝度500nitは、持続時1000ニト、ピーク時1600ニトへと上昇した。これはミニLEDアレイと120Hzのリフレッシュレートのおかげだ(ProMotionテクノロジーによって作業に適応する)。支えているテクノロジーは最新のiPad Proや多くのノートパソコンに見られるものと類似している。

MacBook Air 2020(左)、:MacBookPro 2021(右)

このリモートワーク時代にはありがたいことに、FaceTimeカメラがアップデートされ、2021年の新iMacと同じ1080pカメラになった。これは2020年のProとAirに搭載されていた720pカメラからのうれしいアップグレードで、これまでは画像処理技術とM1の性能に頼ってホワイトバランスの改善や画像ノイズを減らしていた。上の画像でわかるように、最新のAirと比べてかなり劇的な向上だ。

画像クレジット:Brian Heater

ベゼル(前面カバー)は前モデルより24%減少した。エッジ・トゥー・エッジまではいかないが、近づきつつある。この変更にともない、おそらく最も賛否を呼ぶ変更が、恐ろしいノッチ(切り欠き)の追加だ。このノッチの活発な評価についてはDevin(デビン・コールドウェイ)の記事を読んで欲しい。私は概してノッチにとらわれない立場で、つまり当然フルスクリーンがベストだが、ノッチが存在する理由も理解している。これは、Appleが4年前のiPhone X発売以来iPhoneで採用し続けているものだ。

関連記事:【コラム】アップルがMacBook Proにノッチを付けてしまった

先のイベントで会社がいうには「これはコンテンツに余分なスペースを与える実にスマートな方法であり、フルスクリーンモードでは16対10のウィンドウが得られ、見た目もすばらしい。これはシームレスです」。慣れるまでに少し時間が必要であることは間違いないと私はいっておく。

他のモバイル機器メーカーには、ピンホールあるいはスクリーン下カメラを採用しているところもある。後者は大部分が失敗で、画質が著しく損われる。Zoom会議の時代のウェブカムには決してあってほしくない事態だ。ノッチの採用は実質的にこれまでベゼルがあった上部にスクリーン財産が追加されたことを意味している。ほとんどの場合、適切な暗い背景や、フルスクリーン動画ならレターボックスの黒いバーが隠せないものではない。

しかし、フルスクリーンモードで、特にメニューシステムに依存の強いアプリにとっては厄介だ。メニューバーは自動的にノッチを回り込む。デベロッパーは何もする必要がなく、メニュー項目が隠されないうようにシステムがメニューバー移動する。これはノッチ対応はもちろんまだでAppleシリコンバージョンをまだ出していないAudacityの場合だ。ちなみにマウスポインターは、実質的にノッチの下を通過して動く。

14インチ画面以上のものが必要になった時(そういうときもあるだろう?)、ProチップはPro Display XDRを2台同時にサポートできる。Maxなら、Pro Display XDRと4K TVを動かせる。復活したHDMIポートは4K60およびHDRビデオに対応している。

画像クレジット:Brian Heater

キーボードはここ何年かMacBookラインナップにとって一種の弱点だった。うれしいことに、2020年同社はようやく実績ある機構に戻した。キーの固着や最終的にキーボード交換プログラムに至った惨劇を受けてのことだ。現在の構成は、ノートパソコンのキーボードではソフトな側に寄っているが、数年前の頑強な過ちより何光年も前進している。

Touch Bar(タッチバー)がそれ自身「頑強な過ち」に当たるかかどうかは視点の問題だが、Appleの予想に達しなかったことはかなりはっきりしている。キーボード上部に超薄型タッチディスプレイを置くことは理論上は興味深いアイデアだったが、定常的に触れ合った人が多くいたとは思えない。これは、好きになりたいけれども、最終的に存続する理由を正当化できずに提案を断念する類いのものだった。つまり、私は、それが消えゆくことを悲しまない1人だ。

画像クレジット:Brian Heater

完全な死を悼むにはまだ早い、なぜなら13インチMacBookにはまだ必死でしがみついていくのだから。しかし、まあ、その入力デバイスの未来は決して明るいとはいえない。代わりに、フルハイトのファンクションキーが戻り、Appleはその復活をすばらしい新機能として位置づけた。会社はこう書いている。

このたび、Magic Keyboardがフルハイトのファンクションキーを初めてMacBook Proにもたらしました。プロの愛するメカニカルキーの感触とともに。

キーには、明るさ、音声入力、音量、Spotlight、Siri、おやすみモード、音楽再生などが割り当てられている。さらに、常にTouch Barの最高の部分であったものを維持している。Touch IDだ。今度は2020年のAirに付いていた小さな突起ではなくフルサイズのキーだ。

画像クレジット:Brian Heater

MagSafeの復活と同じく、Touch Barの放棄は、新しいMacBookが数年来で最高と言われる主要な理由だ。彼らはいくつかの重要な ブレイクスルーを成し遂げてきた過去の世代のテクノロジーと学習に基づき、何よりもユーザーのフィードバックに耳を傾けて開発してきた。それは、うまくいかないものから離れ、うまくいくものを強化することを意味し、とりわけ重要なのは消費者にとって何がベストであるかを自分が知っていると思わないこと、非常に特化したクリエイティブのプロが相手となればなおさらだ。

税込23万9800〜67万3800円という価格は、みんなのためのMacBookという感じではない。ほとんどの消費者にとってはMacBook Airが役割を果たすかそれ以上だろう。しかし、マシンの限界を求めるような使い方をする人には、新しいProはMacBookライン最高の要素の集大成だろう。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルは新チップでテック業界を湧かせるが、ウォール街はあくびをする

Apple(アップル)がイベントで何かを発表しても、マーケットはほぼ反応しないことについてのおなじみの連載記事に、2021年もようこそ。

いやむしろ、Appleの株価は、同社自身が発表するものよりももっとずっと外部のイベントに対して敏感なようだ。同社による記者たちに愛想がいい長時間の発表の間、株価がNASDAQ総合よりも上がるとしたら、それはレアケースとなる。

そのことは今でも私たちにとってやや驚きだが、Appleのイベントは当日までに情報が十分リークしてしまうため、その日が来る前に新製品発表などは株価に織り込み済みになるのかもしれない。

そんな議論もおそらく必要なのだろうが、マーケットに関しては十分ではない。手は出すけど本格的ではない、なまぬるいというところか。本日のAppleは、PC用チップまで発表したのに、そのすごさは反映されなかった。そう、Appleは新製品M1 Proを詳しく紹介したし、M1 Maxチップだって驚異的だ。たしかに、これらの名前はいかにもベビーブーム世代らしい安っぽさだが、チップそのものは感動的な偉業ではないか。そしてAppleはその新チップを、一連の予想よりも高額なコンピューターに搭載している。

こんな考えもある。ハードウェアはすごい。しかしコンピューターの価格に対して高すぎる?この説は、どうだろう?しかもAppleの株は午後1時から2時までのイベントの間にNASDAQをかなり追っていた。下図のように。

この図における唯一の注目ポイントは、午後1時以降、Appleの最初の下降がNASDAQのもっと大きなテクノロジーコレクションの下降よりも急激であることだ。しかし、その後Appleはさらに急激に回復している。その結果、取引の全時間がまるで仮装だ。Appleも、他のテクノロジー株と同様に前進した。やれやれ。

私がAppleのエンジニアだったら、頭に来ただろう。おい、みんな見てくれ、すごいチップだぞ。長年インテルは、汚物を垂れ流して市場を食い物にしてきた。それができたからね!しかもそれなのに、ウォール街がまったく全然、感動しないなんて。

画像クレジット:Apple

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップル発表イベント「Unleashed(パワー全開)」でアナウンスされた内容まとめ

前回の大きな発表会から数週間しか経っていないが、Apple(アップル)はすでに次のイベントを開催した。

前回のイベントでは、iPhoneとApple Watchが中心だった。今回は?新しいチップ、新しいAirPods、そして新しいMacBook Proが主役だった。

ライブで見られなかった方のために、何が発表されたか要点をまとめてみた。

新しいAirPods

画像クレジット:Apple

ベースレベル(つまりProでない)AirPodsがアップグレードされる。新しい外観、空間オーディオのサポート、音楽や通話をコントロールするProラインの「フォースセンサー」、耐汗耐水性能の向上などだ。Appleによると、バッテリー駆動時間も改善され、1回の充電での駆動時間が5時間から6時間になったとのこと。新たにMagSafeでの充電に対応する。

第3世代のAirPodsは、本日より179ドル(国内税込価格2万3800円)で予約注文が可能、来週から出荷される。

関連記事:アップルが新デザインのAirPods(第3世代)発表、空間オーディオ対応

M1 ProとM1 Max

Appleは、2020年に独自の高速チップ「M1」を発表して人々の度肝を抜いた。今回、同社は「M1 Pro」と「M1 Max」という2つの新しいM1チップを発表し、さらにその性能を高めた。

Apple によれば、M1 ProのCPUはオリジナルのM1に比べて最大70%高速で、GPUスピードは最大2倍、32GBのユニファイドメモリ、200GB/sのメモリ帯域幅を備えている。

一方、M1 Maxでは、ユニファイドメモリが64GBにアップしている。M1 Pro、M1 Maxともに、CPUは最大10コア、GPUはProが最大16コア、Maxが最大32コアをサポートしている。

両プロセッサとも、非常に速くなることは間違いない。

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新しいMacBook Pro

画像クレジット:Apple

この新しいチップを有効に利用するために、Appleは新世代のMacbook Proを発表した。そして、MacBook Proの最近の変更点のうち、反発が多かったものについていくつか、同社にしては珍しく巻き戻す決断をした。

ハイライトは次の通り。

  • サイズは16インチと14インチの2種類
  • MagSafeが復活!Touch Barは廃止!SDカードスロットやHDMIなどのポートを搭載!
  • 120HzのProMotionに対応し、よりスムーズなスクロールを実現
  • このモデルでおそらく最も議論されるであろう点は、カメラ部分のノッチだ。これにより画面を少し大きくすることが可能だが、しかしそれは、ノッチデザインを意味する
  • カメラは1080pにアップグレードされ、Appleは低照度下での2倍のパフォーマンスを約束している
  • オーディオシステム全体が見直され、ツィーターとウーファーがより大きくなり、オーディオの忠実度が向上している。
  • 14インチモデルは1999ドル(税込23万9800円)から、16インチモデルは2499ドル(税込29万9800円)から

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その他の発表

  • SiriにApple Musicでテーマ別のプレイリストを再生させることができるようになった。例えば、リラックスするためのプレイリスト、ディナーパーティー用のプレイリスト、ハイキング用のプレイリストなどだ
  • Appleは、Apple Musicで新しく、月額5ドル(日本では480円)の「ボイスプラン」を提供する。基本的には、従来のインターフェイスを捨ててSiriだけで楽曲をリクエストしたいユーザーのための安価なプランだ
  • HomePod miniに、ダークブルー、オレンジ、イエローの3色の新色が追加された

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画像クレジット:Apple

画像クレジット:Apple

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Aya Nakazato)

アップルのMacBook Proがデザイン一新、新M1チップとMagSafeを採用した14・16インチモデル登場

Appleシリコンが搭載された初代MacBook Proが発売されてから1年も経たないうちに、Appleが早くも次のモデルを発表した。ご存知のように、2020年版のMacBook Proは、M1版のProとAirの境界線が完全には明瞭ではなかったために、少々売るのが難しい代物だった。

それを正そうとするべく、本日Appleが発表したのは、MacBook Proの新バージョンだ。この新バージョンでは、長年にわたって人気を博してきた薄型軽量の兄弟機(Air)との間に、より明確な線引きが行われている。

画像クレジット:Apple

この新しいシステムには、本日のイベントで発表された改良版チップである新しいM1 ProまたはM1 Maxが搭載される。この10コアのチップは、16コアのGPU(Proの場合)と相まって、M1チップの最大3倍のメモリ帯域幅を可能にするという。一方、MaxではGPUのコア数が一気に32に増える。明らかなのは、同社の主力ユーザーであるクリエイティブのプロたちを、2020年モデルとは違うやり方でターゲットにしていることだ。

2020年モデルとは異なり、今回のモデルでは14インチと16インチの2種類が用意されており、デザインも一新されている。高性能なアプリケーションのためにファンも内蔵されているものの、Appleによればそれが回ることはほとんどないという。また、今回のシステムでは、あまり好評ではなかったTouch Barが廃止され、代わりに物理的なフルファンクションキーが採用されている。

こうして1つのフィーチャーが去り、昔の人気者が戻って来た。Magsafeが復活したのだ(解き放たれたというべきだろうか)。この第3世代の充電機構は独自のポートを採用しているものの、ユーザーはこれまで通りにThunderbolt / USB-Cポートを使って充電を行うこともできる。そして、もちろんこのマシンにはたくさんのポートが用意されている。具体的には、3つのThunderbolt 4 / USB-Cと、HDMI、そしてSDXCカードスロットだ。

ベゼルを薄くする代わりに、iPhoneスタイルのノッチをディスプレイ上部に設けることでウェブカメラを収納している。うれしいことに、ウエブカメラはいまや日常となったリモート会議用に1080pへとアップグレードされており、より大きなセンサーと広い開口部を備えている(残念ながら4Kではないが、従来のモデルより改善されている)。

16インチ(正確には16.2インチ)ディスプレイの解像度は3456×2234、14インチ(同じく14.2インチ)ディスプレイの解像度は3024×1964だ。ピーク輝度は1600ニトで、リフレッシュレートは120Hz。さらに音声も大幅に改善されている。表面の多くを占めるグリル部の下には、4つのウーファーと2つのツイーターから構成される6つのスピーカーシステムが隠されている。

Appleによれば、これらのシステムはより高速な充電に対応しており、かつビデオ再生で最大21時間のバッテリー駆動時間を実現している。このノートパソコンの「野獣」は軽くはない。それぞれの重量は、4.7ポンド(2.1kgと2.2kg)と3.5ポンド(1.6kg)だ。14インチは税込23万9800円から、16インチは税込29万9800円からとなっている。またいずれのモデルでもM1 Max版へのアップグレードが可能で、24コアGPU版へは税込2万2000円、32コアGPU版へは14インチは税込4万4000円、16インチは税込5万4000円の追加料金がかかる。

本日より予約受付を開始し、来週、10月26日に発売される。また、13インチのProも当面は継続され、標準的なMacBookが担っていた役割を実質的に果たすことになる。

画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

アップルとインテルが台湾TSMCの3nm製造プロセスを使ったチップ設計をテスト中と報じられる

2022年のiPad Proプロセッサが最先端の3nmプロセスで製造される可能性が報じられる

TSMC

アップルが早ければ2022年にiPad Pro向けチップに3nmプロセス製造技術を採用する一方で、iPhone 14(2022年モデルの仮称)用のA16(仮)チップは4nmで製造される可能性があるとの噂が伝えられています。

日経新聞の英字メディアNikkei Asia(以下「日経」)報道によれば、アップルとインテルは台湾TSMCの持つ最新世代の製造技術を採用する初の企業となり、両社とも3nm製造プロセスを使ったチップ設計をテストしているとのことです。

さらに日経は、アップルの3nmチップはiPadに搭載される可能性が高いと伝えています。そうした最先端プロセッサを廉価モデルに投入するとは考えにくく、最新版ではMacと同じM1チップを搭載したProモデル向けになると思われます。

その一方でiPhone 14向けのA16にはスケジュールの都合(おそらく製造の歩留まりやリードタイムのため)から、現世代のA14 Bionic(5nm)と3nmの中間にあたる4nmチップが採用される見込みとの趣旨が述べられています。

iPhone 14向けチップが4nmプロセス製造になる見通しは、調査会社TrendForceも伝えていたことです。かたや2021年のiPhone 13(仮)向けチップについては、台湾DigiTimesが5nmプロセスを改良した「N5P」ですでに量産開始したと報じていました

半導体における製造プロセスとは、回路線幅のこと。おおむね10nm、7nm、5nmと数字が小さくなるほど同じサイズのチップに含まれるトランジスタ数が多くなり、性能とエネルギー効率の両方が高まる傾向があります

TSMCの公表したロードマップ表によれば、3nm技術は5nmよりも演算性能を10%〜15%向上できる一方で、消費電力を25%〜30%削減できるとのこと。その一方で、iPhone 13向けA15(仮)に使われると思しき5nm+(N5P)は前世代の5nmプロセスより演算性能が5%、消費電力が10%減るとされています。

以上はあくまでも一般論であり、アップルが独自設計したチップがその数値通りに進化するとは限りませんが、おおよその目安にはなりそうです。

M1チップ搭載iPad Proが発表された当時は「ついにiPadとMacのプロセッサが同じになった」と話題を呼びましたが、ゆくゆくはiPad ProがMacの性能を超えていく展開もありうるのかもしれません。

(Source:Nikkei Asia。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)Intel / インテル(企業)iPad(製品・サービス)TSMC / 台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(企業)日本(国・地域)

Appleシリコン「M1チップ」搭載MacでLinuxのネイティブ動作がついに実現、Linuxカーネル5.13が公式サポート

Appleシリコン「M1チップ」搭載MacでLinuxのネイティブ動作がついに実現、Linuxカーネル5.13が公式サポート

Linux Kernel 5.13がリリースされ、M1チップ搭載Macの公式サポートが表明されました。これは4月に可能性が言及され、5月にはLinux Kernel 5.13 RC(リリース候補)がリリースされたことに続くもので、足かけ数か月にわたる苦闘の末にこぎ着けたかっこうです。

今回の発表は、前回のRCと同じくLinux生みの親であるリーナス・トーバルズ氏が自らメーリングリストで行ったものです。そのなかでトーバル氏はKernel 5.13全体の規模はかなり大きく、2000人以上の開発者から 1万6000以上のコミット(マージを含めると1万7000以上)が行われるほどだったと振り返っています。

そんなKernel 5.13では、AppleシリコンM1チップを含むArmアーキテクチャに基づく複数のチップがサポートされています。これによりM1搭載のMacBook Air、MacBook Pro、Mac miniおよび24インチiMacでLinuxをネイティブに実行できるようになります。

これまでにもParallelsの仮想環境Corellium社の移植版によりM1 Mac上でLinuxを実行することは可能でしたが、いずれもネイティブ動作ではないため、M1チップの性能を最大限に引き出すことはできませんでした。それがAsahi LinuxプロジェクトのHector Martin氏ほか多数の開発者が力を合わせたことで、ようやく現実のものとなりました。

しかしLinux情報サイトPhoronixによると、Linux 5.13では「Apple M1に対する初期のサポートとして、基本的な機能は提供されるが、グラフィックスのアクセラレーションはまだ提供されず、さらに多くのことを解決しなければならない」とのことです。M1の仕組み、特にGPUの仕様が非公開で独特すぎるために移植が苦戦していることは、早い時期から伝えられていました。

最新の Linux Kernel 5.13 では、Landlocked LSM、Clang CFI のサポート、システムコールごとにカーネルのスタックオフセットをランダム化するオプションなどのセキュリティ機能が搭載。ほかFreeSync HDMIもサポートされており、いつの日かM1内蔵GPUの力も発揮できるようになることを祈りたいところです。

(Source:LKML Archive on lore.kernel.org。Via:9to5MacEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Asahi LinuxApple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)Arm(企業)OS / オペレーティングシステム(用語)オープンソース / Open Source(用語)Linux(製品・サービス)Linus Torvalds / リーナス・トーバルズ(人物)

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Apple

アップルがMacのプロセッサをインテル製から自社開発のAppleシリコンに2年かけて移行すると発表してから、1年以上が経過しました。その影響により、今後インテルのノートPC向けCPU市場シェアが大きく落ち込むとの予測が報じられています。

台湾の電子部品業界情報誌DigiTimesによると、M1チップを搭載した4台のMacとそれに続く(Appleシリコン搭載Mac)リリースにより、今年(2021年)のインテルはアップルからの受注のうち50%を失うとのこと。さらに、最終的にはアップルからの受注がゼロになることで、2023年にはインテルのノートPC向けプロセッサの市場シェアは80%を下回るとの見通しが述べられています。

そればかりか、アップルが自社開発した一連のArmベースプロセッサ(Appleシリコン)は、2022年にはインテルのシェアから大きな割合を奪う重要な役割を果たすとの情報筋の予想も伝えられています。

2023年にインテルのシェアが80%を下回るという概算は、具体的にはアップルに供給していた10%のシェアを失う一方で、AMDは10%のシェアを堅持するとの予想から。インテルはWindows PCやサーバー向けのCPU市場ではAMDとの熾烈なシェア争いを繰り広げる一方で、Macは一種の聖域ともなっていましたが、それが消え失せることは手痛い打撃となりそうです。

インテルはそうしたAppleシリコンが自社のビジネスに与える影響を認識しているようで、「Macにできないことがインテル製チップを搭載したPCにはできる」など複数のキャンペーンを展開しています。それに対しては結果的にインテル製CPUを採用した16インチMacBook Proを貶めていることや、MacがPCよりゲーム体験が劣るのはインテルと関係ない他社製GPUによるものではないかとの指摘もありました

現在のM1搭載Macは「低消費電力のわりに高性能かつ低価格」にこそ強みがあり、お金にも消費電力にも糸目を付けないインテル製チップ搭載のハイエンドPCにはピーク性能で及びません。が、32個もの高性能コアや128個ものGPUコアを搭載すると噂される次世代Appleシリコンが登場すれば、プロセッサ市場を一変させるゲームチェンジャーとなる可能性もありそうです。

(Source:DigiTimes。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

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アップルM1チップで「修正できない脆弱性」CVE-2021-30747が発見される、ただし悪用は困難

アップルM1チップで「修正できない脆弱性」CVE-2021-30747が発見される、ただし悪用は困難

Devindra Hardawar/Engadget

最新世代のMacが搭載するSoC 「M1」に修正不可能な欠陥が発見されました。ソフトウェア開発者のヘクター・マーティン氏が発見し”M1racles”と名付けたこの問題は、2つ以上の悪意あるアプリケーションが秘匿されたチャネルを構築して相互にやりとりできてしまうというもの。この通信はOSの機能を使わずに実行でき、異なるユーザー階層のプロセスをまたいでデータを相互にやりとり可能です。

ただ、マーティン氏によれば、この欠陥は”技術的には脆弱性”と言うことができるものの、実際にはほぼ無害と言って良いとのこと。なぜなら、この欠陥はMac内に保存されているデータを盗み出したり改ざんすることができず、外部からの感染ルートにもならないからなのだそう。

ただ、”技術的には脆弱性”であることに違いはないため、この欠陥には共通脆弱性識別子としてCVE-2021-30747が割り当てられました。マーティン氏も、この欠陥はあるプロセスから別のプロセスに密かにデータを送信できるという点で「OSのセキュリティモデルに反している」と述べています。

2018年初頭にインテル、AMD、Arm各社のCPUに発見されたMeltdown / Spectre脆弱性発見に関わった研究者のひとりマイケル・シュワルツ氏は、今回のM1チップにおける欠陥について「システム上のいかなるアプリケーションに関する情報を推測するためにも使用することはできない」と述べ「アプリケーション間の通信手段は他にもたくさんあり、それがひとつ増えたところでセキュリティに影響することはない」としました。ただし、「とはいえ、”意図しない通信経路”として想定外に使われる可能性はあるので、脆弱性と呼ぶのが妥当」だと述べ ”実質的に問題はないけど脆弱性” という、発見者と同じ認識を示しています。

ただ、もしこれがiPhoneのSoCで見つかっていれば話はまた違ってくるようです。”意図しない通信経路”はiOSアプリの安全性の要とも言えるサンドボックス構造をすり抜ける可能性があります。とはいえ、この場合2つのアプリが共にApp Storeの審査を通過して、さらにターゲットとなるiPhoneに共にインストールされる必要があるため、実際にiPhoneにこの脆弱性があったとしても、悪用の可能性は非常に低いと言えるでしょう。

要するに、この問題は問題ではあるものの問題なしと思っておいて良い、ということです。

(Source: M1raclesEngadget日本版より転載)

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【レビュー】アップルの24インチM1 iMac、明るい色とコンパクトさで「キュート」だが最重要ポイントは「M1」

2020年9月、私たちは27インチiMac(アイマック)のレビューをこのように締めくくった

「ここでの大きな疑問は、iMacの未来がどうなるのか――そしてそれを見るために私たちはどれくらい待たなければならないのか、というものだ。それはもちろん、何年も続くハードウェアのアップグレードに関する疑問だが、Arm(アーム)ベースのシステムが差し迫っていることや、再設計にまつわる噂があることで、それはさらに切迫したものになっている」。

このような状況から、このとき発表されたAppleの最新のオールインワンマシンは全面的に支持できるものではなかった。このような評価をしたのは私たちだけではなかった。それはこのコンピューターにとっての、そしてMac一般にとっての、奇妙なポジションだったのだ。2020年6月のWWDCでは、インテルから自社製チップへの移行という異例の発表が行われたが、その際にはハードウェアは一切用意されていなかった。

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その理由はもっともなものだった。開発者たちが実際の発売前に先立って対策をできるようにと、Appleが考えていたからだ。2005年以来、Macのラインがこのように大きく変化するのは初めてのことで、それはかなり困難なものになると思われた。15年というのは長い時間であり、それだけ多くのレガシーソフトウェアと闘うことになるからだ。すべてのmacOS(マックOS)ソフトウェアが完全に壊れてしまうわけではないが、開発者にとっては、同社が提供するMac Mini(マックミニ)開発者キットを使って、新しいハードウェアに最適化することが、最重要の方法であることは間違いなかった。発表時、新しいAppleシリコンへの完全な移行には2年を要するとAppleは語っていた。

画像クレジット:Apple

2020年11月には、Appleは最初のM1 Macとして、新しいMac Mini(マックミニ)、MacBook Air(マックブックエア)、13インチMacBook Pro(マックブックプロ)を発表した。TechCrunchは3つのシステムのレビューにはそれなりの文字数を費やしたが、最終的にMatthew(マシュー)記者が「Appleの新しいM1搭載MacBookは、Intelのチップを一夜にして陳腐化させるほどの印象的なパフォーマンスの向上を見せた」と簡潔に表現している。

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これは、そのわずか2カ月前に発売されていたオールインワン(iMac)に対して、厳しい印象を与えるものだった。根本的な再設計がしばらく行われていなかったシステムであっただけに、その厳しさもなおさらだ。発売から2カ月が経過したiMac 2020は、その時点ですでに古さを感じさせ始めていた。

画像クレジット:Brian Heater

そして2021年4月になって、Appleは立て続けに行ったハードウェアニュースの中で、新しいiMacを発表した。これこそが、私たちがずっと待ち望んでいたiMacだったのだと思えた。この新システムは、この10年間で最も根本的な再設計が行われたもので、超コンパクトな新フォームファクターの提供、リモートワーク時代の大きな考慮点であるオーディオとビデオの改善とともに、おそらく最も重要なものとして新しいM1チップが導入された。

画像クレジット:Brian Heater

2020年版iMacの最大の特徴は、まあ要するに「大きい」ということだった。パンデミックの間、日々の仕事の多くを27インチiMacで行っていた私は、今回の24インチiMacを前にして、この3インチ分の余剰がどれほど恋しいものかを思い知った。当初私は、20インチを超えたら、画面の大きさの違いは無視できるだろうと考えていたのだが、実際には他のものと同様、慣れるのには時間がかかることがわかった。

もちろん、すぐにわかる良い点もある。これまでのiMacと比較して、新しいデザインがいかにコンパクトであるかに、本当に驚いた。これまでの21.5インチから2.5インチサイズアップしたにもかかわらず、新システムは11.5mm(スタンドを含めると14.7mm)という超薄型を実現している

このシステムを包み込むテーマは「キュート」(cute、カワイイ)だ。この言葉を、私がテクノロジーに当てはめることは滅多にない。こういったときに一般的好まれるのは「クール」(cool、カッコいい)や「スリーク」(sleek、均整美がある)といった言葉だ。しかし、iMac G3の精神を真に受け継ぐものと感じさせるこの製品を表現するのに、これ以外の適切な言葉を見つけることができない。あのカラフルなiMac G3たちは、フォルクスワーゲンのニュービートルによって象徴される世紀末の年に、Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏がAppleで2度目の成功を収めるきっかけとなった。

もちろん、最初のiMacが登場してから約四半世紀の間に、スタイルの変化や、当然ながら縮小を続ける部品サイズなどにより、デザイン言語は劇的に進化してきた。フラットパネルのデザインは今世紀初頭に登場し、2012年頃に最新のデザインへと落ち着いた。確かに、その後も多くのアップデートが行われてきたが、Appleのデザインが大きく更新されないまま9年が経過したのはとても長かった。

画像クレジット:Brian Heater

Appleは、これまでの一見インダストリアルなデザインから、より温かみと受容性のあるデザインへと変化させている。ここでは色が大切だ。これは、TechCrunchの(仮想)オフィスで最も頻繁に議論された疑問だった。みんなが、どの色を選ぶかということを知りたがった。私はイエローを選んだ。明るく春らしくていい色だ。正直なところ、思っていた以上にゴールドがかっていて、明るい輝きがある。このシステムを購入するつもりなら、もし近くに行きやすいアップルストアがあれば、実際に訪問することをお勧めしたい。可能なら、実際に目でみることが本当に意味があるような製品なのだ。

そして、なんともすごいのがAppleはそのテーマを徹底していることだ。キーボードも、ケーブルも、かわいらしいパッケージもテーマにマッチしているし(そういう意味では開封するのも楽しい)、デスクトップの壁紙も、そしてOSボタンのようなちょっとした工夫もマッチしている。最後の2つは、当然ながら自分で少しずつ変えていくことができる。しかし、本体やキーボードまでもが、少しばかり強いこだわりを持っている。結局のところ、これはおそらく何年も持ち続けたいと思うようなものなので、決定を下す前に照明と室内装飾の両方を検討する価値がある。デスクトップパソコンの話をしているときに、このようなことを考えようというのは奇妙だとは思うが、まあ、iMacだからね。

同社は、新しいiMacが周囲の環境にどのようにマッチするかを確認するためのAR iOSアプリを提供している。これは巧妙な、そしておそらく有用なアプローチだ。また、このシステムの重さは10ポンド(約4.54kg)以下だ。これは正直なところ、これまでのデスクトップでは考えられなかった軽さだ。デスクトップの大きさを形容するのに「ポータブル」という表現は奇妙だが、特に他のデスクトップシステムと比較してみた場合は、ぴったりな表現かもしれない。少なくとも、必要に応じて部屋から部屋へと移動させる可能性が、まったくないとはいえない。

画像クレジット:Brian Heater

大まかに言えば、フロントデザインはこれまでのiMacと同様だが、ボトムパネルと大きなAppleロゴは、色のついたものに変更されている。ガラス面はスクリーンとそれを縁取る白いベゼルに高さが合わされている。ベゼルと下部のパネルを合わせると、ディスプレイの下にはそれなりの場所がとられているが、ここは内蔵部品や、コンピューターの底部全長にわたって配置されている下向きのスピーカーグリルが収納されている場所だ。一番上部には、新しくアップグレードされた1080pのHDウェブカムが装備されているが、これは全Macを通して初めてのことだ。

これまでのiMacと同様に、本体はスタンドに装着されている。少なくともイエローモデルの場合には、このスタンドはシステムの前面に比べて明らかに暗い色をしている。購入時にVESAマウントオプションを選ぶことができるが、スタンド自身はユーザーが交換できないように設計されている。ヒンジの動作はスムーズだ。ウェブカムのフレームに自分がよく収まるように、システムをしばしば上下に動かしたが、それも簡単に行うことができた。

画像クレジット:Brian Heater

左側には、昔からのお馴染みである3.5mmのヘッドフォンジャックがある。私は、ケーブルを側面や底面から迂回させる必要がある、ジャックの背面への配置よりも、この側面への配置の方が好きだ。

画像クレジット:Brian Heater

スタンドには、特に電源ケーブルを通すための穴が開けられている。Magsafe(マグセーフ)――おっと、マグネット式充電コネクタだった――は、思いがけない登場だった。昔のMacBookで提供されていたもののような簡単な接続解除が目的ではなく、ケーブルを簡単にカチリと固定させることが主眼だ。だが移動されない(少なくとも滅多に移動されない)デスクトップのケーブルにつまずく人は少ないのではないかと思う。

画像クレジット:Brian Heater

電源ケーブルの状況への大きな変化は、もちろん、電源アダプター本体にEthernetポートが追加されたことだ。特に、MacBookに慣れているユーザーには、このアダプターはかなり大きく感じられるだろう。とはいえ、たぶん邪魔にはならないだろう。このことによって、システムの背面からさらに余分なものがなくなり、コンピュータ自体の厚さをより薄くすることができた。有線接続にアクセスできる場合には、ほとんどの人にとってうれしい追加機能だ。

画像クレジット:Brian Heater

一方で、本体のポートそのものの状況は、あまりうれしいものではない。私はポート好きだ。なにしろコンピュータの背面に接続する必要があるものをたくさん持っているのだが、ポートはそれらを接続するのに最も便利な手段だ。エントリーモデルでは、Thunderbolt / USB(サンダーボルト / USB)ポートが2つ搭載されている。これは4つまでアップグレードできる。絶対にそうすべきだ。本心からそう言っておこう。そうしておいて悔やむことはない。

私はワイヤレスキーボードやトラックパッド / マウスをほとんどの時間、接続したままにしている人間だ。それがワイヤレスという目的に反していることはわかっているが、しかし、充電器の心配は、今の私には不要のストレスなのだ。これで2つのポートが必要となる。そこでAVアクセサリーをいくつかつないだら、ほーら!もうポートがないのだ。

1299ドル版(日本では税込15万4800円)のシステムには、Magic Keyboard(マジックキーボード)が同梱されている。これは最近のMagic Keyboardsとほとんど同じものだ。万人向けというわけではないと私は思っている。メカニカルキーボードが好きな人にとっては、触り心地に不満があるかもしれない。しかしそれはMacBookのものよりはステップアップしているし、私がそれを使い慣れているのも事実だ。ベースモデルにはテンキーがついていないが、カラーリングはMac本体とマッチしている。

画像クレジット:Brian Heater

1699ドル(日本では税込19万9800円)以上のモデルでは、デスクトップシステムでは長らく実現されてこなかったTouch ID(タッチID)を搭載したバージョンにアップグレードされる。他のMac(および古いiPhone)と同様に、指紋認証によるログインはほぼ瞬時に行われる。しばらく前からApple Watchを身に付けていれば、それでログインすることもできるようになってはいたが、デスクトップにTouch IDが追加されたのはすばらしいことだ。基本バージョンにはMagic Mouse(マジックマウス)が付属している。トラックパッドへのアップグレードは50ドル(日本では税込5000円)、両方注文すると129ドル(日本では税込1万3800円)だ。私はトラックパッドを気に入っているのでそのアップグレードを行うだろう(両方を必要とする人は多くないと思う)。

画像クレジット:Brian Heater

これまで同様、同社が製品ラインをUSB-Cに移行させてきたたくさんの理由を私は理解している。特に、デバイスの背面にどれだけのスペースが解放されたかを見ればそれは明らかだ。でも私には、2020年版のiMacにあったレガシーなUSB-Aポートが失われたことが残念だ。ともあれ、注文確定の前に、AからCへのUSBアダプターを2つほどカートに入れておくとよいだろう。ともあれ、それがAppleとともに生きるということだ。100%勇気あるのみ。

これは、AppleがiMac Pro(アイマックプロ)の復活に向けてM1ラインを位置づけていることを意味しているのだろうか。これまでもより奇妙なことは起きてきた。もちろん今は、AppleははるかにハイエンドのMac Pro(マックプロ)に注力している。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

期待どおり、新しいM1チップがシステムに新たな息吹を吹き込んだ。Geekbench 5のスコアを見てみよう。シングルが1720、マルチコアが7606だ。これは、21.5インチシステムの、平均1200と6400という結果を吹き飛ばすものだ。当然、Rosetta(Intel)版ではそれぞれ1230、5601と落ち込むが、トランスレーションレイヤーを介してもしっかりとした性能を発揮している。しかし、Appleが開発者たちに対して、新しいAppleシリコンへの移行を積極的に呼びかけてきた理由もこれで明らかになった。全体的に、これまでに発表された他の新しいM1システムと同様の成果が得られている。これはMacの未来に向けた、健全ですばらしい飛躍といえるだろう。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

自分のワークフローにどの程度の影響があるのかを知りたい場合は、この資料から調べ始めると良いだろう。全体的には、私の日常的なアプリのほとんどは問題ないことがわかった。もちろん、問題も多少はある。Spotify(スポティファイ)とAudacity(オーダシティ)がそれに当てはまる。どちらもパフォーマンスに影響があるものの、全体的にはRosettaを使って動作できている。しかし、使用にはより多くのリソースが必要となる。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

Spotifyの場合は、このApple Musicの競合会社が新バージョンにどれだけのリソースを投入したいかという問題だし、Audacityの場合は会社が自由に使えるリソースがどれだけあるかという問題だろう。もしMicrosoft(マイクロソフト)やAdobe(アドビ)のような大手企業でなければ、徐々に不確実性は増えていく。しかし、大手企業のサポートにも問題がある。たとえば私は、Zoom(ズーム)をAppleシリコン版にアップグレードしたのだが、私が使っている「Canon EOS」のウェブカメラソフトのインテルバージョンが動作しないことがわかったので、結局Zoomをダウングレードした。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

これは非常に特殊な問題であるとわかっているし、ワークフローも非常に特殊なものだ。しかし、M1システムがMacの主流になるに従い、最終的には開発者にも選択の余地がなくなる。Appleシリコンに対応していないと、時代遅れになるリスクがあるからだ。このような変化にともなう成長の痛みは避けることはできないが、結果がその痛みを正当化してくれる。AppleシリコンはMacの未来であり、それはまさに、起動が速くスムーズに動く未来なのだ。

私が仕事でビデオを撮るときに使っている外部マイクやカメラの話をすると、Appleチームから怒られるのが目に浮かぶ。なにしろ新しいiMacは、これらの機能に対して久しぶりの大きなアップグレードを行ったからだ。パンデミックによって仕事や会議のやり方が変わり始めていた2020年なら、新しいマイクシステムや、Macに搭載された初の1080p HDカメラを導入するのには最善な時期だっただろう。次善の時期は、もちろん今だ。

Appleは2020年のMacBookではカメラシステムの改善を宣伝していたが、それはチップ上の画像信号処理に関係するものだった。それはホワイトバランスなどの改善にもつながるものの、本当に意味のある映像の改善には、一般にカメラの新しいハードウェアが必要となる。以下の画像を見て欲しい。

画像クレジット:Brian Heater

左が2020 iMac、右が新しいM1 iMacだ。(できれば)私のたわんで半分麻痺したような顔(2020年だよな?)は一瞬忘れて欲しい。画像は夜と昼のものだし、この後、パンデミックの日々を重ねて、多少ましになったからというわけでもない。720pから1080pへのアップグレードによる変化は、画質の違いとしてすぐに現れている。今やテレビ会議は生活の一部になっているので、Appleが全面的にシステムをアップグレードすることを期待していた。

iMac 2020

iMac 2021

カメラに加えて、マイクシステムも改良された。2020年11月に旧システムで録音したものと同じ内容のものを再び録音してみた。3つのマイクアレイはより鮮明で、バックグラウンドノイズの多くを取り除き、よりクリアなものとなった。また、6スピーカーのオーディオシステムも改善されている。音楽や映画の再生には適しているものの、リモート会議では相手のマイクの質によってはクリアさに欠けることがあった。オーディオは、私の好みとしては少し低音が強いかもしれない。

全体的に見て、ほとんどの人が日常的に使用するには、今回のオーディオとビデオのアップグレードは十分だと思う。たまにZoom通話をしたり、音楽を聴いたりする程度の用途であれば、問題ないだろう。だが、これらの製品から何を得ようとしているのかにもよるが、適切な外付けカメラ、マイク、スピーカーを買うのは決して悪い投資ではない。

新型iMacは、デスクトップ型オールインワンの基本的な部分で大きな飛躍を遂げていて、長い間改良の必要性が指摘されてきた同社の最も人気のあるシステムの1つに、新たな息吹を吹き込んでいる。繰り返すが、私は失われたポートを懐かしんでいるし、今では2020年のモデルにSDリーダーが搭載されていたことを夢のようだったと思い返している。いずれは27インチのシステムも登場して欲しいと思う(つまりiMac Proのリブートということ。賛成の人いるよね?)。全体的にみて、これまでの他のモデルに比べて、クリエイティブなプロをターゲットにしたシステムではないものの、それでもM1と搭載されたML(機械学習)は、オーディオ、ビデオ、静止画に対するすばらしい編集機能を備えている。

しかし、カラーコーディネイトされたキュートなデザインや、長い間待れていた遠隔会議機能のアップグレードはさておき、これまでのMacBookやMac Miniと同様に、ここでもApple Siliconが主役を果たしている。このシステムの価格は、発表当初、周辺ではちょっとした騒動のもととなった。すべての機能を搭載した最上位レベルでは2628ドル(日本では税込30万1600円)となるが、最小限のモデルは1299ドル(日本では税込15万4800円)なのだ。

最も基本的なレベルとして、3つの主要な構成が選べる。

  • 1299ドル(税込15万4800円):8コアのCPUと7コアのGPU、8GBのRAM、256GBのストレージ、2つのUSBポート、標準のMagic Keyboard
  • 1499ドル(税込17万7800円):GPUを8コアにアップグレード、Ethernetと2つのUSBポートを追加、キーボードにTouch IDを搭載
  • 1699ドル(税込19万9800円):ストレージを512GBにアップグレード(私たちが試用した構成)。

このシステムは現在予約を受け付けており、今週の金曜日以降顧客の手元に届く予定だ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleiMacApple M1Appleシリコンレビュー

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

いよいよ発売となりますApple新iPad Pro 2021年モデルに少し早く触れる機会がありましたので、動画も交え、実機の細部を一緒にチェックしていけましたらと思います。

新しいiPad Proは、これまで同様11インチ(第3世代)/12.9インチ(第5世代)の2サイズあり、それぞれシルバー/スペースグレイの2色、Wi-Fiモデル/セルラーモデルが用意されています。価格は11インチが9万4800円〜、12.9インチモデルは12万9800円〜となっています。

本稿で紹介するのは12.9インチ、シルバーのセルラー(5G)・メモリー1TBモデルで、価格は23万1800円(税込)

本稿で紹介するのは12.9インチ、シルバーのセルラー(5G)・メモリー1TBモデルで、価格は23万1800円(税込)

パッと見は2020年発売の第4世代とさほど変わりませんが……

パッと見は2020年発売の第4世代とさほど変わりませんが……

セルラーモデルはついに5G対応。引き続きeSIMもサポートしますので、キャリアだけでなくMVNOの豊富なプランから選択できるわけですね

セルラーモデルはついに5G対応。引き続きeSIMもサポートしますので、キャリアだけでなくMVNOの豊富なプランから選択できるわけですね

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最新Macと同じM1チップを搭載

AppleのM1チップを搭載し、2020年ProのA12Z Bionicと比較しパフォーマンスは約2倍、グラフィック性能は40%向上しています。2020年10月に発売されたiPad Air(第4世代)はA14 Bionicを搭載し、一部ベンチマークテストでiPad Proを超えることで話題となりましたが、M1チップの搭載で首位奪還です。

Geekbench 5によるテスト結果(平均値ではありません)

Geekbench 5によるテスト結果(平均値ではありません)

内蔵ストレージの容量は128GB、256GB、256GB、512GB、1TB。それに加え、今回は2TBのモデルも用意されます。価格は跳ね上がりますが、1TB・2TBモデルはRAM(メモリー)がほかのモデルの2倍となる16GBに。

私のような仕事(記者)で、16GBのRAM(メモリー)をフル活用するシーンがなかなか思い浮かばないのですが、解像度の高い動画を何本も編集したり、レイヤーを何重にも重ねて作業したりするプロ・クリエイターの方にとって、上位モデルはより魅力的となったのではないでしょうか

私のような仕事(記者)で、16GBのRAM(メモリー)をフル活用するシーンがなかなか思い浮かばないのですが、解像度の高い動画を何本も編集したり、レイヤーを何重にも重ねて作業したりするプロ・クリエイターの方にとって、上位モデルはより魅力的となったのではないでしょうか

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60万円相当の画質

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん
12.9インチのモデルは、Liquid Retina XDRディスプレイ(ミニLED)を搭載しています。すごく簡単に言うと、液晶と有機ELの「いいとこ取り」をしたモノです。ピーク輝度は1600ニト、100万対1のコントラスト比となっており、60万円近くするAppleのPro Display XDR(32インチ)とほぼ同じクオリティーで映像を楽しんだり、実物に近い色味で写真や動画の編集作業が行なえたりします。

Liquid Retinaディスプレイを液晶を搭載した前モデル(右)と並べると、黒の部分とその周囲がよりハッキリ出ているのがわかります。肉眼だと部屋を暗くしなくてもわかるくらい結構違っています

Liquid Retinaディスプレイを液晶を搭載した前モデル(右)と並べると、黒の部分とその周囲がよりハッキリ出ているのがわかります。肉眼だと部屋を暗くしなくてもわかるくらい結構違っています

繰り返しになりますが、このLiquid Retina XDRディスプレイを搭載するのは、大きいほうの12.9インチモデルのみ。ミニLEDを採用したことで、12.9インチは従来より0.5ミリほど本体の厚みが増しています(左が新モデル)

繰り返しになりますが、このLiquid Retina XDRディスプレイを搭載するのは、大きいほうの12.9インチモデルのみ。ミニLEDを採用したことで、12.9インチは従来より0.5ミリほど本体の厚みが増しています(左が新モデル)

関連記事:12.9インチM1 iPad Pro、「Liquid Retina XDR」採用。1万個以上のミニLEDバックライト搭載

なお、厚みが増したことで、12.9インチ用の純正キーボード・カバー類に関しては、第3世代のものは非対応となっています(第4世代のものは第3世代にも対応)。

……のはずですが、第3世代用Magic Keyboardを第4世代で試したところ、問題なく使えてしまいました。カバーもちゃんと閉まります。経年劣化で緩んでいた可能性もありますし、Appleが非対応としているのですから、お高いですが本体を買い替えた方は、一緒に新バージョンを買っておくのが無難かと

……のはずですが、第3世代用Magic Keyboardを第4世代で試したところ、問題なく使えてしまいました。カバーもちゃんと閉まります。経年劣化で緩んでいた可能性もありますし、Appleが非対応としているのですから、お高いですが本体を買い替えた方は、一緒に新バージョンを買っておくのが無難かと

カメラもiPhone級に

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん
背面のメインカメラは、2020年モデルと同じ仕様のデュアルレンズ構成ですが、iPhone 12と同じSmart HDR 3に対応。AIが細部を自動調整してくれます。

空などをAIが判別し、より自然に見えるよう処理してくれます

空などをAIが判別し、より自然に見えるよう処理してくれます

ビデオ会話が快適に

フロントカメラは従来の700万画素から1200万画素になりました。視野角も122度と広くなっています。新たにセンターフレーム(一部地域ではセンターステージ)という機能が備わり、FaceTimeやZOOMなどのビデオ会議で、発話者が自動で中央に表示されるようになっています。

センターフレームはデフォルトでオンに(設定でオフにもできます)

センターフレームはデフォルトでオンに(設定でオフにもできます)

実際に、お友達と試してみました。

FaceTime

FaceTime

Zoom

Zoom

センターフレームは、サードパーティアプリ向けにAPIが公開されていて、ZoomやWebexなどがすでに対応しています。純正アプリのFaceTimeでは、話者に向かって迫っていく感じで、インタビュー映像のようになりましたが、Zoomだと左右調整がメインに行なわれるようです。ユーザーはオン・オフしかできませんが、デベロッパーは細かくカスタマイズできるのかもしれません。

センターフレームは、カメラが広角になり、かつ解像度が上がったため、自動で顔をトリミングしても画質が荒くならないよう常に調整できるようになったため実装できた機能です(なので、オフにすると画角が広角になります)。

モバイルデータ通信の設定で、5Gのデータ使用量を「より多く」に許可し、FaceTimeで会話してみたところ、遅延がなく画質も綺麗、そのうえ自然に顔がフォーカスされてるので、まるで実際に会って話しているような感覚。ほとんどストレスを感じませんでした。ビジネスでFaceTimeを使うシーンは少ないかもしれませんが、ご家族やお友達とぜひ試していただきたいです。

LAN直差しで10Gbps

端子は最大転送速度40GのThunderbolt 3対応に

端子は最大転送速度40GのThunderbolt 3対応に

USB端子がThunderbolt 3対応になり、外部ストレージからの高速転送や6Kディスプレイへの出力も行なえるようになりました。また、LANアダプターを介せば有線イーサネットも10Gbpsの速度で接続できます。

Magic Keyboardにホワイトが新登場

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん
アクセサリーは、これまで通りApple Pencil、Magic Keyboard、Smart Folioカバー、Smart Keyboard Folioが用意されます。このタイミングからMagic Keyboardのホワイトが登場しました。

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

ホワイトになっただけで、雰囲気がずいぶん違ってきますね

ホワイトになっただけで、雰囲気がずいぶん違ってきますね

一緒に持ち歩くと1.4キロ近くと相変わらず重量級ではあるのですが、5Gも搭載しているので性能から考えたら十分コンパクトなモバイルワークマシンと言えるかと

一緒に持ち歩くと1.4キロ近くと相変わらず重量級ではあるのですが、5Gも搭載しているので性能から考えたら十分コンパクトなモバイルワークマシンと言えるかと

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさんニューiPad Pro、ポイントはM1になったことによるパフォーマンスの向上と細部のパワーアップ、5G対応、そして12.9インチは液晶と有機ELのいいとこ取りとしたミニLEDを初登載している点です。

私は個人的に音楽のライブ配信をよく見るのですが、音質、画質、それと互換性(サービスによってはTVなどに飛ばせない)といったあらゆる面から、この新しい12.9インチのiPadが現状、最もライブ配信の視聴環境として優れていると確信しています。また、ゲームもよくするのですが、暗所の表現が多いゲームは、より引き締まった絵で楽しめるので大迫力です。

World of Demons - 百鬼魔道

World of Demons – 百鬼魔道

よりモバイルの機動力を重視する方には11インチモデルもオススメです。iPad Airと迷いそうですが、さらに高パフォーマンス、5G、4スピーカーシステムにセンターシフト、パワーアップポイント満載です。

<オマケ情報その1>

動画には入れてない細かいお話。フロントカメラ周りのセンサー類は、微妙に位置が変わっています。保護フィルム等を貼られる方が多いと思いますが、お買い求めの際は「2021年モデル対応」の表記を確認されることをオススメします。

前モデル用を貼ると、センサーに少し被ってしまいます

前モデル用を貼ると、センサーに少し被ってしまいます

<オマケ情報その2>

iMacに付属するMagic Keyboardを、新iPad Proとペアリングしたらフツーに使えました。ただ、Touch IDは動きません(M1 Macなら動きますが、M1 iPadはNGのようです)

いずれにせよ単体売りはされないキーボードなので、あまり意味はありませんが……

いずれにせよ単体売りはされないキーボードなので、あまり意味はありませんが……

新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義

iPad Pro 2021 はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)レビュー(用語)日本(国・地域)

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義iPad Pro 12.9インチ(第5世代)をアップルから借用し、ひと足早く試す機会を得た。

12.9インチモデルを触る前は、正直言って「次に買い換えるとしたら、11インチモデルで十分かも」と思っていた。そもそも、12.9インチは携帯するにはちょっと大きすぎる。かつて12.9インチモデルを購入して持ち歩いていたが、その大きさを持て余していた。結局、出先で気軽に使うには11インチの方がしっくり来るというのが結論に辿り着いたのだ。

しかし、実際に第5世代のiPad Pro 12.9インチモデルを触ってみると、その信念が大きく揺らいでしまった。

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【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
12.9インチが持ち歩くにはちょっと大きいというのは間違いのない事実だが、使い勝手の面において、やはり「大画面は正義」と感じてしまう。ここ最近、増えてきた動画処理をする上でも画面は大きい方がいいに決まっている。

今回、12.9インチモデルを実際に触って、信念が揺らいだ理由の一つがLiquid Retina XDRディスプレイだ。ミニLEDを1万個以上内蔵し、コントラストを100万対1に引き上げている。実際に触る前は大したことないとたかをくくっていたが、実物を目にすると確かに良い。

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
映像や写真などでは暗い部分がしっかりと暗くなっており、明暗がハッキリした表現になっているのだ。自分で撮った映像や写真のみならず、動画配信サイトの映画やドラマ、さらにビデオ会議や記者会見の映像までもパッキリと見えるから不思議だ。

今までのiPad Proと見比べてみると、全体的に明るくなってしまっているのだが、新しい12.9インチモデルは、黒い部分がしっかり黒い。有機ELディスプレイのiPhone 12シリーズに近いといえよう。もちろん、iPad Proの方が大画面なので、視聴しやすいメリットもある。

すでに新しい11インチモデルを予約済みであり、「12.9インチの方が良かったなぁ」とかなり迷い始めた。

そしてもう一つ、iPad Pro 12.9インチモデルを触って、悩ましいと感じたのが処理のレスポンスだ。

新しいiPad Proは、11インチと12.9インチ、いずれもM1チップを搭載している。もともと、iPadOSはサクサクと処理をこなせるのが魅力だが、チップセットがMacBook Proと同等になったことで、さらにサクサク度が増した。

LumaFusion利用イメージ

LumaFusion利用イメージ

実際にすでに使い倒しているiPad Pro 11インチモデル(第2世代、メモリ容量6GB)と、新しいiPad Pro 12.9インチモデル(第5世代、メモリ容量16GB)で動画編集(LumaFusion)を比較してみると、第5世代iPad Pro 12.9インチモデルの方が遥かに快適に動く。

第2世代iPad Pro 11インチモデルでは、写真や動画を読み込む際、最初にボケた状態で出たのちにクッキリとした写真や動画が表示されるのだが、第5世代iPad Pro 12.9インチモデルであれば、最初からクッキリとした写真が動画が出てくるのだ。一瞬の違いなのだが、このストレスがあるかないかは意外と大きい。

ちなみに今回のiPad Proは、本体容量が128GB、256GB、512GB、1TB、2TBの5モデルが存在する。容量の小さい3つはRAM容量が8GB、1TBと2GBは16GBだ。

文書作成やメール処理などであれば8GBで十分だろうが、アプリを頻繁に切り替える、例えば、写真アプリで加工し、その画像や映像などの素材を動画編集アプリで編集する、といったiPad Proの性能をフルに引き出す使い方をするのであれば、本体容量1TB以上を選ぶのが望ましいのかもしれない。

個人的にこれまでiPad Proを長年使ってきているが、iCloudを活用していることもあり、256GBモデルであっても、あと100GB以上の容量が余っている。今回も11インチモデルの256GBで十分かな、と思いつつ、今触っている12.9インチ 1TBモデルの快適さを実感すると、どれを買うべきか、改めて悩ましくなってしまっているのだ。

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
さらにiPad Proを選ぶ上で、絶対に揺らがないのが「買うならセルラー版」という信念。人によっては「Wi-Fiのみか、セルラーも使える方か、どちらかにしようか」と悩む人も多いだろう。

価格差が2万円弱あるので、コストを考えたらWi-Fi版となるかもしれないが、使い勝手を考えるとやはり携帯電話のネットワークに繋がった方が便利なのは間違いない。

今回のiPad Proは5Gにも対応する。自宅ではかろうじてソフトバンクの5Gが繋がるのだが、だからと言って、劇的に高速というわけでもない。どうやら、4G周波数帯の転用らしく、5Gと表記はされるが、中身は4Gみたいなものだ。とはいえ、4Gでもそれなりの速度が出るから快適だ。

今は緊急事態宣言で、自宅で5Gに繋いで喜んでいるだけだが、あと数か月もすれば、街中に出て、5Gに繋ぎ、iPad Proで仕事をしまくることだろう。公衆Wi-Fiはセキュリティ面でどうしても不安があるだけに「いつでもどこでも安心して繋がるキャリアネットワーク」にすぐにアクセスできるiPad Proのセルラー版が手放せないのだ。

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
iPad Proには「センターフレーム」というテレビ会議の際、自分をセンターに映し出してくれる機能が備わった。これまで自分を正面に映そうとする場合、パソコンやiPad Proを机の上だけでなく、さらに台を持ってきて、その上に置くなどの工夫が必要だった。しかし、センターフレーム機能があれば、そうした努力は不要。自動で自分の顔をセンターにして相手に映し出してくれる。コロナが落ち着いても、ビデオ会議は続きそうなだけに、これからも便利な機能として使えそうだ。

今回のiPad ProはM1チップが載り、本体容量も2TBまで選べるなど、もはやパソコンと比較する製品となった。iPadシリーズ全体で見ると幅広い価格帯となっており、エントリーモデルは、それこそ、GIGAスクール構想など、文教市場を狙った製品と言える。一方で、iPad Proはその名の通り、Proユースを意識したスペック、使い勝手となっている。

1秒でも無駄にしたくない、出先でも俊敏に仕事をこなしたい人には、iPad Proが心強い相棒になってくれることだろう。

iPad Pro 2021 はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台
新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

(文:石川温、Engadget日本版より転載)

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新iPad ProもApple M1チップ搭載

カテゴリー:ハードウェア
タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)レビュー(用語)日本(国・地域)

【レビュー】iPad Pro 2021 はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台

12.9インチ版のiPad Proで、5G通信機能を試した

12.9インチ版のiPad Proで、5G通信機能を試した

MacBook Airなどと同じM1チップを採用し、5Gにも対応したiPad Proの発売が迫ってきています。発売に先立ち、筆者も実機を試用することができました。パフォーマンスの高さやディスプレイの美しさは別の記事に譲るとして、ここでは、シリーズ初となる5G対応に関してあれこれレビューしていきたいと思います。筆者が今回、もっとも注目していたのもこの機能です。
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M1チップを搭載したiPad Pro発表。Thunderboltに5G対応
M1搭載の新 iPad Pro vs 前世代比較。12.9インチ版はLiquid Retina XDR搭載

と言っても、ユーザーが何か特別なことをする必要はありません。セルラー版を購入して、5Gに対応するキャリアのSIMカードを挿せばOK。ドコモ、au、ソフトバンクの大手3キャリアの場合、スマホのメイン回線と組み合わせることができる「データプラス」などのいわゆるシェアプランがあるため、料金的にはそれを利用するのが手っ取り早いでしょう。2枚目のSIMカードは1枚目と容量をシェアする形ですが、主回線が無制限の場合、30GB前後の制限があります。

設定項目は、ほぼほぼiPhone 12シリーズと同じ。「設定」の「モバイルデータ通信」で「通信のオプション」を選ぶと、「データ」と「データモード」で5G接続の挙動を変更することができます。前者のデータは、5G対応のSIMカードを挿すと、常時5Gが有効になる「5Gオン」と、自動で5Gをオフにすることがある「5Gオート」を選択可能。何らかの理由でオフにしたい時には、「4G」を選択すればOKです。

5Gの設定項目は手順などが少々異なるものの、ほぼiPhoneと同じ

5Gの設定項目は手順などが少々異なるものの、ほぼiPhoneと同じ

「データモード」は、5G接続時にコンテンツの画質を自動的に向上させるための項目です。初期設定では、データ容量を節約するためか、「標準」になっていましたが、「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5Gで接続している際に、FaceTimeやビデオの画質が向上します。おそらくこの初期設定は、キャリアや加入しているプランによって変わるはずで、iPhoneと同じだとすると、KDDIの無制限プランに加入している場合は、デフォルトで「許容」になると思われます。

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5G接続時に一部アプリの画質などが自動的に上がる

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5G接続時に一部アプリの画質などが自動的に上がる

設定をオンにしていると、高画質化するコンテンツは、以前より増えています。この機能をプッシュするKDDI関連のサービスが多い印象ですが、スポーツコンテンツでおなじみのDAZNも、動画品質の自動アップグレードに対応しています。試しに、編集長とWi-Fi環境下でFaceTimeを使って雑談してみましたが、肌の質感までよく分かるほどの映像で、通常のFaceTime以上に臨場感が高いと感じました。試用したiPad Proは、12.9インチと画面サイズが大きいため、迫力はiPhone以上。スマホ以上に、5Gエリアで通信することの重要性を感じました。

編集長とFaceTime HDで楽しい時間を過ごした。大画面のiPad Proなら、iPhone以上に画質の違いが分かりやすい

編集長とFaceTime HDで楽しい時間を過ごした。大画面のiPad Proなら、iPhone以上に画質の違いが分かりやすい

そのメリットを体感するには、5Gのエリアが広い必要があります。現時点では残念ながら、4Gのように全国くまなくというわけではありませんが、KDDIやソフトバンクについては、以前とは様相が変わってきています。4Gから5Gへの周波数転用を開始したからです。iPad Proには主にソフトバンクのSIMカードを挿していましたが、筆者の事務所がある渋谷では、様々な場所で5Gがつながります。路上はもちろん、よく行くカフェや事務所の喫煙所(屋外)も、5Gのエリアになっていました。

転用のため、通信速度に関しては4Gとそこまで変わらず、数十Mbpsという場所も多々ありましたが、上記のような、画質向上機能がオンになるのはメリットの1つと言えるでしょう。逆に、周波数転用を現時点では導入していないドコモは、5Gにつながったときの速度には以下のように、目を見張るものがあります。一方で、元々の5Gの周波数は4.5GHz帯や3.7GHz帯と非常に高く、屋内浸透もしにくいのが難点。KDDIやソフトバンクのように、とりあえず入ったカフェの中で5Gを使うというシチュエーションには、なかなか出くわさない印象があります。

転用5Gのエリアは広く、導線がしっかりカバーされている印象を受ける。ただし、速度は4Gと大差なし

転用5Gのエリアは広く、導線がしっかりカバーされている印象を受ける。ただし、速度は4Gと大差なし

【レビュー】iPad Pro 2021はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台(石野純也)

ドコモはエリアこそ狭いが、つながると爆速になるケースが多い。同じ場所でも、4G(下)と5G(上)では速度がこれだけ違う

ドコモはエリアこそ狭いが、つながると爆速になるケースが多い。同じ場所でも、4G(下)と5G(上)では速度がこれだけ違う

iPad Proの利用シーンや、上記のように5Gでコンテンツの画質を向上させる機能があることを踏まえると、やはり転用であっても、エリアが広い方が嬉しいのではないでしょうか。いくら高速でも、スマホと違って、iPad Proを路上で使うことはあまりありません。最近は、駅などで歩きタブレット(!)をしている人を見かけることもありますが、あくまでレアケース。カフェなどに入って、Webや動画を見たり、ビデオ会議をしたりするシーンの方が、シチュエーションとしてリアリティがあります。

そもそもの話として、通信速度ではなく、4Gか5Gの区分だけでコンテンツの品質を分けてしまうのはどうなのかという議論もありますが、同様の機能はiOSだけでなく、Androidにも採用され始めていて、業界標準になりつつあります。特に腰を据えてじっくり使うiPad Proでは、その恩恵が大きいため、ドコモは屋内対策をぜひともがんばってほしいと思いました。ただ、iPad Proは作成した動画をアップロードするといった用途も考えられるため、ほか2社も転用だけに頼らず、Sub-6のエリア整備は強化してほしいところです。

ここまで、あえて名前を挙げていませんでしたが、4月にiPhoneの取り扱いを開始した楽天モバイルも試してみました。オチのように使ってしまうのは大変恐縮ですが、残念ながらiPad Proは、同社の5Gには非対応のようです。楽天モバイルのeSIMプロファイルをインストールしてみたところ、iPhone 12シリーズを取り扱っていなかったころと同様、設定メニューに5Gの文字が現れませんでした。

楽天モバイルのeSIMを設定してみたところ、「データ」で5Gを選択できなかった

楽天モバイルのeSIMを設定してみたところ、「データ」で5Gを選択できなかった

選択できるのは4Gのみで、アンテナピクトの表記は「LTE」になります。また、APNは入力なしで通信できましたが、空欄のままだとインターネット共有(テザリング)の設定も表示されません。これは、楽天モバイルがiPad ProやiPadを取り扱っていないためだと思われます。キャリア設定も降ってこなかったため、取り扱いを開始するまで、同社の5Gはお預けということになりそうです。段階制の料金プランは、サブデバイスとしてのタブレットと相性がよさそうなだけに、今後の展開に期待したいところです。

APNは空欄のままでもつながったが、インターネット共有を利用する際には手動での入力が必要

APNは空欄のままでもつながったが、インターネット共有を利用する際には手動での入力が必要

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M1搭載の新 iPad Pro vs 前世代比較。12.9インチ版はLiquid Retina XDR搭載

(文:石野純也、Engadget日本版より転載)

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新iPad ProもApple M1チップ搭載

カテゴリー:ハードウェア
タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)レビュー(用語)日本(国・地域)

新iPad ProもApple M1チップ搭載

予想されたとおり、米国4月20日にあったApple(アップル)のSpring Loadedイベントでのビッグニュースは、ハイエンドなタブレットの新バージョンだ。新しいiPad Proは、同社のMacラインナップに導入されたM1チップを搭載した初の製品となる。新しいチップは8コアCPUを搭載し、前世代に使用されているA12Z Bionicよりパフォーマンスは最大50%速くなる。またグラフィック性能が最大40%高速になる8コアGPUも搭載する。RAMは最大16GB、ストレージは2TBだ。

新iPad Proは同社のタブレットとデスクトップの境界をさらに曖昧なものにし、バッテリーは「1日中」持つよう改善された。またUSB-CにThunderboltのサポートを追加し、これにより外部ディスプレイサポートや有線での最大40Gbpsでのデータトランスファーを含む数多くの新機能が利用できるようになる。

画像クレジット:Apple

新iPad Proは5Gに対応しているiPhoneのラインナップの仲間入りも果たした。新iMacのように、新iPad ProはAppleシリコンに搭載した新たなISPのおかげでイメージングが向上した。これは新しいウルトラワイドカメラと一体となっている。120度の視野角、新しい「センターステージ」機能などにより、電話会議能力の改善が図られるはずだ。「センターステージ」はユーザーを追いかけるというもので、一部のスマートディスプレイで見られるテックと似ている。Appleはそのエクスペリエンスを次のように表している。

ユーザーが動き回るとセンターステージはユーザーがショットに収まるよう自動でパンを調整します。他の人が加わると、カメラはそれを感知してみんながショットに入るようスムーズにズームアウトして、みんなが会話に参加できるようにします。ですので、同僚とホワイトボードを使っていると、あるいはバーチャルの家族の集まりに参加しているとき、つながる体験はこれまでよりもさらに没頭できるものになります。

Dolby Atmos(ドルビーアトモス)再生にも対応する4つのスピーカーを搭載している。

Appleのマーケティングチームによると、新しいiPad Pro(さしあたって12.9インチのみ)はグレードアップしたディスプレイLiquid Retina XDRを搭載する。これによりハイダイナミックレンジがかなり向上している。ディスプレイの光源は1万個のマイクロLEDで、バッテリー駆動時間を損なうことなくコントラスト比の大幅改善と輝度1000ニトを実現している。

11インチバージョンは799ドルから、Liquid Retinaディスプレイを搭載した12.9インチバージョンは1099ドルからだ(編集部注:日本では11インチが税込9万4800円から、12.9インチは税込12万9800円から)。本日発表された他のプロダクトとともに、プレオーダーの受け付けは4月30日に開始し、出荷は5月後半に始まる。

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タグ:AppleAPPLE SPRING HARDWARE EVENT 2021Apple M1iPad5GAppleシリコン

画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

6月公開予定のLinuxカーネル5.1.3がAppleシリコン「M1」搭載Macをサポート開始の可能性

6月公開予定のLinuxカーネル5.1.3がAppleシリコン「M1」搭載Macをサポート開始の可能性

Apple

これまでAppleシリコン「M1」チップ搭載MacにLinuxを移植する様々な取り組みがありましたが、6月に公開予定の安定版Linux 5.13カーネルで予備的なサポートが追加される可能性があると報じられています。

Asahi Linux公式アカウントは、M1対応のプルリクエスト(コードなどを追加・修正した際に、本体への反映を他の開発者に依頼する機能)がSoC向けLinuxにマージされ、Linux 5.13に反映されるだろうと報告しています。

このAsahi LinuxはM1へのLinux移植プロジェクトの1つであり、主催者のHector Martin氏が独特すぎるM1の仕組みに苦戦していることが語られていました

Linux関連情報サイトPhoronixによると、M1 MacでのLinux動作状況はまだ道半ばではあるものの、Linux 5.13カーネルにてサポート追加できる程度には「よい状態」になっているとのことです

今年の初めからM1チップを搭載したMac mini、MacBook Pro、MacBook AirでLinuxカーネルを起動するために何度かカーネルパッチが適用され、起動に必要なドライバが導入されていると説明されています。つまり、ひとまず起動はできる見込みは高い、というわけです。

この最初期となるM1 Linux移植では、UART、割り込み、SMP、DeviceTreeビットといった基本的な機能を備えているとのことです。またSimpleFBベースのフレームバッファ(画面表示まわり)も搭載されていますが、3D/ビデオアクセラレーションの動作はかなり難航しているもようです。

M1 Mac上でLinuxを動作させる試みとしては、他にも新興企業Corelliumが「完全に使用可能な」ものを移植したと発表していました。ただし、そちらもGPUアクセラレーションはサポートされず、描画はソフトウェアレンダリングに依存しており、M1 Macの持てる機能すべてを引き出せているとは言い難い状況です。

アップルが自社開発のM1チップにつき仕様を完全公開したり、GPUへのアクセス方法を教えるとは考えがたいことです。まだまだ実用にはほど遠く、注ぎ込まれた莫大な努力に見合う価値があるかどうかも不明ですが、その過程で「Appleシリコンはなぜ、これほど(価格の割に)パフォーマンスが高いのか」の謎が解き明かされていくのかもしれません。

(Source:PhoronixAsahi Linux(Twitter)、via:9to5MacEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Asahi LinuxApple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)OS / オペレーティングシステム(用語)Linux(製品・サービス)オープンソース / Open Source(用語)Vulkan(製品・サービス)

Appleシリコン「M1」MacでLinux直接起動を目指す「Asahi Linux」、独自ブートローダーm1n1開発

Appleシリコン「M1」MacでLinux直接起動を目指す「Asahi Linux」、独自ブートローダーm1n1開発

Kim Kulish/Corbis via Getty Images

アップル独自開発のM1チップ搭載Macは優れたパフォーマンスが開発者やユーザーから高評価を得ているものの、macOS以外のOSは公式にサポートされていません。そこでLinuxを移植して動かそうというプロジェクトの1つが「Asahi Linux」(Asahiはリンゴの品種名であるMacintoshの和名「旭」から)であり、クラウドファンディング等から資金を募って活動中です(Github)。

その主催者である個人開発者のHector Martin “marcanがブログで初めて進捗報告し、独特すぎるM1のしくみがプロジェクトをどれほど難しくしているかを説明しています。

まずAppleシリコン(M1をはじめアップル独自設計のプロセッサ)搭載Macの起動プロセスは、一般的なPCとは全く違うとのこと。どちらかというとAndroid携帯やiOS端末のような組み込みOSに近く、独自のしくみがいくつも織り込まれていると述べられています。

しかしアップルは起動プロセスを従来のインテル版Macに近づけようと色々な手段を講じており、そのために実際の動作はより複雑になっている模様です。

そのためAsahi Linuxプロジェクトは、「m1n1」なる特注ブートローダーの開発を余儀なくされました。その元になったのはニンテンドーWiiの脱獄研究の一環として作成された「mini」にあり、サードパーティ製コードを起動したり、あるいは開発用コンピュータからリアルタイムでマシンを制御できるしくみも継承されている趣旨が語られています。

そうしてm1n1を通じてアップル独自のシステムレジスタや割り込みコントローラなどハードウェアの文書化に懸命に取り組んできたとのこと。M1チップはArm64アーキテクチャではありますが、独自のシステム周りに関するドキュメントがほとんどなく、自前で分析して資料作りをすることを迫られたわけです。

興味深いのは、Appleシリコンプラットフォームに使われた技術が、どれほど古い製品に由来しているか解き明かされていることです。上記のように起動プロセスはiOS、シリアル通信に使われているUARTチップはサムスン製品、PWRficicentチップに基づくデザインはAmigaOne X1000(2010年に発売されたAmigaクローン。元々のAmigaは1985年発売)でも使われていたというぐあいです。

今後m1n1は強力な研究ツールとなるよう、機能が追加されていく予定と語られています。特に野心的な目標の1つは、その上でmacOSを起動できる非常に軽量なVM hypervisor(仮想マシンを動かすための制御プログラム)に変えて、ハードウェアへのアクセスをすべて傍受すること。これによりアップルのドライバーがどのように動作するか、1つずつ分解せずに調査できて分析が捗ると示唆されています。

このプロジェクトに先行するものとして、すでにM1 Mac上で仮想化なしに「完全に使える」CorelliumによるLinux移植もあります。が、こちらもGPUアクセラレーションは使えず、ネットワーク機能もUSB-Cドングルが必要など、まだまだ実用の域からは遠い感があります。

ほかM1 Mac向け非アップルOSとしては、Arm版Windows 10が挙げられるでしょう。仮想化アプリ上では一歩ずつ実用化に近づいている様子ですが、直接に起動できるBootCampは実現するのか、今後の展開を待ちたいところです。

(Source:Asahi Linux。via:The Register9to5MacEngadget日本版より転載)

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元NSAのセキュリティ研究者がAppleシリコン「M1」Mac搭載でネイティブ動作する初のマルウェア発見

元NSAのセキュリティ研究者がAppleシリコン「M1」Mac搭載でネイティブ動作する初のマルウェア発見

アップル独自開発のAppleシリコンことM1チップ搭載Macが発売されてからわずか数か月ですが、早くもネイティブ動作するマルウェアが発見されました。

この発見は、元NSA(米国家安全保障局)所属のセキュリティ研究者であるパトリック・ウォードル氏が、自らのブログObjective-Seeにて報告しているもの。M1 Macではインテル製チップ向けバイナリをRosetta 2で翻訳して動かすこともできますが、ウォードル氏が見つけたのはM1向けに再コンパイルされたArm64コードが含まれるものです。

具体的には以前からインテルMacを標的としているアドウェア「Pirit」をM1ネイティブ対応にした「GoSearch22.app」だったとのこと。このバージョンは大量の広告を表示し、ユーザーのブラウザからデータを収集することを目的としていると推測されています。

ワードル氏がこのマルウェアを発見したのは、Alphabetが所有するウィルス対策サイト(ファイルやWebサイトのマルウェア検査を行う)VirusTotalでした。さらにワードル氏は、GoSearch22は2020年11月23日にアップル開発者IDで実際に署名されていることも指摘。アップルはその時点で証明書を失効させていますが、野良で見つかったことからmacOSユーザーが感染した可能性があると述べられています。

それに加えてワードル氏は、VirusTotal上でx86(インテル製チップを標的としたもの)版を検出できたウィルス対策ソフトのうち、15%しかM1版のGoSearch22をマルウェアだと判定できなかったと報告しています。すなわち、ほとんどのアンチウイルスソフトはM1向けに設計されたマルウェアに対応する準備が整っていない、ということ。

この報告につき、別のセキュリティ研究者トーマス・リード氏はWiredに(既存のマルウェアを)M1向けにコンパイルすることは「プロジェクトの設定でスイッチを入れるのと同じぐらい簡単にできます」とコメントしています。

かつて「MacはWindowsよりもマルウェアの危険性が低い」との通説がありましたが、2019年にはMacがWindowsを上回ったとの調査結果もありました。一般にプラットフォームの普及が進むほど攻撃の対象となりやすくなり、かつM1 Macは順調な売れ行きを示していることもあり、今後はアップルもセキュリティ対策に頭を痛めるのかもしれません。

(Source:mObjective-See、via:9to5MacEngadget日本版より転載)

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