Googleのデータ節約アプリDatallyに代表される“次の10億ユーザー”獲得構想とは

Googleの新興市場向けの新しいアプリは、スマートフォン上のデータ通信の利用をコントロールし、トップアップ(前払い)クレジットを最大限有効利用しよう、というものだ。

そのAndroidアプリDatallyは、今日(米国時間11/30)から世界中で入手でき、どんなアプリの上でもデータの使い方を細かくコントロールして、節約を実現する。フィリピンで行ったパイロットテストでは50万人のユーザーが、このアプリを利用してデータプランを30%節約できた。

だからこれは、インドのような新興市場で重宝だ。実はこのアプリは最初、インドと東南アジアを想定して作られ、そこでテストされた。これらの市場ではプリペイドの(=トップアップの)SIMカードが使われることが多くて、そのクレジット額を使い切ると、電話はもうつながらない。

Datallyは、データ通信量の多いアプリをカットしてユーザーに別のサービスやアプリを使わせるだけでなく、各アプリのデータ消費量のアップデートも提供する。Googleはこれを、‘データのスピードメーター’と呼んでいる。また、ユーザーが今いる場所の近くに一般公開されているWi-Fiのアクセスポイントがあれば、それを教える。

後者に関しては、Googleはインドで無料のWi-Fiホットスポットを展開しており、たとえばそんな鉄道駅の数はすでに100を超えている。Googleは同プランを東南アジアにも広げている。

FactorDailyのインタビューで、GoogleのNext Billion Users計画の担当VP Peeyush Ranjanはこう語る: “私に言わせれば、シリコンバレーには死角がある。それをなくそうとするのが、GoogleのNext Billion Usersのような活動だ。われわれはそういう市場向けの技術を作っている。うまく行けば、その技術を全世界に広めたい”。

Next Billionの計画の中には、ほかに、インドにおける決済サービスTezや、ストレージ節約アプリ、YouTubeの軽量データバージョンなどがある。

Googleは買収によって、この計画のためのエンジニアを確保しようとしている。今年は、TwitterのデータサイエンティストだったPankaj Guptaがインドで創ったAIスタートアップHalli Labsを買収、2016年にはシンガポールのエンタープライズチャットサービスPieのチームを買い上げた

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

目指すは”動画ストリーミング界のAndroid”――Iflixが1.3億ドル調達

アジアを拠点に、新興市場に向けてNetflixのような動画ストリーミングサービスを提供しているIflixが、この度事業拡大を目的に1億3300万ドルを調達した。

BuzzFeedやVice、Rokuなどの株主でもあるアメリカのメディア・コングロマリットHearstがリードインベスターを務めた今回のラウンドには、シンガポール経済開発庁の投資部門EDBIやDBS銀行(旧シンガポール開発銀行)の取引先らが新規に参加。既存株主のEvolution Mediaやイギリスのテレビ局Sky、マレーシアのCatcha Group、Liberty Global、Jungle Ventures、PLDTも同社への追加出資を決めた。

Iflixは2015年5月にローンチし、当初はアジア数か国で営業していた。現在利用料は月々約3ドルに設定されており、中東・アフリカを中心に市場を拡大した結果、進出先は19か国にまで増加した。また、これまでの累計調達額は約3億ドルにおよぶ。その内訳は今回の1億3300万ドルに加え、ローンチ前の2015年に調達した3000万ドル、昨年Skyから調達した4500万ドル、さらに今年3月に調達した9000万ドルだ。

直近のラウンドでの評価額は5億ドルだったが、今回の評価額は公表されていない(現在TechCrunchにて情報収集中)。

Iflixの1番分かりやすい競合としてはNetflixが挙げられるが、登録者数が1億人を超え、2017年第2四半期だけで520万人もの新規登録者を獲得した同社と肩を並べるような企業はほとんど存在しない。むしろ通信企業SingtelやPCCW Media傘下のVuclipを株主に持ち、東南アジアでサービスを提供するシンガポールのHOOQや、各国で個別にサービスを提供している現地ストリーミング企業の方がIflixの競合と呼ぶにはふさわしいだろう。

Iflixは3月に登録者数が500万人に達したと発表したが、今回の発表内では登録者数には触れなかった。その代わりに同社は「驚異的な成長を遂げ」、ここ1年で登録者数は3倍、ユーザーのエンゲージメント率は2倍に伸びたと語った。さらに売上も前年比で230%増加したとされているが、具体的な数字は公表されていない。

Iflix CEOのMark Brittは、TechCrunchとのインタビューで、Netflixとはターゲット層が異なるため同社との比較はあまり意味をなさないと語った。

「正直に言って、Netflixを競合としては見ていない。私たちはIflixのことを大衆市場に新しいサービスを提供する企業ととらえている」と彼は話す。

NetflixのターゲットはiPhoneなどのハイエンドデバイスを所有し、十分な可処分所得とクレジットカードを持つエリート層なのだとBrittは説明する。さらに彼は、Iflixのターゲット層は逆にローエンドのデバイスで良質とはいえないインターネット環境を使いながらも、モバイル端末でコンテンツを消費したいと考えている人たちなのだと言う。

「Netflixが動画ストリーミング界のiPhoneだとすれば、私たちはAndroidを目指している」とBrittは付け加える。「私たちは上流階級にとっての二番手――つまりNetflixユーザーであればIflixにも登録した方がよいというくらいの存在――になることも全くいとわない。しかし、大衆市場ではコンテンツのほとんどがモバイル端末上で消費されている」

 Iflix会長のPatrick Grove。今年タイのバンコクで行われた販促イベントにて

確かに動画ストリーミング市場の規模は、複数の企業が共存できるくらいの大きさだ。Media Partners Asiaの最近のレポートでは、アジアのオンライン動画市場の規模は2020年までに200億ドルを超えるとされている。ただし、Iflixが現状サービスを提供していない(かつ現地企業が覇権を握っている)中国を除くと、この数字は32億ドルにまで減ってしまう。

そんな状況をものともせず、IflixはNetflix同様オリジナルコンテンツの制作に力を入れている。同社は今年に入ってから、マレーシア発のアンダーグラウンドなコメディー番組の配信をスタートさせ、十数カ国にまで配信先を拡大中だ。また今年の3月には、Nerflixでグローバルテレビジョン担当VPを務めていたSean Careyをチーフ・コンテンツ・オフィサーに迎えた。さらにIflixはインドネアシアのサッカーリーグの放映権獲得と共にライブスポーツの分野にも進出し、Brittは今後各地の配給会社や制作会社から現地コンテンツを買い取り、さらにローカル市場へのフォーカスを強めていくと話す。

「私たちにとって重要なのは、欧米で作られた作品ではなくローカルコンテンツだということがわかった。トップ10に含まれる作品のほとんどは、ある特定の地域や国をターゲットにしたものだ」とBrittは語る。「大量の番組を一気に消費するのには欧米の作品の方が適しているかもしれないが、大衆市場へのリーチという観点では、現地の制作・配給会社が持つコンテンツの方が強い」

独占配信や封切りにフォーカスした作品数の増大にこそ、今回の調達資金が使われる可能性が高い。さらにBrittは新たな市場への進出についてもほのめかしており、既存市場と性質が近い南米には特に興味を持っているという。

「世界的に見て、新興市場にはかなり大きなチャンスが眠っている」と彼は付け加える。「ほとんどの新興市場で、ここ数年のうちにテレビ業界の勢いは停滞するどころか減速し始めている。世界中の新興階級が25歳以下の人たちを中心に構成されていることを考えると、テレビは過去のプロダクトと言っても過言ではないだろう」

「13億人におよぶと言われる(新興市場の)人々に向けられた新しいエクスペリエンスが、今後数年間でどのような形になっていくかについて(制作会社や興行主と)話を進めているプラットフォームはIflixだけだ」とBrittは話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

インドよりも魅力的?――政情不安に負けず成長を続けるMENAのスタートアップ市場

テヘランからドバイへのフライトの所要時間は2時間程度で、これはニューヨーク・シカゴ間のフライトと同じくらいだ。さらにカイロからベイルートへの飛行時間も1時間15分ほど。情勢が安定しているときであれば、ベイルートからシリアのダマスクスまでは車で2時間弱で移動できる。実際に中東・北アフリカ地域(Middle East / North Africa:MENA)を移動してみると、各都市がいかにうまく接続されているかすぐにわかる。しかしお分かりの通り、政情はそのときどきだ。

そして都市間の相互接続以外にも、”中東”に関する報道内容とは裏腹に、MENA全体が現在目まぐるしい成長を遂げている。中には国内の対立に苦しんでいる国も存在するが、空飛ぶ車がなくても彼らの経済は発展しているのだ。

最近Amazonが現地のEC企業Souqを買収し、買収金額は8億ドルに達するとも言われていたことからも、MENAで大型エグジットが実現可能だということが分かる。さらに一般的に言って、MENAの外にいる人たちは同地域の経済成長の度合いを過小評価しがちだ。

MENAを、6つの”湾岸アラブ諸国”+エジプト+レバノン+ヨルダンとすると、そこには潤沢な資産を持った消費者、企業、実業家が存在する。Beco Capitalによれば、1億6000万人に及ぶ同地域の人口のうち、8500万人がインターネットにアクセスでき、5000万人が多額の現金をもった成人のデジタル消費者だという。そしてこれらの数字は、MENAが成長するにつれて増加している。

MENAの人口は世界的に見ても若く、スマートフォンやブロードバンドの普及率も高い。この若くて教養があり、インターネットにアクセスできる5000万人の富裕層に対し、総人口が10億人を超えるインドを見てみると、クレジットカードや自家用車を保有している2000~3000万人の年収は1万2000ドル以下だ。

また、MENAの企業のうち8%しかインターネット上に情報を掲載しておらず(アメリカでは80%)、小売売上におけるネット通販の割合はたった1.5%だ。つまり、同地域にはまだかなりの伸びしろがあるのだ。2020年までには、デジタル市場によってMENAのGDPが950億ドル増加すると予測されており、デジタル市場における1人分の雇用が経済全体では2~4人分の雇用の創出につながると言われている。

Souqの以外にも、ドイツのDelivery Heroが現地のTalabatを買収し、MENAへの進出を狙っていたトルコのYemeksepetiを打ち負かしたほか、”MENAのUber”と言われているCareemは、ユーザーあたりの売上額でUberを上回ると言われている。

MAGNiTTが最近行なった調査でも、MENAのテックエコシステムに関する興味深いデータが明らかになった。同社はMENAに現在3000社以上のスタートアップが存在することを発見し、さらに調達額トップ100社のファウンダーについて詳細な調査を行った。

MAGNiTTによると、昨年のスタートアップへの総投資額は8億7000万ドル強だった。トップ100社はこれまでに14億2000万ドルを調達しており、1社あたりの調達額は50万ドルを超える。

さらにトップ100社のファウンダーは、会社を設立する前に平均で9年間どこかの企業に勤めていたことが分かっている。また、約40%は単独のファウンダーによって設立され、39%が2名の共同ファウンダーによって設立された。ダイバーシティ(多様性)の観点では、順調に事業を行っているファウンダーのうち12%が女性だ。なおEUの数字は15%、アメリカは17%だった。国別で見ると、調達額上位の企業の50%がアラブ首長国連邦で登記されている。

ファウンダーの41%がハーバードやINSEAD、LBSをはじめとする大学でMBAを取得しており、35%が経営コンサルや金融業界での経験を持っている。

またMENA発スタートアップのファウンダーの68%が中東出身で、二重国籍の人も多数いる。出身地を見てみると、トップ100社のファウンダーの38%がレバノンかヨルダン出身でありながら、この2国に本社を置いているスタートアップの割合は16%しかない。これらの数値から、ドバイが中東におけるデラウェア州の役割を担い、本社や開発チームは別の国に置かれているということが分かる。

以上の通り、毎晩目にする”中東”と曖昧に括られた地域に関するニュースとは反対に、データからはMENAが素晴らしいスタートアップエコシステムを構築している様子がうかがえる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

政情不安の中にもチャンス―、私がトルコに戻ってシード投資をする理由

The Republic of Turkey flag hangs on the side of a building as show of solidarity following a July 15 Coup. (DoD Photo by Navy Petty Officer 2nd Class Dominique A. Pineiro)

【編集部注】執筆者のRina Onurは、500 Startups Istanbulのファウンディングパートナー。

トルコでビジネスを拡大したり、スタートアップを立ち上げて資金調達をしようとしているときに、「トルコは今一体どうなってるの?」と国外に住む友人や家族に尋ねられると、げんなりしてしまう。

さらに、ベンチャーファンドを組成しようとしているときに、この地域の複雑さ(さらには自分たちが提供できる価値)を説明するというのもなかなか骨が折れる。

テロ事件に悩まされ、国内や周辺地域の内政問題で不透明感が高まっているトルコが、最近世間を騒がせている。かつては、中東にある世俗的かつ民主的なイスラム国家として、希望の光のように考えられていた国が、今はこのような状態にあるのだ。

また、最近トルコで起きた政権交代によって、この国の「普通」の状態は人に不安感を抱かせるまでになった。クーデーターが発生してから数日後に、私は500 StartupsのDaveからメッセを受け取ったのを覚えている。彼はまず最初に私の安否を尋ね、その次に私たちがその数ヶ月前にローンチした、1500万ドルのアーリーステージ企業向けマイクロVCファンド500 Istanbulをどうするのかを聞いてきた。

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私は、当初の予定から変更はなく、前進あるのみだと答え、それから1週間後の7月22日に、500 Istanbulは最初のクロージングをむかえた。色んな人が私の家族の安否を尋ねるメールを送ってくれる中、私はキャピタルコールのメールを送っていた。国外からトルコを見て何かしらの結論にたどり着くのは簡単だが、トルコに拠点を置く投資家として、私はこの巨大で若く、VCの資本やインフラを貪欲に求める国には、まだ望みがあると思いたい。

未来が見えづらい国であるがゆえに、トルコのスタートアップには十分に投資が行き渡っておらず、結果として大きな成長可能性がまだ秘められているのだ。そもそも私には、この市場で社会的な活動を行う気はない。

500 Istanbulの資金やサービスは、今までにないくらい必要とされているが、それと同時に競合する投資家があまり見当たらないことから、チャンスもこれ以上ないくらいに広がっている。トルコで活動している数少ない既存の大手VCが、レーターステージの企業にばかり投資していることから、アーリーステージの企業は未だ手付かずの状態なのだ。

この背景には、オペレーション上のリスクを抑えようとする、新興国で活動中のVCの戦略もあるだろう。この地域の不確実性から、既にかなりのリスクにさらされていると感じているかもしれない彼らが、実績のあるレーターステージへの投資に専念するというのも理解できる。そこで500 Istanbulがそのギャップを(一部ではあるが)埋めようとしているのだ。

istanbul birds

イスタンブル

上記のような状態にあるトルコのアーリーステージの投資環境で、私は以下の2つのカテゴリーにチャンスがあると考えている。

現地に特化したビジネス

過去10年にわたって、トルコは既に確立された欧米のビジネスモデルを現地市場で上手くコピーしてきた。7500万人に及ぶ人口の平均年齢は26歳で、彼らは驚くくらいインターネットをよく利用しており、支払のための手段も持っている(クレジットカードの保有率はヨーロッパでは第2位)。「クローン」ビジネスを興すというのはあまり魅力的でないというのはわかるが、これは上手くやればかなり儲かる。

さらに、サービスのローカライズや現地社員の採用、サプライヤー探しや規制団体との交渉などのせいで、外資系企業は現地企業に比べて、新興市場でスケールするのが難しい。Gittigidiyor(2011年にeBayが2億1500万ドルで買収)やMarkafoni(2011年にNaspersが2億ドル以上で買収)、Pozitron(2014年にMonitiseが1億ドルで買収)、Yemeksepeti(2015年にDelivery Heroが5億8900万ドルで買収)、Mars(2016年にCJ-CGVが8億ドルで買収)といった例を見ると、グローバル企業が現地のプレイヤーからトルコ市場を奪うことができなかったというのがすぐにわかる。

これはトルコに限った話ではなく、東南アジアでも同じようなパターンが見られた。市場の拡大とともに優秀な企業が巨大化していくという、この地域のマクロ経済的な性質がその背景にある。

世界を相手にしたビジネス

ユニコーン企業のUdemy(500 Startupsが投資)を例として、500 Startupsが過去にトルコで行った、国外に目を向けたスタートアップへの投資は、幸いなことにかなり上手くいっている。このカテゴリーに含まれる企業は、全てトルコ人起業家によって設立され、資金調達やグローバルな成長を求めてアメリカに渡った。UdemyとMobile Actionに関しては、未だにかなりの数のディベロッパーがアンカラで仕事を続けており、彼らはトルコとサンフランシスコを行き来している。

このような企業にとってトルコ市場は、海外市場への進出前に、プロダクトのコンセプト化、テスト、改良を行うテストの場として大きな意味を持っている。結果的に次世代のトルコのディベロッパーは、トルコとシリコンバレー両方で技術を身に付け、将来自分たちが革新的な企業を立ち上げるときのための肥やしにすることができるのだ。

世界に目を向けているアーリーステージ企業への投資の利点は、企業のパフォーマンスとトルコ周辺地域の不確実性の間に関連性があまりないということだ。

移民ファウンダーや、海外のユーザーへプロダクトを届けようとしているファウンダーに投資するということは、トルコ発のテクノロジーの拡散や、未来のトルコのスタートアップエコシステムに寄与しているのと同じことなのだ。

世界に目を向けているアーリーステージ企業への投資の利点は、企業のパフォーマンスとトルコ周辺地域の不確実性の間に関連性があまりないということだ。

WixFiverrWazePlaytikaSimilar Webなど、数々のグローバルプレイヤーを輩出してきたイスラエルがその証拠だ。イスラエルは素晴らしい人材やスタートアップの故郷であり、私はトルコにも同じくらいのポテンシャルがあると信じている。

不確実性によって、今後トルコ周辺地域のイノベーションや投資チャンスが全て消え去ってしまう、とは私は考えていない。長きにわたる激動の時代を生き抜いてきたためか、大多数の欧米人と比較して、私達には粘り強さがあると感じることがある。悪いことが起きたとしても世界は動き続け、人々は何かをつくり、そして消費していくのだ。

これこそ、8年前に私がトルコに戻ってきた理由であり、500 Istanbulが(5年以内に85社へ投資するという目標を掲げ)過去半年の間に15社へ投資を行った理由だ。私は向こう10年の間に、トルコ人起業家の手によって、多くのトルコ発ケンタウルス企業(評価額1億ドル以上の非上場企業)が誕生すると自信を持っており、さらにはいくつかのユニコーン企業も生まれるのではないかと考えている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Accel Indiaが記録的な速さで4億5000万ドルのファンドを新たに組成

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約2年前に組成された3億2500万ドルの第4号ファンドに続き、Accel Indiaが5号目となるファンドを4億5000万ドルで設立した。これがインドのバブルを象徴しているのか、同国の本当のチャンスを表しているのかについては、未だ議論の余地があるものの、2011年からAccelに参加し、バンガロールを拠点に活動しているAccel IndiaパートナーのShekhar Kiraniに、メールで本件に関するインタビューを行ったので、その様子をご紹介したい。

TC: Kirani氏は2005年からインドでの投資活動を活発化し、不動産プラットフォームのCommonFloorやオンラインショッピングのFlipkart、カスタマーサポートサービスのFreshdesk、ファッション・ライフスタイルECのMyntraといったインドでも有名なスタートアップを含むポートフォリオを構築してきました。今回のファンドの設立にかかった期間は、これまでで最短といって問題ないでしょうか?普段Accelは、3〜4年周期でファンドを設立しているように記憶していますが。

SK: 今回のファンドは確かにかなりの速さで資金がまとまりましたね。これはインド市場の長期的なビジネスチャンスや、LPのサポート、私たちのポートフォリオに含まれる企業の質の現れであるとともに、インドにフォーカスして投資先を絞った私たちの投資戦略や、Accel Indiaのチームの力でもあると考えています。

TC: Accel Indiaのチームはこれまでにどのような変遷を辿ってきたんですか?

SK: Accel Indiaの母体となるErasmic Venture Fund(2008年にAccelが買収した)は、Prashanth Prakash、Subrata Mitra、Mahendran Balachandranによって設立されました。そしてAccelによる買収後、Anand Daniel、Dinesh Katiyar、Subrata Mitra(そしてShekhar Kirani自身)のリーダーシップもあり、チームは順調に成長しました。さらに、私たちはインド国内にポートフォリオサービスチームを立ち上げ、彼らがプロダクト管理やスタッフの採用、データサイエンス、テクノロジー、デジタルマーケティングなどの面で投資先企業のサポートを行っています。

TC: Accel Indiaは、ベイエリアのAccel Partnersとはどのくらい密接に関係しているんですか?Accel Partnersの投資家がAccel Indiaのファンドにも投資したり、ベイエリアのチームとお互いに関係のある投資案件について話をしたりすることはあっても、それ以外の面では独立して(Accel Londonのように)運営されているのでしょうか?

SK: 全てのAccelオフィスは、お互いのネットワークや情報、ベストプラクティスを共有し、投資先企業にも私たちのネットワークを活かしてもらいながら、協力し合って業務を進めています。Accelのゴールは、世界中の素晴らしい起業家を発掘し、ポートフォリオに含まれる企業を、どこで設立されたかに関わらず、全てのステージを通してサポートしていくことです。

TC: 大体いつもどのくらいの金額を各企業に投資しているんですか?また、特にどの段階にある企業にフォーカスしていますか?

SK: 私たちはアーリーステージの投資家なので、基本的には投資先企業にとって最初の機関投資家になりたいと考えています。初回の投資額は200万ドル以内に収まることが多いですね。

TC: インドのスタートアップシーンは最近盛り上がってきていますよね。スタートアップによる資金調達の加速化は、評価額にどのように反映されているのでしょうか?例えば2年前と比べて、各ステージにある企業の評価額に何か変化はありますか? 

SK: 2015年に過度な投資が行われていたとき、成長期にある企業の評価額はつり上がっていました。しかし、シードステージやアーリーステージにある企業への影響はそこまでなく、2015年を通して見ても、彼らの評価額は適正といえる範囲でした。

私たちは評価額よりも、健全なファンダメンタルを持つ、強固で統制のとれたビジネスを投資先企業と作り上げることに注力しています。ここ数年の間に、いくつかのカテゴリーのオンライン化がこれまでにない速度で進んでいます(EC、映画チケット、タクシー予約、生鮮食料品販売、フードデリバリー、ローカルサービス、マーケットプレイスなど)。さらに、以前はスケールするのに最大5年を要していたようなカテゴリーが、2〜3年でスケールし始めています。私たちはこのような企業を支援し続け、彼らの成長を促そうとしているんです。

TC: インドに過度の投資が集まっているという心配はありますか?最近アメリカの投資家のChamath Palihapitiyaは、なぜ彼の率いるSocial Capitalが、これまでひとつのインド企業にしか投資していないかという話をThe Times of Indiaにしていました。その中で彼は「採用や人材、サポート環境の観点から見て、インドのスタートアップエコシステムの大部分は、シリコンバレーに劣っています」と語り、さらにインドを拠点とするスタートアップは「適切な人材やガバナンス、メンターを持っておらずつまづいてしまっている」と話していました。彼は、”最後の審判の日”のようなものが向こう12〜18ヶ月の間に起きて、スタートアップの評価額が急激に下落すると考えているようです。このような彼の見解には同意しますか?

SK: まず、2015年には確かに過度の資金がインドに流れ込んでいました。しかし、だからといって、インドのスタートアップが健全な状態にないとは言えません。インドの起業家は、スケールと成長と利益の相互作用について理解しています。さらにスタートアップのエコシステムも、これまでにないほどしっかりしています。ファンダメンタルを見てみれば、インドのマクロ経済はとても良い状態にあると分かります。ビジネスに理解のある政府によって経済の形式化、デジタル化が進み、インド経済自体もよいペース(7%のGDP成長率)で成長してるほか、通貨もとても安定しています。さらに、市場はモバイルユーザーで溢れているので、以前に比べて、新たに設立されたスタートアップの成長スピードがかなり上がってきています。

私たちがどのサイクルにあったとしても、ファンダメンタルには常に気を配る必要があります。その点に関して言えば、インドでは消費者や大企業、中小企業の間でモバイル化が進んだ結果、8億7000万人以上がモバイル契約を結び、2億人以上がスマートフォンを利用しているほか、1億5000万人以上がソーシャルメディアを使い、6000万人以上がさまざまな商品をオンライン上で購入しています。つまり、インドにはテック系スタートアップが誕生・スケールする環境が整っているんです。

TC: 未だインドの人口の大半が住むとされる”ルーラル・インディア(インドの農村地域)”への投資は現在行っていますか?例えばMayfield Indiaは、ベンチャーレベルのリターンをベンチャー投資よりも小さなリスクで狙うことができると、建設業者などのローテクビジネスに最近投資していたと記憶しています。彼らの言うようなチャンスはまだ存在するのでしょうか?また、Accel Indiaはそのチャンスを追い求めているのでしょうか?もしもそうだとすれば、どのくらいの時間を都市部と農村部それぞれにかけているのか、理由も併せて教えてください。

SK: テック企業の投資家として、私たちはいつも、サービスの利用のしやすさ、使い道、価格を含むいくつかの側面に気を配っています。

ルーラル・インディアでも、最近モバイル端末の利用者が増えてきています。1億人以上の人々が住むルーラル・インディアは、上記の3つの側面を考慮しても、これからとても有力なマーケットになるでしょう。新しいファンドのテーマのひとつが、インドの新興地域での”next 100 million(1億人以上の新たなネットユーザーがルーラル・インディアから生まれるという予測)”です。現在投資している企業を見ても、インドの新興地域が今後伸びていくことが分かります。

例えば、近年のスタートアップエコシステムを活発化してきたインフラの大部分をつくったのは、Flipkartでした。初のオンライン・モバイル決済サービスや物流インフラといった、オンライン・オフラインに関わらず、アメリカでは当然のものとされている商業インフラのほとんどを彼らが構築してきたんです。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

シリコンバレーからでは見えない新興市場におけるビジネスの可能性

Go-Jek Indonesia Pt. motorcycle taxi riders drive along a street in Jakarta, Indonesia on Monday, March 21, 2016. The Jakarta-based startup has already become a household name in its home country. The startup's app has been downloaded more than 11 million times and it has more than 200,000 motorbikes. Its name is a play on ojek, the Indonesian word for the motorcycle taxis that crisscross Southeast Asia's most populous nation. Photographer: Dimas Ardian/Bloomberg via Getty Images

編集部記:Sebastiaan VaessenはCrunch Networkのコントリビューターで、Naspers Groupの戦略リーダーを務める。

シリコンバレーがデジタルイノベーションの地理的な中心地であるというのは頷ける。Google、Facebook、Uber、Netflixなど、世界を牽引する多くのグローバルテクノロジー企業はシリコンバレーで育った。しかし、次の大型スタートアップを見つけるには、シリコンバレーの外に目を向ける必要があるだろう。

可能性

欧米スタートアップは世界が直面する「重大な」ニーズを解決するというよりは、「金持ちヒップスターの生活のアシスト」に注力するスタートアップが多いように見える。

次の5年で、新たに25億人がスマートフォンでオンラインとつながるようになる。その80%は新興市場からだ。これは、各地域のニーズに特化したイノベーティブなソリューションを構築する地元起業家の数を確実に伸ばすことだろう。その一環で大きく成功するビジネスも出てくるだろう。将来的に大規模なデジタルイノベーションが欧米でない市場から誕生する確率が高いのだ。

証拠

このトレンドはもう始まっている。例えば、 私たちのポートフォリオのうちの1社にインドのredBusがある。redBusが登場する前は、インドの中で移動す際、各社バラバラの時刻表を見て無数のバス会社と交渉しなければならなかった。国の端から端に移動するには複数の乗り換えをやりくりしなければならず、混乱を招いていた。redBusはこの複雑な市場を統合し、インド全域におけるバスのシンプルなチケットプラットフォームを構築した。現在はマレーシアやシンガポールなど、海外市場にも展開している。

GO-JEKも良い例だ。この企業は、インドネシアの10の主要都市における20万人以上の小型バイクのライダーをつなげ、例えば食品配達の輸送に活用している。

世界中の成長市場が新たなデジタルイノベーション・ハブとして台頭する下地が出来つつある。

Naspersが投資するTruckPadは、モバイルアプリを使ってカソリンスタンドの物理的な広告板の輸送を行う小さなベンチャーとして始まった。今では、ブラジルにおいて毎月35万人以上のトラックドライバーが何百万ものトラック運搬の仕事に入札するようになった。

これらのビジネスがシリコンバレーで生まれることはなかっただろう。シリコンバレーにはない課題に取り組んでいるからだ。これらのスタートアップは、急成長を遂げる市場において何十億人が毎日直面している問題を解決している。

次はどこか?

成長市場で地域の問題を解決するチャンスは、多岐に渡る業界で豊富にあるだろう。

世界ではまだ12億人が電気へのアクセスがない。世界の3分の1以上の人口はまともなヘルスケアや教育へのアクセスがない。世界には銀行サービスを利用できない人が約25億人にいる。そしてアフリカ、アジア、ラテンアメリカ、中東といった成長市場には22億人が住んでいる。

そこには社会における深刻な課題がある反面、商業的チャンスも大きく広がっている。新興市場において25億人が新たにスタートフォンを保有するようになれば、それは地域のテクノロジー起業家と彼らのビジネスが育つ強力なプラットフォームになるだろう。JumoやM-KOPAのビジネスが一例だ。

Jumoは、サブサハラアフリカ地域のモバイルユーザーが従来の銀行システムを介さなくてもローンが組める金融マーケットプレイスだ。 一方M-KOPAはケニアの世帯に、モバイル決済の従量課金で購入可能なソーラーエネルギーのソリューションを提供している。

世界は、ソーシャル・モビリティーと経済的な繁栄において大きな課題を抱えている。必要性は新たな発明を促す。現在、世界中の成長市場が新たなデジタルイノベーション・ハブとして台頭する下地が出来つつある。次の何百億ドル企業を作る起業家はサンパウロ、バンガロール、深センといった地域から誕生する。そしてその会社の事業ははお金持ちのヒップスターを相手にするものではないだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website