Comcastが広告入りの無料ストリーミングサービスXumoを買収

Comcast(コムキャスト)が広告入りの無料ストリーミングサービスXumoを買収した。

190以上のチャンネルを展開しているXumoは、複雑なオーナーシップ履歴を持つ。同社はパナソニックと、Myspaceの親会社Viantの合同ベンチャーとして2011年に始まった。ViantはTime Incに2016年に買収されTime IncはのちにMeredithに買収された。

今回の買収については以前、Wall Street Journalが交渉中だと報じていたが、両社は買収の詳細を明らかにしていない。XumoはComcastのケーブル部門内で独立して運営される、とComcastは話している。

XUMOの才能あるチームはすばらしい、最高のストリーミング能力を生み出した」と同社は声明文で述べた。「このチームがComcastに加わることに興奮を覚えている。これからも発展するようサポートすることを楽しみにしている」

Viacom (現ViacomCBS)が別の広告入り無料ストリーミングサービスPluto TVに買収されてまだ1年ほどだ。

そして数カ月以内にComcast所有のNBCUniversalPeacockを立ち上げる。このサービスには有料サブスクリプションのオプションが含まれる一方で、NBCUniversalの会長Steve Burke(スティーブ・バーク)氏は「広告が入るプレミアムなコンテンツ」にフォーカスする余地があると主張し、同社は広告が果たすであろう役割を強調した。

Xumoが最後(2019年春)に公表した月間アクティブユーザー数は550万人だった。

画像クレジット: Erik McGregor / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

「ストリーミング戦争」の正体:Disney、Netflix、Amazon、Appleなど各社徹底解説

編集部注:本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。普段は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。これまでは、日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきました。普段は、Off Topicのポッドキャストでも発信してますが、前回の記事が好評だったので、今回は「ストリーミングサービス事情」について記事にしてみました。

はじめに

2019年から2020年にかけて多くのプレイヤーが参入してくるストリーミング事業。Netflix、Amazon、HBO、Huluなどプレイヤーがいるなか、昨年11月にはDisney+、さらにAppleがApple TV+も登場。2020年はHBO Max、NBCUniversalが自社ストリーミングサービスのリリースを予定しており、元Disney会長のJeffery Katzenbergが始めた「Quibi」もリリース予定と、競合がかなり増えている。

このストリーミング戦争のポイントは、Netflix以外のプレイヤーはコンテンツやストリーミングでマネタイズする気がなく、ストリーミングはただ一つのユーザー獲得・ロイヤリティーチャネルでしかないことだ。利益率がより高い各社エコシステムへ導く戦争となっている。

これをDisney+が一番上手にやっているため、まずはDisney+の話から紹介し、続いて他社プレイヤー(Amazon Prime、Apple TV+、HBO Max)、最後にNetflixの状況について紹介していきたい。

TLDR

まずは、各プレイヤーと全体の流れのポイントをまとめると:

・「ストリーミング戦争」は存在しない。ストリーミングをきっかけに各社(Netflix以外)はユーザーを自社エコシステムに入れて別でマネタイズしている
・現段階では、Disney+とこれからリリースされるHBO Maxがパワープレイヤーに見える
・Netflixは5〜10年後には無くなっているかもしれないが、グローバルでは優位性はまだある
・Netflix/Spotifyのようなピュアプレーは厳しいビジネスになるかもしれない

Disney+(ディズニー・プラス)とは

Disney+(ディズニー・プラス)はDisneyの自社ストリーミングサービスで、Disney、Pixar、Marvel、Star WarsなどDisneyの作品を月額課金で見放題のストリーミングサービス。

価格は月額7ドルだが、3年契約は月額4ドル。Verizon利用ユーザーは1年間無料。競合のNetflixの月額13ドル(一番人気プランが)と高く感じる。

Disneyが大きなリスクをとってストリーミングを始めた理由は?

Disneyは「世界のトップメディア企業」といっても過言ではない。過去10年のDisneyの実績を振り返ると:

・$1B以上の売上を達成した映画を25作(他社を合計して13作)
・$2B以上の売上を達成した映画を3作(他社は0作)
・歴代最高売上の映画を製作
・10年中8年は年間のトップ映画を製作
・Baby Yodaを作ったw

圧倒的なコンテンツ力は、Star WarsやMarvel、Foxなど有名IPを買収したからでもあるが、本当にすごいのは、上手に自社エコシステムへ取り組んでいること。
これまでのビジネスモデルは、AmazonやNetflixへコンテンツの放映権を渡す形で、フィーだけでも約$5Bの売上とほぼ粗利。では、そのDisneyはなぜ大きなリスクを取って自社ストリーミングサービスを始めたのか?

2017年7月、Disneyはストリーミング技術を持っているBAM Technologiesを$3.75Bの時価総額で買収した。今回、オリジナルコンテンツ制作のために何千億円と払い、さらにNetflixや他社ストリーミングサービスからDisneyコンテンツを引き戻すためにも大金を払っている。

今回のDisneyの行動を見ると、社運を賭けたようにDisney+を推している風に見える。逆に言うと、失敗するとかなりDisney全体・株価に影響することになるだろう。

Disney+の戦略 Disney-as-a-Service

Disney+の安いプランで月額4ドルと聞くと、Disneyは儲ける気がなさそうに見えるが、事実儲ける気がない。
つまり、低価格設定はユーザー獲得のためであり、小売業界でも同じことが起きたように直接(ダイレクト)にユーザーと関係を作りたいのだ。今まで映画館やテレビ、Netflixなど他社のプラットフォームでは取得できなかった、顧客の趣味嗜好がわかるようになる。例えば、どのDisneyキャラクターや作品が好きかがわかるようになり、コンテンツやマーチャンダイズの判断はもちろん、Disney商品や体験のクロスプロモーションが可能となる。

このクロスプロモーション戦略は、最近のDisneyが考えているものではなく、創業者のウォルト・ディズニー氏本人も考えていたことだった。最初のテーマパークが作られた1年後に描かれた戦略の中心にはコンテンツスタジオがあり、テレビや音楽、漫画、雑誌などに繋がり、そこから全てのビジネスがマーチャンダイズ事業とテーマパーク事業に繋がっていくと50年前以上前から生み出していた。

たしかに、Disney+の値段を4ドル値上げして一人当たりから追加で毎年50ドル取るより、一人でも多く$1,000の年間パスや$5,000の家族クルージング旅行を買ってもらった方が儲かる。この戦略はすでにDisneyは映画で行っている。2018年だけでDisney Parks and Resort部門(テーマパーク事業)は映画部門の2倍の売上と1.5倍の粗利を出している。Disneyのアセットをフル活用するには、自社でストリーミングサービスを持つしかなかった。Disneyはこの個人データの価値を圧倒的に評価しているため、ストリーミング事業なんて無料で提供しても問題ないのだ。

今のDisneyのアセットを見ると、過去ウォルト・ディズニー氏が描いたチャネルやIPが変わったかもしれないが、テーマパーク事業自体はあいかわらず強い。

Disneyテーマパークの2018年売上が$20B、営業利益率が18%、年々10%成長。代行品がないため、価格弾力性が小さい。LTV/CACも良い数字になっているだろうし、メディアより遥かにマネタイズが出来るビジネス。

このコンテンツ力、そしてコンテンツをより単価の高いオフライン事業や体験事業に流し込む戦略は正に「Disney-as-a-Service」と言えるだろう。

他社にはできないDisney+の強みとは?

まず、他社ストリーミングサービスと比較して明確にプロダクトの強みを伝えられている。Disney+は知名度はあったが、それでもDisneyは何を提供するかを常に表現するようにしていた。アメリカではDisney+ロゴだけではなく、『Disney + Pixar + Marvel + Star Wars + National Geographic」と記載がほぼ必ずあった。

これは明確にどのコンテンツを提供できるかを上手く伝えていて、さらにStar Warsの新番組「The Mandalorian」をプロモーションする広告でも他のIPブランドを並べている。簡単に見えるが、これは競合は上手く出来ていない。

Apple TV+は何を提供して、何で欲しいと思う?同じくHBO MaxやNetflixは何を提供する?Disney+ほど明確にIPを並べる会社が今までなかったからこそ、Disney+の強みが明らかに見える。

さらに、運も少し良かったかもしれないが、「The Mandalorian」というヒット作品を出せたのは、Disney+の強みになった。Disneyコンテンツは人気だが、新しいヒット作品が無ければここまで成功はしなかったはず。The Mandalorianと作中に登場する新キャラクター「Baby Yoda」が大きなインパクトを与えたのは間違えない。

さらに、子供向けのコンテンツが強いのは良い優位性になる。HBO Maxも良い勝負をしてくるとは思うが、Disneyはやはり子供向けのコンテンツが多い。子供が見たいコンテンツは中々親は断ることが出来ないし、さらに子供は何回も見てくれる。Disney+のオリジナルコンテンツとライセンス予算は圧倒的に他社とは少なかったが、強く見えるのは何回も見たいコンテンツを選んでいるから。大人は「アイリッシュマン」を一度しか見ないかもしれないが、子供たちは「Mr.インクレディブル2」を何度も見る。

良いコンテンツが揃っているが、コンテンツ数を見るとNetflixや他社とは少ない。来年の中旬ぐらいで見るコンテンツが無くなってユーザーがエンゲージしなくなる可能性もあると計算して3年契約のパターンを出してきたと思う。そのためDisney+を更新する判断は数年後になり、そのタイミングでは十分なコンテンツ量を貯められる時間稼ぎの技。

ザ・シンプソンズという有名ショートアニメの大きな影響

Disneyは自社コンテンツ以外の購入もしたが、その中でも最も高額だったのはシンプソンズのライセンスだ。シンプソンズの独占契約だけでも毎年$125M〜$150M払っていると言われている。

ただ、Disney+内ではシンプソンズが圧倒的に人気になったせいで、Disney+の新しい広告では「+The Simpsons」を入れるようにした。

実際にDisney+の初期に一番見られていた番組はThe Mandalorianとシンプソンズ。それはシンプソンズというコンテンツがストリーミングと相性がいいからだ。

アベンジャーズやStar Warsも実際観られているが、視聴可能時間数はシンプソンズと比べてとても低い。それは、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)を全部見るには48時間かかるが、シンプソンズは250時間。シンプソンズは集中して見るケースと裏で半分聞いているだけでもフィットする番組。特にアメリカ人は日本人がラジオを聴いたりするように、シンプソンズのような軽いコンテンツを半分雑音として聞いたりする人もいる。

あらゆる手を使った、Disney+の本気のプロモーション

Disney+は1日目で1,000万人の登録者がいた中、多くはオーガニックで入ってきたと言われているが、実際はローンチ6週間前からたくさんのキャンペーンしていた。9月〜12月だけで$250M使ったと言われている。

Disneyが保有しているABCのテレビ番組「Dancing with the Stars」でも何度もプロモーションされ、フロリダのDisney Worldも広告だらけだったらしい。

Disney店舗の従業員もTシャツに登録用のQRコードをつけたり、テレビでの天気予報中にもプロモーションするように手掛けている。

さらに、Verizonとの提携によって1,700万人に1年間無料アカウントを発行した。

Disney+を成功させられたのも、会社全体としてDisney+を一番重要視することを判断したから。会社としてオフライン店舗、クルーズ船、テレビ番組との連携、さらに2018年リリースする予定だった映画もわざと遅らせてDisney+で配信するようにした。

これからさらにDisneyはDisney+を推してくるための戦略予想は以下だ:

・マーベルの漫画アプリはDisney+ユーザーに無料にする
・Disney年間パスを持っているユーザーはDisney+が無料に付いてくる
さらに、Disney+のリスクのパートでも話したが、DisneyはNetflixや他社ストリーミングサービスからDisneyコンテンツを買い戻している。他のサービスとのライセンス契約をしていたため、アメリカではMCU(マーベル映画)の全23作中、6作しかDisney+にしか出ないと言われていた。でもDisney+がローンチした時は23作中、16作を見ることが出来た。これはライセンスを買い戻したということだが、このコストは偉大な物だったはずだが、マーベルのほとんどを見れる価値の方がDisneyに取っては重要だった。

 Disney+の現状と実績

TechCrunchがSensor Towerのデータを公表したものだとTikTokより倍以上ダウンロードされ、2019年Q4ではアプリランキングのトップを示したとのこと。

合計4,100万ダウンロード、モバイルからだけで$97.2Mの売上を達成。12月だけで1,350万ダウンロード、モバイル売上が$43.9M。これは他社ストリーミングサービスのローンチと比較しても圧倒的な差がある。Disney+の次にでかいローンチをしたのはHBO Nowで、それがたったの$23.7Mの売上しか達成しなかった。

どれだけ他社ストリーミングサービスと比較してダウンロードされたのかが明らかなグラフはこちら:

さらに、Apptopiaによるとローンチした最初に一ヶ月間の間では1,000万人のDAUがいて、セッション時間もNetflixより5.8%長く、Amazon Prime Videoより7.8%長かった。

YouGovのアンケート結果でも、76%のユーザーがDisney+を5点満点中4か5をつけていた。Netflixだと74%、Amazon Prime Videoは66%、Huluは64%、Apple TV+は48%。特にDisney+の使いやすさが評価されたらしい。

Amazon Prime Video 「ゴールデングローブ賞を取れば、靴がもっと売れる」

Amazon Prime Video(アマゾンプライム・ビデオ)、はユーザーがAmazon Primeに入っていれば無料。そう考えると現在で、1億世帯がAmazon Prime Videoが使えることになる。Amazon CEOのジェフ・ベゾス氏は、「Amazon Prime Videoはコンテンツではなく、EC/Amazon本業へ繋げる戦略」だと2016年のRecodeインタビューで語っている。「Golden Globe賞を勝てば靴をもっと売れる。Prime Videoを見ているPrimeメンバーはトライアルから課金する確度が高く、Annual Subscriptionを更新する確度が高い。」

実際にその動画はこちらで見れる:

AmazonはわざとAmazon Prime VideoをAmazon Primeより高い値段にしている。なぜなら、少しでもAmazon Primeへ入ってくれる理由を上げるためであれば、コンテンツを無料で配信してもROIが十分だと計算しているからだ。実際に2018年の調査を見ると、11%はAmazon Primeに入った一番の理由はPrime Video。

それでAmazon Primeに誘導させて、もっとユーザーにものを買わせて、購入データと動画視聴データを元によりターゲティングした商品レコメンドを出来るようにしている。実際にこのデータの活用したのは去年末にAmazonが出したパーソナライズされたカタログ。

Amazon Prime Videoはコンテンツを利用したユーザー獲得の戦略でしかない。Amazon社内で計算した結果、Amazonのヒット作品The Man in the High CastleのPrimeへの新規ユーザー獲得コストは一人当たり63ドル。Amazon Prime自体は毎年99ドルかかるので、それだけでも良いCACだと思う。

Amazon社内では重要KPI「Cost per first stream」がある。これはAmazon Primeに入ったユーザーが一番最初に見る番組を評価している。計算方法は:

(番組Aの製作費 + 番組Aのマーケティング費用)/ Amazon Primeに入って初めて見た番組が番組Aだったユーザー数

Cost per streamは低い方が良く、Amazonからするとどの番組がPrimeへの加入を上げているのかをコスパベースで見れる。これはNetflixでも後ほど説明するが、Netflixも似た指標を持っている。

2017年だが過去にリークされたAmazonの社内データはこちら(S1 = シーズン1):

Apple TV+は、iOSエコシステムとApple製品を買わせるためにある

AppleのアプローチはAmazonと似ている。Appleはテレビ市場なんて興味なく、AppleはiOSのエコシステムにしか興味がない。今だとAppleデバイスを購入したユーザーは1年間Apple TV+に無料アクセスできる。さらにApple Music、TV+、Newsなどを今年バンドルして安く売る噂が出てきている。これはやはりApple商品とiOSエコシステムにユーザーを取り入れるためとしか思えない。

Appleはかなり著名人を集めてオリジナルコンテンツを作っているが、今のところは評判があまりよくない。特に外部IPを取り入れてないので、全てオリジナルだが、ヒット作品は今のところないため、あまり見られてない印象。Apple TV+は特に事業的にはインパクトはあまりなかったとApple CFOが言っている。ただ、Ampere Analysisによるとアメリカだけで3,000万人以上がApple TV+に登録されているとのこと。これは新規Appleデバイス購入者が1年間Apple TV+を無料でもらえるからかもしれないが、2019年4Qでデビューしたオリジナルシリーズのトップ10の中の6作がApple TV+のものだったらしい。

本当に見られているかは少し疑問があるが、Apple TV+も今後どう動くかは見てみたい。

AT&T/HBO Max:デジタルサービスのクロスプロモーション

AT&TがHBO親会社Time Warnerを11兆円で買収したコアな理由はAT&Tユーザーに対してHBO Maxを無償で与えてAT&Tのコア事業(インターネット、電話キャリア)を伸ばす・リテンションさせるため。AT&TとしてはHBO Maxは良くあるキャリアの無料特典にしかすぎない。

AT&Tは2025年までに5,000億円の粗利をHBO Maxは出すと言っているが、それをするために5,000億円かける予定で、さらに自社ビジネスとカニバってしまうので、実際にHBO Maxの粗利を本気で見ているとは思えない。さらにユーザー離脱以外に個人データを取得して他のデジタルサービスのクロスプロモーション、分析・広告事業にも色々展開できる。

HBO Maxの良いポイントは良いIPを揃え始めていることだ。特に良いのが20分以下のコンテンツを多く集めていること。短め尚且つ何回も見れるコンテンツを集めるのはストリーミングサービスの利用率が上がる(Disney+でシンプソンズが人気のように)。HBO Maxが獲得したIPと払った放映権はどれも高額で有名だ。サウスパーク($500M)、リック・アンド・モーティ(数百億円想定)、フレンズ(5年間で$425M)、Big Bang Theory($1B以上の噂)、Adult Swim、Crunchyroll、カートゥンネットワークなどが含まれる。

特にアニメコンテンツを重要視しているHBO Maxは正しい選択だと感じる。子供は何回も同じテレビ番組を繰り返して見るし、さらに大人に人気のアニメ(サウスパーク、リック・アンド・モーティ)やあらゆる世代からの人気アニメ(カートゥンネットワーク)を集めているのはミレニアルやY世代を囲い込む戦略に違いない。そして、ここ5年ぐらいで急成長している日本のアニメコンテンツの放映権を持っているCrunchyrollとも提携。

そして、ジブリまでHBO Maxに入ることを決めた。2019年の初めではオンラインでは絶対にジブリを見ることはないと言っていたジブリ側だが、2019年秋にHBO Maxが放映権を取得したと発表。こちらも数百億円支払ってもおかしくないと思われるが、面白いのはディズニーと組んでたジブリがHBO Maxと提携したこと。

ストリーミングの先駆者 Netflix アメリカ市場では苦戦中

Netflixのユーザー成長率はかなり株価を影響しているが、アメリカではここ最近は伸びていない。2019年は一時期ユーザー数がアメリカで減ったせいで、株価がかなり下がった時期もあった。その主な理由は競合が増えていること、Netflixが保有していた外部ライセンス(人気IPのFriends、The Office)などが別のストリーミングサービスと独占契約していること、オリジナル番組で大ヒットしているコンテンツが少ないからだと思われる。

アジア市場に先手を打ちたいNetflix

Netflixの強みは海外市場をちゃんと取れていること。競合が少なく、他社より良いコンテンツを出していて、それは数年変わらないと予想している。加えて、そこからの売上をアメリカに投資できる良い仕組みを作っている。

ただ、難しいのは価格設定。アメリカのユーザーはNetflixは安いと思っているが、インドや東南アジアだと毎月10ドルは少し高いかもしれない。その影響もあってインド、マレーシア、シンガポール、インドネシアでは月額3ドルのスマホのみのプランも出している。

さらにNetflixは各地域でもオリジナルコンテンツにとてもお金をかけている。インドだけで$400M以上。インドネシアだと、ライター向けのワークショップをLAとジャカルタでNetflixが主催している。Disney+、HBO Max、その他ストリーミングサービスがアメリカにフォーカスしている中、Netflixは海外にフォーカスしているのは正しい戦略なのかもしれない。

Netflixオリジナルコンテンツの現状

Netflixがオリジナル番組に多くの予算をかけ始めてから、アメリカ内で「誰でもNetflix番組」を持てるとジョークになった。

2019年にオリジナル番組に$15.3B使ったNetflixは今年$17Bの予算を予定。

2018年のオリジナル番組は全体の予算の85%を占めているので、オリジナルがどれだけ重要か明確だ。過去は他社IPのライセンス契約が大事だったが、ストリーミング企業が増えている中でそのIPがNetflixで見れないようになっている。

実際にNetflixで人気のコンテンツ「The Office」や「フレンズ」は、他社から独占契約されてしまった。そうなるとオリジナル番組を作らなくてはならない。オリジナルコンテンツへ投資を過去からしているおかげで、昔だと圧倒的に外部IPに頼ってたのが、NetflixオリジナルIPの価値が4年ほどでほぼゼロから$6Bまで上がった。

3年前にマーベルのシビル・ウォーなどの映画の原作を作ったコミック出版社のMillarworldを買収するなど、コンテンツクリエイターへの投資が加速するだろう。

もちろん人気外部IPをキープできるのであればNetflixはやっているが、今だと高くなっている。The OfficeだけでNetflixは数百億円出す予定だったが、それでも取れなかった。Friendsを去年Netflixで載せるだけで$100Mかかった。

ただ、実際これだけオリジナルに投資してもまだライセンス外部IPの方が見られている。合計視聴時間の3分の2が外部コンテンツ。

NetflixだとHouse of Cards、Stranger Things、Orange is the New Blackなどのヒット作品はあるが、何回も見るヒット作品が少ない。フレンズやSeinfeldは何回も見るため、視聴時間からするとオリジナル作品が少ないのもわかる気がする。

Netflixのコンテンツは、本当にデータドリブンなのか?

近年Netflixはデータ活用してコンテンツ制作やレコメンドするので有名だが、実は創業時からデータの重要性を謳っていた。最初にどれだけDVDをストックするかを決めるときも創業時にジョインしたMitch Loweさんの経験データを使って決めていた。

事実、Netflixは各番組の価値をトラッキングしている。トラッキングしているKPIは各番組がどれだけ新規ユーザーを連れてくるか、そして既存ユーザーのリテンションを影響しているか。これを社内では「Adjusted Viewer Share」と呼んでいる。Adjusted Viewer Shareとは視聴者を単純にカウントしているだけではなく、サブスク登録して24時間以内に番組を見たユーザーと数週間ぶりにNetflix番組を見てなかったユーザーが視聴したユーザーをより高いウェイト・評価を与えている。逆にNetflixを普段見ているユーザーの評価は低い。これを28日サイクルでトラッキングしている。

このAdjusted Viewer Shareと番組の予算を組み合わせてスコアリングしている数字「Efficiency Score」が社内の人たちによると一番重要視されているKPI。この数字を見て番組が成功したかを決めるらしい。

Netflixは人気番組でも2シーズン目の後に番組を終わらせることが多い。社内データで解ったのは、最初の2シーズンが新しいユーザーを獲得するのに一番効果的らしい。3シーズン目以降はあまり新規獲得に繋がらない。

ただ、ストリーミング戦争でデータを活用してより良い番組を制作できるのは間違っている。既にいろんな数字は見ているはず。実際にNetflixがデータ活用した「House of Cards」も結局イギリスで人気だった類似シリーズとアカデミー主演受賞者のKevin Spacey、有名監督David Fincherを組み合わしているので、それは上手くことは予想できるはず。

実際に、Netflix Chief Content OfficerのTed Sarandos氏も徐々にデータの重要性をトーンダウンしていると取材で公言している:

・2015年:「判断軸の7割はデータ、3割は上からの指示」
・2018年:「判断軸の3割はデータ、7割は勘」
・2019年:「判断軸の2割はデータ、8割は勘」

子供向けコンテンツに弱いNetflix

Disney+リリース直後にNetflixがスポンジ・ボブなど人気アニメ番組を出している「Nickelodeon」とオリジナルアニメコンテンツ制作の提携を発表。

提携の重要案件はスポンジ・ボブのスピンオフシリーズ。約$200Mほど払ったと噂されているて、スポンジ・ボブ以外は人気シリーズのティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズの制作もする。

ストリーミング戦争の中でNetflixが子供に圧倒的に支持されるコンテンツがなかった
・Disney+:Pixar、Marvel、Star Warsの自社コンテンツ
・HBO Max:Sesame Streetのライセンス、ジブリ、カートゥンネットワーク、Crunchyroll(アニメ)

Netflixは過去子供向けのコンテンツ制作していたが、Disney+とHBO Maxと比較するとかなり弱い。これを考えるとNickelodeonとの提携はわかりやすい = 良いIP取得のためだ。

これで90年代の子供向けアニメ番組トップ3(Disney、カートゥンネットワーク、Nickelodeon)がストリーミングされる時代になった。ただ、この三つの中だと圧倒的にカートゥンネットワークが強かった印象。

HBO Maxはみんな大好きな「Game of Thrones」だけじゃなくなくなり、『子供向け番組が得意なHBO Max』になるかもしれない。Disney+もMarvelでかなり使われるが、TV番組系だとSesame Street、カートゥンネットワーク、Crunchyrollのライナップは強すぎる。

気になるのはNickelodeonがViacomの子会社なこと。Viacomは自社ストリーミングサービスをリリース予定、さらにアメリカ放送ネットワーク企業のCBSとの合併も考えている中、CBSも自社ストリーミングサービスを出す。Netflixは制作費の負担を含めて、かなり大金を出したはず。

若者の支持率が高いNetflix、しかし油断はできない?

YouTube TVが出た影響でGen Zの中で初めてYouTubeがNetflixよりもストリーミングで人気になったが、それでもかなり若者層には人気だ。ただ、2018年から少しずつだがNetflixでの視聴時間割合が徐々に減っているのだ。

Netflixのインフラの強み

Disney+が開始初日に接続障害が起きた理由の一部はインフラに問題があった。Netflixはというと、自社のCDNを開発し、世界中に自社サーバーを立ち上げて、そのサーバーに人気番組のコピーを入れている。Netflixは1.58億人のグローバルユーザーをサーバーを世界中にばらまく事によってStranger Thingsの新しいシーズンが出た時の需要に応えられるようにしている。

ストリーミング以外の別のマネタイズ方法が必要?

これだけオリジナルコンテンツに投資しても、新規登録ユーザー数が足らないと以前取締役会で説明したNetflix。今の売上とコストを見ると、圧倒的にコストの上がっているスピードが高い。

売上を上げるためにNetflixは値段を上げなければいけなかった。しかも、ユーザー獲得コストもどんどん上がっている。

毎月13ドル払っているアメリカのユーザーのペイバック期間は4年(今後アメリカでのユーザー数成長率が下がるとさらに上がる)。

これを見ると、Netflixは他の方法でユーザー単価を上げる、別の方法でマネタイズを考えないといけない。そこでNetflixは、IPのグッズ商品化やテーマパークを考えているらしい。テーマパークは元々自社で作ると言ってたが、コスト的に合わなかったためユニバーサルスタジオでStranger Thingsのハロウェン企画・イベントなどを数年試している。グッズもやはりStranger Thingsのものはかなり売れている。

ただ、広告を絶対やらないと話しているNetflixはかなり損をしている気がする。Stranger Thingsで出るものは90年代のレファレンスするものが多く、それで他社が設けている。例えばコカコーラの失敗した商品のNew CokeがStranger Thingsに出た時に、コカコーラはNew Cokeの限定版を出して、かなり売れたに違いないが、恐らく一円もNetflixに入ってきてない。

グッズ化するにはヒット作品じゃなければいけないし、Netflixのヒット作品を見ると基本的にグッズ化するようなものではない。そうすると他のマネタイズ方法は他社(Disney、Apple、Amazonなど)の方が圧倒的に優位性を持っているのに違いない。

ブラックホースなるか?謎に包まれたQuibi(クイビー)

Quibi(クイビー)はモバイル専門の動画配信サービス。ドリームスワーク・アニメーションの元CEOのJeffrey Katzenbergと元eBayと元HPのCEOのMeg Whitmanが作った会社。サービスリリース前になんと$1.4B調達している。

Quibiの特徴は全ての動画が10分以下。Netflixなどストリーミング系の会社はテレビやデスクトップ向けのコンテンツを提供している中、Quibiの作戦はモバイルメインでのコンテンツ配信すること。名前のQuibiも「Quick」と「Bites」を混ぜて出来た。

2020年4月6日リリース予定。サブスク型で、広告付きは月額$5、広告なしだと月額$8。クリスシー・テイゲン、スティーブン・スピルバーグ、ジェニファー・ロペスなどと一緒にコンテンツ制作を発表。さらにP&Gなど大手との広告案件も獲得済み。

中身があまり公開されていない中、唯一出ているのはTurnstyle技術。動画を見ている間にスマホを縦か横に向きを変えると違う見方に瞬時に変わる。

これをやるにはストリーミングと圧縮技術が必要。番組制作での撮影・編集は必ず縦型と横型でされている。制作側はQuibiに二つ動画と別の音声データを送り、それがシンクされてストリームされるようになる。ストリーミング中は見てない方の動画は解像度を下げて同時再生されていて、向きを変えるとそっちの解像度が高くなるように設定されてある。そのため通常の動画よりたった1.2倍のデータしか使わない。

Turnstyleが人気になるにはそれをフル活用するコンテンツが必要。ある番組では主人公がスマホを見るシーンがあるので、その動画を見ているユーザーがスマホを縦にするとまるで主人公の携帯をそのまま見ているようになるらしい。逆にアクションになるとスマホの向きを横にするように勧められるらしい。

ここでそもそもの疑問点が出る:コンテンツ見ている間にそんなにユーザーはスマホの向きを変えたいと思うか?実態はまだわからないが、Quibiはこの技術・体験が他社との差別化ポイントとして出しているのは間違えない。

Quibiのコンテンツは3つの種類がある:

・一つはハリウッドスターなどを活用した「Lighthouse」
・二つ目はニュースに特化して毎日見れる「Daily Essentials」
・三つ目はその間のクオリティーの「Quick Bites」

その中でもDaily Essentialsの影響でユーザーが毎日見てくれるようになると主張している。

Lighthouseコンテンツは映画フォーマットにイノベーションを及ぼすもの。実際にはLighthouseコンテンツは映画と同じもの。映画をチャプター分けして毎週一部リリースする形(いわゆる漫画・アニメと似ている)。なので2時間の映画を12チャプター(12週)にかけて出す形となる。

Lighthouseコンテンツの制作費はGame of Thronesと同じぐらい。1分間で約$125K、1エピソードが$7.5Mぐらい。Quick Bitesコンテンツは1分で$20Kから$50K、Daily Essentialsは1分で$5Kから$10Kぐらいの製作費用らしい。この製作費はテレビ・映画業界と似たレベルのもの。Jeffrey Katzenbergはあえてテレビ・映画業界と同じ製作費にしている。彼としてはNetflixよりも、そもそものテレビ・映画のフォーマットを変えようとしている。

平日だけで毎日3時間の新しいコンテンツを出す予定。それだけの新しいコンテンツを出せば高いDAUを保てると信じている。1年目で175作のオリジナル番組、8,5000エピソードをリリース予定だそう。

ローンチまでは感や経験を活用して、その後はデータで全て決める。最初にどうやってローンチするか、何作リリースするか、配信スケジュールなどはJeffrey Katzenbergの知見を使ってやるが、4月7日(リリース直後)はMeg Whitmanの得意とするデータ活用して判断をするとのこと。

しかし、アメリカだと既に上手くいかない声が上がっている。ストリーミング事業は難しいのでその理由も分かるが、まだ情報が少ない中で判断はしにくいと思う。

直近で$400M調達していて、合計$1.4Bほど調達しているが、社内ではコンテンツ制作とプロモーションだけで$1.5Bかかると言う話も出てきている。Quibiはサブスクで伸びていくが、社内計画だと1年目に$260Mの売上、2年目に$700Mの売上になるとのこと。さらに、1年目の広告分は既に売り始めていて、そこから$150Mほどの売上が出るとのこと。サブスクの売上が思った以上上がらなければもう一度資金調達が必要になるかも。

しかも今回の$400M資金調達では前回参加した投資家のViacomやNBCUniversalが参加してない。これはあまり良い印象にはならない。1年で750万人のサブスク登録を目指しているとのこと。そのうち200万人はほぼ確定:アメリカ電話キャリア会社T-Mobileと提携して、彼らのユーザーは1年間無料でQuibiを使える。

新しいストリーミングサービスが入るのには難しい理由:課題解決型のサービスが少ないから

実際にストリーミング事業の需要は数年前に起きたものだが、今多くの大手ブランドがサービスリリースしているのは彼ら的に今やる必要性があるからだけで、あまりユーザーのことを考えてない。

Netflixは過去にあった課題(良いアクセス、値段、体験)を解決したのでファーストムーバーとして成長した。ファーストムーバーだったため、今の課題を解決しなくても十分使われる。

Huluが伸びた理由は低コストであったことと過去ネットに載ってなかったテレビ番組の再放送を出せたので需要の満たした。Amazonは無料でのコンテンツ提供と複数社からのコンテンツのアグリゲーションをして簡単なUI、配信体験を届けたのが良かった。HBOなどプレミアムネットワークはトップティアナコンテンツを提供することで優位性を保っている。

上記プレイヤーは初期でこの領域に入ったので課題解決を明確に出来た。今後も課題解決型なソリューションも出てくると思うが、そんなに多くはないと思う。

ほとんどのユーザーは追加料金(Disney+)でディズニーコンテンツを別に見たくない。出来ればNetflixで見たいと思っている。ただDisneyのような特化型ブランディングやその他コンテンツ・体験・特化型UIへの連携が出来るブランドに対してユーザーは価値を感じるかもしれない。

問題はその他プレイヤー。Netflix、Amazon、Apple TV、Hulu、Disney+、HBO以外のサービスは何の課題を解決する?何故人が欲しがるのか?それとも見たい番組と独占契約したから仕方がなく、そして恐らく短期的に課金・視聴しているだけでは?

無料のAVOD(広告付きストリーミングサービス)は解決ではない。無料で提供する方がユーザーが使ってくれるハードルが下がって見えるが、特に新しい課題を解決してない。4つ〜6つのストリーミングサービスを使っているユーザーがもう一つのサービスに登録するところまで行かない。

メディアに対してお金を払わない文化 = ピュアメディアが厳しい

アメリカ人はメディア・エンタメが好きだ。平均的に毎日5時間半の動画を視聴、2時間半の音楽を聞いている。仕事中、運転中、エクササイズ中、どの時でも何かしらメディアと触れ合っているが、その割にはコンテンツにお金をかけてない。

メディアの中だと、現在世界で一番お金が使われているカテゴリーはテレビで約30兆円ぐらい。ただ、60億人が2.5時間のテレビを見ていると考えると、コスパが良すぎる。それは音楽、映画、ストリーミング、ゲームも同じ状況となっている

しかも値段上げをユーザーがかなり嫌う。普通に考えるとケーブルテレビで月間450時間テレビを見る家族が80ドル払うのは良いディールだと思うが、誰も払いたくないと言う。SpotifyやApple Musicも年間120ドルで広告無しで4,000万曲へのアクセス権を持ってる。毎月90時間サービスを使っている中だとコスパが半端なく良いが、それでもユーザーはメディアに対してお金を払いたくない。New York Timesは新聞紙として最大手と言われているが、時価総額が5,000億円ぐらいしかない。

これを理解している企業たちは、メディアコンテンツを効率よく他の領域、商品、カテゴリーに誘導してユニットエコノミクスを成立させなければいけない。これはストリーミング戦争の裏に隠れている「エコシステム戦争」と言う新しいビジネスモデル。

結論

業界としてはNetflixがファーストムーバーだったが、今だとビジネスモデル的には一番遅れているかもしれない。ここ10年ぐらいでレガシーメディアから見るとNetflixは一番イノベーションを起こしていて、デジタル世代で一番進んでいたビジネスモデルを持つ会社だった。ただ、今見るとそのビジネスモデルは時代遅れかもしれない。

Netflixの市場規模は30兆円のコンテンツビジネス。彼らは動画広告をやらないので、それだけでも20兆円のビジネスチャンスの機会損失している。Quibiもこの市場を狙っているが、そのほかの会社はここではなく、別の方法でマネタイズをしている。コンテンツをフックにしてユーザー獲得する方法を取ってしまうと、そこから売上ゼロでも投資を莫大にしていく。実際にDisneyやAmazonはそうしている。ピュアメディアだけだとほぼ確実にプライシングで負ける。Netflixは値段を上げている中、Disneyは値段を下げているのを見るとそれが明らか。今後Netflixがピュアプレーであり続けるのか、今後Netflixがどう対抗していくのかが見所になる。

そうなるとNetflixが勝つ方法はコンテンツ、いわゆる自社アセットになる。ヒット作品、もしくは外部IPの独占契約を締結すること。Netflixが直近でジブリと締結したのも、去年$500M以上払ってSeinfeldの放映権を取ったのも、重要IPを確保する重要性をNetflixは理解しているから。結局コンテンツ勝負になると思われるが、ストリーミングで勝つには以下コンテンツが必要になってくる:

・有名コンテンツ・シリーズ:Stranger Things、マーベル映画など
・年代別コンテンツ(特に子供向け):カートゥンネットワーク、ジブリ、スポンジ・ボブなど
・ながら観できるもの:シンプソンズ、Big Bang Theory、フレンズなど

コンテンツのラインアップを見ると現状はDisney+とHBO Maxがリードしている風に見える。Disney+はシンプソンズ、Pixar、Marvel、Star Warsを持っている。特にシンプソンズは大量のコンテンツと、仕事しながら裏で聞けるライトなコンテンツ。後はDisney+は今の所The Mandalorianにベットして、今後はMarvel系の番組が出てくるので、人気度は落ちない。HBO Maxは子供番組が意外と揃っている:セサミストリート、カートゥンネットワーク、Crunchyroll、ジブリ。

結局家族で買うサービスとかだとこの2社が強い。その理由でDisney+がリリースされた1日後にNetflixはNickelodeonと提携を発表、彼らも必死に子供向けのコンテンツ制作をしている。ただ、ユーザー数ではNetflixが圧倒的にリードしているので、ここ5年で潰れるとかはないはず。Disney+も5年後の予想はまだ今のNetflixを抜いてないので、Netflixは今現在のユーザーのデータや他のマネタイズ方法を考える時間は少しある。

最後に、この記事には全く触れなかったが、Netflixやその他ストリーミングサービスにはもう1社競合がいる。それはSNSやゲーム、そして特にアメリカでは「Fortnite(フォートナイト)」。実際にNetflixの株主総会でも代表がFortniteを競合として指名した。結局これはアテンション戦争であり、アメリカの若者層は今圧倒的にFortniteにハマっている。そのアテンションを使ってマネタイズ方法が各社違うだけ。

Fortniteを作るEpic Gamesも実はゲーム以上の世界観を作ろうとしているが、それはまた別記事で説明させていただきますので、お楽しみにしてください!

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Written by Tetsuro(@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikirepo)

引用元

・https://www.theinformation.com/articles/netflix-plays-new-role-budget-conscious
・https://www.theinformation.com/articles/at-netflix-speed-is-key
・https://www.theinformation.com/articles/how-iger-broke-disneys-netflix-addiction
・https://www.multichannel.com/news/netflix-wont-be-hurt-by-disney-plus-and-other-svod-launches
・https://www.theinformation.com/articles/netflix-races-to-make-more-originals-as-studios-pull-back
・https://www.yahoo.com/lifestyle/experts-disney-streaming-kill-netflix-194842719.html
・https://www.vox.com/2019/4/12/18307539/disney-streaming-launch-cost-billions-netflix-strategy-change
・https://www.vox.com/recode/2019/11/12/20959837/streaming-wars-10-lessons-matthew-ball-alex-kruglov-disney-apple-amazon-netflix
・https://www.economist.com/prospero/2019/11/11/what-is-the-endgame-for-disney-
・https://www.matthewball.vc/all/minedmedia
・https://www.matthewball.vc/all/minedmedia
・https://www.statista.com/chart/10311/netflix-subscriptions-usa-international/
・https://www.wsj.com/articles/netflix-subscribers-fall-slightly-short-of-expectations-11571257175
・https://www.deseret.com/entertainment/2020/1/16/21069282/netflix-spending-billions-streaming
・https://www.vox.com/2018/12/21/18139817/netflix-most-popular-shows-friends-office-greys-anatomy-parks-recreation-streaming-tv
・https://www.forbes.com/sites/greatspeculations/2019/07/19/netflixs-original-content-strategy-is-failing/#28fd4d713607
・https://variety.com/2018/digital/news/netflix-original-spending-85-percent-1202809623/
・https://variety.com/2019/digital/news/netflix-orange-is-the-new-black-stranger-things-most-poular-1203267573/
・https://www.theinformation.com/articles/netflixs-asia-growth-challenge-trading-price-for-volume
・https://www.nj.com/entertainment/2019/05/new-coke-was-a-disaster-stranger-things-is-bringing-it-back-because-old-fails-never-say-die.html
・https://fourweekmba.com/amazon-prime-revenue-model/
・https://ew.com/tv/2019/10/29/rick-and-morty-south-park-hbo-max/
・https://www.theverge.com/2019/10/17/20919325/studio-ghibli-stream-hbo-max-spirited-away-kikis-delivery-service-my-neighbor-totoro
・https://www.forbes.com/sites/lisettevoytko/2019/10/18/south-park-reportedly-nearing-500-million-streaming-deal/#29d8c06851e2
・https://www.theverge.com/2019/9/17/20870140/big-bang-theory-hbo-max-streaming-exclusive-worth-billion-seinfeld-netflix-friends-the-office
・https://live.recode.net/jeff-bezos-2016-code/
・https://techcrunch.com/2020/01/14/disney-was-the-most-downloaded-app-in-the-u-s-in-q4-2019/
・https://www.fool.com/investing/2020/01/15/disney-plus-has-made-100-million-from-subscribers.aspx
・https://sensortower.com/blog/top-apps-games-publishers-2019
・https://sensortower.com/ios/US/disney/app/disney/1446075923/overview
・https://www.fool.com/investing/2020/01/15/disney-plus-has-made-100-million-from-subscribers.aspx

ストリーミングが米TV視聴の2割に近づいたとニールセンが発表

ニールセンのレポートによれば、ストリーミングはアメリカにおけるテレビ視聴の大きな部分を占め始めたが、まだ伝統的なリアルタイム視聴が主流だ。

ニールセンは2016年暮に買収した デジタルTV視聴分析のGracenoteのデータを活用したストリーミング視聴についての詳しいレポートを発表した。オーディエンス分析担当のシニア・バイスプレジデント、Peter Katsingris氏によれば、「ストリーミング戦争の焦点」を分析したレポートだという。

レポートによれば、2019年第4四半期にアメリカの家庭の19%が高速インターネット接続を利用したストリーミングでテレビを視聴していたという。ストリーミング視聴時間の内訳はNetflixが31%、YouTubeが21%、Huluが12%、Amazon Prime Videoが8%だった。28%は他のサービスはが占めていた。

Gracenoteのデータを利用してニールセンは「アメリカの視聴者が利用できるストリーミング視聴サービスのデータをすべて収集できた」という。なるほどアメリカでは大量のコンテンツが続々とストリーミング・サービスに投入されている。ニールセンによれば2019年12月にストリーミングで視聴可能なコンテンツは64万6152件に上ったという。2018年同期比で10%の増加だった。 このうち9%はNetflixなどのサブスクリプション契約のみで視聴できる番組だった。

Nielsen Total Audience Report

ニールセンのレポートはオーディオ・ストリーミングについても分析しており、2018年第3四半期のアメリカの成人ユーザーの64%がスマートフォンでストリーミングを利用した。2017年の同期は45%だった。一方、スマートフォンでのラジオの利用率は92%、衛星放送は13%で安定していた。

昨年秋、ニールセンがアメリカの成人ユーザー、1000人を対象に実施した調査では 回答者の91%(回答者の96%は18歳から34歳の間だった)がなんらかの有料ストリーミング・サービスに加入していた。うち30%(回答者の18歳から34歳の層の47%)は3種類以上のサービスに加入していた。

オーディオ・サービスに関しては回答者の63%が一つ以上のサブスクリプション・サービスに加入していた。 53%は2種類のサービスに加入していた。

これらの結果を総合すると、アメリカの一般ユーザーはテレビ、ラジオ及びストリーミング可能なコンピュータやスマートフォン、タブレットなどのデバイスを毎日平均して12時間利用している。

ニールセンは「ストリーミング可能なメディアの利用時間は2018年第3四半期から1時間24分も増加している。これは主としてスマートフォンの利用の拡大によるものだ。コンシューマのストリーミングへの露出の増加のトレンドは企業のマーケティングにとって重要な意味を持つ。マーケターもコンテンツ・クリエーターもコンシューマが目覚めている時間のすべてにメッセージを届けるべく全力を挙げている」と結論している。

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滑川海彦@Facebook

音楽レーベルのSnafu Recordsは次なる大物アーティストをアルゴリズムで発掘

Snafu Records(スナフー・レコーズ)は、音楽界の才能発掘に新しいアプローチを導入しつつある。米国ロサンゼルスに本社を置くスタートアップの創設者でCEOのAnkit Desai(アンキット・デサイ)氏は、同社を「初の完全サービスのAI対応レコードレーベル」と表現している。

過去5年間、キャピトル・レコードとユニバーサル・ミュージック・グループでデジタルおよびストリーミング戦略に携わってきたデサイ氏は、この業界に詳しい。世の中には、今でも才能あるアーティストは大勢いるが、レコードレーベルはそれを引き出す手段に乏しいと彼は指摘する。

「世界中が死ぬほど聞きたい音楽を生み出す女の子がインドネシアにいたとしても、その娘にチャンスはありません」と彼は言う。「彼女を世界と結ぶ架け橋は、今の世の中には存在していません。音楽業界は、非常に旧式のやり方に凝り固まっていて、アーティストの発掘は口コミが頼りです」。

レーベルの新人発掘を手伝うソフトウェアの開発を行うChartmetric(チャートメトリック)のような企業もある。しかし、デサイ氏は「私もそうしたサービスを使ったことがあります。しかしいつだって、21世紀のテクノロジーを20世紀の機械に持ち込むという結果に終わるのです」と話す。

その機械とは、つまりレコードレーベルそのものだ。そこで彼は、自分のレーベルを立ち上げることにした。Snafu Recordsだ。米国時間2月6日に正式に設立された。

このスタートアップは、シード投資290万ドル(約3億2000万円)を調達したことを発表している。主導したのはTrueSight Ventures。これに、Day One Ventures、ABBAのAgnetha Fältskog、SpotifyのJohn Bonten、William MorrisのSamanta Hegedus Stewart、Soundboksの創設者Jesper Theil Thomsen、Headstart.ioの創設者Nicholas Shekerdemianなどが参加している。

関連記事:Spotifyはプログラムされたプレイリストのパーソナル化を拡張(未訳)

デサイ氏によると「Sunafuのアプローチはテクノロジーを使って『基本的にあらゆる人たちが、我々に代わって音楽を聞いて才能発掘を行う』ものだ」という。

同社のアルゴリズムは、YouTube、Instagram、SoundCloudなどのサービスで、毎週、まだどことも契約していないアーティストの作品を15万曲ほど聞き、リスナーのエンゲージメント、リスナーの感想、音楽そのものを基準に評価するという。同氏は、Spotifyのトップ200リストに70〜75%の類似性があるものが狙い目だという。そのため、どこかで聞いたような曲で、そこそこ「型破り」なものとなる。

この分析結果は点数化され、それをもとにSnafuは「この膨大な音楽データから、毎週15から20の曲を抽出して、そこから人間(チーム)が関与する」という。

目標は、Snafuのアーティストとして、そのミュージシャンと契約を交わすことだ。するとアーティストは、同社の音楽業界の専門知識を活用できるようになる。これには、同レーベルのクリエイティブ責任者で、Madonn(マドンナ)、One Direction(ワン・ダイレクション)、Nicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)らに楽曲の提供も行っているCarl Falk(カール・ファルク)氏のアドバイス、ストリーミングの収益の一部を支払ってマーケティングの支援を受けるといった内容も含まれる。Snafuは、通常のレーベルに比べてアーティストの分け前が多く、拘束期間も短いとデサイ氏は話している。

ストリーミングで(ツアーやグッズ販売と比較して)、大きなビジネスを支えるだけの収益が得られるのかを尋ねると、デサイ氏はこう答えた。「経済的な面で、ストリーミングは不当に悪く思われがちです。そこには誤解があります。ストリーミングで本当に素晴らしい数字を出すアーティストは、まだまだたくさんいます。ただジャンルが違うだけなのです」

Snafuは、本日正式に設立されたばかりだが、すでに16組のアーティストと契約している。その中にはアーカンソー州リトルロックで活動するデュオのJoan(ジョアン)やジャズミュージシャンMishcatt(ミシュキャット)がいるが、Mishcattの「Fade Away」は、リリース5週間目で500万回もストリーミングされた。

「アンキットとSnafuチームには、テクノロジーと音楽業界の深い専門知識の交差点で、新しく画期的で永続的な音楽レーベルを構築できる大きなチャンスがあります」と、TrueSight Venturesの創設パートナー、Hampus Monthan Nordenskjöld(ハンパス・モーサン・ノルデンシュルド)氏は声明の中で述べている。「音楽業界は構造的転換期にあり、21世紀の音楽レーベルはどうあるべきかを再定義するSnafuと仕事ができることを、大変うれしく思っています」。

関連記事:SpotifyはThe Ringerを買収してスポーツポッドキャストの充実を目指す(未訳)

画像クレジット:Snafu Records

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(翻訳:金井哲夫)

Netflixはそれでも広告を入れないと宣言

思惑やら投資家からの圧力止む気配がないが、それでもNetflixは収益増加の手段としての広告主体のビジネスモデルは導入しないと、米国時間1月23日にNetflixのCEOであるReed Hastings(リード・ヘイスティングス)氏は明言した。第4四半期の収支報告会にて、Google、Amazon、Facebookと競合することになるインターネットの広告事業に「楽に儲ける」方法などないとヘイスティングス氏は語り、広告を収益の柱とする選択肢を否定した。

ヘイスティングス氏は「GoogleとFacebookとAmazonは、膨大なソースから集めた大量のデータを統合しているため、インターネット広告において絶大な力を誇っています。それには経費がかかりますが、広告のターゲッティング効果と効率が上がります。そのため、これら3つの企業は、インターネットでの広告事業をこれからも牛耳ってゆくものと私は考えます」と説明する。

広告事業の規模を50億ドルから100億ドルに成長させるには、既存の広告業者から事業を「引き剥がす」しかないと、彼は話を続けた。そして、Amazon、Google、Facebookからインターネット広告事業を盗むのは「かなりの冒険」であり、「ぼろい商売ではない」とヘイスティングス氏。

「私たちには、もっとずっとシンプルなビジネスモデルがあります。ストリーミングと消費者の喜びにひたすらフォーカスするこです」と彼は言う。

CEOはまた、広告事業には参入しないというNetflixの戦略的決断には、ユーザーの個人情報を収集している周囲の企業への批判という点において、良い面があると指摘している。それに対抗しようとすれば、Netflixも加入者の個人情報をもっとたくさん収集しなければならない。それは「ユーザーからの搾取だ」と彼は断定し、我々がやりたいことでとは違うと話した。

「私たちは何も収集しません。私たちは、ただ加入者をハッピーにすることだけを考えます」とヘイスティングス氏は述べた。

もちろん、鵜呑みにはできない。Netflixは、オリジナル番組の継続か打ち切りかの判断に視聴者の個人情報を利用している。また全体的な視聴傾向から、新番組のゴーサインを出して続けさせるか否かの判断もしている。さらに、Netflixのサービスをユーザーがどう利用するかを観察し、ホーム画面にユーザーが好みそうな内容を表示させている。

同社はこの四半期に、Choose to watch(視聴を選択)と呼ばれる新しい視聴率の指標も導入した。少なくとも2分間、意図的に番組や映画を見た人の数をカウントするというものだ。この時間は、FacebookやGoogleのYouTubeのものよりもずっと長いが、テレビがそうしているように、番組を最後まで視聴した人の数を知るには、あまりよい方法ではない。

とはいえ、こうした視聴率調査の規模は、どれも巨大ハイテク企業の個人データ収集活動とは比較にならない。ヘイスティングス氏はコメントの中でそれを指摘している。

「私たちのモデルで、現実に大きな収益、大きな利益、大きな時価総額が得られるのは、戦略的に弱い立場をとっていること、つまりビッグスリーと競合するインターネット広告事業に晒される必要がないからです」と彼は言う。

広告を入れないビジネスという企業のスタンスをNetflixのCEOが再三訴えるのは、これが初めてではない。2019年第2四半期、Netflixは株主に送った手紙の中で、広告を入れないことが総合的なブランドプロポジションの一部であると投資家たちに念を押している。

「私たちが広告枠を販売するという思惑を目にしたときは、それはウソだと撥ね付けてください」と手紙には書かれている。

アナリストたちは、もしNetflixが広告入りの階層をサービスに採り入れたなら、年間収益は10億ドル(約1100億円)以上増えると見積もっている。

Netflixに広告を入れろとの圧力が増している背景には、ストリーミング界全体の状況の変化もある程度関係している。

現在Netflixは、Disney+とApple+という2つの大手ストリーミングサービスによる新たな競争に直面している。どちらも、視聴者を獲得するための無料プロモーションでローンチを支援している。さらに今後数カ月のうちに、Netflixは、モバイルストリーミングサービスQuibi、ワーナーメディアのHBO Max、NBCUのPeacockといった新しい競争相手を迎えることになる。株主への手紙では、いくつかの階層を設けたビジネスプランについて説明されていた。有料テレビの加入者向けの無料層、広告なしのプレミアム層、そして、広告が入る層などだ。

こうしたサービスが、先週、投資家たちに発表されたが、高評価だった。

HuluやCBS All Accessなど、他のテレビストリーミングサービスも、収益の一部を広告に依存している。その一方で、広告を柱とするサービスも台頭し始めている。RokuのThe Roku Channel、AmazonのIMCb TV、TUBI、ViacomのPluto TVなどだ。

しかし、広告を入れないというNetflixの決断は、広告がないことが重要なセールスポイントだと見ている加入者にしてみれば、喜ばしいニュースだ。

画像クレジット:Ernesto S. Ruscio/Getty Images / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

今年のアカデミー賞はNetflixが最多ノミネーション、 「アイリッシュマン」や「マリッジ・ストーリー」が作品賞候補に

今年もアカデミー賞の季節を迎えたが、主役はNetflixのようだ。合計24件のノミネーションを受け、ハリウッドのメジャー映画スタジオを押し退けて件数でトップだった。

アイリッシュマン」がNetflixとして最多の10件のノミネーションを受けた。作品賞と視覚効果賞のほか、個人ではマーティン・スコセッシが監督賞、アル・パチーノとジョー・ペシが助演男優賞、スティーブン・ザイリアンが脚本賞にノミネートされている。TechCrunchでも、デニーロを若返られせた驚異の視覚効果について報じている

Netflixからはさらに「マリッジ・ストーリー」が作品賞、個人ではアダム・ドライバーが主演男優賞、スカーレット・ヨハンソンが主演女優賞、ローラ・ダーンが助演女優賞、ノア、バームバックが脚本賞、ランディ・ニューマンが作曲賞という6件のノミネーションを受けている。

このほかNetflixからは、「2人のローマ教皇」「失くした体」「クロース」もノミネートされた。

ただし、今年最多のノミネーションを受けた作品はホアキン・フェニックスとロバート・デニーロの「ジョーカー」 で、作品賞ほか11件だった。 Netflixはゴールデングローブ賞でも多数のノミネーションを受けたわりに実際の受賞は少なかった。「マリッジ・ストーリー」のローラ・ダーン、「ザ・クラウン」のオリヴィア・コールマンの2件にとどまった

昨年 Netflixはアルフォンソ・キュアロン監督の半自伝的映画、「Roma/ローマ」が監督賞を含む10件のノミネーションを得たが、作品賞は伝統的配給方式で公開された「グリーンブック」に行った。

また報道によれば、スティーブン・スピルバーグらの著名映画人がNetflixやそのほかのストリーミングサービスに対し、「オスカーにノミネーションされる資格を得るにはストリーミング公開に先立って最低4週間、劇場で先行公開すること」という条件を課すためにキャンペーンを行ったという。結局、キャンペーンは失敗したが、映画業界にはストリーミングサービスに対する反感が根強く残っていることに注意すべきだろう。

Netflix関連を別にすると、監督賞候補は全員男性で白人以外の現役女優のノミネーションはシンシア・エリボだけだった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

2020年のお勧めダークファンタジーはNetflixの「ウィッチャー」だ

Netflixの新しいオリジナル・シリーズ「ウィッチャー」は一見した印象ではHBO製作の「ゲーム・オブ・スローンズ」に対する回答に見える。ハリウッドのトップスター(主演のヘンリー・カヴィルはDCコミックの「スーパーマン」、ミッション:インポッシブル/フォールアウトのウォーカー)で、優秀な特殊効果や激しい戦いに加えてヌードの美女も毎回登場する。

ただある意味「ウィッチャー」は「ゲーム・オブ・スローンズ」のような善悪定かならなぬ陰影ある世界を構築するというより、もっとストレートな ファンタジードラマだ。例えば、(米国のTVドラマである)「ジーナ」(Xena: Warrior Princess)のような方向に戻ろうとしているように思える。シーズン1には8エピソードが含まれており、 ストーリーは十分に複雑で脚本は巧みに書かれている。ヘンリー・カヴィル演じる「リヴィアのゲラルト」は超能力を持った流浪の戦士でモンスターと邪悪な人間を倒していく。

ポーランドのファンタジー作家であるアンドレイ・サプコフスキーの小説日本語訳)が原作で、ゲーム化されて大人気となった後、実写化された。ゲームとは独立の作品だが、小説もゲームも熟知しているライターのDarrell Etherington(ダレル・エサリントン)によればゲーム版の影響は大きいという。小説ではゲラルトは「容貌は醜い」という設定だが、もちろんゲームとドラマではそうではない。

主人公のゲラルトは何らかの霊薬で超能力を与えられたらしい(詳しいことは我々も理解できていない)が、基本的な魔法も使える。トム・クルーズの演じる「ジャック・リーチャー」シリーズの主人公に似た悪孤独な戦士だ。「小さい悪、巨悪、並みの悪、すべて許さない」というのが信念だ。カヴィルの説明によれば「どこに行っても嫌われる。冷酷な男に見えるが実は結構いい奴なんだ」という。

記事末のポッドキャストでエサリントンと話し合ったのだが、当初の重厚さの印象とは裏腹に、実際に飛び込んでみるとコンテンツは新鮮で、むしろ軽快でストレート、ユーモラスなところさえある。ときどき(あるいは意図的に)B級映画的ご都合主義に思える部分もある。これはいかにも筋肉隆々たるマッチョなヒーローに対するセルフパロディかもしれない。セリフ、プロットには矛盾が散見するし、話を進めるために急ぎすぎの部分もあるがこうした軽いタッチがあるためあまり気にならない。

ビジュアルな印象はジョージ・R.・マーティン.の世界観をそのまま移植したかと見えるが、「ウィッチャー」の独自世界構築の努力は称賛すべきでもので、エピソードごとに数多くの相互に絡み合った国、人物が現れる。もっとエサリントンも私もエピソードごとに登場する固有名詞を全部覚えるのは無理だった。しかし登場するキャラクターは脚本家の単なる思いつきではなく、世界各地に残る神話、伝説、フォークロアに基づいており、奥行きが感じられた。

音声コンテンツはアップルのPodcastsに登録されているが、読者の好みのプレイヤーからも再生できる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

2020年はAI利用の対話型音声広告がブレーク、Instreamaticに注目

テクノロジー界ではAlexaとGoogle Homeデバイスが登場して音声時代が本格的にスタートしたと見られている。2020年には検索の半分がスマートアシスタントなどを利用した音声になると推定されている。若い世代ほど音声検索を使う、ある調査ではティーンエージャーの55%が毎日音声検索を利用していることを考えればこのトレンドは進行する一方だ。

TechchCrunchでは2年前に「2022年までに米国だけでもスマートアシスタントの普及は世帯の55%に達する」というレポートを紹介した。このことは音声によるオンラインショッピングのマーケットの爆発的に成長することを意味している。音声アシスタントとスマートスピーカーの普及は向こう数年で音声経由の消費額を20倍にすると予測されている。スマートデバイスは家庭だけでなく自動車にも搭載されるようになると見られており、これがさらに追い風になるだろう。

音楽からドラマ、映画、ポッドキャストまでデジタル・メディア全体がストリーミング化していることもあり、 オーディオは巨大なブルーオーシャンだ。しかしブランドはこのトレンドに追いつくために苦闘している。それはオーディオで収益化する方法を発見するのが困難なためだ。

こうした中、東欧の音楽ストリーミングのパイオニアであるZvukの共同創業者の1人は、世界中の音楽ストリーミングサービスがどれひとつとして黒字化を達成できていないことに着目した。ユーザーが有料のサブスクリプションへ移行する率は低すぎ、広告主もストリーミングのユーザー体験を悪化させ、現実の購入行動に結びつけるのが難しい音声広告にさほど期待していないからだ。

そこで元Zvukのチームは米国サンフランシスコでInstreamatic(インストリーマティック)をスタートさせた。このスタートアップはスユーザーがトリーミングに挿入される音声広告と音声で会話できる機能を提供する。AIを利用した音声レスポンス機能により音声広告がおなじみのAlexaのように反応するようになるのだ。

 

これまでの音声広告は、伝統的なテレビ、ラジオのCMと同様、一方通行でありデジタル化のメリットが生かせていなかった。しかし双方向AI広告によって消費者と自然に対話できるようになれば効果は大きいだろう。Instreamaticのようなテクノロジーを利用するブランド、パブリッシャーはユーザーの行動履歴から推測して関連性が高いと思われる音声広告を挿入し、エンゲージメントの内容を処理、分析することができる。

またユーザーからの反応を受け取ることができるため、ブランドの広告戦略のオプションが増える。たとえばユーザーが広告に対して「興味ない。この広告は聞きたくない」などのネガティブな反応を返してきたとき、ブランドはこのユーザーに対する広告挿入を一切ストップすることもできるし、コミュニケーション戦略を変更してまったく新しい広告、ないし別製品の広告を挿入してみることもできる。Instreamaticはユーザーの反応を理解し、その後の広告を事前に検討されたシナリオに沿ってカスタマイズすることが可能だ。

スマート音声広告のライバル、AdsWizzはユーザーが挿入された音声広告に興味を持った場合、スマートフォンを振って意思を伝えることができる。最近の調査によると、この場合の反応率は3.95%だった。

これに対してInstreamaticの音声対話方式は興味ない広告をスキップさせ、興味ある広告には詳細を尋ねるなどより自然なユーザー体験を与えることができる。調査によれば13.2%という高いエンゲージメント率を得られたという。

ビジネスモデルとしては、音声広告から売上が発生した場合、広告主はパブリッシャーに対して一定のコミッションを支払うというものだ。Instreamaticはパブリッシャーから売上に比例するライセンス料を得る。

Instreamaticは、現在インド最大の音楽ストリーミング・サービスであるGaanaとパートナー契約を結んでいる。GaanaはInstreamaticのテクノロジーをプラットフォームの一部に組み込む予定だ。Instreamaticは米国のオーディオストリーミングプラットフォームのTriton Digitalとも契約している。Instreamaticは今後、PandoraJacapps、 Airkast、SurferNETWORKなどのストリーミングサービス各社にテクノロジーを提供していく。

パートナーを通じて、同社は米国に1億2000万人、ヨーロッパに3000万人、アジアに1億5000万人のアクティブユーザーを持つという。

Instreamaticは現在サンフランシスコとロンドンにオフィスがあり、モスクワにエンジニアリング・チームを置いている。CEOで共同創業者のStas Tushinskiy(スタス・ツシンスキー)氏はInstreamaticを開設するために米国に移ってくる以前、ロシアにおけるデジタル音声広告のパイオニアだった。同社の共同創業者で国際ビジネス開発の責任者であるSimon Dunlop(サイモン・ダンロップ)氏は、Bookmateと呼ばれるサブスクリプションベースの読書プラットフォームの創業者であり Zvukの共同創業者でもある。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

トランプ大統領がゲーム実況向けTwitchで選挙集会をストリーミング

米国は来年秋の大統領選挙に向けて政治の季節に入りつつあるが、選挙集会のライブストリーミングプラットフォームとしてトランプ大統領はAmazonのTwtchを選んだ。

Twitchはもちろんゲームの世界では有名だが、政治を含めてそれ以外のコンテンツではこれまでさほど知られていなかった。

本人認証されたDonaldTrumpというTwitchアカウントは、まずReuters(ロイター)が発見した。 アカウントのトップにはダラスの選挙集会が予告されているが、アップロードされたビデオはまだミネアポリスの選挙集会1本だけだ。

アップされたビデオにはユーザーが製作した各種のビデオリプライが表示されている。称賛しているものもあればLOLとかKEK(LOLと同じ意味のネットスラング)というビデオもある。

Twitchを活用している大統領候補はトランプ氏だけではない。民主党の有力大統領候補であるバーニー・サンダース上院議員も数カ月前からこのプラットフォームを使っており、フォロワーは8万8795人とトランプ大統領の3万7754人を大きく上回っている(現在はサンダース氏は8万9309人、トランプ氏は7万5476人)。

トランプ大統領は8月6日にはお気入りの拡声器、TwitterでGoogleのスンダー・ピチャイCEOを名指しで取り上げて攻撃している。

@sundarpichai (Google)はホワイトハウスの執務室にで私に好意を持っている、政権はよくやっていると思う、Googleは中国の軍と無関係だ、2016年の選挙でロクでなしのヒラリーを応援して私の足を引っ張ろうとしたことはない等々と懸命に説明した。

Twitterはこの物議をかもすトップユーザーがAmazonグループのストリーミングプラットフォームといちゃついているからといって不満を感じることはあるまい。もっともジェフ・ボゾと罵られたベゾス氏がトランプがTwitchを使い始めたことを喜ぶかどうかは別だ。

Twitter自身のストリーミングツールであるPeriscopeもトランプ氏は使っているが、Twitchのほうがゲーマー向きであるだけに選挙集会をストリーミングするには向いていると考えたのだろう。Periscopeはどちらかというとリアルタイムで現場の状況をモバイルデバイスに中継するのが目的だ。Twitchは自宅でくつろいでデスクトップの大画面から見るユーザーが多いだろう。

ゲーマーの世界はトロルが多く生息することでも悪名高いが、それならトロル大王のトランプにはさらにぴったりだ。

最近、PeriscopeではTwitterは不適切なコメントに対して 以前より強い方法で規制を行っている。また会話の健全さを守るという目標を実現するためにフェイクやスパムに対する取り締まりも強化している。それやこれや考え合わせるとトランプ大統領がTwitchを使ってくれたのはTwitterにとって面倒ごとを避けられることを意味したのかもしれない。

TwitterのCEOであるジャック・ドーシー氏はそれでなくてもトランプ大統領が次にどんなツイートをするかいつもヒヤヒヤしてきたに違いない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ディズニーがDisney+でストリーミング予定の映画をすべてツイート、予告編一挙も公開

これは優れた事前プロモーションだと感じた。米国時間10月14日、ディズニーはTwitterにスレッドを作り、来月スタートするDisney+でストリーミング公開を予定しているすべての映画、番組のリストを発表し始めた。スレッドは製作の年代順となっており、「Snow White’s Scary Adventures」(邦題:白雪姫と七人のこびと)からスタートしている。1937年製作のこのアニメはディズニーを代表する映画というだけでなく、現代でもカルトのロングテールを引く驚くべきタイトルだ。

さあショータイムです。白雪姫から最新のザ・マンダロリアンまで、ディズニーのほぼすべてのタイトルがやって来ます。ここで#DisneyPlusチェックしよう。アメリカでは11月12日からスタート。

これまでのところ、ディズニーのカタログではディズニー本体に加えて、マーベル、スター・ウォーズ、ピクサー、ナショジオなどのタイトルがフィーチャーされている。

上のツイートでも触れられているスペースオペラの新作「The Mandalorian」(ザ・マンダロリアン)を始め、「Lady and the Tramp」(邦題:わんわん物語)のリメイク、「Rogue One: A Star Wars Story」(邦題:ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー)の前日譚、 「High School Musical」(邦題:ハイスクール・ミュージカル)シリーズなど 未公開の作品もリストに多数含まれている

しかし今回のツイートで強く印象に残ったのはディズニーのタイトルの底知れない豊富さだった。

実はヒットしたディズニー・アニメではビデオ向けの低予算の続編が作られていた。「Beauty and the Beast」(邦題:美女と野獣)ではベルのファンタジーワールドが製作されているが、陽気な1980年代テレビドラマの空気が溢れている。ピクサーでは有名な「トイ・ストーリー」シリーズだけでなく、「カーズ2」なんていう作品も作っている。

そうかと思えば忘れられた(そもそも最初から知らない)作品も多い。 「Meet the Deedles」(邦題:ディードル・ブラザーズ/悪ノリ双子の大作戦)から「Zenon Girl of the 21st Century」(邦題:ゼノン:21世紀の少女)、さらにはマイナーなFuzzbucket(ファズバケツ)から「The Computer Who Wore Tennis Shoes」(邦題:テニス靴をはいたコンピューター)まである。

ディズニーを見て育った世代にとってリストはノスタルジーの奔流だ。もう忘れてしまったタイトルを思い出したり、自分に黒歴史にハっとすることもあるだろう。

現在のストリーミングサービスではタイトル数を多く見せるためにはつまらないテレビ番組やヒットしなかったB級映画などもすべてリストに含めているが、プロモーションに登場させることはまずない。

ディズニーのアプローチは対照的に極めて透明性が高い。

ドイツ原産の狩猟犬・ジャーマン・ポインターと飼い主の少年の物語「The Biscuit Eater」(ビスケットイーター)、米国初の純血種の馬を描いた「Justin Morgan Had a Horse」(ジャスティン・モーガン・ハッド・ア・ハウス)、「The Adventures of Ichabod and Mr. Toad」(邦題:イカボードとトード氏)などのタイトルを覚えている人々は少ないかもしれないが、こうした知られざる作品も含めて月額6.99ドルのサブスクリプションでDisney+を見ることができる。

Disney+のリスト公開はTwitter史上最大かつ最長のツイートストームに違いない。スクロールしていくと誰でも知っている有名作品に混じって、思いがけないないタイトルを目にするだろう。それぞれのタイトルには解説のツイートがついているのでこれは面白そうだという作品を発見できる。ネコ好きなら「The Cat from Outer Space」(邦題:スペースキャット)に興味を引かれるかもしれない。「フラバー」のオリジナル「The Absent-Minded Professor」(邦題:うっかり博士の大発明 フラバァ)も公開される。

しかしディズニーのソーシャルメディアを使ったプロモーションはツイートストームにとどまるものではない。Disney+で公開予定のタイトルの予告編総集編はなんと3時間にわたる。下にエンベッドしたので時間に余裕のある向きはご覧いただきたい。

Disney+のサブスクリプションの予約はこちらから。

【Japan編集部追記】上のビデオは製作年代順となっている。1959年のオリジナルの「Sleeping Beauty」(邦題:眠れる森の美女)は9分46秒から、1977年の「Star Wars: Episode IV A New Hope」(邦題:スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望)は24分57秒からスタートする。スクラブして移動すれば興味ある年代をチェックできる。Disney+の日本での公開予定についてはディズニー・チャンネルとの関係も含めまだ発表がない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Facebookが通常のTVをスマートTVに変身させるチャットデバイスPortal TVを発表

米国時間9月18日、Facebookはリビングのテレビに接続して大画面でビデオチャットを楽しめるPortal TVを含め新しいPortalシリーズを発表 した。各種サービスからコンテンツをストリーミングすることもできる。価格は149ドル(約1万6200円)だ。カメラ内蔵のデバイスをテレビの上に置くことにプライバシー上の抵抗があるかもしれないが、Portal TVのカメラはワンタッチで物理的にフタができる。

AppleやGoogleなどライバルのプロダクトがテレビのスマート化が主目的なのに対して、Portal TVは大画面テレビで家族がビデオチャットを楽しめる点がユニークだ。ソーシャルネットワークをリビングに持ち込む足がかりとした点でPortal TVは新しいジャンルを切り開いた。ハード、OSともFacebook自身が開発・販売する。

Facebook Portal Lineup
Portal TVはこれまでの画面付きPortalデバイスに比べてはるかに小型化された。自動ズーム機能を備えたAIカメラ、 Alexa接続の音声アシスタントを内蔵し、Messengerのビデオチャットの他にWhatsAppの暗号化ビデオ通話が可能だ。またSpotifyの音楽に加えてAmazonプライムビデオを利用できるようになった。この149ドルのデバイスはHDMI端子を備えたテレビならほとんどすべてに接続できる。

全流通経路での販売に先立ち、今日からPortal.facebook.comでセールが始まっている。米国やカナダではAmazonとBest Buyで販売される。また英国やオーストラリア、ニュージーランド、スペイン、イタリア、フランスで発売が予定されているが、スマート音声アシスタントは当面、英語のみに対応する。Portalシリーズについては、Portal、Portal Miniが10月15日から、Portal TVは11月5日からそれぞれ出荷される。

Portal Mini Black

ただしPortalシリーズ製品は有力ビデオサービスのNetflixやHBOをサポートしていない。担当バイスプレジデントのボズことAndrew Bozworth氏(アンドリュー・ボスワース)氏は「この製品はRokuやFire TVなどに対抗するものではない。ライバルは我々のよう大規模な大規模なソーシャルネットワークを欠いている。Facebookはコミュニケーションのハブという本来の強みを生かし、新しいビデオチャット体験を提供する」と意図を説明した。

「プライバシーが心配」を克服

Portalシリーズは1年前にスタートし、おおむね好意的な評価を受けたものの「プライバシーについてFacebookは十分配慮していない」という記事tal!』と呼びかけるとそも多かった。一般消費者も同様に感じたかどうかは疑問だが、ボズ氏は「Portalはセールスもその後のエンゲージメント好調だ」と私に語った。ただし正確な数字は発表されていない。

もちろんPortalシリーズ製品のカメラにはワンタッチでレンズを覆うことができるスライド式カバーが設けられている。

Portal TV Closeup

しかしその後、FacebookだけでなくApple、Google、Amazonも音声の認識精度を改善するためにユーザーに無断で音声データを収集していたことが判明し、プライバシーの侵害だと強く非難されるという事件が起きた。ボズ氏によれば「ユーザーからの『ヘイ、ポータル』という音声を認識すると、それ以降の音声はFacebookに送信されて専門家の検証を受ける可能性がある。しかし我々は検証をオプトアウトでできるようにした」という。

しかしPortalが「覗き見されるような気味悪さ」を本当に払拭したいと考えているなら、人間による音声データの検証をデフォルトにしているのはなぜなのか?ボズ氏はアクセシビリティの観点からこの点について説明した。「広い地域をカバーしているため多くのユーザーには地域の訛りがある。また軽度の言語障害を持つユーザーもいる。こうした場合音声認識の精度が低下する」とのこと。彼は、音声データを効率よく収集するには、この設定をデフォルトにしておくしかないというが、プライバシーを重視することによってPortalデバイスのセールスが向上するかもしれないとうメリットも考えるべきではないか。

Portal Privacy Set Up Notice Screen

しかし「監視社会の尖兵」といった批判を受けてもFacebookがPortalデバイスに注力するのには理由がある。Facebookは生命線ともいうべきモバイルアプリがAppleとGoogleのストアを通じてしか配布できないという致命的な弱みがあった。「スマートフォンを押さえているプレイヤーには巨大な影響力がある。われわれはいわばそうしたデベロッパー、メーカーの好意にすがって生存してきたわけだ」とボズは書いている。Portalは(いかに監視能力をそしられようと)、Facebookが独自に開発・販売するコミュニケーションデバイスだという点で戦略的重要性があるわけだ。

新しいPortalシリーズをテストした

Facebookに対するイメージはさておき、各種Portalは便利で楽しいデバイスだ。ハードウェアの開発・販売が未経験の会社が1年前にスタートさせたプロダクトとは思えないほど、洗練された作り込みとなっている。デザインもエレガントで多くの家庭のリビングにもキッチンにもなじむだろう。

Portal Mini Portal TV

新しいPortal、Portal Miniはほぼ現行製品と同様だが左右に張り出していたスピーカー内蔵のベゼルが消え、スマートになった。Portal SpecsPortal TVはまったく新しいデバイスで、画面がないため省スペース。記事トップの紹介ビデオを見てもらえばわかるが、Portal TVにはテレビ台の上に置くための脚が付属している。この脚は90度開いてテレビを挟み込むクリップにもなる。接続に必要なのはHDMIケーブルだけだ。カメラは1250万画素、画角120度でマイクは8台のアレイとなっている。また部屋の向こうの端に向かって「ヘイ、ポータル!」と大声を張り上げずにすむようベーシックな動作を命令できるリモコンが同梱される。

Portal TVはスピーカーも内蔵している。接続しているテレビの画面がオンの場合はもちろんオフの場合も使えるほか、別系統からの音声入力にも対応する。HDMI CECでの接続も可能なので、Portal TVを外部から遠隔操作することもできる。

プライバシーシャッターと呼ばれるカメラのフタは、スライド式でワンタッチでレンズが覆い隠せる。すべてのセンサーが無効になっている場合に赤く点灯させるスイッチもある。こうした予防措置を信頼するなら、Portalシリーズは最もコストパフォーマンスに優れた大画面ビデオ通話デバイスだ。

Portal TV and Remote

Portal TVのAIスマートカメラは顔を認識できるだけでなく人体に関するデータベースを持つため、ユーザーがどんな動作をしても追従可能だ。今回新しくカバーされたWhatsAppを使う場合、ライブフィルターも利用できる。ビデオで紹介しているが、ユーザーは自分の顔をライオンにたりヒゲを生やしたり自由に変えることができるだけでなく、小さな子供が部屋中を走りまわるような状況にも対応する。

Portalは「ストリーミングのデバイスではない」というものの、Spotify、Pandora、Amazon Primeビデオをサポートする。今後、スマートホームデバイスとしてRingドアベルがカバートされる予定だ。

Portal Mini Alexa

Portal TVから別のPortal TVへのMessengerビデオチャットではWatch Together(一緒に見る)機能が利用できるようになる。これはPinP(ピクチャー・イン・ピクチャー)で画面の一部にチャット窓が開き、Facebook Watchビデオを通話先と共同視聴できる。PinP窓で相手のリアクションがわかるわけだ。ただし今のところPrimeビデオなど他のコンテンツでは利用できない。

PortalTV CoWatching

ボズは私に「ボーリングやったことあるだろう?ボーリング大好きなんだけど、考えてみると変なスポーツだよね。あれは一人でやっても全然おもしろくない。みんなで集まってビール飲んでワイワイやる口実なんじゃないかな?Portal TVの共同視聴やARゲーム機能もそれだと思っている。これは口実で、要するにみんなで集まって騒ぐのが楽しいんだ」と説明した。

おそらく、これがPortalの真の戦略的目的なのだろう。Facebookは我々のさまざまな情報を収集するために時間を費やしてきた。他者の製品はもう少し変わっていたり、興味深かったりするかもしれないが、FacebookとPortalの組み合わせに勝るものはないだろう。くだらないビデオや平凡なゲームでも大きな画面で家族や友達と一緒に体験すれば意味のあるものになる。ボーリングと同じでみんな集まって騒げば楽しい。Portal TVはFacebookがユーザーのリビングに確固たる地位を築く有力な一歩になるかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

「天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する」が9月20日からNetflixで配信開始

9月にNetflixは「天才の頭の中:ビルゲイツを解読する」と題された3部構成のドキュメンタリーを放映する。

監督は「不都合な真実」や「わたしはマララ」で高い評価を得ているデイビス・グッゲンハイムで、テクノロジーの天才、かつ世界第2位の資産家である人間の思考に入り込む。Netflixがこのドキュメンタリーを配信することを発表したのは先週だったが、いよいよ最初の予告編が公開された。

Microsoft(マイクロソフト)を創立し、30年にわたって君臨して、激しい賛否の議論を引き起こした時代から、ビジネスの第一線から退き、マラリアの撲滅やエネルギー問題などのチャリティー活動に専念するようになった現在まで、63年の半生が資料映像とゲイツ自身へのインタビューで詳しく解明される。我々が生きる現在の社会、生活の大きな部分を作ってきた人間の中をわずかでも覗くことができるなら貴重な視聴体験となるだろう。

予告編は「好きな動物は?」「イヌ」、「好きな食べ物は?」「ハンバーガー」といった会話から始まる。「今、いちばん怖いのは?」という質問にゲイツは「頭が動かなくなることかな」と答える。まあこれはゲイツならずともそう考えるだろう。

Netflixによればこのミニ・シリーズは9月20日から配信されるという。

【Japan編集部追記】ゲイツは若い頃を振り返って「Microsoftの優勢を保つために昼も夜も働いた。ときには激しい主張もした。しかし(当時の)ものの見方は間違っていた」と述べている。Netflixによれば日本での配信開始も9月20日が予定されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

デニーロがデジタルで脅威の若返り、Netflixが「アイリッシュマン」の予告編公開

Netflixオリジナルの「アイリッシュマン」が素晴らしいフィルムノワールである理由はいくつもある。まず監督が巨匠マーティン・スコセッシだ。主演はロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシというアカデミー賞俳優で、1960年代の米国の闇社会に君臨した労働組合のボス、ジミー・ホッファとアイルランド系ヒットマンのフランク・シーランを描いている。ただしTechCrunchとしては、この映画の驚異的なデジタルエフェクトを紹介したい。

一般メディアではスコセッシ監督の作品を紹介するのにデジタル・テクノロジーの話からは始めない(デニーロとパチーノという監督お気に入りのアカデミー賞俳優がスクリーンで顔をあわせる作品ならなおさらだ)。しかし「アイリッシュマン」におけるILMの役割は非常に大きく、少なくともインターネット上で大きな話題になっている。

ILM(インダストリアル・ライト&マジック)は1970年代に「スターウォーズ」のオリジナルの製作にあたってジョージ・ルーカス監督によって設立されたハリウッドを代表するSFX企業だ。「アイリッシュマン」ではILMは主演俳優、ことにデニーロをデジタル・テクノロジーで若返らせることに成功している。なんといっても現実のデニーロは1943年生まれで70代半ばだが、中年の人物を演ずる必要があった。昨日発表された最初の予告編にはジミー・ホッファからの電話受けるシーンが登場するがデニーロの若返りに驚く。

2分間の予告編を見たところでは、この作品はスコセッシ監督ならではのスタイリッシュな映画になっている。ドラマッティックな緊張が高まり、激しい暴力が散りばめられる。公開は「この秋」というだけで正確なスケジュールは不明だが、デニーロ、パチーノ、ペシに加えて共演者もハーヴェイ・カイテル、ボビー・カンナバーレ、アンナ・パキン、レイ・ロマノといったオールスターメンバーだという。

Netflixでのストリーミングに加えて劇場公開も予定されているが、これは劇場公開がアカデミー賞の選考対象の条件の一つだからだ。Netflixが昨年公開し、大きな反響を呼んだ60年代のメキシコの中流家庭を描いた傑作「Roma/ローマ」がこのアプローチを採用している。

【Japan編集部追記】この作品のワールドプレミアはニューヨーク・フィルム・フェスティバルが舞台で9月27日だという観測が出ている。またTechCrunchでは人工知能を利用した特殊効果技法の発達によって第三者の顔情報を用いて動画を合成する「ディープフェイク」が問題となっていることを報じている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アマゾン版「ロード・オブ・ザ・リング」は「ジュラシック・ワールド/炎の王国」のバヨナが監督

Amazon(アマゾン)のジェフ・ベゾスはプライム・ビデオでオリジナルの「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズを製作し、Netflixの「ゲーム・オブ・スローンズ」の成功に張り合うつもりだ。 Deadlineの記事によれば、 ベゾスお気に入りの新シリーズを監督するのはフアン・アントニオ・バヨナだという。

バヨナはハリウッドのブロックバスター、「ジュラシック・パーク/炎の王国」を監督したことで記憶に新しい。バヨナはネタ切れかと思われた恐竜復活シリーズに最後のひとひねりを加えて、さらに興行収入を稼ぐ道を開いた。バヨナはそれ以前に母国スペインで「永遠のこどもたち」や「インポッシブル」など批評家から高い評価を得た映画を監督している。

バヨナが監督するAmazon版の「ロード・オブ・ザ・リング」の最初の2作は、ピーター・ジャクソンの映画、「ロード・オブ・ザ・リング」の原作であるJ.R.R.トールキンの「指輪物語」3部作が語られる直前の世界を舞台としている。映画版同様、Amazon版もニュジーランドでのロケが予定されている。

バヨナには脚本家としてJD・ペインとパトリック・マッケイが加わる他、著名な映画人多数が参加してシリーズが一大叙事詩となることを目指すという。

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滑川海彦@Facebook

E3でMicrosoftがゲームストリーミングのxCloud発表、Google Stadiaとの違いは?

GDCとGoogle I/OでGoogleStadiaをデモした。今回E3でMicrosoftが以前から噂になっていたxCloudを正式発表した。十分な時間とは言えないが両方のクラウドゲームプラットフォームをテストする機会があったので簡単に比較してみたい。

ひとつ重要な点はxCloudについては今のところ情報が異常に乏しいことだ。 E3でMicrosoftはXbox Game Pass8K Xboxハードウェア、Scarlettの紹介に力を入れていた。こうしたXbox関連プロダクトには十分時間が割かれたのに、xCloudについてはほんのわずかしか触れられなかった。

料金、リリーススケジュール、サポートされるデバイス、ネット接続に必要な能力などすべて不明だ。今のところわかっているのは、xCloudは今年後半に一般公開されるということだけだ。つまりStadiaの公開スケジュールとほぼ同じだ。xCloudはゲームクラウドだということ以外、クェスチョンマークの山となっている。

とはいえStadia同様、xCloudもストリーミングサービスであるかぎり、特有の物理的制約を逃れることはできない。光の速度が有限である以上、サーバーからの距離に比例したレイテンシーが存在することになる。この伝達の遅れに対処する方法はMicrosoftもGoogleとほぼ同様だろう。人間の目は驚くほど微細な部分まで見分けることができる。しかしロサンゼルスのコンベンションの舞台にシリコンバレーからストリーミングしてる状態でははっきり感じられるような問題は起きなかった。

しかしシューティングゲームでガンを射ったとき、トリガーを引いた瞬間とマズルフラッシュが表示された瞬間を比較すればレイテンシーの見当がつく。自宅に戻ってテストしたときには遅れが顕著に感じられた。もっともこれは特に注意を払っていたせいもあるだろうし、自宅の接続環境も影響しているかもしれない。しかし十分準備を整えたコンベンションの壇上でのデモは一般ユーザーが実際に使う場合を正しく表現しているとは思えない。

Stadiaでは何度かシステムがクラッシュしたが、リスタートすると復帰した。xCloudではフリーズは経験しなかったが、双方の接続環境はまったく違うのでこれだけで比較はできない。

大きな疑問はXboxがxCloudをサポートする専用コントローラーを発表するかどうかだ。他のデバイスを介さず、コントローラーが直接クラウドに接続できればレイテンシーを減少させることができる。Stadiaはすでに専用コントローラーを準備している。しかしXbox Oneのユーザーは数ミリ秒のレイテンシーを減少させるためにはわざわざGoogleの新しいデバイスを買いそうにない。しかしXboxブランドでxCloud専用コントローラーが出れば事情は違ってくるかもしれない。

Stadiaで4Kゲームをプレイするには35Mbps以上の接続速度が必要だ。xCloudの要求については今のところ情報がないが、Stadiaと大きく変わらないだろうと予想する。

GoogleはStadiaを専用機を代替するものと位置づけているのに対し、xCloudのデモは専用機ゲームをあらゆる場所でプレイできるようにするためのサービスと考えているようだ。

Stadiaにせよ、xCloudにせよ、ストリーミングゲームという考え方はPS4をインターネットを使って遠隔操作するソニーのリモートプレイほど画期的なテクノロジーではない。しかしサポートされるユーザーベースはもっと大きいだろう。xCloudのデモはXbox OneコントローラーをSamsung Galaxyに接続して行われた。今のところこれ以外にどんなデバイスがサポートされるか情報がない。一方Google Stadiaは自社のPixel 3、Pixel 3aしかサポートしない。つまりデバイスの数でいえばMicrosoftはSamsung GalaxyをサポートするだけでGoogleに勝っているわけだ。

もうひとつ重要なのはコンソールゲームをスマートフォンの小さなスクリーンでプレイするとまったく違った体験になるという点だ。モバイルデバイスのプロセッサーは年々強化されてきた。それでもMicrosoftのゲームがスマートフォンの画面にもう少し最適化されていたら良かったのにと感じる瞬間があった。

次は料金の問題だ。ゲーム機の所有者はストリーミングを受けるのは無料だ。Stadiaの場合も、オンラインでゲームを購入した後は、1080pのストリーミングでゲームをプレイするのは無料だ。しかし4Kでプレイしようとすると月額9.99ドルの追加料金を支払う必要がある。xCloudにも同様の制限が設けられるのかどうはまだわからない。

ビジネス面で重要な点はxCloudがXboxのゲームタイトルすべてをサポートするかどうかだ。もしそうであれば、Stadiaが追いつくのは難しいだろう。ことにマルチプレイヤーゲームにはネットワーク効果が強く働く。ユーザーは既存プラットフォームから飛び出して友だちがほとんど入っていない新しいプラットフォームに移ろうとはしない。いかにGoogleといえどもネットワーク効果が十分に働く規模のユーザーをゼロから集めるのは至難の技だ。この点でXboxは何年も先行している。

まとめると、重要な疑問点はxCloudの料金、専用コンソールの有無、Xbox Game Passとの連携の詳細などだ。ただし、ストリーミングゲームはマーケットとしてまだニッチかもしれない。「今やゲームはストリーミングにシフトした、専用機は時代遅れだ」というのは少し早まった判斷だろう。しかしMicrosoftがxCoudを発表したことで、この分野でのStadiaの一人勝ちの可能性はなくなったと思う。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Google Stadiaプラットフォーム向けゲームの予告編一挙紹介

ゲーム専用機というのはゲームがなければただの箱だということは誰もが知っている。ストリーミング・サービスであっても事情は同じだ。

世界最大のゲームカンファレンスのひとつ、E3 2019を控えて、GoogleはStadia Connectを発表した。これはNintendo Dirctと真っ向から激突することになるクラウドゲームのプラットフォームだ。今回の発表で4K動画であることや料金プランなどやや詳しい情報が得られた。中でも重要なのはこのプラットフォームに投入されるゲームの予告編が公開されたことだ。

リストには有名シリーズに加えてGoogle独占のタイトルも含まれる。個別ゲームは月額10ドルからサブスクリプションできる。

こちらは Moonshine Studios/Coat SinkのGet Packedだ。Stadiaで独占公開されるゲームは引っ越しのための家具の荷造りを一連のゲームにしたものだ。誰もが経験するとおり、家具をパネルパネルバンに積み込むのは非常に苛立たしい作業だが、Get Packedでは細部の物理特性を維持したままシチュエーションを大いに過激化している。4人まで参加できるゲームが加わる予定だ。家具の荷造りは友達に参加を呼びかけるのに格好のテーマだからこれは巧妙な戦術だ。

ActivisionからDestinyシリーズのライセンスを取り戻したBungieは続編をStadiaで公開する。これはスーパーヒーロー的な一人称シューティングゲームで月面で戦うShadowkeepも含まれる。

もうひとつのStadia独占ゲームはGyltというタイトルの単一プレイヤーによるパズルアドベンチャーだ。主人公の若い女性が謎の失踪を遂げた従姉妹を探す。開発元はTequila Worksで、暗い舞台で超自然的な現象が起きる。

Baldurの Gate IIIはダンジョン&ドラゴン系のRPGでStadia版の他にパソコン版も用意される。

Googleは各種ゲームタイトルのいいところを見せるStadiaのプロモーションビデオも製作した。ゲーム開発元にはUbisoft、Take 2、SquareEnix、Warner Bros、Bandai Namco、Bethesdaといった有名メーカーが含まれている。

Googleでは「Stadiaをプレイするには専用機もパソコンもCDもいらない」とストリーミングの利点を主張している。Stadiaは11月にスタートする予定。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Airbnbがストリーミングメディアに進出か

Airbnbがストリーミング事業に参入しようとしている。議論を呼ぶオンデマンド宿泊マーケットプレイスで知られる同社が、制作スタジオになる策略を練っている。Reuters(ロイター)が伝えた。

山ほどのシリコンバレー企業が、ブランディングの一環としてマーケティング機能や紙の雑誌を作っているが、Airbnbはこれを一歩先へ進めたようとしていると書かれている。

同社はすでに、豪華な雑誌をHearst(ハースト)から出版しており、ロイターの記事によると、この取組みが今後同社のメディア戦略の中心となっていく。

市場で差別化したい裕福な大企業にとってビデオは次の戦場になりそうだ。Appleはストリーミングサービスの提供を準備中で、AmazonやWalmart(ウォルマート)はすでに持っている。

5億人の旅行者からなるユーザーベースを持つ同社は、ビデオ制作のパートナーを希望する相手がすでに複数いることをReutersに語った。

AirbnbはApple’(アップル)の来るべきストリーミングサービスのためにシリーズを1本すでに制作している。「Home」と呼ばれる世界中の奇妙な家とそれを建てたオーナーを紹介するドキュメンタリーだ。別のドキュメンタリー「Gay Chorus Deep South」の制作も進んでいる。サンフランシスコのゲイ男性コーラスがディープサウス(南部の保守的地域)を旅するところを記録したものだとロイターは伝えている。

「今はまだ研究開発段階だ。ビデオだけには限らない。音声かもしれない。物理的なものかもしれない」とAirbnb広報のChris Lehane氏がロイターに話した。「コンテンツを増やせば増やすほど、より多くの人たちをプラットフォームに呼び込める」。

何はなくとも、Airbnbの番組は、見知らぬ他人の家で過ごすことに抵抗のある新規顧客に対するサービスの透明性を高める効果がある。なお、同社の隠しカメラ問題地元行政との複雑な関係、さらにはこのビジネスによって変貌した近隣に関する暴露番組だけは期待しないように。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Twitchが公開した初めてのゲームはカラオケスタイルの「Twitch Sings」

Amazonが所有しているゲームストリーミングサイトTwitchは、米国時間4月13日に初めての「ゲーム」を一般公開した。とはいえそれは、サイトのクリエイターたちがファンに対してストリーミングを行っているような、これまでのビデオゲームではない。この新しいゲームは「Twitch Sings」という名称で、ライブストリーミングに向けてデザインされた無料のカラオケスタイル体験なのである。

昨年ベータ版としてローンチされたこのゲームには、何千曲ものおなじみのカラオケ曲が含まれており、プレイヤーは1人で、もしくは誰か別の人とデュエットで歌うことができる。さらには、ストリーマーはライブカメラフィード上で自分自身で歌うことを選択することや、あるいは自分の場所に表示されるパーソナライズされたアバターを作成することもできる(曲はカラオケコンテンツプロバイダからライセンスされているもので、メジャーレーベルのものではない)。

しかし、TikTokやそのクローンのような、他のカラオケスタイルのアプリとは異なり、Twitch Singsはライブストリーミングとインタラクティブの両方を目指している。つまり、視聴者も体験の一部になることが可能となるように、歌をリクエストしたり、照明効果や仮想声援をアクティブにしたり、パフォーマンスの最中に「歌の挑戦」をストリーマーに送ったりすることができるのだ。たとえば、歌詞なしで歌うことや「猫のように歌って!」とリスエストしたり、その他のふざけた挑戦を送ったりすることもできる。

「Twitch Singsは、素晴らしい共有型インタラクティブパフォーマンスを提供するために、ライブショーの楽しさとエネルギーをストリーマーたちの無限の創造性と束ねるのです」とTwitch Singsのエグゼクティブプロデューサー、ジョエル・ウェイド氏は語る。「多くのゲームがTwitch上でより素晴らしいものとなっていますが、私たちはストリーミングと視聴者の参加をコアにデザインされたものに、大きなチャンスがあると考えているのです」。

このゲームは、Twitchのライブストリーミング機能を利用するだけでなく、視聴はしているものの自分自身をストリーミングはしていないTwitchの視聴者たちを引き付けるようにもデザインされているのだ。

とりわけ注目すべき点は、これは通常のゲームを超えてTwitchを拡大する手段だということだ。これは、2015年に行われたサイト内クリエイティブコンテンツセクションの立ち上げに始まり、Twitchが長年にわたって試みてきたことである。また過去にはビデオブロガーの要求に応えようとしたり、ファンのお気に入りコンテンツ(例えばボブ・ロスのお絵かき講座や、ジュリア・チャイルドの料理ショーなど)を長時間ストリーミングするために、様々なメディア会社と提携したりもしてきた。またTwitch自身が運営するスタジオではスニーカーについてといった、ゲームではないショーたちを制作してきた。昨年Twitchは、Disney Digital Networkと提携して、より有名な人物たちをTwitchに登場させた。

だが、こうした努力は、Twitchがゲーマー以外の人たちを、真に巻き込むための役には立っていない。

もちろんカラオケが役に立たない可能性もある。実際今回の「ゲーム」は、Twitchがチャットシステムやカスタムインタラクティブビデオオーバーレイといったプラットフォーム機能のいくつかを、既存ユーザー間のエンゲージメントを高め、新しいユーザーを引き付けるためのツールに変えることができるかどうかを確認するためのテスト、という意味合いが強いのだ。ゲームがこの先本当に受け容れられるのか、そしてどのように受け容れられるのかははっきりしていない。

このゲームの一般公開は本日ベルリンで開催されたTwitchCon会議で発表された(同会議では2018年の初め以来、ヨーロッパでは12万7000以上のアフィリエイトと、3600の新しいパートナーが加わったことが発表されている)。

同社はまた、支払い、ストリーミング、そしてディスカバリーツールなどの、Twitchクリエイター向けの他のいくつかのアップデートについても詳しく説明した。

例えば、4月15日月曜日以降、Twitchは月締後、これまでの45日ではなく15日で支払いを行うようになる(支払い残高が100ドルを超えたクリエイターに対して)。また5月には、ドイツ、フランス、イギリスのパートナーおよびアフィリエイターに対してBounty Board (有償スポンサーシップ)を提供する。ヨーロッパではBorderlands 3、Tom Clancy’s The Division 2、そしてユニリーバと提携する予定である。

さらに6月には、Twitchはより高速な検索機能、自動ハイライトリール(ダイジェスト)機能、そして様々な新しいオプションを使ってチャネル一覧を並べ替える機能(例えば視聴者数順、開始時間が新しい順、あるいは視聴履歴に基く推薦など)といったものを開始する予定だ。

TwitchCon Europe 2019はこの週末twitch.tv/twitchでライブ配信された。

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(翻訳:sako)

26日午前2時開始のアップルイベントのテーマはサブスク、アップルクレカの発表も?

Apple(アップル)のビッグイベントがいよいよ日本時間26日火曜日午前2時に迫ってきた。最大の驚きはAppleがイベントを待たずに新しいハードウェアを続々と発表したことだろう。iPad AirminiiMacAirPodsがリリースされた後ではイベントでハードウェア面での「もう1つ」が披露されることは期待薄だ。

実際、Appleがわれわれに送ってきた招待状には「Show Time」と書かれていた。これは 2006年のイベントの招待状に「It’s Showtime」とあったのを引用しているらしい。ここでAppleは翌年のApple TVの先駆けとなるiTVを発表している。

しかし今回のイベントではAppleはなんらかの新しいサービスを発表するようだ。スポットライトを浴びるのは長年噂されてきたオリジナルコンテンツのビデオプロダクトだろう。いかに情報管理に厳格なAppleといえども、このプロジェクトに10億ドルもの製作資金を投じていてはすっかり秘密にしておくことはできない。昨年からさまざまなソースから噂を聞くようになった。なんとオプラ・ウィンフリー、スティーブン・スピルバーグまで動員されているという。

新しいビデオサブスクリプションサービスはAmazon、Netflix、Huluといった市場のリーダーや以前から噂が流れているDisneyのストリーミングサービスと真っ向から激突することになると推測されている。しかしもっと説得力ある説だとAppleは他のストリーミング・サービスと対決するのはなく、むしろ自分のプラットフォームを通じて他のサービスもユーザーを獲得できるようにしていくビジネスモデルだという。

そうであれば、これは現在のApple TVと似たビジネスモデルだ。報道によれば、Appleは 新しいコンテンツストアを準備しているという。このサービスにはHBO、Showtime、Starzなどの既存のストリーミングサービスがバンドルされるという。簡単にいえば、Appleが破壊的革新を目指しているのは既存のケーブルTVのエコシステムだ。Appleのハードウェアは世界中至るとこにろに浸透しているので自身がケーブルTVプロバイダーになればその影響は巨大だ。これはApple Musicが音楽産業に与えた影響に匹敵するだろう。

あれこれ取り沙汰されているオリジナル作品についていえば、そもそもAppleはこうしたオリジナルコンテンツの売上によって利益を得ようとしているのではなさそうだ。報道によれば、Appleのデバイスのユーザーは無料で視聴できるという。多数のオリジナルコンテンツが製作中だ。(略)

ビデオストリーミング関係の話題がイベントの大きな部分を占めることは間違いなさそうだが、Appleは依然として驚きのタネを隠しているかもしれない。そのひとつは長く噂になっているサブスクリプションニュースだ。Appleは映画、テレビ番組と並んで、「Netflixのニュース版」というべきサブスクリプション・サービスを準備するために各種のニュースメディアと交渉しているという情報が出ている。デジタル雑誌購読アプリのTextureを買収したのはその準備の一環だろう。

Wall StreetJournal(ウォールストリートジャーナル)の記事によれば、Appleのニュースサブスクリプションに関して新聞社、出版社の多くは収入の分配率に不満を抱いているという。しかしWall StreetJournal自身をはじめとして有力メディアの多くが参加を決めているということだ。

もうひとつの情報はAppleがGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)との提携により自社ブランドのクレジット・カードを発行するというものだ。Goldman SacksのCEOが今回のイベントに登場してApple提携カードを発表するという情報も流れている。

いずれにせよイベントは太平洋時間の3月25日月曜日午前10時、日本時間26日午前2時にスタートする。TechCrunchでは現地で取材し、何であれ判明次第報じる予定だ。

【編集部注】TechCrunchでは明日のイベントでゲームのサブスクリプションサービスも発表されるかもしれないと報じている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Google Stadiaを実機プレイ、多少の遅延が起きるが優秀なプラットフォーム

Googleの新しいゲーム・ストリーミングのプラットフォームであるStadiaだが、発表会場でレイテンシー、価格、サポート予定のデバイスなどについてうるさくスタッフに質問した後、新しいゲームコントローラを実際にテストしてみることができた。短時間だが大画面テレビでプレイしたのはクラウド版のDoom 2016だった。

最初のトライはさんざんだった。フレームレートが極端に遅くなり、まるでPowerPointのスライドの早送りみたいになった。4K映像が表示されたかと思うと何が映っているかわからないほどぼやけた。最長で0.5秒くらいのレイテンシーが感じられた。このありさまにGoogleの社員は不安げに顔を見合わせていたが、やがて私のコントローラをひったくって再起動をかけた。

再起動後は状況は大きく改善された。しかしひと言で要約するなら、ストリーミングゲームには「何が起きるか予想がつかない」不安定さが残っている。Googleの名誉のために付け加えておくと、Stadiaの実機テストは強力なネットワークが張り巡らされたマウンテンビューの本社キャンパスではなく、発表会場のホテルのWi-Fiで行われた。これは現実の使用条件にずっと近いはずだ。

StadiaはGoogleのクラウドゲームストリーミングサービスだ。テクノロジーの詳細についてはまだ不明な点が多々あるが、基本的な方向性ははっきりしている。ハイレベルの専用機ゲームをオンラインに移行させることだ。Chromeブラウザからアクセスできれば強力なゲーム用GPUを持たないスマートフォンなどのデバイスでハイレベルのゲームがプレイできるようになる。

最初のトライでつまづいたものの、その後Stadia体験は全体としてポジティブなものだった。Doom 2016の画像は鮮明な4Kで、プラットフォームを特に意識せずゲームに集中できた。新しいプラットフォームが導入された場合、「意識しないですむ」というのは大成功を意味する。

カジュアル・ゲームにはStadiaは素晴らしいプラットフォームになると思う。。ただし高度なマルチプレイヤーゲームを楽しむ筋金入りユーザーには最適ではないかもしれない。理論上は、YouTubeのフィードから直接にスポーツ系ゲームを起動できる。しかしこういう使い方には向いていない。インプットから画面上にその効果が出されるまでのレイテンシーがそれなりにあるからだ。しかし(私も含めて)多数のユーザーにとってStadiaの能力は十分だ。なんといってもこのレベルのユーザーがゲーム市場の大部分を占めるのだから、Stadiaは十分に価値があるテクノロジーだ。

Google Stadia担当のバイスプレジデントであるPhil Harrison氏は、レイテンシーがどれほどの範囲になるか正確な数字を挙げることは控えたが、「人間が何かを知覚してから反応するまでの時間よりも短い」と述べた。Googleのスタッフによれば、この時間は(個人差はあるものの)70ミリ秒から130ミリ秒程度だという。つまりStadiaのレイテンシーはネットワーク接続が最良であれば70ミリ秒未満ということになるのだろう。

レイテンシーはネットワークの状態だけでなく、ユーザーとデータセンターとの物理的な距離によっても変化する。つまり固定した数字はあまり意味がない。テスト時点で私はサンフランシスコにおり、およそ80キロ離れたサンノゼのデータセンターにアクセスできた。Googleは「Stadiaがサポートされている国のユーザーであっても、僻地に居住しているような場合、サービスの開始時点で必ずサインアップできるとは限らない」と認めたが、その理由がここで述べたような事情だ。

その他の興味ある点。

  • Googleはサポートされるデバイスについて「後日正確な情報を発表する」と述べたが、iOSデバイスをサポートするのかという質問に対して「スタート時点ではPixelデバイスに焦点を当てていく」と強調した。.
  • 別のプラットフォームで購入ずみのタイトルであってもStadiaではプレイできないようだ。当然だが、Stadiaのゲームはこのプラットフォーム上で改めて購入する必要がある。
  • ユーザーはYouTubeのストリームからゲームにアクセスすることができるが、すべてのコンテンツをまとめたハブとなるサイトも用意され、URLでゲームにアクセスすることもできる。
  • コントローラ(トップの写真)はよく出来ている。デザインはソニーのDualShockとよく似ている

Stadiaについては今年の夏のGoogle I/Oでさらに詳しい点が判明するはずだ。私の最初の実機テストではサービスがGoogleの主張どおりに作動し、専用機クラスのゲーム体験を与えることができると確認できた。そこで現在、最大の疑問は価格だ。ハードコアなゲーマーしか手が届かない価格になるのか、カジュアル・ゲーマーにも手頃な価格になるかがこのプラットフォームの性格を決める。ビジネスとしての成否もおそらくはこの価格設定にかかっているだろう

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(翻訳:Umihiko Namekawa、滑川海彦@Facebook