担当者にかわってAIが自動でオススメ物件提案、不動産テックのハウスマートが約3億円調達

個人向けの中古マンション提案アプリ「カウル」や不動産仲介会社向けSaaS「プロポクラウド」を展開するハウスマートは1月22日、日本郵政キャピタルとアコード・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により約3億円を調達したことを明らかにした。

今後は組織体制を強化し、引き続き2つの事業の機能拡充や対応エリアの拡大を進めていく計画。なお同社は2018年9月にアコード・ベンチャーズなどから3億円を調達するなど、これまで複数回の資金調達を実施している。

ハウスマートは代表取締役の針山昌幸氏が、不動産会社や楽天を経て2014年10月に創業した不動産テック領域のスタートアップだ。

2016年から運営しているカウルはAIやビッグデータを用いて、ユーザーの中古マンション選びをサポートするアプリ。アプリ上で各物件に“お気に入り”や“興味なし”などのリアクションをしていけば、AIが個々の希望条件と趣味嗜好を学習しておすすめのマンションを提案する。部屋探しから見学までの担当者とのコミュニケーションもメッセージ機能を使えばスムーズだ。

特徴的なのは売買事例や賃貸事例、築年数、間取り、最寄駅などの関連データを分析した上で、現在の適正価格や35年後までの価格推移を「カウル推定価格」として算出できること。気になる中古マンションが今後どういった価格を推移していくのかはもちろん、「購入した場合と、同等の条件の中古マンションに賃貸で住み続けた場合ではどちらがお得か」なんてこともチェック可能だ。

気になるマンションの価格変動を教えてくれる機能や学区からマンションを見つけられる機能なども搭載。昨年末には千葉県と埼玉県にも対象を広げ、現在は1都3県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)の主要エリアにてサービスを展開する。会員数も5万人を突破した。

カウルはユーザーにとってだけではなく、事業者側にとっても大きな価値がある。これまで人力のみでは限界があった膨大な物件情報のキャッチアップや各ユーザーへの継続的な物件提案を、テクノロジーによって大幅に効率化・自動化してくれるからだ。

このシステムによってハウスマートでは1人の営業パーソンが通常の約30倍に当たる600人以上の顧客を担当できたという話は前回調達時に紹介した通り。そしてカウルの仕組みを他の不動産仲介会社でも使えるようにSaaS化したのが、昨年3月にリリースしたプロポクラウドだ。

同サービスの特徴は「テクノロジーによって、仲介会社と顧客が継続的に繋がり続けるのをサポートできること」(針山氏)。従来は物件探しから実際に提案するまで1人の顧客に対して45分〜50分ほどの時間がかかっていたが、プロポクラウドでは最初に約1分ほどで顧客の情報や希望条件を入力しておくだけでいい。

そうすると条件にあった中古マンションがメールにて自動で提案され、顧客のリアクション(詳細閲覧、いいね、興味なし、問い合わせなど)を見ながら必要に応じてフォローすることもできる。

プロポクラウドでメールにて物件提案をしている様子

「1番のペインはお客さんとの関係性構築が大変だということ。不動産は人生でも1番高い買い物であり、初回の問い合わせから数ヶ月、数年にわたって1人のお客さんと関係性を維持していく必要がある。ただし人力だけでは継続的に情報提供することが難しかった。プロポクラウドはそこをサポートできるサービスとして、活用してもらえている」(針山氏)

料金は月額5万円からの定額制で登録する顧客数に応じて変動するモデルだ。針山氏の話では現在60店舗以上が導入済み。特にエンタープライズ企業と相性が良く、不動産仲介会社の2018年度売買仲介実績上位20社のうち6社がすでにプロポクラウドを活用している。

実は昨年3月にスタートしてからしばらくは顧客獲得が想定以上に難航していたそう。新しいものに対してそこまで興味がある企業も少なく、話を聞いても「自社サーバー以外は考えられない、クラウドなんてとんでもない」と言われることもあったという。

少しずつ状況が好転し始めたのは秋口頃からだ。そもそもマーケットを啓蒙する目的で不動産テックや不動産業界のトレンドを解説するセミナーを開始。日本でもメディアで不動産テック関連のトピックが取り上げられることが増え、その領域に特化したイベントなども開催されたことで徐々に潮目が変わってきた。

またヒアリングを重ねた結果、顧客の事業規模によっても課題感が異なり、プロポクラウドはエンタープライズ企業のニーズに合致していることを発見。直近はそこにフォーカスして機能改善を進めている。

「エンタープライズ企業は広告周りのノウハウがあるため集客は得意。集客ができているからこそ、その後の顧客と繋がる部分により大きな課題感を持っている。一方でSMBのお客さんは集客部分に悩まれている方も多く、それぞれで1番課題だと感じている部分が異なる」(針山氏)

プロポクラウドでは自動提案された物件に対する顧客のリアクションが一覧で把握できる

ハウスマートでは今後も引き続きカウルとプロポクラウドの2事業を伸ばしていく計画。今回調達した資金で開発体制・組織体制の強化を進め、機能追加のほか戸建てへの対応、関西エリアへの拡大などにも取り組む。

また少し先の話にはなるとのことだったけれど、プロポクラウドにおいては今後マンションを売却したいユーザーと営業マンをつなぐ「売却側」の機能も提供していく方針。それに向けた開発も進めていくという。

ビックデータ活用で中古マンションを探せる「カウル」の会員数が4万人突破

Housmartは8月16日、同社が提供する中古マンション検索サービス「カウル」の会員数が4万人を突破したことを発表した。サービス開始から3年8カ月での達成となる。

カウルは、中古マンションのさまざまな情報を分析することで適正価格を導き出す機能を備えているのが特徴だ。具体的には、売買事例や賃貸事例、築年数、間取り、最寄駅などを分析し、適正価格や35年後までの推定価格を算定できる。現在の対象エリアは、東京都23区、三鷹市、武蔵野市、西東京市、横浜市、川崎市で、該当地域の99%をカバーしているとのこと。

賃貸が購入で迷ったときに参考になる「カウル鑑定」という機能もある。一般的に間取りや最寄り駅まで距離などが同じ物件の場合、月額賃貸料よりもローンの月額支払額が低い場合は購入したほうが有利だが、居住年数やローンの支払年数などで変わってくる。カウル鑑定では、年収や扶養家族数、ローン計画、居住年数などを事前に入力しておくことで、検索した各物件を購入したほうがいいのかとうかを提示してくれる。そのほか、公立小中学校の学区指定検索など、子育て世代にはキーポイントになる検索機能もある。

同社では現在、カウルから中古マンションの見学を申し込んで成約した場合に、仲介手数料が半額の(税別物件価格の1.5%+3万円)になる「手数料半額プラン」を実施中で、前年同期比(4〜7月)で会員数が250%で増えたとのこと。

約60分かかる物件提案を1分に短縮、不動産仲介会社向けSaaS「PropoCloud」公開へ

AIを活用した中古マンションの提案アプリ「カウル」を展開するHousmart(ハウスマート)は2月28日、不動産仲介会社向けの新サービスを3月1日にローンチすることを明らかにした。

PropoCloud(プロポクラウド)」と名付けられた同サービスは、カウルのコアとなる技術を用いた仲介会社向けのSaaSだ。

これまで住宅購入検討者1人に対して1回あたり約45〜60分かかっていた物件の提案やメール追客業務を、テクノロジーを用いて約1分にまで短縮するのが特徴。営業担当者がより多くの時間を顧客と向き合うことに使えるようにサポートする。

独自のデータベースとアルゴリズムで物件提案をシステム化

もともとHousmartでは、居住用の中古マンションの購入を検討している個人向けのアプリとしてカウルを提供してきた。

同サービスでは東京と神奈川の主要エリアにおいて3万件以上の物件データを集約した独自のデータベースを構築。ユーザーの好みや条件に加え、アプリ内での行動を基に豊富な物件の中からオススメのものをレコメンドする。

加えて新築時の分譲価格や過去の売買・賃貸事例、築年数、物件の広さ、間取り、最寄り駅情報といったビッグデータをAIが分析し、物件ごとに現在の適正価格や35年後までの推定価格などを算出できるのも特徴だ。

このシステムがあるからこそ、Housmartでは1人の営業パーソンが通常の約30倍に当たる600人以上の顧客をサポートできているというのは以前紹介した通り。今回リリースするPropoCloudは、まさにこの仕組みを他の不動産仲介会社にも開放しようという試みだ。

Housmart代表取締役の針山昌幸氏の話では、都内だけでも毎日数百件ほどの新しい物件が売りに出されているそう。これらの情報を日々キャッチアップし、顧客ごとのニーズに合わせて最適な提案をするのは簡単な仕事ではない。

「従来は営業担当者が毎日レインズをチェックしながら、人力で分析やシミュレーションをして顧客に情報を送っていた」(針山氏)そうで、物件の選定から分析、コスト算出などを含めると1人あたり約45〜60分かかるのが通常だという。

一方PropoCloudではカウルと同様に、3 万件以上の物件データが即日から利用可能。初回に営業担当者が1分ほどで簡単な顧客情報や希望条件を登録しておけば、あとは担当者に代わって“勝手に”物件の選定や提案をしてくれる。

物件に関する顧客のアクション(お気に入りをしたか、ゴミ箱に入れたかなど)を蓄積することで、提案精度を高めていくことも可能。提案は普段顧客とのコミュニケーションで使っているメール上で行うため、わざわざ専用のアプリをダウンロードしてもらう必要もない。

現在の適正価格や35年後までの推定価格、購入時の経費・毎月のランニングコストをAIが算出する機能も備える。

従来1ヶ月あたりの追客可能なメール数が約160通だったのに対し、「PropoCloud」を使うことで約6000通(約38倍)の追客が見込めるという

これまでは営業担当者が人力でやらざるを得なかった仕事をシステムと上手く分担することで、各顧客に対してより手厚いサービスを提供できるのがPropoCloudの特徴。針山氏も「物件情報の提供にマンパワーを割かずに済めば、担当者は顧客のサポートや物件見学など付加価値の高い業務により多くの時間を使えるようになる」と話す。

試験的に複数社で活用してもらったところ「今までほとんどできてなかった追客ができるようになった」「お客さんの行動や営業担当者がどのようにコミュニケーションをとったのか、一連の履歴を簡単に残せるようになった」といった反応があり、手応えを感じているそう。生産性の向上だけでなく「(顧客の方を向いて仕事をできることで)従業員の満足度のアップや退職率の低下にも効くのではないか」といった声も寄せられたという。

料金体系については、抱えている顧客数を基準にした複数の定額プランを用意する方針。だいたい1人の顧客に対して毎月100〜200円ほどで情報提供ができるようになるイメージとのことだ。

リリース時にPropoCloudの対象となるのは東京都23区、武蔵野市、三鷹市、⻄東京市、横浜市、川崎市の居住用中古マンション(オーナーチェンジ物件除く)。初年度は180店舗への導入を目指していく。

AI活用でマンション売買をスマートにするHousmartが3億円を調達、事業者向けSaaSの開発も

中古マンションをスマートに購入できるアプリ「カウル」を運営するHousmart(ハウスマート)。同社は9月25日、アコード・ベンチャーズ、SXキャピタル、大和企業投資、CAC CAPITAL、フリービットインベストメントを引受先とする第三者割当増資により約3億円を調達したことを明らかにした。

ハウスマートでは調達した資金を活用して、他の不動産会社がカウルの仕組みを活用できるような事業者向けのバーティカルSaaSの開発・提供を進める方針。合わせて新機能の開発や人材採用、マーケティングの強化にも取り組む。

なお同社では2016年11月にもオプトベンチャーズ、BEENEXT、大和企業投資から1億円を調達している。

データから物件の将来価格を推定、おすすめ物件の提案も

カウルは機械学習を含むテクノロジーの活用によって、これまでアナログで人力の要素が多かった中古マンションを購入する仕組みを変えようとしているプロダクトだ。

中古マンションは近年ニーズが高まっている一方で、過去の売買データの整備が進んでおらず、物件の訂正価格など十分な情報を購入検討者が取得しづらいことが課題とされてきた。

この問題の解決策としてカウルでは独自の価格推定機能を搭載。新築時の分譲価格や約1000万件に及ぶ過去の売買・賃貸事例、築年数、物件の広さ、間取り、最寄り駅情報などのビッグデータをAIで分析し、現在から35年後までの推定価格を算出する。

1月にはこの仕組みをベースに“賃貸と購入のどちらがお得か”を瞬時に鑑定する「カウル鑑定」をリリース。同機能の背景や概要については以前TechCrunchでも詳しく紹介した。またユーザーのアプリ内での行動を学習した上で、希望条件と趣味嗜好を基に最適な物件をレコメンドする物件提案機能も搭載している。

とはいえ、ハウスマート代表取締役の針山昌幸氏によるとアルゴリズムにはまだ改善の余地があるそう。特に今はざっくりした要望の顧客に対しては精度の高いレコメンドが実現できていないそうで、今後はアルゴリズムの改良と共により多くのデータを集めることで同機能の強化を図っていくという。

現在は学区からマンションを見つけられるなど細かい条件を指定できる点や、気になる物件が売りに出された際にタイムリーに教えてくれる機能、値下がりした物件を自動で通知してくれる機能などに対するユーザーの反応が良いそう。

これらの作業をリアルタイムに営業マンが人力でやるのは困難で、特に物件の値下がり情報については「(他社物件の値下がりを)営業マンが正確に知る術はなく、毎日レインズ(不動産流通標準情報システム)を見ながら直感的に判断するしかなかった」(針山氏)という。

カウルの場合は裏側でデータベースを構築しているためこれらの作業を自動化できる点が特徴。継続的に会員数を伸ばし、8月には2万人を突破している。

不動産業者向けのバーティカルSaaSの展開も

これまでハウスマートでは社内に営業人材を抱え、直営で顧客のサポートを行ってきた。

ただ春先ごろより他の不動産会社から「カウルの仕組みを使いたい」という旨の問い合わせが増加。新たなニーズに気づくと共に、他業者へカウルを提供することで「もともと創業時から実現したかった『不動産の正解がわかるような世の中』をもっと早く実現できるのではないかと考えた」(針山氏)のだという。

それを機に開発を進めてきたのが、不動産業者がカウルを活用し顧客とのコミュニケーションを改善できるような仕組みだ。

前回も紹介したように、1社の不動産会社が売り主と買い主の双方を担当するのが一般的な不動産売買の構造であり、多くの事業者では売却(売り主側の支援)により多くの時間を使っている。結果的に購入(買い主側の支援)に使える時間が限られるため、ここに機会損失が発生しているのだという。

針山氏が約200社にヒアリングしてみたところ、売買に力を入れている事業者ではだいたい1営業マンあたり月10件くらいの購入問い合わせがあるものの、実際に契約に至るのは1件あるかないかなのだそう。

「本来であれば決まらなかった9人に対して他の物件を丁寧に紹介することができれば、顧客も喜ぶし営業マンも取引のチャンスが増えるはず。ただ売却の方で手一杯のために、そこまでやりきることができない」(針山氏)

写真中央がハウスマート代表取締役の針山昌幸氏

そのような事業者に対してカウルの仕組みを提供することで、営業マンに変わって自動で物件を提案するような環境を構築する。これが現在ハウスマートで開発を進めているプロダクトの特徴だ。

「1営業マンあたりで持てる顧客の数はだいたい20人ほど。この人数をしっかりフォローアップできればいい営業だと言われるが、物件の提案だけでも月に1人あたり5時間ほど、トータルでだいたい100時間はかかる。カウルの仕組みを使えば、この時間をほぼ0にすることができる」(針山氏)

上述したように、カウルでは物件提案を始め毎月のランニングコストの計算や将来のライフシミュレーションなど、従来営業パーソンが人力で行ってきた業務を自動化する。実際にハウスマートでは1人の営業パーソンが通常の約30倍に当たる600人以上の顧客をサポートしているそうだ。

事業者向けのプロダクトはバーティカルSaaSのような形で提供していく方針。現在は数社でトライアル的に導入をしている段階で、正式なリリースは年明けを予定しているという。

AIが1000万件のデータから「賃貸と購入どっちがお得?」を鑑定、物件売買サービス「カウル」

「今家を買う人は30〜40代前半の人が中心。何か物を購入する際はスマホを使って情報を集め、比較検討をするのが当たり前になっている。“家”というのは数千万円ものお金を支払う人生で1番高い買い物なのに、情報開示が進んでいなくて適正価格がわかりづらい」——Housmart(ハウスマート)代表取締役の針山昌幸氏は不動産売買の課題について、そのように話す。

Housmartが現在手がけているのは、物件の売買ができるサービス「カウル」。近年需要が増えている一方で、特に価格の不透明性が高い「中古マンション」に焦点を当てる形で2016年1月に立ち上げた。

そのカウル内で本日「カウル鑑定」という新たな機能がリリースされた。興味がある部屋について、データをもとにAIが将来価格を予想。「賃貸と購入のどちらがお得か」を瞬時に鑑定してくれるというものだ。

同じ建物でも部屋によって「どちらが得か」は変わる

カウル鑑定では過去から現在にいたるまでの不動産売買や賃貸に関するデータを活用し、AIが1〜35年後の物件価格を算出。そこに物件価格の値下がり金額や住宅ローン金利、マンションの管理費、税金などを考慮した上で、購入する場合と賃貸で借りる場合どちらが得かを瞬時に鑑定する。

使用料金は無料。カウルでローンの返済計画を立てると、その情報から物件ごとにトータルコストの差額を見ることができる。

不動産関連の雑誌でも賃貸と購入を比較する特集はよくあるが、支払う価格だけをベースに比較したものも少なくない。針山氏の話では「中古マンションは購入から10年、20年が経過してもけっこうな金額で売れることがよくある」そう。売却した場合に手元に残る金額を含めて、部屋単位で料金を比較できるのがカウル鑑定の特徴だ。

開発に至ったきっかけのひとつは、中古マンションの購入を検討するユーザーの「買ったマンションが将来いくらで売れるのか知りたい」というニーズ。以前からカウルではデータをもとにAIで適正価格を算出し、カウル推定価格という形で情報を提供してきた。そこからさらにシステムを改良し、35年後までの将来価格の予測や賃貸との比較をできるようにしたのがカウル鑑定だ。

「実は同じマンションでも部屋によって(賃貸と購入の)どちらが得かというのも変わってくる。そこをユーザーがオンライン上で直感的に判断できるようにすれば、利便性も高い」(針山氏)

カウル鑑定の対象となるマンションは販売用のため、同じ部屋を実際に借りることは難しい。ただし「この部屋を借りる場合、いくらぐらいで借りられるか」を推定することで、周辺の似たようなマンションや同じマンションの賃貸に出されている部屋を借りられる可能性はあるという。

将来的な価格を人間が算出するのは難しい

もともと針山氏は新卒で不動産会社に入社。自身も体感した業界の課題を解決するべく、楽天を経て2014年の10月にHousmartを創業している。物件価格の透明化や将来価格の算出もかつてからニーズはあれど、実現されてこなかったものだ。

「1社の不動産会社が売り主と買い主の双方を担当していたのが従来の一般的な不動産売買。多くの会社は売り主サイドに立つため、買い主に価格を透明化するインセンティブもなかった。これは買い主サイドに立つと大変な割に儲からないという、ビジネスの構造上の課題もある」(針山氏)

カウルの場合はこれまで人力で対応していた物件提案などの業務を自動化。余計なコストを削減することで、買い主サイドに立ってもビジネスとして成り立つ仕組みの構築にチャレンジしてきた。

加えて約1000万件に及ぶ売買事例や賃貸事例、物件データなどをもとにAIで適正価格や将来価格を割り出す取り組みも実施。現場経験のある針山氏らが半年から1年ほどチューニングを重ね、カウル鑑定のリリースに至ったという。

あくまで過去のデータをもとにしているので、完全に将来価格を的中させられるわけではない。針山氏によると「(将来の)インフレ率や日本全体の景気、エリアの再開発状況といった要因は含まない。築年数や立地条件などのスペックをもとに、将来的に最大でこのくらいのペースで価格が下がるという数値を出す」仕組みではあるが、人力に比べればはるかに適正な価格が出せるという考えだ。

カウルのリリースからは約2年が経過し、現在の登録ユーザー数は1.5万人を突破。2015年と2016年にはVCから資金調達もするなど、事業を拡大してきた。

今後は現在賃貸で暮らす人が家賃を入力することで、「現在住んでいる賃貸住宅と検討している住宅を購入した場合のシミュレーション」ができる機能も搭載予定。これまでは不透明だった情報を開示してわかりやすくすることで、不動産購入のリスクを減らしていきたいという。