約60分かかる物件提案を1分に短縮、不動産仲介会社向けSaaS「PropoCloud」公開へ

AIを活用した中古マンションの提案アプリ「カウル」を展開するHousmart(ハウスマート)は2月28日、不動産仲介会社向けの新サービスを3月1日にローンチすることを明らかにした。

PropoCloud(プロポクラウド)」と名付けられた同サービスは、カウルのコアとなる技術を用いた仲介会社向けのSaaSだ。

これまで住宅購入検討者1人に対して1回あたり約45〜60分かかっていた物件の提案やメール追客業務を、テクノロジーを用いて約1分にまで短縮するのが特徴。営業担当者がより多くの時間を顧客と向き合うことに使えるようにサポートする。

独自のデータベースとアルゴリズムで物件提案をシステム化

もともとHousmartでは、居住用の中古マンションの購入を検討している個人向けのアプリとしてカウルを提供してきた。

同サービスでは東京と神奈川の主要エリアにおいて3万件以上の物件データを集約した独自のデータベースを構築。ユーザーの好みや条件に加え、アプリ内での行動を基に豊富な物件の中からオススメのものをレコメンドする。

加えて新築時の分譲価格や過去の売買・賃貸事例、築年数、物件の広さ、間取り、最寄り駅情報といったビッグデータをAIが分析し、物件ごとに現在の適正価格や35年後までの推定価格などを算出できるのも特徴だ。

このシステムがあるからこそ、Housmartでは1人の営業パーソンが通常の約30倍に当たる600人以上の顧客をサポートできているというのは以前紹介した通り。今回リリースするPropoCloudは、まさにこの仕組みを他の不動産仲介会社にも開放しようという試みだ。

Housmart代表取締役の針山昌幸氏の話では、都内だけでも毎日数百件ほどの新しい物件が売りに出されているそう。これらの情報を日々キャッチアップし、顧客ごとのニーズに合わせて最適な提案をするのは簡単な仕事ではない。

「従来は営業担当者が毎日レインズをチェックしながら、人力で分析やシミュレーションをして顧客に情報を送っていた」(針山氏)そうで、物件の選定から分析、コスト算出などを含めると1人あたり約45〜60分かかるのが通常だという。

一方PropoCloudではカウルと同様に、3 万件以上の物件データが即日から利用可能。初回に営業担当者が1分ほどで簡単な顧客情報や希望条件を登録しておけば、あとは担当者に代わって“勝手に”物件の選定や提案をしてくれる。

物件に関する顧客のアクション(お気に入りをしたか、ゴミ箱に入れたかなど)を蓄積することで、提案精度を高めていくことも可能。提案は普段顧客とのコミュニケーションで使っているメール上で行うため、わざわざ専用のアプリをダウンロードしてもらう必要もない。

現在の適正価格や35年後までの推定価格、購入時の経費・毎月のランニングコストをAIが算出する機能も備える。

従来1ヶ月あたりの追客可能なメール数が約160通だったのに対し、「PropoCloud」を使うことで約6000通(約38倍)の追客が見込めるという

これまでは営業担当者が人力でやらざるを得なかった仕事をシステムと上手く分担することで、各顧客に対してより手厚いサービスを提供できるのがPropoCloudの特徴。針山氏も「物件情報の提供にマンパワーを割かずに済めば、担当者は顧客のサポートや物件見学など付加価値の高い業務により多くの時間を使えるようになる」と話す。

試験的に複数社で活用してもらったところ「今までほとんどできてなかった追客ができるようになった」「お客さんの行動や営業担当者がどのようにコミュニケーションをとったのか、一連の履歴を簡単に残せるようになった」といった反応があり、手応えを感じているそう。生産性の向上だけでなく「(顧客の方を向いて仕事をできることで)従業員の満足度のアップや退職率の低下にも効くのではないか」といった声も寄せられたという。

料金体系については、抱えている顧客数を基準にした複数の定額プランを用意する方針。だいたい1人の顧客に対して毎月100〜200円ほどで情報提供ができるようになるイメージとのことだ。

リリース時にPropoCloudの対象となるのは東京都23区、武蔵野市、三鷹市、⻄東京市、横浜市、川崎市の居住用中古マンション(オーナーチェンジ物件除く)。初年度は180店舗への導入を目指していく。

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TechCrunch Japan

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