ビックデータ活用で中古マンションを探せる「カウル」の会員数が4万人突破

Housmartは8月16日、同社が提供する中古マンション検索サービス「カウル」の会員数が4万人を突破したことを発表した。サービス開始から3年8カ月での達成となる。

カウルは、中古マンションのさまざまな情報を分析することで適正価格を導き出す機能を備えているのが特徴だ。具体的には、売買事例や賃貸事例、築年数、間取り、最寄駅などを分析し、適正価格や35年後までの推定価格を算定できる。現在の対象エリアは、東京都23区、三鷹市、武蔵野市、西東京市、横浜市、川崎市で、該当地域の99%をカバーしているとのこと。

賃貸が購入で迷ったときに参考になる「カウル鑑定」という機能もある。一般的に間取りや最寄り駅まで距離などが同じ物件の場合、月額賃貸料よりもローンの月額支払額が低い場合は購入したほうが有利だが、居住年数やローンの支払年数などで変わってくる。カウル鑑定では、年収や扶養家族数、ローン計画、居住年数などを事前に入力しておくことで、検索した各物件を購入したほうがいいのかとうかを提示してくれる。そのほか、公立小中学校の学区指定検索など、子育て世代にはキーポイントになる検索機能もある。

同社では現在、カウルから中古マンションの見学を申し込んで成約した場合に、仲介手数料が半額の(税別物件価格の1.5%+3万円)になる「手数料半額プラン」を実施中で、前年同期比(4〜7月)で会員数が250%で増えたとのこと。

AI活用でマンション売買をスマートにするHousmartが3億円を調達、事業者向けSaaSの開発も

中古マンションをスマートに購入できるアプリ「カウル」を運営するHousmart(ハウスマート)。同社は9月25日、アコード・ベンチャーズ、SXキャピタル、大和企業投資、CAC CAPITAL、フリービットインベストメントを引受先とする第三者割当増資により約3億円を調達したことを明らかにした。

ハウスマートでは調達した資金を活用して、他の不動産会社がカウルの仕組みを活用できるような事業者向けのバーティカルSaaSの開発・提供を進める方針。合わせて新機能の開発や人材採用、マーケティングの強化にも取り組む。

なお同社では2016年11月にもオプトベンチャーズ、BEENEXT、大和企業投資から1億円を調達している。

データから物件の将来価格を推定、おすすめ物件の提案も

カウルは機械学習を含むテクノロジーの活用によって、これまでアナログで人力の要素が多かった中古マンションを購入する仕組みを変えようとしているプロダクトだ。

中古マンションは近年ニーズが高まっている一方で、過去の売買データの整備が進んでおらず、物件の訂正価格など十分な情報を購入検討者が取得しづらいことが課題とされてきた。

この問題の解決策としてカウルでは独自の価格推定機能を搭載。新築時の分譲価格や約1000万件に及ぶ過去の売買・賃貸事例、築年数、物件の広さ、間取り、最寄り駅情報などのビッグデータをAIで分析し、現在から35年後までの推定価格を算出する。

1月にはこの仕組みをベースに“賃貸と購入のどちらがお得か”を瞬時に鑑定する「カウル鑑定」をリリース。同機能の背景や概要については以前TechCrunchでも詳しく紹介した。またユーザーのアプリ内での行動を学習した上で、希望条件と趣味嗜好を基に最適な物件をレコメンドする物件提案機能も搭載している。

とはいえ、ハウスマート代表取締役の針山昌幸氏によるとアルゴリズムにはまだ改善の余地があるそう。特に今はざっくりした要望の顧客に対しては精度の高いレコメンドが実現できていないそうで、今後はアルゴリズムの改良と共により多くのデータを集めることで同機能の強化を図っていくという。

現在は学区からマンションを見つけられるなど細かい条件を指定できる点や、気になる物件が売りに出された際にタイムリーに教えてくれる機能、値下がりした物件を自動で通知してくれる機能などに対するユーザーの反応が良いそう。

これらの作業をリアルタイムに営業マンが人力でやるのは困難で、特に物件の値下がり情報については「(他社物件の値下がりを)営業マンが正確に知る術はなく、毎日レインズ(不動産流通標準情報システム)を見ながら直感的に判断するしかなかった」(針山氏)という。

カウルの場合は裏側でデータベースを構築しているためこれらの作業を自動化できる点が特徴。継続的に会員数を伸ばし、8月には2万人を突破している。

不動産業者向けのバーティカルSaaSの展開も

これまでハウスマートでは社内に営業人材を抱え、直営で顧客のサポートを行ってきた。

ただ春先ごろより他の不動産会社から「カウルの仕組みを使いたい」という旨の問い合わせが増加。新たなニーズに気づくと共に、他業者へカウルを提供することで「もともと創業時から実現したかった『不動産の正解がわかるような世の中』をもっと早く実現できるのではないかと考えた」(針山氏)のだという。

それを機に開発を進めてきたのが、不動産業者がカウルを活用し顧客とのコミュニケーションを改善できるような仕組みだ。

前回も紹介したように、1社の不動産会社が売り主と買い主の双方を担当するのが一般的な不動産売買の構造であり、多くの事業者では売却(売り主側の支援)により多くの時間を使っている。結果的に購入(買い主側の支援)に使える時間が限られるため、ここに機会損失が発生しているのだという。

針山氏が約200社にヒアリングしてみたところ、売買に力を入れている事業者ではだいたい1営業マンあたり月10件くらいの購入問い合わせがあるものの、実際に契約に至るのは1件あるかないかなのだそう。

「本来であれば決まらなかった9人に対して他の物件を丁寧に紹介することができれば、顧客も喜ぶし営業マンも取引のチャンスが増えるはず。ただ売却の方で手一杯のために、そこまでやりきることができない」(針山氏)

写真中央がハウスマート代表取締役の針山昌幸氏

そのような事業者に対してカウルの仕組みを提供することで、営業マンに変わって自動で物件を提案するような環境を構築する。これが現在ハウスマートで開発を進めているプロダクトの特徴だ。

「1営業マンあたりで持てる顧客の数はだいたい20人ほど。この人数をしっかりフォローアップできればいい営業だと言われるが、物件の提案だけでも月に1人あたり5時間ほど、トータルでだいたい100時間はかかる。カウルの仕組みを使えば、この時間をほぼ0にすることができる」(針山氏)

上述したように、カウルでは物件提案を始め毎月のランニングコストの計算や将来のライフシミュレーションなど、従来営業パーソンが人力で行ってきた業務を自動化する。実際にハウスマートでは1人の営業パーソンが通常の約30倍に当たる600人以上の顧客をサポートしているそうだ。

事業者向けのプロダクトはバーティカルSaaSのような形で提供していく方針。現在は数社でトライアル的に導入をしている段階で、正式なリリースは年明けを予定しているという。

AIが1000万件のデータから「賃貸と購入どっちがお得?」を鑑定、物件売買サービス「カウル」

「今家を買う人は30〜40代前半の人が中心。何か物を購入する際はスマホを使って情報を集め、比較検討をするのが当たり前になっている。“家”というのは数千万円ものお金を支払う人生で1番高い買い物なのに、情報開示が進んでいなくて適正価格がわかりづらい」——Housmart(ハウスマート)代表取締役の針山昌幸氏は不動産売買の課題について、そのように話す。

Housmartが現在手がけているのは、物件の売買ができるサービス「カウル」。近年需要が増えている一方で、特に価格の不透明性が高い「中古マンション」に焦点を当てる形で2016年1月に立ち上げた。

そのカウル内で本日「カウル鑑定」という新たな機能がリリースされた。興味がある部屋について、データをもとにAIが将来価格を予想。「賃貸と購入のどちらがお得か」を瞬時に鑑定してくれるというものだ。

同じ建物でも部屋によって「どちらが得か」は変わる

カウル鑑定では過去から現在にいたるまでの不動産売買や賃貸に関するデータを活用し、AIが1〜35年後の物件価格を算出。そこに物件価格の値下がり金額や住宅ローン金利、マンションの管理費、税金などを考慮した上で、購入する場合と賃貸で借りる場合どちらが得かを瞬時に鑑定する。

使用料金は無料。カウルでローンの返済計画を立てると、その情報から物件ごとにトータルコストの差額を見ることができる。

不動産関連の雑誌でも賃貸と購入を比較する特集はよくあるが、支払う価格だけをベースに比較したものも少なくない。針山氏の話では「中古マンションは購入から10年、20年が経過してもけっこうな金額で売れることがよくある」そう。売却した場合に手元に残る金額を含めて、部屋単位で料金を比較できるのがカウル鑑定の特徴だ。

開発に至ったきっかけのひとつは、中古マンションの購入を検討するユーザーの「買ったマンションが将来いくらで売れるのか知りたい」というニーズ。以前からカウルではデータをもとにAIで適正価格を算出し、カウル推定価格という形で情報を提供してきた。そこからさらにシステムを改良し、35年後までの将来価格の予測や賃貸との比較をできるようにしたのがカウル鑑定だ。

「実は同じマンションでも部屋によって(賃貸と購入の)どちらが得かというのも変わってくる。そこをユーザーがオンライン上で直感的に判断できるようにすれば、利便性も高い」(針山氏)

カウル鑑定の対象となるマンションは販売用のため、同じ部屋を実際に借りることは難しい。ただし「この部屋を借りる場合、いくらぐらいで借りられるか」を推定することで、周辺の似たようなマンションや同じマンションの賃貸に出されている部屋を借りられる可能性はあるという。

将来的な価格を人間が算出するのは難しい

もともと針山氏は新卒で不動産会社に入社。自身も体感した業界の課題を解決するべく、楽天を経て2014年の10月にHousmartを創業している。物件価格の透明化や将来価格の算出もかつてからニーズはあれど、実現されてこなかったものだ。

「1社の不動産会社が売り主と買い主の双方を担当していたのが従来の一般的な不動産売買。多くの会社は売り主サイドに立つため、買い主に価格を透明化するインセンティブもなかった。これは買い主サイドに立つと大変な割に儲からないという、ビジネスの構造上の課題もある」(針山氏)

カウルの場合はこれまで人力で対応していた物件提案などの業務を自動化。余計なコストを削減することで、買い主サイドに立ってもビジネスとして成り立つ仕組みの構築にチャレンジしてきた。

加えて約1000万件に及ぶ売買事例や賃貸事例、物件データなどをもとにAIで適正価格や将来価格を割り出す取り組みも実施。現場経験のある針山氏らが半年から1年ほどチューニングを重ね、カウル鑑定のリリースに至ったという。

あくまで過去のデータをもとにしているので、完全に将来価格を的中させられるわけではない。針山氏によると「(将来の)インフレ率や日本全体の景気、エリアの再開発状況といった要因は含まない。築年数や立地条件などのスペックをもとに、将来的に最大でこのくらいのペースで価格が下がるという数値を出す」仕組みではあるが、人力に比べればはるかに適正な価格が出せるという考えだ。

カウルのリリースからは約2年が経過し、現在の登録ユーザー数は1.5万人を突破。2015年と2016年にはVCから資金調達もするなど、事業を拡大してきた。

今後は現在賃貸で暮らす人が家賃を入力することで、「現在住んでいる賃貸住宅と検討している住宅を購入した場合のシミュレーション」ができる機能も搭載予定。これまでは不透明だった情報を開示してわかりやすくすることで、不動産購入のリスクを減らしていきたいという。