YouTubeが音楽ファンをターゲットにした音声重視のオーディオ広告を開始

YouTubeが米国時間11月17日、新しい広告プロダクトを発表した。それは、見るためよりもむしろ聴くためにYouTubeを利用しているビジターにマーケターが到達することを助けるものだ。

特に大きいのは音声広告だ。Google(グーグル)のブログによると、音声広告のターゲットは「夕食前のわずかな時間にワークアウトを行っていたり、最新のポッドキャストに追いつこうとしたり、金曜日の夜にバーチャルコンサートを聴いてるような」人たちだという。

音声広告は、視聴者が画面をときどきちらっと見るだけであったり、映像を完全に無視するような「音声中心の動画」用のものだ。もちろんそういう広告も音声オンリーではないが、YouTubeによると、視聴者へのコミュニケーションの大半を音声が行うという。そして映像は静止画像や簡単なアニメのことが多いとのことだ。

同社によると、初期のテストではYouTube上の音声広告のキャンペーンの75%以上で、ブランドの知名度が大きく向上したという。例えばこのShutterflyの広告では、ブランドを覚えていた人が14%増加、ターゲットの視聴者のブランド好感度が2%向上した。

しかしYouTubeは、「目を閉じても、言ってることが明瞭に理解できる広告でなければならない」と音声はメッセージを伝えるべきだと強調している。

ベータ版でローンチする音声広告に加えてYouTubeは、ダイナミックミュージックラインナップというものを発表し、マーケターがキャンペーンのターゲットをYouTube上の複数の音楽チャンネルに絞りこめるようにした。このようなチャンネルのラインナップは、ラテンとかK-POPのようにジャンルを特定したり、あるいはフィットネスなどの「関心事」で特定してもよい。

別のブログ記事でYouTubeの音楽部門のトップであるLyor Cohen(リオ・コーエン)氏は広告主に対して、彼らがYouTubeを不可欠な音楽ストリーミングプラットホームであると見なすべき理由を挙げている。

コーエン氏によると、毎月20億以上のログインしたユーザーが、1つ以上のミュージックビデオを見ている。「音楽はあなたが考える以上に中心的で前面にある存在だ。YouTubeの音楽の視聴の60%がモバイルデバイスだが、、そこではバックグランド的な視聴は行われていない」という。

しかしながら、バックグラウンドでの視聴に向いた広告サービスを立ち上げようとしている。この話はおかしいのではないだろうか。「ユーザーがいつ、どうやって音楽を聴いていようとも、YouTubeには広告主が彼らにコネクトする方法がある。バックグラウンドで音楽を消費していても効果的な広告はある。新しい音声広告では、消費者がビデオを見たり聴いたりしている瞬間に入り込むことで、その瞬間を一層充実したものにする」とコーエンは話を続けた。

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(翻訳:iwatani、a..k.a. hiwa

透明化を真剣に考えるなら広告産業はSDKをオープンソース化せよ

広告トラフィックの出所、その販売方法、測定方法は、いつまで経っても不透明のままで、いろいろな広告技術プロバイダーを利用したい広告主にとって、それがフラストレーションの元となり、参入障壁にもなっている。GDPR(EU一般データ保護規則)やCOPPA(児童オンライン保護法)などの法律により、個人データの保護やプライバシーの面では進展が見られたものの、広告マーケティングの透明性という大きな視点からすれば、状況はほとんど変わっていない。

その理由のひとつに、運用型広告やその他の広告テクノロジーの仕組みが圧倒的に複雑である点が挙げられる。毎日数十億件ものインプレッションが自動的に処理される世界では、物事をもっとシンプルに明確にするための共通のソリューションが存在しない。したがって広告業界が対処すべき課題は、透明化への意欲を持つことのみならず、透明化を実現させる手段を備えることだ。

苛立たしいことに、個人データの収集方法と一部企業の個人データの扱い方が、オンライン広告への人々の信頼を損ねる大きな要因になっている。これは一夜にして現れた問題ではない。長い間に築かれたものであり、自分の個人データの使われ方、分析のされ方、商品化のされ方に、消費者はフラストレーションを募らせてきた。同時に、支払いを要求されるクリック報酬型広告の透明性と合法性に、広告主は同様のフラストレーションを溜めている。

IAB(インタラクティブ広告協会)やTAG(トラストワージー・アカウンタビリティー・グループ)といった団体は、ads.txtのような透明性の高い指針構築の取り組みを続けている。しかし、厳格な法律がともなわなければ、責任は個々の企業に委ねられてしまう。

だがひとつだけ、大変に不評ながら比較的シンプルで、すべての関係者(ブランド、消費者、広告またはマーケティングの提供者)の利益となる透明性と信頼性を引き出せる方法がある。業界が結束して、すべての企業がそれぞれのSDKをオープンソース化することだ。

オープンソース化が広告主、パブリッシャー、広告業界に利益をもたらす理由

オープンソースソフトウェアとは、誰もが無料で使え、解析や変更や改良が許されたプログラムことだ。

プログラムを解析して、SDKの機能を個別の必要性に応じて調整するという作業は、よく行われている。アプリによる不正行為を公正に審査するセキュリティ企業や利害関係者も、同じようにプログラムの解析が行える。開発者とその依頼主にとれば、SDKを構成するプログラムがどのように記述されているかを公開することが、秘密の機能や好ましくない仕様がないことを証明する最良の手段となる。

オープンソースSDKを使う人は、誰もがその構造を正確に知ることができる。またオープンソースライセンスの元で公開されるため、誰もが修正や改良を提言できる。

オープンソースにもリスクはあるが恩恵ははるかに大きい

SDKのプログラムを公開する際の最大のリスクには、第三者が悪意あるプログラムを組み込んで悪用する恐れと、脆弱性を突いたバックエンドのサービスやデータへの不正アクセスを許してしまう恐れとがある。しかし、そこに注意を払っていれば、攻撃されやすい部分が見つかり次第、SDKの提供者は即座に修正できる。

オープンソース化の恩恵は、信頼と透明性を引き出せる点だ。それは顧客ロイヤリティーと消費者信頼感に確実につながる。結果として、広告主と開発者の全員が、誰とどのような条件で仕事をしたいかを自由に選べる市場での事業展開が可能になる。

身勝手なようだが実際の話として、SDKをオープンソース化すれば、我々の業界の企業は、自社製品の売り込みを目的とした他社からの根拠のない批判から身を守ることができるようにもなる。

オープンスタンダードの下では、宣伝目的の根も葉もない不当な非難はできなくなる。万人の目前で潔白を証明できるからだ。

アドテクノロジーはオープンソース化をどう受け入れたか

アドテクノロジーの分野では、MoPub(モーパブ)、Appodeal(アポディール)、AppsFlyer(アプスフライヤー)が、一部またはすべてのSDKをすでにオープンソースライセンスの下で公開している数少ない企業だ。

これらの企業はみな、透明性と信頼性が重要であることに気づき、オープンソース化に踏み切っている。自社ブランドの安全性と評判をアルゴリズムの手に委ねる場合は、なおさら透明性と信頼性が重要になる。だが大半のSDKは、未だ非公開のままだ。

自社の透明化のレベルを、先進的な企業に倣って設定しているようでは、業界の現状を乗り越えることはできない。今や、信頼とデータの透明性に関する精力的な行動が求められている。企業にプライバシー保護を要請し、最終的に必要とされる変革を推進するよう強要するGDPRやCOPPAの手法を採り入れ、SDKのオープンソース化を義務化すれば、広告マーケティングの世界は新たな高みへ導かれ、顧客、競合他社、規制当局そして消費者に対する新しいレベルの信頼が得られ、より高度なデプロイが可能になる。

業界全体におよぶ透明化の試みは、すぐに結果を出せるものではないが、正しい方向への動きを示す良いニュースだ。すでに実践している企業があるため、他の企業も追随しやすい。ブランドセーフティーを確かなものにする手段を備え、広告詐欺の抑制を促すことで、ブランド、広告代理店、プログラマティックパートナーとの関係は改善され、消費者の個人データの用途は明確化され、広告業界の信用は高まり、やがてはビジネスチャンスが増大する。

だからこそ私たちは、すべての広告およびマーケティング企業に対して、信頼と透明性と業界改革を引き出すSDKのオープンソース化に向けて、ともに一歩踏み出そうと呼びかけている。これは、私たちの消費者、ブランド、広告技術プロバイダーそして業界全体の利益を生む。そうすれば、ブランドとブランドの広告への信用を増した消費者から、そしてやがては、私たちを信頼し、より高度なソリューションを導入してビジネスを大きくしたいと考えるブランドから、私たち全員が恩恵を受けることになるのだ。

【編集部注】著者のErick Fang(エリック・ファン)氏はMintegral(ミンテグラル)のCEOとして、同社グローバルモバイル広告プラットフォームの経営、顧客関係、製品開発を監督している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:アドテックオープンソース透明性

画像クレジット:MirageC / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)