トラック運送のUber、Convoyが評価額10億ドルで1.85億ドルを調達

Alphabetの未公開株投資部門であるCapitalGは、Convoyの1.85億ドルの調達ラウンドをリードした。同社にとってシアトル拠点のIT利用トラック輸送ネットワークへの初めての投資だ。

このラウンドによってCovoyの総調達額は2.65億ドル、企業評価額は10億ドルとなった。新たな投資家として、T. Rowe PriceとLone Pine Capitalが既存投資家とともに参加した。

Convoyは長年Greylock Partnersの支援を受けてきた。同社は2015年のシリーズAラウンドをリードしている。 Y Combinatorも支援者のひとつだ。昨年 Y CombinatorはConvoyの6200万ドルのラウンドをリードするという異例の行動にでた。アクセラレーターであるY Combinatorが、Continuity Fundの資金をYC卒業生以外のレイトステージ企業に投資したのは初めてだった。

Salesforce CEOのMarc Benioff、Dropbox CEOのDrew Houston、Bezos Expeditions、および元Starbucks社長のHoward BeharもConvoyに出資している。

元AmazonのDan LewisとGrant Goodaleのペアが設立したConvoyは、8000億ドルのトラック業界に変革をもたらそうとしている。これは至難の業だ。トラックのUberとも呼ばれるConvyのアプリは、トラック運転手と荷物を運ぶ必要のある人たちをつなぐ。同社は新たな資金を使って、全米に規模を拡大するとともに運送マッチンク以外の事業にも進出しようとしている。

「トラックは40%の時間、からっぽで走っている。また、非効率的なスケジューリングのために何もせずに止まっていることがしょっちゅうだ」とConvoyのCEO Dan Lewisが声明で言った。「これは経済や環境だけでなく、荷主や運送会社の利益にも悪影響を及ぼす」

GeekWireによると、Convoyは、トラック運転手が仕事をうまく組み合わせて時間の無駄を省けるように新しいツール群を開発している。また、荷主にはシステムを通じて荷物追跡や価格データの利用を可能にしようとしている。

CapitalGのパートナー、David Laweeは出資契約の一環としてConvoyの取締役会に加わる。
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Dropbox創業者ドリュー・ハウストン、9月のDisrupt SFで思いを語る

Dropboxは5億人以上の人々にとって欠くことのできない重要なツールとなった。われわれがファウンダー・CEOであるDrew HoustonをTechCrunch Disruptのステージに迎えることに興奮しているのはそれが理由だ

Dropboxがスタートしたのは2007年のことで、Houstonはこの10年間でDropboxを今日の巨人へと育て上げた。

その間、Houstonはいくつもの厳しい決断を下してきた。

数年前、HoustonはDropboxのインフラストラクチャーをAWSから移動する決断を下した。2014年、Houstonは当時上場を検討していたBoxに遅れをとらないために5億ドルを負債による融資で資金調達した。そして2017年3月、DropboxはJP Morganからさらに6000万ドルの負債による資金調達を実施した。

Houstonは、Appleからの9桁(1億ドル以上)の買収を断ったとも報じられている。

その間ずっと、HoustonはDropboxをプラスのキャッシュフローへと導き、昨年には年間売上予測10億ドルを見据える会社へと成長させた。

そしてもちろん、今年の株式上場を果たすことになった決断を忘れることはできない。

Houstonが初めてTechCrunch読者の前で自分について話したのは2008年のTC50で、スタートアップバトルフィールドの中だった。そのTC50でHoustonが話したときのビデオがここにある。

来る9月のDisrupt San Franciscoでは、Houstonを迎えてここまでの道のりや株式公開の決断、そしてDropboxの将来について話してもうのがたのしみだ。

ショウは9月5日から7日まで開催される。スーパー早割チケットはまだ買うことができる!

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Dropbox、上場初日の株価は36%アップ――終値は$28.48、100億ドル企業の仲間入り

今日(米国時間3/23)、Dropboxが上場を果たし、公開企業の仲間入りをした。1株当たり21ドルで売り出し、7億5600万ドルを市場から調達した後、株価は一時31.60ドルまで跳ね上がった後、28.48ドルで取引を終えた。上場初日のアップ幅は36%となった。

Dropboxのパフォーマンスは市場がクラウドストレージサービスの将来に強い期待を寄せていることを間違いなく示している。同社は上場売り出し価格の範囲を16ドルから18ドルに設定したが、その後18ドルから20ドルに上方修正していた。

またDropbox の終値は、前回の資金調達ラウンドの際の評価額、100億ドルを大きく超えたことを意味する。 希釈後のDropboxの時価総額は120億ドルとなった。

Dropboxの3017年の売上は11億ドルで、. 2016年の8億4500万ドル、2015年の6億400万ドルから順調な伸びを見せている。

2016年以降、キャッシュフローは黒字であるものの、損益では1億1200万ドル近くの赤字を出している。しかし赤字幅は2016年の2億1000万ドル、2015年の3億2600万ドルと比較すると大きく圧縮されている。

有料ユーザー1件当たりの売上は111.91ドルだ。

フリーミアムモデルを採用しているDropboxが一般ユーザー向け企業なのかエンタープライズ向け企業なのかについてはこれまでも議論があった。同社の登録ユーザーは5億人いるものの、有料ユーザーは1100万に留まっている。

Dropboxは創立1年後の2008年にTechCrunch 50カンファレンスに登壇したが、ステージでピッチを行ったCEOのドルー・ハウストンはデモの途中、WiFiの不具合で立ち往生した苦しい経験を語っている。この記事でそのときのビデオが見られる

上場時点でSequoia Capitalが発行済全株式の23.2%を所有し、最大の投資家となっている。SequoiaのサイトにはDropboxが2007年にシード資金を調達するために作成したスライドが掲載されている〔Original seed pitch from 2007というキャプションが付されている〕。2位の投資家はAccelで5%を所有している。

ドルー・ハウストンは25.3%を所有している。

Greylock Partnersも若干の株を保有しており、ジェネラル・パートナーのJohn Lillyは「Dropboxに投資したのはドルー・ハウストンとそのチームが仕事のやり方の将来に関して非常に明確なビジョンを持っていたからだ」と述べている。

しかしクラウドサービスを提供するライバルは数多く、Dropboxの市場では激しい競争が繰り広げられている。【略】

メディアではDropboxと比較されることが多いBoxに関してハウストンは「正面からのライバル関係ではない」と必要以上に重視しない姿勢を見せている。たしかに両者のサービスには類似点も多いが、ビジネスモデルではBoxはエンタープライズ寄りであり相当に異なる。Dropboxは投資家にこの点に留意するよう求めていた。初日の値動きを見ると、Dropboxの戦略は功を奏したようだ。

NasdaqのティッカーシンボルはDBXとなった。

われわれがDropboxの上場と将来像に関して討論した内容をポッドキャストとして下にエンベッドした。参加者のEric KimはGoodwater Capitalのマネージング・パートナーで、このレポートを執筆している

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DropboxのSmart Syncを使うと、クラウドにあるファイルを直接アクセスできる

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今日(米国時間1/30)DropboxはSmart Syncを発表した。Dropboxのクラウド上に保存されたファイルを、ローカルに保存することなく直接アクセスできる機能だ。

Smart Syncは従来Dropbox Infiniteと呼ばれていたもので、巨大なファイルをデスクトップに保存する必要なくアクセスする方法を提供する。このしくみは、連日やってくる大きなファイルでローカルPCのディスクが一杯になってしまうのは困るが、同僚とファイルを共有したい、という企業ユーザーの要望から生まれた。ファイルはデスクトップにあるのと同じように振舞う ― 写真はプレビューで写真として見える、等々。

「チームや会社全体で必要なファイルはすべてデスクトップで扱える」とグループ製品マネージャーのGenevieve Sheehanは言う。「ユーザーは山ほどの情報を扱っているが、全部がパソコン上にある必要はない。しかし、アクセスできなくてはいけない。このツールを使えばウェブアプリを介することなく、すぐに必要なファイルを使える。チーム作業は容易にかつ強力になりオーバーヘッドも減る」。

ファイルは写真や動画のように「ストリーミング」されるわけではない。パソコン上の同期されたファイルを開き、編集した結果がクラウドに戻され、その後ローカルのファイルは削除される。

当然インターネット接続が必要だが、デモを見る限りかなりシームレスに動いていた。大きなファイル(数百メガやギガバイト単位)では違ってくるかもしれないが、目的はローカルディスクを満杯にしないことにある。Smart Syncでは、ファイルの基本情報だけを見ることも可能で、その場合スペースはほとんど費さない。

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重要なのは、全社員が複数の環境に渡って協業できるようにすることだとSheehanは強調する。例えば、Windowsユーザーが管理しているファイルは、同期されたMac上でも全く同じように見える。Smart Syncは既存のカーネルエクステンションを利用しており、セキュリティーは万全だとSheehanは語った。

「デバイスも場初も異なる人たちとチームを組める」とSheehanは言う。「WindowsやMacの同じバージョンを使うために全員がアップグレードする必要はない。全員が同じ機能を同じように利用できる」。

Smart SyncはDropbox Businessおよびエンタープライズのユーザーに今日から早期提供される。管理者がファイルをローカルに保存する必要があると考える場合には、Smart Syncを適用しないことも可能だ。

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Dropboxの2012年の事件では社員のパスワード再利用により6000万あまりのユーザー認証情報が盗まれていた

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【抄訳】
Dropboxが今週初めに開示したところによると、同社の大量のユーザーの、2012年に取得された〔==盗まれた〕認証情報が、闇のWebを放浪している。しかしその実際の数は、最初に考えられたものよりも、はるかに大きかったかもしれない。

最初にMotherboardが報じ本誌TechCrunchの情報筋が確認したところによると、6000万あまりのアカウントの認証情報が盗まれた。今回Dropboxがパスワードの侵害を開示したことは、2012年の事件のときの同社の態度に比べると、進化している。そのとき同社は、ユーザーのメールが唯一の盗まれたデータだ、と言った。

2012年のときのブログ記事は、こんなだ:

盗まれたパスワードは、プロジェクトのドキュメントやユーザーのメールアドレスのあるDropboxの社員のアカウントにアクセスするためにも使われた。この不正なアクセスが、スパムに導いたものと思われる。これに関しお詫び申し上げるとともに、新たなコントロール要素を加えることによって確実な再発防止を図ったことを、ご報告申し上げたい。

このブログ記事によると、Dropboxは2012年に、社員のパスワードが取得されてメールアドレスのあるドキュメントへのアクセスに使われた、と開示した。しかしその窃盗行為によって複数のパスワードが取得されたことは、開示しなかった。Dropboxはユーザーのパスワードを暗号化しソルトして保存しており、そのことは技術的にも正確であり、したがってハッカーは暗号化されているファイルを取得できただけであり、その上のパスワードを解読することはできない、と思われる。しかし、最初に開示したものよりも多くの情報が盗まれていたにもかかわらず、その侵害の開示にこんなに長い時間〔ほぼ4年〕がかかったことは、奇異である。

Dropboxの筋によると、最初に2012年に開示したユーザーのメールに加えて、それらのメールに結びついている一群の暗号化されたパスワードも盗まれた。その侵害の時点ではDropboxは、当時の標準アルゴリズムである暗号化アルゴリズムSHA-1の使用をやめて、より堅牢なbcryptに代えようとしていた。盗まれたパスワードの一部はSHA-1で暗号化され、3200万はbcryptで暗号化されていた、とMotherboardは報じている。パスワードはまた、暗号化を強化するためのランダムなデータ列、いわゆるソルト(salt, 塩)で守られていた。これらのパスワードは今、ネット上に投げ捨てられているが、それらを保護している暗号がこじ開けられた形跡はない。

2012年11月のForbes誌のインタビューでDropboxのCEO Drew Houstonは、ユーザー数は1億、前年同期より倍増、と述べた。いちばん最近の発表では、登録ユーザー数は5億であるが、各月のアクティブユーザー数は公表されていない。ハックが起きたときのユーザー数もほぼ1億なら、その3/5が侵害の被害者だから、ものすごい数だ。

社員のパスワードを使ったハッカーは、それをLinkedInの侵害から再利用して、Dropboxの社内ネットワークにアクセスし、ユーザーの認証情報を盗んだ、と情報筋は言っている。だから責任の100%がDropboxにあるわけではないが、企業内のセキュリティが破られたことは事実であり、パスワード再利用の危険性と、その被害が企業環境の内部にも及びうることを示している。

Dropboxは、社員が自分の企業アカウントのパスワードを再利用しないために、すべての社員に対してパスワード管理サービス1Passwordをライセンスし、ユニークで強力なパスワードを使うよう奨励している。同社セキュリティ担当のPatrick Heimによれば、これらに加えて、すべての社内システムで二要素認証を必須にしている。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Dropboxがアップデート―iOSアプリにOCRが追加されアナログ文書が簡単に検索、利用できる

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今日(米国時間6/22)、Dropboxはビジネス・ユーザー向けアップデートをリリースした。新たに追加された多数の新機能には企業での利用を促進する狙いが含まれている。

もっとも興味ある新機能は、モバイル・アプリを利用するユーザーがドキュメントをスキャンして直接Dropboxにアップロードできるようになったことだろう。ビジネス・ユーザーが日々取り組んでいる現実の仕事は非常に多様であり、その多くはまだデジタル化されていない。Dropboxは新たな機能を開発してサービスを使いやすく拡張する努力を続けている。

Dropboxのプロダクト責任者、 Todd Jacksonは「われわれは今でもアナログ・ツールが好きだ。あちこちに接着剤つき付箋を貼るし、ホワイトボードに図を描く。また文書をプリントアウトして読んでいる。Dropboxではユーザーがアナログ情報を手軽に取り込めるようにしようと努力している。そしてDropboxで簡単に検索し、利用できるようにするのが目標だ」と述べた。

ユニークなのは、Dropboxはモバイル・アプリにOCR〔光学文字読み取り〕システムを追加した点だ。OCRはユーザーが撮影した文書をスキャンして文字に変換する。Dropboxの主張どおりならこれによってアナログ文書を内容によって検索できるようになる。

「われわれは現実の世界における仕事の複雑さを認識し、それをシンプル化しようとしている。たとえば〔OCRスキャン機能は〕他社から送られてきた文書をDropboxにアップロードして利用できるようにする」とJacksonは述べている。

新機能には多様なユースケースが考えられる。メディアやカンファレンスには日々有用な情報が現れる。Droboxが画像をスキャンして文字化できるなら、これまで死蔵されていた情報が簡単に活用できるようになる。これがDropboxが主張するようにシームレスにできるなら、従来は重たく大きいフラットベッドスキャナを利用していた作業の大半が不要となるかもしれない。フラットベッドスキャナどころかロッカーを占領していたバインダーの書類も新しいテクノロジーで置き換えられる可能性がある。

OCRを始めとする新機能は当初iOS版が利用可能となる。Android版の登場はまだのようだ。Dropboxに問い合わせたが、Android版のスケジュールについて詳しい回答はなかった。

ビジネス・ユーザー向けの新機能は多数あるが、その一つはアプリ下部に表示される大きなプラス(+)ボタンだ。Instagramアプリだと写真のシャッターボタンに当たる位置だが、Dropboxアプリでは新しいOffice文書を作成するボタンになっている。ユーザーはアプリ内からWord、PowerPoint、Excelのドキュメントを作成できる。ユーザーはスキャンして取り込んだ文書をOffice文書にインポートすることもできる。

dropbox Plus button

今日リリースされた新機能には、過去のバージョンのさまざまな文書をプレビューする機能がある。文書を開こうとするといちいち新しいバージョンにアップデートするよう促され、時間を食ってしまうものだ。新しいプレビュー機能によれば、ユーザーはたくさんの文書をアップデートすることなく、必要な文書をすばやく見つけてることができる。その文書だけをアップデートすればいいので大いに時間の節約になる。また近く、一定地域のユーザーに共有されるコメントや閲覧のみのフォルダーの」共有なども実現するという。

単なるオンライン・ストレージはコモディティ化してきた。AppleとGoogleは日々無料ストレージの容量を拡張している。こうした中でDropboxのような企業にはある種のピボットが求められることになる。

しかし適切なバランスを発見するのはなかなか困難な作業だ。強力なライバルは多数存在する。 Boxは共同作業ツールに優れており、Microsoftのクラウド化した。Dropboxが新たなエンタープライズ・ユーザ-を獲得し、つなぎ止めるのは容易ではない。【略】

Jacksonは「Dropboxには登録ユーザーが5億人おり、最大級の企業にも多数のユーザーがいる」ことを指摘した。 Dropboxによればエンタープライズ向けプランを契約しているユーザーは15万社に上るという。またJacksonによれば、Fortune
500企業の大半はDropboxをなんらかの形で利用しているとされる(無料版ユーザーも含まれる)。

大企業は新しいテクノロジーの採用に関してきわめて動きが鈍いことで知られている。Dropboxのような企業にはトップダウンととボトムアップの両方の戦略が求められる。Dropboxの新ツールはこの点で採用の広がりを期待しているのだろう。【略】

Google、Apple、Microsoftなどが参入する中で、Dropboxのファウンダー、 CEOのドルー・ハウストンが長期間維持可能な強力なオンライン・ストレージ企業を築いていけるかは今後の課題であり、大きなクエスチョンマークだ。ハウストンは今月開催されたBloombergテクノロジー・カンファレンスでDropboxはキャッフローが黒字になったことを発表した。シリコンバレーの専門家の間ではこの発言における定義をさらに詳しく調べようとする動きが広がっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Dropbox、キャッシュフローが黒字に―CEO、「上場は急がない」

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クラウド・ストレージ・サービス、Dropboxの会社評価額は100億ドルで、たいていの上場企業より巨大だ。しかしファウンダー、CEOのドルー・ハウストンにはDropboxを近く上場する考えないという。

ハウストンは上場の計画について尋ねられ「今のところ全くない」と答えた。サンフランシスコで開催されたBloombergのテクノロジー・カンファレンスでハウストンはDropboxは「目下、成長と人材獲得に集中している」と述べた。

「Dropboxは資金の調達を必要とする状況にはない。〔上場するとすれば〕われわれ自身のスケジュールで行うだろう」とハウストンは述べた。

Dropboxが前回プライベートな資金調達ラウンドを実施したのは2年前になる。投資家にはSequoia、Benchmarkを含む有力ベンチャーキャピタルが含まれていた。ハウストンは財務状況に関するネガティブな報道を否定し、銀行には運営に十分なキャッシュがあることを強調した。

ハウストンはDropboxのキャッシュフローは黒字であることを明らかにし、「投資家の資金ではなく、顧客が支払った料金によってこの重要なステップが達成できたことは、われわれ自身が会社の目的をコントロールできることを意味する」と述べた。

ハウストンはDropboxもいくつかの困難を経験してきたことを認めた。CarouselやMailboxのような新たなビジネスが失敗に終わったことについて尋ねられると、「切り捨てなければならない場合も出てくる。どちらのサービスも100万以上のユーザーを獲得していたが、Dropbox全体の利益には少しもなっていなかった」と述べた。

Fidelityが評価額を大幅に下げるなどいくつかの機関投資家はDropboxの評価額を切り下げている。ハウストンは最近目立っていた「青天井の評価額」に強い懸念を示し、「われわれは『ポスト・ユニコーン』の時代にいるのだと思う」と語った。 「ユニコーン」というのは10億ドル以上の評価額を得たスタートアップ企業のことで、Dropboxの評価額は100億ドルに達しているとはいえ、理論的にはユニコーンだ。

「経済が過熱してくると、企業はファンダメンタルを見失いやすい」と述べたのはあるいはDropboxも財政運営に問題があったことがあったのを認めたのかもしれない。ハウストンは続けて「市場が行き過ぎを修正する局面に入ったら、企業は何をおいても成長の実現に全力を上げねばならない」と述べ、さらに「経営者はコストを厳しくチェックする必要がある。経費は急速に膨れ上がるものだ」と付け加えた。

Dropboxには5億人のユーザーがいるが、同時にこの分野には強力なライバルが充満している。Google、Microsoft、Amazonはすべて同種のクラウド・サービスを提供しているし、エンタープライズ向けクラウド・ストレージのBoxはすでに上場を果たしている

ハウストンによれば Dropboxのエンタープライズ・ユーザーは 15万社もあるということだが、全体としてみれば有料ユーザーの割合は極めて低い。しかしハウストンは「それだけ著しい成長の余地があるということだ」とした。

「この分野を作ったのはDropboxだ。われわれは引き続きこの分野をリードしてく」とハウストンは述べた。

〔日本版〕Drew Houstonの苗字は「ハウストン」という表記が近い。マンハッタンのハウストン・ストリートと同じ発音。Drewはドルー、ドリュー、両方の発音があるが、アメリカ英語では「ドルー」が一般的(母校MITでの卒業式のスピーチのビデオ)。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Dropbox、2.5億から4億ドルの巨額資金調達―エンタープライズ市場でライバルを先制攻撃へ

Dropboxは100億ドルの会社評価額で2.5億ドルから4億ドルの資金調達を行ったもようだ。Wall Street JournalRe / codeの記事によれば、 その理由として考えられるのは、Dropboxは昨年ビジネス向けにプロダクトを全面的に作り直しており、今年はこれを売っていく必要があるかという点だ。情報源によれば、Dropboxは現在の過熱気味のベンチャーキャピタル市場とDropboxへの高い関心から最大限有利な資金調達を試みたのだという。

調達した資金は他のテクノロジー企業からトップクラスの人材をスカウトしたり有力スタートアップを買収するのにも役立つ。しかし現在のDropboxにとってもっとも重要なのはBox、Google Drive、Microsoft SkyDrive、Amazon WorkSpacesといった強力なライバルに大企業ユーザーをさらわれる前に先制攻撃してシェアを確保することだ。

Dropboxの急成長

Dropboxは当初個人ユーザー向けの手軽なクラウド・バックアップ・ツールとしてスタートした。「あなたのファイルをどこにでも」がそのキャッチフレーズだった。AK-47を構えた恐竜がサメにまたがり、その背中にハゲワシが止まっているイラストがマスコットだった。Dropboxはサンフランシスコの本社ロビーにわざわざそのTレックスの像を作って飾っていた。この時期のDropboxには企業向けにセキュリティやスケーラビリティーを真剣に売り込むつもりがあったようには見えない。

しかしユーザーにギガバイト単位で無料のストレージを提供する戦略が功を奏し、Dropboxは口コミでテクノロジーに強い個人ユーザーの圧倒的な支持を得るようになった。2012年12月にはユーザーが1億人を突破、その1年後には2億人となった。また明るい社風が幸いしてGoogleのPythonの父であるGoogleのGuido Van RossumFacebookのベテラン・デザイナー、Soleio Cuervo、Rasmus Anderssonなどのビッグネームのスカウトにも成功した。

しかしわれわれは1年前に企業ユーザーから 「Dropboxはにはビジネス利用に必要なアクセス管理やセキュリティ機能がない」という声を聞いていた。つまり社員の誰がどのファイルにアクセスし、ダウンロードしたのかなどを確実にモニタする機能などがまだ欠けていた。.

そこで1年前からDropboxはサービスのアーキテクチャをビジネス利用に耐えるように全面的にアップグレードするという野心的な試みに乗り出した。これはユーザーが同一アカウント内から新しいエンタープライズ向けサービスと従来の個人向けサービスの双方にアクセスできるようにすることを目的としていた。.

2013年11月に共同ファウンダー、CEOのDrew Houstonが新しいDropbox For Businessを発表した。Houstonはここで業務用ファイルとプライベートなファイルの双方に同一アカウントでアクセスできる点や強力なアクセス管理と共有管理機能をアピールした。また社員が辞めたり異動した場合にその社員がアクセスできるすべてのデバイスからファイルを一括削除できる機能も追加された。

このDropbox For Businessは今年前半には一般公開されるという。個人ユーザーには圧倒的な人気を誇るDropboxだが、何千人ものアカウントを必要とする大企業に1人年額175ドルで新サービスを売り込むのは大事業だ。大量のセールス部隊が必要になるだろうし、当然大量の資金が必要になる。

ベンチャーキャピタル市場は過熱状態

Dropboxにとって幸運なことに、PinterestUberの億単位の巨額資金調達をみてもわかるように現在の資金調達の環境はきわめて良いFacebookの株価が復調し、Twitterの大型上場が成功したことも資金市場を過熱させている。一方、Dropboxの内情に詳しい情報源によると、同社はエンタープライズ向けクラウドサービスのライバル、Boxの急成長に極めて警戒を強めており、「鉄は熱いうちに打て」とばかりにこのチャンスを生かして最大限の資金調達を試みたのだという。

Wall Street JournalのDouglas MacMillanRe / code’sの Liz GannesによればDropboxはBlackRockがリードし、既存投資家が参加したラウンドで2億5000万ドルの調達を完了したという。さらにDropboxは大手ミューチュアル・ファンドのFidelityとT.Rowe Pricemayから追加の1億ドルから1.5億ドルを引き出す可能性がある。

この一連の資金調達の結果、Dropbox の調達総額は5億700万ドルから6億57 00万ドルとなる。

金を稼ぐには金を使わねばならぬ

潤沢な資金の確保に成功した後、緊急に必要なのはセールス能力の拡充だ。

これには実績あるセールス担当幹部のスカウトが近道だ。すでに2012年にSalesforceの営業部隊を10年にわたって率いてきたKevin Eganをスカウトしている。また最近ではビジネスソフトの有力ベンダーなどサードパーティーとの提携を強めるためにビジネス開発チームを強化し、Facebookのモバイル提携の責任者、Henri Moissinac、Spotifyの提携業務担当幹部、Tom Hsiehを採用している。

また今回の資金は将軍を雇うだけでなく大量の歩兵を雇うためにも必要だった。Dropboxは2013年に200人から500人へと拡大した。今後はさらに拡大の速度を速めるだろう。

しかしエンタープライズ市場で成功するためには、前述のように、まずBoxとそのカリスマ的リーダー、Aaron Levieと戦わねばならない。Boxのビジネスユーザーはまだ20万社にとどまっているものの、Boxはセキュリティとアクセス管理の面でエンタープライズ・ユーザーから高く評価されている。それがBoxがProcter & Gamble、Nationwide Insurance, LinkedIn, MTVなどのビッグネームとの契約に成功した理由だ。Dropbox(上)とBox(下)のホームページを眺めただけでも両者がどのようなユーザーを主たるターゲットにしているか想像がつくだろう。

DropboxはまたGoogle Driveとも競争しなければならない。Googleは他のエンタープライズ向けサービスとの緊密な統合を約束できるという強みがある。またMicrosoft’s Officeを中心に業務が組み立てられている場合、SkyDriveはには優位性がある。Amazon WorkSpacesはAmazon Web Services(AWS)をバックにしている。Dropboxのような独立のサービスにとってはいずれも手強いライバルだ。

また先週起きたようなシステムダウンを防がなければはビジネスユーザーを遠ざけることになる。

DropboxのCEO、Drew Houston

DropboxはMailboxの買収を買収したが、同時にもっと小さいチームEndorseSnapjoySoldなども傘下に収めてきた。数億ドルの資金を得た以上、M&Aでも積極的な動きが予想される。Dropboxが現在のサービスの穴(たとえば複数ユーザーのリアルタイム共同作業)を企業買収で素早く埋めることができればユーザーにとっての魅力が増すだろう。

昨年われわれはDropboxが2014年に上場すると予測した。しかし上場は時間のかかるわずらわしい手続きであり、共同ファウンダーのHoustonとFerdowsiがニューヨーク証券取引所で取引開始の鐘を鳴らすときに株式市場の情勢がどうなっているかも分からない。Dropboxが現在できるだけ多額の資金を集めているのは賢明な戦略といえる。

[I画像:Ariel Zambelich/WiredJDLasica]

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Dropboxのユーザーが2億人―新しいビジネス・クライアントを発表してエンタープライズ市場に本格参入へ

今日(米国時間11/13)、DropboxのCEO、Drew Houstonはユーザー数が7月の1億7500万から2億にまで増加したことを明らかにした。またユーザー個人のプライベートなファイルと業務で使用するファイルを単一のインタフェースか利用できるDropbox For Businessという新サービスを発表した。

新プロダクトはDropboxが個人ユーザー向けの便利なツールであるだけでなく、共有範囲の制限やモニタ機能など強固なセキュリティーを提供することによって本格的なエンタープライズ・サービスであることをアピールするものだ。Dropboxにはすでに400万のビジネス・ユーザーがおり、Fortune500の大企業の97%がユーザーであるという。

今回のプレス発表はビジネス・ユーザー志向だったが、前回のイベントはデベロッパー向けのプロダクトのリリースが中心だった。この際、2012年の11月に1億人だったユーザーが1億7500万に増加したことを発表した。このイベントでローンチされたDatastore APIはアプリのデベロッパーがメタデータ(ゲームのユーザーがクリアしたステージの数など)をクラウドに保存することを可能にした。またサードパーティーのアプリがユーザーのDropboxファイルにアクセスできるようにするDrop-Ins APIも発表された。

業務とプライベートの使い分けが面倒だった

Houstonは今日のイベントでDropboxをスタートさせるきっかけとなった出来事を語った。ある日、Houstonバスの中で仕事をしようとしてUSBドライブを忘れてきたことに気づいた。そこでUSBドライブを持ち歩くのを忘れないようにしたり、バックアップのためにファイルのコピーを取ったりする作業がいかに多いかに気づいたという

続いてHoustonはファッション企業のBCBGのCIO、Nader Karimiを壇上に呼び出し、Dropboxなしにデータを管理するのがいかに難しいかを説明させた。Karimiは法的文書を確実に共有するためにDropboxを利用する方法について詳しく語った。

Houstonは続いて、個人的な文書と業務上の文書を同一のユーザーが管理する場合のわずわらしさについて述べた。当初Dropboxではそういう場合には簡単にアカウントを切り替える機能を提供すればよいと考えていた。しかしアカウントの切り替えに15秒かかるとすれば、2億人のユーザーが1回アカウントを切り替えるだけで1000年分の時間がサーバー上で消費されてしまう。

「これまではユーザーは個人ユースのDropboxと業務ユースのDropboxを使い分けていた。これは馬鹿げている。一つのクライアントでどちらも処理できるようにするべきだ。しかしそうするにはDropboxを事実上、一から作り直す必要があった。しかし考えてみれば、われわれのところには世界的にトップクラスの人材がいる。それならやらせてみようじゃないか。そして今日、まったく新しいDropboxfor Businessを発表することできて大いに興奮している。われわれはすべてを作り直した」とHoustonは述べた。

Dropbox For Business

この新しいDropbox For Businessのユーザー・クライアントは来年早々に公開予定だ。現在すでに企業の早期予約を受け付けている。料金については5ユーザーあたり年間795ドル、追加1ユーザーごとに年間125ドルという現行体系を変更するという発表はなかった。

Dropbox For Businessを利用すると、ユーザーはプライベートなファイルのタブと業務用のファイルのタブを同じウィンドウで見ることができる。ユーザーがビジネス・アカウントとプライベートで使う個人アカウントを持っている場合、この新しいクライアントを使ってそれらを統合することができる。HoustonとCTOのArashFerdowsiはブログ記事で「いってみれば職場の鍵と家の鍵を同じキーリングにつけて持ち歩けるようになったわけだ」と説明している。

新しい通知バーはプライベートと業務の両方のアラート受け取るようにも、一方だけを選んで受け取るようにも設定できる。モバイル版のビジネス版Dropboxもウェブ版と一貫性を保つようアップデートされた。デベロッパー向けにはChooserとSaver APIが新設され、サードパーティー・アプリ内から両方のカテゴリーのファイルにアクセスができるようになっている。

また今回のアップデートではCIOとIT部門がDropboxの利用を厳密に管理できる能力が追加された。新しい共有監査ログを利用すると管理者はどのファイルを誰がいつ誰と共有したかを詳細にモニタできる。セキュリティ上の必要に応じて、特定のファイルの共有範囲を制限したり禁止したりできる。また従業員が個人のプライベートなファイルに会社のコンピュータからアクセスするのを禁止することもできる。

さらにもうひとつ管理機能にアカウント移動ツールが加わった。このAccount Transferを利用すると、社員が退職したり別組織に異動した場合に簡単にアクセスを取り消すことができる。また管理者は後任の社員を選んで、前任者のすべてのファイルを託すこともできる。 Remote Wipeはデバイスが盗難にあったり社員が退職したりした場合にデバイス上のデータを確実に消去する。

現在のDropboxに欠けているのは他のサービスで提供されているような共同作業のためのツールだが、モバイルおよびビジネス・プロダクトの責任者のIlyaFushmanは「われわれはまさにその点をロードマップに載せている」として現在対応中であると述べた。

Dropboxのエンタープライズ版のライバルはMicrosoft、Google、Boxなどだが、今日はAmazonが新しいWorkSpacesというバーチャル・デスクトップで新たに参入してきた。これまでDropboxには消費者向けプロダクトというイメージが強かった。しかし今日のDropbox For Businessの発表で、セキュリティーや共有範囲の厳密なコントロールなどエンタープライズ利用に必須の機能が整備された。

エンタープライズ・クラウド市場における主導権争いはますます興味深くなったといえるだろう。

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