マイクロソフトがデベロッパーに宛てた恐ろしく難解なメッセージ「RGV2cw」とは

まだMicrosoft(マイクロソフト)のリーダーだった頃、Steve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏は「デベロッパー! デベロッパー! デベロッパー!」と叫び続けてテック業界に物議を醸した。しかし彼が引退して自らがオーナーを務めるバスケットボールチームに割く時間が増えた今、テック巨人の現CEOは明らかにもっと・・・繊細なアプローチをとっている。

初のバーチャル開催となったBuildカンファレンスの基調講演で、Satya Nadella(サティア・ナデラ)氏は家族写真や小間物で埋められた大きな棚の前でスピーチを披露した。そしてそこに “RGV2cw” はあった。この一見意味のなさそうな文字列はCEOの顔の右側に映し出されていた。しかし、こうした背景がランダムに選ばれることはない。まちがいなく、そこにはなんらかの意味がある。

文字列は直ちにtwitterユーザーたちを解読に駆り立てた。ある人は開発者向け掲示板にその名前を見つけたと報告した。別の一人はこの文字列のハンドルをすばやく取得してBuild関係のツイートを発信した。そしてそのユーザーは、暗号を解いた最初の人物だったようだ。

MicrosoftのScott Hanselman(スコット・ヘンゼルマン)がメッセージの正体を明かした。それは文字通り、デベロッパーに向けられた暗号化メッセージだった。具体的には “devs” という単語をBase64形式でコード化したものだ。このデコーダーに通せば自分で確かめられる。

そこにはBallmer氏の叫びも汗まみれの切迫感も入っていないが、すてきな感謝のあいさつであることは間違いない。

アップデート:Hanlseman氏はわれわれ宛てのツイートで、「あれは私とプリントした@Proto_pastaとモデリング担当の@jongallantとの合作だった」と語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

今日でCEO就任満5年、サティヤ・ナデラがMicrosoftの企業文化を一変させた秘密

5年前の今日、サティヤ・ナデラがMicrosoftのCEOに就任し、以後ほとんどあらゆる面で成功を収めてきた。CEOのパフォーマンスを見るには株価の推移 を取り上げるのが一般的だ。ナデラは株価をアップさせた以上にMicrosoftを根本的に改革した。しかしこの成果となると測定は難しいものとなっている。ナデラが改革したのは企業文化というさらに微妙なものだからだ

Microsoftでのナデラの任期は、たまたたま私(Ron Miller)がTechCrunchに参加したのと同時期だ。私は2014年の4月にTechCrunchに加わった。最初期の記事の一つはMicrosoftという巨大企業における根本的改革の困難さについて書いたものだった。この頃、前任のスティーブ・バルマー、ビル・ゲイツのコンビの時代には見られなかったサービス事業へのシフトがMicrosoftに起こり始めていることに私は気付いた。

ナデラCEO就任以降、5年間の株価の推移。資料:Yahoo Finance

ナデラが就任したのは、IT分野がMicrosoft、Oracle、IBMなどの巨大ベンダーが事業分野ごとにすべてのサービスを提供する一枚岩から、分散化に向けてシフトする時期だった。ユーザーはクラウドサービスを利用して、必要に応じてもっとも適するサービスを選択するようになった。

これは、全社を一元的に管理するIT部門から個別のチーム、ユーザーに主導権が移り初めていた。このITのコンシューマライゼーションという背景を考える必要がある。ナデラはこうした変化を正しく理解していた。

もちろんMicrosoftの戦略シフトはナデラの就任以前に始まっていたのだろう。しかしMicrosoft Corporationという巨艦の方向転換にはナデラのような新しいリーダーが必要だった。大小を問わず、企業には社内政治や特有のバイアスが存在する。Microsoftにもあったことは間違いないが、ナデラはこうした障害を乗り越えて全面的な組織改革を成功させた。その過程ではレイオフなどの痛みも経験した。2017年には数千人がMicrosoftを離れることになった。長年Microsoftを指揮してきたCOOのKevin TurnerやWindows及びデバイス部門のトップTerry Myersonも辞めた。

しかしMicrosoftはなにからなにまで24時間自社製品をユーザーに強制する会社であることを止め、マルチ・プラットフォームで広い範囲のパートナーと協力するようになった。就任1年後にナデラがどれだけ真剣であったかを示す出来事があった。MicrosoftとSalesforceは長年競争関係にあったにもかかわらずナデラはそれを脇に置いて、Salesforceの大規模なユーザー・カンファレンスであるDreamforceに登壇した。両社が長年にわたって激しく法廷で戦っていたことを考えると、非常に象徴的なジェスチャーだった。これはMicrosoftの新しい日であり、ナデラはそれを実証した。

この数年私は何度も引用しているが、ナデラのビジョンは協調だった。もちろん競争すべき場面では容赦なく競争する。しかしナデラは協調することに意味がある場面を見逃さなかった。ナデラの場合、すべては顧客メリットの面から判断したからそのようなことが可能だった。ナデラは「プラットフォームのベンダーであるわれわれにとって、顧客が抱えている真の問題点を解決するために幅広くパートナーと協調することが義務だ」と述べた。シェアを他人に渡すこともライバルに遅れを取ることもなかったが、本当に重要なのは顧客をハッピーにすることだと認識していた。

ナデラ以前の時代にはプラットフォーマーとデベロッパーの間では協調の精神が乏しかった。そうすることが利益であってもリソースを共有したり共同で開発を行ったりすることはほとんどなかった。ナデラの大きな功績の一つはこうした敵対的な空気を一掃したことだろう。

この点は非常に重要だ。ナデラがDreamforceのキーノートで述べたように、クラウド化の時代ではベンダーが協調することがユーザーの利益になるからだ。ユーザーがクラウドを活用するためにはAPIが公開されていなければならない。またプラットフォームはデベロッパーの開発作業が容易なものでなければならない。ナデラのリーダーシップの下でMicrosoftはこうしたことを実現していった。

またMicrosoftはリアルタイム字幕機能や、足でも使えるようにカスタマイズ可能はXboxのアダプティブ・コントローラー などアクセシビリティ機能を重視するようになった。またアクセシビリティの強化のためにAIを利用する研究も進められた。今年のスーパーボウルCMでもMicrosoftはAIによるアクセシビリティ機能の充実を強調している。

ナデラのアグレッシブなM&A戦略も見逃せない。巨大な資金力を生かして、Microsoftは大小の企業の買収を進めた。特に目立ったのは 2016年にLinkedIn買収になんと262億ドルを投じたことだろう。また昨年、GitHubを75億ドルで買収したことも記憶に新しい。10億ドル以下の「小型」の買収も数えきれない。これらはセキュリティーやデベロッパー生産性、ゲーム、クラウド処理などでMicrosoftの既存プロダクトに欠けていたピースを埋めるものとなっている。

繰り返すが、こうした企業文化の根幹にかかわる改革をMicrosoftのような歴史ある巨大企業で実行することは非常に困難な事業だ。改革はまだ道半ばだろうが、これまでのところナデラは事前の予想を上回る成果を挙げている。株価の復調はこうした大規模な改革の成果を市場が認識し始めたことを意味する。しかし市場の反応はまた別に論じるべきだろう。ここではどんな巨大な企業だろうととリーダーシップが自己改革の要だということを指摘しておきたい。

画像:Stephen Brashear (Image has been modified)

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滑川海彦@Facebook Google+

新生Microsoftの展望―市場は引き続きサティヤ・ナデラのリーダーシップに好感

Microsoftがサティヤ・ナデラをCEOに選んだのは3年前になる。以來、Microsoftは運命の逆転を果たした。10年間にわたる不完全燃焼状態を脱し、成長株の地位を取り戻した。昨年もその勢いは続いた。

2016年にMicrosoftはクラウド・ベースのサービス提供企業への変身を続け、そのために複数の新たなプラットフォームをサポートした。LinkedInを262億ドルで買収するという大胆な賭けに出た。ハードウェアではSurfaceデバイスの拡充が続いた。こうした動きはすべてウォールストリートに歓迎された。Microsoftは Surface StudioでAppleのお株を奪った。デザイナーや各種のプロ向けデスクトップ機はこれまでAppleが独占的な強みを見せている分野だった。またHololensもVRの世界にMicrosoftが確固たる足場を築く努力として注目された。

株式市場は 2016年のMicrosoftをコアとなるサービスの運営に加えて、未来の分野にも大規模な投資をて行い巨大テクノロジー企業への道を歩んでいると見たようだ。

実際投資家のこうした考えは数字に反映されている。力強いリーダーの下で力強い成長がMicrosoftに2017年に向けての勢いをつけた。Azureクラウド・サービスは堅調だ。クラウド化の進行はAmazon AWSもテコ入れし、ウォールストリートも珍しく興奮した。Office生産性ツールはWindows以外のプラットフォームのサポートに本腰を入れるにつれてさらに快調だ。

ナデラのMicrosoftがいかに徹底的に変身したかは昨年11月にLinux Foundationに参加したことでもわかる。市場もMicrosoftがこれまでのしがららみを大胆に振り捨て、伝統と決別するつもりであることを認めた。 新戦略の採用には当然大きなリスクも伴うが、これまで企業の根幹を支える生産性ツールとして利益を産んできた会社に新しい成長の可能性を与える。

ナデラはMicrosoftの変身が必至になった時期にCEOに就任した。 モバイル・ビジネスは失敗し、全社的なりソースの再配分が避けられなくなっていた。変革は始まっていたが、ごく初期段階だった。改革は株価に対して上向きのようだった。しかし他社(Googleでさえ)と同様、賭けが結果を出すまでには時間がかかる。この間、Microsoftの売上の伸びはさほど目立つレベルではなかった。

大きな賭けには大きなリスクが伴う。2016年11月にMicrosoftは急成長中のビジネス・チャットのスタートアップ、Slackに対抗してTeamsというコラボレーション・ツールをリリースした。2016年初めにMicrosoftはSlackを80億ドル前後で買収することを検討していた。しかし結局資源を社内のSkypeとTeamsに振り向けることにした。Microsoftがエンタープライズ・コラボレーション分野に取り組むのはこれが初めてではない。2012年にはTwitterのエンタープライズ版、Yammerを12億ドルで買収している。だがMicrosoftはこの分野への参入で目立った成果を挙げていない。Slackが現在得ているような賞賛や清新なイメージを得ることに失敗している(なるほどSlackの成長はやや減速しているし、好印象はシリコンバレー所在企業だという点も影響しているだろう)。

MicrosoftはGoogleの失敗を教訓としているかもしれない。GoogleはNestやGoogle Fiberのような互いに関係が薄い垂直統合的分野に莫大なリソースを投じた。その結果、GoogleのCFO Ruth Poratはこうした新たな分野への投資にあたって「今後さらに慎重でなければならないだろう」と述べるに至った。Microsoftの新分野への賭けは、これに比べると同社のコア・ビジネスとの親近性が高い。そうであっても、エンタープライズ・チャットというような過去に失敗した分野への再参入にあたって非常に慎重な判断が求められるだろう。

そのような側面はあるが、株価は結局、成長率の問題となる。ウォールストリートでは新分野への賭けにGoogleやAppleのようになるのではないかと懸念する声があったが、Microsoftの成長をそうした声を吹き飛ばした。2016年にMicrosoftの株価は12%もアップした。過去2年では34%の上昇だ。それ以前、ほぼ10年にわたって時間が止まったような停滞状態にあり、投資家を失望させてきた大企業にしては驚異的な復活といえる。

2016年にMicrosoftは伝統的なエンタープライズ向けの巨人であるだけでなく、 コンピューティングがパソコンというデバイスの外に大きく拡張する時代に適合した未来をデザインする企業に生まれ変わった。Microsoftは自社OSが独占するハードウェアの世界に閉じこもった企業ではない。あらゆる主要プラットフォーム上で作動する多数のプロ向けサービスをサポートし、文字通りインターネット世界のバックボーンのひとつになろうとしている。

これに加えて、今やこの業界のほとんどプレイヤーが実験を始めている機械学習というトレンドがある。2016年9月のMicrosoft Igniteカンファレンスでナデラは基調講演のほとんどすべてを機械学習にあてた。ナデラは既存のデータを機械学習テクノロジーに適用し、Office 365のようなサービスを大幅に効率化するMicrosoftの計画を説明した。またMicrosoftは昨年初めに独自のバーチャル・アシスタントCortanaの利用をサードパーティーのデベロッパーに開放した。

こうした動きにはMicrosoft独自の部分もあるが、20017年にはGoogle Assistant、Amazon Alexa、Apple Siriなどのアシスタントの利用が急速に拡大し、ユーザーとの対話性に変革がもたらせることが予想させることに対するMicrosoftの回答といえるだろう。今年は既存サービスに機械学習の成果をシームレスに接続することでユーザーにとっての利便性を大きく高めることが各社にとって2017年の勝敗を決するカギとなるだろう。

Microsoftにとってこの部分は逃げ道のない主戦場であり、コアとなるサービスの改善のために避けて通れない道筋だ。昨年初めにMicrosoftはAIによる入力予測に基づくキーボード・テクノロジーのスタートアップ、SwiftKeyを買収した。 Officeのような企業業務の根幹となる大型の生産性ツールの改良には巨大な資源が必要だ。ことに自然言語処理能力を備えたツールのとシームレスな統合が強く必要とされている。

他社の戦略と比較した場合、Microsoftのやり方は多様性に富んでいる。Amazonはクラウド化に賭けている。Appleは新しいハードウェアと、たとえばApple Musickのようなオンライン・サービスの拡大で成長の勢いを引き続き維持するつもりだ。株式市場は多様性を好む。ナデラのMicrosoftが株式市場に好感される理由は多様性のあるアプローチにも大きな理由があるだろう。

〔日本版〕Graphiqの対話的グラフは2番目が「一時的に表示できない」とされた。この株価グラフはTechCrunch Japanトップ・ページのタイトル脇サムネールに画像として貼っておいた。対話的に操作するには原文参照。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

MicrosoftのCEO、サティヤ・ナデラ、Apple、Googleと比較して自社の本質を的確に指摘

レッドモンドの本社キャンパスで最近開催されたイベントでMicrosoftのCEO、サティヤ・ナデラは、Google、Apple、Microsoftを比較してそれぞれの長所を分析してみせた。

会社評価額でAppleには及ばないがGoogleよりは大きい会社のCEOの発言だけに注目される。ナデラはMicrosoftのCEOに就任して日が浅いにもかかわらず、Nokiaの買収を完了し、クラウド・コンピューティングに向けて巨艦の舵を大きく切ることに成功している。

ナデラはライバルを次のように分析した。

私はApple、Google、Microsoftがそれぞれを何をする会社なのかと考えることがある。それぞれの会社は独特の特長を持っている。簡単な言葉で要約するなら、こうだろう。私の見るところ、Appleの本質は特にはっきりしている。それはティム・クック自身が最近、明快に定義したとおり、Appleはデバイスを売る会社だ。それがAppleの本質だ。Googleはデータの処理と広告の販売を本質とする会社だ。Googleのビジネスはユーザーに不快感を与えずに広告を表示できる能力にかかっており、その点のGoogleの仕事ぶりは文句のつけようがない。

Appleのハードウェア・ビジネスでの大成功は歴史に残る売上と利益をもたらしている。しかしもちろんこの成功は、慎重に考え抜かれた先見性の高いソフトウェア・ビジネス、なかんずく、iPhoneとiPadで作動するソフトウェアのマーケット、App Storeによって支えられている。iPadのローンチが短期間であれほどの成功を収めたカギはやはりApp Storeにあった。来年早々にも市場に投入されるとみられる新たなデバイス、Apple Watchについても、App Storeは決定的な役割を果たすはずだ。

Googleがオンライン広告市場で圧倒的な存在であることは明らかだが、もちろん広告ビジネスがGoogleのすべてではない。その優れた検索機能があって初めて広告を販売できる。もしGoogleが世界の検索市場を支配できなかったとすれば、広告を売ることもできなかっただろう。

しかしこうした事情があっても、ナデラの分析が本質をついていることに違いはない。ナデラは続けてMicrosoft自身の強みについてこう述べる。

さてそこで、われわれ自身の場合についていえば、Microsoftのビジネスとは他の人々にソフトウェアなどのプロダクトを開発する力を与えるところにある。単にわれわれのプロダクトだけが問題なのではない。もちろんMicrosoftにはビジネス・モデル、収益モデルが存在する。しかし私の考えでは、デベロッパーがアプリケーションを開発できるようにするプラットフォームを提供し、また誰であれコンピューティングに関連する人々が所望の成果物を作れるようにする数々のツールを提供するところでこそ、Microsoftが真価を発揮し、本当の差別化を行えるのだと私は考えている。プラットフォームのプロバイダー、ツールのプロバイダーであることこそ、Microsoftの根本的なアイデンティティなのだ。われわれはその意味することろを深く考えねばならない。

さらに簡単に要約すれば、現在のAppleのコア・ビジネスはiPhoneであり、Googleの場合は検索、Microsoftの場合はWindowsとOfficeの販売だ。しかしAppleはiCloud Driveでクラウドに参入を図り、 Googleはクラウドでのコンピューティングと生産性ツールの提供で勢いをつけつつある。Microsoftもこれに似た戦略でAzureクラウド・プラットフォームの普及とOfficeのクラウド化を図っている。

以前の記事でも書いたように、こうした巨大プラットフォーム企業は、多くの場面でライバルの得意分野に参入しようとして戦いを繰り広げている。Apple、Google、Microsoftは3社ともすでに独自のアプリとハードウェアを開発ずみだ。問題はどの会社が過去の強みを活かしながら新分野で競争に勝つ方策を見出せるかという点にある。3社のどれにせよ新分野参入で主導権を握ったものが、この先の10年の競争を有利に進めることに」なりそうだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+