暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.7.26~8.1)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年7月26日~8月1日の情報をまとめた。

JCBAとJVCEA、暗号資産の20%申告分離課税や少額非課税制度の導入等税制改正に関する要望書まとめ

一般社団法人「日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)」は7月31日、一般社団法人「日本暗号資産取引業協会(JVCEA)」と共同で、2021年度税制改正に関する要望書を取りまとめ公開した。

毎年、JCBAは業界団体として自民党「予算・税制等に関する政策懇談会」に参加し、暗号資産の税に対する要望を行ってきた。今回は、2021年度税制改正にあたり、暗号資産交換業および暗号資産関連デリバティブ取引業の自主規制団体であるJVCEAと共同で、税制改正が求められる事項を整理してまとめた。両団体は、暗号資産市場の活性化、決済利用の促進を図り、関連産業の発展を期待し、以下の通り税制改正に関する要望を要望骨子として公開した。

  1. 暗号資産のデリバティブ取引について、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、デリバティブ取引に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する
  2. 暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることとする
  3. 暗号資産取引にかかる利益年間20万円内の少額非課税制度を導入する

暗号資産取引における所得は、現在の税制では原則として雑所得に分類される。雑所得は、給与所得など各種所得と合計した金額に課税される総合課税となる。また、累進課税のため所得額に応じて税率が上がり、最大で55%(所得税45%+住民税10%)という高い税額になる。雑所得は、損をしても、給与所得や不動産所得のようなものと損益通算することもできなければ、翌年に繰り越すこともできない。

両団体は、2020年5月より暗号資産が金商法の枠内での規制を受けたことから、株やFXなど他の金融商品先物取引等同様に20%の分離課税とするなど、税制の公平性・中立性が担保されるよう要望をまとめた。

なお、今回まとめられた「2021年度税制改正に関する要望書」は、JCBA公式サイトにて公開しているので、誰でも閲覧できる。

FIX Networkによる、NEM次期バージョン「Symbol」を活用した携帯電話「SIMスワップ詐欺」防止ソリューションの詳細が明らかに

携帯電話(スマートフォン)の電話番号を搾取する「SIMスワップ」という詐欺手口をご存じだろうか?

近年、海外ではSIMスワップ詐欺が社会問題になっているという。SIMスワップは、携帯電話のSIMカードを強制的に切り替え、電話番号を乗っ取るという手法の詐欺。その手口は単純で、犯人は新品のSIMカードを用意し、電話会社に携帯電話を紛失したとウソの申告をする。電話会社に申告を信じさせた上で、新たに用意したSIMカードに、ターゲットとなる電話番号を紐付けさせて、その携帯電話を乗っ取るというものだ。

乗っ取り後は、携帯電話内に登録されているサービスをチェックし、ネットバンキングや暗号資産取引所口座、暗号資産ウォレットなど、金目のサービスを見つけては、パスワード再設定を試み、アカウントを乗っ取る。これらのサービスの多くは、SMS認証によるワンタイムパスワードで本人確認を行うことから、パスワードの変更が容易で、各種サービスにログインが可能になってしまうという。ログイン後は、犯人自身の口座等に資産を送金し、SIMスワップ詐欺の完了となる。

NEM.io財団(NEM財団)ブログによると、2018年から2019年にかけて、SIMスワップによる詐欺で米国だけでも5000万ドル(約53億円)以上の暗号資産がスマホの暗号資産ウォレットから盗まれたと推定されている。

NEM Symbol

NEM財団ブログおよびSymbol公式サイトは7月31日、NEM財団と提携するイスラエル・リトアニアの通信関連スタートアップFIX Networkによる、NEM次期バージョン「Symbol」を活用した携帯電話の「SIMスワップ詐欺」防止ソリューションの詳細を明らかにした

FIX Networkは、携帯電話のSIMカード上に秘密鍵とトランザクションを保護できるソリューションを提供するために設立された企業。NEM財団は、2019年11月に発表した「NEM Foundation Update: November 2019」のパートナーハイライトにて同社を紹介している。

NEM Symbol

同社の技術は、ブロックチェーンベースのセキュリティプロトコルを実装した上で、既存の携帯電話インフラを活用し、SIMを介した携帯電話加入者のための新しいプライバシー、セキュリティ、管理、安全性のソリューションを提供する。そのアーキテクチャーにより、携帯電話事業者は加入者のSIMカード上に秘密鍵を保管することで、デジタルID管理、暗号試算ウォレット、個人データファイアウォールなどのサービスを加入者に提供できるようになるという。NEM財団は、2020年3月11日にFIX Networkとパートナーシップを締結したことも報告している。

FIX Networkが提供する最初の製品「FIX ID」は、携帯電話加入者の最も貴重なデジタル識別子である電話番号を保護し、SIMスワップなどの不正行為を防止する。同サービスは、エンドユーザーアプリによって管理され、加入者が所有するグローバルな電話番号を通じて参加者を識別し、ユニークなデジタルIDとして機能する。電話会社は、FIX Networkを介して、暗号資産ウォレット、ネットバンキング、ID管理などのサービスを提供できる。

FIX IDソリューションを管理するセキュリティポリシーの初期実装は、ブロックチェーンベースではないが、今後FIX NetworkのソリューションはNEMの次期バージョンであるSymbolと統合され、ブロックチェーンベースになる予定だという。

NEMの次世代バージョンSymbolのローンチは、4月に発表されたロードマップによると、2020年11月中旬から下旬の予定だ。

NEM Symbol

日本でも次世代Webブラウザー「Brave」で暗号資産BATの受け取り・利用が可能に!

暗号資産取引所「bitFlyer」を運営するbitFlyerは7月30日、Brave Software International SEZCと共同開発する、オープンソースの次世代高速ブラウザー「Brave」(ブレイブ)内で使用できる暗号資産ウォレットについて、その詳細を発表した。Brave Software International SEZCは、Braveブラウザーを開発・提供するBrave Softwareの子会社だ。

日本でも次世代Webブラウザー「Brave」で暗号資産BATの受け取り・利用が可能に!

両社は7月9日に業務提携について合意し、Braveブラウザーの暗号資産ウォレット領域におけるパートナーシップ契約を結び、暗号資産ウォレットを共同開発することを発表した。今回の発表でbitFlyerは、サービス提供開始は2020年11月頃を予定していることを明らかにした。

Braveブラウザーは、広告ブロック機能を標準装備し軽快な動作や匿名性を実現するとともに、暗号資産イーサリアム上で発行されたERC-20準拠トークンBAT(Basic Attention Token)を用いたBrave Rewardsの仕組みを搭載。ブラウザー利用者はBraveが許可した広告を見ることで報酬としてBATが得られる。ただし2020年8月現在、日本では、改正資金決済法を遵守するためにBATではなくBATと対価のBATポイント(BAP)が使用されている。

これに対して、bitFlyerが開発する暗号資産ウォレットのサービス提供開始以降は、bitFlyerに口座を持つユーザーはBraveブラウザー上でbitFlyerアカウントとの連携が可能になる。金融庁が認定する暗号資産交換業者のbitFlyerのアカウントを連携することで、BAPではなく暗号資産BATを報酬として受け取れるようになるわけだ。

受け取ったBATは、Braveブラウザー上でコンテンツ(サイト)制作者にチップ(投げ銭)としての送金も行える。付与されたBATは、bitFlyerで売却し日本円に換金することも可能だ。これで、海外でBreveブラウザーを使用しているユーザーと、いよいよ同じ環境になる。

Brave Software Asiaがオンラインイベントを開催

Brave Softwareの日本法人Brave Software Asiaは、オフィスオープンを記念して、7月30日にオンラインイベント「Brave Software Asia Office Opening Party」を開催した。イベントは、Brave Software Asia代表取締役の嶋瀬宏氏(写真左)が司会進行となり、改めてBraveブラウザーについての紹介が行われ、Braveの日本展開について語られた。イベントではbitFlyer代表取締役の三根公博氏(写真右)も登壇し、その場でBraveブラウザーの暗号資産ウォレットサービスについて詳細が報告され、今回の発表へとつながった。

Brave Software Asia代表取締役の嶋瀬宏氏(写真左)とbitFlyer代表取締役の三根公博氏(写真右)

Braveは、何を問題としているのか

オンラインイベントは、JavaScriptの生みの親であり、Mozilla(Firefox)の共同創設者でもあるBrave SoftwareのCEO、Brendan Eich(ブレンダン・アイク)氏のビデオメッセージによる挨拶からスタートした。

Braveが目指す世界は、インターネットの再構築。現在のインターネットが抱えている問題を解決するために、Braveを設立したという。

インターネットの大きな問題点としては、まずコンテンツの質を指摘する。現在の表示回数が増えるほど広告収益がアップする仕組みは、コンテンツのクオリティーよりもページビュー数(PV)に重きを置くものが増え、結果、フェイクニュースや人の目を引くゴシップニュースなど、質の低いコンテンツが氾濫する状況を作り出してしまったという。PVを稼ぐためには何でもする昨今の迷惑系動画配信などもその例の代表ではないだろうか。

また、ユーザーを特定することで広告単価がアップする現在のネット広告は、広告トラッカーといったプライバシーを侵害する仕組みを作り出してしまった。トラッキングや非効率な広告システムは、ユーザーが意図しない通信を不用意に増やし、無駄な通信費用を発生させる結果にもつながっている。その費用は無視にできないほど増加していることもBraveは指摘する。

プライバシー保護と、暗号資産BATが得られるBrave Rewards

Braveはこれらの問題を解決するべく、消費者を中心としたインターネットの再構築に立ち上がったのだという。

その答えが、Braveブラウザーが作り出しているエコシステムなのだ。Brave Softwareは、高速でプライバシー保護機能を備えるWebブラウザーに、ブロックチェーンのデジタル広告プラットフォーム機能を統合する。基本は広告の表示やトラッカーをブロックし、軽快な動作や匿名性を実現する。その上で、Braveが許可した広告を見ることで報酬として暗号資産BATが得られるBrave Rewardsという仕組みを備えた。

ブラウザー利用者は、広告を見なくてもいいし、自分の意思で見て報酬を得てもいい。Braveブラウザーは、1時間に何回広告を表示させるかといった、その頻度もコントロールできる。これらは、オープンソースソフトウェアとして開発されているブラウザーを基礎としている点も特徴的だろう。

コンテンツクリエイターにチップとして寄付できる

また、報酬として得たBATを自分の気に入ったコンテンツクリエイターにチップとして寄付できるのも大きな特徴だ。この仕組みは、これまで広告収入がメインだったクリエイターが、チップを得るためによりよいコンテンツを作ることに専念できる仕組みとなる。

エコシステムに暗号資産を活用することで、マイクロペイメントの仕組みを導入できるようにもなる。たとえば、漫画を描くクリエイターは、漫画の一コマを1円以下の価格で切り売りするといったことも暗号資産では可能になるということだ。

広告を見て得られる報酬が暗号資産であるという仕組みは、従来のスマホコンテンツのような課金をすることもなくなるため、消費者、クリエイター双方にメリットがある。BATは暗号資産取引所に上場されている暗号資産であることから、もちろん課金システムにも対応することはできる。

Brave Softwareは、これら報酬などの仕組みで新しいビジネスモデルを構築しようとしているのだ。ユーザー、パブリッシャー、広告主のためになる新たなWeb環境を作り直すことで、消費者を中心としたインターネットの再構築を目指している。

Brave Software Asiaがオンラインイベントを開催

これらBraveブラウザーの輪の広がりは、インターネット上のエコシステムを本気で変えてしまうだけの潜在的な可能性があるのではないだろうか(筆者の個人的な感想だが)。

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ブレンダン・アイク氏の画期的なブラウザーBraveの1.0版が登場

2014年に追放されるまでMozillaのCEOだったBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏が共同創設したBrave(ブレイブ)から、米国時間11月13日、バージョン1.0のブラウザーがWindows、macOS、Linux、Android、iOS用に公開された。ユーザーの選択権が奪われたブラウザー市場で、Braveは、強力なデフォルト設定でユーザーのプライバシーを守る確かな選択肢というポジションを決めている。同時にこれは、コンテンツの作者に報酬を支払える、暗号通貨中心のプライベートな広告や決済のためのプラットフォームでもある。

先月、同社が発表したように、現在は800万のアクティブユーザーがある。そのBrave  Rewards(ブレイブ・リワーズ)プログラムは、ユーザーとパブリッシャーとのオプトイン契約が必要だが、現在は30万のパブリッシャーが参加している。そのほとんどは、YouTubeやTwitterで少数のフォロワーを持つユーザーだが、ウィキペディア、ワシントンポスト、ガーディアン、スレート、LAタイムズのような大手パブリッシャーもこのエコシステムに含まれている。このシステムを使うと、すべてのパブリッシャーが望むわけではないが、ブラウザーは、ユーザーのブラウジングの習慣に応じて、プライベート広告のタブの中に、少数の広告を通知として表示する。するとユーザーは、広告主が支払った広告費の70%を受け取ることができる。ブレイブの取り分は30%だ。

ユーザーは、この広告を表示すると、ブレイブの暗号通貨であるBAT(ベーシック・アテンション・トークン)が獲得できる。それは自分で貯めてもいいし、パブリッシャーに寄付してもいい。当初、ブレイブはビットコインでこれを開始したのだが、アイク氏が言うように、途端に価格が高騰してしまった(しかも価格が上昇したため、ユーザーはビットコインを寄付せず、自分で貯め込んでしまった)。

またブレイブ内蔵の広告ブロッカーは、その広範囲に有効なトラッキング防止機能と並び、おそらく業界一の効力を誇る。「みんながトラッキングされているという感覚に悩まされ、悪質な広告を迷惑に感じています」とアイク氏は私に話した。「しかし、広告の美観には問題がないと私は思っています。問題は、さまざまなトラッキングとトラッキングのコストです。ページを読み込む時間が増え、トラッキング用のスクリプトを読み込むために無線を使い、そのスクリプトは広告を読み込むための別のスクリプトを読み込むためのスクリプトを読み込む。それでバッテリーも浪費されます」。ブレイブは、これらすべてをアンチトラッキング技術でひとまとめにする方法と、業界標準のブロックリストを超える広告のブロック方法を編み出し、さらに機器学習を使ってさらなるブロックのためのルールを特定したとアイク氏は主張している。

ウェブ上で完全に匿名でいたいユーザーのために、ブレイブにも他のブラウザーと同じようにプライベートブラウジング機能がある。しかし、Torネットワークでプライベートなセッションが開けるというオマケが付いている。これなら、ほとんどのすべての企業はユーザーを特定できなくなる。

基本的にブレイブは、単に高速で拡張可能なChromiumベースのブラウザーだ。それもユーザーへのウリになると同社は信じている。「ユーザーの獲得において(中略)最も多くのユーザーに訴求するのが、第一にスピードだと思います。しかし、スピードだけに任せておくことはできません。きれいな結び目であらゆるメリットをつなげてやる必要があります。私たちには、それがあります」と彼は言う。ブレイブにとって、スピードと広告とトラッキングからの保護は明らかに連携している。その他すべてのメリットも、そこから発している。

バージョン1.0の次を見据えて、ブレイブは、さらなる同期の改善を計画している。たとえば、タブと履歴の同期だ。また、ブレイブ・リワーズをもっと抵抗なく参加できる体験にすることも目指している。Android版ができる以前は、オプトイン契約率は40%前後だったとアイク氏は私に教えてくれた。彼らはそれを取り戻したいと考えている。

ブレイブを試してみたい方は、こちらからダウンロードしてほしい。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

本人を特定できない安全なネットアクセスを提供するTorに記録的な額の寄付が集まる

【抄訳】
インターネットに安全にアクセスできる方法を提供しているオープンソースの自主事業Torが、これまでの長期にわたる政府補助金への依存から脱却するために、資金源の多様化努力を続けている。

Torは“The Onion Router”(玉ねぎルーター)の頭字語で、剥いても剥いても芯(発信者本人)に辿りつけないことを意味している。そのサービスを提供している団体Tor Foundationは今週(米国時間1/6-12)、2018年に個人からの寄付が46万ドルという記録的な額に達したことを発表した。また最近の財務報告によると、同団体は、2017年には非政府系寄付者の増加により、これまた記録的な、総額413万ドルの資金を調達した。

大きく増加した個人からの寄付は2017年には40万ドルだった。その大きな部分を占めるのがTorの支持者であるMozillaで、昨年後半にはTorのためのマッチングファンドの寄付を今後も続ける、と約束した。また、そのほかの支援者個人からのマッチングファンドへの寄付は、最高額が2万ドルだった。

同団体によると、全体として2018年には115か国から寄付が集まり、アメリカ以外におけるTorの重要性を物語っている。

【中略】〔資金源詳細〕

TorはNSAの内部告発者Edward Snowdenが使ったことでよく知られているが、世界のいろんな国でインターネットの弾圧が厳しくなっているから、Torは自由なインターネットを護り安全に利用するためのますます重要なツールになりつつある。

そのためTorは近年、その‘利用しやすさ’を増す努力を続けている。

昨年9月には初めての同団体のAndroid用公式モバイルブラウザーをローンチし、同じ月に前からあるデスクトップブラウザーTorBrowserの8.0をリリースした。後者はFirefoxの2017年のQuantumリリースをベースとし、またMozillaとの協働を深めてFirefox本体にTorを搭載しようとしている。Torのデスクトップブラウザーへの統合は、Mozillaの前CEO Brendan Eichが作ったブラウザーBraveがすでに実現している

同団体にはそのほかのプロジェクトもいろいろあり、ユーザー総数は、公表データによると200万を超えている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa