【スタートアップバトルへの道】「礎築き、世界に飛び立てる事業にしたい」2018 Winner / ムスカ #2

通算9回目となる、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。今年は1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催が予定されている。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

いよいよ最終回となった今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得した、ムスカ代表取締役CEOの流郷綾乃氏だ。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、登壇後の変化や今後の展望などについて話を聞く。
(応募までのいきさつや登壇時、受賞時の感想などについて聞いた、インタビュー前半はこちら〓リンク〓から)

COO入社はバトル初日のメッセがきっかけ

ムスカ設立時には広報責任者として参画し、その後暫定CEO(当時)となっていた流郷氏。「代表取締役になって初めての大きなイベントがTC Tokyoだった。今後につながる大事なイベントということで、前日は寝られなかったぐらい。創業者ではないので逆にプレッシャーを感じていた」と昨年のバトルを振り返る。

そしてバトル登壇により、その“今後へのつながり”がさっそく生まれることが起こった。イベント初日に、現・取締役COOの安藤正英氏がFacebook経由でコンタクトしてきたのだ。

ムスカ代表取締役CEOの流郷綾乃氏(右)と取締役COOの安藤正英氏(左)

安藤氏は三井物産、アナダルコ・ペトロリアム、文科省主導の官民協働プロジェクトを経て、農業SaaS事業で2018年8月に創業したばかり。TC Tokyo 2018に安藤氏は、翌年の出場を目指して視察に訪れていたという。

初日の流郷氏によるバトル登壇を見た安藤氏は「ここはこういう課題があると思うが、こうすればいい」「こういうことに関して、お手伝いができる」と支援可能な領域を伝えるメッセージを送っていた。2日目の決勝でムスカが優勝した後、「他社からも連絡がいっぱい来るだろう」と考えた安藤氏は、もう連絡が来ることもないかなと思いながら「よかったら連絡を」とコメントを残していたそうだ。

実際、バトル優勝で「知らない人から、すごく連絡が来た」と流郷氏は述べている。「プレゼンへの感想や、ジョインしたい、など、どう返事すればよいものか考えるものもある中で、彼は具体的にやれることを書いてくれていた。そこでイベントの1週間後に会うことにした」(流郷氏)

安藤氏が指摘した課題と解決方法とは、ちょうど「ムスカの社内で『こういう課題がある』『これを解決する人材がほしいね』と言っていた部分だった」と流郷氏はいう。そこで安藤氏には「手伝いだけでも」ということで、すぐに週2〜3日で参加してもらうことになった。ところが、その1週間後には「週7日入って、社外の提携酒匂穂先や出資候補先に対してムスカの事業について説明していた」と安藤氏が言うほど、ガッツリ参画していたそうだ。

安藤氏は「今後フェーズがどんどん変わって成長していく事業環境において『暫定CEO』を名乗る覚悟ができていて、『適時・適材・適所ができる会社だ』と直感した」と述べている。「共感できるミッション、面白い事業に、自分が果たせる役割がある。意気に感じてできる経営体制だと思った」(安藤氏)

また流郷氏は、現・取締役CFOの小高功嗣氏についても「バトルの審査員だったマネックスの松本会長(マネックスグループ取締役会長兼代表執行役社長CEOの松本大氏)に、後日、ファイナンスやリーガルに関する相談をしていたところ、紹介された」と打ち明ける。

「TC Tokyoをきっかけに仲間ができたことはすごく大きい。2人とも、今ではなくてはならない存在。優秀な人材というのはもちろんだが、“ハエの会社”に入ってくれるような奇特な、それぞれにムスカの事業に思いを持った人たちと出会えてよかった」(流郷氏)

これからもバトンつないでいく

スタートアップバトルでの優勝後、問い合わせや取材が増え、今でも多くの連絡を受けるというムスカ。とはいえ「面白いと思ってくれるのはありがたいけれど、着実にできることを進めなければ」と流郷氏らは考えている。

「ムスカの事業にはベータ版はない。サプライチェーンやインフラが必要で、いつかやりたいことではなく今できることをやって、事業をつくらなければならない。そのために今年4月に体制を移行した。バトル優勝でメッセージは強く伝わった。期待値が上がっている間に事業をつくっていき、期待値を下回らないように追いつかなければならない」(流郷氏)

受賞による注目を受け、丸紅伊藤忠商事新生銀行といった大手パートナーとの提携も進むムスカ。流郷氏は「今後やりたいことはたくさんあるが、まずは我々が“昆虫産業元年”と銘打っている今年を『振り返ってみてもそうだったな』と言えるような動きをしていきたい」と語る。

そのために、まずはエリートイエバエにより肥料と飼料を高速につくり出す「ムスカプラント」のパイロットプラント建設を着実に進める、という流郷氏。「プラント建設に必要な人材、パートナーといったピースはそろった。ただしピースはまだつながっていない。要素を結ぶことによって、流通や技術、財務などのリスクを低減して、今はバラバラに存在する産業を結ぶサプライチェーンができ、ものが流れて事業が進む状態をつくらなくてはいけない。環境負荷を抑えた本当の意味での循環型社会を実現するために、順番にピースをつなぎ合わせて、ゴミ問題や食糧問題の解消を目指して今できることを着実に進める」(流郷氏)

安藤氏も「我々の事業はテクノロジーでもあり、リアルな事業でもあるので、きちんとつくらなくてはステイクホルダーも乗ってこない。向こう1年は華々しくはないが、地道で着実な1年にしなければ」という。

流郷氏は「一部の方にはムスカの事業について理解していただき、評価もいただいている。しかしもう少し先では、より広く一般にも、ムスカがやろうとしていることを伝えていかなければいけないと考えている」と続ける。

「ムスカの事業は、地球の営みそのものを伝えられる事業だと私は思っている。我々がやっていることは、『地球のお掃除屋さん』であるイエバエの選別交配という技術と、1200世代を経たハエの種を保有していることにより、地球がやってきた循環を工業化できる、ということ。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を広く伝える上でも、すごく重要な事業になってくるだろう」(流郷氏)

6月には、経済産業省が支援するJ-Startupにも採択されたムスカ。流郷氏は「世界にも伝えていけるような礎を今、日本でしっかりとつくって、世界に飛び立てるような事業にしていきたい」と話している。

「ムスカが立ち上がる前、前身となる企業がハエを守り続け、粛々と選別交配を続けてきた。ハエ自体も命のバトンをつなぎ続けている。事業の上でも、種としてのハエもバトンをつなぎ続けて、ようやく今、時代が追いついてきた感がある。この事業に貢献したいというメンバーがたくさん集まり、事業を前に進めることで解決したい未来がある、というところに意識を向けてくれている。メンバーとともに行けるところまで、事業を増強させながら進んでいきたい」(流郷氏)

TC Tokyoは流郷氏が「代表取締役として自分が立つ意味や意義が見いだせたきっかけ」だと彼女は語る。「いろいろな人がつないできたバトンを、これからもつないでいく」(流郷氏)

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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【スタートアップバトルへの道】「緊張で震えが止まらなかった」2018 Winner / ムスカ #1

通算9回目となる、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。今年は1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催が予定されている。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は916日、本登録は9月末まで

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

連載のラストに登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得した、ムスカ代表取締役CEOの流郷綾乃氏だ。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、応募までのいきさつや登壇時、受賞時の感想などについて話を聞いた。

審査に残れるか分からないがチャレンジ

ムスカは、1200世代の交配を経て生みだされたイエバエのエリートを使って、通常よりも早い速度で有機廃棄物を分解して肥料と飼料をつくり出す、2016年12月に設立されたリアルテックのスタートアップだ。ネットサービスが中心の歴代スタートアップバトル出場者の中では異色の存在と言えるだろう。

「それまでTC Tokyoに登壇していたスタートアップには、ムスカのような会社はなかったので『応募していいのかな』と思っていた」と流郷氏は笑う。

20187月に取材を受けたので『応募するぐらいならいいんじゃないか』と思い、審査に残れるか分からないけれどもチャレンジしてみるか、と申し込んだ。まさか最優秀賞を取れるとは思わなかった」(流郷氏)

ムスカ代表取締役CEO 流郷綾乃氏

決勝登壇10分前にスライドを変更

ハエのちからで世界の食糧危機を解決しよう、というムスカの事業は「そもそも分かりにくい」と流郷氏。このためプレゼン準備では「この事業が何を解決するものかを伝え、ハエにまつわるネガティブなイメージを再定義するために、伝え方やスライドの内容、話し方を工夫した」と語っている。

初日の3分間のプレゼンでは、万全に準備をしてきた資料で臨んだ流郷氏。ところが決勝ではなんと「登壇10分前にスライドを変えた」と言う。「スライドには最初、私が普段は話さないような内容も入れていた。そこで私自身の言葉で話すことができる内容に、直前で変えることにした」(流郷氏)

その結果、最優秀賞を勝ち取ることができた流郷氏だが、直前の内容変更には大きな逡巡があった。「自分の言葉で話さないと(聴衆の)1000人に呑み込まれそうだったので、納得の行く言葉に変えた。でもスライドは自分だけではなく、メンバーが試行錯誤して作ったもの。差し替えたスライドのせいで負けたということになったら、どうしようと思っていた。串間(ムスカ創業者で現・取締役会長の串間充崇氏)も後押ししてくれたので、急遽変更することに決断した」(流郷氏)

そうして最後には「スタートアップのよくあるプレゼンの順とは違う、悔いのない言葉に変えた」流郷氏。だが、葛藤のせいもあって舞台袖では「すごく緊張して、人間ってこんなに思っていることと関係なく震えることができるんだ、と感心するぐらい、震えが止まらなかった」という。

「串間さんが舞台袖に来て、応援してくれた。大丈夫、というその一言とともに励ましてくれて、一緒に屈伸もしてくれた(笑)。それにイベントスタッフでワイヤレスのピンマイクを付けてくれる女性が緊張を解くように話しかけてくれて、とても助けられた。舞台袖は暗くて、頼るところがない気持ちの中で、最後には抱きついたほど、ありがたかった」(流郷氏)

優勝できるとは思っていなかった

審査結果が発表されていく中で、先にスポンサー賞のPR TIMES賞入賞が発表されたムスカ。設立時に広報責任者として参画し、その後暫定CEO(当時)となっていた流郷氏にとっては、「伝えることのプロとしての役割は全うできた」と、それでもう十分に満足だったようだ。

最後に最優秀賞が発表されたときには「TechCrunchで、アグリテックやバイオテックが優勝できるとは思っていなかったので、月並みな言葉だけれどすごく驚いた」と流郷氏は振り返る。同時に「自分の言葉で伝えてよかった」とホッとしたそうだ。

 

インタビュー後半では、登壇後の変化や今後の展望などについて聞く。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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【スタートアップバトルへの道】「地方のスタートアップが知られるいい機会」2018 Finalist / KURASERU #2

通算9回目となる、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。今年は1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催が予定されている。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は916日、本登録は9月末まで

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、KURASERU代表取締役CEOの川原大樹氏。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、出場後の社内外の変化や今後の展望などについて話を聞く。
(出場までの経緯や登壇時の感想などについて聞いたインタビュー前半はこちら〓リンク〓から)

エンジニア、投資家の知名度が一気に上がる

医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーのために、病院から退院する要介護者が入所する介護施設のマッチングサービスを提供する、KURASERU(クラセル)。スタートアップバトルでは、ファイナルラウンドに進出し、優勝は惜しくも逃したが富士通賞を獲得した。

バトル出場と同時にKURASERUでは会場にブース出展も行い、イベント中ずっとスタッフが在席していたのだが、このとき「日常の業務とは違う体験ができた」と川原氏は述べている。「今までは自分が営業してきていたこともあり、スタッフが事業の説明をする機会はなかなかなかった。バトルを見て訪れた方に、その場でスタッフが事業内容を説明したことは、経験としてよかったのではないか」(川原氏)

神戸市発のスタートアップで、市が支援するアクセラレーションプログラムにも参加していたKURASERUには、神戸市からも応援があり、「ライブ配信で、決勝進出を見ていた市の担当の人から連絡が来た」という。

「東京発のスタートアップがやはり多いと思うが、地方から出場するとエリア全体で沸く。出場することで地元の人が応援してくれるというのは、地方発スタートアップにとってはいいことだ」(川原氏)

出場後、社外の変化で大きかったのは「やはり採用面」だと川原氏はいう。「地方のスタートアップはあまり知られていない。スタートアップバトルに入賞したことは、エンジニアにとっては分かりやすいインパクトがあった」(川原氏)

また当時、資金調達を計画していたKURASERUにとって、バトルへの出場・入賞で「投資家に一気に知ってもらえた」と川原氏はその効果について語っている。

20193月にプレシリーズAラウンドで調達を行ったが、今まではこちらから投資家にノックして回っていた。それが『TC Tokyoで見た』と言ってきてくれるようになった。当日の会場でも投資家の紹介があり、そうした場としても効果は高かった」(川原氏)

医療・介護の情報格差をテクノロジーの力で無くす

プロダクトである介護施設マッチングサービスの「KURASERU」は、ネイティブアプリ化などの細かなアップデートを重ねつつ、神戸市を中心にサービスを展開してきた。現在の従業員数規模は10名ほど。今後、追加の資金調達により、一気に従業員を増やす方針だという。

川原氏は「誰でも暮らしたいところで“クラセル”社会を実現するのが我々のビジョン」と語る。現在、厚生労働省は高齢化が進む中、重い要介護状態になっても“住み慣れた地域で自分らしく暮らすために”と、住まいと医療、介護や予防・生活支援が一体として提供される『地域包括ケアシステム』の構築を推進している。

地域包括ケアシステムの思想は「さまざまな施設や自治体などの関係者がシームレスに連携して、適切な場所で適切なサービスが受けられることで実現される」と川原氏。今後「KURASERUではこれをプロダクトで実現する」と述べている。

「医療・介護の情報格差をテクノロジーの力で無くして、ビジョンを実現していく。そのために戦略を立てて、プロダクトの大幅なアップデートも進めようとしている。今後、神戸市以外の他都市へも展開を早めたい」(川原氏)

KURASERU代表取締役CEO 川原大樹氏

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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【スタートアップバトルへの道】「一気に全国を捉えるために出場」2018 Finalist / KURASERU #1

通算9回目となる、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。今年は1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催が予定されている。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は916日、本登録は9月末まで

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、KURASERU代表取締役CEOの川原大樹氏。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、出場までの経緯や登壇時の感想などについて話を聞く。

参考のためピッチコンテスト動画を見まくった

KURASERU(クラセル)は2017年10月、兵庫県神戸市を拠点に、介護・福祉専門職の経験を持つ川原氏が創業したスタートアップ。同社が提供するのは、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーが病院から退院する要介護者のための介護施設探しをする際のマッチングサービス「KURASERU」だ。

川原氏がTC Tokyo 2018 スタートアップバトルへの出場を決めたのは、追加の資金調達を検討していたタイミングだった。「地方のスタートアップだと、メディアに出るチャンスがなかなかなかった。一気に全国を捉えたいと考えたとき、『スタートアップと言えばTechCrunchだ』ということで、2018年7月ぐらいから応募を計画していた」(川原氏)

KURASERU代表取締役CEO 川原大樹氏

KURASERUは神戸市が主催する「KOBE Global Startup Gateway」の第5期に採択され、アクセラレーションプログラムにも参加していた。このプログラムや、2018年6月にKURASERUへ出資した500 Startups Japan(当時。現Coral Capital)の勧めもあり、ピッチイベントには参加するようにしていたという川原氏。TC Tokyoに先立ち、2018年9月には福岡で開催されたB Dash Camp 2018 Fallでもファイナルラウンドに進出、スポンサー賞を受賞しており、「TC Tokyoでも優勝を狙おう」(川原氏)と勢いがついたようだ。

「これまでのコンテストで、動画が公開されているものについては(参考にするために)映像を見まくった」(川原氏)

資料づくりでは、川原氏にとってプレゼンテーションが一番やりやすい流れとして、4つのポイントを押さえるようにしていたという。「Problem、Solution、Market(Potential)、そしてTeamを説明していくと、私にとっては最も伝わりやすい。TC Tokyoでは、この4つのポイントに事業計画とトラクションを加えて、バトルに臨んだ」(川原氏)

専門性の高い事業領域を伝えるため言葉選びを工夫

前述したとおり、TC Tokyoの時点でピッチコンテストは初めてではなかった川原氏だが、「TC Tokyoは別物」と登壇時の印象を振り返る。「しかも初日、グループAのトップバッターで『さあバトルが始まるぞ』という雰囲気の中、登壇することになったこともある」(川原氏)

聴衆はもちろん多かったのだが、川原氏は「ピッチはメチャメチャ練習したので、それほど緊張はなかった」という。一方、審査員に対しては「質疑応答で何を聞かれるか、ということで緊張していた」と話す。本番では滞りなく回答できて「やりきれた」と川原氏は述べている。

プレゼンの持ち時間は、初日の3分間に対して、ファイナルラウンドでは5分間と長くなる。この持ち時間対策については、川原氏は「優勝するつもりで、最初から5分間で練習していた。あとは3分に収めるために『こことここは省略すればいい』という感じで、さほど問題はなかった」と話している。

また、川原氏は「事業の内容が伝わりにくいので、言葉選びでは工夫した」という。「我々の事業領域は専門性が高い。退院時の調整で、医療ソーシャルワーカーが何をしているかなんて、みんな知らないこと。そこをスムーズに説明するために『退院って、ハッピーなことだと思いますよね。でもそうじゃない人もいる。在宅で介護が難しい人は介護施設をセレクトするしかない状況』と、みんなが想像がつきやすい言葉から選ぶようにした」(川原氏)

インタビューの後半では、出場後の社内外の変化や今後の展望などについて聞く。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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【スタートアップバトルへの道】「みんなが豚肉を楽しめる未来のために」2018 Finalist / Eco-Pork #2

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。TC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は916日、本登録は9月末まで

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、Eco-Pork代表取締役の神林隆氏。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、バトル出場後の社内外の変化や今後のサービス展開などについて話を聞く。
(出場を決めたいきさつ、準備の状況や登壇時の印象について聞いたインタビュー前半はこちら〓リンク〓から)

バトル出場でミッションが明確に示せた

バトル初日で無事にプレゼンを終え、翌日のファイナルラウンド進出を決めた神林氏。プレゼンの出来は「初日の方がよかった」と語っている。

「初日は持ち時間も3分と短く、プレゼンで伝えられることが少ないので、ツッコミどころは満載なので、いい質問をたくさんもらえた。ファイナルでは質問は優しかった印象で、逆にそれにキレイに答えられなかった。初日の様子は社内でも評判がよかったけれど、2日目については『まあ、伝わったんじゃない?』という感じで(笑)。何より副賞がもらえなかったのは残念だった」(神林氏)

とはいえ、TC Tokyoのスタートアップバトルに出場したことで「Eco-Porkの掲げるミッションが明確になった。対外的にそれを表明したことは社内的にも大きかった」と神林氏は語る。

第1弾サービスとして2018年9月に、モバイル養豚経営支援システム「Porker」をリリースし、養豚場のさまざまなデータ収集から状況把握、経営分析までを支援してきたEco-Pork。だが「僕たちはSaaSスタートアップで終わるのではなく、世界で一番食べられているタンパク質である豚肉から、食文化と人類の未来を守るカンパニーだ。そのため、テクノロジーで豚肉生産性を高めると共に、豚肉生産に使われている様々な資源、例えば全世界の米生産量の1.3倍・6億トンも使われている穀物の削減・代替にも取り組み、人類の未来も守っていく」と神林氏は話している。

「スタートアップは忙しいので、メンバーも目先のことに集中しがち。トップもなかなかミッションを伝える機会がない中で、『もっと上を目指すんだ』ということが伝わったのはよかった」(神林氏)

Eco-Pork代表取締役の神林隆氏

社外的にも「豚肉の生産性向上と資源効率の向上」という同社のテーマが伝わったことは大きかったようだ。「大きな問題なので、自分たちだけで解決するのではなく、共感してくれる企業とアライアンスして変えていかなくてはならない。スタートアップバトルへの出場により、投資家やパートナーの引き合いがたくさん来るようになった」と神林氏はいう。

Eco-Porkでは、20194月には伊藤忠飼料との協業を発表している。また8月にはリアルテックファンド、リバネス、田中衡機工業所を引受先とした資金調達を発表。ほかにも持続可能な農業に共感してパートナーとなる企業が5〜6社、TC Tokyo登壇後すぐに集まったという。

「僕らの夢、ビジョン、ミッションを語ったことで、共感してくれる提携企業が出てきた。それに投資家からも話が結構来ている。これまで飛び込みで投資家へアプローチしたことはなくて、TC Tokyoに出ていなかったら、調達にはもっと苦労していただろう」(神林氏)

採用面でも、メンバー数人が入社を決めてくれたとのこと。「何も知らなければ『豚をやっているベンチャー』なんて人は来ないだろう。バトルでミッションを伝えたことで、その価値を理解する人、ミッションに共感した人に来てもらえることは、非常に大きかったと感じる」(神林氏)

みんなが豚肉を楽しめる未来が早くも壊れかかっている

Eco-Porkの第1弾プロダクト、Porkerについては、細かなアップデートを進めていると神林氏。自社営業だけで市場シェアの4%までは確保したが、その後、先にも述べた伊藤忠飼料との提携が決まり、自社のみでは手が回らなかった全国への販売体制が整った。

また産業用ハカリメーカーである田中衡機工業所をはじめ、いろいろな協力会社と組むことで、SaaS製品であるPorkerだけでなくハードウェアなどとも協業しながら、新しい養豚の形を創造しようとしているEco-Pork。TC Tokyoでも神林氏が表明していたとおり、Porkerで蓄積したデータを活用して、AIで最適な養豚を目指すエコシステムづくりを目指している。養豚データを活用した自動化の部分から進めているということだ。

「養豚業というのは、180日で120Kgのボディビルダーをつくるという仕事。その中で、豚肉1Kgをつくるために3Kgの餌をあげているのだが、タンパク質の合成に最適になる餌を与えないと、アミノ酸は尿として排出されてしまうので、何を上げてもよいというわけでなく、最適化が必要」と説明する神林氏。豚肉畜産向け体重計でトップシェアの田中衡機工業所らと組み、生産性だけでなく資源効率性でも向上を図ろうとしている。

今後、今秋にもプロダクトのアップデートを予定しているというEco-Pork。Porkerの市場シェア拡大を進め、事業速度も当初の想定より上げていくと神林氏はいう。この背景には、養豚業を見舞った世界的な危機が関係している。

「豚コレラ感染が国内でも確認されたことで、需要と供給のバランスが既に崩れている中で、世界ではさらに『アフリカ豚コレラ』という別種の豚コレラ感染が広がり、中国では豚が約10%淘汰され、世界では5%の豚が死んでしまっているという状況。これで世界的に豚肉の価格が上昇しており、昨年TC Tokyoでプレゼンしたときには『2022年ごろに40%価格が上がる』としていたが、生産量が落ちてしまったために、今年中には40〜70%価格が上がると見込まれている」(神林氏)

日本は中国に次ぐ豚肉の輸入国。中国で需給バランスが崩れて輸入価格が高騰すれば、日本への影響も必至だ。「みんなが豚肉を楽しむ未来が、早くも今年壊れかかっている」と神林氏。「僕らとしては生産性を高めるエコシステムを急いで用意し、豚肉を食べていける状況にしたいと強く思っている」と語る。

「今後3年ぐらいで、新しい養豚の形をつくり、普及させたい。世界的な情勢もあるので、僕らはスタートアップとして、さらにスピードアップして事業を展開していきたいと思っている」(神林氏)

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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【スタートアップバトルへの道】「人生の一大ページのひとつになった」2018 Finalist / Eco-Pork #1

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。TC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、Eco-Pork代表取締役の神林隆氏。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、出場を決めたいきさつ、準備の状況や登壇時の印象について話を聞く。

人生で初めてのピッチに臨む

Eco-Porkは、世界のタンパク質不足という課題を“養豚×テクノロジー”の力で解決しようというスタートアップ。提供するのはクラウド型の養豚経営支援システム「Porker」だ。Eco-Porkを創業した神林氏は以前からTechCrunch Japanの読者で、TC Tokyo開催の紹介記事を読んでスタートアップバトルを知り、応募したそうだ。申し込み後、CFOから「TC Tokyoには出ておいた方がいい」と言われたので「もう申し込んだよ」と答えたという。

Eco-Pork代表取締役の神林隆氏

「2018年9月、SaaSプロダクトのPorkerを正式にリリースして世の中に受け入れられ始め、プロダクトも形になってきたところだった。Porkerの後、今後不足するタンパク質の中でも割合の多い、豚肉の生産性向上と資源効率化について訴え、ちゃんと説明したいと考えていたところで、いいタイミングだった」(神林氏)

とはいえ「TC Tokyoが人生で初めてのピッチだった」という神林氏。実は「生徒会長みたいなこともやったことがなかったので、演説もしたことがなかった」という。神林氏は「自分が伝えたいことは何か、考え抜くというそもそもの部分に丸一日使った」と語る。

「製品がどう、ということじゃなくて、平成29年11月29日、“いい肉の日”に創業したのは『タンパク質がある未来を人類に残そう』ということだった。そこからブレイクダウンして、豚肉の生産性向上と資源効率の向上のために何ができるか、ということで、そもそもの事業ドメインやミッションの部分をクリスタライズし、モヤモヤした思考を形にすることに時間をかけた。それが結果としてファイナルラウンド出場につながったんだと思う」(神林氏)

話のコアの部分を固めた神林氏は、その後2日ほどかけて構成づくりを行ったが、事前審査の面接で「資料に文字が多すぎる」と言われたそうだ。「コンサルティングファーム出身だからか、何でも文字で説明しておかないと不安で、すぐに文字に逃げてしまう。『もっとそぎ落として、魂の言葉を書いた方がいい』とアドバイスされた」(神林氏)

そこからさらに2〜3日かけてファイルを完成させ、本番前は3〜4時間ぐらいかけて練習を行ったと神林氏はいう。TC Tokyo初日のバトルファーストラウンドでは、3分の持ち時間でプレゼンテーションが行われる。対して、決勝ラウンドでは持ち時間は5分。決勝向けにロングバージョンを用意しておいて、初日用に縮めるプレゼンターも結構多いのだが、神林氏は「3分間、魂の言葉を用意して、ファイナル進出が決まったその日の夜に5分版をつくった」と話している。

「3分版では早口だったので、5分版では抑揚を付け、そもそもの思いも入れ込んだ。その部分はゆっくりと、なぜこの事業を始めるに至ったのかを、ストーリーにするようにした」(神林氏)

TC Tokyoは思いを伝えられる場

当日の出場者控え室では、ピッチコンテストへの出場経験がある人が多く、それぞれが顔見知りで挨拶などを交わしている中で神林氏は「みんな場慣れしている感じで、孤独だった」と印象を語る。「だけどそれが、逆によかったように思う。ピッチ慣れしていないので、自分に向き合ってプレゼンを組み立てられた」(神林氏)

同じ出場者として印象に残ったのは、バトルを制して最優秀賞を獲得したムスカだと神林氏は振り返る。「プレゼンにも感動したが、僕らは食糧危機を解消しようという点では志を同じくする会社同士。控え室で串間会長(ムスカ創業者で現会長の串間充崇氏)が、流郷さん(当時の暫定CEO、現在は代表取締役CEOの流郷綾乃氏。当日プレゼンを担当)を励ましているのを楽屋で聞いていて、実は僕も勇気づけられてピッチに臨めた」(神林氏)

神林氏は「TC Tokyoは思いを伝えられる場。僕がそこへ出たいと考えたのも、Eco-Porkの事業を自分だけが見ている夢でなく、みんなで見る夢として強くしたかったから。串間さんがつくった夢を流郷さんが自分の夢に置き換えて進んでいるのを見て、うらやましくもあったし、『こういう会社は強くなるだろうな』とも思った」と話している。

いざ、登壇してみての感想はどうだったのだろうか。神林氏は「はじめて1000人ぐらいの人を前に話すことになって、壇上へ上がった瞬間には『こんなにも聞いてくれる人がいるんだ』と感動した」と述べている。初日のプレゼンと質疑が終わった時には「人生で一番やり切った感じだった」という神林氏。ファイナルラウンド進出が発表されたときには「人生で初めてガッツポーズをしたんじゃないか」というぐらい、うれしかったそうだ。

「自分が見ていた夢を伝えて、みんなの夢にしたい、と思っていたことを、3分のプレゼンと質疑応答で説明し切れたことがうれしかったし、また明日も説明できるんだ、ということもうれしかった」(神林氏)

出場から審査発表までの一連の記憶について「確実に人生の一大ページのひとつになっている。今でも会場の絵が思い浮かぶ」という神林氏。これから出場を目指す起業家には「想像よりすごいよ、と伝えたい」と話している。

「舞台はキラキラしていて、スモークがたかれ、華やかなライトを浴びる。舞台袖から、光の差す方へ向かって段を上がり、会場に向いたとき『がんばらなきゃ』と思った。ちゃんと練習していなければプレゼンでコケる可能性もあるけれど、僕はあれを経験できてよかったと思う」(神林氏)

 

インタビューの後半では、バトル出場による社内外の変化や今後のサービス展開などについて聞く。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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【スタートアップバトルへの道】「今秋には新発表も予定」2018 Finalist / エアロネクスト #2

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。TC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は916日、本登録は9月末まで

スタートアップバトルの応募はこちらから

連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、スタートアップバトル出場後の社内外の変化や今後の同社の展望について話を聞く。
(バトル出場までの経緯や準備などについて聞いた、インタビュー前半はこちらから)

バトル後にドローン関連のほぼ全企業からアプローチ

TC Tokyo 2018 スタートアップバトルでは、書類選考に通過した20社の中から、ファイナルラウンド進出6社に勝ち残ったエアロネクスト。同社は、ドローンの機体軸がブレることなく飛行するための重心制御技術「4D GRAVITY®」をはじめとした技術の研究開発を行っているドローンスタートアップだ。

中国・深センで開催された国際ピッチ大会に出場するため不在だった田路氏の代わりに、TC Tokyoでは、エアロネクスト 空力研究所 上席研究員の大河内雅喜氏が登壇。その模様を田路氏をはじめとした訪中メンバーは、リアルタイムのオンライン中継で応援していた。

前編でも紹介したとおり、エアロネクストは惜しくもTC Tokyoでは優勝を逃したのだが、バトルで大河内氏とともに戦い、最優秀賞を獲得したムスカの代表取締役CEO流郷綾乃氏について、田路氏は「すばらしいプレゼンだった」と感想を述べている。流郷氏とは、ほかの場面でも交流があるという田路氏は「その後の活躍もすばらしい」と続け、「彼女とは今でも交流があるが、TC Tokyoをきっかけに勢いがついた、ひとつの節目だったと聞いている」と明かす。

そんなエアロネクストも、バトル出場後に環境が「激変した」という。「国内開催の4つのピッチイベントに集中参加したことが、狙い通りに効果を上げた」と語る。

エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏

「僕らは技術と特許ポートフォリオの会社。メーカーではないし、サービスプロバイダーでもない。最終的なエンドユーザーは事業者だが、彼らに直接僕らの技術を売るわけではない。ドローンメーカーに採用してもらい、そのメーカーがつくった機体を使うサービスプロバイダーが、点検事業者や物流事業者にサービスを導入していくという構造だ。だからドローンメーカーに技術を採用してもらう必要はあるのだが、メーカーに技術を売りに行くのではなく、最終ユーザーである事業者に、僕らの技術が欲しい、必要だと言わせたかった。事業者からメーカーへ『4D GRAVITY®を搭載したドローンを早くつくってくれ』と言わせるための戦略が、ピッチで優勝することだった」(田路氏)。

ふたを開けてみると「本当にそうなった」と田路氏。「4つのピッチが終わった後、日本でドローンに関わる会社のほぼ全社から僕らのところにコンタクトがあった。『あなたのところの技術を搭載したドローンが買いたい』『どこにいけば買えるのか』という問い合わせがたくさんあって、結果としてドローンメーカーに対して『4D GRAVITY®を搭載したドローンを早く提供して欲しい』という空気になった」という。

「ドローン産業の中で僕らの技術が注目されたこと、スタートアップの中で注目され知名度が上がったこと。その点ではピッチの成果は非常にあった」(田路氏)。

ドローン大国・中国でも評価、資金調達にも影響

エアロネクストの技術を搭載したドローンをつくる企業は現在、複数社出ており、ちょうど4D GRAVITY®の採用製品が作られているとのこと。「来年ぐらいになれば、複数のドローンメーカーから僕らの技術を積んだドローンが出荷されることが見えている」と田路氏はいう。

さらにTC Tokyoと同日開催だった国際ピッチ大会での入賞の反響も大きく、今年5月には深センに現地法人を設立した。コンシューマードローンでは同じ深センのDJIが有名だが、産業ドローンでは科比特航空科技(MicroMultiCopter Aero Technology:MMC)が最大手のひとつ。このMMCがエアロネクストの技術を評価し、6月に戦略的提携も発表された。

「こうして、中国・深センでも僕らの技術を搭載したドローンがつくられ始めている。僕らが目指す『産業ドローンの標準技術として、僕らの重心制御技術が採用される』という流れは、日本のみならず、世界で最も進んだドローン大国である中国でも評価されるところまで来た」(田路氏)。

そのほか、資金調達にもピッチコンテストへの参加、入賞が影響していると語る田路氏。現在はシリーズAラウンドのクローズに向けて調達を進めているところで「大きな調達もでき、何とか次のステージへ進めるかな、というところ」だと述べている。

「守りの特許」から「技術を流通させるための特許」へ

TC Tokyoで紹介され、注目を集めたドローンの重心制御技術4D GRAVITY®。だがエアロネクストでは、それだけではなく、さらに次の展開を睨んでいる。「僕らは無人航空機という領域で、未来へ向けて何世代も先の機体フレームを発明している」という田路氏。「今年の秋ぐらいには、新しい機体フレームの発表を控えている」とのことで、新しい機体フレームの中には人が乗ることができるものも含まれるという。

「僕らのビジネスモデルではまず、発明がある。無人航空機の機体フレームの何十年か先を予測して、発明をし、特許を出願する。特許出願と同時にプロトタイプを開発し始め、世の中にプロトタイプを発表する頃には、コア特許がほぼ成立する見込みが立っている。プロトタイプが市場から評価され、量産したいという話になる頃には、技術をライセンスするのに必要な、およそ50〜100件ぐらいの特許がポートフォリオとして構築されていて、世界各国の企業にライセンス可能な状態になっている、という構造だ」(田路氏)。

田路氏は「僕らの会社は特許という経営資源の存在を、大きく変えようとしている」と語る。「これまでの特許は、自分たちの製品が他人から侵害されたり、刺されたりしないように取得する『守りの特許』だった。製品を作り続けるためのものなので、一度に1つか2つの特許しか取らない。僕らは特許を『技術をメタ化したもの』と捉えている。技術を流通させるには、時間がかかり、エネルギーがすごく要る。それを特許という形式にメタ化して、技術の流通スピードを高めることができる。技術を流通させるために特許を使う、というのが僕ら独特のアプローチだ」(田路氏)。

「だからビジネスモデルはライセンスになる」と田路氏。「僕がなぜライセンスというビジネスモデルが好きかというと、世界シェア100%が狙えるから。自分で製品を作ると100%シェアは絶対に起こりえないが、唯一100%シェアを達成できるのがライセンスモデル。実際にシェア100%というのは難しいかもしれないが、理論上シェア100%が実現可能な仕組みなので、好んでビジネスモデルに採用している」と述べている。

「ピッチの結果もあり、何とかいいところまで来た。ここからまた新しいチャレンジが続いていくが、チーム全員で頑張っていきたい」(田路氏)。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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【スタートアップバトルへの道】「もう一段レベルアップを図って出場」2018 Finalist / エアロネクスト #1

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。TC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は9月16日、本登録は9月末まで

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、出場までの経緯や準備などについて話を聞く。

国内ピッチ4大会で優勝を狙っていた

エアロネクストは、UAV(無人航空機)やマルチコプターの機体フレームのあるべき姿を追求するドローンスタートアップ。TC Tokyo 2018登壇から約8カ月前の2018年3月に新技術「4D GRAVITY®」を発表している。4D Gravity®は、機体の軸がブレることなく飛行する重心制御技術だ。発表には大きな反響があり、エアロネクストでは2018年6月、プレシリーズAラウンドで資金調達も実施している。田路氏がスタートアップバトルへの応募を決めた背景には、こうした流れの中で「もう一段階、レベルアップを図りたい」との意図があったという。

「エアロネクストは、R&Dスタートアップだ。自分たちから売り込みに行くというよりは、ドローンに対する世間の考えや常識、空気を変えたいと思っていた。ドローンへの先入観や期待を壊しに行こうと考えていた折、ちょうど日本でいくつかのスタートアップ向けピッチコンテストがあったので、集中的に出場しようと計画した」(田路氏)。

田路氏は、2018年秋冬に行われたICC Kyoto 2018、B Dash Camp Fall 2018、TC Tokyo 2018、IVS 2018 Winterの4イベントを1つのパッケージと考え、「すべてのピッチコンテストで優勝を目指していた」と話している。実際に、TC Tokyo以外の3イベントでは同率1位も含め、優勝を獲得している。

実はTechCrunch Tokyo 2018の当日、田路氏は中国・深センにいた。この地で行われていた国際ピッチ大会「創業之星2018」に出場するためだ。「本来は9月に開催予定だったのだが、開催時期がずれ込み、TC Tokyoと重なってしまった。そこでTC Tokyoのほうは、大河内(同社空力研究所 上席研究員の大河内雅喜氏)に託して、自分は中国へ向かうことになった」(田路氏)。

創業之星では3位に入賞。知財戦略を評価され、知的財産賞も受賞した田路氏。TC Tokyoについては、リアルタイムで配信される中継を深センに来ていた他のメンバーと見ていたが、惜しくもファイナルラウンド進出で終わってしまい、「とても悔しく、残念だった」と振り返る。

直前で予期せぬプレゼンター交代

TC Tokyoに登壇したのは、エンジニアである大河内氏だったのだが、もともと自身が出場するつもりだった田路氏は、他のピッチコンテスト同様にプレゼンの準備をしていた。

エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏

プレゼンでは「みんなが信じていることに対して、最初に疑問を投げかける」ことにこだわっている、という田路氏。いつも「今飛んでいるドローンでは産業にならない」というところから、話をスタートさせるという。

「今あるドローンを、僕は『空飛ぶスマホ』『空飛ぶカメラ』と呼んでいる。みんなドローンに興味があるし、その可能性に盛り上がっているようなところがあるが、このままだと、みんなが期待しているようなドローンの市場は生まれない。それはなぜか……というところを解説していくのが、いつものプレゼンの流れだ」(田路氏)。

「漠然とみんなが感じているけれど、言葉にしていない課題を言葉で提示し、その上で、僕らの技術4D Gravity®がどう有用に働くかということを訴えていく。この流れだけは初めから決めている」と田路氏。自身が登壇する際には、この流れに沿いながら「オーディエンスの反応を見て、プレゼンテーションのトーンやワードは変えている」という。なんとイベントに先立って「練習もしていないし、原稿を書くこともない」そうだ。

「大きな枠組みはあるが、あとは(会場の)雰囲気や感じを見て、ストーリーやトークの強弱を決めている。プレゼン資料づくりも僕自身というより、チームで行っている。役者と脚本家のようなもので、その方が僕はうまくプレゼンができる」(田路氏)。

昨年秋はピッチのパフォーマンスがピークにあった、という田路氏は「TC Tokyoにも、優勝する自信があった」ともらす。プレゼンファイルは田路氏のために用意していたものを、大河内氏が使って登壇したとのこと。「結局、僕のプレゼンストーリーを彼がそのままやる形になり、ちょっとかわいそうだったかなと思う。もう少し時間が取れて、彼が独自のストーリーで、自分のファイルをつくって話せたら、また違った結果になったかもしれない」(田路氏)。

 

インタビュー後半では、スタートアップバトル出場後の社内外の変化や今後の同社の展望について聞く。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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【スタートアップバトルへの道】「みんなの頑張りで勝ち取った栄光」2018 Finalist / POL #2

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。毎年最大の目玉は、何と言っても設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は9月16日、本登録は9月末まで

スタートアップバトルの応募はこちらから

連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞く。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルのファイナリスト、POL(ポル)代表取締役CEOの加茂倫明氏だ。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、出場後の社内外の変化、その後の事業や組織のアップデートと今後の展望について聞く。
(バトル出場までの経緯、登壇時の印象について、加茂氏が語るインタビュー前半はこちらから

悔しがる社員を見て入社を決めたスタッフも

TC Tokyo 2018 スタートアップバトル決勝戦に進出し、さくらインターネット賞、バンダイナムコ賞を受賞したPOL。当日のプレゼンテーションはリアルタイムで配信されていたのだが、それを社内で見ているメンバーもいた。実は、授賞式で惜しくも優勝を逃したのを悔しがる社員たちの姿を見て 「自分も社員としてこのチームに加わりたい」と入社を決めた業務委託スタッフもいるという。

「ファイナル進出も入賞も、僕が勝ち取った栄光というより、みんなの頑張りが認められた、みんなの戦い。だからその瞬間、一致団結感やスクラムできた感じがあった」(加茂氏)。

また「出場したことによって、自分たちが描いていた構想や夢を具現化することができ、YouTubeでピッチ動画が公開されたこともあって、社内へも今まで以上に考えていることが伝えられた」と加茂氏はいう。「事業が間違っていないかどうかはお客さんが決めることだけれども、出場、入賞は自信につながる。社員が自分たちが進めている事業を誇りに思い、自信が持てるようになった」(加茂氏)。

ファイナル出場の効果については対外的にもあったそうで、「当日、出場者向けのブースでさっそく商談があり、後日の問い合わせも増えた」と加茂氏は述べる。プレゼン直後の会場では、著名なエンジェル投資家で顧問的な活動もしている人物から声をかけられ、それが縁で今でも定期的に相談をしているとのこと。採用面談の際にも、TC Tokyo出場が話題になることもあるという。「社外のファンや仲間を見つけることができ、知名度アップにもつながった」(加茂氏)。

POL代表取締役CEO 加茂倫明氏

プロダクトは正式版に、メンバーは4倍へ強化

加茂氏はバトルで、企業が研究開発における産学連携パートナーを探すためのプラットフォームとして、当時ベータ版が提供されていた「LabBase R&D」を主に紹介していた。その後、プロダクトは「LabBase X(ラボベースクロス)」としてアップデートされ、2019年3月に正式版としてローンチ。加茂氏によればサービスは「うまく立ち上がり始めている」とのことで、「数字はこれからだが一定の伸びが出てきた」と出だしは好調のようだ。

また、2017年2月から正式にサービスが提供されている理系学生の採用プラットフォーム「LabBase(ラボベース)」についても、「細々といろいろなアップデートを重ねている」という。「より理系学生の採用につながり、企業の採用工数が減るように改良しており、プロダクトとしての価値を向上させた」(加茂氏)。

組織的にも10人程度だったメンバーが半年で約4倍になり、「エンジニアも、営業やカスタマーサクセスも増えて、組織が強くなった」と加茂氏。「成長のために必要な組織強化がだいぶ進んだところ。いよいよ事業がグロース期へ入るタイミングにさしかかっている」(加茂氏)。

研究に関する課題をすべて解決したい

今後の事業展望について、加茂氏は「科学技術や社会の発展にブレーキをかけている研究領域の課題はいろいろあるが、それらを全部解決したい。日本の科学技術を強くしたいし、それが社会の価値に変わるところをもっと支援したい」として、「やるべきことは、すごくいっぱいある。しかもそれをグローバルでやると決めているので、目指す山は高く、大きな挑戦になる」と述べている。

その中で「今はキャリア支援のLabBaseと産学連携支援のLabBase Xで、やっと2歩目。先は長い」としつつ、「この2つの事業では確実に勝ちきることで、LabTech事業群の地盤固めをする」と加茂氏は言う。そして「今後3年で、今の2プロダクトに、さらに2〜3の新規事業を立ち上げていく」と宣言する。

現在の主力事業はHRTechだが、「POLは人材の会社ではない」という加茂氏。「科学と技術の発展に貢献する新しい価値や事業を創り続けたい。世界中の研究者が研究のあらゆる工程で使うプロダクトや機能、事業を提供して『POLがあったから研究が進み、ノーベル賞が取れた』『POL経由の研究ですごく意義のあるサービスや事業が生まれて、多くの人の命を救った』というところまで持っていきたい」と夢を語る。

「研究者の可能性を最大化するプラットフォームを創造する、というのが我々のビジョン。僕らが提供するプロダクト事業群によって、研究者がポテンシャルを最大に発揮できて、科学や社会の発展スピードが上がれば一番うれしい」(加茂氏)。

体制面でも「今のメンバーが力を発揮できるようにすると共に、強い人材を巻き込んでいきたい」と加茂氏は話す。「単に優秀、というだけでなく、社会を良くしたい、価値ある事業をつくろうという人を巻き込めれば」(加茂氏)。

 

TC Tokyo 2019 スタートアップバトルの詳細はこちら。2019年9月30日までエントリーを受け付けているので、我こそはというスタートアップからの応募を心よりお待ちしている。

 

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【スタートアップバトルへの道】「プレゼンは、映画を作るようにつくる」2018 Finalist / POL #1

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。毎年最大の目玉は、何と言っても設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は9月16日、本登録は9月末まで

スタートアップバトルの応募はこちらから

連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞く。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルのファイナリスト、POL(ポル)代表取締役CEOの加茂倫明氏だ。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、バトル出場までと登壇時の印象について話を聞いた。

戦略や世界観の具体化にもいい機会だった

POLは理系学生の採用プラットフォーム「LabBase(ラボベース)」、産学連携を支援する研究者マッチングプラットフォーム「LabBase X(ラボベース クロス)」を提供するスタートアップだ。東大工学部生の加茂倫明氏と元ガリバー専務取締役の吉田行宏氏が2016年9月に共同創業。2017年4月にはBEENEXTなどから5000万円を調達、バトルに出場した2018年11月にはPKSHA Technologyと個人投資家らから資金調達を実施している。

POL代表取締役CEO 加茂倫明氏

加茂氏がスタートアップバトルへの応募を決めたきっかけは、投資家からの紹介だった。実はPOLは、TC Tokyo 2018出場の前に、ICCカンファレンス KYOTO 2017で行われたスタートアップコンテストで優勝を勝ち取っている(その後ICCサミット KYOTO 2018のカタパルト・グランプリでも準優勝)。加茂氏は「ICC KYOTOのコンテスト優勝の際に反響があったので、TC Tokyoで優勝できればさらにPR効果が得られると考えた。採用や法人向け営業はもちろん、優秀な顧問の参画など外部ブレーンを巻き込むためにも、優勝を狙っていた」と語っている。

出場準備には「常に張り付きで準備していたわけではないが、1カ月〜1カ月半ぐらいかけた」という加茂氏。「共同創業者(吉田氏)と資料をつくりながら、プレゼンの練習をするかたちで、一心同体でブラッシュアップを進めた。株主にも見せながら、さらにブラッシュアップをかけていった」と話している。

資料に落とし込むことが「その後の採用や投資家へのプレゼンにも役立った」とその効能を説明。バトル後、ビデオが公開されたことも各所へのアピールになったと加茂氏は語る。

また「PR効果に加えて、戦略や世界観の具体化のためにも、いい機会だった」と加茂氏は述べている。「資料やビデオがかたちになったということに加えて、登壇のための準備プロセス自体に意義があった」(加茂氏)。

夢と足元の堅実さ、両方を示す

加茂氏は「何を伝えるべきか、内容を絞ることを意識した」と、スタートアップバトルのプレゼンテーションで工夫した点について述べている。「POLの事業は、1プロダクトではなく、研究領域の様々な課題を事業群で解決するというものなので、説明が複雑になりやすく、長くなりがち。イベント初日のファイナルで3分、翌日の決勝でも5分とプレゼン時間が短いので、話したいことを絞らないと伝わらない。本当に大事なところだけ話すように心がけた」(加茂氏)。

短く話す練習をしたことで「その後のイベント登壇や採用の面談で自社を紹介するときにも役立っている。突き詰めて端的に話せるようになった」と加茂氏は話している。

内容面では「審査員として名前が挙がっている人たちの顔ぶれからも、仮説を立てた」と加茂氏は述べている。「優勝と入賞とでは効果も全然違うので、優勝にはこだわった。残念ながら審査員賞ダブル受賞という結果になったが、どういう戦いか理解するのは大事だ。初日のグループ戦では同じ組に技術に強い企業が多かったので、僕らは夢と足元の堅実さ、両方を示すことにした」(加茂氏)。

人前で夢を語る好機、短時間だけど楽しかった

登壇時の印象について加茂氏は「会場がきれい。人もいっぱい入っていて規模が大きく、ワクワクした」と振り返る。「自分たちの応援団を増やすきっかけになる。自分たちが手がけていることが伝えられる。起業家にとっては緊張することもいい機会。スタートアップバトルは人前で夢を語る好機だ。短い時間だけど楽しかった」(加茂氏)。

それでも「優勝を逃したのは悔しかった」と加茂氏。「決勝戦での戦い方は見誤ったか」と分析する。「夢の大きさ、ロマンが伝えきれなかったのかな、と。それでも賞を2つもらって、たくさんの人にPOLの取り組みについて聞いてもらえたのはよかった」(加茂氏)。

加茂氏は、プレゼン創りの秘訣を次のように述べている。「プレゼンは、映画を作るようにつくる。聴衆の感情がどう遷移するかを読みながらつくるのが大事」(加茂氏)。

質問には「落ち着いて客観的に答えることが大事。そのためには想定問答集を考えておくこと」と加茂氏はこれからの出場者にアドバイスする。また「プレゼン時間は短く、言いたいことがすべて入れられないこともあるだろう。だから、あえて聞かれそうな部分をプレゼンに入れず、質疑応答で答えるように残しておく手もあるかも」とちょっとしたテクニックも教えてくれた。

 

インタビュー後半では、出場後の社内外の変化、その後の事業や組織のアップデートと今後の展望について聞く。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。社会人など一般向けの「超早割チケット」(2万円)、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)の計4種類。なお、超早割チケットは8月末までの販売となり、9月からは「前売りチケット」(3.2万円)の販売に切り替わる。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

 

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【スタートアップバトルへの道】「プライシングで社会的なインパクトを」2017 Winner / 空 #2

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となる催しは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は9月16日、本登録は9月末まで

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年の決勝に勝ち残ったスタートアップ計8社に取材。バトル出場までの道のりや出場してからの変化について、登壇者に話を聞く。

今回登場するのは、TC Tokyo 2017 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得した空CEOの松村大貴氏。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、出場後の社内外の変化や事業のアップデート、今後の展望などについて聞く。
(出場までの経緯や準備、登壇時に感じたことなどについて松村氏に聞いたインタビュー前半はこちらから)

採用活動への寄与は大きい

TC Tokyo 2017 スタートアップバトルで見事優勝を果たした。その後、社内外では何か変化はあったのだろうか。松村氏によれば「社内的には大きな動きではないが、社員は『一気に会社の名前が知られて、友人にもあの会社にいるんだね、と認められるようになった』と話していて、その後の資金調達もこの勢いでがんばるぞ、と士気が高まった」とのことだ。

空CEO 松村大貴氏

「起業をすると誰でも、自分たちがやっていることが本当に正しいのか、世の中に価値あるものをつくれているのか、不安と共にやっている。バトル優勝は、それまでにやってきたことが間違っていないと認められる、ひとつの機会。働く人や顧客にも『僕らの関わる事業』『私たちが使っているサービス』として、一緒にそれを感じてもらえる点が大きいところだ」(松村氏)。

空のプロダクトを利用する顧客企業はホテル業界が中心で、TechCrunch読者が少ないことから、営業面では直接の反響は少ないというが、バトル勝利後に経済紙・誌の取材が増えたことで、PRや営業はしやすくなったようだ。また、採用の面では「かなり強くなった」と松村氏はいう。

「バトルの1年後に『あのとき、会場にいました』という人が入社してきたケースもある。また記事やイベントの動画で空のことを知り、『面白いと思った』という人も多く、採用への寄与が一番強かったのではないか」(松村氏)。

PriceTechに向け、より本格的にチャレンジ

空が最初にリリースしたプロダクトは、ホテルなどに自動で最適な宿泊料金を提示するプライシングサービスの「MagicPrice」だ。そしてスタートアップバトルでは、同社の2つ目のプロダクトで2017年8月にリリースされた、ホテルの市場分析サービス「ホテル番付」が紹介された。

バトル後の約1年後、2018年12月にこれら2つのサービスは統合され、新生MagicPriceとして大幅にリニューアルされた。松村氏は「バトルのプレゼンでは『ホテルには経営指標が必要だ』と訴えたが、同時に『空の事業ドメインはプライシング』とも話していたとおり。空としては、プライシングはより長期で伸ばしたい事業領域。顧客にとっても付加価値が大きい、価格最適化を支援するサービスへ統合した」と説明している。

MagicPriceは同社の「PriceTechにより、世界中の価格を最適化する」との構想に基づき、プライシングの支援サービスとして、顧客数の成長率では1年で5倍以上に実績を伸ばしている。また会社の従業員規模も2倍以上に成長を遂げ、「空という企業のビジョン、ミッション、カルチャーに共感して集まってくれる人が増えている」(松村氏)。

今後の事業展望については「バトル当時に話していた空の未来が実現しつつある」と松村氏は語る。「プライシングはホテルに限らず、さまざまな業界での共通の経営課題だ。実際に最近ではホテル・旅館だけでなく、他業界でプライシングに悩む企業からの問い合わせが来るようになった。不動産関連やメーカー、小売など、さまざまな業種のアンテナ感度の高い企業で、新しい経営改善の手を探している。業界横断でプライシングサービスを展開できるよう、計画してやっていこうとは考えていたが、想定を超えて早く引き合いが来ている」(松村氏)。

今後、PriceTechへの本格的なチャレンジを図る空。松村氏は「プライシングでより大きな、社会的なインパクトがつくれる。最近発表した(2019年5月の)資金調達による後押しも含めて、成長を一気に加速させたい」と話している。

出るなら優勝すべき、プロセス自体もメリット

これからスタートアップバトルへの参加を目指す起業家に対しては、松村氏から「出るなら優勝すべき」と激励の言葉をもらった。「勝てるときに、勝つための練習をして、勝つためのメッセージを磨き込んで、勝つことに執着して出場した方が、意味のあることになる。バトルに優勝したからといって成功が約束されているわけではないけれども、プラスになることは多い」(松村氏)。

また松村氏は「全力で勝ちに行けば、結果が優勝でなくても、自分の会社の経営戦略を考えることとか、自分たちが世の中のために何をしたいのか定義をはっきりさせることにもつながる。出ると決めて、当日までに確固たるものにしていくという、プロセス自体もメリットになる」とも述べている。

「プレゼンのやり方については、型もフレームワークもいろいろとあるので、それほど特殊なことをしなくてもいい。よかったら僕の過去に書いたブログでもいろいろと発信しているので、参考にしてもらえればと思う」(松村氏)。

 

TC Tokyo 2019 スタートアップバトルの詳細はこちら。2019年9月30日までエントリーを受け付けているので、我こそはというスタートアップからの応募を心よりお待ちしている。

 

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【スタートアップバトルへの道】「出るからには優勝すべき」2017 Winner / 空 #1

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となる催しは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年の決勝に勝ち残ったスタートアップ計8社に取材。バトル出場までの道のりや出場してからの変化について、登壇者に話を聞く。

今回登場するのは、TC Tokyo 2017 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得した空CEOの松村大貴氏。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、出場までの経緯や準備、登壇時の感想などについて聞いた。

「勝てそうだ」と思ったから応募した

松村氏は「TC Tokyoには創業前の会社員だったころに、オーディエンスとして参加し、スタートアップの世界は面白いと感じていた」と明かす。大学在学中からシリコンバレーに旅行したり、起業家に会ったりしていて、起業を目指していた松村氏。「スタートアップの世界はクールで、僕にとってのスターは起業家たちの中にいた」という。スタートアップバトルは、そんな松村氏には“いつかは立つ舞台”として目に映っていた。

そんな松村氏がを創業したのは2015年。バトルへの応募を決意したのは2017年だ。「2017年になってサービスが伸び始め、事業への思いだけでなく実績が示せて、顧客業界でも役立ててもらっている、という段階になった。事業も好転していることから『今年出場すれば勝てそうだ』と思い、応募した」という松村氏。「出るからには優勝すべき」と出場タイミングも計算していた。

「2016年は、プロトタイプを試行錯誤しながらつくっていて、その年にはあまりピッチコンテストには出ていない。シード期の企業のためのコンテストで一緒に出場した同期のスタートアップの中には、2016年のTC Tokyoに出ていた企業も多かったが、『僕らはまだ勝てないな』と思ったので空では翌年出場した。結果、狙い通りに評価されたと思う」(松村氏)。

バトルに合わせてプロダクトリリースを計算

空CEO 松村大貴氏

「バトルに勝つために事業を進めていたわけではないけれども」と言いつつ、松村氏の周到な準備はプロダクトのリリース時期のスケジュールにも及んでいる。バトルで披露されたのは、空の2つ目のプロダクト「ホテル番付」。宿泊料金プライシングサービス「MagicPrice」に続いて公開された、ホテル向けの経営分析サービスだ。

プロダクトリリースは2017年8月。松村氏は「バトルの時点で導入件数など、数字が示せるように準備した。間に合うようにベータ版を用意して、先行登録の募集を開始し、実際に使ってもらって、フィードバックをもらえるよう、スタートアップバトルから逆算をして事業ステップをつくった」と話している。

当日のプレゼンの準備はバトルの2〜3週間前から実施。「プレゼンのだいたいの形を決めた後、練習を50回はしたと思う」と松村氏はいう。練習結果を反映しながら内容を変え、「より滑らかでより魅力が伝わるプレゼンになるように」練習と改善を繰り返した。松村氏は「TC Tokyoで優勝した後、よく『TC Tokyoのプレゼンを見た。今度ピッチコンテストに出るので相談させてほしい』と聞かれるのだけれど、『とにかく練習量をこなすのが一番』と伝えている」と語る。

プレゼンテーションのベースとなるフォーマットや話し方については、前年の2016年に参加した500 KOBE ACCELERATORのプログラムで、米西海岸でスタートアップのためのピッチコーチをしている人たちに教えてもらった型を、ほぼそのまま使っているそうだ。「解決すべき課題を示し、そこに対してソリューションや実績を提案していき、自分たちがなぜそれをやっているのか、きちんと語る。テンプレ化しているけれども、内容が一番伝わりやすいので、型に沿って発表した」(松村氏)。

プレゼンで力を入れたポイントは2つ。「成長率を示すこと」と「世界を変えるんだというメッセージを強調すること」だという。「実際に伸びているサービスだということを意図的に、印象に残るように心がけた。また、TC Tokyoではバトルに参戦するスタートアップに対して、審査員もオーディエンスもユニコーンを超えるような企業になることを期待して集まっている。小さな、ちょっとした課題を解決する中小企業になりたいわけじゃなく、この変革で世界を変えるんだ、と照れずにちゃんと言うこと、だから応援してもらいたいと示すことが大事だ」(松村氏)。

当日は「一緒に祭りをつくっている感覚」

バトル本番の当日について、松村氏は「イベントを運営するチーム、スタッフが一体となって、TC Tokyoを盛り上げようとしているんだなということが伝わってきて、『登壇者エクスペリエンス』としてはすごくよかった(笑)。舞台裏でのサポートも万全で緊張せずに舞台に立てたし、みんなで作り上げているイベントで一緒に祭りをつくっている感覚があり、楽しかった」と振り返る。

登壇の際も「練習していたので話すこと自体は勝手に口から出るようになっていたので、緊張はなかった。けれども高揚感はあり、会場の多くの人に向けて自分たちがやっていることを全力で伝えられる機会をもらったということがうれしくて、いい時間にしようと考えた」という。

また「せっかくだから対審査員だけでなく、オーディエンスに『こんな企業がいるんだよ』『こういうことをやっているんだよ』ということを伝えたい」と感じたそうだ。「話していることを聞いてくれている。それが目の当たりにできてうれしかった。ステージ上では後半になるほどしゃべりやすくなっていった」(松村氏)。

審査員からの質問についても「ちゃんといいところ、『まだ話し足りないんじゃないのか』という部分を質疑応答で聞いてくれた。質疑応答の時間も含めて、自分たちの魅力をアピールできた」という松村氏。念入りな準備が功を奏して、全体に余裕のある参戦となった様子だ。

 

インタビュー後半では、スタートアップバトル出場後の社内外の変化や事業のアップデート、今後の展望などについて松村氏に聞く。

 

【スタートアップバトルへの道】「どうせなら多くの人に訴えたい」2016 Winner / Kids Public #1

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となる催しは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年の決勝に勝ち残ったスタートアップ計8社に取材。バトル出場までの道のりや出場してからの変化について、登壇者に話を聞く。

初回に登場するのは、TC Tokyo 2016 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得したKids Public(キッズパブリック)代表の橋本直也氏。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、出場までの経緯や準備、登壇時の感想などについて聞いた。

出場のきっかけ

Kids Public代表 橋本直也氏

Kids Publicは2015年12月に小児科医の橋本氏が創業した、遠隔医療相談サービスを提供するスタートアップだ。現在は小児科に特化したオンライン医療相談の「小児科オンライン」や、産婦人科医・助産師にスマホで相談できる「産婦人科オンライン」などのサービスを提供している。

Kids Publicはデジタルガレージが主催するアクセラレータープログラム「Open Network Lab」(以下、Onlab)の第12期に参加しており、「プログラム終了後にスタートアップバトルへの出場を勧められたことが、応募のきっかけだった」と橋本氏が振り返る。

Onlabには、2015年のバトル勝者となったSmartHRが第10期に参加していた経緯もあり、「Onlabから、TC Tokyoへという流れがあった」とのこと。橋本氏も「ぜひチャレンジしたい」と応募を決めた。

また橋本氏が現役の小児科医で、エンジニアや経営者と普段接点がなかったことも、出場のひとつの理由になったという。「医師同士のネットワークはあり、医師仲間はいるが、開発やビジネス面でのネットワークはゼロから構築しなければならない。TechCrunchはそういう人たちに見られているメディアだ。出場によって事業チャンスや人とのつながりがつくれると考えたことも、応募への大きな動機となった」(橋本氏)。

資料づくりにはプロの力も借りて

橋本氏は「出場準備には時間をかけた」と話している。「全体としては2週間ぐらいのことだったが、その間、かなりの時間を資料づくりや練習に費やした。Onlabの人にも見てもらいながら、準備を進めた」(橋本氏)。

当時Kids Publicが提供していたプロダクトは、リリースから約半年の小児科オンライン。バトルの審査員やTC Tokyoの来場者のほとんどは、小児科の現場の実態を知らない人たちだ。橋本氏は「プレゼンでは、小児科医療の世界を知らない人の目線に合わせて、話の最初の方で聞き手の心をつかめるよう心がけた」と述べている。

スタートアップバトルでは、イベント初日に書類選考を経て選ばれた20社のファイナリストたちが、それぞれ3分の持ち時間でプレゼンを行い、2日目にはその中から選ばれた6社が、5分間のピッチで競い合う。

「持ち時間が長くなる決勝では、より詳しく伝えられるように準備はしていた。また、初日はちょっと早口で詰め込み気味にしゃべってしまったので、2日目はハッキリゆっくりしゃべるように心がけた」(橋本氏)。

資料については、1スライド1メッセージで、煩雑になりすぎず、かといって削りすぎず、スライドの中でどの数字が一番訴えたいかを考えて構成するなど、「当たり前と言えば当たり前のことをやった」という橋本氏。最後の仕上げには「プロの力を借りた」と明かす。「同級生にデザイナーがいて、休みの日に手伝ってもらった。ビジュアルの統一感や視覚的な分かりやすさは、それをどうすれば実現できるか分かるプロにお願いしてよかった」(橋本氏)

エンジニア採用や商談で優勝の効果を実感

「下見やリハーサルの時点で大きな会場だと感じた。バトル当日はそれに加えて『結構人が入っているんだな』と思った」というのが登壇した際の橋本氏の感想だ。聴衆が多いことで「やりがいがあった」とのことで、緊張したというよりは「どうせなら多くの人に訴えたいという思いが強くて、楽しかった」という。共に出場するスタートアップについても「周りも本気で出場しているな、と感じ、大変刺激になった」と話している。

当日会場には、会社から1人だけ橋本氏の登壇を見に来たそうだ。「当時は4人ほどの組織だったので、ほかのメンバーは淡々と仕事をしていた」とのことで、社内的にはバトル出場・入賞でそれほど大きな変化はなかったと思う、と橋本氏はいう。ただ「投資家を含む審査員や来場者に、優勝というかたちで評価されたことは、チームにとっても良かったのではないか」と振り返っている。

一方で社外・対外的には大きな変化があり、「バトルで優勝したことの効果を実感した」という。特にエンジニアについては、面談すると「TCで見ました」と言われるようになり、テック領域での知名度の向上を実感したそうだ。出場してから商談が進み、導入に至ったところもあるということで、事業面でも「メリットをすごく感じた」という橋本氏。「TC Tokyoでの優勝がステータス、評価になった」と語る。

 

インタビュー後半では、出場後の事業のアップデートやKids Publicが見据える今後の展望、そしてこれからバトル出場を目指す起業家へのメッセージを橋本氏に聞く。

 

CTO of the year 2018にはatama plus川原氏を選出

11月21日、東京・目黒にあるAWS Loft Tokyoにて、2018年に最も輝いたスタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)を決める「CTO of the year 2018」が開催された。CTO of the year 2018は例年、TechCrunch Tokyoの初日の夜に「CTO Night」として開催されてきたイベントだが、今年は場所日程を変えての開催となった。

AWS Loft Tokyoは10月1日にオープンしたばかりのAWS運営のコワーキングスペース。AWSを利用している企業であれば10:00〜18:00の間、誰でも自由に利用できる。AWSの専門スタッフが常住しており、その場でサポートが受けられるのも特徴だ。

CTO of the year 2018は歴代優勝者を含む以下のメンバーで審査され、最終的にatama plusの川原尊徳氏を選出した。

■審査委員長
藤本真樹氏(グリー 取締役上級執行役員/最高技術責任者)

■審査員
白井 英氏(Craft Egg、ジークレスト、サムザップ各社におけるCTO)
松尾康博氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクト)
吉田博英(TechCrunch Japan編集統括)

■特別審査員
竹内秀行氏(2014年CTO of the year、ユーザベース チーフテクノロジスト、UB Venturesテクノロジーパートナー)
安川健太氏(2015年CTO of the year、ソラコムCTO/Co-founder)
橋立友宏氏(2016年CTO of the year、Repro CTO)
大竹雅登氏(2017年CTO of the year、dely CTO/執行役員)

■atama plus/川原尊徳氏

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Lean AI開発により、3ヶ月でプロダクトマーケットフィット
1年で大手塾の2割に導入するまで至った話

atama plusは2017年4月創業。創業9カ月目で5億円の調達に成功している。事業内容は、AIを活用して中高生の学びを個別にカスタマイズしたタブレットアプリを提供している。このシステムは全国の学習塾や予備校に導入されているとのこと。川原氏は新卒でマイクロソフトに入社して11年勤務したあと、atama plusを共同創業したCTOだ。

学習塾や予備校は、夏期講習でどれだけ人を集められるかが非常に重要で、4月創業の同社は、その年の夏期講習が始まる7月までにアルゴリズムを完成させる必要があったとのこと。そのため、Lean UX/Lean AI開発という手法を採用したそうだ。

そのうえで、アーキテクチャーの開発には、ブラックボックスの少ない「多数の小さなアルゴリズム」を利用することに決定。規模が小さいのでアルゴリズムへの修正が容易なのが特徴だ。アルゴリズムに問題データや正誤情報、所要時間などのデータを入力することで、習熟度の推定や単元間の関連性、学習優先度などを判断して、生徒それぞれが学習すべき教材を判断する。

また「ルールベースアルゴリズムとの共存」も開発の秘訣だったという。多次元のデータを扱えるモデルベースを重視するとルールベースアルゴリズムは排除されがちだが、ルールベースアルゴリズムは変更が容易という利点がある。これら2つのアルゴリズムをいいとこどりにより、ある単元を学習するためにどの単元を次元に理解しているべきかの依存度がわかる「依存関係グラフ」が完成したという。

同社は創業4カ月目から収益化を果たし、10カ月目で2週間講習受講者のセンター試験の得点が50%アップ。そして創業1年を迎えたころには、大手塾の2割にatama plusのシステムが導入されているそうだ。

■FACTBASE/前田 翼氏

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組織の外側にHRアーキテクチャを築く

FACTBASEは仮想通貨投資家向けのサービスを展開している会社。プレゼンでは、社内外のHRアーキテクチャを構築した話が中心となった。

前田氏はFACTBASEのCTOとして「2018年12月31日までに日本一仮説検証の早い開発チームを作る」というミッションをCEOと握って、アプリ開発をスタート。とはいえ、2018年前半は技術スタックのない状態だったという。その後、副業として携わったエンジニアの尽力で5月中旬にクローズド版のリリースに漕ぎ着ける。しかし、この副業エンジニアが二人とも卒業したことで問題が発生。この2人が中心となって開発していたことで、社内にノウハウがたまっていなかったそうだ。

とはいえ、フルタイムの人材を採用するコストや人材を教育する社内リソースがなかったとのこと。そこで考えたのが、社内開発とは直接関係な分野で同じ目標を達成する仲間を集め、勉強会の開催や書籍の出版などを実施。具体的にはReact Native OSSのコミュニティーを立ち上げ、ベアプロについては累計30回を以上を実施したという(React Nativeは、Facebookが開発したJavaScriptのフレームワーク)。

この結果、14人のエンジニアとの関係が深まり、14人の技術メンターがいる状況になった。その後、インターン1名とフルコミットメントするエンジニアが1名参加して開発が急激に加速したそうだ。社内リソースと予算が限られている中、社外のエンジニアとの深い関係構築によって開発の質とスピードがアップしたとのことだった。

■GVA TECH/本田勝寛氏DSC07799

リーガルテックへ凸って見えた楽しい踊り方
GVA TECHは2017年1月に創業、本田氏はGVA TECHにはCEOを除く1人目の社員として2017年9月に参加。同社はクラウドとAIを活用した契約リスク判定サービス「AI-CONレビュー」を提供している。

本田氏は入社後まず、内製化によってプロダクト化を進めたとのこと。入社前、AI-CONレビューなどはオフショア開発、つまり外注で開発していたそうだ。しかし、数多くの人が開発に参加していたこともあり、ファイルの差分やバグも多くコントロールも難しかったことから関係を断ち切って完全内製化の道を選んだという。

内製化にあたって、セキュリティ、スピード、イノベーション、面を取りに行く選択、という4つの柱で開発を進めたそうだ。ちなみにセキュリティについては、AWS Well-Architectedフレームワークを活用。開発スピードについては、さまざまな手法やツールを積極的に取り入れたという。

そのほか、コミュニティへの情報提供も積極的に進めたそうだ。そのうえで本田氏はチームビルディングに徹し、別にCPOに権限を移譲して開発スピードをアップさせたとのこと。本田氏はCTOとして、「TeamUp」ツールを利用して1 on 1時の内容をログ化して成長の促進を図ったり、「wevox」で開発組織力のモニタリングを実施したりしたという。

■カケハシ/海老原智氏

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2mmぐらい強くて? ニューゲームのCTOとしての取り組み

カケハシは2016年3月に設立、海老原氏はその2カ月後に入社したそうだ。同社は全国に6万店以上ある調剤薬局のSaaSを開発している会社。

調剤薬局が処理する処方箋枚数は年間8億枚あり、調剤薬局は患者と累計8億回も薬の受け渡しをしていることになる。同社は、この受け渡しのタイミングで「患者が健康になっていくための手助けができるのではないか」という想いで創業。現在、患者に対して実施した服薬指導の内容(薬歴)の記録を電子化する「Musubi」を開発・提供している。

海老原自身は同社で取締役CTOを務めているが、実際にはCPO/VPoE的な役割を担っているとのこと。CTOを二度経験していることを生かし、働き方の改善、組織や社内文化への理解度を深めるために尽力しているそうだ。具体的には、アジャイル/アーキテクチャ/DevOps/設置・採用/採用・組織化、という5つのフェースで自分の役割を変えていったそうだ。アジャイルのフェーズでは、開発手法だけでなく組織運営についても議論を重ねて意識を共有したとのこと。設置・採用フェーズでは、一時的にCTOの役割を返上して、調剤薬局へWi-Fi構築を含むPCへの設置などの業務も担当したという。現在は採用・組織化フェーズだが、今後拡大する業務内容を踏まえ、どこかのタイミングで再度アーキテクチャフェーズに戻ることを予定しているとのことだ。

■scouty/伊藤勝悟氏

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スケーラブルな開発組織を目指して~推測より計測~

scoutyに3人目のメンバー、1人目の開発者として入社。2018年7月から取締役CTOに就任。scoutyはエンジニアをヘッドハンティングするサービスで、SNSから公開されている情報をクロールして人材のデータベースを構築。このデータベースを企業の人事部が参照することで、自社に必要な人材にスカウトメールを送れるという仕組みだ。

ちなみにこれまでのデータ分析の結果、転職を希望するエンジニアはその直前にプロフィール写真を変える傾向が強いとのこと。伊藤氏は入社後、クロールの手法などに改良を加えたことで、データベースの登録者数を6万人から約13倍の80万人に増やしたそうだ。

伊藤氏がCTOとして取り組んだのは、開発人員と開発速度が比例する組織。一般的に人が増えると、コミュニケーションや調整タスクが増えるため開発スピードは鈍化するが、同社では7人までに増えた8カ月後の開発スピードは当初の2.1倍、残業時間は一人当たり7.4時間となったそうだ。

この開発チームを実現するために、それぞれの役割分担を明確化し、目的や責務などを明文化。そのうえで、妥協しない採用ポリシーによってチームを強化。具体的には、既存メンバーの平均よりも高い能力、既存メンバーが持っていない知識/経験、カルチャーマッチを重要視、という3つのポリシーを貫いたそうだ。この採用ポリシーを徹底するために、評価ポイントの設定、採点基準の明確化、それを基にした社内エンジニアの平均点の算出などを実施したとのこと。さらにカルチャーマッチをテストするため、採用候補者を社員全員が取り囲んで質問し、あらかじめ用意されたチェック項目を埋めていくという作業も行っているそうだ。

正直、このような仕組みを使うのは「めちゃくちゃ大変」だそうだが、スケーラブルな開発チームを運営していくために今後もやり続けていきたいと話を締めくくった。

■空/田仲紘典氏

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プロダクトから顧客や様々な職種へ

田仲氏は空で、CPO(Cheif Production Officer)として、ビジネス要件と技術要件の両軸を考える、顧客価値を作る仕事を担当している。

ホテル業界の課題として、料金設定の「手間」と「精度」があるとのこと。料金設定に関わるデータを得るには、1日あたり2~3時間の時間が必要で、合計すると月に60時間以上の時間を費やしているという。またノウハウが属人化しており、担当が変わるとやり方が変わるという問題もある。同社は、前者を「ホテル番付」、後者を「Magic Price」というサービスで効率化している。この2つのサービスを顧客が横断的に使うことを考えて、サービス基盤は共通化しているとのこと。

シンプルなUI/UX、統計学を利用したデータ分析手法、問題解決に取り組む体制によって顧客満足度90%を実現しているという。新しいバージョンは週1でリリースしているそうだ。

具体的には、AWSサービスを駆使することで、フロントエンド、バックエンド、インフラを構築。今後はホテルだけでなく、航空券やが外食など他業種にサービスをスケールさせるために、サービスの共通基盤とマイクロサービス化を進めて行くという。

■Voicy/窪田雄司氏

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サービスを最速で伸ばす先回りの技術

Voicyは、手軽に音声を生活のあらゆる場所に届けるサービス。今後は出力先を増やして事業を拡大したいとのこと。窪田氏はCTOの仕事を「未来を予測して事前に準備しよう」というスタンスでの臨んでいるとのこと。

具体的には、CEOは5~10年後の未来を見据えたうえで、経営・事業計画の直近の1年をどうするかという計画を立てる。一方CTOは、CEOを考える1年後よりも少し先の未来を見据えて行動するのが大事とのこと。このタイミングに何が起こって、何が必要なのかを事前に準備、把握しておくべきだとしている。

例えば、突然のアクセス増加に対してもリリース前から高負荷に堪えうるインフラ構成を用意。スマートスピーカーへのスキル提供やAPI連携についても事前に準備するなど、想定される出来事に対処していったという。

窪田氏は、事前準備した内容の90%は使われないため、エクストリーム・プログラミングにおける原則としてはYAGNI(機能は実際に必要となるまでは追加しないのがいい)を思い浮かべる人も多いと思うが、少し根性論かもしれないが「CTOならその予測を当てにいけ」という持論で進めたそうだ。そのためには予測の精度を上げる努力が必要とのこと。

さらにCEOとのコミュニケーションで、優先順位をすり合わせやお互いの仕事内容を共有することも重要と窪田氏。そのうえで、1年後や5年後、どうありたいか語り合うことも必要とのこと。「未来を予測し、技術の力で攻めの準備とリスクの回避を行い、サービスを最速で伸ばす」という言葉でプレゼンを締めくくった。

CTO of the year 2018の審査委員長を務めた、グリー取締役/上級執行役員/CTOの藤本真樹氏は「審査に関わるのは今年で5年目だが、間違いなく毎年レベルが上がっている。この賞に参加すること自体登壇者のレベルが上がっていることは、業界としても非常にいいこと」というコメント。

TechCrunchも審査員として参加したが、最後まで票が分かれ、最終的には協議のうえでの1位選出となった。TechCrunch Tokyoのスタートアップバトルと同様、年々レベルがアップしているCTO of the year。来年はどういった企業が出場するのか、これから楽しみだ。

CTO of the year 2018の登壇者が決定!TC Tokyo Startup Battle卒業生も参加

例年、TechCrunch Tokyoの初日の夜に開催してきた「CTO of the year」。今年は11月21日(水)の単独開催となり、アマゾン ウェブ サービス ジャパンがJR目黒駅前に10月1日にオープンさせたばかりのコワーキングスペース「AWS Loft Tokyo 」に場所を移すことになった。

CTO of the yearは、スタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)によるピッチコンテストを開催して、技術によるビジネスの貢献度を審査するイベントだ。独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営などを評価対象として今年1年最も輝いたCTOが選出される。今年もTechCrunch Japanが審査員として参加する。

前回の記事では審査員を公開したが、今回は登壇が決定した各社のCTOを紹介したい。 昨年のTechCrunch Tokyo 2017のStartup Battleで優勝した空や、会場投票でファイナルステージに進みバンダイナムコ賞を獲得したVoicy、日本マイクロソフト賞、IBM BlueHub全力サポート賞、Jooto AWARD BY PR TIMESなどを獲得したscouty、そしてTechCrunch Tokyo 2018のStartup BattleのファイナリストであるGVA TECHなど、TechCrunch読者にもなじみのある企業が多数参加する。

CTO of the year 2018の概要は記事の最後に記載しているが、CTOもしくは、それに準じるポジションの人であれば参加はいつもどおり無料だ。オープンしたてのAWS Loft Tokyoの視察がてら立ち寄ってほしい。

■登壇者一覧
海老原 智氏(カケハシ取締役/CTO)
慶應義塾大学大学院政策メディア・研究科修了後、凸版印刷でバーチャルリアリティ用3DCGビューア/SDKの開発、3DCGコンテンツ制作会社でテクニカルディレクションに従事。グリーにてSNS/プラットフォーム系開発に携わった後、サイカの取締役CTOを経て、創業直後のカケハシに参画。

 

窪田雄司氏(Voicy CTO)
2016年2月にVoicyを共同創業しCTOに就任。 当初はすべて一人で開発を行い、現在はチームビルディングやサービスの企画・品質管理のほか、プロダクトの開発も引き続き手がける。 創業以前は金融、流通、EC、広告などさまざまな業種においてシステムの開発・マネジメントやPMO業務にもに携わってきた。

 

川原尊徳氏(atama plus CTO)
2006年に東京大学大学院情報理工学系研究科を卒業し、マイクロソフトに入社。Hotmail開発、日本語IME開発、データサイエンティスト等を経て、2017年に大学時代の仲間とともにatama plusを設立し、CTOになる。現在は主に組織づくりとレコメンドエンジンのコアロジックを担当。

 

田仲紘典氏(空CPO)
立命館大学大学院卒業後Yahoo! JAPANに就職。主にインフラエンジニアとして活動し、ヤフーアカデミアでリーダーシップについても学ぶ。また在職中にAPProgにて、技術サポートとして副業も経験。その後、現職である空に、MagicPriceの立ち上げ期からエンジニアとして携る。

 

本田勝寛氏(GVA TECH取締役/CTO)
フリーランス、インフラ・ネットワークエンジニア、プログラマーを経験。プログラマーでは、主にスタートアップにてソーシャルゲーム、アドテク、シェアリングエコノミー領域に携わる。2017年9月にGVA TECHにCTOとして参画、プロダクト開発・エンジニア組織の内製化を進め、現在に至る。

 

伊藤 勝梧氏(scouty取締役/CTO)
2015年に京都大学工学部情報学科を卒業。大学1年でRailsの魅力に引かれ、在学中に受託開発を行う。クックパッド, ビービット(beBit)のインターンを経て、2015年よりウェブの受託開発企業を経験後、scoutyにジョイン。現在CTOとしてホラクラシーな開発組織づくりやプロダクトオーナーを担当。

 

前田 翼氏(FACTBASE CTO)
React Native OSSというReact Native周りのOSSにペアプログラミングで貢献するコミュニティのオーガナイザー。 近日発売の著書に「実践Expo ~React NativeとFirebaseでSNSアプリを最速ストアリリース~」(11/18ごろにAmazonなどで予約受付開始)。

 

CTO of the year 2018
【日時】11月21日(水)17時〜19時30分
【会場】東京・AWS Loft Tokyo(東京都品川区上大崎3-1-1 目黒セントラルスクエア内)
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】CTO of the year 2018実行委員会による
【主催】CTO of the year実行委員会
【メディアパートナー】TechCrunch Japan
【運営パートナー】イベントレジスト
【企画、運営協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【チケット】無料(参加登録は必須)
【事務局連絡先】cto-of-the-year2018@amazon.com(CTO of the year運営事務局)

メルカリが目指すべき道は?TC Tokyo 2018初日に取締役社長兼COO小泉氏の登壇が決定

merucari0111月15日(木)と16日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催する日本最大級のスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2018」。既報のとおり、メルカリ取締役社長兼COOを務め、国内事業を率いる小泉文明氏の登壇が決定している。

TV CMなどでもおなじみのフリマアプリ・サービスで業界に革命を起こしたメルカリ。ここ数年、国内のスタートアップシーンを牽引し続けてきたが、2018年は同社にとってさらに飛躍する年となった。6月19日に東証マザーズ市場に上場。上場初日の株式市場はメルカリを1株あたり5300円と評価した。同価格で算出した時価総額は約7172億円となる。

メルカリの直近の動きとしては、10月18日に車×コミュニティアプリCARTUNE」を運営するマイケルを、簡易株式交換により子会社化

また小泉氏は10月17日に、クラウドファンディングサービス「Readyfor」を展開するREADYFORへ個人として出資している。

READYFORの経営陣および投資家陣。前列中央が代表取締役CEOの米良はるか氏

小泉氏に登壇してもらうのは、TechCrunch Tokyo 2018の初日にあたる11月15日。メルカリ上場までのストーリーや国内戦略、今後注力していく事業・サービスなどについて話を聞く予定だ。

TechCrunch Tokyo 2018では現在、一般来場者向けの「前売りチケット」(3万円)、5人以上の一括申し込みが条件の「団体チケット」(2万円)、創業3年未満(2015年10月以降に創業)のスタートアップ企業に向けた「スタートアップチケット」(1万8000円)、学生向けの「学割チケット」(1万8000円)、創業3年未満のスタートアップ企業を対象とした2日間のデモブース出展の権利と2名ぶんの参加チケットがセットになった「スタートアップデモブース券」(3万5000円)を販売中だ。前売りチケットは10月31日まで、スタートアップデモブース券は先着順で売り切れ次第販売終了となる。

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TC Tokyo学割チケットの追加販売がスタート

11月15日(木)と16日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催する日本最大級のスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。起業家志望やスタートアップに関心のある学生にも参加してほしいと考え、今年も学割チケットを100枚限定で用意していたが、あっという間に完売してしまった。

今回、買い逃してしまったという学生のみなさんの声に応え、1万8000円の学割チケットの販売を開始した。3万円の前売りチケット、2万円の団体チケット(5枚以上の同時購入が必須)よりもオトクなので、学生のみなさんはぜひ購入を検討してほしい。

TechCrunch Tokyoは、創業3年以内のスタートアップ企業を集めたピッチイベント「Startup Battle」、国内外のスピーカーが対話形式で創業ストーリーや最新事情を語る「Fireside Chat」、VCやスタートアップのCEOなどがテーマに沿って激論を交わす「Panel Discussion」、創業3年以内のスタートアップ向けの専用ブース「Startup Demo Booth」などで構成されるイベント。すでに以下の登壇者が決定しているほか、近日中に新たな登壇者の告知も予定している。

2017年のStartup Battleの最優秀賞に輝いたのはホテル向け経営分析ツールの「ホテル番付」を提供する「空」。写真は、代表取締役の松村大貴氏

Julio Avalos氏(GitHubチーフ・ストラテジー・オフィサー兼ジェネラル・カウンセル)
GitHubは、ソースコードをホスティングするソフトウェア開発プラットフォーム。Avalos氏は、2012年にGitHubにジョイン。同社では経営陣および取締役会との連携を推進、ビジョンの定義および事業の管理運営を担うと同時に、法務や政策、人材、ソーシャルインパクト、戦略的パートナーシップを監督している。Avalos氏には今後のGitHubの戦略について聞きたいと思っている。

堀江裕介氏(dely代表取締役)
delyは、レシピ動画サービス「クラシル」などを展開するスタートアップ。2016年2月にサービス開始したクラシルは現在までに1200万以上のダウンロード件数、290万人を超えるSNSフォロワー数を獲得するまでに成長している。また、ヤフーによる連結子会社化が発表されて話題になった。堀江氏には、彼の頭の中にある1兆円企業になるまでのロードマップを聞く予定だ。

Long N. Phan氏(Top Flight Technologies CEO)
Top Flight Technologiesは2014年創業で、ドローンの研究開発と運用を進めることで、将来的に「空飛ぶクルマ」の実現を目指す米国スタートアップ。Long Phan博士からは、空飛ぶクルマというワクワクする話を聞けそうだ。

林 隆弘氏(HEROZ代表取締役CEO)
HEROZは、人工知能を活用したインターネットサービスの企画・開発・運営を手がける日本のスタートアップ。2017年には将棋AI「Ponanza(ポナンザ)」が現役将棋名人に勝利するなど、HEROZの技術力にいっそうの注目が集まった。林氏には、上場年となる今年に改めて創業当初を振り返り、氷河期と呼ばれる時代に起業家になることで得た経験、学び、苦労を大いに語ってもらいたいと考えている。

Harinder Takhar氏(Paytm Labs CEO)/中山一郎氏(PayPay社長)
PayPay(ペイペイ)は、ソフトバンクとヤフーの合弁会社で、2018年秋よりバーコードやQRコードを使って決済ができるスマホ決済サービスを開始する。同サービスを提供するにあたって同社は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先であるインドのPaytm(ペイティーエム)と連携。Paytmは、すでに3億人以上のユーザーと800万店の加盟店にサービスを提供している決済サービス事業者だ。TechCrunch Tokyoでは、元PaytmのCEOで、現在はPaytm LabsのCEOを務めるTakhar氏と、PayPayの中山社長に登壇いただき、モバイル決済の最新事情について語ってもらう予定だ。

芳川裕誠氏(Treasure Data CEO)
Treasure Dataは米国に本拠を置くビッグデータ分析企業。2011年にCEO兼共同創業者の芳川裕誠氏ら3人の日本人がシリコンバレーにて立ち上げた。今年7月に、ソフトバンクグループ傘下のコンピュータチップ設計企業ARMホールディングスに買収されたことで、国内での認知度も一気に高まった注目の企業だ。芳川CEOには、日本人が異国の地で創業した理由や苦労したことなどの創業ストーリーだけでなく、近年あらゆる分野で重要度が増しているビッグデータ解析について興味深い内容を聞き出したいところだ。

小泉文明氏(メルカリ取締役社長兼COO)
メルカリについては、もはや説明不要かもしれない。フリマアプリで革命を起こした日本では希有なユニコーン企業。現在では子会社のソウゾウが「次のメルカリ級事業を創る」をミッションに掲げて、旅行領域での新規事業開発を進めている。さらに昨年には金融関連の新規事業を行うためにメルペイを設立したことも記憶に新しいだろう。メリカリの上場について振り返っていただいたうえで、今後の展望についても語ってもらいたいところだ。

なお、TechCrunch Tokyoに学割チケットで入場する際は、当日受付にて学生証の提示が必要だ。

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「猛烈に売れるインフルエンサーは100人もいない」3人の先駆者が語る、国内ライブコマースの現状と展望

写真左から左からメルカリ執行役員の伊豫健夫氏、Candee代表取締役副社長CCOの新井拓郎氏、BASE代表取締役CEOの鶴岡裕太氏

2017年の流行語大賞にはWeb関連の言葉としてAIスピーカーやユーチューバー、インスタ映えといったキーワードがノミネートされた。仮にもう少し範囲を絞り、国内のスタートアップ界隈限定で流行語を決めるとすると、「ライブコマース」は少なくともノミネートはされるのではないだろうか。

スマートフォンでライブ配信をしながら、その最中にモノを売るライブコマース、は中国で先行して注目を集め今年に入って日本でも話題となった。

11月16日・17日に開催されたTechCrunch Tokyo 2017でも、ライブコマースに取り組む3社によるパネルディスカッションを開催。TechCrunch Japan副編集長の岩本有平がモデレーターを務める中、メルカリ執行役員の伊豫健夫氏、Candee代表取締役副社長CCOの新井拓郎氏、BASE代表取締役CEOの鶴岡裕太氏がそれぞれの戦略や今後の展望を語った。

3社がライブコマースを始めた理由と狙い

3社の中でライブコマース用の独立したプラットフォーム「Live Shop!」を提供しているのがCandee、既存のプロダクトにライブコマース機能を組み込む形で提供しているのがメルカリ(メルカリチャンネル)とBASE(BASEライブ)だ。

国内でもいち早くライブコマース市場に参入したCandeeは6月に「ライブ配信× コマース× インタラクティブ」をテーマとしたLive Shop!をリリース。インフルエンサーやモデルが自身のチャンネルを解説し、ライブ配信を行う。

同社は「ソーシャルビデオ革命を起こすこと」を目標に掲げていて、スマホファーストかつソーシャル性とインタラクティブ性を兼ね備えるライブストリーミングに注目。この領域では女性向けのプラットフォームが少ないことから、ファッションなどの分野にまずは集中する形でスタートしている。新井氏によるとライブコマースにしたのは、広告以外のマネタイズ手段を作る目的もあったという。

メルカリの場合はライブフリマ機能という形で7月にメルカリチャンネルをリリース。直接的なきっかけは中国の上海で実際にライブコマースを目にしたこと。「C2Cの売買がリアルタイムで進む様子を見て驚いた。これを自分たちがやらなければ誰がやるのかという話で盛り上がりリリースに至った」(伊豫氏)

当初はインフルエンサーや芸能人が中心で始まり、8月から個人ユーザーにも解放。農家の人が野菜を売ったり、家族が古着を売ったりなど幅広い領域で利用が進み、1日800名ほどが配信を行うほどに成長している(11月のTechCrunch Tokyo開催時点)。

BASEもメルカリ同様にライブコマース機能を9月にリリース。BASEでは自分のブランドや商品を作る店舗が多く、商品のブランディングが課題のひとつ。商品ページのテキスト情報だけでは十分に伝わらない魅力を届ける手段として、ライブ機能を始めた。11月時点で1日あたりの配信数は100本弱、売れる商品だと1時間の配信で売り上げが100万円弱になっている。

メルカリやBASEで共通していたのは、商品の背景にあるストーリーを伝える手段としてライブ配信に注目していること。視聴者とのコミュニケーションも含めて、商品の魅力を深ぼって紹介できるのがライブならではの利点だという。

積極的にライブ参加する視聴者ほど、購入率が高い

参入の背景はそれぞれ違えど、やはり気になるのは実際に売れているのか、手応えを感じているのかどうかということ。その点について新井氏は「ぶっちゃけ日本でも売れるのか?またどうやったら売れるのか?ビジネスモデルの検証を最初にやった」という。

具体的にはユーザーボリュームは追いかけず、商品が売れるかどうかのコンバージョンやどのような演者の評判がいいのかを分析した。「結果として見えてきたのが、ライブに参加するほど購入率があがるということ」(新井氏)

Live Shop!ではライブ中にハートやコメントをした場合にライブ参加としてカウント。実際に商品を購入した人は、その他の人に比べて2倍のライブ参加率だったそうだ。それがわかったため、次のフェーズでは「どうやればライブに参加してもらえるか」に着目して映像の作り方や機能面の研究をしているという。

売れる人と売れない人の二分化が進む

メルカリチャンネルの場合はLive Shop!とはある意味真逆。伊豫氏いわく「インフルエンサーじゃない一般の人が配信しても売れるのか?」ということを検証してきた。

「売れる人と売れない人の差が広がり、二分化が進んでいる状態。売れる人はメルカリの中でインフルエンサーとなってフォロワーがつき、ずっと売れ続ける。1番の成功例はテレビでも紹介された農家の方。収入が20~30倍になり『人生が変わった』という声もいただいている」(伊豫氏)

その一方で全く売れない事例もたくさんあるそう。ライブ配信で商品の魅力を説明することは簡単なことではない。多くの場合はスペックを語るくらいしかできず、この点が今後伸ばしていく上でのポイントだという。

売れるユーザーと売れないユーザーの二分化現象はBASEでも同様だ。鶴岡氏は「本当に好きでその商品を作っている・売っている人と、お金儲けが先行している人で結果が大きく変わってくる」と話す。

「ユーザーからの質問に対する回答ひとつですぐにわかる。たとえばある漆職人の方の場合は『どこの漆なんですか?』という質問に対して、日本の漆の状況や特殊な作りなど永遠と語り続けるほど。好奇心があってものづくりが好きな人のライブは、インフルエンサーかどうかに限らず盛り上がる傾向にある」(鶴岡氏)

このようなチャンネルは固定のファンがつき「人で売れる」ようになるというのは、3社とも共通しているとのこと。商品を売り始めた瞬間に商品が売れて「バグが起きたのかと思った」(新井氏)こともあるそうだ。

少なくとも現段階においては、“誰が発信しているのか”ということが重要なポイントになっているのは間違いない。ただ新井氏が「猛烈に売れる人は、100人もいないのではないか」と話すように、ライブコマースで物を売ることのできる人数には限りがある。

「現時点でのマーケットサイズは小さいが、マーケットポテンシャルは大きい。人の育成や発掘にも力を入れていく」(新井氏)

ライブ配信を重ねていくうちにスキルをあげ、売り上げを伸ばしていく人は各社にいるそう。伊豫氏は「1日目と2日目の配信で結果は全然違う。配信者が育つのは間違いない」とメルカリチャンネルの事例を紹介。鶴岡氏も「最初は恥ずかしくて顔を出さない人が多いが(慣れていくにしたがって)徐々にみんな顔出しをするようになる」と話す。

ライブコマースの本質は「コミュニティ」にあり

3人は今後国内のライブコマース市場がどのようになっていくと考えているのだろうか。パネルディスカッションの最後にそれぞれが見解を述べた。

「地方のショップオーナーが『今お客さんがいないので1時間だけライブECします』とライブ配信をして商品を売っていたことに未来を感じた。これが来年なのか10年後なのかは別として、今後スタンダードになっていくと思う。ポテンシャルは十分にある」(鶴岡氏)

「中国の事例含め、(2時間で約3億円売れたケースなど)最大瞬間風速にスポットライトが当たっているが、実際にはコミュニティビジネスに近い。永続性、継続性を持ってファンとのコミュニティを育てていくことが重要。その上でスモールサイズのコミュニティをたくさん作るのか、ミドルサイズを狙っていくのか。自分たちはミドルとある程度大きなコミュニティを作りながらブランドを育てていく」(新井氏)

「重要なのは『在庫』と『人』。(この2つをつなぐ)スムーズな仕組みが作れれば日本でもポテンシャルはある。ライブコマースによって物と人の組み合わせのバラエティが豊かになり、新しい流通や市場が生まれている。インターネットとコミュニティの掛け合わせがライブコマースだと考えていて、メルカリでも可能性を狭めずにこの市場を捉えていきたい」(伊豫氏)

セッションが終了してまだ約1ヶ月ほどだが、その間にも大きな動きがあった。Candeeではセッション中に少し話のあった、ライブコマースとD2C(Direct to Consumer)を掛け合わせたプライベートブランドを11月16日に発表。新たな商品展開に取り組み始めるとともに、12月には24.5億円の資金調達を実施した。

メルカリも12月より伊藤久右衛門やインプローブスといった一部の法人にメルカリチャンネルの提供を開始。C2Cという枠組みを取り払って、コンテンツの拡充に向けて動き出している。

スタートアップのテック・イベント「TechCrunch Tokyo 2017」を11月に渋谷ヒカリエで開催

毎年秋にTechCrunch Japanが開催しているイベント「TechCrunch Tokyo 2017」の開催日が11月16日(木)、17日(金)と決まったのでお知らせしたい。今年も東京・渋谷のヒカリエでの開催だ。これでイベント自体は通算7回目、ヒカリエでの開催は4年連続となる。過去2年は参加者数が2000人を超える規模となっているが、今年もたくさんの方々に来て頂ければと思う。

まだTechCrunch Tokyoに参加したことのない読者向けに、どんなイベントであるか、簡単に紹介したい。

渋谷ヒカリエの大ホールはいつも満員。多くのスタートアップが「デビュー」を飾る

2017年のイケてるスタートアップが一堂に集まる

最大の目玉企画は「スタートアップバトル」だ。これは創業3年未満のスタートアップ企業が競い合うピッチコンテストだ。

毎年100〜150社からの応募があり、日本を代表するVCを中心とした審査員による書類審査を経てステージでの発表にのぞむ。TechCrunch Japanが日々報じている多くのスタートアップ企業がその創業期にTechCrunch Tokyoのバトルに登壇していて、その後の資金調達や顧客獲得、メディア取材へと繋げる「デビュー戦」の場となっている。過去のバトル登壇企業の資金調達総額は300億円超。毎年会場のヒカリエホールでは立ち見客も続出する日本最大級のピッチコンテストとなっている。スタートアップ企業のコアにいる起業家や投資家はもちろんこと、大手有力企業のアライアンス担当者や事業開発部門の人々も数多く見に来ているのが、ほかのスタートアップ関連イベントの違いの1つになっている。例年、米国TechCrunchからも記者が参加。国外から存在や活動が見えづらい日本のスタートアップ企業にとってグローバルデビューのチャンスでもある。

創業間もないスタートアップの起業家がピッチ

優勝チームに賞金100万円が贈呈されるほか、各種賞をご用意

スタートアップバトルはハレの舞台であると同時に、戦いの場でもある。

翻訳の問題から日本では「バトル」と言っているが、米国の本家TechCrunchでの元々の名称は「バトルフィールド」(戦場)だ。ステージ上で起業家たちがVCからの厳しい質問をさばき、いかに注目と資金を集めるかを競うというニュアンスが込められていたからだ。

TechCrunch Tokyoでも昨年からはステージ上に著名VCや経営者たちに登壇してもらい、起業家がピッチを終えると同時に質問タイムを開始。多くのビジネスモデルを見てきた投資家たちが、実際に投資判断をするのと同じくらいの真剣さで質問を投げ、起業家が応じるという形にしている。一般的に言えば起業家というのは、特定の事業ドメインについて、ものすごく幅広い知識と深い洞察を持っている。投資家は広く俯瞰した視点と過去の経験・知見から汎化した鑑識眼を持っている。だから、そのやり取り自体が学びの多いセッションとなる。起業志望の人はもちろん、大企業で新規事業を探している人にとって、テックビジネスの最前線を学べる絶好の機会でもあると思う。

例えば、昨年優勝した「小児科オンライン」のピッチと質疑は以下のとおりだ。

VCを中心とした審査員からの質問にその場で回答する起業家

 

TechCrunch Tokyoの「卒業生」も多数登壇

一昨年から始めた「プロダクト・アップデート」というミニセッションは、TechCrunch Tokyoの「卒業生」とも言える起業家たちに、その後の活躍やプロダクトの新機能、サービス成長の様子をTechCrunch Japanのライターが聞き出すという趣旨のコーナーだ。去年一気に起業家の登壇者数を増やしたが、今年はもっと増やしたいと考えている。

会場となるヒカリエにある通路やホワイエをフルに使ったブース展示コーナーにも多くのスタートアップ企業をお呼びする予定で、TechCrunch Tokyoというイベントは「いまイケてるスタートアップが一堂に集まる場」と思ってもらえれば間違いない。これまでこうしたイベントに足を運んだことがないものの、スタートアップや起業に興味があるという層の人々も大いに歓迎したい。

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シリコンバレーの「今」が分かる

日々海外ニュースとしてお伝えしているように、スタートアップ・エコシステムは世界じゅうの都市で発展を始めている。そうはいっても流入資金規模や成熟度、影響度の点でシリコンバレーに比肩する場所はない。そのシリコンバレーのニュースを日々日本語でお伝えするのがTechCrunch Japanのメディアとしての軸の1つ。その立ち位置はTechCrunch Tokyoでも同じだ。

毎年、シリコンバレーから注目の起業家や投資家を招待してキーノートスピーチをお願いしているほか、テクノロジーのトレンドを、その筋の専門家に概説してもらう「テック・トレンド」というセッションも設けている。去年はVRやAIのキーパーソンに登壇頂いた。ほかにも国内のトレンドや注目テーマを取り上げたパネル・ディスカッションも毎年ご用意している。

「お勉強」ぽいセッションだけではない。「ファイアー・サイド・チャット」と名付けたセッションは暖炉の前で親密に、そしてカジュアルに語り合うように起業家にストーリーを語ってもらうというトークセッションになっている。例年、成功している日本人起業家なども登壇するセッションでもあり、連続起業家など成功している人たちの生の声が聞ける貴重な場だ。

スピーカーや具体的なセッション、その他のプログラムについては順次アナウンス予定なので、まずは11月16日、17日の木曜日・金曜日をカレンダー上でマークしておいてもらえると幸いだ。そうそう、去年のTechCrunch Tokyo 2016関連の記事は、ここからまとめて見ることができるので加えておこう。

失敗しても死ぬことはない、重要なのはその業界の成長ーーさくらインターネット田中氏

さくらインターネット創業者で代表取締役社長の田中邦裕氏

11月16日〜17日にかけて渋谷ヒカリエで開催されたスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」。1日目の午前、「駆け抜けたネット黎明期、さくらの創業物語」と題したセッションには、さくらインターネット創業者で代表取締役社長の田中邦裕氏が登壇した。

さくらインターネットは1996年に事業をスタートし、1998年に法人化している。レンタルサーバーを中心とするデータセンター事業を手がけ、まさにインターネット黎明期からインフラ支えてきた企業だ。また最近では、通信環境とデータの保存や処理システムを一体型で提供するIoTのプラットフォーム「さくらのIoT Platform β」などIoT領域での取り組みも積極的に行い注目されている。

そんな同社のはじまりは、学生ベンチャー。「学内回線を使用して、サーバーを立ち上げていたが、学校に知られてしまい、サーバーを撤去しないといけないことになったことがきっかけ」だと田中氏は語る。当時はまだ「データセンター」というものは無く、地元のプロバイダーに労働力を提供し、場所を借りるというバーター契約ではじまったそうだ。創業当初は月額1000円という価格設定をするも、単価が安いためになかなか売上げに繋がらず、地元プロバイダーから施してもうらうお金だけで事業を続けているという状況が半年ほど続いたという。

田中氏は「起業は2種類あると思う」と続ける。起業したいと考えて実行する人と、手段としてせざるを得ないという人。田中氏の場合は後者で、サーバーの運用を続けるために、サービスを立ち上げたという経緯だ。京都府舞鶴市で事業を営んできたが、1998年に大阪に移転。多くの投資家に出会ったことが転機となり、株式会社化に至った。

その後2005年にマザーズ上場に至るまで、サービスや組織が拡大するに伴って、さまざまな問題が起こったという。当時の状況について田中氏は「技術やお客様に喜んでもらえるサービスを生み出そうというよりも、上場することが目的となり、社風が変わってしまった」と振り返る。最終的に田中氏は一度社長の座を退いている。さくらインターネットからの退社までを考えたが、ネットバブルの崩壊の影響もあって経営危機に面することになり、エンジニアとして会社に関わり続けた。スタートアップ企業の従業員数が増えることで会社に変化が起こる「成長痛」はよく聞く話だが、同社も例外ではなかった。

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ネット黎明期からインフラを提供する老舗企業だったさくらインターネットだが、インターネットの盛り上がりとともに、競合となるサービスも現れてきた。レンタルサーバーの価格競争は、誰もが感じられるスピードで加速してきた。「うちが2000円でやっていたものを月額数百円で提供するというものも出ていた。また一方で『Web 2.0』の波が来ていて、専用サーバの需要が増えていた」と話す。

つまり、個人ユーザーをロングテールで獲得しようとすると価格を下げることになるが、価格を下げても大きく市場が広がる確信を持てなかったのだそう。価格破壊が起こる中で、同社は法人向けに専用サーバーに注力していた。「最近のレンタルサーバーの平均単価は500円程度で、また破壊的イノベーションが起きるのではと危機感は持っている。市場開拓をするか、ARPPUを上げるかのどちらかを迫られていて、折り返し地点にきているなと感じる」と、今日の状況について話した。

また今日の動きでいうと、2011年に稼働を開始した石狩データセンターがある。投資額としてはかなり大きいものだが、FS(フィジビリティスタディ:事業の実現性を調査すること)を行ったところ、明らかに東京よりもいい環境だったという。

大きな投資を行ったが、IR資料を見ると売上は上昇傾向にある。サービス別ではクラウド事業が大きい。田中氏は、「クラウドの時代が来る」と目論んでいたわけではないという。ここで先行投資について、「やったらいいと思うんですよ。失敗しても死ぬことはないくらいの感覚をつかむのは。実際失敗するのは怖いですし、時間がかかりましたが。重要なのはその業界が成長しているかどうか。『クラウドが来る』とは読めなくとも、コンピューターは今の1億倍、1兆倍になることは多くの人が感じているはず」と田中氏は話した。

また田中氏は、スタートアップでも大企業でも何かと話題の多い働き方の話題についても言及した。「考えが変わったんですけど、あまり仕事だけで人生を楽しめないのは勿体ないなと思うんですよね。適度に働いて、やり甲斐を探す方が健全な気がする」(田中氏)。同社ではここ数年で多くの人材を採用したこともあり、有給休暇や定時に縛られないような制度を導入。兼業も認めるなど、新たな取り組みを進めているそうだ。

これまでの起業、経営を振り返り、田中氏は「15〜20年前は、良いサービスを作っていたら売れる、なぜこのサービスを知らない人がいるのかくらいに思っていたが、違うなと。謙虚にいきたい」と言い、またさくらインターネットの経営は大前提だとした上で「起業には何度でも挑戦したい」と話した。