【スタートアップバトルへの道】「プライシングで社会的なインパクトを」2017 Winner / 空 #2

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となる催しは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年の決勝に勝ち残ったスタートアップ計8社に取材。バトル出場までの道のりや出場してからの変化について、登壇者に話を聞く。

今回登場するのは、TC Tokyo 2017 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得した空CEOの松村大貴氏。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、出場後の社内外の変化や事業のアップデート、今後の展望などについて聞く。
(出場までの経緯や準備、登壇時に感じたことなどについて松村氏に聞いたインタビュー前半はこちらから)

採用活動への寄与は大きい

TC Tokyo 2017 スタートアップバトルで見事優勝を果たした。その後、社内外では何か変化はあったのだろうか。松村氏によれば「社内的には大きな動きではないが、社員は『一気に会社の名前が知られて、友人にもあの会社にいるんだね、と認められるようになった』と話していて、その後の資金調達もこの勢いでがんばるぞ、と士気が高まった」とのことだ。

空CEO 松村大貴氏

「起業をすると誰でも、自分たちがやっていることが本当に正しいのか、世の中に価値あるものをつくれているのか、不安と共にやっている。バトル優勝は、それまでにやってきたことが間違っていないと認められる、ひとつの機会。働く人や顧客にも『僕らの関わる事業』『私たちが使っているサービス』として、一緒にそれを感じてもらえる点が大きいところだ」(松村氏)。

空のプロダクトを利用する顧客企業はホテル業界が中心で、TechCrunch読者が少ないことから、営業面では直接の反響は少ないというが、バトル勝利後に経済紙・誌の取材が増えたことで、PRや営業はしやすくなったようだ。また、採用の面では「かなり強くなった」と松村氏はいう。

「バトルの1年後に『あのとき、会場にいました』という人が入社してきたケースもある。また記事やイベントの動画で空のことを知り、『面白いと思った』という人も多く、採用への寄与が一番強かったのではないか」(松村氏)。

PriceTechに向け、より本格的にチャレンジ

空が最初にリリースしたプロダクトは、ホテルなどに自動で最適な宿泊料金を提示するプライシングサービスの「MagicPrice」だ。そしてスタートアップバトルでは、同社の2つ目のプロダクトで2017年8月にリリースされた、ホテルの市場分析サービス「ホテル番付」が紹介された。

バトル後の約1年後、2018年12月にこれら2つのサービスは統合され、新生MagicPriceとして大幅にリニューアルされた。松村氏は「バトルのプレゼンでは『ホテルには経営指標が必要だ』と訴えたが、同時に『空の事業ドメインはプライシング』とも話していたとおり。空としては、プライシングはより長期で伸ばしたい事業領域。顧客にとっても付加価値が大きい、価格最適化を支援するサービスへ統合した」と説明している。

MagicPriceは同社の「PriceTechにより、世界中の価格を最適化する」との構想に基づき、プライシングの支援サービスとして、顧客数の成長率では1年で5倍以上に実績を伸ばしている。また会社の従業員規模も2倍以上に成長を遂げ、「空という企業のビジョン、ミッション、カルチャーに共感して集まってくれる人が増えている」(松村氏)。

今後の事業展望については「バトル当時に話していた空の未来が実現しつつある」と松村氏は語る。「プライシングはホテルに限らず、さまざまな業界での共通の経営課題だ。実際に最近ではホテル・旅館だけでなく、他業界でプライシングに悩む企業からの問い合わせが来るようになった。不動産関連やメーカー、小売など、さまざまな業種のアンテナ感度の高い企業で、新しい経営改善の手を探している。業界横断でプライシングサービスを展開できるよう、計画してやっていこうとは考えていたが、想定を超えて早く引き合いが来ている」(松村氏)。

今後、PriceTechへの本格的なチャレンジを図る空。松村氏は「プライシングでより大きな、社会的なインパクトがつくれる。最近発表した(2019年5月の)資金調達による後押しも含めて、成長を一気に加速させたい」と話している。

出るなら優勝すべき、プロセス自体もメリット

これからスタートアップバトルへの参加を目指す起業家に対しては、松村氏から「出るなら優勝すべき」と激励の言葉をもらった。「勝てるときに、勝つための練習をして、勝つためのメッセージを磨き込んで、勝つことに執着して出場した方が、意味のあることになる。バトルに優勝したからといって成功が約束されているわけではないけれども、プラスになることは多い」(松村氏)。

また松村氏は「全力で勝ちに行けば、結果が優勝でなくても、自分の会社の経営戦略を考えることとか、自分たちが世の中のために何をしたいのか定義をはっきりさせることにもつながる。出ると決めて、当日までに確固たるものにしていくという、プロセス自体もメリットになる」とも述べている。

「プレゼンのやり方については、型もフレームワークもいろいろとあるので、それほど特殊なことをしなくてもいい。よかったら僕の過去に書いたブログでもいろいろと発信しているので、参考にしてもらえればと思う」(松村氏)。

 

TC Tokyo 2019 スタートアップバトルの詳細はこちら。2019年9月30日までエントリーを受け付けているので、我こそはというスタートアップからの応募を心よりお待ちしている。

 

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投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。