サイバー藤田氏「無理な黒字化は事業がおかしくなる」ーー大型投資での成長を狙うAbemaTVのこれから

サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏

11月17日、18日に東京・渋谷で開催したTechCrunch Tokyo 2016。17日の最終セッションには、サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏が登壇した。藤田氏は4月11日の本開局(サービス正式ローンチ)からわずか半年で1000万ダウンロードを突破するなど、快進撃を続けるインターネットテレビ局「AbemaTV」について、サービス開始から今後の展開までを語った。聞き手はTechCrunch Japan副編集長・岩本有平が務めた。

若年層の取り込みに成功。わずか半年で1000万ダウンロードを突破

サイバーエージェントとテレビ朝日がタッグを組んで展開しているインターネットテレビ局AbemaTV。オリジナルの生放送コンテンツや、ニュース、音楽、スポーツ、アニメなど約30チャンネル(2016年12月現在)が全て無料で楽しめる。

4月11日の本開局から、約半年で1000万ダウンロードを突破。順調に成長を続けている。その状況について、藤田氏はこう口にする。

「予想を上回るスピードで1000万ダウンロードを突破することができましたが、そもそもスマートフォンでテレビ番組を観る視聴習慣が整っていない中、フライング気味にスタートしたサービス。なので長期戦になると思っています。そういう意味では何とかなるだろうと楽観的な一方で、予断を許さないとも思っています」(藤田氏)

「長期戦になる」という言葉どおり、藤田氏は2017年、AbemaTVに年間200億円を先行投資すると発表。予算のほとんどをコンテンツ制作と広告に充てるという。

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驚異的なスピードでユーザー数を増やしているAbemaTV。その内訳を見てみると、10代〜20代の若年層がほとんど。“若者のテレビ離れ”が叫ばれて久しいが、スマートフォンに最適化された動画コンテンツを配信することで若年層の取り込みに成功しているのだ。

「もともと狙っていたのが、テレビを見なくなった若年層だったので、この結果は狙い通りです。テレビを見なくなった層が何をしているかというと、スマートフォンを覗き込んでいるので、スマートフォン上にコンテンツを送り込めばいい、と思いました」(藤田氏)

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なぜテレビで勝負することにしたのか?

2016年を「動画元年」と位置づけ、AbemaTVの本開局に踏み切った藤田氏。だが「Hulu」や「Netflix」といった定額制動画配信サービスや、「YouTube」のような動画配信プラットフォームではなく、なぜテレビで勝負しようと思ったのだろうか?

「最初はテレビ型にするかどうかを決めず、動画事業に参入することだけを決めていたのですが、自分の中でAppleのiTunesが伸び悩んでいたことが決定打となりました。好きな音楽を好きなときに聴けるiTunesの仕組みは個人的にすごく良かったのですが、好きなもの以外を見つけるのが面倒くさいんですよね。受け身で音楽が聴けるストリーミングサービス『AWA』を始めたとき、やっぱり人は受け身で探す方が楽なんだと痛感しました。数ある映像が並んでいても、自分で選んで再生するというのは結構億劫なもの。受け身のサービスの方が人は楽なんじゃないかという前提に立って、テレビ型にすることを決めました」(藤田氏)

“受け身”というように、AbemaTVは暇があったら開く状態を目指している。例えば、1チャンネル目にニュースを持ってきて新鮮な情報を提供していることを打ち出したり、会員登録をなくしたり、とにかくユーザビリティの向上に注力しているそうだ。

「簡単で使いやすくすることで手が癖になり、アプリを立ち上げてくれるかもしれない。FacebookやTwitterといったコミュニティサービスに勝てるとは思っていませんが、SNSを見尽くして、やることがなくなったときに見てもらえるメディアであればいいと思っています」(藤田氏)

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Netflixの日本上陸がAbemaTVの立ち上げの契機に

もちろん、テレビである以上、使いやすいだけでなくコンテンツも面白くなければユーザーに観てもらえない。その点、AbemaTVはテレビ朝日と提携することでクオリティの高い番組が作れているといってもいい。

堀江貴文氏がフジテレビを買収する、三木谷浩史氏がTBSを買収する騒動があった10年前には想像できなかったかもしれないが、テレビとネットの関係性は劇的に変化している“今”だからこそ、サイバーエージェントとテレビ朝日の提携が実現したという。

「昔から通信と放送は融合すると言われ続けていましたが、まだスマホも登場していなかったので実感値が全くなかった。だからこそ、コンテンツは独占してこそ価値があるものだと思われていましたし、テレビ以外のデバイスに映すのはもってのほかだった。そんな状況を大きく変えたのがNetflixの日本上陸。ワールドワイドで収益を上げ、膨大な制作資金をかけてドラマを作っている会社が日本に来るということで、各テレビ局が対応を迫られることになった。この出来事がAbemaTVが生まれるきっかけにもなりました」(藤田氏)

 

Netflixの上陸だけでなく、Apple TVやChromecastといった端末も登場してきた。テレビは今後どうしていくのかを、たまたまテレビ朝日の審議委員会で話していた(藤田氏はテレビ朝日の番組審議委員を務めていた)こともあり、テレビ朝日側に立って出した答えがサイバーエージェントとテレビ朝日の提携だったそうだ。

まさにNetflixの日本上陸がAbemaTVを立ち上げる契機になったと言えるが、運営していく中で自社でコンテンツを作っていく考えはなかったのだろうか?

「自社でコンテンツを作れるのではないか、という考えも頭をよぎりました。例えば映画の買い付けや放映権の取得などお金を出せば何とかなりそうかなと思ったのですが、それは大きな間違いでした。テレビ局と組むことが必須だったんです。主要な映像コンテンツは基本的に全てテレビ局に集まっていますし、映像制作のクオリティがすごく高い。よく視聴率がとれる番組は制作会社が作っていると思われがちなんですけど、それは全然違う。クリエイティブディレクションをやっているのはテレビ局の人たちなので、彼らと組む以外、道はなかったと思います」(藤田氏)

無理に黒字化しようとすると事業がおかしくなる

様々な動画サービスが立ち上がっていることもあり、今後、テレビ局がネット企業と手を組むなど、AbemaTVの競合が出てくる可能性は十分に考えられる。その点、藤田氏はどう考えているのだろうか?

「AbemaTVは世界的にも見たことがないサービス形態になったのですが、有り無しがまだ分からない。もちろん、有りだと思い込んでやっているんですけど、マスメディアに出来るかは全くの未知数。こんな状態で競合は出てきてほしくないのが本音ですが、テレビ朝日が社を挙げて全面的に協力してくれている。こんな奇跡的な状況の会社はそうそう無いと思っているので、競合は来ないんじゃないかなと思っています」(藤田氏)

先ほど、「テレビ局の協力が必須だった」と述べていたように、テレビに進出する時にテレビ局の協力、ネットに進出するときはネット企業の協力が必須だという。だからこそ、同じような形でサービスを立ち上げてくる可能性は少ないと考えているようだ。

約半年で1000万ダウンロードを突破したAbemaTVの今後の展開について、「いつまでに黒字化する、いつまでに◯◯ユーザーを獲得するといったことは絶対に言いません。無理に黒字化させようとすると事業がおかしくなるので」と前置きをした上で次のように語った。

「これからAndroid TV、Apple TVにも対応していきますが、Amazon Fire TVなどを使った視聴体験が思った以上に素晴らしいので、そこのマーケティングは強化していく予定です。あと、年明けにはバックグラウンド再生と縦画面でも開けるようにして、より気軽に使えるようにしていきます。コンテンツ面ではニュースに力を入れていき、大事なニュースがあったらAbemaTVをつける習慣を作っていくことを考えています」(藤田氏)

TechCrunch Tokyo 2016の「スタートアップバトル」、ファイナルラウンド出場チームはこの6社だ

いよいよ幕を開けた、東京・渋谷で開催する日本最大級のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」。今年も旬なゲストをセッションなど様々な企画が目白押しだが、最も注目したいのが目玉企画の1つである、創業3年以内で、今年プロダクトをローンチしたスタートアップがプレゼンで競い合う「スタートアップバトル」だ。「市場性」「独自性」「将来性」の3点で審査を行い、最優秀プロダクトを決める。

11月17日の初日にファーストラウンドが開催され、書類審査を通過した20社がしのぎを削った。ファイナルラウンドへの進出を決めたスタートアップはどこか。本稿では、ファーストラウンドを通過した6社のプロダクトをお伝えする。あわせて、明日開催されるファイナルラウンドの審査員もご紹介したい。

ファイナルラウンドへの出場が決まったスタートアップ

1. タウンWiFi(株式会社タウンWiFi)

公衆の無料Wi-Fiに自動で接続&認証してくれるアプリ。スマホの通信量が削減され、多くの人を悩ませる速度制限を解消してくれる。

2. Refcome(株式会社Combinator)

社員の紹介による「リファラル採用」を活性化するサービス。施策設計のサポート(コンサルティング)に加えて、人事担当者、社員、社員の友人(採用対象)の3者に向けた機能を提供している。

3. Folio collection(株式会社FOLIO)

リスク許容度に応じた分散投資を自動化する資産運用サービス。金融資産への投資を誰もが簡単、効率的に実現できる世界を目指す。サービスリリースは年内を予定している。

4. 小児科オンライン(株式会社Kids Public)

小児科に特化した遠隔医療相談サービス。平日の夜18〜22時、こどもについての質問や悩みをLINE、電話、Skypeで医師に相談することができる。料金は初週無料だが、それ以降は月額980円かかる(※12月1日から月額3,980円に変更予定)

5. SCOUTER(株式会社SCOUTER)

転職希望者を企業に紹介することで報酬をもらえるソーシャルヘッドハンティングサービス。スカウターにのみ限定公開される求人情報を友人や知人に共有し、その方の推薦文を書き、転職が決まると報酬が得られる。

6. Diggle(タシナレッジ株式会社)

企業の予算管理と資金シミュレーション業務を支援するサービス。予算策定機能、予実対比機能、資金シミュレーション機能を提供することで、予算管理を誰でも簡単にできるようにすることを目指す。

ファイナルラウンド審査員

赤坂優氏(エウレカ/共同創業者)
川田尚吾氏(ディー・エヌ・エー/顧問)
木村新司氏(AnyPay/代表取締役)
国光宏尚氏(gumi/代表取締役)
西村賢(TechCrunch Japan編集長)
松本大氏(マネックスグループ/代表執行役社長CEO)
宮田拓弥氏(Scrum Ventures/ゼネラルパートナー)

※審査員はすべて五十音順

産みの苦しみと楽しさを語る―、CTO Nightは木曜夜、集え日本のCTOたち!

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すでにお伝えしているように、いよいよ明後日17日木曜日の夜にTechCrunch Tokyo 2016のイベント内で「CTO Night」を開催する。まだオーディエンスとしての参加申し込みは間に合うので、もう1度イベントについてご案内したい(登壇者の募集は締め切っている)。

TechCrunch Tokyo 2016 CTO Nightは登壇者も参加者も基本CTOばかりという無料イベントで、比較的新しいスタートアップ企業10社から10人のCTOたちが登壇する。技術的観点からビジネスや経営にいかにコミットしてきたかというピッチを披露して讃え合う場で、経験豊富なCTO審査員によって、今年最高に輝いていたCTOに対して「CTO・オブ・ザ・イヤー2016」の称号をお贈りする。

2015年の様子はこちらの記事で詳しくお伝えしている。去年の各発表を紹介する小見出しを並べると、以下の通り。

・「書いたことがなかった」Pythonベースの決済サービスを立ち上げ―BASEの藤川真一CTO
・「Qiitaを良くする」ことに注力―Incrementsの高橋侑久CTO
・Webの力でものづくりを加速―フォトシンス (Akerun) 本間和弘CTO
・2人CTO体制のメリット―トランスリミット 松下雅和CTO
・技術的チャレンジが会社の強み―Vasily (iQON) 今村雅幸CTO
・チームもアーキテクチャも疎結合で非同期―ソラコム安川健太CTO
・「ゴール駆動開発」を提唱―airCloset 辻亮佑CTO
・紙という強敵と戦う―トレタ増井雄一郎CTO

テーマとして多いのは、駆け出したばかりの組織におけるスキルアップや、アウトプット品質向上の方法論だ。

2015年のCTO・オブ・ザ・イヤーに輝いたソラコムCTOの安川健太氏は、「チームもシステムも疎結合で非同期」というもの。ソラコムではチームは1日1回30分の全体進行のシェアをするが、それ以外はSlackで連携しつつ非同期で動くのだという。それを可能にするにはシステムの各モジュールの相互依存を下げるマイクロサービスによる「疎結合」がカギだった。

例年CTO Nightの司会も務めていて思うのは、組織面でも技術的方法論の面でも、スタートアップ企業というのは新しい領域を切り開いている感じがあるなということだ。良く言えば過去に縛られずに「あるべき論」が堂々とできるということ。逆に、参考にすべき基準や経験豊富な人がいなかったりする中で、自分たちのアイデンティティを模索するということもあるだろう。

スタートアップ企業というのは、まっさらな状態からプロダクトや組織、文化を作っていくもの。そこで働くCTOたちは過去の失敗経験から「今度こそ」と理想とするものを追い求めたり、逆に何もかも初めての中で試行錯誤したりしていることが毎年発表からうかがえる。

システムや組織には強い「慣性」が働くので創業10年ともなると、時代の要請や技術トレンドに合わない部分が出てきたりする。そうした違和感を覚えている中堅企業のCTOや、大手エンジニアリーダー層たちにも是非、最新のスタートアップ各社の取り組みについて聞きに来てほしいと思う。CTO Nightへの観客としての参加は無料。CTOか、それに準じる役職者であれば誰でも歓迎だ(一般参加チケットを申し込んでいる方はCTO Nightにもご参加いただけます)。

今年登壇するスタートアップ企業と審査員は以下の通り。

プレイド(ウェブ接客プラットフォーム「KARTE」) 関連記事
クフ(クラウド労務管理「SmartHR」) 関連記事
Repro(アプリ解析・マーケティング「Repro」) 関連記事
・One Tap BUY(スマホ証券「One Tap BUY」) 関連記事
フロムスクラッチ(次世代マーケティングプラットフォーム「B→Dash」) 関連記事
カラフル・ボード(ファッション人工知能アプリ「SENSY」) 関連記事
BONX(ウェアラブルトランシーバー「BONX」) 関連記事
チカク(スマホ・テレビ遠隔連携コミュニケーションIoT「まごチャンネル」) 関連記事
フューチャースタンダード(遠隔カメラ画像処理プラットフォーム「SCORER」) 関連記事
ウェルスナビ(個人向け資産運用管理サービス「WealthNavi」) 関連記事

【CTO・オブ・ザ・イヤー2016審査員】
藤本真樹氏(グリー株式会社 取締役 執行役員常務 最高技術責任者)
安武弘晃氏(元楽天CTO / カーディナル合同会社)
松尾康博氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 ソリューションアーキテクト)
白井英氏(株式会社サイバーエージェント SGE統括室CTO)
和田修一氏(元nanapi CTO)
藤門千明(ヤフージャパンCTO)

CTO Night参加登録は、こちらから

【イベント名称】TechCrunch Tokyo CTO Night 2016 powered by AWS
【日時】TechCrunch Tokyo 2016初日の11月17日木曜日の夜19時30分スタート(90〜100分)
【コンテスト】登壇CTOによる1人7分の発表+3分のQAセッションを10社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2016」を選出する
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会・審査員による
【企画・協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
【チケット】無料(参加登録ページ
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

大型新ファンドの組成、エンジェルの活躍、セレブ投資の加速——投資環境の変化をTechCrunch Tokyoで学ぶ

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いよいよ開催まで1週間弱となったスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」だが、まだご紹介できていなかったセッションをここで紹介しよう。

1日目、11月17日の午後には、「変化するスタートアップ投資、その最新動向」と題したパネルディスカッションが開催される。スタートアップ企業の動きが活発になるのと同時に、ベンチャーキャピタルによる投資も増えてきたのがここ数年のスタートアップエコシステムのトレンドだった。だが最近ではそのトレンドにも変化が起きているという。

1つ例を挙げるならば、国内のスタートアップ投資額は増加しているのに、一方で資金調達を実施している企業数は減少している。つまり「集まるところには集まっている」が、資金を集められないスタートアップには厳しい状況になりつつあるということ。ジャパンベンチャーリサーチが9月に発表したところによると、2016年上半期の資金調達額は928億円で、これは2015年の約56%。今後順調に推移すれば2015年を上回る予想だ。だが一方で、資金調達を行った企業数は2014年1071社、2015年946社と減少傾向。2016年上半期は、調達金額不明なものを含めても373社(調達金額判明のみは275社)なのだそうだ。

ほかにも独立系VC、金融系VC、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)に加えて、大学系VCも大きなファンドを組成しており、成長に時間のかかる技術系スタートアップにもVCマネーが回り始めた。さらにはここ数年でイグジットした起業家が、エンジェル投資家としてスタートアップに対して投資を積極的に行うようにもなっている。このセッションでは、そういったスタートアップ投資の変化やトレンドについて、3人の登壇者から話を伺う予定だ。

インキュベイトファンド 代表パートナーの村田祐介氏は、ベンチャーキャピタリストとして投資を行う傍ら、業界の調査を実施しており、JVCA(一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会)などを通じてそのレポートを発表している。またコーチ・ユナイテッド ファウンダーの有安伸宏氏は、自社をクックパッドに売却して以降、エンジェル投資家として積極的に投資を進めている。2人には日本のスタートアップ投資をそれぞれの立場から語ってもらう予定だ。

さらにKSK Angel Fund パートナーの中西武士氏も登壇する。KSK Angel Fundは日本代表でもあるプロサッカー選手・本田圭佑氏が手がけるファンドで、中西氏はそのパートナーとして活躍している(と同時に、Honda Estilo USAでサッカースクールビジネスを展開している)人物だ。海外ではセレブリティによる投資が盛んだがその実情、そしてなによりも、本田氏が投資活動をはじめた思いなどを聞いていきたいと思う。

起業家を待つのは華やかな話題だけではない——TC Tokyoで聞く「スタートアップの光と影」

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開催まで3週間を切ったスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」。プログラムも公開したが、まだ紹介できていなかったセッションについてここでご紹介しよう。

11月18日午後に予定されているのは、国内有力ベンチャーキャピタリストの2人に登壇いただくパネルディスカッション「投資家から見たスタートアップの『光と影』」だ。

TechCrunchを含め、オンラインメディアで目にするスタートアップのニュースは、「IPOやM&Aといったイグジットをした」「新しいサービスが登場して、こんな課題を解決してくれる」「資金を調達して、今後の成長に向けてアクセルを踏んだ」といった基本的にポジティブなものが中心だ。

だが華やかにも見えるスタートアップの裏側は、実に泥臭い努力の積み重ねで成り立っていたりする。いや、努力したところでうまくいかないケースだって多い。

起業家は企画を練り、チームをまとめ、プロダクトを立ち上げる。さらに資金が足りなければ投資家を探すし、プロダクトをより大きく育て、最終的に買収や上場を目指すことになる。この1つ1つのステップには、数多くの選択や交渉が必要とされている。例えばチームを集めれば株式の取り分や方向性で揉めることもあるし、資金を集める際には投資家との激しい交渉が待っている。時には起業家におかしな条件を提示する「自称投資家」「自称コンサルタント」だってやってくるとも聞く。M&Aによるイグジットまでたどり着いたとしても、買収先との折り合いの付けどころを調整することにだって苦労が伴う。それぞれの局面での困難さに起業家は立ち止まりそうになる、いや立ち止まってしまうことだって少なくないのだ。

このセッションでは、そんな普段メディアでは触れられない、スタートアップの「影」の部分について触れていければと思う。ただし勘違いして欲しくないのは、何もゴシップめいたことを発信していきたいわけではない。起業家の成功と失敗、その両面を見てきたベンチャーキャピタリストの生々しい経験から、成長途中にある落とし穴に落ちないよう、「○○すべき」「○○すべからず」というヒントをもらいたいと思っている。

本セッションに登壇頂くのは、グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナーでChief Operating Officerの今野穣氏、iSGSインベストメントワークス代表取締役で代表パートナーの五嶋一人氏の2人。いずれも投資経験豊富なベンチャーキャピタリストだ。チケットの購入はこちらから。

日米同時上場を果たしたLINE、次の展開は? TechCrunch Tokyoで舛田氏に聞く

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

2016年に最も大きな話題となったIPO(新規上場)といえば、7月に東証一部とニューヨーク証券取引所(NYSE)に同時上場したLINEで間違いないだろう。11月17〜18日開催のイベント「TechCrunch Tokyo 2016」にもLINE取締役CSMOである舛田淳氏の登壇が決定したのでここでお知らせする。

同社のサービスの基盤となっているコミュニケーションアプリ「LINE」は、2011年の東日本大震災を契機に生まれたという。そんなLINEも今ではMAU国内6200万人、グローバル2億2000万人(2016年6月末時点)という巨大なサービスに成長した。

同社では上場に合わせて「スマートポータル」構想を発表。このLINEというアプリを入り口にして、ニュース(LINE NEWS)や音楽(LINE MUSIC)、マンガ(LINE マンガ)といったコンテンツ領域、決済(LINE Pay)やボット(LINE BOT API)、バイト探し(LINE バイト)といったライフ領域までを1つのプラットフォームとして経済圏を作っていくとしている。

また舛田氏は先日、招待制イベントのB Dash Campに登壇。今後は「NEXT LINE」と呼ぶべき新規事業を展開するため、スタートアップを含めた外部との提携やM&Aを行う可能性があるとも言及している(ちなみに舛田氏がチャレンジする領域の1つとして挙げたのは、「特化型のSNS」だった)。

TechCrunch Tokyoでは、そんなLINEのこれからの姿について舛田氏に聞いていきたい。同氏の登壇は11月18日午後になる予定だ。興味がある人は是非とも以下からチケットを購入頂きたい。

サイバーエージェント藤田社長がTechCrunch Tokyoに登壇、ネットテレビ局「AbemaTV」のこれからを聞く

開催まで1カ月を切った日本最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2016」。ここでまた新たな登壇者をご紹介したい。サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏だ。

藤田氏はインテリジェンスで活躍した後、1998年にサイバーエージェントを設立。2000年には当時最年少となる26歳で東証マザーズ市場に上場した。2014年には東京証券取引所市場第一部に市場変更を実施している。

広告営業の代理店業からスタートしたサイバーエージェントだが、当時堀江貴文氏が率いていたオン・ザ・エッヂとの協業でネット広告事業に進出。広告事業を走らせつつ、ブログサービスの「Ameba」、FX(2012年にヤフーに譲渡)、アドネットワーク、アバターサービス「アメーバピグ」、モバイルゲームやアプリ、定額制音楽配信サービス「AWA」など、グループ会社を含めてさまざまな事業を展開してきた。

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サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏

ブログやアプリなど、これまでも注力する領域を見つけては一気に踏み込み、事業を成長させてきた印象もあるサイバーエージェント。そんなサイバーエージェントが今最も注力しているのが、テレビ朝日と組んで展開するインターネットテレビ局「AbemaTV」だ。AbemaTVでは現在27のチャンネルで情報番組からニュース、アニメまでさまざま番組を配信している。4月の開局(サービスローンチ)から6カ月で、スマートフォン向けアプリのダウンロード数は900万件を突破している。

2016年は動画サービスが躍進した1年でもあった。エブリーの「DELISH KITCHEN」、delyの「Kurashiru」、スタートアウツの「もぐー」といった国産の分散型料理動画メディアが勢いを増し、その一方では、海外で潜行する料理動画メディア・Buzzfeedの「Tasty」が日本版をローンチした。また女性に強いC Channelの「C Channel」、HowTwoの「HowTwo!」、10代の支持を集めるDonutsの「MixChannel」、さらに動画広告プラットフォームのOPEN8やFIVE、YouTuberを束ねるUUUMやスリーミニッツなど、動画に関わるスタートアップの活躍がいろいろと聞こえてきた。AbemaTVはそんな各社の動きとは異なり、テレビ局と組み、リアルタイムでオリジナルコンテンツなどを配信する「インターネットテレビ局」というアプローチを行っている。

このセッションでは、AbemaTVの話を中心に、動画ビジネスを取り巻く環境、そしてサイバーエージェントの今後の展開について聞いていきたい。藤田氏はTechCrunch Tokyo 2016初日の11月17日午後に登壇予定だ。

「CTO・オブ・ザ・イヤー2016」登壇者決定、参加者チケット登録も開始しました!

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今年11月もまたスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」におけるイベント内イベントとして、「TechCrunch Tokyo CTO Night 2016 powered by AWS」を開催するというのはお伝えした通り。登壇者も参加者も、キホンみんなCTOというイベントだ。

CTOばかりが集まって技術的観点からビジネスや経営にいかにコミットしてきたかというピッチを披露して讃え合う。今年も経験豊富なCTO審査員によって、今年最高に輝いていたCTOに対して「CTO・オブ・ザ・イヤー2016」の称号を贈りたいと考えている。

今年の登壇企業は以下のとおりだ。

プレイド(ウェブ接客プラットフォーム「KARTE」) 関連記事
クフ(クラウド労務管理「SmartHR」) 関連記事
Repro(アプリ解析・マーケティング「Repro」) 関連記事
・One Tap BUY(モバイル証券「One Tap BUY」) 関連記事
フロムスクラッチ(次世代マーケティングプラットフォーム「B→Dash」) 関連記事
カラフル・ボード(ファッション人工知能アプリ「SENSY」) 関連記事
BONX(ウェアラブルトランシーバー「BONX」) 関連記事
チカク(スマホ・テレビ遠隔連携コミュニケーションIoT「まごチャンネル」) 関連記事
フューチャースタンダード(遠隔カメラ画像処理プラットフォーム「SCORER」) 関連記事
ウェルスナビ(個人向け資産運用管理サービス「WealthNavi」) 関連記事

イベントは11月17日木曜日に渋谷ヒカリエで19時半からスタートする。1社あたり7分の発表時間と3分の質疑で合計10分。約100分ほど技術や組織、ビジネスの話をする、とっても濃いイベントだ。

参加登録はCTOもしくはそれに準じるエンジニア職の人に限らせていただいているが、イベント参加自体は無料。イベント終了後には、TechCrunch Tokyo 2016本編の懇親会とも合流するので、ほかのスタートアップコミュニティーの人たちとの交流を楽しんでいただければと思う。また、参加登録時にはJublia(説明はこちら)の登録も促している。積極的にほかの人たちと交流したいという人は是非お使いいただければと思う。

なお、超早割チケットも含めてTechCrunch Tokyo 2016の入場チケットをお買い上げいただいた参加者の皆さんは、CTO Nightにももちろん参加できる。会場は最大1000人近く入れるほど広いので、ぜひCTOたちのアツいバトルを見に来てほしい。

CTO Night参加登録は、こちらから

【イベント名称】TechCrunch Tokyo CTO Night 2016 powered by AWS
【日時】TechCrunch Tokyo 2016初日の11月17日木曜日の夜19時30分スタート(90〜100分)
【コンテスト】登壇CTOによる1人7分の発表+3分のQAセッションを10社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2016」を選出する
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による
【審査員】順次発表予定
【企画・協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
【チケット】無料(参加登録ページ
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

スタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo」、白熱した昨年のセッションをおさらい

超早割チケットの販売終了まで1週間を切った、スタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」。11月17〜18日に東京・渋谷ヒカリエで開催するこのイベント、これまでにも概要はお伝えしているが、実際昨年はどのようなセッションが盛り上がったかご紹介したい。

50億円を捨ててスタートアップした男・マネックス松本氏

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この数年、TechCrunch Tokyoでは国内、海外の企業家それぞれ1人ずつが基調講演を行っている。2015年、海外の企業家としてはコミュニケーションロボットを手がける米JiboのCEO、Steve Chambers氏が登壇した。国内の企業家として登壇したのは、こちらでご紹介するマネックス証券の松本大氏だ。

マネックス証券は1999年の設立。ゴールドマン・サックス(GS)のゼネラルパートナーであった松本大氏が、ソニーとの共同出資で立ち上げたネット証券だ。当時の松本氏はGSの上場に伴い、10億円とも50億円とも言われる報酬を得られる予定だったそうだが、それを蹴っての起業だった。松本氏はこの創業ストーリーに加えて、起業の際の市場やタイミングの重要性、起業を支援してくれたソニー代表取締役の出井伸之氏との関係、起業家へのメッセージなどを語った。

松本氏の登壇レポートはこちら

起業初期は海外進出よりも開発を——99designs・Llewellyn氏

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デザインに特化したクラウドソーシングを手がける豪メルボルン発のスタートアップ・99designs。リクルートからの出資を受けて日本進出したばかりだった同社からは、CEOであるPatrick Llewellyn氏が登壇。デザイナー、フリーランスを取り巻く環境や、成長のためのマーケット拡大といったテーマでスピーチを行った。

早くにオーストラリアから米国に進出したという自身の経験からも、海外市場の重要性訴える99designsだ。開発初期段階での海外進出については慎重であるべきだと説く。そしていざ海外に進出する際、現地の市場で信用を得るためにどのようにローカライズを行うべきかというノウハウに触れた。

Llewellyn氏の登壇レポートはこちら

ピュアなCtoCサービスがヒット、メルカリ・山田氏

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米国App Storeのトップ3位にもランクインしたと話題のメルカリも、昨年のTechCrunch Tokyoに登壇してくれた。代表取締役の山田進太郎氏は、創業期の楽天で経験を積んだ後にウノウを設立。同社は米Zyngaに買収されたが日本での事業を撤退。その後1年の充電期間を経てメルカリを立ち上げた。

当時から急成長を続けるメルカリだが、山田氏はその理由について「ピュアなCtoCサービスであるから」と説明する。それはどういう意味か。またこのほかにも面倒なやり取りを「仕組み化」することなどでユーザーが付いてきているという、成長のポイントについても語ってくれた。

山田氏の登壇レポートはこちら

クロスボーダーM&Aを実現したエウレカ・赤坂氏

代表取締役CEOの赤坂優氏

2015年にあったスタートアップのイグジットで、もっとも話題を集めたのが米IACグループの傘下となったエウレカだ。マッチングサービス「pairs」、カップル向けアプリ「Couples」を手がける同社。共同創業者で代表取締役(現在は退任)の赤坂優氏は、pairsが競合サービスの8倍の頻度でマッチングが行われるまでのサービスに成長していると語ってくれた。

エウレカを買収したIACグループは、matchやTinderをはじめとしたマッチングサービスを世界で展開する企業。赤坂氏はクロスボーダーでの買収という選択肢を選んだ理由や、実際に買収されてからの状況などについても語った。

赤坂氏の登壇レポートはこちら

今年も注目セッション、企画が盛りだくさん

2016年の登壇者については9月以降に発表していく予定だ。今年も気鋭の起業家、投資家らが登壇する予定なほか、メインイベントとなる創業3年未満、サービスローンチ1年未満限定のプレゼンコンテストである「スタートアップバトル」、スタートアップのCTOが集う「CTO Night」などさまざまな展示なども予定している。気になる人は急いでチケットを購入して欲しい。定価の約半額となる超早割チケットの販売は今月いっぱいとなっている。

8/31 23:59まで!TechCrunch Tokyo 2016「超早割チケット」締め切り間近

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東京・渋谷ヒカリエで11月17日(木)、18日(金)の2日間にわたって開催する「TechCrunch Tokyo 2016」だが、超早割チケットの販売期間が迫ってきたのでお知らせしたい。

超早割チケットは、まだ登壇者などプログラムを公表する前の期間限定割引チケットだ。一般チケット3万5000円(税込み、以下すべて同じ)のところ、超早割チケットは8月31日まで約66%オフの1万5000円となっている(9月以降の前売りチケットは2万5000円)。

プログラムは9月以降に発表するが、例年通り、国内外の注目スタートアップの起業家や投資家が登壇する。創業3年以内のスタートアップが、今年公開(予定も含む)したてのプロダクトをプレゼンで競い合う、毎年恒例の「スタートアップバトル」も開催する。

イベント前に「気になる参加者」とアポが取れる

昨年との大きな違いの一つとしては、参加者同士のネットワーキングを促進させるツール「Jublia」(ジュブリア)を導入することだ。イベント当日は人が多くて、目当ての人となかなか会えなかったりすることもあるが、イベント前に面会のアポイントを取ることができる。

具体的には、チケット購入時にJubliaの利用を希望した参加者が、Jublia上で気になる人や企業にコンタクトを取り、相手も合意すれば、会場に用意するミーティングエリアで指定時刻に落ち合える。

われわれが開催するイベントがきっかけで起業したり、投資や提携が決まったという話を聞く機会が増えているが、そういう出会いを後押ししたいと思っている。

今回Jubliaを取り入れるにあたってオンラインチケット管理サービスの「EventRegist」(イベントレジスト)を利用している。

EventRegistに登録したユーザー情報は、登録者の同意に基いて一部(名前、社名、職種など)がJubliaにもインポートされる仕様になっている。イベント開催1カ月前の10月中旬ごろ、Jubliaのアクティベートを促すメールが登録者に届く。

ここでJubliaにログインするとアカウントが有効となり、ほかの参加者の情報が見えるようになる。以下がJubliaの簡単な説明資料だ(「商談」となっているは、これは一般的ビジネスイベントを想定した例だから)

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探している機会(投資・調達や提携、採用・転職など)に応じて職種や企業規模などでフィルタリングしてミーティング相手を探すことができる。もちろん、Jubliaを利用しないという選択も可能だが、どうせ平日にイベントに足を運んでいただけるのであれば積極的に交流の場として活用いただければと考えている。

資金調達や世界デビューも、TechCrunch Tokyo「スタートアップバトル」でつかめる4つのチャンス

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11月17日、18日に東京・渋谷で開催する「TechCrunch Tokyo 2016」。その目玉企画である「スタートアップバトル」(以下、バトル)のエントリー企業を募集中だ。

バトルを簡単に説明すると、スタートアップが今年ローンチした、もしくはローンチ予定のプロダクトをプレゼンで競い合うというもの。昨年は105社の応募があり、書類審査に通過した12社が決勝に進出した。

今年は、書類審査に通過した約20社が参加する「ファーストラウンド」を11月17日に、ファーストラウンドを勝ち抜いた5社が優勝を競う「ファイナルラウンド」を11月18日に開催する。優勝チームには賞金100万円を贈呈する。出場するスタートアップには賞金以上に貴重なチャンスが得られる可能性があるので、実話をもとにお伝えしようと思う。

世界デビューのチャンス

最近では本家TechCrunchで日本のスタートアップ情報を取り上げることも増えている。バトルには毎年、本家の編集者が審査員として米国からやってきていて、本家TechCrunchでもレポートしているので、世界にアピールするチャンスがつかめるかもしれない。

資金調達のチャンス

TechCrunch TokyoにはVCや投資家が多数参加する。そのため、バトル出場をきっかけに資金調達が決まったスタートアップもある。今年7月にソフトバンクから10億円を調達したスマホ証券のOne Tap BUYもその1社。同社の林和人社長は「バトルが運命の出会いの場となり、資金調達につながった」と語っている。

事業提携のチャンス

TechCrunch Tokyoには、スタートアップの業界動向に注目している企業の新規事業担当者も多数来場する。家庭用プリンターで電子回路を印字するプロダクトで、2014年のバトル王者に輝いたAgicの清水信哉社長は「優勝後多くの潜在顧客からのコンタクトがあった」といい、その後の事業転換を成功裏に行えたと振り返る。

新規ユーザー獲得のチャンス

バトルの模様は、テクノロジーの最新動向に興味を持つ来場者にアピールできるだけでなく、本誌でも詳細にレポートする。そのため、プロダクトをローンチしたてのスタートアップにとって、ユーザー獲得のチャンスと言える。昨年のバトル王者で、クラウド労務管理サービス「SmartHR」を運営するKUFUの宮田昇始社長によれば、バトル出場からわずか1日で150社以上のユーザー企業を獲得。「出ない理由はないですよね?」と出場を勧めている。

応募資格は次の通り

・未ローンチまたは2016年1月以降にローンチしたデモが可能なプロダクトを持つスタートアップ企業(2015年12月以前にベータ版をローンチした企業でも、正式版を2016年1月以降に公開したスタートアップ企業は応募可能)

・創業年数3年未満(2013年11月以降に創業)で上場企業の子会社でないこと。

応募方法はこちら

今年は「仮登録」と「本登録」の2種類を用意した。仮登録は企業名と担当者名、メールアドレスを入力するだけ。本登録は代表者のプロフィールやプロダクトの概要、プロダクトの優位性などを入力してもらう。

昨年までは「本登録」のみだったが、「あとで登録すればいいか」と先延ばしにしたせいで締め切りが過ぎてしまった……と、あとから連絡をもらうケースも少なくなかった。こうした悲劇を防ぐためにも、今年は「仮登録」してもらえれば、我々の方でリマインドしようというわけだ。もちろん、いきなり「本登録」していただくのも大歓迎である。

スタートアップバトルの応募要項は以下のとおりなので、条件に当てはまるスタートアップは是非、応募ページから早めに申し込んでほしい。バトル仮登録は2016年8月31日(水)23時59分まで、バトル本登録は2016年9月30日(金)23時59分まで受け付けている。

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審査について

・審査基準: プロダクトの市場性やビジネスの成長性、またビジョンを実現していけるチームであるかを基準とします。

・事前審査:一次審査は書類審査とし、その後一部評価に必要な情報が足りない場合はインタビューやデモを見せていただく場合があります。選考を通った応募企業には運営事務局から10月7日までに審査結果を通知します。

・ファーストラウンド: TechCrunch Tokyo 2016の1日目(11月17日)に行います。

・ファイナルラウンド: TechCrunch Tokyo 2016の2日目(11月18日)に行います。

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「TechCrunch Tokyo 2016」ってどんなイベント? 見どころをご紹介

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TechCrunch Japanが開催する国内最大級のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」。今回で6回目となるこのイベントには、昨年2000人超が参加した。

今年も11月17〜18日に東京・渋谷ヒカリエにて開催予定で、すでに超早割チケットの販売も開始している。まだ非公開ながら著名な起業家やスタートアップ関係者の登壇も確定しつつあるのだけれど、ここでは昨年の様子をもとにイベントの見どころをお伝えしたい。

気鋭起業家や業界関係者が登壇するセッション

TechCrunch Tokyoの中心となるのは、国内外の起業家やスタートアップ関係者を中心にしたセッションだ。過去を振り返れば、まだ日本に参入する前のUberAirbnb、マッチングサービスのTinderなど、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの海外スタートアップが登場している。昨年のキーノートスピーチには、現在コミュニケーションロボットを開発するJiboが登壇。会場を賑わせた。

もちろん国内スピーカーも盛りだくさんだ。昨年はキーノートスピーチにマネックス証券の松本大氏が登壇。当時務めていたゴールドマン・サックスの上場で数十億円とも言われた報酬が手に入るはずだったがそれを蹴って起業したというストーリーから、経営論などが語られたほか、LINEを退任してC Channelを立ち上げた森川亮氏、ユーザーを拡大し続けるフリマアプリのメルカリを運営する山田進太郎氏、米IACグループが買収したエウレカの赤坂優氏など、昨年注目を集めた起業家達が続々登場している。

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立ち見客続出のプレゼンコンテスト「スタートアップバトル」

TechCrunch Tokyoの目玉と言えるのが「スタートアップバトル」。創業3年未満、プロダクトローンチ1年未満という非常に限られた条件のスタートアップに限定したプレゼンコンテストだ。毎回立ち見客が出るほどで、会場は文字通り熱気に包まれる。昨年は合計12社がプレゼンを繰り広げ、労務管理クラウドの「SmartHR」を手がけるKUFUが見事優勝を勝ち取った。今年はイベント初日の11月17日に約20社のスタートアップでファーストラウンドを開催。その中の上位5社が18日のファイナルラウンドに登壇する。なおバトルの参加者は現在絶賛募集中。簡易登録の制度も用意しているので、興味あるスタートアップはこちらから気軽に応募して欲しい。

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スタートアップの今を一気に学べるデモブース

TechCrunch Tokyoの見どころはセッションだけじゃない。気鋭のスタートアップを一度に知ることができるデモブースも魅力だ。今年は会場となる渋谷ヒカリエの通路とホール1つをブースに充てているので、一周すれば文字通り日本のスタートアップトレンドを知ることができるはずだ。そのほかにもスポンサーによるブースやVRコンテンツを体験できるブースなどを準備中だ。

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起業家の生の声を聞ける「TC Lounge」

セッションの登壇者により近い距離で話を聞けるのが「TC Lounge」だ。昨年「Fireside Chat」という名称で、セッション後の登壇者の話を身近に聞けるミニステージを用意していたのだが、今年はそれをパワーアップ。著名人に直接質問をしたり、インタラクティブなセッションを楽しめる場を用意したいと思っている。

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このほかにも、今回導入するマッチングツール「Jublia」の利用者向けのミーティングスペースやさまざまな来場者と交流できるパーティーなど、TechCrunch Tokyoでは多くの企画を用意している。もし興味をもった人は、是非ともお得な超早割チケットを今すぐゲットして欲しい。販売は今月いっぱいとなっている。

TechCrunch Tokyoでスタートアップ優待のデモブースを募集中

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TechCrunch Tokyo 2016」は、今年もスタートアップを応援します――。創業3年以内の企業が、格安でプロダクトのお披露目ができる「スタートアップデモブース」の出展募集を開始したので、お知らせしたい。

ブースを出すメリットとしては、起業家や投資家といったスタートアップ関係者のコア層だけでなく、TechCrunch読者というアーリーアダプター層にアピールできることだろう。それから、イベントに足を運んでくれる大手企業で新規事業を開発している方々との出会いだったり、法人顧客の獲得も見込めるかもしれない。

ブース出展チケットは1日券と2日通し券を用意した。1日券はイベント初日(11月17日)、もしくはイベント2日目(11月18日)のいずれかの日に限り、ブースを出展するためのチケットだ。2日通し券はイベント初日、2日目にブースを出展できる。どちらのチケットでも購入者はイベント本編に2日間とも参加することが可能だ。

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ブース出展料は1日券が2万円、2日通し券が3万5000円。この中には、2人分の参加チケットが含まれる。あくまでスタートアップ応援の一環なので、出展条件の「創業3年以内」を満たしていても、上場企業の子会社だったり、日本進出した外資系企業の出展はお断りしている。スタートアップ以外の企業には各種スポンサーパッケージをご用意しているのでご検討いただきたい。

イベント名:TechCrunch Tokyo 2016
イベント開催日:11月17日(木)、18日(金)
会場:渋谷ヒカリエ(東京都渋谷区渋谷2−21−1)
出展料:1日券は2万円、2日通し券は3万5000円(税込み。2名分の参加チケットが含まれます)
条件:創業3年以内の企業
主催:AOLオンライン・ジャパン株式会社
問い合わせ先:info@tc-tokyo.jp

TechCrunch Tokyo 2016「スタートアップバトル」エントリーを開始しました

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TechCrunch Japanは11月17・18日、東京の渋谷ヒカリエで「TechCrunch Tokyo 2016」を開催する。本日から、お得な「超早割チケット」を販売開始したが、例年、イベントで最も大きな盛り上がりを見せる「スタートアップバトル」(以下、バトル)の参加企業の登録もあわせてスタートしたのでお知らせしたい。

バトルを簡単に説明すると、スタートアップが今年ローンチした、もしくはローンチ予定のプロダクトをプレゼンで競い合うというもの。昨年は105社の応募があり、書類審査に通過した12社が決勝に進出した。

今年は、書類審査に通過した約20社が参加する「ファーストラウンド」を11月17日に、ファーストラウンドを勝ち抜いた5社が優勝を競う「ファイナルラウンド」を11月18日に開催する。優勝チームには賞金100万円を贈呈する。

応募チームに特典

書類選考を通過した全チームには、会場の展示ブースを無償で提供する。惜しくもファーストラウンド出場を逃したチームの中でも、VCを中心に構成される予選審査員が「これは」と思った何社かには同様の特典を用意する予定だ。

それともうひとつ。昨年は米国のTechCrunchでも、スタートアップバトルの様子をロングレポートしている。今年も米国から本家TechCrunchスタッフが来日する予定なので、世界デビューを目論んでいるスタートアップにとっては大きなチャンスだ。最近では本家TechCrunchで日本のスタートアップ情報を取り上げることも増えている。

応募方法

今年は「仮登録」と「本登録」の2種類を用意した。仮登録は企業名と担当者名、メールアドレスを入力するだけ。本登録は代表者のプロフィールやプロダクトの概要、プロダクトの優位性などを入力してもらう。

昨年までは「本登録」のみだったが、「あとで登録すればいいか」と先延ばしにしたせいで締め切りが過ぎてしまった……と、あとから連絡をもらうケースも少なくなかった。こうした悲劇を防ぐためにも、今年は「仮登録」してもらえれば、我々の方でリマインドしようというわけだ。もちろん、いきなり「本登録」していただくのは大歓迎である。

スタートアップバトルの応募要項は以下のとおりなので、条件に当てはまるスタートアップは是非、応募ページから早めに申し込んでほしい。

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応募資格

未ローンチまたは2016年1月以降にローンチしたデモが可能なプロダクトを持つスタートアップ企業(2015年12月以前にベータ版をローンチした企業でも、正式版を2016年1月以降に公開したスタートアップ企業は応募可能)

創業年数3年未満(2013年11月以降に創業)で上場企業の子会社でないこと

応募期間

・バトル仮登録は2016年8月31日(水)23時59分まで

・バトル本登録は2016年9月30日(金)23時59分まで

審査について

・審査基準: プロダクトの市場性やビジネスの成長性、またビジョンを実現していけるチームであるかを基準とします。

・事前審査:一次審査は書類審査とし、その後一部評価に必要な情報が足りない場合はインタビューやデモを見せていただく場合があります。選考を通った応募企業には運営事務局から10月7日までに審査結果を通知します。

・ファーストラウンド: TechCrunch Tokyo 2016の1日目(11月17日)に行います。

・ファイナルラウンド: TechCrunch Tokyo 2016の2日目(11月18日)に行います。

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今年も決めるぞ「CTO・オブ・ザ・イヤー2016」―TechCrunch Tokyo CTO Nightを11月に開催

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毎年11月に開催しているスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo」ではイベント内イベントとして、2013年から「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」を開催してきた。駆け出したばかりのスタートアップにも、痛みを感じるほどのスピードで組織が成長するスタートアップにも、それぞれ異なる技術的課題があるだろう。そうした技術的課題や、エンジニアチームの組織上の課題に、経営にコミットした立場から向き合う「CTO」(Chief Technology Officer)という職がある。

このCTOという職種は担っている役割の重要さの割に十分に光があたってこなかった。TechCrunch Japanでは、そう考えている。そこで2014年から「CTO・オブ・ザ・イヤー」という表彰イベントを続けている。自薦・他薦によって選ばれたCTOたち約10人にステージに登壇していただいて、ピッチ・コンテスト形式で日々の仕事の成果をシェアし、たたえ合う場だ。同業者だからこそ分かる苦労話もあるだろうし、同じプロとして惜しみない賞賛を送りたくなるような仕事もあるだろう。

昨年の例でいえば、「CTO・オブ・ザ・イヤー2015」に選ばれたソラコムの安川健太氏は「ソラコムの裏側」として開発チームのワークスタイルを披露して賞賛を浴びた。ソラコム開発チームは1日1回30分の全体進行のシェアをする以外はSlackで連携し、非同期で動くチームとなっているという。クラウド側システムも一枚岩のシステムではなく、いわゆる「疎結合」のサービス群として実装されていて、モジュールの開発や運用が非同期で進む。こうすることで開発速度を上げているという話だった。組織図は製品の内部構造に似るというが、分散型のアーキテクチャーと、非同期分散型の組織運営は不可分の話なのだろう。その後のソラコムの開発、ビジネス展開速度に眼を見張るものがあるのはTechCrunch Japan読者ならご存知の通りだ。

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2015年、CTOオブ・ザ・イヤーに選ばれたソラコムCTOの安川健太氏

これまでのCTO・オブ・ザ・イヤー登壇企業は以下の通り。

【CTO・オブ・ザ・イヤー2014】
株式会社ユーザベース(SPEEDA/NewsPicks) 竹内秀行CTO

【CTO Night登壇企業(2014)】
Beatrobo, Inc.(PlugAir) 竹井英行CTO
freee株式会社(freee) 横路隆CTO
Tokyo Otaku Mode Inc.(Tokyo Otaku Mode) 関根雅史CTO
ヴァズ株式会社(SnapDish) 清田史和CTO
株式会社オモロキ(ボケて) 和田裕介CTO
株式会社Moff(Moff Band) 米坂元宏CTO
株式会社エウレカ(pairs) 石橋準也CTO
株式会社DoBoken(ZenClerk) 磯部有司CTO

【CTO・オブ・ザ・イヤー2015】
株式会社ソラコム (SORACOM Air) 安川健太CTO

【CTO Night登壇企業(2015)】
BASE株式会社 (PAY.JP) 藤川真一CTO
Increments株式会社 (Qiita) 高橋侑久CTO
株式会社トランスリミット (Brain Dots) 松下雅和CTO
株式会社トレタ (トレタ) 増井雄一郎CTO
株式会社VASILY (iQON) 今村雅幸CTO
株式会社フォトシンス (AKERUN) 本間和弘CTO
株式会社エアークローゼット (airCloset) 辻亮佑CTO

さて、3年目の開催となるCTO・オブ・ザ・イヤー2016は、11月17日夜に東京の渋谷・ヒカリエで開催予定だ。イベント本編であるTechCrunch Tokyo 2016は有料だが、CTO Night単体への参加であれば無償。CTOの皆さんには是非仕事帰りに遊びに来てほしいと思っている(参加登録開始は近日!)。ぶっちゃけエンジニアとしてのキャリアやジョブ・セキュリティーを考える上で、まだ数自体多くない同業者たちの取り組みを知り、横につながっておくことは重要なんじゃないかと思う。

自薦・他薦による登壇スタートアップ企業の応募も開始しているので、われこそはというCTOは是非 tips@techcrunch.jp までお知らせしていただければと思う。

【イベント名称】TechCrunch Tokyo CTO Night 2016 powered by AWS
【日時】TechCrunch Tokyo 2016初日の11月17日木曜日の夜19時30分スタート(90〜100分)
【コンテスト】登壇CTOによる1人8分の発表+3分のQAセッションを8社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2016」を選出する
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による
【審査員】順次発表予定
【企画・協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
【チケット】無料(近日登録開始予定)
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

電話利用のシンプル決済から店舗行列受付システムまで、TC Tokyoハッカソン優秀作をご紹介

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今年もTechCrunch Japanでは11月15日、16日の2日間にわたって、東京・お台場のコワーキングスペースMONOでハッカソンを開催した。今回は84名が参加、グループ参加または1人での参加「ぼっちソン」で合わせて37チーム、37個のプロダクトが生まれた。その中から優秀作品として選ばれた5チームには、TechCrunch Tokyo 2015のイベントで5分間のライトニングトークを披露してもらった。

それでは当日のハッカソンの模様と、優秀作品5作品を紹介しよう。

「まずはスマホを裏返してください」

われわれのハッカソンでは、ハック開始の前に、紙とペンを使って、実際に手を動かしてアイスブレイクしてもらうのが恒例となっている。このアイスブレイクはチーム編成のきっかけでもある。去年のお題は「ドラえもんのひみつ道具を一筆書きで書く」だった。今年のお題はというと、「隣の人が知らないアプリを書く」だ。いきなり司会者から「スマホを裏返してください」と言われた参加者からは「ええ?」との声が聞こえてきた。日頃からアプリを研究しているエンジニアたちにとってはある意味難しいお題だったかもしれない。

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なんのアプリかみなさんはお分かりだろうか?

緊張がほぐれたところで、テーマ発表。

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テーマは特になし。強いて言えば、TechCrunchに掲載されそうなもの。10種類を超える提供APIの中から1つ以上を使っていれば、あとは自由だ。なんだかモヤっとしたお題。どんなプロダクトができるのか。

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2日間のハックが始まった。

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APIの説明を聞きに来る参加者たち

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そして夜。

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黙々と作業を進める。
ハックはこの後も夜を徹して行われた。今年は3分の1を超える人が泊まり込みでハックを続けた。

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朝方に見かけるこんな光景も、もう毎年のことだ。

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最後の追い込み。雰囲気がピリピリしてくる。
発表では、Pepperがうまく反応してくれず、プロダクトの発表うまくできなかったチームや、使用した外部サービスがメンテナンスに入ってしまったチームがあったりと、ハプニングもあったが、1時間半も予定時間を超えて全プロダクトがお披露目された。

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ひとことで感想を言えば、個性的で、完成度が高い。今すぐリリースしてもいいのではないか、と審査員から感想が出たプロダクトもあった。そんな37個の中から優秀作品に選ばれた5作品を紹介する。

1.Nomadify(ノマディファイ)

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Nomadifyは電話番号を使って、店舗などで待ち行列に登録できるアプリだ。レストランなどでよく見る紙のウェイティングリストの代わりに、オンラインでウェイティングリストに名前を記入しておくことができる。自分の番が近くづくと、登録した電話番号にシステムから電話がかかってくる。リストは公開されているので、自由に書き込み・削除ができる。自分の電話番号を使っているので、他の人に勝手に名前を削除されたり、割り込みされたりということがない。自分の番が来て電話が鳴るまで、店舗の受付から離れることができる。 一般的な受付システムだと、まずユーザー登録ということも少なくないが、そうした面倒がない。

2.PayCall(ペイコール)

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PayCallはECサイトなどで電話を使って簡単に決済ができるようにするサービスだ。ECサイトの購入画面などに表示された電話番号に自分の電話から発信すると、事前に登録してある個人情報がECサイト側に渡って決済も完了する。電話番号を認証として利用しているということだ。Webブラウザの購入画面などでセッションが切れたりして、面倒な個人情報の入力を何度も行わなければならないのを面倒に感じた経験から、このサービスを思いついたという。

3. kitayon(キタヨン)

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トレタのエンジニアチーム・風呂グラマーズが「遊び」で、「真面目に」作った、オフィス向け受付アプリ。オフィス訪問者は前もって招待コードを発行してもらう。来社時に招待コードをiPadに入力すると、招待者のSlackなどに通知がいく仕組みだ。似たようなサービスには米国スタートアップのEnvoyがあるが、Envoyが使いにくかったことから自分たちで作ろうということになったそうだ。kitayonはすでに6社の導入が決定したという。

4.Inc(インク)

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インディーズのアーティストとお店とをつなぐプラットフォーム。インディーズとして活動するアーティストは自分の音楽を公開したり、グッズ販売をすることができ、他方、お店の人は店舗で流す音楽を探すことができる。お店の人は自分で作ったプレイリストを公開することで利益を得ることもできる。アーティストとアーティストを探して紹介する人、双方にメリットが生まれるプラットフォームだ。

5.RTNope-D(アールティーノープディー)

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音声認識を使ったメモアプリ。かなり速い速度で喋っても単語を拾ってくれる。そこから関連する単語を表示させたり、画像を検索したり、関連キーワードを検索することもできる。商品名が出て来れば、そこから買い物だって可能だ。製作者は、もともとは医療現場で医師と患者がコミュニケーションを取る場面を想定して作ってみた、とのこと。機能がシンプルな分、使い方を広く考えられるプロダクトだ。

われわれはTechCrunch Japanとして、ハッカソンを開催する明確な5つの理由があった。理由の1つとして「エンジニアリングをバックグラウンドに持つ人たちに、起業やスタートアップのカルチャーに触れる機会を提供したい」としていたのだが、実際にハッカソンで優秀作を生み出した人たちはTechCrunch Tokyoのイベント開催中、会場でほかの起業家や投資家と話をするなど交流していただけたのではないかと思う。また来年も、多くのエンジニアの皆さんがハッカソンに参加してくださることを楽しみにしている。

CTO・オブ・ザ・イヤー2015は「疎結合で非同期なチーム」を率いるソラコム安川健太CTOに

TechCrunch Tokyo 2015の1日目である2015年11月17日、今年で2回目となる「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS―技術によるビジネスへの貢献:CTO・オブ・ザ・イヤー選出LT」が催された。スタートアップのビジネスに技術で貢献するCTO(最高技術責任者)を称えようという趣旨の場である。

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まず結果をお伝えする。今年の優勝者はIoT向けモバイル通信サービスをクラウド上に構築して提供するスタートアップであるソラコムの安川健太CTOである。司会からは「非常に接戦でした」のコメントがあった。ソラコムは抜群の事業アイデアと鮮やかな事業立ち上げが強い印象を残した。とはいうものの「接戦」との表現は、他社のCTOも高水準のトークを繰り広げたことを示している。以下、その内容を紹介していこう。

このCTO Nightの審査員は次の面々だ。グリー 藤本真樹CTO、DeNA 川崎修平取締役、クックパッド 舘野祐一CTO、はてな 田中慎司CTO、サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO、アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博氏(ソリューションアーキテクト)。以下、LT(ライトニングトーク)の登壇順に内容を紹介する。

「書いたことがなかった」Pythonベースの決済サービスを立ち上げ―BASEの藤川真一CTO

オンラインショップ開設サービスのBASEの藤川真一CTOは「Pythonを書いたことないCTOがPythonベースの決済サービスを始めるまで」と題して発表した。

同社はオンライン決済サービスPAY.JPをこの2015年9月に立ち上げた。PAY.JPは、RESTful Web APIでカード決済をしてくれる。「米国の決済サービスStripeやWebPayと互換性があるのでスイッチングコストがほぼゼロで移行できる」。スタートアップに対して手軽な決済サービスとして提供するだけでなく、将来的には「日本のエスタブリッシュ金融パートナーとの連携」も視野に入れる。単に同社のオンラインショップで活用するだけでなく、いわゆるFinTechの文脈で野心的な展開を考えているのだ。「新しいインターネットの経済を創りたい」。

同社は2014年12月にオンライン決済サービスのピュレカを買収し、そのチームとソフトウェア資産を継承してPAY.JPを立ち上げた。CTOの藤川氏によれば「CEOからメッセージが来てピュレカを知り、7分で買収の決定をした」そうだ。

この買収により直面した課題は、プログラミング言語と開発者文化が異なるチームとソフトウェア資産の評価とマネジメントだ。BASEの構築には言語としてPHP、フレームワークとしてCakePHPを使っていたのに対して、ピュレカの決済サービスはPythonで構築されていた。「CTOとして、それまで知らなかった技術、プロダクトをどうするか」という課題を乗り越えるためのチャレンジについて藤川氏は語った。

異なる開発者文化で作られたピュレカのソフトウェア資産を評価するため、「ピュレカ創業者と仲良くなったり、(Pythonに詳しい)柴田淳さん、寺田学さんにコードレビューをお願いしたり」と藤川氏は言う。日本のソフトウェア開発者コミュニティの人脈を活用して技術のデューデリジェンスを行った格好だ。

次に藤川氏は、「Pythonという技術を好きになる」ための行動を始めた。日本国内のPythonコミュニティで最大のカンファレンスであるPyCon JP 2014にBASEとして出展した。ただし、この時点では自社のPython活用プロダクトはまだできていなかったため、「脆弱性診断ということで、CakePHPのプロダクトを好きにクラックしていいよ」という出展内容とした。ここでPythonコミュニティと「仲良くなった」ことで、藤川氏は翌年のPyCon JP 2015ではある企画のモデレータ役を担当している。

このLTで、藤川氏は「買収する技術への包容力」として次の3点を挙げる。(1) チームメンバーを信頼する。(2) 開発技術を好きになる。(3) 最後はケツを持つ覚悟。企業をプロダクトごと買収するということは、相手のチームと、そのバックグラウンドにある技術文化を受け入れることだ。文化が異なる企業を買収し、無事サービス開始までこぎつけた藤川氏のトークは「やり遂げた」自信を感じさせる内容だった。

「Qiitaを良くする」ことに注力―Incrementsの高橋侑久CTO

エンジニア向け情報共有サービスのQiitaのIncrementsは、2013年4月に高橋CTOが参加した時点で、エンジニアはCEOとCTOの2名だけという会社だった。「1人CTO」から始めた高橋氏は、少人数組織でのCTOの役割は「まずプロダクトを作ること。次にチームを作ること」と語る。また「同じことをずっとやっているのはつらいので、何かを自動化することを意識的にやっていた」とも語る。チーム作りは「大事にしたい価値観を共有できて、それを求める能力を持っている人を、なんとかして連れてくる」ことを続けた。そのために「どういう人と一緒に働きたいか」をリストにした。自律的に行動でき、オープンソースに積極的、といった基準だ。そして求める能力は、「学習能力と意欲があって既存のメンバーにない能力を持っている人だと考えた」。

最近、元Googleの及川卓也氏がIncrementsにジョインしたことが話題になった。「やったな! という感じです」。このようにプロダクトへの思い、チームへの思いをストレートに語り、最後に「俺達のチームビルディングは始まったばかりだ!」と高橋氏は締めくくった。審査員からの「(チームが大きくなって)CTOの仕事を他のメンバーに委譲していくとして、最後に残るものは?」との質問に対しては「Qiitaを良くしたいという気持ちです」と返した。

Webの力でものづくりを加速―フォトシンス (Akerun) 本間和弘CTO

スマートフォンでドアを解錠でき、デジタルな「合鍵」を共有できるサービスAkerunを提供するフォトシンスの本間和弘CTOは、「プレゼンボタン」と呼ぶガジェットを手にして登壇した。ボタンを叩くと、その情報がBLE Notificationによりスマートデバイスに飛び、MQTT経由でAWS IoTが中継してパソコンに渡りWebSocket経由でプッシュ、プレゼンスライドのページ送りを実行する──この一連の動作説明で審査員の笑いを取ることに成功した。いかにもテックな人たち向けの掴みだ。

本間氏は、同社のスタイルについて「ハードウェアの開発期間を、通常2年かかるところを半年に短縮したかった」と表現する。その解決方法として、次の各種を説明した。1番目は、後から変更可能なファームウェアを採用したことだ。スマートデバイスと同様に、アップデートによりファームウェアを進化できるようにした。これにより、製品出荷前に仕様や評価工数が膨らむことを抑制した。「その機能は今は必要ないよね、と言えるようにした」。また機能の一部、例えば電池の電圧をパーセント表示に変換する機能をデバイスではなくクラウドに置き、ファームウェアの仕様を増やさないようにした。

2番目は、ハードウェアの耐久試験を自動化してスピードアップしたことだ。10万回のテストを実施している。iOSでテストスクリプトを書き、Akerunの情報をBLEで取得してWeb APIでサーバーに送りグラフ化、リアルタイムで各種情報を可視化・確認できるようにした。

3番目は、ハードウェアの製造工程を「Web化」したことだ。例えば、ファームウェア書き込みの工程ではChromeブラウザで動くアプリ「ファーム書き込みくん」を活用する。エラーが発生すればSlackへ通知する。こうした工夫により、2014年9月に創業した同社は、翌年の2015年3月に記者会見で量産品のデモを見せ、同4月には出荷開始に至っている。「Webのちからをものづくり自体に組み込む」ことによりハードウェア製品の製造をスピードアップすることが同社のやり方だ。

2人CTO体制のメリットを説明したトランスリミット 松下雅和CTO

トランスリミットの松下雅和CTOは「2人CTO」についてプレゼンテーションを行った。同社はエンジニアが8割を占め、主要事業は、2本のゲームアプリ──対戦型脳トレのBrain Warsと物理演算パズルのBrain Dotsだ。累計ダウンロード数は3000万ダウンロードの実績を持つ。松下氏は2人目のCTOだ。もう一人の工藤琢磨CTOと、それにエンジニア出身の高場大樹代表取締役社長の3人による技術経営の体制を取っている。

同社は、最重要課題として「技術力を向上したい」と考え、2人CTO体制を導入した。工藤氏はクライアント側、新規事業の創出を担当する。「工藤は0から1を作るタイプ。Brain Warsをほとんど1人で作り上げたスーパーエンジニア」と紹介する。一方の松下氏は、「1をスケールするタイプ」でサーバー側と開発体制の強化を担当する。「攻めの工藤、守りの松下です」。ダブルCTO体制のメリットとして、得意分野を分担して注力できること、多様な視点で技術選択ができること、技術軸と事業軸で経営判断できることを挙げる。「分業ではなく、分担です」と、いわゆる縦割りとは違うことを強調した。

松下氏が個人として大事にしていることは、「自走できるチーム、スケールできるチーム」と説明。そのための「会社で一番の球拾い」を自認している。審査員からは「2人CTOでケンカはしないんですか?」と質問が飛んだが、「一緒にテニスをしたり仲良くやっています」とのことだった。

技術的チャレンジが会社の強み―Vasily (iQON) 今村雅幸CTO

「女の子のためのファッションアプリ」iQONを展開するVasilyの今村雅幸CTOは、同社にとって「技術的チャレンジが、ビジネスの源泉、会社の強みになっている」と語る。

今村氏は、同社の事業を支える3本柱と、それぞれの技術的チャレンジについて説明した。(1) iOS/Androidアプリはすべて内製し、特にUIにはこだわった。iOSアプリはApp Store BEST OF 2012を、Android版はGoogle Playストア2014ベストアプリに選出された。(2) ECサイトクローラーも内製し、AWS上で動かしている。カテゴリ分けの自動化も徹底し、精度97%を実現。700万アイテムと「日本一のファッションデータベースを構築できた」。OEM販売で数千万円の売上げに結びつけている。(3) ネイティブアド配信では、開発期間3週間でiOS/AndroidのSDK、配信ツール、入稿ツールなどをすべてAWS上で内製した。「iQONが持つビッグデータと統合することで効率的に売上げを上げることができた」。このように、技術的チャレンジが同社の活力の元になっているというわけだ。

今村氏は技術を活性化するため、「技術でユーザーの課題を解決する」「技術的チャレンジをし続ける」ほか全5項目の「VASILYエンジニアリングマニフェスト」を作った。「毎日マニフェストを口にする。目が合ったら言う」。「CTOの仕事は技術的チャレンジが生み出されやすい環境を生み出すこと」と表現する。

チームもアーキテクチャも疎結合で非同期―ソラコム安川健太CTO

IoTプラットフォームを提供するソラコムの安川健太CTOは、以前は大手通信機器メーカーの研究機関であるEricsson ResearchでIoT関連の研究開発に従事していた。「クラウドのことをもっと知りたい」とAmazonにジョイン、AWSのソリューションアーキテクトとして活動、その後米シアトルのAWS開発現場も目にした。その過程で「テレコムのコアネットワークをクラウド上で実現できるはずだ」と思った。ある晩、ある人(ソラコムCEOの玉川憲氏のこと)と飲みながら思いをつぶやいたことがきっかけとなり(関連記事)、「世界中の人とモノをつなげよう」という思いを持つに至った。こうして立ち上げたのがソラコムである。

2015年9月30日に、2サービスをローンチした。SORACOM Airは、「一言でいうとプログラマブルなセルラー通信サービス」だ。特徴として、コアネットワークをソフトウェアで独自に構築、AWS上で運用している。帯域制御や回線の開け閉めもAPIでコントロールする。APIは公開しているので、自動化も容易だ。「例えば監視カメラで静止画を低速で送っているが、アラートが上がったときに通信帯域を広げて動画を送るシステム」も作ることができる。

DSC00015SORACOM BeamはIoTデバイス向けのデータ転送支援サービスだが、インターネットを経由する通信を、デバイスではなくクラウドのリソースを使い暗号化する。APIによる操作も可能なので、データの送り先を、APIで切り替えることもデバイスの設定を変えることなく実現可能だ。

クラウドサービスとしてプログラマブルなこと、すなわちAPIにより操作可能なことが同社サービスの大きな特徴だ。そこで開発者支援は同社にとって重要となる。先日開催されたデベロッパーカンファレンスも大盛況のうちに終了した。プラットフォームなのでエコシステム形成も重要だ。そこでSORACOMパートナースペース(SPS)と呼ぶプログラムを立ち上げ、すでに100社近くの企業が参加している。

安川氏は「ソラコムの裏側」として同社のチームを紹介した。同じチームが開発し、運用し、サポートも手掛ける。「これはAWSの開発チームと同じ運用で、フィードバックを生かした素早い改善ができる」。チームは1日1回30分の全体進行のシェアをするが、それ以外はSlackで連携しつつ非同期で動くチームとなっている。サービスローンチ後も、次々と新しい機能の追加、改善を続けている。システムはマイクロサービス群として作られており、独立して開発、運用できる。「チームもアーキテクチャもふだんは疎結合で非同期、でもインテグレートすると大きな力を発揮する」と締めくくった。

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2015年、CTOオブ・ザ・イヤーに選ばれたソラコムCTOの安川健太氏

「技術的に大変だったところは?」との質問には「ユーザーのネットワーク通信をソフトウェアでターミネートしている。これは世の中には出回っていない、技術者が多くない技術。本来はアプライアンスでやることが多い。そこを一から設計してクラウドネイティブにしたところが、我々の一番の成果」と説明した。

「ゴール駆動開発」を提唱―airClosetの 辻亮佑CTO

女性向けファッションレンタルのairClosetの辻亮佑CTOは、「DevOpsとゴール駆動開発」について語った。

「ゴール駆動開発は私が作った言葉。DevOpsという言葉にはよく分からない部分がある。本質は、開発者と運用者による自動化および効率化。それを実現する手段がゴール駆動開発だ」と辻氏は話す。

同社のサービスは「服を扱う」という固有の事情からヒューマンエラーが必ず発生する。そこでエラーの発生を監視するシステムを作った。またデータベース分析のためのツールを導入、非エンジニアでも分析できるようにした。アパレル業界では「シーズン」の概念があり、服に対して「どのシーズンで着るのか」という情報が必ずある。ここで1つの服に複数のシーズンを設定できるようにし、服のライフサイクルの長期化、検索の最適化を実現できた。

辻氏によれば、同社では「エンジニアがハブになってビジネスを動かしている」。「エンジニアは効率化が得意。最適な解を見つける上でゴール駆動開発はわかりやすい」。

紙という強敵と戦う―トレタ増井雄一郎CTO

レストランの予約管理、顧客管理サービスを提供するトレタの増井雄一郎CTOは、同社のサービスについて「競合は、紙です」と表現する。飲食店の受付、予約管理は「紙」を使う場合が多い。「紙は直感的で誰でも使えて応答速度が速く安価。でも処理ができないので、入力内容をコピー&ペーストもできなければ、バックアップを取ることも難しい」。コンピュータ操作に慣れていない人も多い飲食店の分野でいかに使ってもらうかが同社にとって最大の課題だ。「紙という強敵と戦っています」。

同社のサービスはリリースして2年で約4000店舗に導入されている。初めて使う人でも紙と同様に使えることを目指した。端末はiPadだ。紙がライバルなので課題の解決も独特のために方法を採る場合がある。例えばレストランにはたいていファクスが置いてある。そこで、iPadにトラブルが発生したときのバックアップや、印刷が必要な時に備えてファクスに情報を出力できるようにした。バックアップの一環としてマルチクラウド対応も予定している。

「顧客目線を持ったエンジニアであること」が同社のチームのスタイルだ。ユーザーニーズをエンジニア主導で吸い上げて開発を進めている。「エンジニアはお客さんのことを知りたいと考えている。エンジニア自らが現場に行って使い方を見る。こうした主導性を持っていることがチームの特徴」。例えばiPadアプリがクラッシュしたときには、実際に店舗に行ってどのような状況でクラッシュしたかをヒアリングすることもする。ちなみに、同社は24時間サポートを実施しており、夜間のエスカレーションは増井氏のところに電話がかかってくる。これからのトレタについて「(レストラン向け情報サービス)ハブとして使われるようになりたい」と話す。

以上、8人のCTOによる熱いトークを紹介した。審査員らのコメントを見ても、新しいスタートアップ企業のCTO、エンジニアのチームがそれぞれの工夫を追求している姿は刺激になっていたようだ。「僕らがあの規模の会社だったときより、ずっと凄い」とグリー 藤本真樹CTOはコメントした。

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審査員を代表して総評したグリーの藤本真樹CTO

2016年はVR元年となるか——普及のカギは「コンテンツ」にあり

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「2016年はVR元年になる」——業界関係者が期待する声は大きい。すでに発表されているOculus RiftPlayStation VRといったコンシューマー用のVR機器が発売されることもその後押しになると考えられている。11月17〜18日に東京・渋谷で開催された「TechCrunch Tokyo 2015」でも、そんなVRに関するセッション「VR最戦前:360度動画が開く新しい世界とビジネス」が開催された。

セッションに登壇したのは1000円のダンボール製VRデバイスとコンテンツプラットフォームを提供するハコスコ代表取締役の藤井直敬氏と、VR向けの「360度動画」を制作しているHOME360代表取締役の中谷孔明氏。いずれも国内VR業界のキーパーソンだ。VR専門メディア「PANORA」編集長の広田稔氏がモデレーターを務めた。

VRはまだアーリーアダプターも食いつくせていない

ハコスコ代表取締役の藤井直敬氏

ハコスコ代表取締役の藤井直敬氏

「VRはもう体験した? あれはすごいよね」—そんな声が新しいモノ好きの間で聞こえはじめてから2年ほど経った。しかし、実際にデバイスを持ち、日常的にVRを体験している人はごくわずかだ。

ハコスコの藤井氏も「未だにアーリーアダプターさえ食いつくせていない」と現状を語る。エベレット・M・ロジャーズが掲げた「イノベーター理論」でいうところのイノベーター(全体の2.5%)には波及しているが、アーリーアダプターと呼ばれる比較的流行に敏感な層(全体の13.5%)までは届いていないという。

ゲームやエンタメから始まり、さまざまな領域で利用できると考えればVRのマーケットは巨大だと言える。しかし果たして本当にVR浸透していくのか? 今回のセッションではその一般化に向けた「キー」はVRの「コンテンツ」だという話が強調されていた。

「10カ月視聴され続けるコンテンツ」に普及の可能性

ハコスコで1月にリリースされたコンテンツで、未だに人気を博している動画がある。男性3人組アイドルグループ「Lead」のプロモーションビデオだ。動画を撮影したのはありきたりな普通のスタジオ。演出も凝っているわけではなく、ただひたすら3人が360度から自分に歌いかけているように見えるという動画だ。藤井氏は、この動画にVRが普及する可能性があると語った。

HOME360代表取締役の中谷孔明氏

HOME360代表取締役の中谷孔明氏

「普通、アーティストのプロモーションビデオは続けて見られることは少ない。それが実際に今でも見られ、視聴者からは『出勤前に見て元気を貰ったと』いうコメントがきている。この動画のヒットには、一般化に向けた可能性があると感じ、深堀していきたいと考えている」(藤井氏)

また、アーリーアダプターやイノベーターではなく、Leadのファンというセグメントにリーチすることができたこと。そしてVRの最大の魅力である没入感のみで感情を動かすができたことは、一般の人々にどのようにコンテンツをしかけていくべきかのヒントになるだろう。

4分の動画で1TBに……高品質化に課題

VRコンテンツでは、実写動画の場合360度動画が必要となる。この360度動画は実際にヘッドマウントディスプレイを通すと、中心以外は解像度が下がって見えてしまうという特徴がある。没入感や臨場感を高めるためには、より高い解像度の動画が求められるわけだが、高品質化には大きな課題があるとHOME360の中谷氏は指摘する。

VRコンテンツの、あくまで「現状」最適なフォーマット

セッション中に提示された、VRコンテンツの(あくまで“現状”)最適なフォーマット

 

「普段4Kや8Kで撮影、編集をするが、これらを再生するにはハイスペックなPCが必要となる。また、8Kの360度動画の場合、1分の動画でデータ容量が250GB程度あるため、編集作業に時間がかかる。そもそもまだAdobeの編集ソフトが対応していなかったりする」(中谷氏)

1分で250GB、つまり4分動画で1TBということだ。このデータ容量の大きさは、編集だけでなく配信するときにも大きな障壁となることは間違いない。ただ中谷氏もVR普及のために重要なのはコンテンツの解像度より内容のほうが重要であると語った。

「一番大事なのはコンテンツの内容だ。いくら8Kでも単に撮りっぱなしのコンテンツはつまらないですから」(中谷氏)

TechCrunch Tokyo 2015内でデモを行ったH2Lの「UnlimitedHand」は、筋肉への電気刺激でユーザーに触覚を与える、VRとの連携を想定したデバイスであった。そんな周辺機器の開発も進むなど、VRの波はそこまで来ている。2016年のVR元年からはじまる産業が数年で廃れてしまうことのないようにまずはコンテンツの発展に期待したい。

AIは仕事を奪うのか? 人間を助けるのか? TechCrunch Tokyoで専門家が議論

AI(人工知能)は人間の仕事を奪うのか、それとも人間をより楽にしてくれるのか──そんな問題意識を語り合うパネル・ディスカッション「AIは人間の仕事を奪うのか、ラクにしてくれるのか?」が、TechCrunch Tokyo 2015の1日目、2015年11月17日に開催された。

パネリストは機械学習スタートアップである米DataRobot社のRazi Raziuddin氏(VP Marketing and Business Development)、リクルートのAI研究所 Recruit Institute of Technology(RIT)の創設者である石山洸氏(RIT推進室室長)、そして現役プロ棋士に勝った将棋AI「Ponanza」開発者の山本一成氏(HEROZ)の3氏。司会はTechCrunch Japan編集長の西村賢である。
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機械学習プラットフォームのDataRobotがリクルートと組む

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米DataRobot社のRazi Raziuddin氏

Raziuddin氏は、米DataRobot社についてプレゼンテーションを行った。同社は米ボストンに本社があり、100人以上の従業員が働いている。同社のビジネスは「高度な教育を受けたデータサイエンティストが不足している」という課題を機械学習プラットフォームにより解決するというものだ。DataRobotのプラットフォームには、約4000万種類の予測モデル/アルゴリズムがすでに搭載済みとのこと。データサイエンティストだけでなく、ビジネスアナリストも同社のプラットフォームを駆使してデータから価値を引き出すことが可能としている。もともとDataRobotはデータサイエンスの競技プラットフォームであるKaggleのトップランカーが作った会社で、Kaggleで作られた多くのアルゴリズムがDataRobotに取り入れられている。

石山氏は、米国でリクルートのAI研究所であるRITの立ち上げを担当し一時は責任者を務めた。その後、RITのトップとしてGoogle Research出身のAlon Halevyが就任したことから、石山氏は同研究所の推進室室長として活動している。

石山氏は研究メンバーを増員するため、この4月から100人以上を面接してきたが、「採用できたのはトップのAlonさんを含めて4人だけ」だと明かす。TOEIC900点以上の英語力、機械学習の博士号(Ph.D.)を持っていること、企業でのデータサイエンス経験があること、コードが書けること、アントレプレナーシップを持っていること、といったように非常に高い基準を設定しているからだ。

こうしたデータサイエンス分野、AI分野の人材難の解決策として「オープンイノベーションが重要」だと石山氏は言う。その施策の一環として、ちょうどこのパネルが開催された11月17日にリクルートがDataRobotに出資してRITと事業提携するとの発表があった。リクルートはDataRobotの機械学習プラットフォームを活用し、データサイエンティストの業務効率改善や、非データサイエンティストによるデータ活用を支援する。リクルートグループへの導入や国内での普及も視野に入れている。

将棋AIの実力はトップ棋士に「けっこう勝っちゃう」レベル

将棋AI「Ponanza」開発者の山本氏に、西村編集長は「将棋AIは日本のチャンピオン、つまり世界チャンピオンだと思いますが、羽生(善治)さんに勝てるところまで来ているんですか?」と質問を投げかけた。Ponanzaは11月21日〜23日に行われた第3回将棋電王戦トーナメントでも優勝するなど、コンピューター将棋の中では文句なく最強クラスだ。

山本氏は「けっこう勝っちゃうんじゃないかと思ってます」と答える。ただし、そのような対戦が設定されるかどうかは分からないそうだ。

「強さの性質で人間とAIに違いはありますか?」との質問には「ものすごくありますね。真っ向勝負の『殴り合い』してしまうと人間は勝てない。でもちょっとズルい『寝技』みたいな戦い方だとコンピュータは混乱する」。チェスの世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフは、コンピュータDeep Blueとの対戦で寝技を仕掛けたという話があるとのことだ。

コンピュータが「混乱する」とはどういうことか? 人間が仕掛けた罠にはまると、強いコンピュータなのに「目的を失ってどうしたらよいか分からないような」挙動をする。それが人間から見て「混乱している」ように見えるそうだ。

人間はコンピュータにはない創造性、クリエイティビティを持っている、といった言い方を聞くことがある。だが山本氏はこう話す。「将棋に限っては、クリエイティビティはコンピュータの方が優れていると思う。人間は今までの形から類推して指すが、コンピュータはフラット。今までになかった手を指すこともある」。

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将棋AI「Ponanza」開発者でHEROZエンジニアの山本一成氏

コンピュータはすべての手をブルートフォース(総当たり)で探索する。そこで人間の感覚では無意識のうちに避けてしまうような手を提案することもある。将棋の最前線では、コンピュータが発見した手を人間が指す例も出ているらしい、と山本氏は明かしてくれた。

人工知能と人間の共進化に期待

AIが人間の仕事を奪うのか、という問いかけについては、山本氏は次の話を紹介した。「Advanced Chessという競技があって、『強いコンピュータ』対『人間+ちょっと弱いコンピュータ』のチームで対戦する。するとけっこう、人間が勝つんですよ」。

「駒の取り合い」のような細かい戦術レベルでは計算力に優れるコンピュータに人間は勝てないが、より上の戦略的なレベルでは人間がフォローできる部分がまだまだあるそうだ。「人間って、コンピュータが間違えそうな手が分かるんですよ。それに最初の方針を決めてあげるとか」。このように、人間がコンピュータを助けることで、人間と弱いコンピュータの連合チームが、強いコンピュータに対して勝てるようになる。もっとも、これは一時的な現象で、長期的には人間が協力するよりもコンピュータだけで考えた方が強くなるだろうと山本氏は考えている。

RITの石山氏は、コンピュータと対戦することで人間も将棋が強くなっている、と指摘し、データサイエンスのアルゴリズムを搭載したDataRobotを活用することで、人間の側もデータサイエンスの能力が上がっていくだろうと語った。石山氏はこのような「人工知能(AI)と人間の共進化」を期待しているという。

AIは仕事を奪うのか、楽にするのか

パネルの最後に、司会から「AIは人間の仕事を奪うのか、それとも楽にするのか」との問いが投げかけられた。

Ponanza開発者の山本氏は、「AIが強くなって人間の仕事がなくなっていくことは間違いない」と話す。だが「やることがなくなるだけで、食えなくなることはないんじゃないか」とも言う。技術の進化で職業の定義が変わることにネガティブな考え方を持つ人もいるかもしれないが、病気や障害を技術の力で克服できて幸せになる人もいる。そのようなポジティブな面を考えていきたい、と山本氏は話す。

「仕事はアイデンティティと結びついている。仕事がなくなっても、やるべきことを見つけるのが、今世紀の課題。例えば『将棋をやっていれば楽しい』というのは一つの答」と山本氏は話す。

RITの石山氏は「ムーアの法則に引き寄せられるように、職業はどんどん“創発”されている」と主張する。ビジネス領域でITの適用範囲が広がるにつれてエンジニアが必要になり、デザイナが必要になり、グロースハッカーが必要になり、データサイエンティストが必要になる。そしてDataRobotのようなプラットフォームができることで、データサイエンティストの定義も変わる。技術が進化するほど、人間がするべき仕事も増えるという主張だ。

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リクルートAI研究所 Recruit Institute of Technology(RIT)の創設者でRIT推進室室長の石山洸氏

機械学習は既存の専門家を使うデータ分析という仕事に対して「破壊的(ディスラプティブ)な作用を及ぼす」とDataRobot社のRaziuddin氏は言う。データサイエンティストでもプログラマでもない、異なるタイプの人々が機械学習プラットフォームを活用したデータ解析に取り組めるようになり、破壊と民主化が起こる──TechCrunch Tokyoという場を意識してか、Raziuddin氏はこのように話を締めくくった。

チェスの分野では人間とコンピュータの連合チームは強い。機械学習プラットフォームのDataRobotがデータサイエンティストの仕事を支援したり、非データサイエンティストでもデータ分析を可能にしつつあるように、AI関連技術の進化は古い仕事を破壊して再定義し、新しい職業、新しいビジネスを作り出す。その破壊と民主化の波に飲み込まれるのか、それとも波に乗って前に進むのか──そんな問いかけを参加者に投げかけるようなパネル・ディスカッションだった。

50億円を捨ててまで起業した男が語る「今、スタートアップに携わるべき理由」

後ほんのわずかな時間、その立場にとどまっていれば手に入ったであろう大金を顧みず、起業した男がいる。それがマネックスグループ代表執行役社長CEOの松本大さんだ。

11月18日、東京・渋谷が会場となったTechCrunch Tokyo 2015において、当時、史上最年少で外資系金融ゴールドマン・サックス証券のゼネラル・パートナーになり、その後、オンライン証券会社マネックス証券を設立した松本さんが数十億円を「捨てた」その裏側について語った。

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評価された社内「スタートアップ」

外資系金融機関を就職先に選んだ理由は「異端児だったから」という松本さん。「普通の会社に就職しても、きっと受け入れてもらえないだろう。それなら多様性を受け入れてくれ、かつ実力主義の会社で働きたい」と判断し、ソロモン・ブラザーズに1987年に入社。その3年後の1990年、ゴールドマン・サックスに移籍した。

ところが、着手したかった仕事(円のデリバティブ)をしようにも、計算技術において遅れており、商品開発ができない。そこで松本さんは「大好きな秋葉原に行って、PCを購入し、ゴールデンウィーク中、マクロを多用したスプレッドシートを書き上げ」ポートフォリオを管理するようにしたという。

「自分のデスクに新卒、中途も含め若い人たちをどんどん集めてモデルを書いて、ビジネスのアイデアも考えて実現して。そうしたらすごい儲かったんですよ。当時、外資系金融の上司たちは日本人がそんなに仕事できると考えていなかったので、あまり重用していませんでした。でも、そんなことはない。結果を出して日本の若い人が優秀だということを明らかにしたところ、社内で評価されるようになったんです」(松本さん)

開発した新商品が成功しただけではなく、そのような取り組みの結果、松本さんはわずか30歳という異例の若さでゼネラル・パートナー(共同経営者)の仲間入りを果たしたのだ。
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「一(いち)場所、二(に)餌、三(さん)仕掛け」タイミングを見逃すな

そんな松本さんに、大金を手にするチャンスが訪れた。1999年5月、パートナーとして働いていたゴールドマン・サックスが上場することになったのだ。上場すれば、プレミアム報酬として松本さんにも数十億円が手に入るはずだった。

しかし、松本さんは大金ではなく、起業の道を選んだ。株式売買委託手数料の完全自由化、インターネットの普及を見越して、個人にとって必要になると考えたオンライン証券会社を設立するというヴィジョンを取ったのだ。

「パートナーになってから4年目でした。50億は手にできたかもしれませんね」と、こともなげに松本さんは語る。「当時35歳。そんな若さで大金を手にしたら、働かなくなるかもしれない、と思ったんです。きっと遊んで暮らす道を選んでしまって、自分の可能性を追求しなくなってしまうんじゃないかと。人間、そんなに強くないですからね」(松本さん)

1999年という年は金融業界において、「クリティカルなタイミング」でもあったという。その年の10月に株式売買委託手数料の完全自由化がなされたからだ。

「下りエスカレーターに乗った状態と、上りエスカレーターに乗った状態で駆け上がっていくのとでは、断然上りエスカレーターに乗っている方がスピードはアップしますよね。完全自由化の波は“上りエスカレーター状態”。そのタイミングで開業していなければマーケティング的に意味がないと考えました。ゴールドマン・サックスの規定上、パートナーだったわたしが辞められるタイミングは1998年11月末。半年後に大金を手にできる、と分かっていても辞めるしかなかったんです」(松本さん)

「それに」と松本さんは言葉を続ける。

「釣りでは『一(いち)場所、二(に)餌、三(さん)仕掛け』といって、一番重要なのは場所だと言われています。どこでやるか、どこを釣り場に決めるか、ですよね。それと同じで、エリアを決めたらどのタイミング、という場所でビジネスをするかが重要になってくるのです。規制が変わる、そのタイミングを逃す手はありません」。

相手を信じてぎりぎりまで攻める

マネックス証券スタートにまつわるストーリーの中で外せない人物がいる。それは元ソニー社長 出井伸之さんだ。

「顧客がいないと始まりません。私がいくら『ゴールドマン・サックスで史上最年少ゼネラル・パートナーをやっていました』と言っても、”Nobody Knows Me”ですよね。でも、『ソニーが出資しています』と言えば信頼してもらえる。それで、100万人を説得するより、出井さんを説得することにしました」(松本さん)

その甲斐あって、全体の49%出資をソニーから勝ち得たが、松本さんの攻めはそれで終わらない。何と、東京・銀座にあるソニー本社のビルの壁を記者会見前夜から6日間借り、“SONY”のサイネージとその下に垂らされているマネックス証券の懸垂幕を1枚の写真に収め、記者会見で配布するプレスキットに入れたというのだ。松本さんは当時を振り返ってこう語った。「これにはソニー側の広報も真っ赤になって怒っていましたね。でも、社長の出井さんは、記者会見の最後にこんなボーナストークをしてくれたんですよ。『今日というこの日は象徴的な日で、まるでソニーがマネックスに乗っ取られたかのように、銀座のソニービルにマネックスの垂れ幕がかけられていた。これからマネックスはソニーというプラットフォームを使って、大きく羽ばたいていってほしい』」。

「ギリギリのところを攻めていくわたしに対して『あっぱれ』という気持ちで受け入れてくれ、ウィットに富んだ返しをしてくれたんだと思います」(松本さん)

そういう経験からも、スタートアップで組むことに選んだ相手がたとえ大企業だったとしても萎縮せず、失礼にならない形で利用するという気概をもってぶつかってほしい、と会場に集まった起業家たちに勧めていた。

生存確率は極めて低いが、社会のステップアップになくてはならない

「来場している起業家、また起業家予備軍にアドバイスを」と求められた松本さんは、最後にこう締めくくった。

「起業というのは大切なプロセス。それは突然変異のようなもの。ほとんどは死に絶えるが、生き残れば一気に社会を変化させます。もしくは社内のスタートアップであれば、会社を次のステージへとステップアップさせていきます。進化の過程での突然変異と違い、ビジネスにおける突然変異種は、たとえうまく行ってもまたすぐ誰かに真似されます。それでもなお誰かがやらないと、社会は退化してしまうのです。社会を次のステージに持っていくんだ、という気概でぜひとも取り組んでいただきたいですね」

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