国際社会は宇宙や月の資源を収集、利用することに関する規則の制定で何十年も苦闘を続けている。米国をはじめとする宇宙開発国はすべて、最もよく知られた試みである1979年の「月協定」を却下したが、月探査の新たな競争によって、ホワイトハウスは新しい国際協定を受け入れる意志があることを発表するにいたった。
米国時間4月6日に発行された大統領命令でトランプ政権は 、これを「宇宙資源の国および民間による回収と利用の国際的支援の促進」を進める政策であることを示唆した。
命令は何かを強制するものではなく単なる政策の表明なので、第一歩にすぎない。しかしこれは、米国が宇宙資源の利用に関する新たな枠組みづくりを進める意思を示すものだ。
関連記事:NASA details how it plans to establish a sustained human presence on the Moon
ひとたび地球を離れた後、どの法律(財産法、国境協定など)が適用されるかは複雑な問題だ。そうでなくても、この件に関して数多くの法律や規則が、大きく異る宇宙時代とさまざまな形態の冷戦の中で検討、想像されてきた。現在の宇宙ビジネスのブームや、月あるいは小惑星などの近地球天体の差し迫る植民地化を考えると、新たな規則が必要であることは明らかだ。
現状はといえば、月で収集された物、月に持ち込んだ物、他の国と分けあった物などに関する正式な法的見解はないも同然だ。いったい地球のどの機関が論争を仲裁するのか? 商業採掘によって月面の表土が軌道に吹き飛ばされ月の外見が損なわれることをどうやって防ぐのか?
通信衛星が空を埋め尽くすことを巡る規則がないために世界中で怒号が飛び交っているのと同じように、何か手を打つ必要があることは明らかだ。しかし、ルールの範囲さえ問題なる。月における財産権のようなものを検討する必要はあるのか? 問題の複雑さを踏まえると、その規則が目的としている紛争の解決に間に合うのか? 必要ないというならそれはなぜか? だったらいつ考えるのか?
想像できるように、米国が始めようとしていることは恐ろしく複雑な解決困難な問題であるが、遅かれ早かれやらなくてはならない。
そのために、米国は「宇宙資源の国および民間による回収および利用の安全で継続可能な運用に関して、諸外国との共同声明と二国間、多国間の合意を目標に努力」すると、大統領命令に記している。
高官レベルの話し合いがすでに進んでいることは間違いない。さもなければ、宇宙規制への新たなアプローチ指示を公に宣言するという手段を政権が選ぶはずはない。宇宙の商業利用を計画している各国が参加することは間違いないだろう。だがそれは、交渉が単純で簡単であるという意味ではない。
画像クレジット:NASA
[原文へ]
(翻訳:Nob Takahashi / facebook )