企業の新規事業や新規サービス開発支援を行うK.S.ロジャースは7月29日、資金提供とともに、技術支援やエンジニア組織の構築支援などを行うスタートアップスタジオ事業の開始を発表。第1弾として、女性の副業サポートプラットフォーム「週末モデル」などを提供するモノクロムへの出資・提携を明らかにした。
CTO経験とリモート活用をカギにスタートアップを支援
K.S.ロジャースは神戸発のスタートアップだ。ソリューションとして、企業のサービス新規開発支援事業、開発チーム構築などを支援するCTOコンサルティング事業、そしてスタートアップ支援事業の3つを提供する。今回のモノクロムとの提携は、3つ目のスタートアップ支援の一環で、スタートアップスタジオの立場で開発ノウハウと資金を投資するというものだ。
ちなみに、K.S.ロジャースは今年4月20日に神戸市が開始した「STOP COVID-19 × #Technology」プログラムに採択されている。これは神戸市が新型コロナウイルスに対抗するソリューションを持つスタートアップを募集し、最短2営業日で一次審査を実施するというプログラムなのだが、K.S.ロジャースでは、ソリューションを神戸市の募集開始からわずか3営業日で提案したそうだ。
K.S.ロジャース代表取締役CEOの民輪一博氏は、複数のスタートアップ参画経験がある人物だ。1社目は京都大学大学院在学中に立ち上げた学生ベンチャーで、CTOとして参画。2社目ではAI系のスタートアップに参画し、その後「そろそろ独立したい」ということで、2017年12月に設立した3社目がK.S.ロジャースである。
独立に当たって、事業イメージが強固にあったわけではないという民輪氏だが、それまでのキャリアを振り返って「CTOを軸として外さない」ことと、自身が神戸在住でリモートでの仕事が中心となっていることから「地方発やリモートでの働き方を世の中に広める」ことを実現するスタートアップを作ろうと考えたそうだ。
CTO業務について、民輪氏は「一般に開発を担当するものと捉えられているが、そのほかにも採用や開発の仕組みづくり、エンジニア文化の醸成など業務の幅が広く、事業やプロダクトのPDCAをまわす役割も担っている」と語る。
2社のスタートアップでの経験で、CTOとしてのノウハウが蓄積されていったという民輪氏。スタートアップが設立直後に抱える課題で「ゼロイチの事業立ち上げは非常にパワーがかかるけれども、創業メンバーにそういった経験がない場合が多い」として、自身のノウハウが提供できるのではと考えた。
こうして始まったのが同社のスタートアップ支援事業で、マザーズ上場も果たした企業の初期プロダクトの立て直しなどにも携わったことがあるそうだ。
CTO業務と並んで、同社の事業展開のもう一つのカギとなる「リモートワーク」についても、「スタートアップ支援事業とは親和性が高い」と民輪氏はいう。
「リモートワークを円滑に行うにはスキルが必要。新型コロナで一時的にリモートワークを取り入れるなど、短期ならまだいいが、長期的には課題が顕在化する。一方で、それを乗り越えてリモートワークを取り入れられると採用がしやすくなる。副業も含め、優秀な人材のプールができる。ゼロイチ事業にはエンジニア人材のノウハウや知見が役に立つし、そこへ圧倒的なリソースを充てることが可能になる。実はスタートアップとの掛け合わせの親和性がすごくある」(民輪氏)
CTOとしての支援に加え、資金、組織づくりもサポート
今回K.S.ロジャースが、「ヒト」「モノ」の提供にとどまらず、資金の支援にも踏み込んだのは、スタートアップのサービス成長にとって、さまざまなリソースの提供が必要との結論に至ったからだという。
同社のスタートアップスタジオとしての活動第1弾で出資・提携したモノクロムは、広告・映像の制作に携わる傍ら、自社でもプラットフォームやプロダクトを開発・運営する。そのひとつが「週末モデル」。副業としてモデル活動をする女性と、モデルを探す企業を結ぶキャスティングサービスで、以前TechCrunch Japanでも紹介したことがある。
K.S.ロジャースでは、1年半ほど前からプロダクトについてモノクロムから相談を受け、事業をグロースさせるためにプロダクト面でのアドバイスをしながら、開発も手伝っていたそうだ。
その中で「この事業は堅調に伸びるだろうと肌感で思った」と民輪氏。「副業関連のサービスで、IT人材を対象にしたものは多いが、女性モデルの副業にフォーカスしたものはない。周りにプレイヤーはおらず、ニッチだけどブルーオーシャンだ」(民輪氏)
スタートアップスタジオとしての支援に当たっては、「外部CTOとして参画しつつ、KPI管理など、事業がスケールする仕組みづくりもしっかりサポートしていく」と民輪氏は話している。エンジニア組織のサポートや、採用面、開発のカルチャーづくりについても支援していく。
セールス面の課題解決も含めたパッケージ化を図る
スタートアップスタジオ事業について、民輪氏は「(東証マザーズへの)上場が決まったSun Asteriskが、ベトナムのリソースを活用してデジタル・クリエイティブスタジオとしてやっていることを、僕らはリモートワーク、フリーランス、副業も含めた人材を活用することで広げていきたい」と述べている。
「リモートワークにはコロナは追い風だが、感染症が落ち着けばトレンドも落ち着くだろう。またリモートにはいい面も悪い面もあること、オンサイトで人と会って仕事をする必要もあるということは身に染みて感じるところだ。とはいえ、地方にたくさんいる優秀な人が採用できることで、リモートワークを取り入れた会社は強くなる。そういったエコシステムを将来的に作ることができれば、と考えている」(民輪氏)
長期的には「副業を含めた、セールスネットワークを作って広げようとしている」と民輪氏。「会社としてはB2B、B2B2Cのサービスに出資をしたいと考えている。法人向けのビジネス開拓はスタートアップにとっては課題となるので、そこを解決できるような仕組みを用意したい。プロダクト作り、セールスから、顧客の声を聞いて改善しPDCAを回せるまでの環境を、パッケージ化して提供していきたい」とのことだった。