インターネット広告事業や、ブログ「Ameba」を中心とするメディア事業などを展開するサイバーエージェントは4月27日、2017年9月期(2Q)決算を発表した。
今期のサイバーエージェント全体の売上高は前年同期比25.1%増の933億円、営業利益は79億円となった。これにより、同社は最高益を更新したことになる。同社のの事業は、メディア、広告、ゲームの3つのセグメントに分けられているが、増収を牽引したのはその内広告事業とゲーム事業の2つだ。
広告事業の売上高は前年同期比20.3%増の525億円、営業利益は同じく21.4%増の53億円となった。一方のゲーム事業の売上高は前年同期比29.6%増の358億円、そして営業利益は14.1%増の79億円だ。3月11日にリリースしたゲームタイトル「バンドリ!ガールズバンドパーティ!..」のヒットが成長の牽引役となったようだ。
AbemaTVの今
今回の決算発表で注目されたのが、4月11日に1周年を迎えた「AbemaTV」の動向だ。AbemaTVは、サイバーエージェントが手がけるライブストリーミング形式のインターネットテレビ。ニュースやスポーツ、バラエティまで幅広い種類の番組を放送している。基本視聴は無料だが、月額960円のプレミアム会員に加入することで会員限定のコンテンツの視聴などができる。
リリース当時から注目を浴び続けるAbemaTVだが、現状は赤字の投資フェーズ。Abema TVが属するメディア事業の営業利益は51億円の損失となっている。Abema TV単体では58億円の損失を計上した。
ただ、これは予想通りの結果とも言える。サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏は2016年11月に開催されたTechCrunch Tokyo 2016に登壇し、AbemaTVは「そもそもスマートフォンでテレビ番組を観る視聴習慣が整っていない中、フライング気味にスタートしたサービス。なので長期戦になると思っています」と語り、2017年には同サービスに約200億円を先行投資すると話していたのだ。
また、藤田氏は「無理に黒字化させようとすると事業がおかしくなる」とも語っており、サーバーエージェントがゆっくりと腰を据えてAbemaTV事業に取り組んでいることは明らかだ。
黒字化はまだ達成できていないものの、AbemaTVは順調に成長している。同サービスは開局1年で1600万ダウンロードを記録。MAUも2016年4月の248万から約3倍の753万に拡大している。
「競合はいない」
藤田氏はAbemaTVについて、「私たちは今までなかった市場をフロンティアのように開拓している。ここを着実に開拓していきたい」と藤田氏は語っている。AbemaTVはまったく新しいサービスであり、200億円という先行投資をかけてでも市場を切り開いていくという意気込みの現れだろう。
とは言うものの、AbemaTVの急激な成長やNetflixなどの動画ストリーミングサービスの好調さを見て、他社から競合サービスが生まれる可能性も否定できない。藤田氏はこれについて、「今のところは競合は出てきてないし、出てくる気配もない。この事業の厳しいところは、コンテンツの獲得争いになるという点で、コストが非常にかかるという点。これをできる企業がいない」と語る。
つまり、テレビ局と同等のコンテンツを集める力、そしてハイクオリティなUIを開発できるネット企業ならではのノウハウの両方を兼ね備えているのはサイバーエージェントしかいないというのが藤田氏の見方である。
AbemaTVへ先行投資をする時期のあと、藤田氏が以前から語りつづけている目標は「AbemaTVをマスメディアにする」ことだ。今回の決算発表では具体的な時期は示されなかったが、指標としては1000万WAU、プレミアム会員数100万人を達成するとしている。