インドネシアの電子商取引リーダーTokopediaが、AlibabaとSoftBankのVision Fundから11億ドルを調達

創立9年のC2Cマーケットプレイスの現在の評価額は70億ドル

インドネシアを拠点とする電子商取引会社Tokopediaは、SoftBankメガファンドとAlibabaが主導した11億ドルのシリーズGラウンドでの調達を行ったあと、Vision Fundに参加した最新のスタートアップ企業だ。

SoftBankとAlibabaは既存の投資家である。Alibabaは昨年11億ドルのラウンドを主導したが、一方SoftBankは最近保有していたTokopediaの株式をVision Fundへ移管した。後者の内容は、基本的に10月に合意された内容に従ったものだと、TechCrunchは理解している。

Tokopediaは評価額につはコメントしていないが、TechCrunchはある筋から、今回の取引では評価額は70億ドルとされているという情報を得ている。SoftBank Ventures Koreaとその他の投資家たち、例えばSequoia Indiaもこの投資に参加した。現時点までに投資家たちから24億ドルが調達されている。

今回の取引が行われたのは、韓国の有力電子商取引企業であるCoupangに、SoftBankが20億ドルの投資を行った数週間後である。Tokopediaと同様にCoupangも、SoftBankが保有する株式がVision Fundに移管されるまでは、SoftBankには投資家として向き合っていた。

9年前に創業したTokopediaは、中国で大成功を収めたAlibabaの電子商取引市場であるTaobaoとしばしば比較される。Tokopediaの取引業者は最近400万社に達した。TokopediaはGMV(取扱総額)が4倍になったとしているが、具体的な数字は発表していない。物流は、約1万7000の島々に広がるインドネシアの大きな問題である。しかし同社は現在国土の93%をカバーしていて、しかも顧客の四分の一は同日配送の対象になっているのだという。同社が物流調整がより困難な、マーケットプレイスを運営していることも注目に値する。

同社は、今回得た新しい資本金を利用して、より多くの中小企業や独立系小売業者がそのプラットフォームに乗ることを可能にする技術を開発する予定である。また消費者側では、中核となる電子商取引だけでなく、金融サービスやプロダクトの開発も行っていて、顧客を強くプラットフォームに引きつけようとしている。

インドネシアのスーパーアプリ

この新ラウンドにもかかわらず、CEOで共同創業者であるWilliam Tanuwijayaは、TechCrunchに対してインドネシアの外へ拡大する計画はないと語った。インドネシアは東南アジア最大の経済圏であり、2億6000万人以上の人口は世界で4番目に多い。

「現時点でインドネシアの外に拡大する計画はありません。インドネシアの市場を構成する、私たちの美しい1万7000以上の群島の隅々にまで手を伸ばせるように努力するつもりです」と、Tanuwijayaは質問に対して電子メールで回答した(Tokopediaは電話でのインタビュー要請は拒否した)。

Tokopediaの共同創業者兼CEOのWilliam Tanuwijayaは、2018年1月26日(金)、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)閉会式のパネルディスカッションで、身振り手振りを交えながら語った。世界的リーダーたち、影響力のあるエグゼクティブ、銀行家、そして政策立案者たちが、1月23日から26日までダボスで開催された、第48回世界経済フォーラムの年次総会に出席した。写真:Jason Alden/Bloomberg

そのインドネシア国内だけに注力するアプローチは、現在東南アジア全域に急速に拡大している、インドネシア拠点の配車企業Go-Jekのアプローチとは対照的だ。Go-Jekは既にベトナム、シンガポール、タイに進出し、2019年にもさらに計画を進めていることは間違いない。

だがGo-JekとTokopediaは、いずれも中心となっていたビジネスから拡大しているという点は類似している。

Go-Jekは、オンデマンドサービス、支払いサービスなどに取り組んでいる。最近、Tokopediaはモバイルチャージやファイナンシャルサービスを含む支払いサービスへ参入した。そしてTanuwijayaは「スーパーアプリ」になる戦略を続けていくつもりであることをほのめかした。

「私たちはサービスを深化させて、朝の目覚めの瞬間から夜眠りにつくまで、そして生まれた瞬間から年老いるまで、インドネシアの人びとによりよいサービスを提供します。私たちは、沢山の企業にオンラインとオフラインのパワーを提供するために、物流、フルフィルメント、支払い、そして金融サービスの分野のIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)に投資をし技術開発を行います」とTanuwijayaは付け加えた。

Vision Fund論争

しかし、Vision Fundには論争が巻き起こっている。

最近出されたCIAの報告書は、サウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子がジャーナリストであるジャマル・カショギの殺害を命じたと結論付けた。皇太子はサウジアラビアの政府系ファンドであるPIF(Public Investment Fund)を管理している。これは450億ドルという資金をVision Fundを通して投資している巨大な投資機構である。

SoftBank会長の孫正義は、この殺人を「非人道的行為」として非難したが、アナリスト向けのプレゼンテーションでは、SoftBankは資本を運用しVisionFundを続けていく「責任」を、サウジアラビアに対して負っていると付け加えた。

Tanuwijayaは私たちに対する電子メールで、最悪のケースでTokopediaが何をできる(する)のかははっきりしないものの、「私たちはこの出来事に深く関心を持ち、SoftBankと共に、全ての真相が明らかになるまで状況を注意深く見守りたい」と語った。

サウジアラビアとの関係がVision Fundの創業者たちのための資金を穢(けが)しているのではないかという沢山の議論がありながらもトランプ政権が現状の体制維持に焦点を当ててサウジアラビアを主要な同盟国として扱おうとしているように見えることを考えれば、事態は流動的なままである。

孫自身は、現在Vision Fundからの投資を拒んだスタートアップの事例は聞いていないが、将来的には「影響があるかもしれない」ことを認めた。

この投資に対する反発を予想しているか否かという私たちの質問に、Tanuwijayaは直接触れることはなかった。Vision Fundが最近行ったCoupangへの投資は、ネガティブな反応を巻き起こしているようには見えない。

また間違いなく東南アジアで最も有名な電子商取引サービスであるLazadaを、Alibabaが所有していることも、別の疑問を投げかける。

Tokopediaとは異なり、Lazadaは東南アジアで6つの市場をカバーしている。小売ブランドに重点を置いており、AlibabaのTaobaoサービスと密接な関係を保っているために、業者たちにその地区へ向けたチャネルを提供している。今年初めにTechCrunchにタレコミをした筋によれば、Tokopediaの経営陣はもともとはAlibabaのライバルのTencentからの資金調達に熱心だったが、SoftBankからの介入により、Alibabaを相手にすることが強制された。

Tanuwijayaは、そつなくその競合関係と亀裂を軽いものと述べ、ビジネスに影響はないと主張した。

「Tokopediaは、多様な資本で構成される独立企業です」と彼は電子メールで答えた。「会社の過半数を保有する単独の株主はいません。私たちは、株主のポートフォリオ企業と緊密に協力して、シナジー効果を活用しています」。

「たとえば、TokopediaはGrab(SoftBankのポートフォリオ)とGo-Jek(Sequoiaのポートフォリオ)の両社と緊密に協力しています。Lazadaは私たちとは異なるビジネスモデルを持っていると考えています。Lazadaは小売とマーケットプレイスモデルのハイブリッドですが、Tokopediaは純粋なマーケットプレイスなのです。Lazadaは地域プレーヤーですが、私たちはインドネシアの全国プレイヤーです」と彼は付け加えた。

Tokopediaは、中国で大成功しているAlibabaのTaobaoマーケットプレイスと、多くの類似点を持っている。

「これ以上わくわくできることはありませんよ?」

約10年前、Tokopediaはインドネシアに登場した最初のスタートアップの1つだった。Tanuwijayaと仲間の創業者Leontinus Alpha Edisonが、VCを口説き落として資金を調達するまでに、何十回ものプレゼンテーションを繰り返しては拒絶されたことは良く知られている。

Vision Fund入に際して「実績あるチャンピオン」と孫が形容した現在の状況に比べれば、とても大きな変化を経験してきたのだ。そしてそこにはファイナンシャル製品へと拡大したビジネスそのものは含まれていないのだ。しかしそれは、どんな創業者でもいつでも手に入れることができる、というものではない。多くの人たちは、その「最良の」日々は急速に成長していた初期段階や全員の気持ちがひとつになって力を注げていたときであることを認めるだろう。実際、インドネシアを拠点とするユニコーンであるTravelokaは、最近CTOを意欲の燃え尽きによって失っている

Tanuwijaya、Edison、および同僚の経営幹部たちに同じことが起き得るだろうか?

Tanuwijayaは彼のビジネスの旅を、近付いて来る山に喩えている。

「Leonと私は10年目に入ることにとても興奮しています。最初にTokopediaを始めたとき、それは私たちの立っている場所から、とても遠くにある山の頂上を見るようなものでした。私たちはいつかその山の頂上に登るのだということと、自分たち自身に誓ったのです」と彼はTechCrunchに語った。

「その山の頂上が私たちの会社のミッションなのです。つまり技術を通して商売が誰の手にも届くようにするということです。いま私たちは山の麓(ふもと)に到着したところです。ついに山に触れることができて、登り始めることができるのです。今回の追加投資で、私たちはミッションをより速く勧めるための手段と資源を手にすることになります。燃え尽きて家に帰るのか、あるいは山に登るべきかどうかを考えるべきかって?「これ以上わくわくできることはありませんよ?」と彼は付け加えた。

確かにTokopediaは、それ自身が1つの山になっている。このスタートアップは、GrabとGo-Jek(それぞれの評価額は110億ドルならびに(伝えられるところでは)90億ドル)に続いて、3番目に高く評価されている未公開テクノロジー企業だ。そしてその夢のある話は、インドネシア周辺の未来の創業者たちを触発し、スタートアップの道を辿らせることだろう。なおVision FundとPIFのコネクションにこの先何が起きるのかは、それほどはっきりとはしていない。

画像クレジット: Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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