「本や雑誌、DVDなどでプロ選手のフォームやレクチャーを見て、真似をする」 幼少期や学生時代、スポーツに打ち込んでいた人ならばそのような経験があるのではないだろうか? “オンラインスポーツ教室サービス” を掲げる 「Sporta(スポルタ)」は、そのような体験をスマホや動画メディアが最盛期の現代に合わせて、より手軽にしてくれるサービスだ。
サッカー特化の動画メディア「サカチャン」などSportTech関連の事業を手がけるSkyBallは、7月1日にオンラインスポーツ教室サービス「Sporta(スポルタ)」を正式リリースすることを明らかにした。(アプリ自体はベータ版として5月より公開しており、すでにダウンロードできる)
同サービスは子どもたちの「スポーツをもっとうまくなりたい!もっと楽しみたい!」という要望に応えるべく、「オンデマンド動画」「LIVE動画」「イベント」の3つの機能を提供する。
オンデマンド動画は、サッカーや野球を始めとする様々なスポーツ分野で活躍するアスリートやコーチのレッスンやインタビュー動画を視聴できるもの。鹿島アントラーズやFC東京の現役サッカー選手のインタビュー動画、元プロ野球選手のレッスン動画がすでに配信されている。
LIVE動画はQ&Aをはじめ、アスリートとリアルタイムにコミュニケーションがとれる機能で、イベントはリアルなスポーツ教室だ。動画コンテンツを通じて磨いてきたスキルを、実際にアスリートやコーチに見てもらい指導を受ける機会や、オンライン上で質問できる機会を提供する。
7月1日にはアプリのリリースを記念して、サッカー日本代表の吉田麻也選手を招いたスポーツ教室を実施予定。Q&Aの様子をLIVE配信するほか、レッスンや解説も後日動画やVRコンテンツとして公開する。今後もプロスポーツ選手やアスリートの協力を受け、このような事例を増やしていくという。
今の若い世代に合った、新しいスポーツ教室の実現へ
SkyBallは2015年11月の設立。過去にiemoで共同代表取締役COOを務めた経験のある熊谷祐二氏が立ち上げたスタートアップで、2016年5月の「サカチャン」リリース時にTechCrunchでも紹介している。
その際に熊谷氏は「現代のサッカー少年は親や自身のスマホを用いて、YouTubeでサッカー動画(好きな選手のハイライトやテクニック集)を観ている」ことを受け、SportTechの中でもスマホに最適化した動画メディアで事業を始めたと明かしていた。今回リリースするSportaは、そのエピソードにより近づいたサービスと言える。
「スポーツ市場は政府が日本再興戦略にて規模の拡大を目標としており、東京五輪が近いこともあって盛り上がってきている市場。その中でスポーツ教室を含む子ども向けの領域は規模が大きいだけでなく、教育的な観点からも社会的な意義が大きい。1年間スポーツ業界でサービスを手がけ知見も貯まってきた中で、スマホや動画のノウハウも活用して自分たちだからこそできるサービスにチャレンジしたいと思った」(熊谷氏)
スポーツ動画なんてYouTubeで十分では? と思う人もいるかもしれないが、YouTubeにあるのはプレイ動画や試合動画が多く、練習風景やレッスンに関するものでクオリティが高いものとなるとほとんどないのが現状だという。熊谷氏自身が子どもの頃から野球をやっていたそうだが、当時YouTubeはなくそれに近かったのがレッスンを収録したDVD。現在でもその状況は大きく変わっていないそうで、デジタル化していく余地が十分にある。
熊谷氏によると「実はスポーツクラブ側としても自分たちのメソッドを発信したいというニーズはある」そうだが、ノウハウやリソースがなく自分たちだけではなかなか実現してこなかった。そのようなクラブとの繋がりも活かしながら、スマホに最適化した形で動画コンテンツとして発信していく。
マネタイズ方法について考えているのは、ユーザー課金とタイアップ広告の大きく2つ。1つは熊谷氏いわく「スポーツにおけるファンビジネス」の側面があり、限定イベントや特別な動画に対してユーザーが課金をするというもの。そしてもう1つが企業からの広告収入だ。
すでに実施しているものでは、アスリートの栄養補給に関する動画を飲食品メーカーとタイアップして作成しているものがある。選手と企業がより密接に関わった動画広告やスポンサードの形に関心を持つ企業も少なくないそうで、今後の注力ポイントの1つだと話してくれた。ちなみにSportaの事例ではないが、先日話題になったメルカリが鹿島アントラーズのスポンサーになった件についても、SkyBallが裏側(代理店業務)を担っていたそうだ。
「Sportaは自分自身が子どもの頃に戻るなら、絶対に使いたいサービス」だと話す熊谷氏。スマホ時代に最適化した切り口で、新たなスポーツ教室の形を目指していく。