編集部記:Jonathan MunkはDegreedの信任部門のジェネラル・マネージャーを務める。
2015年卒業の生徒は平均で3万5000ドルの学生ローンを持ち、この金額は歴史上最も多い。それでも企業の役員や採用マネージャーは、自社のスキルを要する空きポジションを埋めることができないと嘆いている。これがスキルギャップであり、10年以上に渡って議論されている問題だ。それなのになぜ大学側は問題を解決しないのだろうか?それは彼らにもできなからだ。
理由は次の通りだ。
このスキルギャップには2つの側面がある。学生が実際に習得したスキルと彼らが求める仕事で必要なスキルのギャップだ。もう一つは、人が持っていると認識しているスキルと実際のスキルのギャップだ。
実質的なスキルギャップ
習得したスキルと仕事で必要なスキルギャップは存在する。Career Builderの2014年の調査結果によると、採用マネージャーの81%はスキル不足が理由で、空いているポジションを埋めることが少なくとも「やや困難である」と回答している。さらに61%は採用要件を完全に満たしていない人でも採用したと答えた。いくつかの重要なスキルギャップはどのキャリアステージにもつきものだが、新卒が求めるエントリーレベルの仕事にも多くのスキルギャップが見られる。
教育に多額の投資をしているにも関わらず、学生にとって仕事探しは大きな課題のままだ。新卒のおよそ半数は大学で労働市場に進むための準備が整わなかったとし、83%は卒業する時にすぐに仕事に就けていない。また、他の調査結果では学生の62%は仕事探しは「ストレス」あるいは「とてもストレス」と回答している。女性や少数派の人にとってこれはさらに大きな壁だろう。
スキルの認識に関わるギャップ
このスキル問題についてあまり語られることがないのがスキルの「認識」の問題だ。大学卒業後、学生は適切なスキルを持っていると考えているが、雇用主はそれに同意しているわけではない。AACUの最近のアンケート調査からクリティカル・シンキング、口述、記述によるコミュニケーションスキル、クリエイティブであることなど主要分野のスキルにおいて、学生は雇用主より2倍、それらのスキルが備わっていると認識していると示した。別の調査では大半の従業員はスキルギャップを認識している(61%)が、その一方で驚異の95%の人たちは自分自身には当てはまらないと考えていることを示した。典型的なレイク・ウォビゴン効果だ。誰もが平均以上だと思っている。
スキル開発機関としての大学
これらの問題の責任を大学に問うのは簡単なことだ。学生は給料の良い仕事を得る可能性を広げるために歴史上最も高い金額の授業料を支払っているのだから。その結果、アメリカ全土の学生ローンの債務は1兆3000億ドルに上る(その金額は毎秒2700ドルのペースで膨らんでいる)。
居心地の良いと感じている老犬に新しい芸を覚えさせようとしている。変化は起きない。
大学は実際にはどれくらいスキル開発に注力しているのか?2016年における25のビジネススクールの掲げるミッションステートメントを見てみるとよい。そこには知識を得たり、共有したりすることや世界をよりよくするといった内容は載っているが、カーネギーメロン大学たった1校以外のミッションステートメントにスキルの単語すら出てこない(他に数校、別の文脈でスキルについて言及はしている)。アメリカの上位ビジネススクールが学生のスキル習得をミッションに掲げないのなら、教育機関が仕事に向けて学生を整えることに期待できないだろう。
アメリカのカレッジや大学は学生に豊かな経験と知識を提供することで、彼らが社会に貢献し、社会的地位の向上を目指して創設された。1930年代、何百万人に職のない時代、大学の役割は文化的な側面からキャリアで重要な性質を伸ばすことに軸が移った。時間が経過し、大学に行くことはキャリアの展望が良くなることと捉えられるようになった。その認識は今でも同じだ。2015年のアンケートによると、学生が大学に行く理由のトップ3は次の通りだった。
- 就職のチャンスを高めるため
- より良い収入を得るため
- 良い仕事に就くため
しかし大学には変わるインセンティブがない。教授の報酬体系は学生のキャリア上の成功ではなく研究することにインセンティブが働くようになっている。何百年も続く教育機関の伝統は変化に抵抗するだろう。高等教育機関がスキルギャップを埋めることを期待するのは、居心地の良いと感じている老犬に新しい芸を覚えさせようとしているのと同じだ。変化は起きない。
それでも学位は重要
多くの人は、有名企業が採用要件に大学の学位を求めるというハードルを取り外したことを指摘するだろう。Deloitte、Google、Penguin Random House、Cisco、T-Mobileといった企業はすでに採用要件から学位を外した。
大学の学位がなくとも高給な仕事を得ることができるといった認識は広まっている。特にテクノロジー業界ではそうだが、実際の採用データは別の状況を示す。労働市場のデータ企業Burning Glass TechnologiesによるWSJの記事には、テクノロジーセクターの92%の仕事掲載では学士号を採用要件としていることを示した。
なぜだろうか?簡単に言えば、採用マネージャーは他に人のスキルや専門性を測ることのできる優れた方法を他に持っていないからだ。誰かが有名大学の関連分野で良いGPAを修め、推薦もあるのなら、本人の本当のスキルレベルや専門性が分からなくとも、基礎的な能力や知性が会社の求める水準に近いと言えるのだろうから。
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