人生でたった一度しかない成人式。2021年1月に発令された4都県への緊急事態宣言を受け、都内では少なくとも16の区が対面集合形式の成人式の中止を発表した。東京23区では、通常どおり1月10日に新成人をホールなどに集めて開催したのは杉並区のみ。2021年は各区ともに開催方法を模索し、渋谷区、千代田区、中野区などは時期を3月にずらして対面集合形式で実施、その他の区では式典コンテンツのオンライン配信を行い、対面型懇親会は中止という形式で行われた。
東京都中央区も式典をYouTubeでオンライン実施し懇親会を見送った区の1つだが、かつての同級生や恩師とも会えるその機会を少しでも取り戻そうと、同区職員と懇親会の実行委員会により2021年3月14日、oVice上でバーチャル交流会が行われた。中央区では毎年、成人式後に任意で参加可能な「新成人のつどい」という、ゲームや懇親を深める交流会を開催している。オンライン開催にあたって「あつまれ どうぶつの森」のようなアバター形式を利用するのがいいのではないかと探していたところ、oViceに辿り着いたという。
日本のスタートアップoViceが提供する同サービスは、バーチャルコミュニケーションツールの1つ。オフィスやパーティ会場などを模した画面上で、参加者が自分のアバターとなるアイコンを動かし交流を行う。参加者は自分のアイコンを自由に動かすことが可能で、他のアイコンに近づくとその人の声が聞こえてくるという対面コミュニケーションに近い感覚を得やすいところが特徴だ。また、ツール上で動画を共有し、一緒に閲覧することも可能。今回の懇親会では、交流、ゲームなどの催し、動画の共有などがすべて行えるツールということで採用された。oVice側も社会的意義を感じ、全面協力している。
オンライン懇親会は、3月14日の14時から16時の2時間で開催された。まず実行委員によるoViceの使い方に関する丁寧なチュートリアルが行われた。14時半からは中央区にゆかりのある芸人コンビが、中央区エリアにちなんだオリジナルコントを披露。15時からは対面型で開催されていたクイズ大会が行われた。そして最後に、地元中学生からお祝いの吹奏楽の演奏が動画で流された。
初めての試みということもあり、準備やリハーサルにはさまざまな部署の職員が20〜30名ほど協力している。今回、中央区は、1月に成人式ができなかった代わりに新成人へ記念品(タンブラー)を送っているが、そこに今回の案内を同封。さらに中央区や「新成人のつどい」の公式TwitterやLINEでも今回のイベントに関する告知を行い、YouTubeでもoViceの使い方解説動画を用意するなど、例年以上に事前準備に力を入れていた。
2021年の「新成人のつどい」には新成人だけでなく教員や実行委員、オンラインの利点を活かして海外在住者も参加している。中学卒業以来、久しぶりに再会をした人たちもおり、開催してもらえてよかったという声も多かった。
中央区区民部文化・生涯学習課長の岩田純治氏によると、終了後、練馬区や越谷市から問い合わせがあったという。中央区では、公式SNSの活用、YouTubeでの広報番組や講演の配信といったオンラインツールの活用を進めており、イベントについても引き続きオンライン対応を進める方針だ。