11月17、18日に、渋谷のヒカリエで開催したTechCrunch Tokyo 2015。初日のファイアサイド・チャットの1つでは、フリマアプリ「メルカリ」の創業者でCEOの山田進太郎氏とTechCrunch Japan編集長西村賢がセッションを行った。
2013年にリリースされ、翌年には北米に進出、2015年11月には日米通算2500万ダウンロードを突破したメルカリ。これまでTechCrunch Japanでは何度か山田氏に取材を行ってきていた。今回のセッションでは山田氏に改めて、C2Cサービスを始めた理由、メルカリ成長の秘訣、そしてC2Cサービスの本質とは何かを語ってもらった。
スタートアップ当時の楽天で学んだ起業の原点
山田氏が大学4年生の時に就職活動をして入ったのは、現在の楽天。当時はまだ社員数が20人程度だった。山田氏がいた1990年代後半の頃の楽天といえば、楽天オークションを立ち上げる前の時期で、現在起業家やエンジェルとして活躍する人物が集まっていた。今となってはコードを書くようにもなった山田氏だが、当時はWord、Excel、PowerPointの扱い方も分からなかった。しかし、何かウェブサービスを作りたい、という思いはあった。本人いわく、「丁稚みたい」だったそうだが、楽天が上場したのは2000年。それまで毎週スタッフが1人か2人増え続けていたという状況の中で、ウェブサービスの作り方を学んでいった。今でも当時の楽天の盛り上がっていた雰囲気は原体験としてあるという。
大学卒業後に起業、そして連続起業家に
大学卒業後の2001年に創業したWebサービス企業のウノウでは、いくつもヒットサービスを生み出した。映画のレビューサイト「映画生活」は、後に「ぴあ映画生活」になるのだが、これが山田氏最初のバイアウト。その額は数千万円規模だったという。「映画生活」だけでなく、「フォト蔵」「まちつく!」などの成功もあり、ウノウはZyngaに数十億円で買収された。買収提案を受けずに会社としての独立性を維持するという選択肢もあったが、「世界で通用するインターネットサービスを作る」こと、というウノウで掲げたミッションのためには、Zyngaとやったほうが良いと考えたのだそう。Facebook上で圧倒的に強かったZyngaなら世界で通用するものが作れる。Zyngaだからこそ、ウノウの売却を決めたのだそうだ。「より多くの人に、より楽しく使ってもらえるサービスをやりたかった」(山田氏)
Zyngaへのウノウの売却はスタートアップとしては成功した「エグジット」ではあったものの、結局日本での事業は終了せざるをえなかった。GREE、mixi、モバゲーという三つどもえの中で、日本からFacebook上で何かパブリッシュすることは難しかったからだ。エグジットから2年、山田氏はZynga Japanを退職することになる。しかしこの時すでに、何か新しいことやろうと決めていたという。ネタは全く決めていなかった。ただ、せっかくウェブサービスをやるのだったら、より多くの人に、便利に、楽しく使ってもらうサービスをやりたい、と思っていた。
その思いを持ちつつ、1年間の充電期間を経てできたのが、メルカリだった。
ピュアなC2Cがスケールにつながる
メルカリでは、基本的に、企業がアカウントを持つことはできない。完全に一個人のユーザー同士がやりとりをするフリマアプリだ。その理由について聞かれると山田氏は、
「僕個人としては、いかにスケールするかを重要視しています。Bが入ってしまうと、在庫とか、物理的に限界があるような気がしています。Airbnbとか、Uberとか、一見Bっぽいですけど、あれだけスケールしているのはピュアなC2Cだからじゃないのかと思っています」(山田氏)
面倒なやりとりは仕組み化してあげること
セッションの中で、テキストを打ったり、誰かとやりとりしたりすることをしたくない人も増えているのではないか、という質問が出た。ソーシャルネットワークやシェアリングエコノミーとは言うものの、実際には人とのコミュニケーションが面倒だということもある。
これに対して山田氏は次のように話した。
「住所や振込先などのやりとりは確かに面倒。でも、そういうのを仕組み化してあげて、オートマチックになっていったら、需要と供給が爆発的に増えるんじゃないか、それがメルカリで今起こっていることなんじゃないかと思っています。オートマチックなやりとりの後に、ご購入ありがとうございます、ってくるわけなんですけど、そういう心のやりとりというか、そういう人間的なやりとりにほっこりする、みたいな構造があるんじゃないかな、と」
北米進出から1年半、これまでの成果が見えつつある
アメリカと日本とでプラットフォームとしてのメルカリのスケールの仕方に、実はそんなに差はないという。メルカリは、リテラシーの高くない地方ユーザーから立ち上がってきているが、これは北米でも同様という。
現在アメリカでのダウンロード数は500万を超えているという。アメリカ単体では、まだまだ赤字だが、アメリカを攻略すれば、その次は世界が見えてくる。現在40人いるプロダクト製作チームは、ほとんどがアメリカ市場に専念しているという。今後、北米市場で存在感を出して世界市場へと広げていけるかどうか注目だ。