無名スタートアップから企業価値3.8兆円のRPAユニコーンに登りつめたUiPath成長の軌跡

TechCrunchが2017年にUiPathのシリーズAを取り上げた時、この会社はロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)と呼ばれるほとんど知られていないエンタープライズソフトウェア分野に取り組むルーマニアの小さなスタートアップだった。

その後、同社は次々と数十億ドル(数千億円)の企業評価額をつけられる成長を遂げた。複数の調達ラウンドを経て、2021年2月の7億5000万ドル(約790億円)のラウンドでの評価額は、驚きのの350億ドル(約3兆8399億5000万円)だった。

米国時間3月27日、UiPath(ユーアイ・パス)は速射砲のような進化過程の次期ステップとして、上場のためのS-1書類を提出した。この会社がどれほどの速さで上昇してきたかを知るべく、これまでの資金調達の歴史を見てみよう。

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画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

RPAは、最近ではSAP(サップ)、Microsoft(マイクロソフト)、IBM(アイビーエム)、ServiceNow(サービスナウ)などの大手エンタープライズソフトウェア会社が参入したことでよく知られている。RPAを導入することで、企業は保険の申請などの面倒な作業を自動化し、業務を自動的に遂行することで、人間は必要不可欠な作業に専念できる。例えば人がメールからスプレッドシートに数字を移し替える代わりに、RPAが自動的にやらせることができる。

2019年6月に大手調査会社のGartner(ガートナー)はRPAについて、エンタープライズソフトウェアで最も急成長している分野であり、年間60%の伸びで投資家だけでなく大手エンタープライズソフトウエア企業もひきつけていることを報じた。RPAの成長スピードは成熟とともに鈍化したものの、2020年9月のGartnerレポートによると、成長率は19.5%と堅調で2021年の売上総額は20億ドル(約2190億円)に達すると予測している。Gartnerは、UIPath、Blue Prism(ブルー・プリズム)、Automation Anywhere (オートメーション・エニウェア)らのスタンドアロンRPAが市場をリードしていると伝えている。

市場規模は、会社評価額と比べてやや小さく感じるが、この分野まだ生まれたばかりだ。この日のS-1申請書類には、獲得可能な市場規模(TAM)は600億ドル(約6兆5713億円)、というバラ色の展望が描かれている。TAMの予測は概して大きめになる傾向があるが、UIPathはこの数字について、純粋なRPAから同社が「Intelligent Process Automation(インテリジェント・プロセス・オートメーション)」と呼ぶものへと変遷することを見込んでいると説明している。そこにはRPAだけでなく、プロセス発見ワークフロー、ノーコード開発などさまざまなかたちのオートメーションが含まれている。

実際、TechCrunchがプロセスオートメーション市場の急成長について書いたように、UiPathがさらに成長するためには、これらの分野へも進出する必要があるだろう。特に、エンタープライズオートメーション市場を巨大企業と競っていることを考えればなおさらだ。

UiPathは上場前の沈黙期間の真っ只中にいる間に、Cloud Elements(クラウド・エレメンツ)の買収を発表した。APIインテグレーションを提供する会社で、エンタープライズのオートメーションにとって重要な要素だ。UiPathの共同ファウンダーでCEOであるDaniel Dines(ダニエル・ダインズ)氏はこの買収について、オートメーションツールのための大型プラットフォーム構築のためだと語った。

「Cloud Elementsの買収は、当社が柔軟でスケーラブルなエンタープライズ向けプラットフォームを構築し、顧客企業を完全オートメーション化する方法の一例にすぎません」と同氏は声明で述べた。

声明の多くはCEOトークだったが、会社がより大きなオートメーションストーリーを描いていることを示す真実もあった。同社は並外れた資金調達で得た現金を使って、独自のビジョンを拡大し、プロダクトロードマップに欠けている部分を埋めるための小さな買収を始められる。

同社が急速に展開する市場で戦うためには、それ以上のことを成し遂げる必要がある。事業のさまざまな部分を多くのベンダーが狙っているからだ。上場への旅を続ける間に、UiPathはより多様なオートメーション分野のさまざまな部分に手を広げ売上を増やす新たな方法を見つける必要があるだろう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:UiPathRPA新規上場

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(文:Ron Miller、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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