男女問題やお金のトラブルなどを解決するために専門家の知識が欲しいと思っても、いざ弁護士に相談するとなると、心理的なハードルが高く時間も取れないのでなかなか気軽には相談できない——そんな人も多いのではないだろうか。9月11日にST Bookingがベータ版の提供を開始した「カケコム」は、そうしたトラブルを解決する、弁護士を中心とした専門家と相談者をマッチングするサービスだ。
ST Bookingは元々、日本への留学を望むインバウンド留学生やそのエージェントに向け、学校紹介や海外生活支援、翻訳サービスなどのマッチングを行う留学支援プラットフォーム「ST Booking」を提供してきたスタートアップだ。2016年5月には、総額20万ドルのシード資金調達も行っている。それがなぜ、弁護士のマッチングに主力事業をピボットしたのか。
ST Bookingの創業者で代表取締役社長の森川照太氏は、こう説明する。「留学支援サービスも今でもニーズがあり、意義のあるサービスで、やめるつもりはない。ただ、留学にまつわるサービスで、スタートアップ的な成長を目指すのは難しいと感じた。留学には年に2回のシーズンがあって、それ以外の時期に継続的な盛り上がりがないことや、ユーザーも『2、3年後の留学のために』といった時間軸で情報を探す人が多いからだ」(森川氏)
ST Bookingでは、2016年末からメイン事業をシフトして、カケコムの前身となる、トラブル解決に関する情報を提供するメディア「ジコナラ」をスタート。今回、名称をカケコムに変更するとともに、認定弁護士による見積もりサービスを追加し、トラブル解決の専門家マッチングサービスとしてリニューアルを行った。現在の見積もりサービスは、離婚案件に詳しい弁護士から最短30分で見積りをもらえるという内容になっている。サービスに登録する弁護士はカケコムスタッフが1人ずつ面談し、「累計取り扱い離婚案件50件以上」という基準を満たす場合のみ認定を行っているという。
「弁護士法では、送客ごとに報酬を得ることは禁止されているので、サービスの利用料を月定額で専門家から課金するモデルを採っている。有料会員数を増やして、2019年に2000人登録が目標だ。現在の相談数は月に数十件だが、年内に月100件を目指したい」(森川氏)
弁護士紹介でいえば、有名どころで「弁護士ドットコム」が既に無料の法律相談や弁護士の検索ができるポータルを提供している。また、探偵事務所や興信所探しなら「探偵ドットコム」といったサービスもある。
森川氏は「今までのサービスはディレクトリ検索的で、問題ベースで最適なソリューションが見つけにくいという問題があった。また、結果として条件に合う専門家のリストが表示されても、結局はそのホームページを自分で調べて確認して選択しなければならなかったり、電話やメールでこちらから問い合わせをする必要があったりして、気軽に相談できる状況ではない」と言う。
「そこで、新サービスでは、トラブルの種類別に最適なソリューションをスマホの画面上で手軽に選べて、短時間で専門家とコンタクトできるようにした」(森川氏)
提供中の離婚弁護士の見積もりサービスでは、離婚の原因や弁護士とのやり取りの方法など、相談者が簡単な質問に選択肢で答えて送信すると、適任の弁護士に通知され、弁護士から見積もりが届く。見積もりは無料で、専門家の側からアプローチがあるので、相談者から電話などで連絡するという心理的なハードルもなく、気軽に利用できるという。
今後のベータ版から正式版へのアップグレードに当たっては「サイト上で、専門家とのメッセージのやり取りなどのトランザクションが完結するサービスにしたい」と森川氏は話している。「また、離婚問題に加え、相続や労働問題、交通事故や金銭問題など、いわゆる“一般民事”に関わる専門家のマッチングにジャンルを広げていくつもりだ」(森川氏)