統合が進むRPA業界、Blue PrismがVistaに約1652億円で売却される

2020年来、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)市場は大盛り上がりだが、市場のパイオニアの1つであるBlue Prism(ブルー・プリズム)がVista Equity Partners(ビスタ・エクイティ・パートナーズ)に10億9500万ポンド(約1652億円)で売却されることが、米国時間9月28日の午前、英国での申請により明らかになった。2020年、多くのRPAスタートアップ企業が大手ベンダーに買収されたが、今回の買収は、RPA分野のトップ3ベンダーのうちの1社が関与した初めてのケースだ。

これは込み入った取引で、申請書によればVistaは、Vistaファンドが間接的に所有するBali Bidco Limited(バリ・ビドコ・リミテッド)という企業を設立し、同社がVistaに代わって購入を行う。そのような金融メカニズムを使った理由は不明だが、最終的にはVistaがBlue Prismを買収し、2014年にVistaが43億ドル(約4796億円)で買収していたTibco(ティブコ)に統合する予定だ。

Blue Prismは、申請書内での自己申告によれば、先の3月の年次総会以降厳しい状況に直面し、選択肢を模索していたという。「Blue Prismの取締役会は、当社が直面している戦略上および経営上の逆風、経営上の重大なリスク、および株主のみなさまからのフィードバックを考慮して、さまざまな戦略的選択肢を検討しました」と同社は申請書中で述べている。

そうした選択肢の1つが売却であり、それが会社にとって最善の方法であると判断したのだ。Blue Prism社の会長でCEOのJason Kingdon(ジェイソン・キングドン)氏は、これがより強固な基盤を築くための最良の道であると考えている。

「VistaとTibcoが合併することで、私たちは次世代のインテリジェントオートメーションの最前線に立ち続けることができます。Tibcoの世界に広がる拠点と技術により、お客様に提供する製品の範囲を拡大することができるのです。また、株式非公開企業として、製品への投資やその他のM&Aの可能性を通じて新たな成長機会を追求するために、資金調達を拡大することができるのです」と、キングドン氏は声明で述べている。

私たちは、Blue Prismが売却を決断した理由を探るために、過去の営業成績を調査した。2021年4月30日までの6カ月間の売上高は8040万ポンド(約121億2000万円)で、実質為替レートベースで前年同期比24%増となっている。同じ期間に、Blue Prismは、営業損失を5380万ポンド(約81億円)から2090万ポンド(約31億4700万円)に圧縮した。

赤字の解消は進んでいたものの、不採算の程度に比べて成長が遅れていた。今回の取引が発表される前にBlue Prismの評価額は下落しており、一般投資家がBlue Prismの業績に満足していないことが示されていた。VistaはBidco(ビドコ)を通じてBlue Prismにプレミアムを支払っているが、Blue Prismの評価額は最近の下落が始まる前の2021年の初頭に比べて、さらに低くなっている。

同社の2021年上半期の収益を見て、それを1年分に推定してみると、Blue Prismは収益の約6.8倍で売却されたことになる。これは、Blue Prismのようにゆっくりと成長している企業の、ヨーロッパ市場におけるエグジットバリューを示しているので有益な数字だ。Vistaは、Tibcoとの買収・統合が有益なものになると確信しているようだ。

1997年に設立されたレガシーベンダーのTibcoは、企業内のデータソースを接続するための幅広い自動化サービスを提供しているが、Blue Prismは組織内のレガシーのありふれたタスクを自動化するためのRPAサービスを提供している。Blue Prismは、成長するRPA市場においてTibcoを手助けすることができるので、少なくとも理屈の上では、両社はうまく調和するはずだ。

2020年のガートナーのレポートによると、この分野のベンダーのトップ3には、2020年上場して話題になったUIPath、Automation Anywhere(オートメーション・エニウェア)、Blue Prismがが並んでいた。2020年のレポートでIDCは、RPA市場は2021年20億ドル(約2230億円)に達すると推定しています。これはRPAにまつわる宣伝文句を考えると控えめな金額だが、IDCは2024年までには59億ドル(約6570億円)に達すると予想している。

この業界では統合が進んでおり、2020年は小規模な企業が大規模な企業に買収されてきた。最近では、Salesforce(セールスフォース)がドイツのスタートアップであるServicetrace(サービストレース)を買収してMulesoft(ミュールソフト)と統合したが、これはVistaがBlue Prismを買収してTibco取り込むのと同じような種類の動きだ。MulesoftとTibcoはお互いを競争相手といえるだろう。

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この取引は、Blue Prismの株主総会での承認と、通常の規制当局の手続きを経て行われる。このニュースを受けて、Blue Prismの株価は2.12%下落している。

画像クレジット:mbortolino / Getty Images

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(文:Ron Miller、Alex Wilhelm、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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