CRISPRは、万能の奇跡的革新的技術ともてはやされるところが、グラフェンに似ている。それは、科学オタクたちが異口同音に、あらゆる産業を変えると騒ぎ立てる、エキサイティングな新技術なのだ。しかもこの遺伝子編集ツールは、蚊からマラリアを取り除くとか、HIVの感染状態を非感染状態にするなど、なかなかすごい生命変更の成果を上げつつある。
しかし中には、優秀な科学者たちですら予見できなかった応用もある。それは、Jennifer Lopezがプロデューサーを務めるNBCの未来的バイオ恐怖犯罪ドラマに、アイデアとヒントを提供することだ。
このようなプロジェクトを正当に評価する才能は、ぼくにはなさそうなので、Hollywood Reporter誌の紹介記事から引用しよう。そのNBCの連続ドラマの題が、なんとCRISPRなのだ。世界を変えると言われる技術の名前を、そのディストピアなドラマの題名に、いただいちゃってるのだ。
<引用>
この番組の主役は、国立疾病管理センター(CDC)の科学者と、その相方、FBIの捜査官だ。Castleと同じパターンで、二人がチームを組み、自分が神だと信ずる悪魔的な天才、主人公の科学者の以前のボスをやっつけようと頑張るとき、二人の間に恋が芽生える。
えー、そして、二人はどうやら、“人間のゲノムのコントロールをめぐって悪と戦い、未来における人類の種の保全と、すべての疾病の根絶を目指す”、らしいのだ。
これぞ、科学でございます!
脚本はBates MotelのAnthony Cipriano。前作の舞台がホスピタリティー産業〔とくにモーテル〕だったように、今回は遺伝子科学が、たまたま舞台なのだ。
良い点は、CRISPRがアメリカ人大衆の日常的雑談の話題になり、言葉が大衆化し普及すること。良くない点は、SpringfieldでBurns氏が太陽をブロックしようとしたり、鮫をレーザーでやっつけようとしたのと同じように、遺伝子科学が俗悪なエセ科学のネタになってしまうことだ。
CRISPRは、ノーベル賞をもらいそこねたけど、今度はなんか、別のものをもらったようだね。