カリフォルニア州マウンテンビューのモフェット・フィールドにある何の変哲もない建物の中では、いまだどこのベンチャーキャピタルにも手をつけられていない80人の会社、Made In Spaceが次世代の人工衛星と宇宙探査のための道具を作っている。中でも目を引くのが、初めての自己製造衛星で、3年以内の完成を目指している。
3Dプリンターと自動組立技術を利用して、地上ではなく宇宙で製造することには多くの利点がある。組み立て済みのかさばる部品の代わりに、密度の高い3Dプリンター原料を送ることで場所を節約できる。さらに重要なのは、ロケット発射時の衝撃的な力に耐える必要がないので、壊れやすくても軽量な設計が可能になることだ。
Made In Spaceの3Dプリンターは、すでに国際宇宙ステーションで何回も職務をこなしている。「5年前、宇宙での製造は夢だった」と共同創業者でCEOのAndrew Rush(アンドリュー・ラッシュ)氏は「今は軌道上でさまざまな物を作るのが当たり前になる日がすぐそこに来ている」と語る。
「製造が、3Dプリントが、そして組み立てができたら、次はロボット操作だ」とNASAのジム・ブライデンスタイン長官はコメントしている。本社オフィスの彼の後ろにはロボットアームが3Dプリントされたフルサイズの反射円板にワイヤーをかけているところが見える。横には懐かしいスタートレックのポスターの横には世界最大の3Dプリント作品の写真もある(37.7mの宇宙空間ポリマーチューブ。そこでやめたのは通路の長さが足りなくなったから)。2022年の打ち上げを目標にしているその画期的プロジェクトは「Archinaut One」(アーキナント・ワン)と呼ばれている。
もちろん、衛星全体を軌道上でポリマーの塊とワイヤーから作るわけではない。しかしNASAがMade In Spaceに7370万ドルで委託したArchinaut Oneは、、従来の小型パネルを広げる方式に代えて長さ10メートルのソーラーパネルウィングを宇宙で製造することによって「同じサイズの宇宙船のソーラーパネルの5倍以上のパワーを得られる」という。
商業利用の可能性は幅広い。たとえば、衛星経由インターネットは膨大な帯域を必要としており、基本的に電力は帯域に等しい。ブライデンスタイン氏はこの仕事がNASA内部ではなくスモールビジネスによって成し遂げられたことを称賛し、NASAが自ら新しいテクノロジーを所有、開発するよりも、民間宇宙セクターの顧客、それも「数多い顧客のひとつ」になることを明確に望んでいる。そしてArchinaut Oneは、物議をかもしている月軌道ゲートウェイのロボットによる製造を見越したプロトタイプとも考えられている。
しかし、仮にあなたがゲートウェイ構想の筋金入りの懐疑派だとしても、Made In Spaceのテクノロジーは純粋に心躍らせるものであり、驚くほど多面的だ。彼らはISSの廃棄ポリマーをリサイクルするつもりだ。宇宙で光ファイバーを製造する計画もあり、その性能は通常のファイバーを著しく上回る。金属板材の押出加工も行い、ポリマーだけでなく宇宙での 金属3Dプリントにも関心を持っている。
なによりも興味深いのは、彼らが月などのレゴリス(表土)を3Dプリント材料に転換し、それを使って非常に強度のある気密性の高い構造を作ろうとしていることだ。月の表土70%と ポリマー粒子30%を混合加熱することで、焼結のわずか13分の1のエネルギーコストで3Dプリント原料を作ることができる。彼らの途方もなく素晴らしく途方もなく野心的な、隕石から宇宙船を作る長期計画は「Project RAMA」と名付けられており、アーサー・C・クラークの小説に敬意を表したものと思われる。
夢物語のようにも聞こえるが、これまでの実績を踏まえると、Made In Spaceは本物としてに捉えられる資格を得たようだ。同社の共同創業者の4人は、シリコンバレー拠点の教育機関であるシンギュラリティ・ユニバーシティで出会い、NASAからホコリまみれの使われていない地下室を借りて最初のオフィスにした。そして、(VCが立ち並ぶ)サンドヒルロードから数マイルの場所にいるにもかかわらず、現在の規模になるまで希釈的な資金調達を行っていない。彼らの科学的工学的実績に劣らぬ成果だ。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )