英国の二大株式投資型クラウドファンディングCrowdcubeとSeedrsが合併に合意、未公開株式マーケットプレイス最大手に

英国の二大株式投資型クラウドファンディングであるCrowdcube(クラウドキューブ)とSeedrs(シーダーズ)が長らく噂されていた合併に合意し、世界最大級の未公開株式マーケットプレイスになる。合併後の会社価値は1億4000万ドル(約147億9000万円)となる。

合併はCrowdcubeがスキーム・オブ・アレンジメントと呼ばれる手続きを通じて、Seedrsの発行済株式をすべて買い取るかたちで行われる。既存のCrowdcube株主およびオプション保有者は合併会社の60%を、既存のSeedrs株主およびオプション保有者は合併会社の40%をそれぞれ保有する。共同声明によると、合併比率は両社の直近の資金調達ラウンドに基づく概算価値を反映している。

SeedrのCEOであるJeff Kelisky(ジェフ・ケリスキー)氏が合併会社のCEOに、CrowdcubeのCEO・共同ファウンダーがエグゼクティブ・チェアマンにそれぞれ就任する。経営チームには両社の主要メンバーが加わる。

CrowdcubeのCEO・共同ファウンダーであるDarren Westlake(ダレン・ウェストレイク)氏は次のようにコメントしている。「投資型クラウドファンディングは、野心的な企業が投資を募り顧客を獲得するやり方を再定義しました。本日の合併は極めて重要な節目であり、高成長企業とそのビジョンを信じる投資家やそれを支える起業家エコシステム全体の利益になるものです。Seedrsと一緒になることで、私たちは英国および海外への拡張計画を加速し、革新的な新プロダクトを発売し顧客体験を改善できるようになります」。

SeedrsのCEOであるケリスキー氏は「私たちはともにフィンテックのパイオニアであり、ヨーロッパにおける資金調達環境に挑戦し、非上場株式投資のマーケットプレイスを構築してきました。多くの企業とそれを支える投資家の役に立つためには、さらに大きな規模が必要であると私たちは信じています。今こそ私たちの強みを合わせて、未公開企業投資への参加と効率を高めるという共通のミッションを達成するときです」と語っている。

2つの投資プラットフォームは、2009年にJeff Lynn(ジェフ・リン)氏とCarlos Silva(カルロス・シルバ)氏がSeedrsを設立し(ただし当局の承認後にサービスを開始したのは2012年)、2011年にウェストレイク氏とLuke Lang(ルーク・ラング)氏がCrowdcubeを設立して以来のライバルだ。Crunchbaseによると、Seedrsの総調達額は2820万ポンド(約38億7000万円)、Crowdcubeの総調達額は3070万ポンド(約42億2000万円)だ。

リン氏は私に、「これは成長のチャンスです。市場は新型コロナウイルスの蔓延下でも比較的堅調ですが、スタートアップ、SME(中小企業)の株式投資分野で本格的な規模を実現するには、両社の長所を組み合わせることだと私たちはともに考えています」と語った。

2011年以来、CrowdcubeとSeedrsのキャンペーンには20億ポンド(約2745億8000万円)が投資され、1500の企業が両社のプラットフォームから生まれた。目立った企業にBrewdog、Revolut、Perkbox、what3words、Moneyboxがある。

しかし、これまでヨーロッパ(英国がEUに所属していた時)全体からスタートアップを集めてきたこの二大投資型クラウドファンディングが、果たして比較的規模の小さい英国で生き延びていけるのか、多くの評論家か疑問を呈していた。

実際、両社はスタートアップ投資(テック系に限らない)の波にこの10年間乗りながらも、しばらく前から合併を検討していた。しかし、これまで最適なタイミングがなかった。

この合併は理にかなった行動だ。どちらのプラットフォームも次のステージに向けて投資家(主として英国)の戸を叩くことになるが、合併がなければ似たような提案で競合していただろう。

いずれの会社もここまで安泰というわけではなかった。Seedrsはつい最近、セカンダリーマーケット(流通市場)をあらゆる非上場会社に開放した。一方Crowdcubeは Curveなどの著名企業からの資金調達を続けてきた。

関連記事:クラウドエクイティプラットフォームのSeedrsが既存のセカンダリーマーケットをあらゆる企業に開放

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:CrowdcubeSeedrs合併

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。