James Cox(ジェームズ・コックス)氏は、Uberでのキャリアの大半をライドシェアリングによる渋滞緩和の問題解決に費やしてきた。
Uber Poolサービスの設計者の一人で、自動車の排気ガス削減の手段としてライドシェアリングを長年提唱してきたコックス氏は、MITで開発された技術を活用するチャンスに飛びついた。公共交通機関のための動的ルーティングと車両管理システムをより洗練されたものにするという技術である。
この技術は現在コックス氏が率いるスタートアップ、The Routing Company(ザ・ルーティング・カンパニー)の中核をなすものだ。これは同社の共同創設者で最高技術責任者を務めるAlex Wallar(アレックス・ウォーラー)氏がMITの博士課程時代に開発したソフトウェアをベースにしており、車両分布の最適化に焦点を当てている。同氏はMITのコンピューターサイエンス・人工知能研究所の所長であるDaniela Rus(ダニエラ・ルス)氏やポスドク研究員のJavier Alonso Mora(ハビエル・アロンソ・モーラ)氏などの共同研究者と協力し、リアルタイムの最適化を公共交通機関に適用できるプラットフォームを開発した。
ウォーラー氏は4月にMenno van der Zee(メノ・ヴァン・デル・ジー)氏のもとへ研究を持ち込み、The Routing Companyの基盤となるプラットフォームを共同開発している。
コックス氏は当初同社のアドバイザーとして参加していたが、ウォーラー氏とヴァン・デル・ジー氏が開発した技術を見て、同氏は全面的に参加することを決意する。
MITのディープテックファンドであるThe Engine(エンジン)がリードする500万ドル(約5億2000万円)の新規資金を始め、合計650万ドル(約6億7000万円)の資金を獲得した同社は、そのテクノロジーを世界中の交通機関に提供しようとしている。
「The Routing Companyをサポートできることを嬉しく思います。彼らは大規模な動的シェアライドのコードを解読しました」とThe EngineのゼネラルパートナーであるReed Sturtevant(リード・スタートバント)氏は語る。「都市のためのスマートなライドシェアリングソリューションは波及効果を生み出します。移動手段の革新により混雑が迅速に低減され、勤務先の都市に居を構える余裕のない人々の通勤時間を短縮し、その環境を改善してくれるでしょう」。
これまで民間企業が消費者に対して提供しようとしてきたサービスを、誰もが享受できるようにするというものだ。
スタートアップによる民間の通勤サービスは数多く失敗に終わっている。The Routing Companyは、公共の都市交通機関と競合するのではなく協働することで、直面する問題を回避したいと考えている。
アメリカだけでも公共交通機関は740億ドル(約7兆6500億円)のビジネスとなっているが、新型コロナウイルスの影響を受けて苦しい状況が続いている。
「過去に当社や他のライドシェアリング会社がシェアライドアルゴリズムを構築していたとき、シェアライドにおける問題を解決する複雑さはリアルタイムで対処できませんでした」とコックス氏はUber在籍時の経験を語った。「リアルタイムでは解決できないものであると認識していましたが、私たちは交通機関を顧客にすることにしたのです。彼らは大容量のルートと需要への対応力はありますが、低密度および中密度のエリアではその要素が弱くなります。そこに支援の機会が存在します」。
コックス氏は新会社について、低所得で低密度の地域社会に特に影響を与える問題を解決するものだと考えている。これらのエリアは概して従来の公共交通機関によるサービスが行きわたっていない。The Routing Companyが提供するツールを使用することで、これらのエリアにサービスを提供するための新しい車両群の編成が可能となる。
The Routing Companyは、乗客のためのアプリ、ドライバーのためのアプリ、交通機関のための車両管理プラットフォームを含むパッケージを販売し、様々な価格オプションを試している。コックス氏は初期の顧客にいくら課金しているかについて明らかにしなかったが、収益モデルは1台の1か月当たりの料金、または1台当たりの収益のパーセンテージに基づいていると述べている。
「各ドライバーはアプリをダウンロードするリンクを受け取ります。乗客はワンプッシュワンボタンのシャトル方式でそのアプリにアクセスすることができます。また電話でオペレーターに予約を入れることができるツールを作りました」と同氏は続ける。
過去にライドシェアリングのために開発されたアルゴリズムは、個人の位置情報と目的地を使ってピックアップのパラメータを設定するというものだ。The Routing Companyのモデルは真逆のアプローチをとっており、まず車両全体の位置と既に確立されたルートに焦点を当て、どの車両が乗客をピックアップするのに最も適しているかを判断する。
待ち時間は都市および配備した車両の数により異なってくるが、コックス氏によると乗客の待ち時間を10分以内に抑えることが目標だという。すでにスコットランドの1都市がこのサービスを利用しており、非公開の米国4都市およびオーストラリア1都市と契約済みである。
「多くのスタートアップがシャトル分野の起業を試みてきましたが、その多くが抱える問題はユニットエコノミクスが機能しないということです。当社のアプローチは確固とした適切な技術を有しており、これにより公共交通機関と競合するのではなく、彼らを強化することができるのです」とコックス氏は述べている。
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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:ライドシェア 資金調達
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(翻訳:Dragonfly)